2013/06/27

日記「【メキシコ戦】しぼんだ気持ち」

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■13/06/18(火) □ イタリー戦を前に
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 【コンフェデ杯】イタリー戦を前にブラジル戦をもう一度見ちゃったのだが、中3日と移動と時差で最後は皆の脚が止まるくらいの状態だったのだとわかっていて見ると、そーんなに悲観することもないような気もしてきた。コンディションが上がり本田、香川(これまで見くびっていたがやはりいい選手!)、清武の閃きに全体が連動すれば、美しいゴールが見れそうな気がしてきた。

 みんな個の力を1年で上げるとか中学生とプロの差だったとか観念的なことを言ってないで、どう連動しイタリーから点を取るかを考えてくれ。プロスポーツ選手が観念的になりがちなのはわからんでもないが、観念はたいていよくない方向にリキが入っちゃうことになるような気がする。自力で抜けないなら1-2で、1-2が読まれるなら1-2-3でと、できることで最も有効なことをやるんだ。ブラジル戦の香川はそういうプレイをしてたので見直した。いつものように可能性の低いシュートに強引に持ち込むのではなく、ボールを絶対に取られないよう集中し、少しでもブラジルゴールに近づこうとしていたからね。

 みんなできないことは今は置いといて、できることで最も有効なことをシンプルに全員でやるんだ。そうすればどんなチームにだってトラブルを与える力がある。

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■13/06/19(水) □【イタリー戦】ゾーンに入った日本代表
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 【イタリー戦】あー、日本は不動のスタメンに戻ってしまった。乾、清武を見たかった。うーん。まあともかく前戦から時差だけはない。コンディションは上がっているはず。そしてブラジル戦で自分たちができることできないことが見えて、アタマもクリアになってるだろう。頑張ってくれ。

 【前半】みんな落ち着いている。パス回しもボールを大事にして安定している。チャンスになっても焦っていない。いいぞ。クールに行こう。序盤リズムにまるで乗れないイタリー。客が退屈気味だが、このくらいの静かなゲームのほうが日本は助かる。20 分、PK! ―――ほれみろ、日本を舐めてるからあんな安直なパスミスをする。よおし\(^-^)/!

 30 分、香川伝家の宝刀を振り抜いて2点目、最高\(^-^)/。さすがに火がついたイタリーが猛プレスしてくるが、クールなままスイッチが入り日本のパススピードが上がっていく。素晴らしい!

 40 分、1点返される。まだまだ安心はできない。とにかくハーフまで耐え切った、よし。ふー。



 【後半】早々に DF 陣のミスと誤審 PK で逆転されるも、岡崎のスーパーなヘッドで追いつく。今日の岡崎は素晴らしすぎる。いつもにも増してアグレッシブな守備に加え、ここで戦える喜びに技術がブーストされているのか、見たことがないほど足技が切れている。ドリブルでモントリーボらを振り回し、隙さえあればドリブルシュートに持ち込むぞという気迫を漂わせている。イタリー相手にあんなことができる選手だったとは。チームでは今季出番に恵まれなかったらしいのだが、誰も知らぬ間に進歩していたんだろう。これが常時できるなら、とてもドイツ下位チームのサブにいる選手ではない。

 逆転を狙い延々と攻め続ける日本。日本はいわゆる「ゾーンに入っている」状態で、高速に判断し体がスイッスイ動き、イタリーがプレスをかければ一気にパススピードを上げ交わしていく。本田がドリブルシュートにトライし、岡崎のシュートが枠を叩く。すごい。

 しかしやがてイタリーが PK ボックスを固めてしまうと、どれだけボールを回してもシュートコースが開かなくなってしまった。ゴール前は小柄な香川でさえ足を振りシュートするスペースがないような満員電車状態で、こうなるとやっぱり誰かが敵を引きつけないと隙間は生まれない。

 となれば策は自明だ技術系のアタッカーだと外野は思うのだが、交代は 27 分内田→酒井、33 分前田→ハーフナー。なんでだよ。ハーフナーが体格同等のイタリー DF に競り勝てるはずがない。それに相手は足を止め PK エリアを埋め待っているんだから、そこにクロスを放り込めば相手は一番走らずラクに守れるではないか。乾か清武を投じて相手を走らせてくれよ。とほほ………。とザックがいつもの無為無策状態に陥っているうちに再度 DF ミスから勝ち越され、ゲームセット(ため息)。



 ブラジル戦からチームのマインドを立て直したことについては、ザック監督がちゃんと仕事をしてくれた。ブラジル戦後「ネイマールのように3人抜いてゴールを決める効率よりも、組織として連動して崩すことで世界に勝っていく」と監督の訓話があったそうで、やはり「できることを全員でやる」という気持ちに持って行ってくれたようである。

 今日の敗因は明らかに、凡ミスで2点も無駄に与えてしまったことである。強敵を相手に 90 分間凡ミスせずに守るというのは、同じ敵から点を取るのとほとんど同等に難しいことらしいと学ぶ世界大会の厳しさ。

 しかしそれにしてものザック采配はなんなのか。イタリーの3点目(PK)、4点目を取ったのは、プランデッリが前半早々にサブで投入した小兵アタッカー・ジョビンコである。なんでこういう普通の攻撃カードを打たず、ここぞというところでサイドバック交代なのかうちの監督は(ため息)。挙句の果てに 46 分に憲剛を投入するというのはなんなのか(ため息)。

 敗退が決まり、最後のメキシコ戦はイラク戦同様サブに任せてもいい試合のはずである。中2日なのでこの試合のイタリーのように疲れが抜けないメンバーも多いだろう。しかしザックは最後ももちろん、不動のスタメンで行くんだろうな。はあ。

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■13/06/22(土) □ 【メキシコ戦】しぼんだ気持ち
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 【メキシコ戦】イタリー戦で新たなステージに上がったかに見えた日本代表は、たった1試合でそこから降りてしまった。虚しい。

 今大会はあまりにもコンディションが悪かった。WC 本番は当然ちゃんとしたコンディションで3戦まとめてくれるだろうが、それ以上の希望はしぼんでしまうようなメキシコ戦だった。このチームはジーコジャパンと同じで、ベストメンバーで全員のコンディションがよければどことでも戦える。コンディションが落ちると監督がなんの助けもしてくれず、抵抗できず崩れていく。

 連れて行った戦力を使い切り、刀折れ矢尽きてメキシコに負けたのなら「まいりました。来年また頑張ります」と引き下がれたのだが、またもやコンディション不良の不動のスタメンで行き(本田も香川も岡崎もみな姿勢が棒のように立ってフレキシビリティがなく、脚に張りがあるのは明らかだった)、攻撃陣を全部ベンチに残したまま負けたのだから気持ちは収まらない。最後の 15 分憲剛が入り遠藤と今野が攻撃に上がればメキシコをクリーンに崩せたのだ。脚が止まった本田・香川を下げちゃんと走れる MF 2 名を投入していたら、どれだけ戦えたことだろう。負けてもすっきりしただろう。日本の評価も本田の市場価値もこの試合で相当に下落したんじゃないかと思う。イタリーは悪い状態でも個々の機転と監督の采配でなんとか試合をまとめたが、日本は本田を含め状態通りにボロボロになったのだから。

 とにかく現実としてザックは2年半かけて、「日本のベストは不動のスタメン 11 で、それ以外は下がるだけなのであまり期待しないでください」みたいなつまらない采配しかできないチームを作ったわけである。そんなことはない、サブを出せばもっと戦えるとファンは思っているが、彼は明らかにそう信じていない。そんなチームを世界大会に連れて行ったわけである。WC2010 でベスト 16 に進んでも岡田監督が最高の仕事をしたとは誰も思わなかったように、今後ザックが新メンバーを加えよりよいチームを作っても、日本が今日味わったこの悔しさが変わることはない。

 現スタメンが好コンディションでやれる上限はイタリー戦でわかった。彼らは優秀だがあれだけじゃ WC を勝ち抜くには足りない。あと1年でザック監督自身が信頼出来る 22 人を揃え、そしてちゃんと使ってもらいたい。使わなかったらそれは何故なのかと、マスコミは圧力をかけてもらいたいものである。

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■13/06/23(日) □ スターマンは待っている
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 カーステでかけた「Life on Mars」からうちのムスメがデビッドボウイにはまり、今朝は「It's No Game」をかけて「シルエットや影がー! 革命を見ているー! ……カクメイってなに?」と歌ってた。素晴らしい。

 萌はうらやましいことにボウイの歌詞が聞き取れちゃう。で「Life on Mars」や「Starman」を歌いながら「このリリック、doesn't make sense! (意味不明)」と笑い、ネットで検索して読んでいる。ボウイは歌詞難解で有名だからな。で俺も歌詞を読んで、これはこういう意味じゃないのと一緒に解釈しとるのです。



 「Starman」を萌に解釈してもらったら美しかった。

There's a starman waiting in the sky
スターマンは空の上で待っている
Hed like to come and meet us
みんなに会いたいけど
But he thinks he'd blow our minds
そうしたらみんなの心が吹き飛ぶかもって
There's a starman waiting in the sky
スターマンは空の上で待っている
Hes told us not to blow it
降りていくけど心を鎮めてね
Cause he knows it's all worthwhile
だってそれはとても大事なものだから
He told me:
彼は言うんだ

Let the children lose it
子供らがそれを忘れたり
Let the children use it
それを生かすことができるよう
Let all the children boogie
すべての子供らがブギーできるようにしてください

日記「沈鬱のブラジル戦(コンフェデ杯)」

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■13/06/11(火) □ サブの出ぬイラク戦
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 【WC 予選イラク戦】を劣悪映像ながら少し見れた。左ウィングに入った清武がやっぱりいいなと思う。仕掛けの決断が早くて気持ちいい。ぱっと中を見て即アクションを起こす。クロスの質が素晴らしい。24 分、弧を描いて中に切れ込みながら香川に渡し絶妙な位置に走り込みで折り返しをもらい打ったのは、豪戦とこの試合を併せて最も創造的な崩しだった。

 清武はドリブルもうまく決断の早さが効いていて、がっと大きく方向を変え一気にコースに入っていくので相手の大きなリアクションを呼び、敵のファウルやギャップを招きやすい。完成はまだ先だろうが、見るたびに自分も周りも動かせるいい選手だと思う。

 香川はウィングではチャンスを浪費するばかりなので本職のトップ下に期待したのだが、全体の動きとピッチコンディションが悪くてちょっと参考外という感じであった。しかしやはりうまいので技術でアタックを交わしボールをキープでき、技術で周りを生かせる。「俺は点取り屋」などと自己規定し PK ボックス内に入ってばかりいず、ウィングにいても味方にシュートを打たせる工夫をしてほしいと思う。



 清武はなぜか早めに下げられ(コンフェデに向けての温存か?)、その他は特に見所なし。……しかしこのあとの日程はさらにきついのに、なおサブ勢を使わないザック監督(ため息)。ここを憲剛、清武、乾ら全員サブ組で戦ってマイナスなことが、なにか1つでもあるだろうか(たとえイラクに負けてもオーストラリアは自力で2位を取れる)。たとえ噛み合わずより苦戦しても、サブ勢のモチベーションを上げ貴重な経験と戦術学習が得られるではないか。

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 清武を見ていたら懐かしくなって、中田のビデオをまた探してしまう。全盛期の中田はやっぱほんとすごい。俺はメッシやイエニスタを見てもよくあんなハンドボールみたいに点が取れるなと曲芸的な驚きは感じるが、全盛期の中田ヒデを見るときのようなスポーツの躍動の根源的喜びは感じない。他に似てるプレイヤーも思いつかないが、カカーの柳に風の止められなさが似てるかもしれない。

 本田はぶつかっても揺るがず進む体幹の強さが武器だが、体調が万全でもこのアジリティとバランスはない。中田はぶつかりに来る敵の動きを予測して受け身を取り、合気道のようなタイミングで相手を弾き返している (2'00 からの数プレイ)。アジリティ(※)と思考の速さですべての動きが敵の予測の裏を取るか、予測させないプレイになっているところが素晴らしい。

 香川・清武ら日本攻撃陣にやってほしいのはこうして思考の速さを追求しアジリティを使って敵を欺くことで、中田のようにドリブルで敵を引きつけ味方にスペースを与え敵陣を切り裂いてほしい。まあ中田も日本代表じゃペルージャみたいな切り裂きカウンターはそうそうできなかったのだけれども。
 (※)このアジリティが中期からなくなってしまったのが中田の謎なのだが、

「本田△はあと少しアジリティが欲しいんだよなあ。あれはヒデと同じような、筋肉つけすぎのせいなのかなあ(ケット・シー氏)」

というコメントをツイッターで発見した。

「カズもイタリアに行った当時、筋肉つけたためにスピード落ちました。それがためにW杯に行けなかった訳です。トレーニングを変えて、その付けた筋肉が完全に落ちたのは、2003年頃だったそうです(いたう氏)」

 中田の当たりの強さはペルージャ時代から驚異的だが、セリエのあまりの当たりのきつさに体重をつけることで対応してしまった部分があるのかもしれない。


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 「あまちゃん」春子のビンタに怒るアキ。アキは赤ん坊みたいにぬぼーっと登場して、大丈夫かと思っていたらどんどん世界への反応がよくなってきて、言葉遣いと態度がオーバーシュートしてきたぞと思ったらあの涙のまなざしで完全に個人として完成した気がする。すごいな。あそこでやってることのすべてが、役者能年さんを急激に育てているみたい。

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■13/06/15(土) □ 沈鬱のブラジル戦
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【GK】川島永嗣
【DF】内田篤人 吉田麻也 今野泰幸 長友佑都
【MF】長谷部誠 遠藤保仁 本田圭佑
【FW】清武博嗣 岡崎慎司 香川真司

 【コンフェデ・ブラジル戦】やった清武が出る。するとトップは本田? 岡崎? ドキドキ。カナダの TV は「日本はあなどれない」と過去のタイトル、WC での戦績を紹介している。実際「過去4回中3回のアジアカップを制覇」と紹介されると、この実績はすごいなあと実感。看板倒れにならぬよう戦いたい。

 ◇

 【前半】ところが開始早々ネイマールが柏戦同様何もないところから点を取ってしまった。どうしろちゅーねんという得点。いやしかしまあいう事故は仕方がない、次いこう次。トップは岡崎と本田が並んでいる感じ。本田の動きは1週間前より良化している。

 香川がシザーズでタックルを交わす素晴らしいドリブルで持ち上がり(初めて見た運ぶドリブル!)、右サイドで受けた清武がためてループで守備陣の頭越しに逆サイドへ送り、走り込んだ本田が打つ。枠を外れたが素晴らしい速攻だった。攻撃の遅い日本代表で、こういう相手に戻りながら守らせるコンビネーションを見たいと思っていたのだ。よしよし、こうしてトライしていけば点は取れるぞ。ブラジルが持つと歓声がすごいから身がすくむ。頑張れ。

 日本は無理なプレスはせずブロックを作りクレバーに戦えているが、マイボールになるとわっとプレスされる。それを交わせるのは日本もなかなかなものなのだが、やっとこ前に持ちだす(あるいはファウルを受けてリスタートする)頃にはブラジルは余裕で待ち構えており、崩しようがないという展開でゲームが落ち着いてしまった。ブラジルMF陣はそんなにプレスに走ってるようにも見えないのに目の前にいるので、攻撃に上がった選手が戻らずうまくすっと寄せてるんだろう。これを交わしながらどんどん前に運べなければ、このレベルではチャンスを作れないわけだ。頑張れ。

 清武もケアされてるようでドリブルでは進めず、攻め手がだんだんなくなってくる。クロスの質は相変わらずいいけれど、中に1人しかいないのではそうそうミートするもんではない。もう少し攻撃で遠藤がなんとかできないかな。ボランチより前の選手はマークがきついのである(あとから録画で見返すと遠藤の淡白なパスミスが序盤から多く、イラク戦の疲れがあった様子)。

 というわけで攻めあぐねて前半は終わる。しかしブラジルにも攻めさせていないのだから悪くはない。ブラジルに対しブーイングが起きている。このブラジルは実際、これまで日本がやった中では最弱だろう。攻め切る力は今日の日本にはないが、守るだけだったら最少失点でいけそうな程度の圧力に見える。

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 【後半】きれいな1-2-3コンビネーションで長友が抜け出すがクロスの精度が悪い。長友はいつも裏取りはできるが左足のクロスに威力がないので、さほどの脅威となっていない。長谷部がドリブルで突っ込むが止められる。なんでそこで攻撃陣は連動しないんだ、パスかシュートのコースを作れよ。なにをぼーっと見てるんだ。―――うわ、何もないところからまた決められた。シュート力がある連中にはかなわん。あんなシュートは CL だってそうそう決まらないので、あの一瞬にシューターに与えられる圧力が足りないんだろうなあ。仕方がない仕方がない、勉強だ頑張ろう。

 清武のグラウンダークロス、DF に抑え込まれ岡崎が流し込めず。惜しい。ここで清武→前田。なぜ代えてしまうのかわからないが、清武には本田・香川とは違うアイデアとクロスがあり効いていた。いつもの日本スタメンは本田と香川の1-2ばかりで攻めるアイデアに乏しいが、清武が第3の決断メーカーとなることでよくなったと思う。

 10 分、香川→前田のシュート。正面。悪くない悪くない。この試合まだ誰も決定的なことはできていないが、香川は俺がこれまで見た中で一番いい。ボールを持つと相手が脚を差し込み奪えないよう地を這うような低い姿勢で懐深くドリブルし、無駄なことをせず早めにつないでいる。こういうプレイをしてくれると、初めて彼に日本代表 MF としての信頼を感じる。交代で入った前田はすごいプレスをかけている。

 しかし本田が疲れた、憲剛おねがいします監督! それとドリブラー枠で乾を! このまま行っても何も起こらない。さっき長谷部が仕掛けていったように誰かがドリブルでチャレンジし、それをトリガーに全体が連動しなければ相手の守備ブロックは永久に崩れないだろう。しかし何もしないザッケローニ。ザックはジーコ化が激しい。疲れた主力を使い続け、フレッシュなサブがフィットし続けず経験が積めないのである。

 77 分、遠藤→細貝。直後に本田がパスミス、本田ももう無理だってばザック。中盤があまりに劣勢なので内田が司令塔になってきた。これは岡田監督時代によく見た。内田がいいのは、他の選手が余裕ないときでも表情が柔らかで、格上を相手にしても実力が出るところだな。

 87 分、本田→乾。遅い。遅すぎて実験にもならない。でも乾はやはり前進力があり、直後に半突破からシュート。香川・乾が近距離で細かいドリブルとパスを交換し崩そうとする。この左サイドトップのキープ力を生かしたミニマルサッカーは可能性を感じさせてくれる。そこからもう一発カウンターを喰らいゲームセット。



 まあ仕方がない。この試合はコンディションも悪かった。この結果を資料として、残り2試合で可能なことを考えてほしい、ザッケローニさん。とにかく攻めのバリエーションを増やしてほしい。本田と香川の即興コンビネーション+αじゃ単調で豪戦でも点は取れなかったわけで、選手たちがピッチ上で見つけられないゴール図をザックが示してほしい。今日マークの緩かった長谷部が突っ込んだり、内田がキープして起点となったり、まだまだ鉱脈は掘れるはず。

 それとサブ使わない采配はいい加減かんべんしてもらいたいが、これはもうそういう人なのだろうなあ。やれやれ。

2013/06/19

【コンフェデ】イタリー戦前・有効なことを全員で

ブラジル戦をもう一度見ちゃったのだが、中3日と移動と時差で最後は皆の脚が止まるくらいの状態だったのだとわかっていて見ると、そーんなに悲観することもないような気もしてきた。コンディションが上がり本田、香川(これまで見くびっていたがやはりいい選手!)、清武の閃きに全体が連動すれば、美しいゴールが見れそうな気がしてきた。

 清武は本田、香川と並ぶ仕掛け実行者であり、しかも決断が早くボールをズバッと大きく動かすところに2人と違った味がある。

 みんな個の力を1年で上げるとか中学生とプロの差だったとか観念的なこと言ってないで、どう連動しイタリーから点を取るか考えてくれ。プロスポーツ選手が観念的になりがちなのはわからんでもないが、観念はたいていよくない方向にリキが入っちゃうことになるような気がする。できないことは今は置いといて、できることで最も有効なことをやるんだ。ブラジル戦の香川はそういうプレイをしてた(いつものように可能性の低いシュートに強引に持ち込むのではなく、ボールを絶対に取られないよう集中して少しでもブラジルゴールに近づこうとしていた)ので見直した。内田もそうだよね。

  できないことは今は置いといて、できることで最も有効なことをシンプルに全員でやるんだ。そうすればどんなチームにだってトラブルを与える力がある。

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【翌朝】
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 チームは見事にマインドゲームに打ち克って、できることで最も有効なことをシンプルに全員でやり、イタリーをあと一歩まで追い詰めてくれました。香川と岡崎はこれまでと別人かと思った。香川はガチャガチャ複雑なことをせず技術力のすべてをボールキープとここぞのシュートに使い、岡崎は「俺はイタリー相手にこんなことできちゃうのかよ!」とすさまじい突破力を見せていた。できることをやるのみという心で解き放たれていた。すばらしい。

 しかし強敵を相手に90分間凡ミスせずに守るというのは、同じ敵から点を取るのとほとんど同等に難しいことらしいと学ぶ日々ですね、日本のぼくら。はあ……。

2013/06/17

日記「泣くな、はらちゃん(最終回)」

「偉大なるカナダの旅(バンクーバー島)」「【豪戦】日本代表の遅い攻撃」「 コードを拾うムスメ 」「Aiko「花火」の歌詞解釈」

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■13/06/04(日) □ 偉大なるカナダの旅(バンクーバー島)
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干潮時は幻想的な風景

鏡のキャメロン湖

渓流釣り師が泣いて喜びそうなクリーク

リトルクオリカムフォールズ

このような曲がりくねりの滝の連続。
登山道マークがついた対岸の崖がまた
すごい景観。
金曜午後から久しぶりのバンクーバーアイランド、遠浅ビーチのパークスヴィルで2泊旅行。海を見ながらコーヒーとクロワッサンをいただく。うまい。

 観光は名所マーケットであるクームスを抜けた山間の方へ森と湖を見に行く。愛車 Aerio がエンジン絶好調で久々のワインディングが気持ちいい。

 BC 最古級らしい森はまあカナダならどこでも似たようなものだが、鏡のようなキャメロン湖はこれぞカナダという素晴らしい景色だった。その湖畔でMが作ってきたサンドイッチを食っていると最高で(うちの奥さんは火を使わない料理は超うまい)、この自然あふれる島で夕べのようにレストランに行く必要なんてないよなと思う。空腹とこの自然があればなにを食ってもうまいのだ。なのになんでわざわざうまいかどうか見当もつかぬレストランに行くんですか。昨夜の晩飯なんて1時間待たされ出てきたのは冷凍イカリングだぜ。ひどかったぜ。

 続いてキャメロン湖下流のリトルクオリカムフォールズ(little qualcum falls)へ。滝っつってもまあ無名なところだから水がザーくらいなもんだろと谷を降りていき驚いた。キャメロン湖から吹き出した白い濁流が、岩をかち割りガガガと曲がりくねって渓谷を駆け抜けていく。滝というよりも小さな瀑布である。よくこれほど見事な地形部分を水が抜けてきてくれたもんで、小さいながら自然の奇跡としか言いようがない。

 遊歩道がまたよくできており、流れに沿ってぐるりとフェンスが設置され、身を乗り出して瀬を覗きながら橋を渡り、切り立った岩島のような対岸まで行くことができる面白い地形散策となっている。3D のジオラマ内を移動するようなワクワク感がある。滝壺からしぶきがガンガン舞ってくる。こりゃすごい。小さいがこれまで俺が見た滝で一番すごい。これに勝つにはそれこそナイアガラその他の巨大瀑布に行くしかない、素晴らしい渓谷公園だった。キャメロン湖とこの滝には、カナダに来て見た自然で一番感動したかもしれない。デカイとか高いとか広くなくても人は景色に感動するのね。

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 夜はキャンプファイヤを囲みギターで歌おうとなったのだが、年齢層が高いのでいくらビートルズをやっても誰も乗って来ない。ニールセダカとボールアンカをリクエストされた。知らんて(笑)。

 萌はこれがキャンプファイヤでのギターデビューだったのだが、カナダの最新ヒット「スタンパ」を歌とともに披露してこれはさすがにウケていた。それと萌が養老院を訪問したときに覚えていった「マイボニー」「二人で自転車を(?)」その他の懐メロをまだ覚えていたので弾かせると、やはりこれがすごいウケた。日本でいったらデュークエイセス、美空ひばりあたりの年代ソングだろうか。

 しかし萌のレパートリーが尽きるとあとはもう、なにをやっても盛り上がらない。おじさんおばさんたちは俺が 50 年代ソングのリクエストに応えられないもので、古い歌を Youtube でさっさと見つけてスマホに合わせ歌っていた。もうギターじゃ勝てない時代です。日本でもカナダでもやっぱり、ビートルズ登場以前と以後では本当に時代が違うんだなあと実感する夜であった。

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 【Sun】クームズにもう一度寄って全日程終了。いい旅行でした。フェリーに乗って海を渡りながら、カナダはでかいなあすごいなあ、日本全体でも BC 州より小さいんじゃないかなと萌に言い続けた。

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■13/06/04(火) □ 【豪戦】日本代表の遅い攻撃
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 【WC 最終予選・ホーム豪戦】午前3時起床、お茶を入れて観戦に入る。豪が意外やプレスせず引いて守っており、日本は余裕を持ってプレイする、思ったよりも淡々とした展開。11 分、目にも留まらぬトラップ&ターンから香川のスルー、惜しくも岡崎に通らず。マン U の試合でも一度これを見たが、香川のこのトラップ・反転・スルーまでの速さはたしかにすごい。ボールを一瞬にさばき前進を始める一歩目の速さは中田の全盛期を思い起こさせる。

 18 分、本田・岡崎がコンビネーションで PK エリアに入り込み、こぼれ球を香川が打ち止められる。この豪 GK シュバルツアーはほんとにうまい。日本はドリブルで突っかけていく選手がいないので、豪は人数をかけてスペースを埋めシュートコースを切っていけば、これはシュバルツアーが 90 分守り切れてしまうな。香川・岡崎は今したように自分は潰れる覚悟で突っ込み、守備ブロックを崩して後につないでほしい。豪のカウンターを日本守備陣は抑えているが、常に1対1となっており破られたらそこで終わりのぎりぎりの攻防をやっている。もしミスが出たらたちまち点を取られるわけである。

 37 分香川勝負に行った! 1人抜き2人めにコーナーに逃げられたが悪くない、どんどんそれをやってくれ。香川のドリブルはうまいとは思わないが、しかしあれをトライし磨かなくてはマン U でだって試合に出れんだろう。

 43 分、岡崎がカニ移動からシュート、弱い。岡崎は縦にいく力が自分にないのを自覚してるようで、横移動しながらコースが見えたら即打つというのを何度もトライしている。しかしああいう無理な体勢のショットは体重が乗らず、打っても弱すぎる。敢闘精神はわかるが効果は薄いだろう。

 日本人には脚が短く軽いがゆえにキックが弱いという大きな弱点があるわけだが、憲剛や清武は助走の方向を工夫することで体重を乗せ強いシュートを打っている。岡崎は FW なので助走を取る時間とスペースがより限定されるわけだが、しかし強いシュートが打てなくては次の WC も「強豪には通用しないので本番はサブ」ということになってしまう。頑張ってくれ。

 ハーフタイム。本田のキープ力は効いているが、当たりもスピードも控えめにプレイしており、まだ復調途上なことが感じられる。怪我のリスクを押して出るほどの働きでもないし、そもそも相手がプレスしてこないので細身の憲剛でもここは十分以上に戦える。あと左右をドリブルできる清武、乾にしたほうが破壊力は当然上がるだろう。つまり後半 AMF 3人を全部交代し攻め込んでくれたら興奮するなー。お願いします。

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 【後半】 0分、のっけから香川の巧みなターン、ターン、シュートはブロック。これは典型的香川でブルガリア戦でもやっていたが、うまいから取られはしないが、結局その場でくるくる回ってるだけで敵 DF を引き剥がせず、シュートコースが作れない。来たボールの勢いを使いファーストタッチですぱっと動かしドカンと打てたらメッシになれるんだが。彼が独力で仕掛けて打ったシュートはほとんど、GK ではなく DF の脚が止めていると思う。

 3分、香川・本田の1-2がカット、4分本田が走り込み香川がスルーを狙うも余裕でカット。豪はボールが網にかかってくるのを待っていればいいわけで、こんな単純な攻撃で崩せるわけがない。本田はこの試合フィジカルにも思考にもスピードがない。

 8分、香川が珍しく縦に走りクロス、本田が打てず。惜しい。11 分、香川・本田が今度は工夫のある曲線的な1-2で崩し、惜しくも打てず。これはよかった。豪の足が止まり、本田・香川のアイデアが豪を振り回すようになってきた。香川自身も抜き切れないまでも勝負するようになっている。いいぞ。

 30 分、足の止まった豪が引きこもり日本が FK やミドルにトライする。もうアイデアも尽きた、乾、清武、憲剛を入れてくれ。

 34 分、ザックは攻撃カードを入れず長友を上げてきた。即突破&シュート、惜しい。長友の攻撃力はもちろん有効だが、乾、清武がいるのになんで使わないんだ―――と思っていると 35 分、相手 MF オアーに左を突破され、上がったクロスを川島が目測ミス。川島はここ最近3点くらいミスしてるんじゃないかな。そろそろセカンド GK にもチャンスを与えるべきだろう。

 やっとザックが交代カードを切るがもう手遅れ、と思ったら最後 PK に助けられドローで試合終了。結果は助かったけれども、ザックの采配にフラストレーションを感じる試合だった。現時点で最強の相手に対し引き分けでもいい試合なんだから、ベスト布陣がなんとかしてくれるのを待つだけじゃなくて、あらゆる策を講じて先取点を取りに行く采配をしてほしかったな。

 ◇

 カナダ戦、ヨルダン戦、オーストラリア戦を見て、やはり香川に最大の問題を感じる。というか香川に点を取らせようというチーム戦術に限界を感じる。香川が素晴らしいトラップ反転ができるのはわかったが、それ以外のプレイは何度見ても普通のうまい選手としか感じられない。一歩目は速いがそこから敵を抜く走力はないし、ドリブルの緩急や方向転換で大型 DF を振り回すこともない。ボールをコントロール下に置く技術は高いがボールを動かす距離やフェイント幅は小さく、何度フェイクを入れ切り返しても DF に対応されてしまう。つまり1対1で勝てる場面がほとんどない。これはアタッカーとしては厳しいだろう。

 スポナビのリンクで偶然見つけたのだが、「香川は1トップ下ならば世界の超一流だけれども、サイドアタッカーとしては……」というブログ記事がある(「戦術的なサッカーの見方」)。サイドアタッカーとしての弱点についてはまったく同感。

香川がスタメンから落とされる日
「香川は加速性能に欠け、フェイントのバリエーションも少なく、クロスの精度に難がある。サイドを突破してクロスというプレーならば、仙台の太田やFC東京の石川のほうがレベルが上だ。

カットインは苦手ではないが、中を切って縦へ誘導すれば問題ないということが相手にバレているので、そもそも切り込ませてもらえない。アジア予選でも、サイドに追い込まれて相手のSBに何度も完封されてしまっている。」

本田と香川の微妙な関係
「ドリブルの際の香川はあまりフェイントを使わず、スピードにモノをいわせて抜いていくタイプだ。とはいえ特別速いわけではないので、ブンデスやプレミアの鈍足長身CBならスコスケと抜けても、機動力のあるSBが相手だとなかなか抜けない。残念だが香川のサイドアタッカーとしての突破力は、アジアですら通用しているとは言い難い。」


 前半 18 分に岡崎がつぶれながら流した球を香川がうまく打ったが、香川はああして味方が潰れた時に飛び込んできてボールをスパっとかっさらいゴールに流し込むのが職人的にうまい選手であり、U-23、ドルトムント、マン U、代表と彼の試合を何度見てもそれ以上のことをやってくれない。

 香川自身が PK ボックスで自分で点を取ろうとせず、技術を生かして敵を引きつけ岡崎に送ったようなスルーを出していったほうが有効だろうと思うが、自分がボックス内で仕事をするイメージで常にプレイしているようで、どんどん中に入り FW がボールに触る機会を減らしている。アジアではこれで勝てていたのでザッケローニも同じ戦術を引っ張ってきたのだろうが、敵が強くなり、人数をかけて敵ゴール前に入り込むこと自体ができなくなるこれから、そういうシャドウストライカーを主得点源としてサッカーをやっても勝てんだろうと思うわけである。

 カナダ代表とのフレンドリーマッチの時に思ったが、今の日本代表はカナダよりもやってるサッカーが遅い。遅いサッカーはミスが出ないが、敵守備ブロックも崩せない。相手が待ってる状態で日本みたいな1-2を仕掛けてクリーンにシュートを打てるのは、アジアでも B クラスまでだろう。もっと縦に速く自力で打開する能力のある選手を置いたり、永井や原口を呼んで長駆カウンターにトライしたり、要は相手が守りに戻る前の流動的な状態から崩しに入る攻撃を磨いてほしい。本田のコンディションも万全ではないだろうし、このまま行ったらコンフェデではまるで点が取れないだろう。

 というわけで、WC を1年後に控えた代表チームらしく、見る方には順調に不満がたまってきております(笑)。

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■13/06/06(木) □ コードを拾うムスメ
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 娘と見る【泣くな、はらちゃん⑨】(ネタバレ注意)サッカーの回。やがて現実がはらちゃんと越前さんを打ちのめすだろうとはずっと思っていたけれど、ぺしゃんこにされたはらちゃんを見るのはやはり実に悲しい。「これがこの世界ですか!」と吠えるはらちゃんをワナワナと見つめていた萌も、越前さんがあのコマを描き入れたところでついにポロポロと泣き出した。オープニングに描かれたあの越前さんの顎の線が、ここの伏線になってたんだね。不思議に落ち着いてはらちゃんをなぐさめていた越前さんは、もう胸を決めていたんだな。

 萌は「越前さんは最初からこうすればよかったんだよ」という。しかし入ってしまったら自分じゃ出られないしね。「百合子さんに出してもらえばいいじゃない。―――あ、百合子さんが続きを描いてくれるんじゃない?」。おお、それはいいアイデアかも。しかし。しかしこのハッピーエンドで越前さんが満足してしまっては、やはり困る。はらちゃんのおかげで彼女は、「もともと好きじゃない」世界でも大きな声を出せるようになってきたのに。それは素晴らしかったのに。

 みんなの歌に首を揺らす越前さんの静かな笑顔は、やはりそれくらいしかない居酒屋世界の寂しさを表している。予告に出てきた弟ヒロシの行動に期待だ。
(ネタバレ終わり)


こわいなその髪型
二度目だったが俺もまたじーんと来て、その余韻とともに就寝前の皿洗いをしていると、後ろからギターでAm/Dm/G/C/と「はらちゃん」の悲しい場面ソングが! ウガと崩折れながら振り向くと、ギターを持ちニヤリと笑う萌。その歌はやめてくれ。悲しくて皿が洗えない。

 やめろというと萌はますます力を込め弾きまくる。Bm に転調して悲しみをさらにせり上げる。なんでなんですか! なんでこんなことをするんですか! これがこの世界ですか! さらに Cm に転調して「キーが Cm だと Dm はなに?」と聞いてきた。知らんて(笑)。

 しかしなんでこんなにコードを拾う能力が高いんですか。どんな歌でも即コードを拾い、転調による盛り上げという勘所も掴んだギター娘として成長しております。

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■13/06/08(土) □ Aiko「花火」の歌詞解釈
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【子供日本語勉強会】今日の歌詞解釈お題は Aiko「花火」。

夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
こんなに好きなんです 仕方ないんです
夏の星座にぶらさがって上から花火を見下ろして
涙を落として火を消した

 星座にぶらさがり上から恋の花火を見下ろすというイメージが鮮烈で、歌詞をあらためて読んでみると三角目の意地悪天使にからかわれたり、こぼす涙で花火を消したりしちゃってる。


抽象画解釈ゲーム・ディクシット
子供たちに語彙を教え解釈を述べながら「これはすごくいい詩だね」というと、「すごい。Aiko が年を取り引退したらポエット (詩人) になればいい」という。いやすでに詩人じゃん(笑)。

「でもシンガーでしょ」
「シンガーだって詩人だよ。本を書けば詩人ということじゃないよ」

 実際カナダでヒットしてるポップソングは惚れた腫れた彼氏と別れた悔しいみたいな直截的な歌詞ばかりで、揺れる心をこんな比喩で表すなんて歌はあまりないのかもしれない。

「星座にぶらさがって花火を見てるって、ディクシットの絵みたいだね」と、子供らは想像を巡らせていた。たしかに。美しいイメージ。

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■13/06/09(日) □ 泣くな、はらちゃん(最終回)
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 【泣くな、はらちゃん(終】(ネタバレ注意)

 越前さんを迎えたはらちゃんは今日も同じ歌を歌っている。やはりそれくらいしかやることのない越前マンガ世界の薄さが、やがて二人の恋をしおれさせる予感に満ちている。はらちゃんの「自分と、世界と両想いになってください」という潔い言葉とヒロシの奮闘が、越前さんを元の世界に戻してくれてよかった。ヒロシかっこいい萌は言う。

 しかしそこから神輿のはらちゃん、新婚さん、田中さんとの両想いドライブ(田中おまえはいいヤツだ涙!)と、最後のお別れにどんどん流れが向かっていく。ちょっと待ってくれ、これで最後なの? 越前さんが両想いになろうとしてるこの世界に、はらちゃんは残らないの? どうして?

 「離れていても両想いだから帰ります。越前さんが幸せならば私も幸せです」「それは愛だよ」とストーリーは流れる。―――いや、それは愛とはいっても博愛とかそっちのほうじゃないかな。はらちゃんは存在自体がもとより世界を全部受け入れ愛す博愛そのもので、だから誰もが彼を愛したけれど、彼の越前さんへの想いはその博愛を超えあふれた過剰な恋だ。それを受けて越前さんの想いもあふれてるのに、どうしても噛み合わないことの切なさにみんな泣かされてきたのだ。ちょうど二人が回想していた、「あなた誰なんですか!」「はらちゃんです」「ばかにしないで!」というたまらないシーンから始まってね。

 そうやって強い気持ちでようやく結ばれた恋が、どういう理由であれ博愛に交換されてしまい二人が会えなくなるなら、それは切ないというよりも悲しい。愛が恋の上位互換なのかよロックじゃないぜと安田顕が言いそうだ。飼いならされた豚どものなぐさめかと叫びそうだ。君たちのロマンスがそれで満足できるはずがない。ヘイはらちゃん、がっかりさせないでくれ。君は彼女を見つけたんだ、ナウゴーアンドゲットハー。

 ◇

 というわけで二人の結論には賛同できなかったけれど、ヒロシがマンガを始め、百合子さんもマンガに戻り(内容を見たかった)、越前マンガも明るく開いていき……そしてやはりはらちゃんはまた来てくれたのです。トトロのように傘をさして。再会に輝く二人の顔! すばらしい :-)。


 ヘイはらちゃん、そして越前さん。悲しい歌を両想いに変えてね。はらちゃんは、越前さんを抱き締めチューまたの名をキス。そしてその恋を、素晴らしいものにしてください。

(そしてカナダで放送してくれてありがとう、TVJAPAN)

2013/06/08

日記「カワイイとカッコいい(パフュームときゃりー)」

「20年前のバンドツアー」「カナダ音楽真面目すぎ」「赤毛のアンダイジェスト」

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■13/05/15(水) □ 20年前のバンドツアー
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ハチ's ブルーズバンド in 長野'93 ダイジェスト (2/2)(右端レスポールが俺)
◆アップダウントラック(Hachi)
◆五人のワイフ(Hachi)
◆ヒューマンバイクのモーターウェイ(タイドプール)
◆モジョワーキング(Muddy Waters)

 Facebook にボーカルのハチがやってきたのでうれしくなって、カナダに帰っちゃう女の子(現うちの奥様)を送るためにやったさよならギグ、「ベイビー行かないでくれ長野ツアー」のダイジェストを20年ぶりに作り見せた。ハチは自分が粗かったといっていたが、やっぱり奴がすごい。最初から最後までカッコつけていないのにカッコいい。「ヒューマンバイク」なんか興奮してメーター振り切れてるのに、声と体は流れるようだよ。「ジョーイ」(1/2)で歌った「オルガンもハーモニカもばっちりやってみせる」天才的音楽家ジョーイは、彼自身のことだろう。

 バンドの音とアタマも振り切れてる。これを萌に見せると、「みんな興奮し過ぎ」と笑う。実際ライブハウスのロックバンドなんて見たことがない子供の目には、年甲斐もなくぎゅんぎゅんにドライブする大人の姿がファニーなものに見えるのかもしれない。

 このビデオのカメラを持ってたのはアタマ悪いアメリカの兄ちゃんだったんだけど、そんな彼にもレンズ越しにバンドの熱量がちゃんと届いてる。見知らぬお客さんたちにも言葉がわからぬ人たちにも届いてる。客席でメガネをキラキラ揺らしてたあの子にも、もちろん届いていたのです。

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■13/05/18(土) □ カナダ音楽真面目すぎ
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 カナダのインテリに愛されるフォークシンガー、ブルース・コバーンのことを今朝ラジオが特集していた。彼に東京の雑然さを描いた「Tokyo」という歌がある。騒音、排ガス、コンクリート、暴力マンガ、パチンコ、サラリーマンの立ちション。「おお東京、お前の腕で俺は眠れない/だけどいつか恋しく思うだろう」という感じ。

 東京に行ってそんな陳腐なイメージを歌われても、ありきたりで面白くはないというのが俺の感想だったのだが、今そういったら「わかってないわね!」と奥様に叱咤されてしまった。「その都会においての寄る辺なさを歌ってるんじゃない!」――そうか、すいませんすいません。



 まあそれでも歌としてはつまらないという感想に変わりはない。どこかの分かってない愚物が作ったこのビデオも東京の通勤列車やばい煙に沈む北京の写真にこの歌を組み合わせたもので、この歌が喚起するイメージはやっぱこうした陳腐な終末的世界なんだよな。この煙の町のキューポラの下にあるクリーニング屋に働くあの子が素敵(「最高の離婚」オノマチ)みたいな想像力はない。このビデオを紹介した日本在住外国人向けの冊子らしい「タイムアウト東京」の記事も、「東京を“崩壊の象徴”のようにして陳腐な歌詞で歌っている」と、俺と同様の感想。

◆世界のソングライターたちを魅了した“東京の魅力”とは(タイムアウト東京) Byジョン・ウィルクス 

 カナダのミュージシャンの問題はコバーンに代表されるように、インテリでマジメすぎ音も整いすぎていて、つまりちっともロケンロールじゃないことである。環境問題会議でチーム戦をすれば日本のロッカーたちに圧勝すると思うが(先鋒キヨシロー・ノックアウト負け、大将坂本龍一・判定負け)、音楽ではそうとも限らないのだ。

 しかしこの「タイムアウト東京」の東京ソング特集記事はすごいな。このトーキョー25曲の解説は全部おもしろかった。和訳も素晴らしい。こんなに音楽に博識でシャープな人が、トーキョーで暮らし書いている。それだけでも東京には力があるよな。バンクーバーの日系雑誌なんてレストランや名所案内のみで、俺は一度も読んだことがないのだから。

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■13/05/19(日) □ カワイイとカッコいい(パフュームときゃりー)
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昨夜SRが泊まっていったのだが、2人は部屋にずっとこもって Perfume ダンスを練習していた。SRは大人びて扱いにくいイメージが俺はあるのだが、話をするとぜんぜん穏やかで話しやすい。Perfume を好きになってくれたなら好感度さらにアップである :-)。

 数時間踊ってた2名は汗だくになって部屋から出てきた。「スプリングオブライフを完璧に伝授した」と誇らしげな萌。部屋を覗くとうわすごい、萌はホワイトボードにびっしり歌詞と振り付けを書き込み教えていた。

Koi wo shiyo oyo (右指し、胸叩き、頭指し)
Spring up, speed up (ヒップ指し、ヒップ指し)


 萌はカナダで習えるヒップホップ/ポップス系のダンスには興味がなく、Perfume のダンスがしたいだけと言っている。それは教えてくれる人はいないから独学でいくしかないな。こうして友だちが一緒にやってくれれば、バンドみたいに楽しいしね。

 ◇

 白人社会に暮らすアジア人キッズは、年頃になると味気ない思いをする。メディアに出てくる人気者にアジア系はゼロで、有名人は環境保護家デイビッド鈴木のような「賢い人」だけなので、彼女らが学校でいい点を取るとアホな子に「あなたはアジア人だからね勉強できて当然よね」なんて言われる。

 萌がパフューム草の根運動をする背景には、この悔しさがいくぶんあるかもしれない。自分のバックグラウンドにある文化のカッコいいところが世界に知られてほしいという気持ち。だから俺たちはパフュームが曲も英語詞も単調な「Spending All My Time」のようなハズレを出したり(※)、ドラえもんの歌などをやられるとああ時間がないのにと肩が落ちる思いがする。サッカー同様、あの身体能力のピークは短いだろうに。
(※)当人たちもこの曲は音も歌詞も抵抗あったとのこと。中田ヤスタカという個人の才能頼みじゃいつかは行き詰まるよな。:Perfume「Spending all my time」の英語詞/日本語詞を巡る、Perfumeの「ブレない」ヴィジョンの有り方について

 「カンナムスタイル」は「アジア人にもひょうきんなヤツはいる」という好印象を欧米に与える効果はあったので、パフュームでカッコいい方面にも認識を伸ばしてほしいものである。「カワイイ」なんて必要とされてないと思う。

 ◇

 とか考えていたらちょうどNHKで《きゃりーぱみゅぱみゅセンセーション》という番組が。「いやいや何言ってるんですか世界はカワイイを求めてますって」という認識で日本のコンテンツ産業はきゃりーを推しているようだけど、彼女のようなカラフルアイコンを楽しんでくれる外国人は、元もとゲームやアニメ経由で受容体が広い例外的な人たちなんじゃないかな。

 NYのライブを見たお客さんは「クレイジーで最高!」って言っていた。クレイジー'n キュートだね。こういう広受容体の人たちが増えてくれたらそれはまあ喜ばしいけど、普通はうちの娘みたいに「いかにも日本って感じー」とスルーされるだけだ。Puffy が 2000 年頃北米でブレイクしかけたんだが、アニメとなり「カワイイ」方向で少量消費されブームは終わってしまった。きゃりーが届くのもその程度だろうと思う。

 しかしパフュームのダンスと音のカッコよさは娘やその友達のように、おたく気質がないカナダ一般女子に直球で届くのだ。カワイイよりもカッコいいほうが貫通力が高いのである。カワイイじゃ壁は破れない。憧れを受けねばアイドルにはなれない。たった3つの命を捨てて、生まれ変わった不死身の体。パフュームがやらねば誰がやる

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■13/05/24(金) □ 赤毛のアンダイジェスト
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 MP3 プレイヤーに入れといた名曲あがた森魚「いとしの第六惑星」が車の中で流れる。行ったこともない駅名が並んだだけのこの歌詞が、どうして胸を打つのだろう。

熊本 南熊本 水前寺 龍田口
三里木 原水 肥後大津
瀬田 立野駅 のりかえ 長陽
阿蘇下田 あとは 夜峰の岳


 寅さん映画のどれを見ても、知らない町の風景になんだか懐かしい気持ちがするように、「熊本 南熊本 水前寺 龍田口」という駅名が見たことのない豊肥本線の風景を思い浮かばせるのかな。その風景を眺めている旅人オレの姿も見えているような気がする。

 ◇

 夏にカナダ東部に行くのだが、住んだことのあるハリファックスは懐かしいけれど、「プリンスエドワード島、シャーロットタウン赤毛のアン、ニューブランズウィックのりかえ、あとはセントジョ~ンズ」と名前を口にしても、知識がなくて熊本に対するような旅情が湧いてこない。

 これではいかんとアニメ「赤毛のアン」の総集編を借りてきて萌と見たのだが、90 分じゃ「とにかく大量に喋り夢見がちですぐフリークアウトするも芯が強い。つまりアンはうちのMさんである」としか分からなかった。1つ1つのエピソードは愛らしいが、それをいくつか見たくらいでははるばる日本からファンが PEI を訪れたくなるほどの話とは思えない。これはおそらく朝ドラや大河ドラマのように、長い時間をかけこうしたエピソードが積み重なって初めて愛情を掻き立てられる種類の物語なんだろう。しかし本を読んだりアニメ全編を見るほどのモチベーションは、このアニメからでは得られないのであった。