2011/12/21

日記「1学期の通知表」

「レイソル修業あるのみ」「昔の日記読み」「欝なクリスマス準備」「悲しい輪廻」

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■11/12/11(日) □ 1学期の通知表
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萌の中学最初のレポートカードが帰ってきた。俺もMも成績など気にしちゃいないのだが(萌が各科目で自分がやってることを理解していればそれでよい)、成績は思ったよりよかった。

しかし各科目に対する生徒自身のコメント欄があるのだが、ここに萌はなんと、「問題が的外れ(数学)」「教科書のコピーばかりで有意義ではない(科学)」と書いていた。―――うわ。俺とMが宿題を見て家で言ったことそのまんまだ。俺たちが各科目の指導についてどう思ってるか、先生にモロにバレてしまった(汗)。

子供が学校や教師に盲従せずある程度批評的になるのはいいのだが、親の思想が安易に感染ってしまうのはそれはそれでよくない。しかもそれを人に伝えられてしまっては超マズイ。ほんと俺もMも冷や汗もので、こういうことは先生に言ってはいけないと萌に諭す。子供の前でしゃべることは、親もほんと気をつけないといけません。



しかし10月くらいまでは萌の宿題が本当に多く終わらなくて、一緒に手伝いながらひいひい言っていたのだが、3者会談で先生に宿題量の相談をした時点からガタっと減った。あれ以降1時間を超えたことがないと思う。これは俺の苦情が効いて宿題の量が減ったわけではなくて、あのとき以降クラス時間中先生が萌の課題進捗に目を配り集中させ、家に持って帰る課題の量が減るよう指導してくれたんだろう。ありがたい。助かった。

こないだクリスマスコンサートのときにFNのお母さんと話したのだが、FNはいまだに2時間かかっているそうで、宿題があるからろくろく親子の時間が取れないと嘆いていた。それは先生と相談したほうがいいですよ、相談すれば子供の負担を減らす方法はきっとなにかありますよと、萌のケースを詳細に教えアドバイスしておいた。しかしFNの担任は宿題が多くて評判の先生だそうで、相談しても無理かもしれないとお母さんは気弱げ。そういう教師のさじ加減で子供の生活が大きく左右されるというのは倫理的に間違ってると俺は思う。お母さんはとにかく担任と協議し、FNのクオリティオブライフが宿題のためにどれほど劣化しているかを訴えるべきだ。

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【坂の上の雲】203高地の攻防、高橋英樹がすごかった。歌舞伎や旅芝居を見る快感を極めた感がある。それにしても戦争。あんな寒いところに行くだけでも嫌なのにそこで戦うなんて地獄の沙汰で、死んで死んで死んで最後は肉弾戦。戦争は本当に無茶苦茶だ。言葉を失うとはこのことだ。

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■11/12/13(火) □ レイソル修業あるのみ
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【クラブW杯:柏・サントス】組織プレイでは柏が大きく上回り、しかし相手のシュートが馬鹿げてるほどすごかったという試合だった。柏がシュートを打つには最後のディテイルの技術がわずかに足りない。しかしわずかだ。何度も何度も攻めていけばわずかな違いが掴めるはず。若い攻撃陣が相手との間合いをどうやって取り、いかに短い時間で正確にやるべきことをするか感じ取れば、シュートは打てるはず―――と期待したのだが、後半出た北嶋と澤も含め、ついに点は取れなかった。
kaizokuhide: 毎日の小テストを一生懸命がんばっている柏レイソルと、試験の前だけポイントを押さえて高得点を取っているサントス。そんな感じがして、非常に腹立たしい。けどこれがサッカー。対応せねば

たしかにそんな感じのゲームだった。取れたのは酒井のヘッドの1点のみ。酒井は欧州のどんなクラブに行ってもやっていけるだろう。

これほどメンタルが鍛えられた柏でも、勝負どころでほんの僅かボール処理を早くしようとしてタッチがブレてしまう。だがそうしないと取られてしまう。修業あるのみだな

バルサもこうして攻めて攻めて、そして点をしっかり取るんだろうな。今まで見たトヨタカップの南米代表より弱かったような気がする。それとも柏が強かったのか。

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■11/12/16(金) □ 昔の日記読み
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補聴器調整で婆様を専門店へ送る。これでかれこれ10回目である。「心ゆくまで調整してもらえるのよ」と婆様は喜ぶが、何度調整しても納得いく音がせんと言ったほうが実情に近いのではないだろうか。

しかも先週と今週はなにか新しい付属品をトライするはずが2回とも不良品で、完全な無駄足となった。「なんだその壊れてますまた来週というのは、ガキの使いじゃないんだぞ」と運転手の俺は怒るのだが、婆様本人は平気。気が長い。補聴器の調整が出る前に天寿をまっとうするかもしれない。

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思い返すことがあって昔の日記を引っ張り出す。大学を出た頃の日記を読むと、センスは今と変わりないけどアタマ悪いなあオレと思う部分が多い。この頃もう少し賢ければ、当時入りたかった世界にも行けただろうな。俺が今ぐらいの知的レベルに達したのはレコードデビューしたバンドで苦労したこの時期だろうと思っていたが、それよりずっと後、もっといろんな奴らとバンドをやりいろんな人と出会った後だったんだなと改めて認識した。

しかし自分の日記というのは面白い。読み始めると面白くて止められず、夜中まで読み続けてしまう。忘れていたことも本当にたくさんあって、胸がドキドキする。烏山・吉祥寺での青春が甦る。

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■11/12/17(土) □ 欝なクリスマス準備
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クリスマスの飾りをするのかと思ったらMが重箱の隅掃除を始め、俺がちゃんとやってなかったと激怒モードに入ってしまった。いややっとけと言っといてくれればちゃんと時間を調整してやっといたのだが......(言い訳)。

クリスマスというのはまったく大変な行事で、大量のプレゼントを考え探し買わなきゃならないし、遠方へは送らなきゃならないし、家事を済ませてないとこうして怒られるし、どの家でクリスマスディナーを食べるとか誰を呼ぶかとかで毎年紛糾するし、初年度からずっと俺は、カナダのクリスマスは大変だという思いしかない。

萌になにかいいプレゼントを買ってやれるときだけはうれしいが、もう iPhone だの PS3 だのといった高価なものしかほしくない年頃なので、今年なんかほんとにプレゼントが思いつかないしな。Mはブーツだとか服を買ってやるそうだが、俺はなにもいい案がない。よわった。

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■11/12/20(火) □ 悲しい輪廻
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用足しとクリスマスショッピング。萌と一緒に久しぶりにペットショップに行ったのだが、ハムスターを触り手にとり喜んでいる。萌はもし可能ならクリスマスプレゼントでペットが一番ほしいわけで、うちはアレルギー持ちの家族がいるので猫は無理としても、限定されたスペースで生活するハムスターなら飼えるんじゃないかと思う。だが、あとでMに聞いてみるとやはりハムスターもアレルギーの原因となるのだそうだ。残念。



7歳くらいのボーイズ2名がペットショップにいて、ハムスターやウサギを叩いたり巣箱を持ってひっくり返したりしていたぶっていた。俺が見かねて「ヘイ何やってんだよ、そんなの嫌がるに決まってるだろ」と小声で叱責するとすぐに逃げていったが、しばらくすると戻ってきて同じことをする。

いったい親はどこにいるのだと見渡すと、小さな気弱そうなおばあちゃんが遠くから口出しせず2人を見守っていた。これを見てなんとなく、ああ親が養育放棄状態の子供らなんじゃないかなと想像してしまった。こういう子供らは自分たちも暴力を受けて育ったのかもしれない。

自分が親となって他の子供やその親と知り合うと、馬鹿は遺伝するとつくづく思う。馬鹿な親は自分の子供の成長度合いなど気づかないので放置し、子供らは言葉を覚えるのも社会規範を学ぶのも普通より遅くなる。そして身につけた言葉やモラルの質自体が劣る。暴力的な親からはこうして暴力的な子供が生まれ、そのまた子へと悲しい輪廻をつないでいくのだろう。嘆息。

2011/12/12

日記「物足りぬクリスマスコンサート」

「オースザンナ」「カーネーションが壮絶」「J リーグの誇り」

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■11/12/03(土) □ オースザンナ
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こないだ見つけたなつかしの久保田麻琴と夕焼け楽団の「オースザンナ」を聞いていて、これはもともとアメリカのカントリーを日本語にした歌なんだよ、日本の子供なら誰でも知ってるんだと萌に説明する。お父さんは高校時代にバンドでコピーしたんだよ。カナダは日本みたいなカチッとした古典音楽教育はしてないので、クラシックや世界民謡の知識は日本の子供より薄いのだが、萌もこの歌はさすがに耳にしたことはあったようだ。

で「あ! ちょっと待って」とクラリネットを持ってきて教本を開き、「わたしゃアラバマからルイジアナへ~」とあのメロディを吹いてくれた。うお! この歌がたまたま萌の教本に載ってたのは驚かないが、萌が初見でいきなりその歌を吹いたのには驚いた。感動。


ヘタ歌サイコー
そういえばこの歌の英語版って俺は1回も聴いたことがないわと Youtube で検索してみると、さまざまなバージョンが見つかり実に楽しかった。バンジョーやギターでズンチャカズンチャカ弾いてるバージョンはまさに俺がイメージする通りの「オースザンナ」だし(↑この歌詞を覚えてない2人組のやつが絶妙w)、高校生がへんてこなアレンジで3声合唱みたいのをやってるのも見つかり、萌と一緒に大笑いしながら次々に見た。

Youtube は音楽鑑賞革命だな。聴きたいものが直ちに見つかる。聴きたかった以上のものが聴けることもありまくる。iPhone や iTune が画期的とは思わないが、情報のシェアを爆発的に拡大した Youtube とツイッターはイノベーションだと思う。

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ともあれ、俺が知ってたのは戦後すぐに出たボニージャックス版らしい。この詞を英詞と比べてみて、訳詞のよさに改めてびっくりした。

I come from Alabama with my Banjo on my knee
I'se gwine to Lou'siana my true lub for to see.
It rain'd all night de day I left, de wedder it was dry;
The sun so hot I froze to def -- Susanna, don't you cry.
Oh! Susanna, do not cry for me;
I come from Alabama, Wid my Banjo on my knee.

私ゃアラバマから ルイジアナへ
バンジョー持って 出掛けたところです
降るかと思えば 日照り続き
旅はつらいけど 泣くのじゃない
おおスザンナ 泣くのじゃない
バンジョー持って 出掛けたところです


これが俺みたいな凡庸な訳者なら、「わたしはアラバマーからバンジョーかかえー/ルイジアナの恋人に会いに行くー」みたいに訳していただろう。なんてセンスがないんだ(笑)。日照りの時は熱く雨のときは冷たいとかの冗長なディテイルを、「旅はつらい」と一句でまとめてしまうところもすごい。津川主一さんという牧師さんが訳したのだそうだ。昔の人はえらいわ。

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■11/12/07(水) □ 物足りぬクリスマスコンサート
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クリスマスコンサートの合唱部
萌の合唱部はクリスマスソングを5曲も歌唱。例によって前列6~7名がマイクを使う合唱なので音程は取りづらいのだが、前回のリメンバランスデイ集会での発表よりかなり出来がよかった。昼の部よりも夜の部ではさらによかった。バンドマンがそうであるように子供らも、モニターが悪く自分の声が聞こえなくても、喉の張り具合で体感的に自分の音階が取れるようになってきたのだろう。元気なクリスマス感が出ていてなかなかよかった。

続いてこっちも萌が所属するビギナーバンド。全員が担当楽器を初めて半年で一応曲を演奏できるんだからなかなかえらいと思う。しかし1年半以上やってるはずの上級生のアドバンスドバンドの方が、この半年バンドと大差ないのがなんというか。一緒に見ていたFNのお母さんは日本で吹奏楽をやってたそうで、「日本の中学の吹奏楽なんか厳しい先生に猛特訓されてめちゃくちゃ厳しいですから、そりゃ比較できませんよ」とのこと。そうですよねえ。

まあカナダじゃ生徒たちもそんなに真剣に楽器に打ち込んでるわけじゃないし、贅沢を言うつもりもないのだが、上級になったらせめて楽器のチューニングくらいきちんと指導してくれたらなあと思う。ビギナーもアドバンストもチューニングが悪すぎて、何の歌を吹いてるのかよく分からないのである。

合唱をマイクで歌わせるのも、実のところ音楽関連の全てを担うこの元バンドマン先生が自分でエレピを弾いてドラムを入れ、得意のポップスっぽくやりたいからそうしてるんだろうと思う。音楽の授業も合唱部もこのバンド形態だから、子供らは普通の合唱らしい二部合唱すら体験することができない。音感学習機会の喪失でもったいないことだ。子供は好きな歌をマイクで歌えるだけで喜ぶからそれでよしとなってるんだろうが、喜ぶからとご飯の代わりにキャンディを与えるようなものだ。

というわけでまあ音楽的な不満を言い出すとキリがないが、想像通りのコンサートだった。想像と違ったのはコンサートが吹奏楽と合唱部だけの発表だったことである。小学校のクリスマスコンサートは全校各クラス全員が歌っていたのに、中学ではどっちにも入ってない子は見てるだけで、みんな歌いたかったんじゃないのかな。ちと気の毒な気がする。

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■11/12/09(金) □ 「カーネーション」が壮絶
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NHK 朝ドラ「カーネーション」が壮絶である。面白く胸を打つシーンばかりだった序盤から、戦争が始まると苦しいことばかりになってしまった。それが戦争なのだと教えてくれる。戦争ノイローゼになってしまった勘助に出しゃばって、近所づき合いの関係を駄目にしてしまった糸子が安岡のおばちゃんに罵倒されるシーンなんて、朝ドラ史上に残る悲しいシーンだったろうと思う。人が死ぬとか別れとか、人の不幸をお手軽ドラマチック要素として使う創作者は、糸子と一緒に叱られて頭をたれるべきである。

今週も旦那の勝さんの出征と浮気疑惑という、これまたつらい話が続いた。勝さんがいい人なのか悪い人なのかわからない、出征を悲しむべきなのか無視すべきなのかわからないとグルグルになっているところに、さらに砂を浴びせる理不尽な戦争翼賛婦人会。糸子の悔しさやりきれなさがビンビン伝わってくる。一緒に叫びたくなる。壮絶。こんな血を吐くようなシーンが延々と続く朝ドラがあったろうか。この「カーネーション」をアジアや中東に発信してほしいなあ。日本の一生懸命さや愛嬌や愚かさが詰まっている。

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■11/12/10(土) □ J リーグの誇り
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【クラブW杯・柏-モンテレイ】序盤柏の DF 陣がちょっとやられすぎな感じ。全体としては意外に落ち着いて持ち味が出てると思うのだが、単純に DF 陣の能力負けか。攻撃では柏がいいところでボールを持てても、前がかりにはならない相手が堅実にプレスをかけてきて狭いところに追い込まれてしまう。レアンドロがマークされ力を出せないところがつらい。レアンドロはイラついている。

しかしチーム全体としては徐々に相手に対処できてきて、ピンチは減ってきた。試合展開としてはもはや五分である。ここからが勝負だというところで前半終了。悪くない。全然国際経験のない柏が、これほど強い相手と初めて当たり、それでもここまでできるのが J リーグの誇りであります。

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後半早々、こぼれ球に追いついた田中がそこで安易に打たず前に弾いてスペースに持ち出し、折り返したところをレアンドロがボレー、ゴール! 完璧! 美しい。田中えらい! レアンドロ素晴らしい! これでレアンドロもイライラがすっかり消えたさわやか顔 (^-^)。

しかしわずか数分後に裏ポンで簡単に振り切られ折り返しスアゾがゴール。なんであれで裏を取られちゃうのか。先制点で気持ちがイケイケになっちゃってたのかな。

田中は思い切りの良さが売りだけど、今日の試合無理っぽいところでは安易に打たないでしなやかな体幹を生かしつないでるのが好感度高い。レアンドロにアシストしたのも、凡庸な FW だったら可能性がないところからシュートを打ってただろうと思う。あそこで前につっかけたから相手 DF は意表を突かれ対応できなかったので、非常に価値が高いプレイだった。こうしてボールを無駄にしないで丁寧にプレイしていれば、いつか彼自身もズドンと行けるはず。

田中だけじゃなくサイドの橋本らも、安易に前に蹴らずつなぐかコーナーを取ろうとしている。相手が格上だと、ボール扱いに自信のない選手は奪われるのができるだけ早く放してしまいたがるが、柏はどの選手もできる限りコントロールしている。ボールを無駄にするなとネルシーニョが指導してるのかもしれない。これだけの、これまで戦ったことがないほどの強敵を相手に柏がちゃんと力を出せているのはそこにある。ボールを無駄にしてないのだ。

酒井のクロスが完璧に田中のヘッドに入るが、強く打とうとして GK 正面に行ってしまった。田中は今オフヘッド練習死ぬほどやるべし。やればやるだけ優秀なストライカーになれる。後半終了、ふー、いい試合だ。

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【延長】レアンドロが前に上がりゲームを決めようとしている。それはいいことなのだが、中盤に残った大谷と栗沢が攻撃にまったく持ち味がないのがつらい。レアンドロが相手ボランチを引き付けているので大谷と栗沢の前方には大きなスペースがあるのだが、2人はドリブルも前へのフィードもミドルシュートもできないらしく、そこで縦への速い攻撃という選択肢がなく停滞してしまう。延長はもうずっとモンテレイが攻める力をなくしており柏ペースだったのだが、柏の中盤にも違いを生むだけの力がなかった。

しかし試合全体での優勢をそのままに、柏は PK 戦でしっかりと勝利。やりました。これだけクオリティの高い相手に、序盤以外はきっちりとゲームをコントロールしての勝利。J の勝利。えらい。おめでとう!

柏ブラジル衆はうれしいだろうな。出稼ぎに行ってるところでちゃんとクオリティの高いことをやってんだぞと親戚に見せられる。今日の試合を見れば、柏の中盤と守備陣が力不足なのは明らかで、南米チャンピオンを完封することは不可能だろうし点を取ることもそうそうできないだろうが、岡田日本(ジーコジャパンではなく)がブラジルと戦うくらいの抵抗は十分期待できると思う。

2011/12/05

日記「日本語の習い方」

「韓国型の成功について」「柏の栄光」

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■11/11/28(月) □ 韓国型の成功について
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昨日「KPOP はアジアの顧客の嗜好を調べ尽くしタレントを教育し戦略通りに成功している」というツイートが流れてきたが、韓国型の成功はまさになんでもそういう成功だから、リスペクトする気になれないんだよなと改めて思った。

カナダにおけるテコンドー道場の流行っぷりとか、韓国人なのに日本料理レストランを開きまくるところとか、なにかにつけマーケティング第一にしか見えないのである。テコンドー道場はトランポリンなどの体操器具を使ったり、子供が憧れる飛び蹴りや板割り(あれは危険だろう)をやらせる総合カンフーアトラクションにしているし、日本料理は「好きなんじゃなくてただ流行るからやってるんでしょ、本物を食べたことないのでは」と思うレベルの日本食モドキを出す。


ホンダにもトヨタにも見えるキア

ヒュンダイ製シビック。けっこう
俺の好みなのが悔しい
カナダで売れまくっている韓国車はトヨタとホンダと BMW とメルセデスのラインを見事に踏襲している。最近は日本製スーパーカー・オロチやマツダ的なオーガニックなラインも取り入れている。恥ずかしげもなくデザインをパクり、日本車がちょっと手を控えてしまうところをより大げさにガバリとえぐった現在の韓国車のデザインが、実はかっこいいことは認めざるをえないが(※)。
(※)ちなみにヒュンダイがかつてのシビックハッチバックそっくりの車を売ってるのなんか、セダンしか作らなくなってしまったホンダが悪いのだと思う。いまだ街中に 20 年落ちのシビックハッチが走ってるのに新車では手に入らないのだから、似たものを作ったもの勝ちだ。

お金もうけ的に見たら韓国式が日本式に連勝中な現在なのかもしれんが、人がお金もうけが上手かどうかなんて俺も俺の妻も俺の子供も興味はないのである。1曲聞いただけでこれはモノが違うとノックアウトされるような歌を作る人を、これはすごいとリスペクトせざるをえないモノなどを、輩出してからそれを自慢してもらいたい。お金もうけが上手なことを韓国民が自慢に思ってないのだったらすいませんだが、「KPOP は~戦略通りに成功している」というのはドヤ顔の自慢話に聞こえる。

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【映画「なくもんか」】なんかこの浮わついたノリってあれかな、例によって宮藤官九郎という人のノリなのかなと調べてみたらやっぱり脚本が彼だった。ふざけるのはもちろんいいんだけど、話や言葉が別に面白いわけではない。

阿部サダヲという人のマンガ的演技も、マンガほど自由な肉体を持っているわけじゃないのでそんなに面白くはない。「大人計画」をめぐる人々ってなんでそんなに人気があるのかなと思いながら、一度も笑わず見終わった。まあ「大人計画」自体の芝居は面白いんだろうけど、芝居小屋から出てきてこうして映画やテレビで大衆を巻き込むような芸ではないんじゃないかと思う、脚本家も役者たちも。

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■11/11/30(水) □ 日本語の習い方
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萌の日本語学校のワークブック(課題帳)が、残念なデキのものに変わってしまった。前年度までのワークブックは、「漢字の英語語義」+「点線をなぞる練習ドリル」という、カナダの日本語キッズにとってかなり実用的なワーク課題構成だったのだが、今年度の「中学生版(※)」はその両方がなくなり、「画数調べ」+「熟語語義調べ」の2本立てになっている。授業では国語辞典を引いて新字の画数を調べ、その字を使った熟語の語義テキストをまるまる書き写すという、実にめんどくさい作業をやらされたと萌は訴える。コピー? マジかよ。
(※)カナダ日本語学校の学年は地域の小中学校とシンクロされており、萌は6年生で中1クラスになっている。

このワークブックおよびテキストコピーという作業はいかがなものかと学校側に問い合わせると、「中学生だから辞書を使って語義を調べ自助学習するのが望ましいからこういう形態にしている」みたいな回答が返ってきた。いや、これじゃ自助学習にならんだろう。たとえば俺が日本語学習者で本屋でドリルを探していたら、このワークブックは買わんよ。作業項目だけが書かれ、学ぶべき情報が何も書かれていないんだから役に立たない。辞書の定義コピーなんて生まれてこの方やったこともない。

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さらに、「日本語と英語は違うので、日本語だけで学習するのが望ましい」とも学校側はいう。日本語でも英語でも仏語でもこうした、母語を排し対象言語漬けにすることが最良の言語学習法だという説は強いが、俺はそれにまったく同意できない。もちろん会話訓練ならばその言葉だけを使うのが一番に決まっているが、言語学習というのはなにも会話訓練だけではないのだ。会話の基礎には理解と記憶が必要で、それには対象言語と母語を併用するのが一番効率よいと、俺は自分の経験から思う。

たとえば萌は「寄付」の語義を、「公の仕事のためにお金や物を~」という辞書文をまるごとコピーしつつも結局「あげること」と覚えていたが、これは理解として正しくはない。ここで donate という言葉を使えば、ただの「あげること」とは質が違うよと、よりインスタントで正確に深く理解できる。子供が持つ知識と知性を使い、短時間で最大の効果が出るのである。あとはこれを忘れないよう応用定着すればいい。

萌と宿題をやり語義を覚えてない部分を俺が説明すると、萌はその言葉の下に英語で語義を書き記す。これは俺がそうしろと言ってるわけではなく、彼女の学ぶ心が自発的にそうさせているのだ。つまりそれが萌にとってナチュラルな学習法なのである。だから萌の場合、「寄付」の語義欄は「きふ-donate/donation」と自分の英語知識を利用し簡単に済ませ、例文作成に力を入れることがこのワークブック8のベストな利用法だろう(というかそれ以外利用価値がない)。

このようにすでに身についた母語という素養をフル活用し、学習対象言語と組み合わせ自分に最良な学習法を構築するのが、最も自然で効率がよい学習法だと俺は経験上も論理上も考える。対象言語だけを使うというのは不自然で非効率で非柔軟だ。授業と宿題で英語の使用を許さぬ萌のフレンチエマージョン(公立フランス語科)すらも、フランス語学習法として別に優れているとは俺は思っていない。時間量的にフランス語学習法として最強なだけである。

例文作成は生産的創造的作業だし、断片知識ではなくさまざまなことを関連づけてパッケージ記憶にする作業でもあるから、楽しいし身につく。今回萌が書いた例文も、多少間違ってはいてもどれも味があってよかった。「日本がじしんあったから、おかねをきふする」と書いたことを、萌はきっと忘れないだろう。

しかしテキストのコピーになど何の意義も感じない。国語辞典を引く面白さや意義は理解できるが、テキストをコピーすることは労務的機械的で非生産的すぎる。そんな《言葉を知ること》よりは、その《言葉を使うこと》の方に時間と労力を充てたほうが、有意義だしやり甲斐があるし身につくだろうと言いたいのだ。

まあ最終的に現場は授業をする先生に任せるより他ないわけで、こうしたことをできるだけ明瞭に書き述べ、あとはお任せしますと学校側に送っておいた。We'll see。

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あとでMにあらましを話し、「これまでこの作業内容で学校に苦情がきたことはないんだって。俺はなんでこういうことが我慢できんのかな」とこぼすと、「自分が正しいと思い、それに反することに屈従できないのは、私とあなたの最大の共通点だ」と言われた。たしかにそうだ。それでしょっちゅう夫婦ゲンカもしてるわけですw。

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■11/12/02(金) □ 柏の栄光
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【Jリーグ最終戦・浦和-柏】バンクーバーの柏サポ氏と同時ネット観戦。
◆ う~む、外国系サッカー中継サイトは軒並み urawa vs kashimaになっている。。。困ったもんです。
◇ なんで困るんですか?
◆ mではなくてW
◇ あ\(^0^)/
◇ これは、軽んじられてますね柏。

浦和はあの天才小兵 MF 山田直輝がトップで、序盤はこれが少し効いて柏が様子を見ている感じだった。しかしそれも時間の問題で、じきに浦和の状態を見切った柏の一方的な攻勢となる。柏はどこを取ってもいい動きだが、レアンドロというブラジル人の巧さに驚いた。何度か見て、よく走りよく働く優良ブラジル選手とは思っていたが、この試合ではタダモノではない美技を連発している。Jリーグでは久しぶりに見るボールの足への吸い付きっぷり。「Jの歴史でも指折りなほどの外国人選手」とアナが言っていたが、たしかにそう思えるくらい素晴らしい。

そしてピンボールの如き先制点。すごい。ポストに当たってあそこに転がってくるとは。それをそのまま蹴り込むとは、ワグネルという選手も強烈だ。

このブラジル人2名に劣らず、柏全体がいい。全員インターセプトがうまいし、ボールさばきもパス出しも自信とスピードに満ちている。U-22 代表の酒井などはまことに大物感あるし(体が大きいので切り返しで相手からガバッと距離を取れ、いいクロスを送れる)、俺が全然知らない選手もみんな確信に満ち迷いがないので素晴らしいプレイぶりで、大谷など代表チームの中軸ボランチと言われてもなるほどねと思うくらいの冴えまくりだ。これは柏全員のレベルが上がってるとしか思えないな、ほんと。シーズンを通して1位をキープするなんて経験には、そういう効果があるのかもしれない。同じ素質と技量でも、試合中にどれだけ確信を持ち落ち着いてそれを実行できるかで効果がまったく違うんだろう。追加点も取り完全に圧倒して前半終了。

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後半選手を入れ替え反撃を開始した浦和が得点。しばらく浦和が優勢となったが、再度柏はペースを握り返し、しっかりと追加点を取って突き放し、あとは怠りなく丁寧にゲームをクローズして終了となった。やっ・た。やりました。おめでとうございます\(^-^)/\(^-^)/\(^-^)/!

会場がやや静か過ぎる優勝セレモニー。こういうどアウェイでのセレモニーというのも、なかなかぎこちないですな。この静かさはチト残念だが、浦和としては自分のチームが屈辱にまみれ相手は栄光に浴してるのだから、そんなに盛り上げてあげる元気もないんだろう。Jリーグが組織として場所に関係なくドカンと盛り上げてほしかった。

ホームで決められなかったことは柏にとって気の毒だったが、しかし文句ない優勝だった。今日の強さを見れば、この優勝をサプライズだなんて誰も思わないだろう。柏の全員がこんなうまくなり機能しているということがサプライズなのだ。この監督ならこのままの勢いをクラブW杯に持って行ってくれそうで、楽しみになってきた。遠藤や玉田をクラブW杯で見れないのは残念だが、レアンドロ率いる柏の連動組織が世界を驚かせてくれたら、それも小気味よいのである。

2011/11/29

日記「温泉ゲームはコロレット」

「まわりくどい宿題の話法」「北米消費主義」「香川の謎」

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■11/11/19(土) □ まわりくどい宿題の話法
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萌の数学宿題を手伝ってるのだが、うーん毎度質問の意味が分からない。

「電卓で 2+3*4 と押すと正しい答えは出るか。どうしてそうわかるか」

電卓は四則演算の順番原則を知らないから答えは間違うわけだが、「どうしてそうわかるか」という問いにどう答えたらいいのだ。「正しい答えじゃないから間違ってるとわかる」としか答えようがないではないか。そんな馬鹿みたいなことが書けるか。

あとから考えるとこの問いは、「足し算に続いて掛け算がくるところで四則演算の規則から外れてしまうことがわかる→正しい答えは出ない」というのが解答となるんだろう。

しかしそう答えさせたいなら、「正しいか正しくないかはどの段階でわかるか」と聞けばよいではないか。これなら解釈が入る余地がないので、俺の脳でも即座に「ココ!」と作動する。子供の脳も即作動し、「そうか足し算に続き掛け算がくれば間違うんだよな」というロジックが論理ピースとして気持ちよく頭に入るだろう。「どうしてそうわかるか」はクエスチョンとして曖昧すぎ、何が質問なのかをまず解釈するという無駄手間が思考を足止めするのだ。

カナダの教科書は数学に限らずこの手の抽象的な、真意を測りかねる問いが多い。抽象的な思考を鍛えれば子供の頭が良くなるとでも思ってるのかな。それくらいで頭が良くなったら苦労せんわ。宿題など徹底して具象化し、さっさと終わらせ別なことをやらせたほうがよっぽど有意義だわ。

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■11/11/20(日) □ 北米消費主義
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夕方萌が、友達がみんな持っていて自分が持ってない素晴らしいものを列挙し始め、それが iPhone、iPad、ラップトップ、Xbox、キネクト、Wii、PS3、Skype ……と長大なリストとなった(あとMには皮のブーツがほしい、スキニージーンズがほしいとファッションものの要求もあったとのこと。友達BLの影響だ)。

最初は「でも萌は完璧なデスクトップ PC を持ってるじゃん、DS だって XL だって自分専用のビデオカメラ($10!)もあるし」と笑っていたのだが、「でも○○なんか全部持ってるんだよ、それで私が持ってないからからかうの」と言われ、なんなんだ今の子供はと腹が立ってきた。

「だったら『そんなに甘やかされて恥ずかしくないのかお前は』と言ってやれよ。私が子供の頃は家が大きな店だったから金持ちで、他の子供よりいいものを買ってもらえたけど、でも中学くらいになれば自分が甘やかされてると感じるから貧乏な家の子に対してちょっと恥じていたよ。バスケシューズだってアディダスじゃなくて日本の安いのを自分で選んで買ってもらったし。そういうのって今のカナダの子供は感じないの?」と問うと、「感じないよ」と否定されてしまった。これはカルチャーギャップなのか、ジェネレーションギャップなのか。そういう感覚って昭和 or 20 世紀的なんでしょうか。

Mによればカナダでも昔は俺の感覚と似たようなもので、この行き過ぎた消費第一主義は企業の指先で踊る現ジェネレーション(子供とその親)の特徴なんだそうだ。「これが嫌だから萌の自我が落ち着くまで海外で暮らしたいと思うくらいだ」という。日本がカナダよりずっといいのかどうかわからないけれど、カナダ(と米国)はひどすぎるとのこと。どこか素朴な発展途上国に住みたいとMは言うが、なかなかそうもいかんよなあ。

ともあれ、他の子が持ってるものを萌が持ってないのは気の毒だと思わないではないが、萌がモノに窮乏した気の毒な子だなんてことはまったくない。どうしようもないしどうするつもりもない。今あるもので十分だしハッピーな毎日ではないか。インターネットに繋がってる自分専用の PC があるんだから実際、十分以上だぜ。

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■11/11/23(水) □ 香川の謎
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【CLアーセナル-ドルトムント】香川って、なんなんだろう。味方がボールを奪いさあ攻撃というとき、彼はいつでもゴール前の敵のまっただ中でハーフスピードで走っている。ボールをもらえばスペースがないところでもコントロールする自信はあるんだろうけど、お前味方もなかなかそこにはパスを出せないだろう。カットが危なすぎるし、たとえ通っても十中八九は詰められ弾かれ終わるだろう。香川はドリブラーでもパッサーでも点取り屋でもない。一体俺は彼が何をすることを期待して見てるのかなとだんだん意識が遠のき、途中で他のことを始めてしまった。

不思議なのはこうして日本人の俺が見てもエキサイトしない香川が、ブンデスの強豪クラブでスタメンで、このプレイでも下げられないということだ。彼はなにを期待されているのだろう。特徴のない選手が中途半端な主張性の低いプレイをやってるのだから、俺がドルトムントのサポーターなら「香川だけでなく○○も試せ」みたいに監督にブーイングすると思う。今日最後に決めたのも例によってプレイに絡んでなかったからオープンスペースでボールをもらえたわけで、香川よりも頑張って切り込み香川に出した選手の手柄なのは明らかだ。

2010 年の香川絶好調時のビデオを見ると、特にすごいと思うプレイはないが、今日のゴール同様味方との協調でうまく点を取っている。いいところに動きいいところでボールをもらい、うまい巡りで点を取るという感じ。しかしその巡りは彼の回りにもうないわけだから、もっと考え抜かないと今後この試合以上のことはできないんじゃないかと思う試合だった。

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■11/11/26(土) □ 温泉ゲームはコロレット
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バンクーバーから1時間でこんな感じ。
フレイジャーバレーは美しい。
秋恒例のハリソン・ホットスプリングス。暗くなる直前のフレイジャーバレーを楽しみながら走る。紅葉はもう終わってしまったが、新雪が降りた山々がひたすら美しい。昨日 NHK「家族に乾杯」を見て隅々まで人が住む場所の味わいがある日本の田舎はいいなあと思ったが、カナダの田舎は人が少ないがゆえの美しさがある。

ありがたいことに、ハリソンホテルの子供プールの温度が高くなっていた。去年までと2度は違うんじゃないかな。キンキンに冷えた頭を温かいお湯につけて仰向けに浮くと最高に気持ちいい。

姪SFが「マーシャンダイス」という、行くか戻るか程度の軽いアメゲーを持ってきた。そこで名作ドイツカードゲーム「コロレット」を紹介してみる。コロレットは「10 分で終わるゲームがあるけど試してみる?」と超低敷居で切り出せ、ダイスゲームと大差ない軽さでちゃんと戦術駆け引きが楽しめるところがやはり優れたゲームで、半分を過ぎる頃にはSFももうキモが見えて、俺のカラーを盗むなどして楽しんでくれた。ほとんど誰でも初戦の途中で、「これでどうよ(ニヤリ)」という手を打ってくれるのである。そこが実に楽しい。SFにはこのゲームは明らかにスマッシュヒットだった。

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そして午後ついにうちの奥さんMにグレンモアを教えたのだが、全くウケず。「こことここがアクティベートされて生産物が出て、同時にここでウイスキーを作れるわけ」と説明を加えるたびに眉をひそめていく。うー、いかんと思うがどうしようもない。

このタイルならこう、このタイルならこうと俺がアドバイスしてMの村が途中から見事に機能し大勝したのだが(萌は旅行の精神的浮わつきで全然まともにプレイしてなかった)、結局「複雑だわね」というコメントだけで終わってしまった。まあチケライでも初回はこんな感じだったので、ゲーマーじゃない人はすべてのルール≒自分がやることが最後までクリアに見通せないとイラつくのかもしれない。そうした人々にはたぶんルール分量のしきい値があって、カルカソンヌの「草原」、チケライ Euro の「トンネル」、カタンの「盗賊」といったエクストラ要素がそのしきい値を超え、簡単に「面倒くさい/複雑」回路につながってしまうんだろうな。

まあグレンモアは間違いなく面白いゲームで、お母さんもいつかは分かってくれるだろう。現時点では萌が「グレンモアは全然気に入らなかったの? 全然?」と聞いても、「(面白くなる)ポテンシャルは見て取れるわね」という望み薄なコメントだったが(嘆)。


こんなにプリティなボードなのに
公衆の注目を浴びることはなし
続いてまたSFを交えチケットトゥライド Europe。SFがうまくてびっくりした。やったことがあるとは聞いていたが、最初にいきなりストックホルム-ペトログラード線21点を取るのである。明らかにこのゲームの勝ち方を定石として知っている。その後も順調につなぎ見事に彼女の快勝。

驚いてあとで話を聞くと、ボーイフレンドが TRPG ゲーマーで、彼女もゲームグループに属しているのだとのこと。そういえばその連中らしいのがいつかのパーティに来ていて、全員でアニメを見ておりナードっぼいと思ったな。彼らはナード(スポーツ苦手で勉強得意な輩)ではなくゲームギークだったのか。そしてSFも乗馬が好きだからスポーツガールなのかと思ったら、ギークだったのか。かわいいではないか :-)。

しかしホテルのロビーでチケットトゥライド Europe をやっていても、隣のテーブルで定番の家族ゲーム「スクラブル」などをやってる人たちがこっちをチラ見すらしないのが不思議だった。これほど美しいビジュアルを持つボードでも、ボードゲームに興味がない人々の目には訴えないものなのかな。ある種の美術品への興味の有無に近いものがそこにある気がする。


やはりコロレットは名作だった。
狭いところでもプレイできるし。
その後Mが意外にもコロレット戦をコールし、これが予想外に盛り上がって怒涛の3連戦、Mの2勝1敗。Mはこれまでコロレットの面白さにさほど気づいてなかったのだが、旅行の浮き立つ気分&軽いルールと軽いジレンマが非常にマッチした模様。コロレットは面白いんだが地味で抽象的だから盛り上がらないのかなあと半ばあきらめ半引退状態になっていたのだが、Mは時間が許せばいくらでも勝負を続けそうな勢いだったし、SFも帰ったらすぐこれを買うというほど気に入ってくれたし、うれしい復活のコロレット誤算であった。

やっぱ当初思った通り、コロレットはカバンにちょっと忍ばせておけばいつか役に立つえらいやつなのである。今度人の家にも持って行こう。他家を訪問して短時間でインストしてプレイするのに「グレンモア」はいささか重いなと思っていたのだが、コロレットならばバッチリだわ。コロレットの軽さと貫通力に自信がついた温泉旅であった。

2011/11/18

日記「呼び寄せ移民の不可思議さ」

「北朝鮮-日本戦」「カーネーション・糸子の落語の世界」

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■11/11/13(日) □ 呼び寄せ移民の不可思議さ
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チャイナから来ているW夫妻のご両親に会う。ご両親は今回6ヶ月(!)滞在する予定とのこと。大変だ。W夫妻は正直滞在初日から世話の大変さに疲弊しているようだ。衣食も言葉も移動さえも、すべての負担がのしかかってくるんだから当たり前である。なんでよりにもよってこんな気候が悪く、奥さんが妊娠後期で大変なときに来るのかな。生まれてから来ればいいのに。

将来はこの両親を移民させ同居するという話だが、本当にそうなったらご両親のこの先何十年の生活のすべてがW夫妻の肩にかかってくるのだ。大変すぎる。そんな暮らしが今より幸せなわけがない。

この中華民族がやる一族呼び寄せ移民って変だよな。呼ぶ方の負担は半端ではないし、呼ばれるお年寄りはカナダになんの目的もなくただやってきて、中華式生活を続けるだけなのである。移民の意義はおろか意味もない。カナダもただ彼らが落とすお金でもって、国の一部を売ってるだけだ。W夫妻の浮かない顔を見ながら、俺にはW夫妻がこの中華式家族計画による災難に遭っているとしか思えないのだった。だいたいご両親だって浮かない顔をしている。娘を訪問しても、別にカナダ滞在を楽しんではいないのである。

カナダに日本移民は少ないが、日本のお年寄りとなるともうほとんど見たことがないくらいに少ない。呼び寄せ移民がないからだ。中韓移民に比べて日本移民が桁違いに少ないのは、単に日本のほうが出て行きたくならない国だからだろうと俺は思うのだが、中国のお年寄りがこういう形の意義も意味も楽しみさえもそんなになさそうな移民をできるところから見ても、やはりそう思う。日本のお年寄りにこんなことはできないだろう。

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■11/11/14(月) □ 北朝鮮-日本戦
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【北朝鮮-日本】どうも日本が思い通りにプレイできないな。ボールの弾み方が違うのか(弾んでもまったくスピードが落ちない)ボールタッチがいちいち合わず、憲剛らがボールを落ち着かせられないのが難しい。メンバーが大幅に違うので意図が合わず出しどころにも迷っている様子。

北朝鮮の剛直なサッカーも実に手強い。しかし汚いことはしてこない国なので、これは糧となる試練である。頑張ってくれ、機会を与えられた代表選手たち。

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しかしみんなが大好きな憲剛がいいところなく後半交代。この試合はみんないいところないけど、やはりこういう苦しいところで憲剛に仕切ってほしいわけで、がっくりだな。内田が入るというのはいいなと思う。プレスが弱いところからボールを出せる。

今日は前田も憲剛もみんな 1st タッチがからきし駄目なのに、内田だけはいつもの通りに走りながらピタっとボールが足にくっつき、前方を見渡したまま次のプレイの選択ができている。かつての中田ヒデのようだ。今日は時間が足りないが、この343ならば内田が司令塔となれるだろう。実際何度もチャンスを作り出しており、シャルケでのプレイのようだ。

試合終了。うーん。まあ仕方がない。相手がよく、こっちが駄目だった。ためになる試合ではあった。最後に真剣に343でトライできたのもよかった。

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この強い北朝鮮に負けたことは仕方がないが、しかし憲剛が何もできなかったのはがっくりである。こんな試合ではボールを落ち着かせ味方に時間を与えることが憲剛に一番してほしい仕事で、人工芝のバウンスと相手の強烈な走力プレスによる時間のなさという難しさはあったろうが、1人でなんとかするのは無理でも、清武や長谷部とのつなぎでプレスを交わし打開してほしかった。そこが急造チームのコンビネーション不足というものなのかもしれんが、後半になってもまだトラップミスでボールを後逸したりしているのを見るとどうしても、ファンとしてはがっくりなのである。内田や本田のような持って生まれたものがある「クラス」プレイヤーとの違いを感じてしまう。期待の高い清武も、この試合ではまだ評価のしようがないなというプレイだった。久しぶりに悔しいゲームでした。
「ChongTese9: 前半での途中交代は初なので悔しかったけど人工芝に慣れずボールが足についてなかったので納得してます。」―――このチョンテセのツイートのおかげで、海外でプレイする彼でも適合できなかったんだから、Jリーグ精鋭たちのトラップがまるで駄目だったのも仕方がないかとチトほっとした。


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■11/11/15(火) □ 糸子の落語の世界
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NHK「カーネーション」が本当にすばらしい。糸子やおばあちゃんやお父ちゃんや髪結いおばちゃんの姿を思い返していて、これは落語だなと思い至った。糸子のような人から世の中を見るとその複雑さやコマかさはザルからさっと抜け落ちて、ああした落語の世界に見えるに違いない。

そして落語や「カーネーション」のような劇のすばらしさは、糸子みたいな人が見る世界を、そうでもない人々―――つまり何かにつけ考え過ぎな私たちにも見せてくれ、そこに居させてくれることにある。それはなんて気持ちがいいことか。

強情一直線な娘、無体な頑固親父ややさしいおばちゃんたち、情けない幼なじみやごうつくばりな洋服屋らがわいわいと息づく滋味あふれる世界に、「カーネーション」は私たちを招いてくれる。ありがたいありがたい。

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このドラマはスピード感も半端ではない。前シリーズ「おひさま」の1週間分が1話に入っているという感じ。なにか悪いことが起きて「さあどうなる! 続きは来週!」みたいなところがなくて、その日のうちに次の話になっている(笑)。すべてをあっさりと短時間で、くっきりと深く描写しているのだ。このスピードで話を進めてもちゃんとエピソードがあるんだから、糸子は波乱万丈の人生だったんだろうし脚本家もすごいんだろうなあ。

2011/11/16

日記「夢を広げるボードゲーム」

「大人の顔色読解問題」「戦没者記念演劇」「子供チケライの難しさ」

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■11/11/04(金) □ 大人の顔色読解問題
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また学校のバカ厳格ルールで萌がとっ捕まり、ゴメンナサイと言いながら帰ってきた。昼休みに仲のいいKYと回転椅子でグルグル回って遊び叩き合ってじゃれていると、監視係(職員?)に見つかり反省文を書かされ謹慎処分を受けたという。来週1週間ランチを職員室で摂るんだそうだ。

で持ち帰って記入し親に見せろと言われた反省文が笑止千万で、「自分のしたことの何が間違っていたのか」「学校の規律のどの部分に抵触するのか」「どうすればよかったのか」なんて文章を書く欄がある。

「私は1つも答えが分からんよ萌。ちっとも悪いことと思えん」と俺が苦笑すると、萌はお父さんはまったくわかってない的な呆れた顔をして、「お互いをリスペクトしなければならないという部分に抵触した」「叩き返さず注意するべきだった」などとそつなく反省文をしたためていた。萌のほうがやはり俺よりもはるかに、カナダスクールライフでの処世術に長けている。えらい。

しかしよくこんなものを恥ずかしげもなく子供に書かせるな。子供はかくのごとく、校則が期待する答えを行間から読み取ってそのまま答えるだけだ。道徳ではなく大人の顔色読解問題である

この学校には「生徒がボディコンタクトをすることは許されない」という校則があるんだそうだ。これは男女だからではなく同性でも適用されるとのこと。

なんだこの狂った校則はとMに尋ねると、これはイジメ防止の一種だと解説してくれた。つまりじゃれ合っている風のボディコンタクトでも実際はイジメだということはママあることで、現場を捉えた教師が当人に問うても、イジメられている方が「これはイジメです」とは絶対に言えないというジレンマがある。だからボディコンタクトは一括して禁止するというのがこのテの校則なのだとのこと。

そのジレンマははなるほどで、だからイジメってなくならないのかと合点が行くが、一括して禁止という安易さが例によって、教師の仕事を減らすために子供の楽しみを犠牲にする悪弊ではないか。腹が立つ。とりあえず萌には、「悪いことをしたなんて思わなくていいけど、学校のルールがこうなんだから仕方がないね」としか言いようがなかった。

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■11/11/05(土) □ 夢を広げるボードゲーム
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美しく強力な城をめぐり、
争奪戦が繰り広げられる
午後萌とグレンモア。萌が序盤から村タイルを取りまくり引退させまくる首長作戦に出る。この作戦は Duart Castle(村タイルx3点)がキーとなるので俺がそれを奪おうとすると、あーやめてーと萌に懇願され、結局まあいいかと譲ったためまたも彼女の大勝となる。まあ楽しいからいいか。

このゲームでは萌が引退させまくった総勢6名もの首長たちのために、ダミーダイスが取った捨てタイルを並べ豪華なリタイヤメントビレッジ(隠居村)を作り上げた。食べ物はなんでもあるし、どこの村より施設も充実している。「これまでよく働いてくれたわ、さあさあお肉をどうぞー、たくさん食べてねー。蒸留所が来たわよー、お酒よー、樽もおまけでどうぞー。お城やレイクもあるわよー、ビュー(景色)を楽しんでねー」。

んで、一方萌の村でネス湖の犠牲になったワーカーが、「あいつらはちっとも働かないうちに引退してライフを楽しんでるのに、俺は生贄かよ! It's not fair!」とゴネまくり、またまたサブゲームが盛り上がりまくったのです。ボードゲームは本当に隅々まで素敵だ。コマもタイルもチップもボードも夢を広げてくれる。

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ドイツボードゲーム趣味に目覚め1年でやったゲームは15種ほどになるが、美しいボード上で豊富なコマをジャラジャラと使い、絢爛豪華に生産拡大し城を建て騎士を使い戦いをするみたいなゲームも是非ほしい。

しかしボードだけなら惚れ惚れするほど美しいものがいくらでも見つかるが、美しければ美しいほど複雑でめんどくさそうなのが難しいところ。←この「コロセアム」なんて日本語レビューも見つからず面白いのかどうかまったくわからないが、一目見るだけで「うわすごい!」、そして同時に「めんどくさそう!」と思う。描き込まれたものが多いほど俺のような男の微細精巧品趣味をくすぐるが、一目瞭然明解なシステムからは当然どんどんと遠ざかり、マニアックになって家族向けゲームから離れていく。そこがボードゲームのジレンマだ。

しかし汲めども尽きぬ泉なのがこの世界なわけで、いつかは絢爛豪華でありながらチケライ Euro やグレンモアくらいのウェイト(3人で1時間弱)に収まるゲームにもめぐり逢えるだろうという気はする。グレンモアだってついひと月前までは名前も知らなかったのだし。

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■11/11/10(木) □ 戦没者記念演劇
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萌中学のリメンバランスデイ(戦没者記念日)集会。合唱部・演劇部・吹奏楽の発表会を兼ねているので見に行ったのだが、音楽全般の総指揮を取る元バンドマンの先生が音モノはなんでもドラム+電気楽器+マイクでセットをまとめる癖があるようで、合唱部まで先生3名によるバンド+マイク構成だった。

合唱部総勢40名で前列の子供がマイクを持つという構成で、2曲やり前列と後列を入れ替えて全員がマイクを使えるようにするという段取りになっていたのだが、これじゃ後列にいる子供は歌う意味もない。

それにこないだのスクールロックコンサートもそうだったが、子供はマイクを使って歌うのが下手なので、――というか大人数でマイクを使うということがそもそも間違いで、スピーカを通って聞こえてくる声が自分の声ではなく他の人と混じった声なので、誰もちゃんと音程が取れない。音程が取れないから不安になる→自分の声を聞きたくて大声を出す→全員ががなりたて余計に音程ははずれていくという悪循環になってしまう。合唱はやっぱ自分の脳内音響で音程が取れる素の声じゃなきゃダメなのだ。1人1人はきっと歌が好きな子供らだろうに、残念なデキであった。

この元バンドマン先生は見るからにいい人で、指導に熱心なのは実にありがたいが、ちょっと趣味的すぎるな。このマイク付き合唱はほんとやめてほしいのである。

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次いで演劇。萌はこのドラマのユダヤ人役としてダビデの星をつけた衣装を作らされた。ナチス役もいるし、ベトナム戦争のエピソードも入ってるらしいし、なんかちょっとセンシティブなマターを気軽に導入しすぎており、指導の先生が軽率露悪的なんではないかとMと共に心配している。

聞けば案の定このシナリオを練っていく段階で、「第二次大戦はパワーをほしがったドイツが始め、日本に落とされた爆弾で終わったのよね」みたいなことを生徒たちが話していたとのこと。そういう子供のインスタントな認識にいかにもつながりそうな題材ではないか。


戦争の悲劇を演じる子供たち
だが始まってみると総勢60~70名ものキッズが音楽に乗せてさまざまな戦争悲劇を演じる壮大なモブ(群衆)無言劇で、なかなか素晴らしかった。個々の演技が何を示すのかはイマイチわからなかったが(ガス室送りとか教室でテロリストが機関銃乱射などというシーンがあり、やっぱり露悪的ではある)、そうした戦争悲劇シーン→現代ガールズの群舞→悲劇シーン→群舞という構成になっていて、戦争は悲劇だ、若い世代の命を生かそうというメッセージがよく伝わってくるパフォーマンスだった。心配したような安直なイデオロギーが入ってくるなんてことはなかったのであった。

萌は群衆の一部だったが、演じているもの全体への満足感は非常に高かったらしく、ビデオを見ているときに熱心に解説してくれた。俺がビデオカメラでときおり萌をアップにしていたので、お父さん私じゃなくて全体を撮らなきゃ駄目じゃないと叱責された。すいません (^-^;。

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■11/11/11(金) □ 子供チケライの難しさ
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風邪をひき、久しぶりに咳で眠れなかった。咳につれ腹筋と頭がいたし。ぐったりしていると萌が俺とMにランチを作ってくれた。ありがたい。すまんねえ。リメンバランスデイの式典中継の途中、ちょうどこの時間になり記念撮影。

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朝飯後Mがチケットトゥライド Euro をコール。もちろんいいけど、グレンモアもそのうちお願いしますよ。今回は萌と俺の路線がだいぶかぶったおかげでスリリングなゲームを楽しめた。ロンゲストを取り久々に俺の勝利。


右の機関車カードが2枚必要な
路線をつなぐのが難しい
しかし萌はこのゲームはいつも終盤ダレるな。あと機関車カード2枚で最後のチケットがつながるといったあたりまでは素晴らしい勢いとクリエイティビティでつないでいくが、必ずそこでスタックしてしまう。機関車が出るまで延々デッキからブラインドでトレインカードを引きまくり、機関車カードは確率的にそうそう出ないので無駄カードをどっさりと貯め、終盤はさっぱり点が取れず終わるのだ。必要なカードが早いうちに手に入れば萌も勝負になるが、たいていはこうして後半しぼんでいくのである。

ここを突破するにはそのチケット達成をいったん保留して、新チケットを取るか自分の既存路線を伸ばしロンゲストトラックを目指すなど別の作業をしつつ必要なカードが場に出るのを待つ臨機応変さが必要で、この保留・優先順位付けが萌はどうもできないのだ。その優先順位付けの下手さは毎日の宿題をやってるときとまったく同じなので(笑)、いつか成長につれチケライと宿題のトンネルを同時突破してくれるだろうが。

毎回同じパターンで負けるので萌のチケライ熱はグレンモアに比べ相当に下がっており、これはいかんと俺は萌の苦手を支援する方法を考える。カタンの港やグレンモアの「歳の市」みたいに、手札から3枚出せば必要なカードが1枚取れるというハウスルールがいいんじゃないかな。貴重な機関車は「食料品店」みたいに、同色3枚で1枚とか。今度これをテストプレイしてみよう。

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風邪で掃除をする体力もないので、有料ユーザーとなったタブッターを1日いじっていた。ミュート機能なんかこれまたえらいよくできていることに気づく。ミュートされてるツイートを確認するためにミュート一時解除することができるのだが、このとき該当ツイートがわかるよう薄字で表示されるのである。こうしたディテイルで、作者がいかに愛情を込めタブッターを育てているかがよくわかる。今回払った年課金が切れる前に、買取オプションができてほしい。こいつを恒久的に自分のものにしたいという愛情がユーザーにもあるのです。

タブッター無償版廃止がこれほど叩かれているのは、代えが利かないからだ。他に代わりになるものがあるなら皆黙って移行するのである。タブッターは似たものすらない唯一無二の存在であり、離れたくないのに離れざるをえない究極の便利ツイッター中毒となったユーザーが嘆いているのである。

無償ユーザーを便利中毒にしてから捨てたというのは事象だけ見ればたしかにひどいが、タブッター氏のつぶやきを見ていた俺にはこれはスキームではなく結果としてそうなったのだとしか思えない。有料無料両立で稼げていたらタブッター氏もここまでバッサリとはやらなかっただろう。ネットビジネスの構造はさっぱりわからんが、とにかくタブッター氏がなんの利益も得られないうちに他にこの独創的デザインを真似されるのだけは、見たくないものである

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Perfume「レーザービーム」のポーズ、
毎夜踊ってます。
夜友達のホームパーティに呼ばれた萌を迎えに行くと、出てきたお母さんが「みんなでジャパニーズポップソングを踊ってたわよ。Perfume っていうの?」という。「う (^-^; こういうダンスですか(フリフリ)?」「そうそう」と、萌のパフューム啓蒙運動は新規に3人ファンを追加した模様。カナダでもしパフュームの人気が出たら、萌は褒美を貰う権利がある。

2011/11/10

日記「タブッターオム先生に土井亜紀を」

「北杜夫チルドレン」「カナダ中学3者会談」「スクールロックコンサート」

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■11/11/02(水) □ 北杜夫チルドレン
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小田嶋隆「マンボウ先生が残していったもの」
私が北杜夫(以下敬称略)の読者だったのは、主に中学生の頃だ。それ以前も以後も、あまり読んだ記憶がない。

影響は非常に大きかった。中学校に通っていた3年の間、私は北杜夫の作品を耽読し、文体を模倣し、世界を眺める時の視点の置き方を、いつも微妙にドクトルの方向にシフトさせていた。その3年間の、いま思えば異質な期間が、私の性格のうちにあるどことなく人工的な部分を形成している。

私は、ビートルズに出会い、ヘルマン・ヘッセに後頭部をガツンとやられ、北杜夫に影響され、遠藤周作に憧れ、立川談志を追いかけまわし、古い切手を蒐集し、体操部と卓球部と水泳部に同時入部し、なにひとつモノにならず、そうやって中学校の3年間をあわただしく、まとまりなく、ころげまわるみたいにして走り抜けた。

マンボウ先生は、進行方向に三叉路があれば、自分が、苛烈さよりも安逸の側の道を選ぶ人間である旨を声高らかに宣言している人で、そこのところが、中学生にはなんとも洒脱に見えたものなのである。大げさに言えば、そういう大人が日本にいるということだけで、自分がこの先生きて行くことにも、多少の希望が持てるような気がしたのだ。

世代が近いせいだろうけど、シンクロニシティを感じるくらい同じだなあ。中学時にのめり込んだものといえばビートルズと北杜夫だ。北杜夫の文体を真似て教師にシニカルな評をもらい、大人って実は意地悪なんだなと学んだりもした。

萌があまり本を読まないのは、俺にとっての北杜夫ほど面白い作家に出会ってないからだろう。英語世界の読書知識がないのでヘルプできないんですが。ハリーポッターなぞがどれほど売れようと、北杜夫が 70 年代の日本の中学生に与えた影響のほうが大きくプレシャスだと思う。

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■11/11/03(木) □ カナダ中学3者会談
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萌の中学3者会談へ。先生が仏英それぞれいて4者会談だった。俺は「とにかく宿題が多すぎる、課外活動がある日なんか寝るまで宿題漬けでひどいことになっている」と訴えたのだが、「宿題は2時間がノーム(標準的)だ」と言われてしまった。マジですか。おらは日本から来たで知らんのですが、カナダはどこもそうなんですか? イエス。えー(絶句)。

しかしイエスと言ったフランス語数学教師が所用で出ていくと、担任の英語教師がやや軟化した態度で、「2時間とはいっても、それは学校で課題をやっていかなかった場合。私はクラスで子供たちに課題をやる時間を十分に与えている。学校でしっかり集中してやれば、家に帰ってからは1時間で済むはずだ」という。

なるほど、じゃ本人がクラスで頑張れば家では楽になると。「イエス」。わかりました。しかし2時間というのはショックですと俺が言うと、「2時間はたしかに長すぎると私も思う、でも高校になったらもっと厳しいわよ」と担任は言うのであった。

まったくマジメすぎるなカナダの中学校。なんなんだこれは。こんなに厳しくして、ついていけない子供はどうなるんだ。こんな努力を続けられない子供は当然大量にいるだろう。でそういう子供が反抗期に入り、居残りも拒否したらどうするのだ。ドロップアウトさせるのかよ。馬鹿ばかしい。

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9月に始まった萌の中学生活を、俺はこうしてどっぷりと身を漬けるようにしてサポートしてるのだが、実際そうしないと萌の自由時間がなくなり見てられんのだ。萌は毎日の宿題で自分が苦労する数学を苦手だと思っているが、やっているのは分数やら公約数やらで、こんなものは誰だっていずれわかるようになる。ただそのスイッチが入ってないだけだ。俺だって子供の当時は算数を苦手としており今だって暗算は苦手だが、その仕組みはわかる。単に頭脳の論理演繹能力が年齢により自然と上がったということだろう。脳内のある種のスイッチをいれる要素として、年齢というのはやはり大きい。

実際思うのだが、カナダで11歳の子供がこうして負荷の高い中学生活を送るというのは早過ぎるんじゃないか。うちの学区の小学校は日本より1年早く6歳から始まり(これは学区によって違うらしい)、6年生から中学なので萌たち遅生まれの子供はわずか11歳で中1となっている。数学等のカリキュラムの進度は日本と比べても年齢相応なので難度が高いわけではないが、部活と学課と宿題による心身の量的負荷・拘束時間は小学校と中学では段違いなわけで、11歳=日本の小5でそのすべてをこなしていくのは時間&作業量的にきついのだ。この学齢システムはバランスが悪い。

カナダは住環境と子供の養育環境はいいと思っていたが、萌がキンダー(小学予科・5歳)に入って以来各担任の能力には疑念を感じており、カナダの初等教育のレベルが高いとは俺は思わない。日本に比べてどうこうではなく、個々の教師に教育者としての素養があり、子供のために力を尽くしているのかが疑わしいのである。単に大量の課題をやらせてるだけじゃないのか、と。萌が今分数や小数点に苦労しているのも、結局小学校の教師たちと彼らが使ったあの百科事典風バカ重算数教科書が助けにならなかったからである(それに気づいて俺が夏休み中に算数のベーシックをドリルさせとくべきだったので、これは自分で反省してます)。

教育専門家であるMはこうしたカナダ初等中等教育の現状に我慢できず、理想の自然保護系教育を施す私立のスペシャルスクールへ萌をやりたかったわけだが、普通の学校に付随するクラブやスクールライフをばっさり捨てるのはあんまりだといって俺は反対したのだ。普通の学校にやったことを後悔はしていないが、しかし普通の学校のこの宿題の馬鹿さ、校則の理不尽さにはMよりも萌よりも俺のほうがイライラする毎日である。

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■11/11/04(金) □ スクールロックコンサート
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【スクールロックコンサート】音楽クラスの発表がありますと昨日急に通知が来たので萌のクラスだけの音楽室での発表かと思ったら、体育館にステージを組み全校計6クラスが演奏を披露する大コンサートだった。PA システムもライブハウス相当のものがちゃんとあり、ステージ上にはカクテルライトやモニタースピーカもあり、どえらい大音響でリハーサルをやっていて驚いた。こんな本格的なものだったとは。こんな機材は日本の学校じゃありえない。PA システムの操作も先生が子供らに指導しやらせている。すごいな。


ジャイアン的風貌だが
「すごくいいヤツ」と並ぶムスメ
演奏したのは全6クラス6バンド。楽器はドラム、キーボード、ベースギター、エレキが各2台くらい、その他は全員アコースティックギターで、シンガーが6~8名という構成。みんな楽器は当然下手だが、1 バンド 30~40 人もいるのでしっかりと音圧があり、なかなか気持ちいい。しかし楽器の音がでかいので歌は難しいようだった。モニターが聞こえづらいらしく―――聞こえないときは耳を半分塞ぐというのも音楽の先生(教師になる前はバンドマンだったらしい)に習ってやっていた―――、そしてマイクは声のでかいボーイズのピーク音ばかり拾ってしまうので、音程のいいガールズの声が聞こえない。ボーイズは基本的に音痴で、しかもみんな自分の声が聞こえないので余計に声を張り上げてしまい、さらに音程がはずれていくという悪循環になっていた。

そんなわけでどのバンドも、演奏はなかなかいいのだが歌が♪んとかんとかんとかでーと、音程が悪くラップ風なボーイズの蛮声だけが鳴り響くという、聞きづらいものになってしまっていた。萌のクラスは男女3人ずつがボーカルだったのだが、萌が風邪をひいていたせいもありガールズの声はまったく聞こえなかった。残念。1つだけボーカルの音程がいいバンドがあったのだが、なんでかと思ったらこのバンドだけ歌が全員ガールズだった(笑)。

この問題を解消するには楽器の音量を下げるかボーイズのマイクを絞ればいいのだが、ミキサーをやってるのも生徒で、先生もそこまで微妙な指導はできないのかもしれない。楽器が 30 台もあるとやっぱ自然と音量はでかくなってしまうんだろう。まあともあれ、楽しかった。萌は来年(?)はギターかキーボードをやってもらいたい。

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■11/11/05(土) □ タブッターオム先生に土井亜紀を
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世界最強Twitterクライアント・タブッター
愛用する Twitter クライアントのタブッターが、なんと無料版は1日1時間までというシェアウェアみたいな制限をつけてきた。しかも、これに併せて有料版の費用を払いやすくすればドカーンと行くと思うが(俺は1回払えば OK の使用権買取なら買います、一生払い続けるのは気が重いと以前メールを送ったのだが返答はなかった)、逆に年 1900→2900 円と同時値上げしている。こんな便乗値上げをされては、好意的なユーザーも移行しにくいではないか。もういいです、これまで払ってくれたユーザーだけで排他的にやっていきますというメッセージが強すぎる。つまりヤケクソになっている。いかん。

こんな世界最高に便利な Twitter クライアントが、こんなに儲からず消えていくなんてどうかしているぜ。海外では大金持ちを生み出すネットビジネスが、日本ではどうして駄目なんだろう。欧米発の優れたネットサービスは全部フリーですごい収益を生んでいるではないか。あいつらはどうやって金を儲けているんだ。日本でもネトゲ会社は球団を買えるのに、優秀なツール作者はサーバーも維持できないのか? そのへんの謎を解き、皆を幸せにできる会社はないのかな。謎だらけだ。

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「タブッター」で検索すると、有料化ありえないバカなのという罵倒がすごいスピードで流れていく。こんなに使ってる人がいたのか。そしてこれ以上のクライアントはないと認めながら、使えなくなったらみんなこんなことを言うのか。世の中こういう連中に満ちているんだから、自分の努力を無償で提供する気がなくなるのはよくわかる。タブッターに対する罵倒を流さなかった人だけ無料使用時間を延長できたらよかったのに。

しかし人を傷つける日本語って増えたなあと、検索タブを眺めていて思う。タブッター作者がこれを眺め、「モテキ」のオム先生みたいにシオシオになってなければいいがと心配してしまう。

好みは個人差があるが、タブッターの便利さは客観的に見て他のクライアントとは比較にならない。世界中の Twitter クライアントを全部併せて使っても、まだタブッターにしかできないことがいくらでもある。

  • タイムラインのグループ分け
  • タブごとのミュートワード設定(正規表現が使え、ミュートの効き具合をチェックするための一時解除機能まである)
  • 各タブの発言比率表示(時間ごとの各タブのツイート量がわかり、流量の調整に役立つ)
  • 既読位置の簡易 AI 的保持
  • 多 PC 間での設定の移行
  • 発言の一括 html 式ダウンロード
  • アイコンの拡大表示(!)
  • フォロワーの通知、マーク付け
  • 音声通知
  • すべての操作にキーボードショートカットあり
などなど。他のクライアントが持つ機能を当たり前に備えた上で、これだけのものを生み出しているのである。人ごとながら、グループ分け機能なんか他のクライアントが真似をしてくる前にタブッター氏が実用新案等を取っておけないかなと思うくらいである。
「Twitter が無料なのにクライアントが有料ってどういうことだよ」という文句が多くあるが、その2つが提供してるのは別ものなのだ。Twitter は革新的なコミュニケーション手段を提供し、タブッターはそれを使うことを気持ちよくする革新的な便利さを提供しているのである。
世界でも日本でも人はイノベイティブなものを神のごとく崇めるが、不備なものを完璧にする仕事への評価が低い。Twitter 本家や Google の独創性対タブッターや日本製ソフトウェアの使いやすさで、後者への評価が低すぎる。日本技術の美点はものを最高に使いやすくできることで(よく英米人が we invented it, but Japanese perfected it という)、タブッターはツイッター世界においてのその日本文化の頂点に立つ。
この作者がお金をもらうだけの価値は当然ある。それがユーザーから作者への直接の課金送付という、今どき類を見ないユーザー重負担の形でしか実現できないのは不幸なことだが、これはその実体がオム先生であろうタブッター作者の商才の不足と、儲かるほうが不思議でどうなってるのか誰にもわからないネットビジネスの難しさ故。現時点でそれを責めてみても仕方がない。才能ある技術者に商売の才覚がないことなどいくらでもあることだろう。商才だけあり技術アイデアがないよりよほどえらい。タブッターオム先生に土井亜紀みたいな美人敏腕マネージャがいればみんなが幸福になれるのだが。

「えーWebアプリ作者さんなんですか?
私会うの初めてですーっ」
―――というわけで、これを機にタブッターの業績が上がり安定し永年使用権買い切りオプションを用意してくれることを祈りながら、俺は課金を払おう。どうかこのお金で土井亜紀を雇ってください。

2011/11/02

日記「フジ君とヴェルレーヌ」

「それが教育の手柄か」「『カーネーション』の滋味」「ゲームを巡るイマジネーション」「グレンモア本格化」「モテキ・あまりにも微妙な日本の恋の味」「終わりかけのハロウィーン」

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■11/10/24(月) □ それが教育の手柄か
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萌のバドミントン3回目。2時間を体育館でただ待つのはどうにもしんどいので、旧居候MKのところへ行き休んでいた。萌の宿題のことなど久々にいろいろ話したのだが、MKも中高の頃は宿題を出す学校が嫌で嫌で、自分の子供があれを経験するのかと思うと今から憂鬱だと言っていた。奴は俺同様無駄手間をとことん嫌う性格なので、あんな低能で時間がかかる宿題を出されたら、今の俺と同じく発狂する思いだったろうな。

今の算数の問題は「この答えを出せ」ではなく「この問題をどう解くか説明せよ」となっている。わかっていることとそれを説明することは全然別のスキルなので、説明の方に莫大な時間がかかるのである。こうしたほうが子供の理解が深化するのはわかるが、子供の時間と労力を犠牲にして理解を深化させるのが教師や教育の手柄となるのか、違うだろうと俺は言いたいわけだ。同等かより少ない時間と労力でより深く理解させたなら感謝するよ。だけどこんな課題や宿題のカサ増しで補うのは教える側の手抜きだろう。

俺がこうまくしたてるとMKは、教師が宿題に頼る原因として BC 州の教育予算=教師数の不足を挙げていた。なんでこんな発展する一方の BC で教育予算が不足するんだよ、おかしいじゃないかと聞くと、政府は経済に金をつぎ込んでおり、選挙結果から民衆もそれを後押ししているのだとのこと。あーそうかー。俺は選挙権がない。トホホである。

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でバドミントンの最後の 30 分を見にジムに戻ったのだが、萌は先週から全然進歩していなかった。がっくし。サーブも打てない初回からはさすがに伸びたものの、落ちてくるシャトルを体の横で捉えることは萌にとっては相当に難しいことらしい。

なにかいい練習方法はないかと考えてみるのだが、こうしてクラブで練習する以上のことが家でできるわけもなし。紐で天井からつるしたシャトルを打つみたいな細工も考えてみたのだが、放物線を描きゆっくりと落ちてくるからシャトルは子供でも打てるわけで、紐シャトルだと練習にならんような気がするのである。

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■11/10/26(水) □「カーネーション」の滋味
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萌とMは毎週水曜「アメリカズ・トップモデル」を見ている。ファッションカリスマがファッションモデルワナビーを訓戒を垂れるという図式が馬鹿馬鹿しくて、何が面白いのかさっぱりわからない。ファッションセンスがありかっこいいことに価値はもちろんあるが、それが何よりも重要であるという世界の価値観は俺にはわからない。たまたま俺が裏で見ていた「家族に乾杯」の高校生神楽のほうが、百倍優れた芸能だなと思った。

続く「カーネーション」なんか、ほとんど日本人にしかわからない滋味だけでできている物語だからユニバーサルな比較のしようがないが、俺から見れば千倍素晴らしい。今日はお父ちゃんが初めて糸子のためにいいことをしてくれた回だったのだが(糸子のミシン先生に頼み込み住み込みになってもらった)、もう 15 分のすべての瞬間が素晴らしかった。役者陣の表情、目線の動き、言葉に表れる時代的イノセンス、すべてが素晴らしい。

「おばあちゃん? ひょっとしてこの布団つこうた?」
「つこたよ」
「なにすんや? せっかく打ち直してもろたとこやのに! もう!」


―――このシーンなんか3回も見てしまったよ。なんという言葉の味わい深さ、滋味深さ。カナダの人は英国なまりに憧れているが、イントネーションと発音が違うだけで英カの言葉は同じである。日本の方言は言葉自体が違うんだから面白い。

このかしまし娘のおばあちゃんは、俺が子供のときうちに住み込みで働いていたおばちゃんにそっくりだ。彼女が動き笑っているのを見ると、涙腺が緩んできてしまう。

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■11/10/27(木) □ ゲームを巡るイマジネーション
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夜、珍しく萌の火急の宿題がなかったので、一緒に算数ドリルをした後、グレンモアを楽しんだ。早く寝かせなきゃいかんと急いでプレイしているのに、萌はネス湖の生贄になる村人を選ぶのに「お前が行けよ」「なに言ってんだよ、お前こそたまには村のために役に立ったらどうなんだ」とサイドストーリーを繰り広げ、面白いがゲームが終わらず困った。


ネス湖カードの上に、喪服に
包まれたジェイクのミープルが
置かれています。
勝負は 47-43 と僅差で萌の勝ち。するとネス湖のおかげで勝った萌が、「湖に身を捧げたジェイク・パトリック(架空の村人)のおかげだ。ジェイクのために旗を作る」とスコットランド風の旗を描き上げ、それでジェイクの遺骸コマをくるんでネス湖に流し、「ジェイクのためにアンセムを歌います」とパフュームの「ボイス」を歌い踊り始めたので、もういいから寝ろよと寝かせました。

ほんとにボードゲームは、久しく眠っていた子供のイマジネーションを炸裂させてくれるなー。グレンモアは立派なボードがついたゲームと違い、それほどオーセンティックな村づくりムードを持っているゲームじゃないんだけど、城とか牧場とか酒場というキーワードだけで十分に夢が広がるみたい。萌にドラクエを初めてやらせたときに、ちっとも冒険に行かず村で買い物とかばかりして油を売ってたのに似ている。やっぱり「村の世界」にいること自体が気持ちいいんだろう。

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■11/10/29(土) □ グレンモアの攻防本格化
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朝イチで萌がグレンモアコール。このゲームが素晴らしかった。萌が資源タイルをうまく長方形に並べ、アクティベートを順々にかけ、肉屋を2軒並べて一気に8点取るなど、人の村ながら胸が浮き立つほどの順調な発展ぶり。Loch Ness と Iona Abbey も取り、最後までまったく無駄なくプレイして72点という素晴らしいスコアで大勝。俺のアドバイスはあったが、ズルは一切なしでの点数なので本物だ。子供でもアドバイスさえあればこんなにいいプレイができるんだから、ドイツゲームは本当に素晴らしい。

萌は実際うまいな、このゲーム。こういうプランニング&オーガナイジングが好きだし得意なんだろう。

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次のゲームでは俺が逆に肉屋作戦を決行し、シープ2枚→ウール工場&カウ1枚→精肉店を一気にアクティベートできるよう1箇所に集約した史上最大の肉屋工業団地が見事に完成し、ガッコンガッコンと蒸気を上げポイントを生み始めた。こいつはすごい。パズー、石炭をどんどん燃やせ。俺は R2 の途中で早くも 30 点に達してしまったが、萌はいつになくタイル配置が悪く、生産拠点がバラけていて資源がまとまって出ず村の経済が停滞している。

そしてああこれじゃ負けると萌が動揺し始めたので、俺の肉屋団地の稼働具合をちと緩め(ちょうどシープタイルが内陸になり生産量も落ちていた)、萌のヘルプをすることにする。「ウイスキーは今から作っても5個にならず点は低いから、もうウイスキー点はあきらめ、樽を使い酒場を開けばいい」とアドバイスし、2軒並びの酒場ができる。これだけで6点を数回出せる。ここから萌が Loch Ness と Iona Abbey と小市場と酒場をうまく組み合わせ、ガンガンポイントを取り追い上げてきた。

うわこりゃいかんと思うが俺は後半用のこれといった得点産出ポイントを用意してなく、その間に萌が俺を抜き、俺がブリッジで再度抜き返したものの、城ボーナスを精算してみると Loch Morar と Iona Abbey で萌の勝ち! 萌は Yahoo! と大喜びし、走ってメルに報告しに行く。いやー、負けたが面白いゲームだった :-)。こうしてちょっと手加減しつつギリギリの勝負に持ち込み、勝ったり負けたりという勝負をしていきたい。

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■11/10/30(日) □ モテキ・あまりにも微妙な日本の恋の味
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とある方から譲ってもらった「モテキ」全4巻を読了。フジのズルズル駄目オトコっぷりは実に身につまされ面白かった。これほどのモテキは自分の経験にはないけどそういうことはありえないことではなかったし、彼の絶望ほど頻度深度は深くないが同じテーストの出来事はもちろんあった。これを女性が書いたというのもイイ。しかしこんなのはたとえばカナダの人には1つもわかってもらえないんじゃないかと思う(笑)。あまりにも微妙な、たまらない日本の恋の味。


「撤収」の図
マンガは最高だ。最高と言うか最強ではないか。フジが女性との対立から撤収したい気分に満たされていくところ、矢が突き刺さり落ち武者となっていくところ、マンガ家オム先生が締め切り土壇場であんな姿になってしまうなんて描写が、他にどう表現できるのかとゆーことである。3D 映画どころじゃない表現の豊かさだよな。絵を描ける人は本当にうらやましい。楽器を弾けるより楽しいんではないだろうか。

しかし昔コミックスを何冊も買っていた少女マンガ家のお宅を訪問させていただいたことがあるのだが、オム先生のところみたいなあんな不潔でも修羅場でもなくてよかったでした。

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■11/10/31(月) □ 終わりかけのハロウィーン
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ハロウィーン。何もアイデアが浮かばなかった萌はようやく「ヒッピー」というテーマを決め、70年代風ロングヘアーのカツラだけ買ってきたのだが、うちに元ヒッピーだったというおばあちゃんの妹のドレスがあった。完璧である。萌はカツラを買ってきてから、何度もかぶって鏡を見ている。自分がロングヘアだった頃を懐かしんでるに違いない。頑張って早く毛を伸ばせ。

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ハロウィーンの来訪キッズは8時15分でもう終了、うちに来た子供はわずか35人、これまでで一番少なかったと思う。萌とSPも意外に早く帰宅。なんかえらく静かなハロウィーンだった。学校で萌をピックアップするときに気がついたのだが、小学校までは 100% コスチューム着用だったけど、中学になるとコスチュームを着てない子も多い。だんだん卒業していくんだな。うちのブロックは住宅地としての世代的に、萌よりやや年上くらいの子が増え、ハロウィーン世代が減ってきているんだろうと思う。萌はあと何回これをやるだろう。


暗闇に浮かぶコワい顔
ハロウィーンが終わってちょっと物足りない気分が俺にも萌にもあったので、ホットミルクで体を温めてからそこらじゅうで打ち上がっている花火を見に夜の散歩をした。カナダじゃお祭りの花火はしょぼいのに、日本では手に入るわけがない壮絶な火力の花火を一般人がドッカンドッカン打ち上げている。うわーすげーと笑いながら、懐中電灯を手に夜の町を駆けまわる。おそらく北米大陸中の町が今夜、花火の煙に包まれているんだろう。

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■11/11/01(火) □ フジ君とヴェルレーヌ
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想いが伝わらぬことを嘆く人たちに向けて、こういうツイートを流してみた。
若者が愛や哀しみをシャウトしたい気持ちは完全に当たり前だ。でもシャウト自体は分かち合えないものだから、表通りの人の心には届かない。通りがかりの人にも届くものになればいい。それが歌なんです(C)加川良「下宿屋」
「モテキ」のただ中にいて苦しむ若者たち。フジ君たち。君たちが苦しいのは単純ではなく複雑な組成の心を持って生まれてしまったからで、どうしようもない。仕方がないからせめて床に叩きつけた気持ちを紡ぎ直して歌を作れ、詩を書け。そういうことを言いたいのである。―――あ、単純と複雑で思い出した。ヴェルレーヌだ。

僕の単純さがまるっきりあなたには解らなかった可哀相な僕の乙女妻よ! そしてあなたは去ってしまった腹立ちまぎれに、気まぐれに。(乙女妻)
その女ひとは僕を理解し、その女にだけ僕の心は透明です。その女にだけ僕の心は不可解ではなくなります。僕の青ざめた額の脂汗も その女にだけが涙で清め得るのです。(よく見る夢)
(「乱鳥の書きなぐり-ヴェルレーヌ・よく見る夢」)

フジはヴェルレーヌなのだ。行状はだいぶ違うがその叫びにおいて同質だ。君たちの組成は複雑だけど届かない叫びは単純なのだ。この詩をフジが書いたとしてもまったく不思議ではない。19 世紀の詩人と同じように、今も若者たちは吠え続けている。君たちフジ君はみんな歌を作り、詩を書いたほうがいい。

水に削られて、いつも傾いて
満たされることのない
俺たちは2つの舟だ
舳先を並べながら、川を下っていく
伸ばす指は届いても、水を隔てている

抱きしめて横になり、花のように沈んでく
言葉のない草になり、すれあって笑ってる
友達が歌ってる 声がする 聞こえてる
夢の中でも 同じ言葉 いい子だね いい子だね

東京でフジ君状態だったとき、俺もヴェルレーヌを読み、ジャックスを聴き、歌を作った。この年になっても、あの頃と何も変わらない。伝わらない悲しみはいつだってある。だから毎日何かを書いているのだ。

2011/10/25

日記「グレンモア超高速デモゲーム大成功」

「ゲーム談義を読むのは楽しい」「グレンモア超高速デモゲーム大成功」

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■11/10/18(火) □ ゲーム談義を読むのは楽しい
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英語ボードゲームサイト BoardGameGeek の「グレンモア」フォーラムで、「Grocer(食料品店)のアクティベートに必要なのは同種資源3個なんじゃないか」という面白いルール談議があった。「なんでもいいから資源3個」と「同種資源3個」とで意見が分かれている。ルールを文字通りに解釈すると「なんでも3個」だが、「同ラウンドに出ている歳の市が4種1個ずつ(けっこう難しい)で8点なのに、なんでも3個=8点はイージーすぎるだろう」という意見はもっともである。

それになによりも、「同一資源3個」としたほうが明らかにチャレンジングでやれることが増えゲームが面白くなるではないか。この解釈なら歳の市と違った戦略を要し差別化するタイルとして、食料品店の妙味が大きく出てくる。これに関して作者の公式コメントは出てないようだが、ゲームデザインは天才だがルールブックを書くことはド下手であったこの作者の意図もこっちだったに違いない。うちではこっちの解釈を文句なく採用しよう。

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ここで初めてソリテア3人戦(1人3役!)をやってみた。タイルがどんどん取られて周回が早い。人数が増えると序盤のリソースの奪い合いが激しく、初参戦の緑が出遅れて大きな得点源であるウイスキー工場と酒場を取れなかった。

しかし緑は先を急ぐ皆が取り残した羊牧場(草原)を2枚取り、前半は肉屋で羊毛キューブ2個4点を地道に売り他プレイヤーについていく。そして後半は勝負をかけて大跳びし、例の食料品店をプラン通りにゲット。これにネス湖(毎ターンタイルを1枚自由にアクティベートできる)を組み合わせることで少ない残りターンにうまく2回稼動し、タイル上に貯め込んでいた羊毛6個をどーんと一掃し16点、これが決め手となり見事な勝利となった。やっ・た。こんな勝ち方ができるとは。《羊勝ち》だ。工場と酒場がなくても勝てるんだ。素晴らしい。

やはり食料品店が「同種資源3個」ならば、こうして同種の資源タイルを2枚取っておくことに大きな意味が出てくる。前半はダブつき村人が処理に困っていた資源が、食料品店を建てたおかげで村の主要産業になるんだから楽しいではないか。緑の村長には先見の明があったということだ。いやー、面白い。

システムが練り込まれ戦術上の深みがある現代ユーロ(ドイツ)ゲームでは、こうして愛好者のフォーラムを読んでいると発見が多い。新事実を発見すると新たな戦術が浮かんでくるので、それを試したくなりまた楽しみが増すのである。まあグレンモアのルール上の発見は、それだけ説明書が不出来だったということではあるが。

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Mは忙しいのでいまは無理だが、萌にもグレンモアやらせることはできんかなあと考え始めた。フルルールを一気に説明するのは無理だと思うが、グレンモアの場合じっさい説明が面倒な細則は得点に関することだけで、「最後尾のプレイヤーがタイルを取り、置いたタイルの回りがアクティベートする」というゲームの骨子自体はシンプルですぐに始められるはずだよな。で手番ごとに「いま何ができるのか・何をすればいいのか」を教えてやれば、それなりに楽しめるんじゃないだろうか。週末萌の様子を見て、ちょっとお試しに1ゲームやってみよう。

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■11/10/22(土) □ グレンモア超高速デモゲーム大成功
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午後、満を持して萌にグレンモアを教える。説明を短くするためにアクティベートと得点の処理は全部俺がやり(待たせないために俺自身の手番はタイルを取るだけで処理も適当にする)、萌には各タイルのコストと働きを教え好きなように選ばせてやる。タイルが4枚ほど並びアクティベーションで資源がぞろっと出ると萌がシステムに合点し、身を乗り出してきた。カタンじゃゲーム半ばくらいまで進まないと見えてこない豊作の喜びが、こうしてわずか数ターンで味わえるところがこいつの美点だぜ。

そして資源がたまると萌は、「じゃあ森を取って木を出して次の番で城を買う、どの城がいいの?」と、生産ゲームのキモを一発でわかってくれた。そうそう、それが楽しいんだよ。グレンモアは細かいルールを説明しだすとキリがないが、タイル選びと配置という一番楽しい部分はこうして、説明なしで即プレイできるのだ。とりあえず Castle Stalker を買いなさい、ワーカーが2人貰えてラクになるから。

R2 からはダミーのサイコロ操作とタイル選びと生産系アクティベートは自分でサクサクとやる。自分の手番がときに続けてくるのも非常に気持ちいいらしい。

そして後半はウイスキー樽をタプタプと生産し、タバーンを取ると酒場だ酔っ払ったといってウヒウヒいい、この町をドランクタウンという名前にするといって大盛り上がり。橋を取ると、「このブリッジでお父さんの村につなげられるよホラ」とつなげてくる(笑)。謎のネス湖を取るときにはそのタイルを取るために犠牲になる村人にも名前をつけていた。村や住民に名前をあげるとか橋をつなげるとか、そんなことは考えたこともなかったな。たちまちスコットランドの醸造所をめぐる物語が立ち上がってくる。橋をつないで隣村から泥棒が忍び込むなんていうイマジネーションが広がる。素晴らしい。これぞボードゲームの愉しさだ。

わずか15分で超高速デモゲームを終え、萌は気持ちよさそうにコインを銀行でポイントに両替し、順当な勝利。ウヒウヒと酔声を挙げながらMのところに行き、「麦を出して工場でウイスキーを作るゲームで、自分は酔っ払った」と報告している。これは行けるな。「こういうリソースプロダクション(生産)ゲームって面白いよね。作物を売ったり建物を買ったり、出た資源をまた売ってお金を取り戻したりさ」「ねー!」。よしよし。

というわけで、「グレンモア」というゲームの最初のとっつきの悪さをスピードでごまかす戦法は完全に成功し、いま萌は特別な土地カードをアルファベット順に並べビデオでタイルの解説を録画しながら第2戦を待っております。こりゃ初戦の手応えはカルカソンヌよりもいいくらいだ。何度もプレイして、いろんな店や城の効果を試すようになったらもっと盛り上がってくれるだろう。

やっぱり生産ゲームは偉大なのだ。ビギナーにとっても面白いに決まってるのだ。そしてグレンモアは、生産ゲームの金字塔カタンよりもはるかに面白い。サイコロ次第でそうそう思うように生産できないカタンより、自由度が高く生産と購入は最初からどんどんできるこっちのほうが、ビギナーにとっても気分がいいだろう。ルール面でのとっつきは悪いが、そこは購入者が熱意を持ちネス湖の犠牲となってルールを読みマスターすることで、このように克服できるのです。サイコーなのです。

2011/10/18

日記「グレンモアのデザイナーは天才だ」

末尾に《グレンモアざっくりインスト試案》を追加。(12/06/09)
「非直観的ルールの謎」「なぜ新しいゲームを買うのか」「バドミントン最高」

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■11/10/12(水) □ グレンモアのデザイナーは天才だ
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今日も夜はグレンモア・ソリテア。赤の俺が黄の俺のほしい生産タイルを全部奪う牛歩戦術で、ほとんどの農産品と麦とウヰスキーを独占する作戦に出た。黄の俺は1点も取れず Round 1 を終わる。


Iona AbbeyとLoch Nessのコンボは強力。
道と川が付いているので配置に工夫がいる
そこで黄は R2 から赤とかぶらない大量ワーカー獲得→首長点戦術を取り、Castle of Mey(首長数2倍カウント)で追い上げる。さらに強力タイル・アイオナアビーが出るまで数ターン小物タイルを拾いつつ最後尾で耐え(※)、出た瞬間にまる1周して首尾よくゲット。取れなかった麦畑の代わりにアイオナアビーで麦を出し(これをアクティベートすれば欲しい作物を出せる)、その麦でウイスキーを作り相手のウイスキー点を削るという、もーすんばらしい白熱のゲームとなった。ほしいタイルが出るまで最後尾で待つなんてことが可能なところが実に面白いシステムである。
(※)グレンモアでは常に最後尾のプレイヤーが手番となるので、敵を追い越さない限り何回でも続けて手番を打てる。そして自分の手番はどれだけ前方に跳んでもいいので、欲しいタイルが出たらまる1周することができる。

赤は生産タイルばかり取り村を取らなかったのでワーカーを増やせず、R2 の重要タイルを取れなかった。これは、初期においしい生産タイルばかり取っているとワーカーが増えず、中盤以降いいタイルが取れないというのもおそらくデザイン意図に入っているんだな。赤の領地は広大に広がったが働くワーカーが全体で2名しかいないので、後半はタイルを置ける場所が限られ得点機会が減少していった(黒いワーカー駒に隣接した箇所にしか新しいタイルは置けない)。

中盤以降のポイントを叩き出す強力タイルにはたいてい道か川がついており(上のアイオナアビーもそう)、これが置ける場所を限定する。したがってポイントを取る道と川付近に数名、資源を産出する平原にも数名とうまくワーカーを配置していないと、欲しいタイルを取れなくなり村全体の活性が落ちるのだ。おーいこっちで人手が足りず橋がかけられんぞ、隣村に作物を売りにいけん、何考えてるんだうちの村長は。突出した戦術には弱点が伴うという、素晴らしいデザインである。

結果として赤 54-黄 58、R1 での妨害から華麗な戦術で回復した黄のふさわしい勝利となった。感動。なんてすごいデザインなんだ。天才だな、このマティアス・クラマーというゲームデザイナーは。これがデビュー作だというんだから。

俺が初めてやり驚いたドイツゲーム・カルカソンヌは、「3種の地形を持つタイルを組み合わせ、ワーカーを置く」というシステムを作者が思いついたら後はすべてが奇跡的にうまくいった、まるで神様がくれたシステムみたいなものだと感じるのだが、このゲームは作者がピンセットと虫眼鏡で細々としたシステム要素を緻密に調整して組み上げた、天才的工芸品だと思う。素晴らしい。

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俺は大傑作「プエルトリコ」的な、資源で建物を買うとより多くの資源を産出するという拡大再生産ゲームが欲しかったのだが、グレンモアは富める者がより富んでいくわけではないので拡大再生産ではない。しかしそれが大きな美点となっている。収穫を元により大きな富を産むウイスキー工場や市場を建てるという生産ゲームの王道はきっちり遊べつつ、その富ソースが内陸になりアクティベートできなくなる(いつまでも同じ資産ソースには頼れない)というメカニズムにより、「勝ってるほうがより有利になり差が広がる」という拡大再生産ゲームの弱点が排除されている。驕れる者も久しからずなのである。

勝ってるプレイヤーが後半大きく有利ということはないので、前半振るわなかったプレイヤーもゲームを通じて何度でも得点エンジン構築にトライし、さまざまな工夫と努力を重ね頑張ることができる。サイコロ的な運によって自分のプランが台無しになるということはないので、負けたときも「ここの得点エンジンに期待したのだが、思ったほどの回数稼働(アクティベート)できなかった」という、結果への納得感が得られる。いやー本当にいいゲームだグレンモアとニヤニヤする日々。これは俺がこれまでやったボードゲームで最高だ。

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■11/10/14(金) □ 非直観的ルールの謎
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グレンモアは欠点としていろいろと人工的で非直観的なルールを持っているが、やり込むとそれぞれに理由があるのがわかる。誰もが最初に気づく「ウイスキー樽・カード・首長数で最小の者からの差分によりスコアが入る」という実に不自然な得点法も、しばらくやると

◆5個(8点)以上差をつけても点は増えない
→樽・首長だけで無限に得点することはできない
→樽数で追いつけないプレイヤーは無理して追わず他の方法を取りやすい
→最下位プレイヤーが1~2個樽・首長を作れば8点を5点以下に削れる
→樽プレイヤーも肉屋や市場(歳の市)を狙うので攻防が多面化する

と、差の拡大を抑制し競争を奨励するメリットがあるのだとわかる。差の拡大を止めるために単に「最大5個で8点」としてしまうと5個以上作る意味がゼロになってしまうのだが、差分なので追いつかれたリーダーは「いかん隣村もウイスキーを作り始めたぞ、即急に麦を工場に送れ!」と再生産を命じ(こういう表現ができるところが、テーマを持つボードゲームはうっとりするほど楽しい :-) 、また最大の8点に戻せるのだ。これは実際面白いインタラクションである。

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で唯一俺が納得できずソリテアでは不採用にしていたのが「タイル数が最小数の者より多いプレイヤーは、1枚につきマイナス3点」という最終精算のデカい罰点で、いいタイルを取るために大跳びをすると手番が減る→タイル枚数が減る→でもタイル数が少ないほうが実は最終精算で有利というのはおかしいではないかと思うのだ。この点を BoardGameGeek のグレンモアフォーラムに問いかけてみる。すると目からウロコの回答がドシドシと寄せられた。

◆タイル数を制限するルールがなければ
→なんでもいいから雑魚タイル大量ゲット&アクティベーションしまくりが強力になる
→城タイルのボーナス(Duart Castle+無数の村など)でいくらでも点が取れるようになる

つまり制限がなければ Duart Castle と村 10 個で 30 点なんていう興ざめな戦法も可能になり、ゲームとして牛歩戦術が最強となってしまうということだ。そうか、分かった。「タイル数が少ないほうが有利なルール」はヘンとしか見えなかったが、視点を逆にすると「タイル数を増やすと不利なルール」なんだ。俺がやる程度の半端な牛歩戦術ならともかく、本気で枚数を増やすとキリがなくなるので(ゲーム時間も伸び対戦相手はゲンナリするだろう)、一見大きすぎるように見えるほどの罰点が抑止力として課されているのね。

これがわかり改めてマイナスルールを採用しソリテアをやってみると、「無駄取りは不利」という要素が頭に入り、敵はほしいが自分はいらないタイルを単純に奪うことに歯止めがかかる。たとえば自分にとって必要のない2件目の蒸留所を、「敵が取るのを防ぐためだけに取るか」というところでの判断が変わってくる。取っておけば敵がウイスキーを作り追い上げてくるのを防げて安全だが、たとえ追い上げてきてもそれは現在ある自分の蒸留所に増産せよと号令をかければ無駄タイルの追加なしに対処できるわけで、「稼働しない蒸留所を作ってもタイル数が増えるだけだ、もっといいタイルを取ろう」という判断がアリとなるのである。そしてこっちの方がゲームは面白い。なるほどー。

また敵がどんどんタイルを取っている場合は、自分は増やさず相手のマイナスを増やすという戦術もあれば、こっちも取るタイルを大胆に増やして対抗することもできる(※)。なるほどー。つまり、差分スコアもタイル数マイナスルールも、インタラクションを増やす要素になってるのね。納得しました。

【追記】実際のところ小さな村で効率的に勝つのはかなり難しく、タイル数を気にせず取りガンガンアクティベートし点を稼ぎ重税を収めるほうが、戦術的にも幅があり若干有利だと後に判明。つまりこの「土地税」は、村々の果てなき拡大競争を抑制するために必須なのだった。


しかしファン同士でこうした不可解ルールの謎解きや解釈をするのは文学やロックみたいで楽しいけれど、一般人にとっては直観的プレイを妨げやる気を削ぐ「へんなルール」にしか見えないわけで、ボードゲームのデザイナーは一見して自明ではないルールはその理由をしっかりと明記公表してほしいと思う。

大抵のゲームにそうした非直観的ルールはあり(チケライが残り列車2個で終わりとか、コロレットは人数が何人でも15枚目に終了マークを入れるとか)、そういうのは家族や非ゲーマー友人への説明時に Why? と言われて困るのである。カタンの8枚バーストも同じだ。

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というわけで、これでグレンモアの全てのルールが落ち着いた。以下の2点だけハウスルールを適用:

【最終手番】「ラストタイルが出たら終わり」ではなく、「全員もう1手番やって終わり」というチケットトゥライド方式。自分の最後の手番は正確には知れないので(最後のプレイヤーが何タイルスキップするかで大幅に変わる)、最後に1手番がないと悔いが残りすぎる。
【Loch Oich】全部のタイルを一度だけアクティベートできる Round 3 のパルプンテ的タイル・Loch Oich は、終盤に出ると際限なく点が入り興ざめなので、R2 タイルの中に混ぜるとちょうどいい(BoardGameGeek ではこのタイルを抜いている人もいる)。これは必須の変更だと思う。

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■11/10/11(火) □ なぜ新しいゲームを買うのか
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夜Mとチケライ Euro をやり、熾烈なレースを楽しみつつもグレンモアで生産したいなあと思う。ゲーム後さりげなく「じゃあ新しいゲームも見てみる?」と持ちかけると、「私はおなじみの古いゲームをやりたいのだ、新しいのはイヤだ」と断られた。そんな理由があるかしら(泣)。

「チケットトゥライドをまだ楽しんでるのになぜ新しいゲームを買うのか」とも言われた。そんなことを聞かれても....(汗)。飽きたから買い換えるわけじゃなくて、まだ見ぬ新しい面白さを足していきたいのだが。Mはボードゲームが俺の趣味だということ自体気づいてないんじゃないかと思う。

新しいゲームをやりたいのは、簡単にいえば今までしたことがない体験をしたいからだよな。優れた新しいゲームをやるたびに、目からウロコの快感を味わえる。カルカソンヌのシンプルさと深みの落差を超えるものはさすがにそうないだろうが、グレンモアでも新しい体験が毎日できている。

昨日のようにフォーラムや Twitter でファンとゲームの評価や解釈論議をすることはとても楽しい。作品を味わい作者の意図を解釈しそれについて考え語り書くことが楽しいのは、文学音楽映画スポーツTVゲームといった趣味となにも変わりない。

つまり家族と楽しく晩飯後の時間を過ごすことだけがボードゲームの目的なのではなく(うちの奥さんはそう思っている)、新しいボードゲームのシステムを味わい驚き楽しむこと自体が趣味として面白いのだよ。奥様にはそこがわかってもらえないので、新しいゲームの導入にはいつも苦労するのであります。

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■11/10/17(月) □ バドミントン最高
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【バドミントン2回目】うちの前で毎日練習し、「ジムでは風がないから外でやるよりずっと簡単に打てるよ」と萌に言っていたのだが、期待通り萌は先々週よりはるかにクリーンに打てるようになっていた。それに今日のコーチは中国ではかつて名の通ったプレイヤーだったのだろうと思わせる美しいフォームのおじさんだったのだが、これが先々週のひっつめ髪女子よりもさらにいいコーチで、体の前でしか打てない萌の弱点を矯正するために何度も何度も手本を見せ、フォームを修正してくれた。

萌はつまり両目のセンターで捉えられる体の真ん前で打つときは確実に打てるのだが、体の側方では遠近感が変わるためかからっきしミートできなくなる。だから横に飛んだシャトルは空振りするし、近くにきたシャトルも常に体の前方で打つのでフォームが崩れ、バックスイングを取れないのでインパクトが弱い。シャトルをサイドで捉えることで強く打てるようになるし、動体視力と空間認知を鍛えることができる。なるほどー。

運動音痴の萌は1回は言われた通りにできてもすぐにダメになってしまうのだが、コーチは辛抱強く何度も何度も教えてくれた。体の側方でミートすることはまずサーブで練習できるので、うちでもやらせよう。バドミントンは最高だ。



【追記】2012/06/09
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■《グレンモアざっくりインスト試案》
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グレンモアはクイックでいいゲームで、タイルを買って、置いて、アクティベートという三原則に従えばすべてがきちんと動くクリーンなゲームでもあるのだが、ルール説明は相当にめんどくさい。そこでタイルの補充や作物相場、ミープルの移動法など細かい処理や説明はすでにわかっている人がやりながら教えてあげるという前提で、どこまでルール説明を単純化して未経験者をゲームに導入するかを考えてみた。まあ、めんどくさいゲームが嫌いなうちの奥さんにいつかインストするための覚え書きである。

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■1) ゲーム概要
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□スコットランドの村で作物を作り、その作物を売買したり強力な城や店を買ったりして村を発展させるゲーム。
□タイルを買って自分の村に置くとその地区が活性化し、接するタイルのすべてで生産や商取引などが起きる(「アクティベーション」)というのがゲームの特徴。
(この2点を説明したらもうゲームを始めてしまう。)

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■2) 手番でやれること(三原則)
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□【1. タイルゲット】タイル(畑/店/城/村ワーカー)は中央の町(市場)から取る。常に最後尾のプレイヤーが手番となる。
○タイルの購入に作物が必要な場合は手持ちの作物を使うか、足りない場合は初めに6金配布されるお金で作物を買って支払う。
【追記】ゲームの終わりに村のタイル数を数え、最小村からの差分x3点の土地税がかかることを説明しておく。安い資源タイルをガシガシ取り作物を増やすとゲーム進行上有利だが、あとから重税がかかるというシステムになっている。


□【2. タイル配置&アクティベート】タイルを自分の村に置く。
○ワーカーがいる地域にしか置けない。タイル置きルールを実例で示す。
タイル右下に「取得ボーナス」マークがあれば、最初にそれが産出。
○続いて置いたタイルとそれに接する八方のタイルすべてで1回ずつ作物生産、ウィスキー醸造、ポイントゲット、ワーカー移動などなど、タイル下中央に書かれた生産活動(「アクティベーション」)が起きる。アクティベーションは自分が最適と思う順で自由にできる。アクティベートで麦を作りそれを隣接の酒蔵で酒にするというのが典型的な手順。

□【3. 作物の売買】
作物の売買は手番中何度でも自由にできる。アクティベートで出た石を売った金で麦を買い酒を作るなんてこともOK。買いだめ(買っておいて手元に置き後で使うこと)だけは市場経済を壊すのでできない。

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■3) 得点法(五種)
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□【1. 作物→肉屋/歳の市】作物を売れば即勝ち点ゲット。
□【2. 城、湖】出てくるごとに各種効能を説明。最終ボーナス点がつく強力タイルは念入りに。各城タイル用の効能カードを見えるところに出しておく。
□【3. 麦+蒸留所=ウィスキー】酒は売れないが村を潤し(?)、3つあるラウンドの最後に点となる。リセットがないので同じ酒樽で最大3回点が入り、序盤に作れると強力。後半に飲み屋も作れる。
□【4. ワーカー引退→首長】「ワーカー移動」アクションで余剰人員を引退させ村の首長にすることができる。これが村のステータス(?)となり、酒同様リセットなし最大3回得点。城ボーナスと合わせると強力。
□【5. 城・湖の所有数】酒、首長と同じく各ラウンドの最後に最大3回得点。

○各ラウンド最後のタイルが出た時点で、上記酒・首長・城所有数の《ラウンド精算》をする。最小保有者からの差分で計算する。この「差分」概念は説明が面倒なので、経験者がさくっと計算。

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■4) ゲームの終わり
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□R3の最後にはラウンド精算に加え、城ボーナスの精算、1金x1点の換金を行い、
最後に土地税を払いスコア確定。最小タイル数の村との比較で超過タイル数x3点の土地税を払い清算終了。



◆こうして書くとサマライズしても相当にルール量が多いが、実際にやりながらだと簡潔に説明でき、娘にはわずか15分で理解し遊んでもらえた。一度やってもらえば、あとは各タイルの効能特徴をプレイしながら教えていくだけで、誰にでも村の機能をデザインし戦略を練る楽しさを味わいつつ、経験者といい勝負がしてもらえるゲームなのである。

2011/10/15

ソリテアで楽しきグレンモア

「新ゲーム候補・グレンモア」「ひょろひょろバドミントン」「初の居残り」「予想以上に難しいグレンモア」「資料を揃え本格研究」「楽しくなってきたグレンモア」

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■11/10/02(日) □ 新ゲーム候補「グレンモア」
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こんな感じに個々の小さな集落ができる
「ボードゲーム 拡大再生産」でひたすら検索を続けて、ついにプエルトリコより軽そうなゲームが見つかった。「グレンモア」という、スコットランドの牧草地帯をタイルで表したゲーム (iska の道楽日記「そこそこの時間で楽しめる拡大再生産ゲーム」)。土地の購買、資源産出、加工、売却、建物効果と俺がほしいものが全部あり、ルールを読んでいるとワクワクしてくる。これは面白いに違いない。45 分で終わり、2人戦もきっちり面白いとのこと。これだ。

問題はチケライと違い、萌とMが気に入り、やろうと誘ってくれるような軽さと華やかさに欠けていそうなことだな。タイル1枚1枚はきれいだが、機能タイルなので並べても景観はできず美しくないのである。カルカソンヌみたいに美しい領地ができ、そこに建物があるという絵柄になれば印象は全く違うのだが。

それに建物種類が多い=処理が煩雑ということなので(だからいろいろできて面白いのだが)、導入に失敗するとプレイを拒否されそうである。その辺はやってみないとなんとも言えない。


グレンモアの元ネタ? アルハンブラ
これと見た目がそっくりでファミリーゲームとして評価が高いアルハンブラというのも浮上している。これはみんなが問題なく楽しいだろうが、ルールを読むと「カードを集めタイルを買い並べて各色が多いものがポイント」とある。つまりチケライとカルカソンヌとコロレットがあるうちでは、このゲームで新しい要素はないわけだ(笑)。やっぱ町を作ったら生産したいに決まってるわけで、アルハンブラプレイヤーのその当然の欲求がグレンモアを作ったに違いない。

ボードゲームで生産をしたい。プエルトリコやサンファンの面白さを、萌とMにもやらせたい。別に勝たなくても自分の町構築と生産と拡大が楽しめれば、萌もMも喜ぶと思うのだ。

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■11/10/04(月) □ ひょろひょろバドミントン
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手足がひょろひょろと伸びすぎて運動神経が鈍い萌の hand-eye-coordination(動体視力系)と敏捷性を鍛えるため、今日からバドミントンのレッスン。行ってみたら生徒とコーチが全員アジア人で、ああそうか、バドミントンはアジアのスポーツなのかと気がついた。中国とマレーシアあたりが強豪だったもんな、たしか。

そしてヘッドコーチは頑固そうなオヤジで、意外やお楽しみ要素皆無のシリアスクラブだった。上級者は素振り百回、萌たち初級者は床に投げられた羽根を素早く拾い投げるという反復練習から始まる。うひゃー、こりゃマジだ。

萌はナニコレなんなのという顔で嫌々やっているが、なにしろ羽根を投げるとき左を前足に2軸動作で投げることすらできない運動音痴なので、体を動かせば何をやってもためになる。右を前足でしばらくやっていると、コーチが直してくれた。よしよし。過去に萌が入ったスポーツクラブの中にはやる気がまるでないコーチも多く、こういう明らかに駄目なフォームを放置されたりもしたのである。このクラブはためになるためになる。


ほんとにヒョロヒョロな娘ざんす
次にようやくラケットを持ってサーブの練習。萌は当然ながらまるで羽根にラケットが当たらない。これはまあ予期した通りで、萌が空振りを続けていると中国体育公司羽球部出身風ひっつめ髪の女子コーチがやってきて(萌によるとやはり英語は少しなまっていたとのこと)、羽根から手を放し落ちてくるところを迎え撃つのよという感じでコツを教えてくれる。これで 1/2 回くらい当たるようになった。萌は遠目にもうれしそうである。よしよし。

しかし回りのレベルが高いのが予想外だった。体育館のこちら側半分の上級エリアで全力ラリーをやってるシリアスにうまい小学生たちは、どう見ても中高で州選手権を目指すような子たちだ。このクラブはおそらく地域で真剣にバドミントンに打ち込む子供が入る、虎の穴的クラブなんだろうな。

続いてシャドウレシーブ動作をしてからバックステップしオーバーヘッドで打ち返すという練習。これはもう動体視力ゼロの萌には無理に決まってるのだが、それでもサーブをくれる子がかなり上手でいい弾道のサーブをくれるので、1/4 回くらいは打ち返せていた。これも楽しそう。こりゃいいぞ。これまでやったサッカーやホッケー、つまり下手な子は手も足も出ずただ立ち尽くすだけだったチームスポーツとは違った手応えがある。

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ジムから出てくると萌は、超楽しい、もうバドミントンに夢中だと声が弾んでいた。やっぱバドミントンは楽しいよな。ラケットを使うスポーツで一番素人が楽しめる種目だろう。羽根がゆっくりと落ちてくるから、駄目かと思っても間に合うんだよね。私も高校の時大好きで、県大会に出てる選手に挑戦して1ポイントも取れずヘロヘロになったりしたよと体験談を話す。頑張って楽しんでくれ。うちの前の道でも練習できるしな。

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■11/10/06(木) □ 初の居残り
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この学区だけかもしれんが、カナダ小中学校では百科事典みたいな巨大ハードカバー数学教科書を生徒がレンタルして代々使うというシステムになっている。5キロもあるバカ本(いったいどうやったら数学教科書をあんなにでかくできるのだ)を子供が毎日運ぶことが馬鹿馬鹿しい上に、レンタルなので理解を助けるために書き込みすることもできない。さらに宿題では、教科書が手元に残らないからだろうが数学設問の文章までノートに書き写せと命じられる。信じられん。そんな無意味拷問的作業はやめろ答えだけ書けくだらんと俺は昨夜萌に命じたのだが、そのせいで今日彼女は初の居残りになってしまった。

もう我慢ならんと低能固陋数学教師マダムザザ(仮名)に抗議しに行くと、高圧的でいかにも物分かりの悪そうな銀髪の鬼婆……ではなくて、俺よりずっと若く優しそうな先生が出てきた。ありゃ。こりゃどうもとなぜか途端に冷静になった俺は、紳士的態度で質問する。「―――文章問題のコピーなんて意味のないことはやめろと私が止めて、それで娘が居残りになり悪いことをしたと思ってるんですがねえ。一体なぜ文章をコピーせねばならなかったのか。いかような教育的意図がそこにあるのでしょうかねえ?」

するとマダムザザは全文コピーなどとは言っておりませんわ、テストのため復習する際ひと目でわかるよう、また生徒が各問題について実際に考えたことを示すため、問題の要点をノートに書き留めなさいということなんですのよと答える。

なるほど。すると全文逐語コピーじゃなく、単に《自分のための要点メモ》でよいと? ――そうですわ。そうですか。そうですわ。――といったあたりで談話終了。本当はこの膨大な量の宿題を全部やめてくれ、これじゃあんまりだ子供ライフが台無しだと言いたいのだが、他の生徒もいる手前そこまでは言えなかったのであった。まあ一歩ムダ削減か。やれやれ。日本の学校は詰め込みで海外の学校は自由だなんて、まったくの嘘だよな。どこから発生したのかという都市伝説のたぐいである。

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居残りになって悪かったね、先生とは話したよと謝り、萌と家に帰りバドミントンをした。萌は本当に動体視力がないのだが、それでも振りを小さく速く、シャトルは落ちてくるのに時間がかかるから、よく見てステップすれば落下地点に入りフォームを崩さず打てると指示していると5回くらいラリーが続くことがあり、気持ちいーと叫んでいた。よしよし。とにかく敏捷性とボディバランスと判断力と動体視力、このすべてを鍛えていこう。

晩飯後暗くなってシャトルが見えなくなるまでもう一度バドミントンをし、そのあとまたパフュームのビデオを一緒に見たり、友達のことなどいろいろと話をしたりした。やっぱTVを消すと話が弾むな。

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■11/10/07(金) □ 予想以上に難しいグレンモア
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ニューウエストのゲーム屋でついにグレンモアをゲット。あそこのオヤジは俺がこれで購入4~5個目だというのに、そして俺はおそらくそれなりに珍しいだろう外国人ゲーマーだというのに、毎度ありがとう的態度が全然ない。カナダじゃ珍しいくらい口下手な人らしい。

「グレンモア」は箱を開けてみて驚いた。ち、小さい。タイルはカルカソンヌより1回り以上小さく、城カードも小さく、説明書とそのフォントまで小さい。トラベル用ミニチュア縮刷版ゲームという感じ。小さいタイル上の極小アイコンは正直見えない(見えないほど極小なアイコンは1枚だけだったので、これは木と石と覚えてしまえば支障はなかったが)。箱の仕切りも他のゲームの流用で、パーツが全然きれいに収まらない。いろんなところでコストをカットしていることをヒシヒシと感じる。

ともあれソリテアで始めてみると、やはり連鎖処理が難しい。置いたタイルの8方向がアクティベートするというのを忘れそうになり、まごまごとキューブを置いていく感じ。産物は思ったよりも大量に産出し、市場に売れる量は決まっているので処理に困る。

3周くらいしたところで産物をポイントに交換できる Annual Fair(歳の市)を取れ、これで余剰の産物を一気に5点に変換。うおー気持ちいい。これだ。序盤はこの Fair の回りに俺の村を作っていけばいいのだ。次に持ってない産物を買ってそれを使い初めて城を買い建てる。美しい。これを建てることでまた産物が出て、購入費用はその場でペイできる。楽しくなってきた。

ソロ(相手はダミー1名)で1回最後まで回してみた感想は、やはり難しい。置いたタイルに接する全タイルにアクティベーションが起きるというのはカルカソンヌの建築士と似て人工的で非直観的なルールなので、えーととこれか、いやこれはさっきもうやったかと考えないと処理できない。かなり慣れが必要だ。中間決算も最終決算も、どれを計算するんだっけと悩む感じ。全体にまごついている。これを家族に楽しんでプレイしてもらうには、よほど俺が熟達し、ルールをスムーズに説明し処理を明解にやらないと無理だなー。

それに処理手順が説明書からはわからないものがいくつもある(ネス湖の処理など)。このルールの曖昧さが片付かないとゲーム全体を集中して楽しむに至らないという感じ。そうした細々を BGG で調べ整理してからでないと、当分対人プレイはできなそうだ。ルール全体は REDHAWK_Black さんの写真付き日本語ルール解説ページをメインに、わからないところを BoardGameGeek(英語)で検索する感じで進む。

もう一度プレイすると少し流れが出てきたが、家族ゲームとして捉えるとこれは難しすぎるかもなー。これがもし家族でプレイできなかったら、あきらめてカタンの中古でも買おうかと思いつつ寝る。

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■11/10/08(土) □ 資料を揃え本格研究
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グレンモアをやりたくてバキっと目を覚まし、これまで手に入れておいた資料を精査し、「特別な土地」写真一覧と、各タイルの詳細を俺が整理しなおしたチャート、ルールサマリーの計3枚をプリントした(どれも英文)。これでようやくプレイに支障がなくなる。カードを使うゲームはすべて、最初からこれくらいしといてもらいたい。

ソロ3回目は森を取っておかなかったのが失敗で、R3 の段階では取れるカードがなくなり手詰まりになってしまった。失敗した、やり直したいと強烈に思う。そう思うということは面白いということだ。面白さレベルとしてカタンくらいになってきた。

これは想像してた自分のイメージ通りの町を作るという感じのゲームではなく、手に入るタイルを組み合わせポイントを搾り出していくゲームだな。初期の生産地がだんだん内陸になりアクティベートできなくなるので、得点法を新たなプランへとシフトしていく必要がある。そこが難しく考えどころだが、重要なウイスキー工場を初期に建てても、だんだんその工場のアクティベート機会が減るのでそれだけで独走はできないという優れたバランス取り装置にもなっている。実にクレバーなメカニズムだ。

資料も揃ったしおよそのプレイ感覚は掴めたので、1人2役+ダミー1名の2P戦をシミュレートしてみる。赤と黄で黄をメインにプレイ。赤に工場を取られウイスキーは作れん、ここは肉屋と歳の市作戦だとサンファンのように見通しが立つようになってきた。プラン通りに歳の市でコツコツ稼ぎ、最後に教会のアクティベート効果で産物を5色揃え、それを歳末大歳の市(一番大きな Fair)に出し 12 点を加え、53 点。よし、会心の勝利。面白い。

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夜最後のソリテア2P戦は 62-61 と驚くべき接戦。一日中ソリテアをやってみて現時点での感想としては、戦術がやや単調かなというところ。少しやれば木と石と麦(ウイスキー)がなければ駄目とわかるから、ソリテア2P戦では序盤はまったく同じミラー戦術になってしまう。そして主要な得点源であるウイスキーを競って生産し、中盤の引きでできるだけいい城を取ろうと努力し、最後のまとめで歳の市を使って終わるというパターンに固定しかけている。これじゃちょっと戦術的に淡白すぎるな。

しかし BoardGameGeek を読むと、ウイスキーなしで勝てるという人も多い。明日はウイスキー対それ以外でやってみよう。

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■11/10/09(日) □ 楽しくなってきたグレンモア
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【ウイスキー対それ以外】赤がウイスキー量産に成功し大量9個生産。タベルナも合わせて 62 点のハイスコア。黄はテストのためウイスキーをわざと生産せず、肉屋と歳の市で稼ぐつもりだったのだが、畑類をあちこちに分散させのが失敗で一向に売るものが取れない不作に悩み、村x3点の城で一矢報いただけに終わり 49 点。ウイスキーゼロで進むなら畑類を集中させ、毎回順調にアクティベートできるよう最低でも牧場・肉屋・畑のどれかをダブルで量産体制にすべきだったのだろう。

しかし赤にはザクザクと作物が出、黄は不作に悩みつつ大物城タイル獲得にギャンブルで逆転を狙いと、別の戦術を取ったことにより明暗が分かれ面白いゲームだった。昨日の2P戦は全部同じ戦術だった(それしか俺にはできなかった)からイマイチだったんだな。

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萌とのバドミントンの合間に、ウイスキーなしで樽(ウイスキー生産)農家に勝てる方法はないかあれこれとトライを重ねる。何戦目かで樽農家に2件目を取らせないために自分が蒸留所を取り、他は思うようにプレイして熱戦となる。結果としてまた樽プレイヤーが勝ったが、これはウイスキーなしでも勝てるなとわかってきた。樽と同等の点を取れる首長などのオルタネイティヴ得点源も豊富に用意されている。今度は肉屋&首長点戦法を試してみよう。こうしていろいろ戦術を考えること自体がやはり楽しいタイプのゲームである。BoardGameGeek の戦術・ルールフォーラムを読むのも楽しい。


小皿がたくさんほしくなるキューブたち
こういうキューブやチップがある本格ボードゲームを持つのは初めてだが、サイズ的にミニチュアとはいえやはりなんともいえない気持ちよさがある。作物がじゃらっとタイルに乗るのは理屈抜きにうれしいし、スコアも実はカルカソンヌのスコアボードを使ったほうが計算は楽で正確だが、自分のアクションの結果チップをもらったり、それをまとめて両替することにはなんともいえない満足感がある。チップは単なる厚紙なのだがさすがは Alea という大メーカー製で、数枚手に取るとチャリっというプラスチックとは違ったいい音がする。たまらん\(^-^)/。

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■11/10/10(月) □ ソリテアで楽しきグレンモア
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グレンモアソリテアを続行中。1人2役でも付属の特製サイコロによるダミーが頑張ってくれて本当に面白い。マーケットの取引もサイコロがやってくれるともっと面白いなと思い、ダミーが生産タイルを取ったらその作物価格をサイの目に従い上下している。現在の価格より上のサイの目でそこに止まった場合はアップ、逆はダウンという感じ。これはやってみると非常に良い塩梅に働く。

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┃ ソリテアのみのグレンモア感想 ┃
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戦術的バラエティは期待通りに多彩で面白い。その分悩むことは多く、相当に慣れてもタイルの選択には時間がかかる。カルカソンヌなら「ここに置けるタイルがほしい」という待ち受けポイントを作り、出たタイルを見て次の手をほぼ瞬時に判断できるのだが、グレンモアは取れるタイル約 10 枚と自分の領地を見比べて、最も有効なポイント産出メカニズムを発見しなければならない―――というかしたくなるので時間がかかるわけである。まあ俺は1人2役ゲームなので、待ち時間に次の手を考える暇なく2人分をずっと考えており、それで時間もかかり悩むというのもあるが。

このように考えどころが複合的でときに難しいこと、システムがやや非直感的でとっつきが悪いところ、見た目が小さく視認性が悪いところ、そしてルールブックに不備がありこれだけではプレイしにくいところ(※)と、欠点はある。しかしゲーム自体のデキは素晴らしい
(※)BoardGameGeek のグレンモアフォーラムではルールの議論が一番多く、ファンによる英語版全文改訂訳が出ており、フォーラムではこっちが公式ルールになっている。
とっつき悪さの壁を突破すると、すべてのルールは「取って置いて自由にアクティベート、売買はいつでも必要なだけ自由に」という3つほどの手番原則に則っており、妙な例外はなく、その原則通りにプレイすればほとんど何をしてもいいゲームなのだとわかる。超自由度が高いのだ。何をしても壊れないほどシステムは堅牢で、そして間違いなく面白い。カルカソンヌにほしかった生産要素が加わり、カタンではサイの目に翻弄されコントロールできない資源産出が自分でデザインでき、プエルトリコでは限定されていた得点法がより多岐にわたっている。これは面白いに決まってると、購入前にルールを読んで想像した通りの面白さがある。

今日最後のソリテアでは、赤が樽5差をキープし順調に進み、強力城タイルも有効に使い大量 55 点を取る。黄は初期は樽の5差を削ろうとしたがあきらめ、首長点を増やすメイ城もダミーに奪われたが、産物を選択して出せる「アイオナアビー」と毎ターン1タイル余分にアクティベートできる「ネス湖」を組み合わせ、毎ターン確実に3種の産物を揃えて小市場に出し 5pt を生み出す省燃費エンジンを組み上げ、村数×3pt のデュアート城ポイントも加えて 61-55 の逆転勝利。やっ・た。ウイスキーなしでの完璧な勝利。サイコー。これが Youtube でレビュアーが言っていた「小さな得点エンジンを組み上げる喜び」だ。これはカタンでもプエルトリコでも味わえないのである。

というわけで夢見たような牧歌的な箱庭ゲームではなかったが、俺にはプエルトリコよりもはるかに面白い。まったくゲーマーではない家族が楽しんでくれるかはわからんが、1人2役でもどちらかを勝たせたいと思えば、知恵を絞りスリルに胸が鳴るくらいに面白い。ダミーがよく仕事をするとは事前に読んでいたが、1人2役でも面白いというのはボーナスだった。ありがたや\(^-^)/。

2011/10/05

日記「カナダの大声生活考」

「クラリネットの異常な難しさ」「フレンチエマージョン非効率」「パフューム礼賛」「サクセスな日」「安定ゲームはボリュームに支えられている」「ストーンエイジ期待はずれ」

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■11/09/24(土) □ クラリネットの異常な難しさ
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吹奏楽に入った萌がレンタルしたクラリネットを吹いてみて、なんと音を出すのが難しい楽器なのかとびっくりした。リードがついてるから金管より楽だろうと想像してたのだが、リードが全然振動してくれない。あれこれトライしているとたちまち酸欠になる(ハァハァ)。

リードの取り付け方が悪いのかと教本を見てみたが、これがいかにも英語世界の教本で、「マウスピースの平らな面にリードの平らな面を髪の毛1本分ずらして…」と文章で書いてある。図を1個つければ一発でわかるのに。クラリネット本体の組み立て方も図がなくて苦労したのだ。

ともかく萌に課題その1をやらせてみると、G を吹いても G の音が出ない。ピアノで音を取ると F になっている。なんなんだこれは。もしかするとこのクラリネットと教本の「Bb クラリネット」というのが違うキーなんじゃないのか? わからん(※)。
(※)ネットで調べると「クラリネットの解放音は G(実音 F)」という記述が見つかる。意味がわからん(苦笑)。


あとで調べたら日本の教本の
ほうが指使いの指示まであり、
親切だった。やはり。
英語で書かれたマニュアルはほぼ全部バカだと俺は思っているが、クラシック楽器教本はそれにバカの輪をかけている。これほど音が出ず教本がヘルプにならんと、モチベーションを保つのは非常に難しい。

というわけで萌はげんなりして中止したのだが、そこへ帰ってきたMがさらに萌に吹くよう命じ、どう努力しても出ない音は出ないので、萌はとうとうフラストレーションに泣いてしまった。これは難しい楽器を選んでしまった。はあ。誰でも弾けるギターはなんてラクな楽器かと思う。

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午後は気を取り直し、萌の学校裏のリバートレイルへ萌を連れていく。前回学校のMTBクラブでここを走った萌は靴ひもが絡まって転び、自転車も不調で皆に置いていかれてしまい、付き添いの先生と2人だけで落ち込みつつ彷徨ったのだそうだ。今日は自転車の調子は完璧だし靴も安全なやつに買い替えたしで、萌もうれしげな爽快ランだった。

帰りは萌に案内させ、迷って彷徨い見つけた道から学校の敷地内を通って帰る。これは前回の失敗でくじけたMTBマインドを癒し自信を培うのに最適なツーリングだったろう。

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■11/09/25(日) □ カナダの大声生活考
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NHKドラマ「生むと生まれるそれからのこと」を見る。こういう声の小さな日本人たちの物語は大好きで、実に面白いと思う。俺がカナダのTV番組にまったく興味が湧かないのは、これの正反対で大声のアメリカ・カナダ人の怒号とジョークに満ちているからだよな。

どんなことでも大声で明確に言語化しないと意志が通じないのが、カナダ生活にまつわる最大の疲労だ。老若インテリジェンスに関係なく皆さん察しが悪く、何の話をしてるかがわかるまで理解のスイッチが一切入らないという感じ。話の大半を喋ってから「いったい何の話なのだ」と険しい顔をされると、いやもういいすよたいしたことじゃないしとコミュニケーション心が折れる。

俺の喋りが下手なのはあるとしても、話を聞きながらコンテキストを類推し耳をチューンしていく能力が、カナダ人は日本人よりだいぶ低い。MKのように、どう切り出しても俺が何の話をしているか一発で察してくれる人のほうが珍しい。MKの体と声はでかいが、聴覚というかコミュニケーション力は声の小さな日本人的なのだ。

日本人はコミュニケーションが下手だのなんだのとよく言うけれど、英米加人はギャップがあっても体力で強引に乗り越えコミュニケーションするというだけの話であり、言語化未満の疲れないコミュニケーション能力では、日本人のほうが格段に上だろうと思う。

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■11/09/26(月) □ フレンチエマージョン非効率
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今日も萌が延々と宿題に時間を取られる。あまりに遅いので何が問題なのかとチェックしてみると、フランス語の新語を辞書で調べろという課題で、その語義をフランス語で書かないとならないので頓挫している。萌の持ってる辞書は仏英だけなので、意味はわかっても答えを仏語で書けないのだ。

そこでオンライン辞書サイトに連れていき、仏英と英仏辞書を並列で開かせ、コピー&ペーストで作業を大幅に効率化して残り20個を終わらせた。こんな課題はさっさと済ませていいよ。紙の辞書でコツコツ調べたほうがいいなんて私は全然思わないから。だいたい言葉の意味をその言語で書けといわれたら、それはどんな言葉でも相当に大変な課題である。無神経にそれを30個も出すほうが悪い。

カナダ中学仏語科(フレンチエマージョン)ではこうしてすべてをフレンチで書かねばならず、宿題に限らずそれが子供の労力と時間を無駄に奪っているように思えて仕方がない。外国語を習得するにはその言語漬け(エマージョン)にするのが一番という考えに基づいているのはわかるが、その考え方自体が疑わしい。喋るのと聞くのはそれが最良に決まっているが、覚えることや考えることはすでに備わった母語とそれにより構築された思考方法を活用したほうが効率が高いと、俺は実体験から思う。

俺は英語は日本で日本語の教本を買っての独学だったが、もしカナダに来て英英辞書しかない環境で英語を学んでいたら、耳と口は短時間でより高いレベルまで達したろうが、語彙と文法は耳と口のレベルに追いつかなかっただろう。

今萌がいるのはそういう環境だと思うのだ。選択可能な仏語学習環境で最強なのはわかるが、効率は悪いと思う。効率の悪さゆえカリキュラム的には英語の学校より遅れているだろうし(別にカリキュラム進度など気にしてはいないが)、宿題も他の学校より多い上に、数学の宿題をやるのに子供が問題を英語に苦労して訳しない限り親はヘルプできないわけで、馬鹿げた時間と労力がかかる。高い負荷で目的を達成するのだから、これは一種の詰め込み教育である。まあ本人が文句を言ってるわけじゃないから、とことんサポートしていくしかないが。

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■11/09/27(火) □ パフューム礼賛
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このビデオのパフォーマンスも
衝撃的にかっこいい。
パフュームにめちゃめちゃはまっている萌がMに「ボイス」のビデオを見せたのだが特に反応はなし。後から「あれはどういう歌なのだ、恋とダイヤモンドがほしいという(よくある)ポップソングなのか?」と聞かれ、歌詞を改めて読んでみると、なかなかいい。未完成でぎくしゃくしたカップルが、声が聞こえれば一瞬の恋に胸がときめくという歌らしい。

パフュームってじっさい歌詞がどれもいいよな。新しいアパートに入ったときめきに踊る「ワンルーム・ディスコ」とか。その歌詞も合わせて紹介し、「というわけで俺は彼女らの音にはあまり興味はないのだが歌詞はいいし、あのダンスの動きは革命的だと思う。萌が好きになるのも道理」と説明。

さらに「髪を染めてないし、セクシーなことをせんし、喋るとバカじゃなくて感じがいい」とパフュームの美点をとくとくと説明してしまった。何をやってるんだ俺は。だけど言いながら気づいたのだが本当なんだよな。パフュームには Jpop 的ボンクラさがない。「信じて待って」ないで自立している。

アイドルというよりスポーツに打ち込んでいるアスリートみたいな強靭さが感じられる。あんな、体のキレ的に何歳まで続けられるのかと心配になるほどの研ぎ澄まされたダンスをやってること自体が、アスリートでなくてなんなのかという感じである。なでしこジャパンである。パフュームが司会をする MUSIC JAPAN に出る「ダンスユニット」系の人たちは、達人の前で演武をやらされる白帯みたいにカタくなってることだろう。

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驚いたことに、萌は何も教わってないのに自力でクラリネットの音が出せるようにになってしまった。もうメロディを探して吹いている。吹いてるメロディのレベルはリコーダーと変わりないが、最初は俺も萌もロングトーン1つ吹けなかったのに自由に音を出せるようになってしまったのだからすごい。子供の対応力恐るべし。

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■11/09/29(木) □ サクセスな日
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今日は萌のMTB部2回目。バイクの調子は万全だし土曜に同じコースをテストランしたわけで、今日はいいツーリングができドロドロのハッピーで帰ってきた。

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夜萌の宿題を手伝いガガっと早めに終わらせ、よしじゃあ寝る前にコロレットでも一発やろうぜと誘うと、《声を出しちゃダメというルール》でやろうという。なるほどいいよとそれで開始すると、双方とも困る手を相手に打たれるたびにそれを指さし「□◇☆◆(ちょっとオイ…)!」と顔色で抗議するので、爆笑大盛り上がりゲームとなった。で俺の負け。

あまりに盛り上がったので萌が再戦コール。今度は俺がわざと小マイナス列を取り、萌に大マイナスカード列を残すというアグレッシブな戦術を取る。(ちょっとヒドイ!)(仕方ないだろう、どちらの列を取りなさいニヤニヤ)。これがうまくはまり大量13点ほどのマイナスを取らせ勝ったと思ったのだが、萌が拾っていた2点カードが意外や多く、またも負けていた。がくー。

しかしほんとに盛り上がった。クールなコロレットに不足しがちな熱さを、喋っちゃダメというおバカルールがうまく補ってくれ、ついにコロレットの実力がうちでも炸裂したのである。「うーん、そこか」と将棋みたく静かに唸りジレンマを表すより、大げさにジェスチャーで表したほうが面白いのだ。2回でわずか15分ほどのゲームで大いに盛り上がりスカッと気分がよくなった。コロレットは小さな高級チョコレートだ。物足りないけどすごくおいしい。

MTB、宿題、コロレットと今日は萌と俺にとっていい日だったなと、気分よく眠れる夜だった。ボードゲームは最高だな。人と一緒に盛り上がる以上に楽しいことはこの世にないわけで、ボードゲームは全てそれを至上の目標として作られているのだから、うまくいけばこれはもう当たり前に楽しい。コンピュータゲームで一緒にやり盛り上がるというのは、なかなか難しいのである。

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■11/09/30(金) □ 安定ゲームはボリュームに支えられている
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NHK「おひさま」最終回。この番組は悲劇とハピネスの挿話を波風効果として重ねているだけで物語はないと感じ、中盤以降見なくなったのだが、最終盤も相も変わらず波風要素だけが積み重ねられていた。最終回1回前にしてまーだ子供の怪我というワンポイント波風を入れている。

そんな一大事をお話1回分の波風要素として気軽に入れないでもらいたい。これはもう単なるシナリオ作者のボンクラさを超え、無神経さと感じイラっとする。その子供の描写ひとつ取っても、本当のあの子はあの演技よりもきっとずっと面白くけなげでかわいいだろうと思う。

子供には児童劇程度のセリフと演技しか与えられていないから、親子の交流なんてものも児童劇レベルになってしまう。手練役者たちがやってたことも、役者自身の魅力で補っていたが、実は全部児童劇レベルの芝居だった。甘味処のおばちゃん(渡辺えり)の芝居が典型例で、

あんなに強烈な役者が、孫がほしくて人がいいおばちゃん芝居要員としてしか使われないなんて馬鹿げている。彼女が出るたびにその能力が引き出されていないがゆえの違和感が生まれていた。同じく個性派の安藤サクラも単に田舎の嫁さんとして2回ほど出てきただけで、彼女を使う意味がわからなかった。全体として、これだけの役者陣と6ヶ月をかけてこれだけだすかの番組でありました。

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夜Mがゲームコールをすると萌が、チケライ Euro よりもコロレットをやりたいという。で昨日大盛り上がりした「だんまりコロレット」となったのだが、今日はあまり盛り上がらなかった。Mが長考しマイナスを避け慎重に打つため、テンポが悪いからかな。多少マイナスがあってもいいのだ、むしろある方が面白いのだと豪快にプレイしないと、コロレットは面白くならないな。

続いてチケライ Euro 。皆が上達し、常に盛り上がるようになったチケライの安定性は偉大だ。たとえ各々のチケットが分散しプレイヤー間の絡みが不足しても、お互いの路線のつながり具合を愛でつつ(うちはチケット達成時発表ルールなので、おーそこかなるほどおめでとうという感想戦がゲーム中ずっとある)、自分のチケットをどうつなげるか策を練り、高得点と最長路線を狙う熾烈なレース感を味わえる。

ほんといつやっても楽しい。これはやはり大きなボリュームが生み出すテーマとメカニズムの勝利であって、コロレットのようにコンパクトな短時間ゲームでその安定性を出すのは難しいのだろう。

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チケライでもコロレットでも満たされない生産の喜びを家族が手軽に楽しめるゲームを俺は真剣に探しているのだが、生産系ゲームで短いものって本当に見当たらない。サンファンくらいだろう。

これは生産ゲームの面白さもボリュームによって支えられているからかもしれない。その点で頂点に立つのが巨大農業ゲーム「アグリコラ」なのだろう。実際農業が好きなMにとっては夢のゲームだろうが、しかし1ゲーム最短で2時間とかとなると、週に一度プレイする機会があるかどうかとなる。真性ゲーマーでなければとても維持できないゲームだと思う。なにかないかなあ、短時間でできる生産ゲーム。

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■11/10/01(土) □ ストーンエイジ期待はずれ
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【2012Nov 追記】その後ネットでやり込んで、意見をガラっと変えました。こちら→「日記「ストーンエイジは大傑作でしたすいませんでした


ボードは本当に美しいのだが...
生産ゲームに憧れて、オンラインゲーム BrettspielWelt のクライアントを2つ立ち上げ、ルールを読みながら「ストーンエイジ」擬似2人戦を試してみた。

5ターンほどで食べ物がなくなり苦しみ、食糧増産に投資をしたくなる。しかし買えるカードは勝ち点ゲットのものだけで、こんな序盤にそんなものを買っても仕方がない。食料を増産する拡大要素があるはずだとここで資料をあたり、なんと建物は全部単なる勝利点で、「文明カード」も資源プラスボーナス点だと判明。地道な毎ターンごとの畑開墾と、道具開発によるサイの目増加しか拡大要素はないらしい。えー?

説明を読みつつ1時間ほどやってみて、①資材採集②開墾・道具強化③得点購入以外にゲーム上やることはないとわかった。つまりこれは生産物を売り建物を買ってその効果で発展していく、プエルトリコ的な拡大再生産ゲームじゃないんだ。資材を集め勝利点を買うゲームなんだ。

わかってしまえばあとは繰り返しである。生産がやりたい俺は勝ち点カードなど買う気はせんので、食料と資材を不足がない程度に集めるだけとなる。カードを買うのに必要な資材の種類もない。残り5枚の勝利点カードを買うまで終わらないので、まだ残り数十分かかる。やめよう。BoardGameGeek で「このゲームで時間がかかりすぎるなら、それは初心者が資材を溜め込みすぎ建物カードを買わないからだ」という意見があったが、勝ち点カードなんか買ってもゲーム上の効果はなくつまらんと初心者はわかるから買わないのである。ゲーム上の特典効果があれば買うに決まってる。

BoardGameGeek などですごく人気の高いゲームなのに、日本での評価が軒並み低いのを不思議に思っていたのだが、その理由がわかった。これほど美しいボードと原始時代という生産性山盛り的なテーマを持ちながら、「ストーンエイジ」のその全貌は、「資材をこつこつ集めて勝ち点購入」だけなのだ(【追記】 ここを心底研ぎ澄ませた傑作だったと、後に考え直し)。サイコロを使った資材集めは楽しいが、それが何かを作る喜びにつながらない。がっくし。まあ買わなくてよかった。


はあ。どこかに理想の生産ゲームはないものかと、今夜もまた検索にさまよい出る俺。

2011/09/29

日記「カナダの宿題地獄」

「生産系ゲームがほしい」「軍隊調のカナダ校則」「MTB特訓」「萌バイク完璧整備」

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■11/09/17(土) □ 生産系ゲームがほしい
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 雨音を聞き寒いなあと思いながら目を覚ますと、室温が19度まで下がっていた。ヒーターが入る温度だ。バンクーバーの秋は早い。痛い夏の紫外線が弱まると寒さが殺到してくる感じ。

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 今日はM&萌とコロレットを2戦やり、どっちもしっかりと面白かったのだが、チケライに比べると萌もMも反応は薄い。これは多分テーマ性のせいで、「町を作る」「長い路線を完成する」というお楽しみ要素がコアになってるカルカソンヌやチケライに比べると、「3色を集める」という目的が抽象的でファンに欠けるのだろう。コロレットの本当のテーマは対人ジレンマそのものなのだが、そこまで両者を引っ張るだけの輝ける魅力に欠けるのかもしれない。ま、地味だよなと。

 コロレットをこの程度しかやってもらえないならばと、また新しいゲームがほしくなってきた。2人から楽しく、小さなスペースででき、コインをためたり買い物や構築や再生産ができるゲームがほしい。

 生産ゲームがやりたくなって久々にカタン・デモをやると、やっぱり面白い。しかしこのゲームは古いので、不可避的な停滞が起こりすぎる。初期の選択と運が悪いと、何もできず何ターンもただサイコロを振るなんつーことが当たり前に起こる。状況に左右されず毎回なにがしかの進歩をできるプエルトリコのほうが、やはり優れたゲームである。

 この停滞時に例のバーストまで発生すると(8枚以上資材を持っているときに7が出ると、泥棒が入り資材が半分まで減らされるという理不尽なルール)、もう完全にやる気をなくす。これを買ってうちで実際にこんなゲームになったら、ヒドイといってみんな怒るだろう。

 カタンの美点は見ればやることが大体わかることで、そこは最新のゲームに勝っている。「世界の七不思議」なんかうちにPC版があるのだが、意味がわからずまったくプレイできない。このカタンの分かりやすさ、構築感、持ち物を拡大再生産していく楽しさがあり、2P戦ができて、停滞感(延々と何もできないターン)がなく、プレイ時間が短く何度でもできるゲーム。これが俺が欲しいゲームだな。きっとなにかあるだろう。いろんなレビューを読んで探してみよう。

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■11/09/18(日) □ 軍隊調のカナダ校則
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 萌の学校関連書類はまだ全部終わってなくて、今日は校則を読まされているのだが(親が読んでサインするのが義務になっている)、無茶苦茶細かく厳しい。「課題が授業中に終わらなかった場合は居残り、教師に電話許可票をもらい事務室から家に電話する」「電話許可票なしに電話は使えない」だって。なんでこんなに軍隊調なんだよ

 「わからなかったという理由で宿題を終わらせないのは許されない。なぜなら生徒はわからなかった部分は放課後教師か居残り当番教師に相談し、すでに解決しているべきだからである」―――そりゃ理屈はそうかもしれんが、わからないことだってあるに決まってるだろう。なんでこんな契約書調なんだよ、腹が立つなーカナダ中学校則

 日本に比べたらカナダの学校は自由というイメージがあるけれど、服装規定みたいな無意味な項目がないだけで、こっちのほうがずっと堅苦しいぜ。

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■11/09/19(月) □ MTB特訓
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 こないだ学校のMTB部の初ツーリング時、靴ひもがギアに絡み惨敗した萌のためにひものない靴を買いに行き帰ると、さっそくバイクライドに行こうと萌がいう。そうだな、じゃあと土手に行ってアップダウンの基本をやらせてみると、やっぱ萌は運動音痴で自転車が下手だ。小さな土手すらサクっと登れない。脚に力が入ってないと指摘してもやってるよという。俺が萌のバイクで登って見せ、ほらいけるよ、声を出してやってみなと何回かやらせると当然登れたが、これしきのことが言われないとできないんじゃ弱ったなと思う。

 リアホイールがロックしても自転車は転ばないということを体感させるために、広場でブレーキドリフトもやらせてみたが、イン側の脚をトンとタイミングよく着くという感覚がわからずスパっと滑らせられなかった。あまりコンコンというと楽しいバイクライドが嫌になってしまうので適当に切り上げたが、この運動音痴はなんとかせねばならない。MTB部は雨季になったら終わりなので、なにかインドアスポーツを探さなければ。

 萌の自転車は長いことまともに乗ってないのでギアの調整がおかしくなっており、チェーンが滑ってガチガチ音を立てている。張りが弱いのだ。明日直さなければ。

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■11/09/20(火) □ カナダの宿題地獄
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 萌の自転車修理。ネットでディレーラーの位置決め方法を探しギアの調整はほぼできたのだが、実は滑ってるのはチェーンではなくリアホイールのラチェットだと判明。つまりチェーンとリアホイールの連結部が空回りしてるのである。ガーン。要分解パーツ交換だ。自転車ってこんな故障があるものなのか。知らなかった。雨ざらしだったからかなあ。そういえばオレのもたまにガチっと滑るな。

 この場合ダメもとで CRC を吹いてみろと言われているので、やってみるとかえって悪化してしまった。これはもう乗ったらバランスを崩し非常に危ないので、修理に持っていくしかない。せっかくハンドルを高くし、ギアを調整し、自力でばっちり乗りやすくしたのになあ。まあ仕方がない。

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 毎日毎日晩飯後、萌は寝るまで宿題をやっている。せっかく目覚めたギターを練習する時間もない。宿題のおかげでファミリーライフがなくなっている。本人の要領が悪いせいもあるが(完璧主義で細部に時間をかけすぎる)、量も実際ありまくる。フランス語科で宿題は全部仏語なのでヘルプもできない。そして終わらなかったら翌日居残りだというんだから、えらい詰め込み教育だわカナダ公立中学。

 あさってから部活の朝練が始まり朝も早くなるわけだし、こんなんで正常で健康な子供生活が送れるのかと心配である。オールナイトニッポンなんぞを聞いて授業中寝ていてもやっていけた俺の中学時代とはえらい違う。現代の日本がどうなのかは全然知らんが、日本の甥たちの本読めなっぷり(※)を見れば、俺の頃と大差ないだろう。カナダ中学がこんなだなんて思いもよらなかった。
(※)クリスマスプレゼントに「カルカソンヌ」日本語版を送ったら、説明書が難しくて読めないとぬかしプレイしてないらしい(泣)
 Mに聞けば宿題を求める傾向は親から出ているとのことで、「ゲームばっかやってないで宿題やれ」みたいなノリがカナダペアレンツにあるのかな。Mたち反詰め込み教育学者たちが指導した世代の教師たちがメインストリームになるまで、こんな傾向は続くんだろうなあ。トホホ。

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■11/09/21(水) □ 萌バイク完璧整備
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 朝イチで自転車屋へ。症状を説明すると「これはラチェットとギアが分離できないタイプだからギアごと全交換だね」と言われる。ぐわ。修理代が高くつくならいっそ買い換えかと蒼白になると、「パーツが$15で工賃が$9だね」とメカは言う。「――へ?」「10分で終わるよ」「ぜ、是非にプリーズ!」。とまあ自転車業界って無茶苦茶良心的なのであった。


ペルジタのバイク。こんないいやつは
当時も今も買えないけど。
 日本でも俺が奥多摩の崖から落ちて壊した自転車を、東村山の名店ペルジタのおじさんがちゃっちゃと安く直してくれたもんなー。ダメージでゆるゆるになったフロントを、金ノコでフォークの根元を詰めタイトにし直すというハードコアな作業をおじさんが気軽にやってくれたのだった。あれはバイクで言えばヨシムラのオヤジさんがチューンしてくれたようなもので、俺はもう夢見心地であった。日本でもカナダでも自転車屋は優しい。自転車は素晴らしい。

 帰って乗り、もう一度ディレーラーを調整し直しブレーキの引きずりを取り、レバーの遊びを増やし、リムを掃除して鳴きを消して完成。バッチリだ。お金なんてかからない。自転車は素晴らしい。サドルとハンドルを上げてホイール2インチ分くらいポジションがよくなったので、萌はあと1~2年これに乗り、ティーンになったら 26 インチに買い替え一生乗ればいい。よし。

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 お母さんのプッシュで萌が入ることに決めた、学校のブラバンの担当楽器レンタル会に行く。日本だと楽器は学校に揃ってるわけだが、カナダでは個々が楽器屋からレンタルすることになる。萌の希望したギターはやはりバンドになく(吹奏楽にギターがあるわけがない)、第2希望のクラリネットとなった。

 クラリネットを初めて手に取って見てみたが、音程を変える可動の美しい金物が全体をうねうねと巡っていて超美しい。ヤマハ製。このウネウネは空冷バイクエンジンのフィンのようだ。

 しかし吹いてみると萌も俺も全然音がしない(笑)。あっという間に息が切れる。意外やこんな難しい楽器だったのか。まあなにか組み立て方に問題があるのかもしれない。

2011/09/17

日記「ミドルスクールに入学」

「コロレットのスコアカード」「コロレット2人用ルール(改)」「チャイニーズお月見会」「日韓歴史レクチャー」「萌ギターに開眼」

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■11/09/06(火) □ ミドルスクールに入学
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今日から萌はミドルスクール(=中学:当学区では11~14歳)。まだ授業は始まっていないが、「ミドルスクールはすごく違う、生徒の自己責任がすごく重い、それがうれしい」と高揚している。もう歩いて通っている生徒の方が多いくらいなので、自分も1人でバスで通いたいなんて言っている。セルフォンもほしいとか。まあまあそんなに何もかもいちどきに変える必要はないよ。

【WC予選ウズベキスタン戦】後半を朝ちょうど見れたが、日本はリズムが悪く苦戦していた。遠藤が怪我で調子が悪いそうで、本田不在と共にその影響があるのかな。憲剛がこのタイミングで怪我をしたのが実に残念。

後半香川がトップ下に入ったが、香川は狭い場所で細かくタッチしてシュートを打ってしまうという異能だけが際立つ選手であって、ひらめきと視野で味方をインスパイヤする選手ではない。岡田時代も見るたびにそれで物足りなく感じたしなー。

だからザッケローニは柏木を試したのだが、前の試合で芳しいところを出せなかったらしい。日本はMFの宝庫だったはずなのだが、インターナショナルマッチでボールを収め持ちこたえて前に出せる選手は中田ヒデ・本田以外に出てないんだよな。憲剛がこのタイミングで怪我をしたのが本当に残念。

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カナダはボードゲーム名でおなじみのプエルトリコとWC予選を戦っていて、こないだのセントルシアに続き、いくらなんでも相手のレベルが低すぎる。いったいどうなってるんだと真面目に調べたところ、これは4次まであるうちの2次予選で、なんと言ったらいいのか、フツーの人が名前を知ってるような国が出ていない。これは事実上の1次予選だ

カナダの対戦相手は英連邦セントルシア(人口17万)、米連邦プエルトリコ(同370万)、英連邦セントクリストファー・ネイビス(同4万)。全部大国の連邦領地。人口4万人の島とWC予選を戦うのかい(泣)。

2次予選全体6グループを見渡すと、これまでカナダが戦っていた普通の CONCACAF サッカー国が全然入っていない。カナダは 2010 年予選まではポットCに入り2次予選から戦っていたのだが、低空飛行が続きすぎてとうとうポットDに格下げとなり、  この事実上の1次予選を戦う境遇まで落ち込んでいるのだった。とほほ。

カナダは見覚えのない若手も起用して戦っていたが、目の前の相手をフェイントで抜き中へ折り返すくらいしか攻撃のアイデアがないので、相手を一向に崩せない(これは MLS 下位チームもおんなじ)。したがってどんな相手でも快勝はできないという持ち味を存分に発揮し、楽勝ではあったがシブチンなゲームだった。強国と対峙しカナダサッカー魂が燃え上がるステージまで、耐えて上がっていってくれチームカナダ。

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■11/09/08(木) □ コロレットのスコアカード
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夜、萌をTVから引き剥がすためにチケライ Euro をやろうというと、俺のTVで「怪物くん」を見ながらやりたいという。TVを見ながらだと頭使わないからゲームがつまんなくなるんだよねと話しながら、そうだTVを見ながらならコロレットがちょうどいいわと気がついた。チケライはプランニングと下準備のゲームだから何かをやりながらだとたちまち速度とゲーム性が落ちるが、コロレットは出たカードをどうするかというその場その場の判断ゲームだから、自分の手番だけ集中すれば遊べる。

2P戦専用ルール(カードが3-2-1置きになるやつ)のジレンマも萌は一発で理解したので、TVを見ながらの軽いノリでちゃんとゲームになった。これからは日本語TVを見るときはコロレットというのが定着しそう。


暗算苦手な私の計算エイド
しかしスコア暗算の難しさが俺には克服できん。1人ソリテア時なら造作もないが、話しながらだと引き算時に基数を覚えていられない感じ。カルカソンヌの得点板を使えば解決するけど、あれは場所もとるし、コロレットと一緒に持ち歩けないしな。―――といろいろ考えて、スコアカードを自作。ゲーム上重要な点数組み合わせのところを着色したら狙い通り非常にわかりやすく、「21+15+10+4、マイナス-6-3 で 41」と一瞬で計算できるようになった。よしよし。[ColorettoScore.xls]

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■11/09/09(金) □ コロレット2人用ルール(改)
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萌を学校からピックアップし、頼まれてたLD家の猫の世話をしに行く。萌は「小学校は周りがみんな小さくてかわいかったけど、中学は周りの子がみんな大きくて怖い顔をしている」という。いや、ビッグキッズはみんなむっつり顔に見えるんだよ。君だってそうだよ。大きいだけで怖くなんかないよ。


コロレット2人ルール用
3-2-1台紙
LDの猫を庭で遊ばせている間、ガーデンテーブルに新聞を敷きコロレットを始める。タブロイド新聞1枚のスペースがあればきちんとできる。しかし公式2人戦ルール(※)のゲームは今のところさらっと時間つぶしにやるだけのゲームで、3人戦の半分も面白くない。
(※)コロレット・2プレイヤールール
色数:5色
開始時手持ち:2色
台紙:3-2-1

夜萌ともう2戦して、これだけやるとちゃんとサンプル数が取れ、どうも盛り上がりに欠ける2P戦ルールの弱点がわかってきた。3-2-1列システムはいい。しかしカード色が5色というのはよくない。相手のほしい列を汚染することができないのだ。


2色ずつはデフォルトで別色を持つので、そのまま色を取っていくと3色目の黄色が重複し↑こうなる(攻防上重複カラーが違う色になる場合もある)。この状態では赤、青、黄、緑、橙のどのカードを引いても、自分か相手が欲しいカードとなる。すると自分が欲しいカードは当然自分が取りたい3枚列に置き、欲しくないカードは枚数的に不利になる1枚列・2枚列に置き、相手も同じことをして淡々とその繰り返しになる。双方の取りたい列が自動的に分かれてしまうので衝突がない。コロレットの面白さは①自分の取りたい色を1列に集め取る ②敵がほしくない色を取らせることにあるのだが、5色ルールでは②がばっさりなくなってしまい、工夫と駆け引きの余地が少ないのだ。


そこで1色増やし6色にする(B)と、どちらも欲しくない灰色がデッキに入り、これを引けば相手のほしい列へ送り込む妨害カードとして使える。一気にゲームのダイナミズムが甦る。


そしてさらに、(C) のように3色ずつでスプリットしてしまうとかえってインタラクションが減り逆効果なので、最初の手持ちカラーを2色から1色に減らしてやってみると、これでほぼ確実に重複カラーと妨害カラーが生まれバッチリだった。どの3色を自分のカラーとするかという序盤の駆け引きが自体がまず楽しいし、中盤以降は重複カラーと妨害カラーをめぐる攻防が最後まで続く。5色ルールではほとんどなかったマイナス点がガンガンたまり、それを巡ってワイワイと盛り上がれる。よし、うちではこれに決めよう。
(※)コロレット・2プレイヤールール(改)
色数:6色
開始時手持ち:1色
台紙:3-2-1

この6色1枚取りならば3人プレイと非常に近い楽しさとなる。実際ルールとしては3人戦ルールで列カードを3-2-1にするだけだしな。

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■11/09/11(日) □ チャイニーズお月見会
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Wの中華お月見に招かれる。本物中華料理は匂いがきつくて俺は食べられんので、少量だけいただく。ベランダで皆でちょうちんのろうそくに火を灯したのがよかった。とてもアジアっぽい。

中国製のちょうちんの絵柄はドラえもん、ウルトラマン、ケロロ軍曹、キティちゃんなど全部日本モノ。どれも微妙に似ていないのと、ドラえもんが「多拉 A 夢」とヘンな表記になってるのがおかしかった。

日本の月見団子にあたる「月餅」は、あんこかと思っていたら卵の黄身を使ったものだとのことで、お菓子と感じる味ではなかった。俺と萌は日本語で「なるほどねって味だね」「そうだね」とささやきを交わす。

中華食物は微妙だ。スーパーで中華調味料や中華菓子を買うたびに思うが、嗜好の違いを超え、うまみや食感や後味があるべきレベルに達していないように思う。中国の民衆はあの麻婆豆腐ソースの味で満足してるんだろうか。クックドゥのほうが5倍はうまいぞ(カナダじゃ価格も5倍だから買えないが)。出前一丁・カップヌードルなどの日本発人気ラーメンも中華市場向けは人工調味料を増して味を無闇に濃くしてるし、ホント微妙である。

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そして萌とADとコロレット。このゲームは単純な割になんか説明が難しく(やることが抽象的だからかな)MにもSFにも説明に苦労したのだが、やってみれば3ターンで手順がわかるんだと俺も学習した。「これは3つのカラーを集めるゲームです」とだけ説明し、始めてしまうのがいいのである。呑み込みのいいADの場合はこれでうまく行った。

各色の激しい奪い合いとなり、ADはゲーマーじゃないのだがシステム論好きなので、「敵のほしいカードを奪う」「ほしくないカードを取らせる」「列全体でプラスになればマイナスカードが混じっていてもあえて取る」といったコロレットの研ぎ澄まされたシステムが生むジレンマとインタラクションを即座に理解し、ほとほと感心していた。初戦からいい手を打って俺を負かす。よしよし。

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■11/09/14(水) □ 日韓歴史レクチャー
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萌の学校準備が一段落。今回は大変だった。中学校はあれこれうるさくいろいろ厳しく、やっぱ小学校と違うなと本人も親も思う。

とにかく提出する書類が多い。一般的な生徒としての合意書一式が10枚近くあり、加えて萌は可能な限り多くのクラブに入りたがってるので、その1つ1つの情報を探さなければならない。全部のクラブをまとめた用紙がくれば話は早いのだが、申し込み用紙をくれるクラブもあればなんの情報もないクラブもある。そもそもどんなクラブがあるのかという一覧表もない。

そこで親はニュースレター10ページを隅々まで読み、学校のサイトをチェックしてクラブについての言及があるところを見逃さず拾い、「○×クラブに入りたい人は○×日昼休みに○×教室に集合」といった必要な情報にアンダーラインしたり Web でコピペしたりして集めていくという、実に効率の悪い作業をしなければならない。

英語圏の人々は箇条書きが下手で重要情報を地の文に埋め込んでしまい見つけにくいというのはなんの通知でも常にあるのだが、今回のこの分量にはうんざりさせられた。マジで毎日通知類を精読して先週まるまるかかった。のんきに学校と子供に任せていると手遅れになる(入りたいクラブに入れない)ので、緊張が抜けなかったわ。

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萌が韓国系アメリカ人の書いた戦時中朝鮮の物語を図書館司書に推奨されて借りてきたので、アジアの歴史はスーパーセンシティブだから歴史をよく知る前にそういうものを読んでほしくないんだがと話しながら帰る。

帰ってからその本「木槿の咲く庭(リンダ・スー・パーク)」について調べてみると、

《日本統治下の朝鮮で、13 歳のテヨルと 10 歳のスンヒィという兄妹が生きぬく姿は「火垂るの墓」を連想させた。しかしこの兄妹は驚くほどポジティブである。自分で考え、行動する力を持っている。物語だから、悲惨なまま、問題の解決もないまま終わったりはしない。》(韓国風「火垂るの墓」みたいな、それでいて前向きな物語・マルコ)
《軍隊の訓練の様子、統治下の兵士達の横柄な態度の描写は 客観的に抑え目に描かれていて、日本人としてほっとしました。》(好奇心と行動力にばんざい・クラバート)
どちらもアマゾンでの評

という本であるようだ。だったら俺が萌に日中韓関係のベーシックを説明しておけば、読んでも大丈夫かな。日中韓問題というのはカナダに住んでいたら萌が日系カナダ人としていつか直面することで、これがその第一弾だろう。
  • 本の裏には侵略と書かれているが、実際は植民地だった。
  • 当時ロシアがアジアを乗っ取ろうとしており、日本が韓国を植民地化しなかったら韓国はおそらくロシアになっていたし、そうなると日本も危なかった。しかし韓国からすれば強制されたわけで、恨まれるのも無理はない。
  • 日本は病院や学校を作るなどいいこともしたが、警察や軍隊が人々を殺すなど悪いこともたくさんあった。
  • 同じ植民地でもそうした悪行が少なかった台湾のお年寄りは、よかった面を評価し日本をあまり恨んでいないらしい。日韓は仲が悪いが、台湾からの地震援助は世界最高だった。

といった日韓基本知識をざっと教えておく。あとは読んでいる間に感想をちょくちょく聞き、なにかショックを受けたならその都度話をしよう。

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■11/09/16(金) □ 萌ギターに開眼
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ミドルスクールに入り音楽の授業で初めてギターを習った萌が、「D/Em/Gを習ったの」と家でポロポロ弾いてるので、「じゃああとF#mが押さえられればジョンレノンの『Woman』を弾けるじゃんホラ」と弾いてみせると、「お父さんギターうまい!」と感動する。ええっ? 今頃気づいたのか?

「こんなの今までずっと弾いてたじゃん。まあともかく、Dを抑えて小指でこの音を入れてみな。…ほら、Womanのイントロだよ」「…オーマイゴ! すごい!」とまあ、これまでいくら誘ってもギターを習わなかったのに、やっぱ学校の影響は絶大で一気に開眼した模様。

で開眼してみると、俺がペラペラといくらでもギターが弾けることの偉大さも突然理解できたらしく、何を弾いてもすごいすごいと感動している。ほんと、今頃気づいたのかね。目からウロコとはこのことだ。子供って分かってるようで何もわかってないことがあるんだな。こっちが驚いたよ。

ともあれ、ようやく萌がその気になってくれたと俺も気分が盛り上がっている。萌は俺よりもリズム感がよく、ピアノを弾いてるので指が動く。いいギタリストに育つ素地はバリバリにある。それに萌と一緒に楽器を弾くのは文句なく楽しいよ :-)。

2011/09/07

日記「セカンドカー探し」

「アメ車で PNE」「サンファイヤに決定」「転校生-さよなら あなた」「ピクニックでコロレット」ほか。

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■11/08/29(月) □ セカンドカー探し
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9月からの1年間Mの通勤で車がもう1台必要になり、いろいろと調べたのだが、リース・レンタカーともに非現実的な料金になると判明。中古を買う方が絶対的に安い。そこで急遽自動車関係の親戚に頼んで出物を探してもらっているのだが、これがシボレーになりそうだ。うーん。まあ安くて壊れなければそれでいいのだが、安アメ車の雄シェビーかー。

そう報告するとMは、安い車は怖い、もっとお金を出して程度のいいのを買ったらどうだという。まあねえ。現車スズキ・エリオは乗り心地が悪いので、Mが毎日の通勤で使うとやや疲れるかもしれない。そう思うともう少し快適な車をMに買い、俺がエリオに乗るという選択肢も考慮すべきかなあ。しかし費用が。悩む。
VW 10000
ホンダ/トヨタ 8000
フォード/スズキ 6000
シボレー/韓国KIA 4000
大メンテなく数年間使えそうな車の推定中古相場($)


どういうデザインセンスなんだアメ車メーカー
車探しを頼んでおいたDNから電話。見つかった車はDNが働く整備工場の代車で、やはりシボレー系列の Pontiac Sunfire とのこと。ぐー。提示されたプライスは文句ないが、車種としてはこれ以下はない最低ラインである。よくあんなかっこ悪い流線型カーを作り、しかもそれを買うよなアメリカカナダ人はと常々思っていたやつだ。よりにもよってあれかー。

その整備工場にもう一度電話して距離と年式が判明。カナダの中古車屋はむっちゃクチャいい加減なので、この程度のことも何度も電話して聞かないと分からない。2005 年、5 万 9 千キロ。うーむ。この距離でこの値段ならばと考えが変わってくる。上記の想定相場よりもだいぶ程度がよさそうで、その分低維持費が期待できる。程度同等でもっとイイ車にすれば、プライスは倍になる。

どうせ俺は萌とBRばあちゃんの送迎と食料買出しにしか車を使わないんだから、結局壊れなければなんでもいいのだ。現車スズキ・エリオは好調なのだからMはこっちで通勤してもらおう。いまは必要最小限の車にしておくことで節約し、機を見て急がずスズキ・エリオの方をより快適な車にアップグレードすればいいのである。よし。こっちを買う方向で検討しよう。

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■11/08/31(水) □ アメ車で PNE
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ノバスコシアから来訪中のM父夫妻を連れPNE(バンクーバーのサマー遊園地)。M父夫妻が車を借りられず、いろいろ紛糾相談の上俺がMKの車を借りて2台で行くことになる。この借りた車がシボレー・キャバリエ。俺が買うかもしれないポンティアック・サンファイヤの、まさにクローン車なのだ。したがって期せずして購入候補車の試乗となる。バンパーとボンネット以外は同一パーツらしい。つまり昔のカローラとスプリンターみたいなものだろう。

この車は初めて乗ったが、ドアを開けた瞬間から安さ満載ですごい。鉄パーツむき出しだらけ。軽トラより安っぽい。どこを触ってもギーコガチウイーと音がする。動き出すとまたすごい。アクセルを踏んでから 0.5 秒くらいしてから回転が上がり動き出す(笑)。70 年代カーという感じがする(※)。こんな車を 2005 年まで売ってたんだから、GMは破産して当然である。うちの町の巨大なGMディーラーも去年つぶれ、どでかいコンクリートの空き地になっている。
実際プラットフォーム(車台とエンジン)は 80 年代初頭にオペル・イスズと GM が共同開発したものが原型とのこと。古いw

ところが走りだしてしまうとこれがけっこう悪くない。移動はできるので文句ないし、こんなヘボな車でもホイールベースがエリオより長くサスがふわふわなので、乗り心地はいい。直進性も悪くないからステアは重く渋いが修正がいらず、ここでも疲れない。エリオはショートホイールベースと背高という成り立ちから、過剰なリーンを防ぐために脚を締めすぎているんだよな。

そういう車なのでキャバリエは、コーナーでちょっと攻め込んでいくと「曲がり切れないかも」という近年乗った車では感じたことがない恐怖感が出てくる(笑)。だが、そんなことはしなければいいだけの話。こりゃ安楽だわ。どろーんとゆっくり走り快適にPNE着。


高校生ドラム隊、
少人数で頑張ってました。
PNEは、今年もまた縮小されていた。年々短くなり去年ついに廃止されたパレードは復活せず、去年はそれに代わり大勢の子供がさまざまな楽器を持ったビッグバンドショーがあって非常によかったのだが、これもなかった。アマチュア音楽系演し物はわずか 10 人のミニドラムバンドだけだった。ブラバン出身者らしいこいつらは非常に頑張っていたのでよかったよと声をかけたけど、これだけかよ。パレード最盛期は 200 人くらいが華麗な衣装をつけ練り歩いていたのに、10 人ですか。


少女ホースジャンピング。
これは楽しかった。
地元キッズの習い事発表ステージも、去年までは朝から夕方まで取っ換え引っ換えやっていたのに、今年は2時間に1組くらいしかスケジュールが入っていない。ティーンエイジャーが趣味と実益を兼ねて働きお客を喜ばすのがPNEの伝統だったのに、どの演し物も予算カット→人数半減以下である。そんなわけで、毎年暗くなるまで遊んでいたのに、今年は4時頃にはもう見るものがなくなってしまい帰宅となった。

PNE自体の入場料は前売り $16 と高くはないのだが、乗り物と飲み物食べ物の出費が恐ろしいほどの魔性の場所なので、すごい散財の割に満足感が薄いという感じはいや増している。

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MK家にキャバリエを返す。うーん、ラクだ。アメ車のユル味の強みを思い知った。とにかく全てがユルいので、操作になんの加減も必要ない。がばっとアクセルを踏んでも車はじんわりとしか動かないし、遊びが大きいステアリングもグイと切っておけば行きたい方に行ける。多少の操作のズレでは進路が変わらないので修正も必要ない。柔らかい脚でショックはズボズボ吸収してくれる。これは今日のような疲れた日の帰りにぴったりだなー。速くなんて走れないからゆっくり行きたくなるという車。

うちでM父夫妻に晩飯を供し、うちのエリオで最後の送迎。エリオはやっぱすべてがシャープ過ぎ、脚が堅すぎる。運転感覚が2時間のキャバリエ運転でゆるゆるになったので、乗り換えた瞬間発進でホイールスピンさせてしまった。それほどまでに過敏な車なのである。エリオを快適に走らせるには高度な技術がいるが、アメ車は誰が運転しても快適さに変わりがないということだ。なるほどなあ。

高速からホワイトロックへと走るとエリオはキャバリエに比べなんと高性能なエンジンと AT を持つことかと惚れ惚れし、チープなスズキとはいえ品質はシボレーとは段違いだなとやはり思うが、エリオのこの過敏さは問題だと再認識させられた。ファミリーカーとしてうちのエリオのぱっつんぱっつんさはどう考えても問題である。タイヤの空気を抜いてもうちょっとなんとかしよう。

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■11/09/01(木) □ サンファイヤに決定
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車を見に行く日。エリオのエアを 4psi 抜いてみる。これでだいぶ快適になった。今使ってるタイヤゲージに誤差があり正確なところがよくわからんのだが、おそらくこれでデフォルトに近い設定なのだろう。今まではずっと入れ過ぎていたのだ。

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Pontiac Sunfire
探してもらった安アメ車、道で見るたびになんというダサいデザインだとつねづね思っていたポンティアック・サンファイヤは、外観の程度は想像以上によく、2005 年型はノーズの形状が変わりカッコ悪さがやや軽減されていた。が、乗ってみるとわずか6万キロでこれかと感じるボディのゆるさ。カチっとしたところが1つもない。アメ車はすごいなと思う。試乗時の時点ではドアが一枚ロック固着で開かなくなっており、商談中に緊急パーツ交換してもらった (^-^;。

しかしメカ的にはすべてがファイン。エンジンも AT も直進性もいい。昨日のキャバリエに比べ若者向けなのか味付けが若干シャープで(スタイル的に見ておそらく 80 年代のカローラに対するスプリンターみたいな位置づけなんだろう)、ショック吸収性は1段劣る。キャバリエはエリオより2段楽だと思ったが、これはちょうど1段くらい。

モビリティはその分高く、走っていて車線変更などはなかなか気持ちがいい。攻め込むとアウトに飛び出してしまいそうな感覚は同じで、左右に素早くSを描くようなところではステアがスローすぎて大きくラインを乱しそうな気がするが。AT の反応が思ったよりもいいのもうれしい。これに決定しました。ナンバーを取り、2台並んで帰宅ドライブとなった。

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家でよくよく見ると 40cm も突き出したあのアグリイなロングノーズの下は空洞である。カッコだけのエアロパーツなのか。全長が 40cm も長いのに居室レッグルームがエリオと大差ないのはこのせいだ。ほんとバカな設計である。まあよし。とにかく壊れず用を足してくれ。

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■11/09/02(金) □ サンファイヤ実戦投入
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Mはエリオで仕事へ。俺と萌はさっそくサンファイヤでBRばあちゃんのお医者送迎日となる。乗り心地は昨日の印象通りエリオ+1。ローヒードハイウェイの荒れたところに躊躇せずに車を突っ込めるくらい尖ったショックのまるめ力が高い。

しかしその分やはりハンドリングと発進が鈍重で、イメージより遅れて動き遅れて止まるので、細かく正確に車を動かすことができず、さらに視界がエリオよりはるかに低いので遠くが見えにくく、道にノーズを突き出してしまいヒヤリとすることが昨日も今日もあった。これは気をつける必要がある。

コーナーではいい姿勢に持ち込めないし(ドライビングポジションもシートも悪い)、気合を入れてコーナーに突っ込んでもちっとも狙ったラインに乗らないw が、総合的に用足しに文句ない。やっぱりセダンはトランクを開けるのが面倒でうんざりするが(それにトランク内の温度が室温と違うので、心配で食べ物や大事なものは入れておけない)、文句ない。そしてエリオのほうがやっぱり非快適さを除けば運転は楽しいということも再確認でき、それもうれしいことだった。

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■11/09/03(土) □「転校生-さよなら あなた」
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長野市を舞台にした大林宣彦「転校生-さよなら あなた」の DVD をいただき、鑑賞した。善光寺の裏通り、Mが住んでたアパートの裏山、権堂、善光寺平の山々、飯綱へ上がるループ橋、長野市を見下ろす風景や松代あたりと、長野市の隣町で生まれた俺には強烈に懐かしい景色ばかり。

大人になってからは長野には数年しか住んでいないが、その短い間に行った場所がどんどんと出てくる。長野はいいところだなと改めて思う。きっと日本中がこうしていいところばかりなんだろうな、行ったことがなくても。

日本の地方都市は本当に味わい深い。映画とは関係ないのだが、福島を舞台にした映画も見てみたいと「転校生」を見ながら思った。猪苗代湖ズの『I love you baby、浜通り、中通り、会津地方』という下りを聴くと俺はぐっと胸がつまる。ほんと、行ったことがなくても人の思いが詰まったいいところだと、この言葉だけでわかる。

で映画の内容はというと、まあ大昔に見たオリジナルのほうがすんなりと見られたと思う。周りの生徒全員が素人でセリフ棒読みなのがちょっといくらなんでも興醒めだし、中学生の男女が入れ替わって双方ともがああして牧歌的マンガ的な行動しかしないというのも、現代のストーリーとしてどうなんだろうと思った。しかし最後の方の旅館での会話や、奇跡のように美しい蓮佛美沙子さんの澄んだ歌声は心地よかった。

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■11/09/05(月) □ ピクニックでコロレット
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夏休み最後の日、午後どこかでピクニックしようとなる。地図で近場を見渡しバンツェンレイクが目に入り、ルートを検索してみるとなんと新しい道が開通しており、PoCo から山間の道直通で行ける。つまり町場を一切通らず着けるのだ。素晴らしい。ここに決定。

ところが行ってみると、バンツェンレイクはなんとパーキングが満杯で進入禁止になっている。レイクを見ることすらできなかった。仕方ないと向かった隣のホワイトパインレイクも当然同じ状況で、4キロ手前から路上駐車で満杯。仕方がないので Port Moody の町まで戻り、2人を入江のロッキーポイントパークに降ろして俺は路上駐車を探しに彷徨う。徒歩5分も離れたところでようやく停められた。夏休み最後の日だもんな。どこだってこれくらい混んでいるよな。

公園のメインパートから橋を渡ったところに日陰があり、しかもガラガラに空いていた。ここに移動してようやくのんびりとなる。なんてことのない水景だが、それでも水が見えているかいないかは大きいとしみじみ思う。水が見える日陰がなければ帰りたくなるところだった。美しい。入江の対岸に見える家々は近くで見ると普通の家なのだが、こうして遠くから見ると輝く避暑地の豪邸のようだ。

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萌がひとしきり水場で遊んだあと、カードゲーム「コロレット」初プレイとなった。ルールを理解するとMと萌は俺の「汚染」行動(ほしくないカードを人に押しつける手)に即気付いて、「またそういうことをする!」と逆襲し2人で協力して攻めてくる。いや俺のせいじゃなくてそういうゲームデザインが優秀なワケなんだが、まあそれはそれで楽しいのでよし。暗算による得点計算が思ったよりも俺には難しかった。

2回やってMはそこそこ気に入ったようで、3回目をやろうとしたとき萌が浜辺に行ってしまったので専用別ルールになる2P戦をやる。これは「各列に置ける枚数に制限がある=各列の戦略性が上がる」という狙いはわかるけど、やっぱコロレットのキモである自分が引いたカードをどこに置くかという《列のデザイン性》自体が限定されるので、ちょっと面白みが削がれるかなと思った。

コロレット全体の感触として、こういう出先で他にやることがないときにはやってもらえそう、家ではみんなが依然盛り上がっているチケライもあるし、他の娯楽もあるからやらないだろうなという感じだった。ボードゲーム・カードゲームというのはなんでも、最初のルール説明と初回プレイで印象が決まり、その後繰り返してやるかどうかに大きく影響すると思う。俺みたいにボードゲームという世界に入れ込むと面白さがわかるまで何度もやってみるわけだが、Mたち一般人はそこまでやってくれないので初回プレゼンテーションが重要となる。

でコロレットに関しては、今ひとつうまく行かなかった感じ。ゲームとしてはテーマもなく殺風景だから、もっと攻撃してインタラクションの面白さを味合わせたかったのだが、あまり攻撃するとMは気を悪くするので難しいのである。ま、カルカソンヌですらも最初は全員ぼんやりだったので、次にやる機会があればコロレットももっと盛り上がるだろう。公園のピクニックでドイツゲームができたというシチュエーション的には満足であった :-)。