2011/11/29

日記「温泉ゲームはコロレット」

「まわりくどい宿題の話法」「北米消費主義」「香川の謎」

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■11/11/19(土) □ まわりくどい宿題の話法
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萌の数学宿題を手伝ってるのだが、うーん毎度質問の意味が分からない。

「電卓で 2+3*4 と押すと正しい答えは出るか。どうしてそうわかるか」

電卓は四則演算の順番原則を知らないから答えは間違うわけだが、「どうしてそうわかるか」という問いにどう答えたらいいのだ。「正しい答えじゃないから間違ってるとわかる」としか答えようがないではないか。そんな馬鹿みたいなことが書けるか。

あとから考えるとこの問いは、「足し算に続いて掛け算がくるところで四則演算の規則から外れてしまうことがわかる→正しい答えは出ない」というのが解答となるんだろう。

しかしそう答えさせたいなら、「正しいか正しくないかはどの段階でわかるか」と聞けばよいではないか。これなら解釈が入る余地がないので、俺の脳でも即座に「ココ!」と作動する。子供の脳も即作動し、「そうか足し算に続き掛け算がくれば間違うんだよな」というロジックが論理ピースとして気持ちよく頭に入るだろう。「どうしてそうわかるか」はクエスチョンとして曖昧すぎ、何が質問なのかをまず解釈するという無駄手間が思考を足止めするのだ。

カナダの教科書は数学に限らずこの手の抽象的な、真意を測りかねる問いが多い。抽象的な思考を鍛えれば子供の頭が良くなるとでも思ってるのかな。それくらいで頭が良くなったら苦労せんわ。宿題など徹底して具象化し、さっさと終わらせ別なことをやらせたほうがよっぽど有意義だわ。

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■11/11/20(日) □ 北米消費主義
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夕方萌が、友達がみんな持っていて自分が持ってない素晴らしいものを列挙し始め、それが iPhone、iPad、ラップトップ、Xbox、キネクト、Wii、PS3、Skype ……と長大なリストとなった(あとMには皮のブーツがほしい、スキニージーンズがほしいとファッションものの要求もあったとのこと。友達BLの影響だ)。

最初は「でも萌は完璧なデスクトップ PC を持ってるじゃん、DS だって XL だって自分専用のビデオカメラ($10!)もあるし」と笑っていたのだが、「でも○○なんか全部持ってるんだよ、それで私が持ってないからからかうの」と言われ、なんなんだ今の子供はと腹が立ってきた。

「だったら『そんなに甘やかされて恥ずかしくないのかお前は』と言ってやれよ。私が子供の頃は家が大きな店だったから金持ちで、他の子供よりいいものを買ってもらえたけど、でも中学くらいになれば自分が甘やかされてると感じるから貧乏な家の子に対してちょっと恥じていたよ。バスケシューズだってアディダスじゃなくて日本の安いのを自分で選んで買ってもらったし。そういうのって今のカナダの子供は感じないの?」と問うと、「感じないよ」と否定されてしまった。これはカルチャーギャップなのか、ジェネレーションギャップなのか。そういう感覚って昭和 or 20 世紀的なんでしょうか。

Mによればカナダでも昔は俺の感覚と似たようなもので、この行き過ぎた消費第一主義は企業の指先で踊る現ジェネレーション(子供とその親)の特徴なんだそうだ。「これが嫌だから萌の自我が落ち着くまで海外で暮らしたいと思うくらいだ」という。日本がカナダよりずっといいのかどうかわからないけれど、カナダ(と米国)はひどすぎるとのこと。どこか素朴な発展途上国に住みたいとMは言うが、なかなかそうもいかんよなあ。

ともあれ、他の子が持ってるものを萌が持ってないのは気の毒だと思わないではないが、萌がモノに窮乏した気の毒な子だなんてことはまったくない。どうしようもないしどうするつもりもない。今あるもので十分だしハッピーな毎日ではないか。インターネットに繋がってる自分専用の PC があるんだから実際、十分以上だぜ。

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■11/11/23(水) □ 香川の謎
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【CLアーセナル-ドルトムント】香川って、なんなんだろう。味方がボールを奪いさあ攻撃というとき、彼はいつでもゴール前の敵のまっただ中でハーフスピードで走っている。ボールをもらえばスペースがないところでもコントロールする自信はあるんだろうけど、お前味方もなかなかそこにはパスを出せないだろう。カットが危なすぎるし、たとえ通っても十中八九は詰められ弾かれ終わるだろう。香川はドリブラーでもパッサーでも点取り屋でもない。一体俺は彼が何をすることを期待して見てるのかなとだんだん意識が遠のき、途中で他のことを始めてしまった。

不思議なのはこうして日本人の俺が見てもエキサイトしない香川が、ブンデスの強豪クラブでスタメンで、このプレイでも下げられないということだ。彼はなにを期待されているのだろう。特徴のない選手が中途半端な主張性の低いプレイをやってるのだから、俺がドルトムントのサポーターなら「香川だけでなく○○も試せ」みたいに監督にブーイングすると思う。今日最後に決めたのも例によってプレイに絡んでなかったからオープンスペースでボールをもらえたわけで、香川よりも頑張って切り込み香川に出した選手の手柄なのは明らかだ。

2010 年の香川絶好調時のビデオを見ると、特にすごいと思うプレイはないが、今日のゴール同様味方との協調でうまく点を取っている。いいところに動きいいところでボールをもらい、うまい巡りで点を取るという感じ。しかしその巡りは彼の回りにもうないわけだから、もっと考え抜かないと今後この試合以上のことはできないんじゃないかと思う試合だった。

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■11/11/26(土) □ 温泉ゲームはコロレット
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バンクーバーから1時間でこんな感じ。
フレイジャーバレーは美しい。
秋恒例のハリソン・ホットスプリングス。暗くなる直前のフレイジャーバレーを楽しみながら走る。紅葉はもう終わってしまったが、新雪が降りた山々がひたすら美しい。昨日 NHK「家族に乾杯」を見て隅々まで人が住む場所の味わいがある日本の田舎はいいなあと思ったが、カナダの田舎は人が少ないがゆえの美しさがある。

ありがたいことに、ハリソンホテルの子供プールの温度が高くなっていた。去年までと2度は違うんじゃないかな。キンキンに冷えた頭を温かいお湯につけて仰向けに浮くと最高に気持ちいい。

姪SFが「マーシャンダイス」という、行くか戻るか程度の軽いアメゲーを持ってきた。そこで名作ドイツカードゲーム「コロレット」を紹介してみる。コロレットは「10 分で終わるゲームがあるけど試してみる?」と超低敷居で切り出せ、ダイスゲームと大差ない軽さでちゃんと戦術駆け引きが楽しめるところがやはり優れたゲームで、半分を過ぎる頃にはSFももうキモが見えて、俺のカラーを盗むなどして楽しんでくれた。ほとんど誰でも初戦の途中で、「これでどうよ(ニヤリ)」という手を打ってくれるのである。そこが実に楽しい。SFにはこのゲームは明らかにスマッシュヒットだった。

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そして午後ついにうちの奥さんMにグレンモアを教えたのだが、全くウケず。「こことここがアクティベートされて生産物が出て、同時にここでウイスキーを作れるわけ」と説明を加えるたびに眉をひそめていく。うー、いかんと思うがどうしようもない。

このタイルならこう、このタイルならこうと俺がアドバイスしてMの村が途中から見事に機能し大勝したのだが(萌は旅行の精神的浮わつきで全然まともにプレイしてなかった)、結局「複雑だわね」というコメントだけで終わってしまった。まあチケライでも初回はこんな感じだったので、ゲーマーじゃない人はすべてのルール≒自分がやることが最後までクリアに見通せないとイラつくのかもしれない。そうした人々にはたぶんルール分量のしきい値があって、カルカソンヌの「草原」、チケライ Euro の「トンネル」、カタンの「盗賊」といったエクストラ要素がそのしきい値を超え、簡単に「面倒くさい/複雑」回路につながってしまうんだろうな。

まあグレンモアは間違いなく面白いゲームで、お母さんもいつかは分かってくれるだろう。現時点では萌が「グレンモアは全然気に入らなかったの? 全然?」と聞いても、「(面白くなる)ポテンシャルは見て取れるわね」という望み薄なコメントだったが(嘆)。


こんなにプリティなボードなのに
公衆の注目を浴びることはなし
続いてまたSFを交えチケットトゥライド Europe。SFがうまくてびっくりした。やったことがあるとは聞いていたが、最初にいきなりストックホルム-ペトログラード線21点を取るのである。明らかにこのゲームの勝ち方を定石として知っている。その後も順調につなぎ見事に彼女の快勝。

驚いてあとで話を聞くと、ボーイフレンドが TRPG ゲーマーで、彼女もゲームグループに属しているのだとのこと。そういえばその連中らしいのがいつかのパーティに来ていて、全員でアニメを見ておりナードっぼいと思ったな。彼らはナード(スポーツ苦手で勉強得意な輩)ではなくゲームギークだったのか。そしてSFも乗馬が好きだからスポーツガールなのかと思ったら、ギークだったのか。かわいいではないか :-)。

しかしホテルのロビーでチケットトゥライド Europe をやっていても、隣のテーブルで定番の家族ゲーム「スクラブル」などをやってる人たちがこっちをチラ見すらしないのが不思議だった。これほど美しいビジュアルを持つボードでも、ボードゲームに興味がない人々の目には訴えないものなのかな。ある種の美術品への興味の有無に近いものがそこにある気がする。


やはりコロレットは名作だった。
狭いところでもプレイできるし。
その後Mが意外にもコロレット戦をコールし、これが予想外に盛り上がって怒涛の3連戦、Mの2勝1敗。Mはこれまでコロレットの面白さにさほど気づいてなかったのだが、旅行の浮き立つ気分&軽いルールと軽いジレンマが非常にマッチした模様。コロレットは面白いんだが地味で抽象的だから盛り上がらないのかなあと半ばあきらめ半引退状態になっていたのだが、Mは時間が許せばいくらでも勝負を続けそうな勢いだったし、SFも帰ったらすぐこれを買うというほど気に入ってくれたし、うれしい復活のコロレット誤算であった。

やっぱ当初思った通り、コロレットはカバンにちょっと忍ばせておけばいつか役に立つえらいやつなのである。今度人の家にも持って行こう。他家を訪問して短時間でインストしてプレイするのに「グレンモア」はいささか重いなと思っていたのだが、コロレットならばバッチリだわ。コロレットの軽さと貫通力に自信がついた温泉旅であった。

3 件のコメント:

  1. いつも楽しく読んでいます。
    グレンモア、面白いですよね。
    このブログが決め手でしたが、買って良かったです。

    ちなみにこの作者、新しいゲームを作ったみたいですが、ご存知でしょうか。
    「ヘルベチア(Helvetia / Kosmos)」っていうゲームだそうで。
    似た感じのようですが、気になってます。

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  2. ◆TRO様◇グレンモア、気に入ってもらえてよかったです。作者はこれで 2010 年にデビューしてもう3~4作出してるみたいですね。そのうち「ランカスター」というのが特に評判がいいようです。◆グレンモアがもしうちの奥さんMにも気に入ってもらえたなら、いずれより重そうな「ランカスター」にも進んでいけるんですけど、現時点ではまだまだという感じであります。

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  3. ランカスター、難しそうですが面白そうですね!
    うちの妻、グレンモアは付き合ってくれるんですが、ランカスターまで行くと厳しい気がします。
    しかもどんなゲームが好きか聞くと、「私があなたに勝てるゲーム」とかいいますし。

    プエルトリコやら重量級のゲームをプレイできるのは、うちもまだまだ先になりそうです。

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