2019/07/07

俺の内なるジョンも号泣 - ポールマッカートニー・コンサート(全曲感想つき)

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■19/07/03(水) □ ポールマッカートニーの予習
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昨日急遽知人に、「アナタ、ポールを見ずに死ぬのですか。バンクーバーBCプレイスの売れ残りチケット超安いんですよ」と諭された。

「いや私ジョン派なので、ポール行こかなーなんて人生で考えたことないんですが…」と答えると「喝! そんなこと言ってる場合ですか!」と叱られた。そうか…そうか…そうですよね! となりました。奥様は行かないとのことで、娘と二人分を入手。

で娘の予習用にYoutubeでポールの重要曲プレイリストを作ったのだが、なんとシャッフルして聴いている。やめろw ポップ音楽は年代順重要なんだよ。アビーロードのメドレーもシャッフルされている。やめてくれw

娘のために作ったプレイリスト(太字はやった曲)。

Venus and Mars & Rock Show
Jet
Band On The Run
Listen To What The Man Said
Silly Love Songs
'Let 'Em In'
Maybe I’m Amazed
Live And Let Die
Mull of Kintyre
My Love
With A Little Luck
Ebony And Ivory
Pipe Of Peace
Here Today
(最新アルバム)I Don’t Know (Lyric Video)
(最新アルバム)'Come On To Me'
You Never Give Me Your Money (メドレー)
Back In The U.S.S.R.
Blackbird
Here, There And Everywhere
For No One
Maxwell's Silver Hammer


プレイリストを聴いた娘はポールマッカートニーすごくいいねと言う。

「でしょ。ジョンはバカにしてたけどね、ポールはシリー(おバカ)なラブソングばかり書くと」
「――And what's wrong with that?」

間髪入れず彼女は「シリーラブソング」の歌詞を返す。しびれた。

♪Some people wanna fill the world with silly love songs
僕みたいに世の中をシリーなラブソングで一杯にしたいやつもいる
And what's wrong with that?
そのどこが悪いのさ
I'd like to know
知りたいもんだよ
'Cause here I go again
だって僕はもう1曲いくからね

I love you
I love you

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■19/07/06(土) □ 緊張のポールコンサート
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今日は夜ポールマッカートニーのコンサートなので、睡眠をよく取り栄養のあるものを食べ、体調を整えている。緊張している(笑)。子供の頃からビートルズはNo.1バンドだが、人生でビートルを見に行く日が来るとは思わなかった。俺が妙に緊張しているので奥様がおかしがって、「バーンド・オン・ザ・ラン」と歌い踊っている。はは :-)。



50年前バンクーバーでビートルズを見たというご婦人と話をしたことがある。「まさしく狂乱だったわよ、暴動になりかけコンサートが中断されて」。うわあ、歴史秘話ヒストリア!


6:30 pm 開演1時間半前。席は悪くない! ストーンズとかに較べると非常にシンブルなステージセットだ。うー手が震える。客入れBGMにポール自身やビートルズの曲を使っている。始まる前に客の声が枯れちゃうよ! 今日やらない曲もバレちゃうよやめろw

  ◇  ◇  ◇


帰宅。いやー、泣きすぎて頭が痛い。コンサート見てこんなに泣いたことがない。こんなでした俺。

とにかくこれ以上ビートルズソングで泣かされたら音楽鑑賞にならん死んでしまうという状態で、ところどころでソロ曲をやってくれて助かった(笑)。しかしバンド・オン・ザ・ランあたりからはソロ曲も神の域に到達しまた号泣。

ストーンズを見ても泣きはしなかったんで何が違うんだろうと思うんだけど、ストーンズは高校から大学の頃に自分で選んだクールなものとして愛しており、ビートルズはそれ以前のナイーブな中学生時代まで直結してるからかもしれない。我慢できんのです。

それともう一つ。俺はポールの声に合わせ、ジョンのパートでハモっているんだと。俺はここでポールとバンドやってるんだと気がついて。うっうっと泣きながら娘の耳元でそう叫んでました。「This is a dream come true!」




ライブ中思ったことをいちいち書いてるとキリがないんだけど、ともあれムスメが撮ったこのビデオを見てください。50年前のビートルズ北米センセーションとまったく同じことが、私のムスメに起きていたという。アンコントローラブルな叫び(笑)。腹が痛い。


【曲目について】

曲は意外なウィングス曲が多かった。2曲めが「ジュニアーズファーム」。「All My Loving」(俺号泣)をはさんで「Letting Go(from ヴィーナス・アンド・マース)」とやたらシブい。こんなの俺のビートル先生テラくらいの熱愛者しか求めてないだろと思ったのだが、俺の隣の同年代のレディはちゃんと知ってて盛り上がっていた。やっぱり日本人が思うよりもウィングスは北米で強かったんだなあと思った。

そして横綱「バンド・オン・ザ・ラン」はもう、すごかった!70年代、新規に音楽アンテナを立てたばかりの子供だった自分がラジオを聞いて想像したウィングスの青い空が、あのアコースティックのコードカッティングで眼前に広がっていった。

あとポールマッカートニーがえらい喋るんで驚いた。こんなにコンサートで喋る人だったのか。軽妙に喋って会場を笑わせては、「君がもし今ここにいたら、なんと言うだろうな」と皮肉屋だったジョンを笑って思い返す曲「Here Today」をやってこちらをオイオイ泣かせるんだから、まるでさだまさしだったですよ。

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ビートルズの曲は昨夜も書いたように、俺の心のピュアな部分にじゅわっときてうっうっと泣いてたんだけど、一方で俺の心の中にはやっぱりシニカルなジョンレノンもいて(まさに「Here Today」)、ポールのバンドの演奏や選曲をじっと見ているわけ。

その俺の中のジョンが、(ああやっぱり俺ジョンがいないとな…)と思う曲もあった。1曲めの「ハードデイズナイト」からしてそう。ポールがジョンのパートを歌い、ポールの高域ハモりを裏方がやってるんで、炸裂しないんだよね。あの二人とジョージのコーラスがいかに可燃物の宝物だったかと改めて思った。

あと楽器がやっぱり非ビートルズ的でウィングス的なわけ。ギターの音量がデカイし弾くフレーズがアメリカ的にドライでソリッドで、ふにゃふにゃなジョージとは全然違うこの音がポールの好みなのかーとずっと思っていた。ウィングスの曲は当然それで合うわけだけど、音がでかすぎ肝心のボーカルが埋もれ気味だったし、ポールのベースも聞こえない。俺の趣味ではやっぱりギターをジョージ型にしたくなる。




しかしサプライズはジョンとジョージへのトリビュートだった。ジョンの思い出を語ってからやった「ミスター・カイト」は、これはジョンの意地悪な声だから面白い曲なんでポールの甘い声には合わないよねと思ったんだけど、ジョージの話をしてからの「サムシング」には負けた。ウクレレで全然違うリズムアレンジで歌い始め、後からバンドが入ってくるわけ。ギタリストもここはちゃんと敬意を表してジョージのソロを完コピする。俺の内なるジョンもハンカチを口に押し当ててううううと泣いてました。(カメラを片手に持ちもう片手は涙を拭い、画面が震えている)

ポールがリードなんで2番でハモるのは裏方の人なんだけど、聴いてる俺たちの頭の中にポールのあの高音の美しいハモリが空耳のように聞こえてくる。もうたまらなかった。そういう、俺の予測を超えるビートルズの魔法に満ちたコンサートでした。

友人デザイナーがトーキョーのビートルズ展の
ために作ったトートバッグが、海を渡って
バンクーバーのポールコンサートに。
ポールが「サンキュー!」というたびに、「ノー、俺があんたにサンキューだポール!」と感極まって返してるやつがいた。わかる。

ここにいる俺たちが皆この人生を、あんたにサンキューだよポール。ビートルズがなかったら俺たちがどうなっていたかなんて想像もできない。この娘だって俺たち夫婦に生まれていたかどうか、God Only Knows。◆

















■おまけ【全曲感想】

01  A Hard Day's Night

音が悪くて何の曲が始まったかわからなかった。楽器の音がデカくてポールの声がよく聞こえないのだ。ベースも聞こえない。ギターの音が強すぎる。ビーチボーイズはマイク・ラブの声が聞こえた瞬間電撃が走ったのだが、それがないオープニングだった。とにかくえらいことが始まったなあという感じ。

02  Junior's Farm

こんなシブいのやるのかとイントロでしびれた。初期のポールで好きな曲。良い。

03  All My Loving

ここで音響に対する不満をエモーションが超え号泣。中学の頃の自室の風景が蘇ってくる。たまらない。

04  Letting Go

(Feel like letting goという曲)。俺にとってはウィングスの中古盤を買ってた吉祥寺時代に数度聴いたきりの地味なアルバム曲が、ポールの中では過去のレパートリーになってないのだなという驚き。しかも隣の女性が大声で歌っていて、やっぱり日本人が思うよりもウィングスは北米で強かったんだなあと思った。

05  Who Cares

この曲あたりで精神が落ち着く。ビートルズが一気に続いていたらヤバかったw イジメられる君を、ぼくがケアしてるよと言って始まる。

06  Got to Get You Into My Life

うぎゃああと叫ぶ。これはまさかの選曲だった。こういうライブで演奏されなかったビートルズ中・後期の曲は、やっぱりやってもらうと耳福としか言いようがない。ホーンセクションがいい仕事をしていて爽快としか言いようがない。

07  Come On To Me
08  Let Me Roll It  (with  Foxy Lady  coda)

Come On~ は事前学習の Egyptian Station で気に入った曲。俺はこのバンドのギターは音がデカくフレーズがアメリカンすぎて気に入らなかったのだが(俺の中のジョン・レノンは、もっとジョージみたいなヘナヘナギターでバンドを組めよポールと言っていた)、「Let Me Roll It」のいかにもウィングスというギターリフはやはりこのギタリストの持ち味に合っていた。

09  I've Got a Feeling

こういう心から超好きなビートルズ後期のロックンロールをやってくれてるのにわりと平静だったのは、ああこの曲をやってもジョンはいないんだよなと始まった瞬間思ってしまったからか。Cメロを歌うギタリストの声がわりとジョンに似てるのが、かえって憎たらしかったw

10  Let 'Em In

初めてのピアノ曲。「I've Got a Feeling」でポールの歌がきつそうだったのに対し、こういう静かな曲は素晴らしいなと思った。ポールのピアノがいい。音響的にベースはほぼ聞こえなかったし彼のギターは普通なので、ここで初めてポールの楽器の音で感動した。

11  My Valentine
12  Nineteen Hundred and Eighty-Five
13  Maybe I'm Amazed

こんな曲あったなというウィングス佳曲が続き、名曲「Maybe I'm Amazed」。これが(同行の)ノリコさんが一番聴きたいといってた曲だよとイントロで娘に叫ぶ。高いところはさすがに声が出ていなかったが、間奏前のウーウウウーという声は今も絶品。

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14  I've Just Seen a Face
15  In Spite of All the Danger

アコースティックパート。ビートルズでもこんな地味曲を選ぶのかと、ちょっともったいない感じが(他会場ではここで We Can Work It Out だったらしい、それは悔しい)。In Spite~ は海賊版で聴いたことがある。ウォオオオという会場合唱が入って、これは中抜きとしてとてもいい感じ。

16  From Me To You
17  Dance Tonight (マンドリン)
18  Love Me Do
19  Blackbird

From Me To You もジョンとポールのコーラスではないので、体が弾けるほどのことはなかった。Love Me Do はハーモニカのおじさんが見事であった。

20  Here Today

ジョンが亡くなったときポールが書いた、「君がもし今ここにいたら、なんと言うだろうな」と皮肉屋だったジョンをポールが笑って思い返す曲。ここでまた号泣。なんでこういう曲を泣かずに歌えるのかと思ったw

21  Queenie Eye

「ビートルズをやるとみんなビデオを撮るので会場がセルフォンで明るくなる。それ以外はまるでブラックホールだ」と自虐ギャグ。

22  Lady Madonna

うぎゃああああとなるw

23  Eleanor Rigby

うぎゃああああとなるw

24  Fuh You

新アルバムでこれを気に入ってるようだなとはわかったが、事前学習していても曲を記憶してなかった。翌日Youtubeで聴いてもこの曲やったかなという程度の印象しか残らないのは事実。

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25  Being for the Benefit of Mr. Kite!

ここからがコンサートのクライマックス。ジョンとこの曲を作った思い出を語ってからMr. Kite。意外性はあるが、ポールの甘い声でこれを歌われてもやはり、あの曲のクレイジーなシニカルさは響いてこない。考えてみれば「All My Loving」はポールのボーカル曲で、つまり本物だ一発感動着火し、「A Hard Day's Night」その他はジョンがリードの曲だからしなかったわけである。ポールの声が鳴り響くキーではないし、ジョンとジョージの声が入ってないのでハーモニーがビートルズっぽくないのだ。まあ仕方ないのだけども。

26  Something

ジョージとウクレレの思い出を語ってからの「サムシング」。思いもよらぬテンポアレンジで始まり、ギターソロからジョージのあのフレーズも含め、誰もが知るレコードバージョンそのものが再現されるという仕掛けに号泣。ポールがリードなので、2番の高いコーラスでポールの声が入らない。そこを俺は脳内で補って泣いた。

27  Ob-La-Di, Ob-La-Da

大盛り上がりw

28  Band on the Run

号泣w これはビートルズ同様、70年代新規に音楽アンテナを立てたばかりの子供だった自分がキャッチしていたからだと思う。あのアコースティックのコードに、ラジオを聞いて想像したウィングスの青い空が広がっていた。

29  Back in the U.S.S.R.

俺はポールの声に合わせ、ジョンのパートでハモっているんだと。俺はここでポールとバンドやってるんだと気がついて。うっうっと泣きながら娘の耳元でそう叫んでいた。「This is a dream come true!」。この2曲がコンサートの白眉であった。

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30  Let It Be

もう涙も枯れ果てて、このあたりは平静に楽しむ。ギターソロがジョージのフレーズを踏襲せず凡庸なアドリブを弾いていて、やっぱこいつは好きになれんと思ったw

31  Live and Let Die

萌絶叫w 花火の炎と音がスゴイw

32  Hey Jude

俺はジョンのコーラスパートを自分で歌っていた。最後のナナナでポールが男子! 女子! とやり、やっぱりさだまさしか Aiko だなと笑ったw

【アンコール】
33 Birthday

他会場では「Yesterday」や「I Saw Her Standing There」もやったそう。そういえばイエスタデイやらなかったな。残念。いい演奏だったが。

34 Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)

サージェント・ペパーズも本編をやってくれたら、ステージで演奏されなかったビートルズの再現に感動したと思うが、リプライズをやられても微妙であったw

35 Helter Skelter

しかし最後に来てこんな曲で声がバリバリに出ていて、スタジアムを揺るがしすごかった。前半は声が出てないと言うか聞こえないとフラストレーションを感じたのだが、後半はそんなことはなかった。尻上がりに上がってきたのだろうか。

36 Golden Slumbers / Carry That Weight / The End

これは最後にさすがに電撃。あまりの興奮にお茶をこぼしたゴメン娘w 「ボーイ・ユゴナ・キャリザッウェイト!」と隣のおばさんと手を振る。大団円であった。

◇   ◇   ◇

コンサート全般に、今のポールの声ではもう奇跡が起きない曲が多く選ばれてる割に、You won't see me、ペニーレインのような無理せず歌え素晴らしい音になりそうな曲が選ばれてなかったなと思う。せっかく歌うならもっといい曲あるじゃんと誰もが思うだろう。しかしそれでもバリバリに感動したんだけどね。


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