2016/12/31

【MLS】礼節よりも熱情を~工藤の退団について

(2017/01/03)「FW 海外移籍の難しさ」から改題、追記

●移籍は致し方なし
●Jストライカー海外挑戦の難しさ
●地元サッカーメディアの不毛さ


(工藤移籍? ノオオオオオオオ!)
(注:エイダンさんは、柏レイソルで歌われてたエキセントリッククドーという応援歌を BC プレイススタジアムで歌ってくれてた、サポーター界の生き仏
(ゴメン! 工藤の移籍はいいんだけど、あなたには申し訳ないよ、ホワイトキャップス随一の工藤サポ・エイダンさん! 愛してる!)

●移籍は致し方なし



工藤なんの前触れもなくバンクーバー退団(笑)。まあ彼が MLS への挑戦を1年でやめたことを残念に思う気持ちは自分にもあるけども、バンクーバーの試合を1年間見て工藤が生きるパスサッカーへの希望は抱けなかったので、正直安堵している。貢献できなかったことを工藤が悔やみ来年こそと頑張っても、実りは薄いだろうと考えていた。

詳細は省くが(詳細すぎる呪われた記事はこちら→【ホワイトキャップス/2016 年シーズン大敗のまとめ】)、もともとホワイトキャップスにはつないで崩すチームではなくロングボールを出しそこに殺到するアメフトみたいな戦術のチームで、工藤の長所であるワンタッチで敵の意表をつきゴールするというひらめきを活かせる場面は今シーズンまったくなかったし、監督の方針上来年もそうそうないだろうということです。

(C)Vancouver Southsiders
この縦ポンサッカーに多様性を加えるためにロボ監督は工藤を取ったのかもしれない。前半期の工藤は出れば必ずワンタッチでシンプルにつなぎ、ボールをキープしリズムを作ろうとしていた。これはチームの変革として効いていた。しかし成果が出始めさあここからというタイミングで工藤は大怪我をし、チームは気候がきつくなる夏に絶不調となりロングボール戦術に戻ってしまう。

シーズン終盤絶不調から立ち直りバンクーバーがたどり着いたのは、ハードな全員プレスで相手を圧殺し、こぼれ球を叩き込むのがこのチームのベストだという結論だった。そんな中で工藤が他のフィジカルな選手より有効にやれることは特にないわけ。移籍で正解だというのは、チームを追う皆が思うことなのである。

●Jストライカー海外挑戦の難しさ


だから移籍はいいのだが、戦術が合わず能力を見せられぬ工藤に対し「MLS では通用しない」という声があったことは悔しい。Jを下に見られたような気がして本当に悔しい。工藤も眠れぬほど悔しいことだろう。MLS チームは大陸クラブ杯でメキシコを破れないが、工藤レイソルはクラブW杯でメキシコを破ってるんだぞと言いたくなる。今年なんかJ王者が決勝に進みレアルに2-4だぞ、Jリーグの優秀さをお前らわかってんのか。と、言っても工藤の弁護にはならぬ世迷い言を言いたくなってしまう。

Jリーグを見たことがない人たちから見れば、点を取れない理由は工藤の能力不足に見えるわけである。これが高名な欧州ストライカーなら、点が取れないのは彼の能力を活かすチャンスを作れないチーム戦術に問題があるのではと熟考してもらえたかもしれない。工藤のJ実績はなにも評価されない。わが国からの FW の海外移籍とはかくも難しいものだということだろう。

もし難しいことをせず普通につなぐ実直 MF 小林大悟がまだバンクーバーにいたら、工藤がほしいところにボールをくれただろう。簡単にプレイしボールを無駄にせぬ彼のような選手がホワイトキャップスには足りない。その大悟を切ったのもロボ監督だしな。

しかしまあホワイトキャップスのサポは、工藤のことを悪く言ったりなどせぬいい人ばかりです。「おまえ工藤がいなくなってもうちを応援してくれるんだろうな!」とビールの香りをプンプンさせてるみたいなツイートが届きました。見ます見ます(笑)。

(ドモアリガト、マサト。うちでは花開かなかったが偉大なタレントよ。がんばれ。トモサカタはクドーがいなくなってもホワイトキャップスを日本に伝えてくれるんだよな、そうだよな!)

今年の実績的に無理だとはわかっていたが、できることなら MLS の別チームが工藤を取ってはくれまいかと願っていた。ホワイトキャップスは MLS で最もフィジカルな、プレスの強度と縦へのスピードと肉体的接触の激しさに依存したチームで、リーグ最多クラスのファウル数とカード数となっている。そしてアシスト数はリーグ最少(リーグ最高64平均45に対し25)。つまりリーグで最も非創造的なサッカーをやっていた。他のどのチームもキャップスよりは相手ゴール付近のつなぎが良いので、どこに移籍しても今年よりは足元にいいボールをもらえ仕事をできただろう。しかし繰り返しになるが、今年の成績で取ってくれるところは MLS にはなかったということです。

シーズン終盤は出番の少なさからか工藤はキレがなかったが、サンフレッチェ広島で調子を取り戻し活躍することだろう。俺はこれでホワイトキャップスの試合を見るモチベーションは正直下がるが、工藤のことを心配しないで気楽に見れるのはありがたいです。工藤になにかニュースがあると俺に英語問い合わせツイートが届く、彼のスポークスマンみたいな状況だったので(笑)。



【追記】


●地元サッカーメディアの不毛さ



移籍発表翌日、ご恩は忘れません、これからもホワイトキャップスとMLSを応援しますと工藤が英語メッセージを出した。

終わったことだからもういいんだけど工藤、こういうことをするよりもね、ほしいボールがこないフラストレーションをシーズン中の試合で示してくれてたほうが、ファンに強い印象を残せたと思うよ。



これを見て感じるところがあったので、シーズン中抱いていた工藤とホワイトキャップス周辺メディアに関するモヤモヤを書いておく。

ファンが選んだホワイトキャップスの今季 MVP は左 SB のベテラン・ハーヴェイである。彼はモラレスと共に最も頻繁に、ハーフラインあたりから ST がポストすらできない無駄なアーリークロスを送り続けた選手である。ハーヴェイの高評価は、工藤や俺がイメージするつなぐサッカーとバンクーバーのサッカーに大きな隔たりがあったことのひとつの象徴だ。

工藤はシーズン後の Number インタビューで「DF よりも一歩前に出て触って決める、点に合わせるという部分は練習から研ぎ澄ますことができた」と語っていたが、後期は特に工藤が DF の鼻先で触れる速いボールなんて来やしなかった。ハーヴェイたちサイドの選手がボックス横までえぐって横から速いクロスを入れてくれたら、工藤はニアに入る巧さを活かせたはずだが(これは彼の明確なタレントである)、彼らにはそうした力がなかった。ロボ監督のシステムもサイド高くへ人を送るには弱かった。サブには強力なクロスを送れる左サイド選手が2人いて(デヨングとリーヴァイス)その起用を俺は願ったのだが、ハーヴェイの先発は揺るがず使われなかった。おそらくクロスの品質なんてロボ監督にもハーヴェイを愛す観客にも、優先順位の高いことではないのだろう。

工藤という選手はとにかく最初から最後まで、何をやれる選手なのかまったくわかってもらえていなかった。強靭なフィジカルや華麗な個人技ではなくチームとの連携で美しく点を取る FW というものが、チームにもファンにもメディアにもイメージできなかったのだと思う。そういうJリーグ的なサッカーをホワイトキャップスがやったことがないんだろう。

このコミュニケーション不足は工藤のせいだけではない。バンクーバーのサッカーメディアはシーズン中、工藤に一度もインタビューしなかった。ホワイトキャップス周辺のメディアは英語ができない選手には基本話を聞かないので、中南米アジア選手の気持ちはメディアに載らずファンに伝わらず、チームの雰囲気に影響を与えられない。番記者は工藤とより俺とツイッターを通じて交わした言葉のほうが多いだろう。シーズン中三度ほどあった工藤インタビューはすべて日本のメディアで、俺がそれを英語要約しツイートすると多くのファンから反応があった。しかし日本メディアはホワイトキャップスの試合を見てないので、戦術的に突っ込んだ話は出てこないというもどかしさがあった。


ホワイトキャップス周辺のメディアは戦術分析面で怠慢で、チーム戦術を批評しよくする方向に働いていない。TV解説もユーロ杯などでは前カナダ代表キャプテンが戦術を解説してくれるのだが、MLS 担当は選手の出来不出来しか語れないスポーツアナがやっている。

怪我から復帰直後オーランド戦の工藤好調ぶりに「工藤はベリー、ベリーグッド」「チームが待ち望んだエースが見つかったかもしれない」と書いてたメディアが、その後のチーム絶不調時に何もできない工藤はただ「無力だった」と評するだけで、なぜオーランド戦のようにプレイできないのかを訊ねなかったし分析もしなかった。彼らは怠慢というか、戦術がわからないのだろう。


(7月のオーランド戦。この頃はチームの調子がまだよく、工藤も今季ベストの働きぶりだった。1点目につながるクサビ縦パスを工藤に送った控えCMジェイコブソンとの相性がよかったのだと思う。他のMFはあのタイミングで浮き球を送るわけ )

最も影響力ある地元紙記者は「練習場では最高のストライカーなのに」と工藤を揶揄していた。じゃあ練習と試合で何が違うのか教えてくれよ。練習では速いクロスが来てるの? 足元にスルーパスが出てるの? それとも試合と同じようなフラフラとしたゆるいクロスを、工藤がマジカルに決めてるの? それをファンに伝えどん底のチームを活性化するのが君ら地元メディアの役目だろうと腹が立った。こういう環境でストライカーが結果を出すのは難しいとしみじみ思った。


工藤「ボックスで待っていてもボールは来ないん
で、下がってゲームメイクしたりドリブルに
チャレンジしようと思う」
工藤は「ボックス内でフィニッシュしてもらいたい」とロボ監督にずっといわれていたそうだが、「ボックス内にいてもボールが来ないんで」と仕事のやりにくさを秋にほのめかした。これを俺が英訳ツイートしサポーターグループの大物がまとめて RT してくれた(←)ので関係者はみな読んだと思うのだが、この意見を監督にぶつけ「ストライカーがフィニッシュできるようなボールがボックスに届いているでしょうか」と戦術論を持ちかけられるジャーナリストは、バンクーバーにはいなかったのである。そこは MLS 加入6年の歴史の浅さゆえかもしれない。

俺はそんなバンクーバーメディアに代わり工藤に直接コンタクトして、彼の考えをファンに伝えたかった。日系センターのサイン会で出待ちをして話をしようかと粘ったが、同行の娘にもう帰ろうよと却下された(笑)。まあ俺のような素人が口をはさむと、たとえ本音を引き出しても炎上を起こし選手の墓穴を掘ることになりかねんとは、大人なのでさすがにわかってました。英語ツイッターでのロボ戦術批判も、その辺を慮ってほどほどにしていたし。

しかしまあメディアなんかいずれにせよ当てにはならぬ。工藤は試合中に、観客の目の前で、自分が何をしたいのか身振り手振りでチームに訴えるべきだった。もし練習場で来てたようなクオリティのボールが試合では来なかったのなら(そうなんでしょ?)、観客の前で味方にプレッシャーを与えその場で結果を出すべきだったのだ。

終わったことだからもういいんだけど工藤。外国人助っ人ストライカーというのは、自分がベストを尽くすだけじゃダメだったんだよきっと。その慎ましさやナイスさとは別のものが必要だったんだ。礼節よりも熱情だ。

技術レベルとか懸命さとかそうことじゃなく別なところで工藤はチャンスを掴めなかったのではないかと、彼の日本的な思いやりに満ちた英語メッセージを見て俺は思ったのです。さよなら工藤壮人。元気でやってくれ。ホワイトキャップス界隈で話題になるほどの大活躍を待っているよ。◆




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