2012/02/28

日記「カナダの中二病」

『鈴と小鳥とそれから私、みんなちがってみんないい(金子みすゞ)』

「こういうゼルダだったらよかった」「俺史上最低の操作性なゼルダ」「Wii ゼルダ・旅のはじまり」
(ゲームのネタバレっぽい部分は白字になってます)

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■12/02/20(月) □ こういうゼルダだったらよかった
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Wii を買ったはいいがスポーツとアクションの2本だけじゃすぐに飽きるので、中古ゲームソフトを探しに行く。カナダは元々中古ゲームの流通量が日本よりはるかに少ない上に、PS3/Xbox に比べ Wii の品揃えはどこもまったく悪い。中古屋にゲームを流すのはゲーマーで、ゲーマーは Wii より PS3/Xbox 派なんだろう。

中古はこれといったものがなかったが、『ゼルダ・トワイライトプリンセス』が新品 20 ドルで売っていた。安い。家に帰り調べると当然絶賛の大ベストセラーだが、ビデオを見るとグラフィックが PS3/Xbox の1世代前、すなわち PS2/N64 という感じで食指が動かない(元々 GC のゲームだったとのこと)。Zelda 最新作でもグラフィックは大差ないようだ。Wii で素晴らしい風景や街を楽しめる RPG ってないのかな。―――あ、このゼルダは Wii リモコンを振ると敵を斬れるんだ。これは DS ゼルダのペン斬り同様気持ちよさそう。やってみたくなってきた。20 ドルでグラフィックを除けば現代最高レベルのアドベンチャーを体験できるんだもんなあ。よし。


なんとなく光量と物の輪郭感が足りないトアル村

萌もこの案に盛り上がったので決定し買ってきたのだが、序盤はすべてが土色のモノトーンの村におり、ビジュアルがパッとしない。物と物の境目(輪郭)がよくわからない 3D モデリングで、地形や建物の特徴が非常に把握しにくい。美しい田舎村の風景だというのはわかるが、美しい風景をあまり才のない画家が写生したという感じで、俺も萌もこれを特にきれいとは感じず、ただ黙々と情報を集めている。

リンクの容貌もなんというか、「トゥーン・リンク(DS 版ゼルダのマンガ的リンクが英語でこう呼ばれている)のほうがかわいいよね」と萌が言うとおりで、アメコミみたいである。要はどこを取っても俺が好きな絵じゃないということで、PS1 のグラフィック性能でも美しい・かわいいと感じられたドラクエ・FF のアニメ的な絵柄に対し、このゼルダは「シュレック」等のアメリカ CG アニメ的なんだよな。でこのアートワークで映画みたいな精細感や人物の魅力を出すには、Wii では解像度も足りないのだろう。RPG/アドベンチャーをやるのは美しい風景を見て「キレイ!」と感じたいからでもあるので、この単調なアートワークには、覚悟はしていたがやはり失望を感じる。

Ordon Village - Legend of Zelda: Twilight Princessすごい。ゴッホみたいなトアル村 :-)! (c) Mariokapapo

今検索して見つけたのだが、こういうトアル村だったらよかった(笑)。ファンが作ったコンピュータ画像モデルらしい。スゴイ。どうやって作ったのだろう。これは上記画面の2つの橋を反対側から見たところである。この写真を見てやっと地形が完璧に分かった(笑)。ここにいれば明るさに目が痛くなるかもしれないが、絵として素晴らしい。これくらい画期的な風景ならば、ここに行ってこの景色を見たいと思うじゃないですか。アドベンチャーマインドが掻き立てられるじゃないですか。そう思わせる絵を任天堂には作ってほしかった。そういうゼルダが見たかった。





この絵柄のしっくりこなさは覚悟していたから我慢するにせよ、この操作性の悪さはなんなのか。不満を挙げれば長大なリストになってしまうが、最大の問題は操作中この写真のようにリンクの向きが勝手に変えられてしまうことだ。これじゃ進行方向が見えないので操作しようがなく、そのたびにいちいち Z ボタンを押して視点を戻さなければならない。こんなことをする理由がサッパリわからない。ゲーム上のメリットもリアリティもまったくないのである。操作レバーの方向と見えている視界が常時食い違い、それを Z ボタンで修正して進んでいくしかないんだから、目隠しされ回転するスイカ割りみたいなものでありすぐに方向を見失う。

この視点撹乱と茫洋とした風景が合わさって、最初の小さな村ですら地形を把握できない。村中を延々と探索しているのに地形や家の位置がまったく頭に入らないのだ。村に家が何軒あるかもまだわからない。歩き回っているうちに「あ、この家はまだチェックしてないわ」と気がつく感じ。俺がこれまでやった 3D アドベンチャーで一番視界と操作性が悪いわこれは。

そんなわけでどうにも盛り上がりようがなく、俺も萌も最初のセーブポイントで「ふむ」といってやめてしまった。まだ旅が始まらない。

まあこの洋ゲー風の絵は Youtube で見ていて、それでもゲームが面白ければ我慢できると思って買ったわけだから、この序盤を乗り越え冒険の旅が始まったら盛り上がることを期待しよう。

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■12/02/23(木) □ 俺史上最低の操作性なゼルダ
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【ゼルダ・最初の敵がいる森終了】ランタンを持ちオイルの残量を気にしつつ洞窟を抜け、楽しくなってきた。挫折への分かれ道、峠は越えたなと思う。時間が許せば延々と冒険していたい気持ちになっている。絵、キャラ、操作性とどこを取っても好みではない。しかし面白い。今頃になってレビューを読むと、『トワイライトプリンセス』は英語圏では各所で FF12 を抑え 2006 年度ゲームオブザイヤーを取っている。ゲームのボリュームもすごいらしい。この先いろいろと期待できるんだろう。

しかし操作性は本当に心底悪い。道具や武器の非直感的な操作法をいちいち覚えなければならない。道具は選択して使う、武器は「ボタンでジャンプし振って斬る」でいいではないか。なんでボタンをいくつも押させるんだよ。Wii なのに。複雑な操作体系ゆえにコマンド暴発しまくりで、刀を出そうとして釣り竿を出したり、針に蜂の子をつけたり、あげくはその蜂の子をグビグビと飲んでしまったりしている。アタマが痛いよ。

ゼルダというシリーズは DS でもペン操作以外は一切許可しないという不便な仕様にするなど、こうして操作系にいつも独善的なクセがある。ダンジョン内でセーブしてもロードするとダンジョンの外から始まるという、ゲーム的になんの理由もつけられない理不尽さも固持されている。ユーザーには何のメリットもなく、いまどき他のゲームメーカーは絶対入れない不便を任天堂ゼルダ節ですと押し付けてくる。任天堂でもこんな遊びにくいゲームはゼルダだけだと思う。

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敵が出てくるとリンクの体の向きをプレイヤーがコントロールできないのはますます大きなハンデで、こんな馬鹿システムを作った任天堂を呪いながらの戦いとなる。なにしろ敵を常時見ながら戦えないのだ。戦闘中敵が視界からはずれたら、ぐるーりと回って敵がいるであろう方向にリンクの体を向かせ、Z ボタンで視界を修正してやっと敵が見え攻撃を再開できる(※)。やったことがない人はこんな馬鹿操作体系だとは信じられないだろう。

(※)ゲーム開始1週間目にして、『レバー下チョン押しで真後ろを向き Z を押す』という複合技で後ろを向けると発見(説明書には書いてない)。瞬時にナチュラルにはできないが、練習してできるようになれば移動と戦いがかなり楽になりそう。

敵がそばにいるのにそんな冷静に操作などしてられないので、結局パニック状態でただグリグリとすべてのレバーとボタンを押しまくる。するとダメ押しとして A ボタン単独押しで刀を収納してしまい(※)、気づかずに素手をブンブンして「なぜだ! なぜ斬れないんだ!」とアワを食うことになっている。コントじゃないんだから。

(※)キャラの状態と他ボタンのオンオフによってやることが変わるというのはなんの機械であっても最悪の操作系だろう。「ボタンを押しながらペダルを踏むと加速で、ペダル単独ではブレーキ」という車がもしあったらどうなるかってな話である。

敵を視界に捕捉しにくいことの救済措置として Z ボタンで敵補足+斬りなんてコマンドがあるんだろうが、そんな人工的なアシスト操作は「Wii リモコンでナチュラルに斬れて気持ちいい」フィーリングに真っ向から反するではないか。矛盾もいいところである。Z のつもりで C を押しちゃうと視点固定&操作不能になるし、ボタンを離しても視点固定は解除されず、もう一度押さなければならない。4日もやって何一つ直感で思い通りに動かない。これほど不自由なゲームが他にあるだろうか。まったくイライラする。萌もイライラしている。

独特の操作性に当初苦しんだゲームといえば「トゥームレイダース」があったが、あれはララの見てる方向とプレイヤーの視界が異なり要修正なんて不合理なことはなかったし、視界操作もボタンをホールドして上方/左右をチェックし、離して即行動と快適でナチュラルだった。背後に敵がきたらボタン1つで瞬時に向きあえ存分に戦えた。このゼルダの操作系は慣れても快適にはならない。俺がこれまでやった 3D ゲームで最低の操作性である。現役ゲーム機の新品で買えるゲームでこんな操作性フラストレーションを感じるとは予想外であった。

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■12/02/24(金) □ カナダの中二病
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萌の部屋を掃除していたらまたメモが見つかった。今度は前のイノセントなものの逆で、「あなたが私の背後で悪口を言っていても気にしないわ。私は私だから、words can't bring me down」みたいなハードなもの。家族やリアルな友達に関することじゃないのはすぐにわかり、これは萌のイメージするロック歌詞だなと察しをつける。あれはホントのことじゃないでしょと一応あとで確認してみると、やはり彼女の作った歌詞だった。

これを見て思うのは、子供の中にはこうしてどこかで拾ってきた強い力を持ったクリシェ(陳腐な言葉)がたくさん入っているということだ。ポップソングというものはだいたい日本でもカナダでも、ほとんどクリシェでできあがっている。子供がそれを飲み込んでいくのは当たり前のことでいいも悪いもないが、子供らしさを嫌い、こうしたクリシェにアイデンティティを求め喋ったり書いたりするのが、日本で言うところの「中二病」だろう。萌は中1で日本の中2よりまだ2歳若いのだが、もうそうなっている。子供っぽさが軽視されるカナダの学校や TV 環境下では発動が早い。

休日放っておくと萌は、延々とコンピュータでストーリーをタイプする。いつも俺がそれを止めているのだが、それはこうしたクリシェを書き連ねてもライティングスタイルがこなれ国語の点がよくなるだけで、創造性においてあまり意味がないと思うからである。ストーリーをタイプするのはそれくらいで絵を描いてくれ、歌を歌ってくれ、ピアノを弾いてくれ、スポーツやゲームをやってくれと言っている。手で描く線は他人のクリシェなど入らない彼女のものだから。歌は真似が簡単なので気をつけないとクリシェになってしまうが、楽器で苦労して出す音はオリジナルだ。ゲームで楽しさや感動に震えるチャイルドライクな心も、みずみずしい個人のものである。鈴と小鳥とそれから私、みんなちがってみんないい(金子みすゞ)。そういう子供ライフを送ってほしいのだ。




ハチの巣みたいだ 東京
働きバチの行列だ
私はまだやわらかな幼虫
甘い甘い夢を見てる

夢が夢でなくなる東京
おいしそうな花のミツ
私はまだまだ世間知らず
甘い匂いに負けそう
(チャットモンチー「東京ハチミツオーケストラ」)

萌はこんな詩を書くようなティーンエイジャーになってほしいなと俺は願っている。カナダで育てば誰だってクリシェを積み重ねてアヴリル・ラヴィーンにはなれる。しかし「何と言われようと私は私」よりも「みんなちがってみんないい」のほうが美しいではないか。萌は日本人でもあるのだから、こんな謙虚さと開かれた目と抑えきれず広がっていく夢を持って大人に向かっていくことだってできるはず。君はまだやわらかな幼虫、甘い甘い夢を見てくれ。

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■12/02/25(土) □ Wii ゼルダ・旅のはじまり
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今日は一日萌と活動していた。午前中は Wii スポーツ。午後はMKベイビー訪問、ボードゲームストア&大福もち屋、バースデイプレゼント購入&中古ゲーム屋チェック、そして夜は萌がゼルダを再開したので一緒にやる。一緒に RPG をやるのは FF9 以来3年ぶりだ。「Huh! バカな敵」とつぶやくコメントはカナダ中二病的だが、怖い敵に震え飛び上がり「お父さんお願い!」とコントローラを渡してくる彼女の心持ちは昔と変わりない。ゲームはありがたい。

【ゼルダ・トワイライトプリンセス】村での仕事を終わり町に行くことになり《ネタバレ白字》ワクワク支度している朝、前触れもなくとんでもなく禍々しい敵が村を襲撃し、リンクは怒りに身を震わせ狼になってしまった。その状態で敵に捕らわれ、正体不明の子供を背に牢からの脱出中。俺 RPG 史上指折りの予想外な展開である。

DS ゼルダを2つ続けて中断したのはストーリーがなくダンジョン巡りの繰り返しで飽きたからで(ダンジョン内でセーブしてもまた外から始まるあの任天堂節も脚を引っ張った)、こうしてダークで濃いストーリーが入ってきたのにはいい意味で驚いた。
《白字終わり》これはいいぞ。土と木ではない無機物が画面に初めて表示されて、おお Wii グラフィックスもなかなかすごいなと思った。萌ともどもワクワクしてきました。いよいよ旅のはじまりである。

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