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■18/07/14(土) □ 休めない観光団
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沖縄から東京へと、われらカナダ旅行団はここまで10日間休みなく観光している。俺は疲れていてこうして実家で三線などつまびきのんびりしていたいのだが(日記も書きたいし写真も整理したい)、唯一の運転手なので休めない。暑くても疲れても、観光客は休めない。
団員を退屈させたくはないというプレッシャーもあって、とにかく最もラクな隣町小布施の観光デイとする。
眼の前で手打ちの作業を見せてもらってから食べる桜井甘精堂のそばと栗おこわと豚の角煮のセットは本当にうまくて、テーブル一同うーむうまいと唸っていた。ほんとうまいよね。俺は近隣でここのそばが一番好きだ。
3年前北斎の絵がゼロというトンデモ状態で入館してしまい俺が猛抗議した北斎美術館は、今回は所蔵品が戻っていた。前にはなかった英語付き解説映画もよくできていてとてもいい。
そして現在の特別展である北斎漫画の拡大コピーがよかった。ジブリ美術館のカマキリのポップ絵でも思ったが、大きく拡大された絵にはパワーが宿る。家で静かに見るならオリジナル版の北斎漫画のサイズでもいいわけだが、歩いて移動しながら壁一面のマンガを見るという体験が気持ちいいわけ。これはあれですよ、好きな歌の繊細なアコースティックギターバージョンもいいけど、みんなでホールで見るなら豪快なエレキギターバージョンのほうが盛り上がるじゃんという。そういうことですよ、きっと。ジブリ美術館も大きな絵のパワーで入館者をストレートに楽しませてほしい。
◇ ◇ ◇
晩飯は今日もお母様のつくるナスとチャーシューと餃子がうますぎて、カナダ旅行団全員うーん! と唸りつつパクパク食べるのみ。誰も1枚も食卓の写真を撮らなかった。撮っておくべきだった。もうスイカしか残ってないから SNS 用に写真撮ります。
おかずの大きな花豆がおいしかったのだが、母さんが店(すき焼き屋)の女将だった時代の出入りの八百屋が、いまだに「サカタさんの奥さん用」として店で一番いい豆を取っておいてくれるのだそうだ。田舎の商家のまわりにはそういう封建時代の忠義美談みたいな話がいまも残っていて、何気なく掘り出されるそういう話がカナダの親戚にウケるのである。「おおそんな高貴な豆なのか!」と盛り上がりました。
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■18/07/15(日) □ 上林温泉の想い出
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カナダ旅行団は総勢6人なので普通の車には乗れないのだが、店の人たちが公私に使っている日産キューブ・ミニバンというミニマムな6人乗り車を借りられたので試しに乗ってみたら、ガタイのいい AD も含め全員快適に乗れて驚いている。この無駄なくぴったりと定員6人収まった車内を見てくださいよ(パノラマ写真を撮ってる萌は写ってない)。やっぱり日本の四角い車の室内効率とそれが生むハピネスは最強なのだ。この車は走りも驚くほどいい。小さいのに直進性がよくてラクなのだ。上り坂はさすがにキツイが。
本日は中野の中古ガラクタ屋と親戚 SK 家とモンキーパーク地獄谷。
このカタナをカナダへ密輸するって |
店の人が心配して俺に「あのお客さん本当に買うんですか? 飛行機で持って帰れるんですか?」と尋ねてきた。わかりません。とにかく空港でチャレンジしてみるそうです。また新たなレジェンドが生まれてしまった。
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恒例の親戚 SK 家を訪問し、地獄谷モンキーパークへ。俺とメルはもう4~5回行ってるからさすがにもういいわ暑いしと、お猿の温泉まで登っていかず駐車場のある上林温泉を散策していた。
子供の頃の思い出のファミリーホテル上林温泉ホテルは、今はロビーに日本画をずらりと並べた高級リゾートに生まれ変わっている。
(ググったら見つかった戦前の上林温泉ホテル。
あのプールは戦前からあったんだ!)
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屋外の温泉プールが売り物だったのだが、プールはインドアになっていた。庭も植樹されていて記憶とだいぶ違う。
「子供の頃はうちもどこの親戚も店が忙しかったから親が休みを取れず、夏休みになると山の麓の SK 家に預けられて、親戚の子供全員でここへ来たわけ。プールと釣り堀とピンポンルームとゲームコーナーがあって昆虫だらけで、最高の夏休みだったんだよ」と M に説明しながら館内を歩いた。だけどロビーと中庭を見た限り、もうあの頃の面影はないな。釣り堀ももうなさそう。残念。
◇ ◇ ◇
しかし暑い。今日は信州でも 35 度くらいあったのではないだろうか。猛暑となることを見越してこの志賀高原の麓にきたのだが、ここでも歩いていると息が切れるくらい暑かった。お猿のお山登り口のカフェで食べた信州りんごのソフトクリームが、ひたすらうまかった。
観光だからどんなに暑くても出かけているわけだが、家にいて好きなものを食うとか、ちょっと出て市内でほしいものを買う以外は何もしなくてもいいようなレイジーな里帰りに俺は切り替えたい。
あと数日でカナダ親戚団は名古屋ヘ移動し、そこからは俺の里帰りになる。来週には東京にも、今度は観光ではなく友達を訪ねていく。
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■18/07/16(月) □ 戸隠の少年
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今日は戸隠忍者村。戸隠行きは半端なく急峻な登坂なので(特にあの金網に囲まれたつづれ折り部分がすごい)、キューブに6人乗りでは絶対に登っていけない。イトコ奥様の PM さんと彼女の家にホームステイしているブラジル人留学生も行きたいというので、4人ずつ2台に分乗してゆっくりと登っていった。がんばれ日産キューブ。
信州観光はどれも日本は初めての EJ 少年を楽しませるのが主眼の行事で、帰国のたびに行っている俺とメルはそこまで案内して待つことになる。萌のイトコたちが小さかった頃はここで盛り上がったなあと俺は思ってたのだが、心が子供なカナダの義兄 AD(紺のてぬぐい巻)は、子供のように壁渡りに取り組み盛り上がっていた。彼との旅行は楽しい。彼も日本を本当に楽しんでるのがよくわかるので、苦労のし甲斐がある。
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そして俺と奥様が入ったからくり屋敷(隠し扉を発見して脱出する忍者屋敷)で、小学生の単独子供と一緒になる。
「あれ? キミ一人なの」
「はい」
「じゃあ、一緒に行く?」
「いいんですかっ!」
「うん、いこう」
と彼と一緒にからくり屋敷を周り、最高に楽しかった。
「こっちです!」「待ってくれー」
「こっちです!」「どっちなのー」
「どこからきたんですか!」「カナダだよ」
「は、ハウアーユー!」「(奥様)ファイン、サンキュー」
少年は俺たちの前を子犬のように喜び走り回ってくれた。ありがとう、キミのおかげで楽しかったと写真をパチリ :-)
◇ ◇ ◇
観光は楽しいけれど、俺ははるばるカナダからやってきて母さんとゆっくり過ごすことができない。これであと数日で長野を発つのは寂しいなと、戸隠で俺はずっと考えていた。
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■18/07/17(火) □ 法事とビーフ
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今日は法事があって、そのあとうちの店でこういうものを食べさせていただきました。いやー帰ってきてよかった。信州ビーフのしゃぶしゃぶ、イェー!
部活で忙しくて会えない萌のイトコたちともやっと会えた。萌より年上のイトコたちは店でチャキチャキと働いていて、うちの店は続いていくんだなと頼もしい。
…うまい…うますぎるうちのしゃぶしゃぶ…。AD たちはこれでもう思い残す食べものもなく、明日から名古屋に入り、あさって相撲の名古屋場所を見るのである。ここ数日夕方相撲中継を見て、どういうルールなのか、どの力士に注目すべきかと学習している。日本に住んでた頃けっこう相撲を見ていたというMが立ち会いの作法についてなど細かく解説していておかしい。
中学生 EJ は移動中景色も見ず、この旅行にさほどの喜びを見出しているようには見えないのだが、「カナダに帰ったらオバアチャンの食べ物が食べられないから残念だ」と殊勝なことをいう。このくらいの年代で異なる文化に触れるというのは、いいことなんだろうなと思った。
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■18/07/18(水) □ 相撲観戦団名古屋場所へ
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カナダ観光団の相撲観戦組を長野駅まで送る。駅前の掲示板には 36 度と出ていた。暑い。
この酷暑の中彼らは暑いので有名な大相撲名古屋場所を見に行くのか。旅行を楽しみ尽くすというその根性は尊敬するが、暑さが。今日の名古屋は 39.2 度、「命に関わるほどの暑さ」と TV がいっている。
日本旅行中、TVにたびたび映されるこれを見てカナダ旅行者たちは、「暑さで苦しむ子供の顔で熱中症リスクを表すとはw 青い子かわいそすぎwww」と笑ってました。たしかに :-)
名古屋に着いた彼らはホテルから極力出なかったそうだ。それがいいですよ。
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晩飯どき、やっぱり AD が帰ると食べる人の食欲パワーが大幅に下がり、ご飯を作っていても張り合いがないねと母さんが寂しそうにいう。俺たちがここにいるのもあと4日だけと思うと寂しくなってしまう。
旅行終盤にしてやっと俺と萌は、日本のお菓子を食べ、くだらなくけたたましいTVを見るといういつもの訪日ペースになってきた。団子うまい。ガーナうまい。柿の種・梅しそもうまい。
日本のTVニュースは酷暑と洪水被害の話ばかり。萌は「こんなに災害ばかりで、日本ってどうなっちゃうのー」といっている。そこにカジノ法案が通りそうだというトピックとフテくされた感じの首相の顔が映り、彼女は「地震、津波と自民党」とキャッチフレーズを日本に与えてくれた。はは。当たってる。
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■18/07/19(木) □ 名古屋場所のカナダ親戚団
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Mは明日名古屋で AD たちと合流して帰国。俺と萌はあと数日ここで母さんと過ごしてからもう一度東京へ行き、俺は日本を離れて以来はじめてのライブに出ることになっている。友だちのバンドのゲストとしてだけど輝ける来日記念ライブなので、ギターの練習をしなければならない。友だちの曲のコードをまだ覚えてない。
すると甥のところからどうぞ使ってくださいとチープなストラトキャスターが届いた。ありがとう! 黒くてリッチーブラックモアみたいだ、速弾きしちゃうぜ。
普段はギブソン系を使ってるので久々にストラトを使ったが、軽くて弾きやすくいいギターだな。これを使っていた甥くんも、その後いろいろと他方面に興味があってバンドはやってないらしいが、センスあるミュージシャンだった。
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名古屋場所を見に行った AD はこの御嶽海手ぬぐいを母さんからもらっており、御嶽海の取り組みのときは立ち上がって叫ぶといってたので俺たちも TV 前に待機してたのだが、5時半くらいにもう会場から出たと連絡がきた。場内の暑さもあるが、結び後の場外の混雑を考え最後まで見ずに退場したそう。帰りのタクシー待ちで熱風の中に立つのは耐えられない気温だったと。そうかー残念。
しかしトップレベルの相撲は間違いなく見もので、三役揃い踏みも見れていたく満足したそう。写真を見るといい席だわ。
三役揃い踏みって毎日やる必要あるのかと思ってたけど、そうかあれを見れたら観客は気持ちがアップするのか :-)
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■18/07/20(金) □ 母宅ネット環境の徹底チューン
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沖縄で買った三線を背負い先に帰国するMを長野駅まで送り、萌と善光寺参りと買い物をして帰る。俺は母さんのタブレット&インターネット生活を快適にするためのアクセサリや機材をいろいろ買ってきた。ここからはいろいろとやりたかったこの家の最適化をしたい。
まずはなにはともあれ WiFi である。現状の機材ではどうしても満足行く速度にならないので、中古機材屋でケーブルとルーターを買ってきたのだ。計 1500 円(笑)。日本の中古屋はほんとうになんでも安くて最高だ。俺の死にかけてる Android スマホも日本で買い換えていこうと考えている。
ルーターの位置を電波状態がいちばんよくなる箪笥の上と決め、母さんに許可を得て確定し、コの字の釘で配線をきれいに固定して終了。よし。
釘を打っていると、あんたこういうの上手ねえと母さんが感心する。まあカナダで家を持つとみんな大工仕事するからねえ。うちはそういうことが得意な MK が居候してたから教わって、壁板の貼り方とか電気工事の基礎も覚えちゃったよなどと話しながら仕事をする。
到着以来努力していた WiFi 高速化親孝行がついに完成した。ネットが高速安定するとビデオ通話もできるし、文字を書くのも Google 音声入力でやれる。もうポチポチ画面でひらがなを押さなくてもいいんだよと音声入力をデモしてやると、これはいいねえと母は喜ぶのであった。タブレットを立てて置くスタンドも好評。百円で快適化アップですよ。
ビデオ通話はどうやるかを何度も練習する。これでカナダからまたかけるからね。そちらからもかけてください。
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■18/07/21(土) □ 盛り上がってた夏祭り
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今日は地元のお祭り。お天王さんという屋台が町を練り歩いている。暑そう! イトコの NH ちゃんの子どもヒップホップダンスも見れた。かわいい :-)
カナダ先行帰国組は無事帰宅との知らせ。カタナのことが心配だったが、「名古屋空港で笑われたがカタナの預け入れに成功した」「バンクーバーで怪しまれたがカタナの受け取りに成功した」と通知が入っていた。はは。
夕方カッタカタ祭りへ、萌と PM さんのところのブラジル留学生キキが浴衣を着ていく。
キキはアニメ好きで日本の高校に留学に来たのだが日本語がほとんどできず、Youtube で覚えた英語がむしろ堪能という変わった子で、戸隠の前の日に萌と会うなり英語でペチャクチャペチャクチャ猛然と話し意気投合していた。日本語ができないので普段友だちとあまり話せず、お喋り欲がたまってるんだろう。
二人が盛り上がるのは文化の共通性もあるらしい。萌は「日本のイトコと話そうと思っても、共通の話題がないから話が続かない。キキはユーチューバー好きでメンタリティが北米ガールと同じだから、くだらないジョークも通じて盛り上がる」といっていた。なるほどなー。キモノを着て気分が盛り上がったらこういうポーズになっちゃうところとか、たしかにノースアメリカン・ガールズである。やめなさいって(笑)。
日本のイトコたちから見れば、一緒に遊んだ小さな頃の萌は半分日本人だったけど、今は物腰がもっと外国人っぽいから何を話せばいいのか…ってなっちゃってるのかもしれない。
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カッタカタ祭りはここに住んでたとき以来だから 20 年ぶりに見たが、すごい人出。こんなに盛り上がっていたのかと、うれしい驚きだった。うちの店のある横町の連に混じって萌たちは踊らせてもらう。
駅前通りをお宮まで踊って進み、休憩時間にはかき氷とたこ焼きを食べ大満足。いやー最高。昔の夏祭りと違うのは、トルコ人のケバブ屋などの現代的屋台が出ていることで、彼らは日本中のお祭りの日を巡ってるんだろう。明日は小布施のお祭りだそうなので、そっちに行くんだろうな。
それとこれも昔はなかったと思うきれいどころが乗ったお神輿も出ていて、華やかでよかった。櫓の上で踊る日本舞踊のおばさんたちもきれい。手前を通り過ぎていくのは、どこかの町の子供会が作ったうちわがたくさんついた引き屋台。ナイス。
最後はうちの店ののれんをくぐって、広告写真を1枚パチリ。いやーよかったよかった、最高のお祭りでした。
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■18/07/22(日) □ 最後の花火
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俺がカナダ親戚のコーディネートに追われ、母さんといた時間が足りないので滞在を1日伸ばそうかと迷っていたのだが、伸ばしても母さんの予定(なんと明日は沢田研二コンサート!!)もあって一緒にいられる時間は増えないとなり、結局予定通りに明日東京へ出発と決める。
そう告げると母さんもそうだねそうしなと同意するが、「あんなに楽しみにしてたのに、もう終わっちゃう」といわれた。泣きたい気持ちになってしまう。
というわけで今日が信州最終日。俺は母宅大工仕事の資材などを買いに走る。萌はキキと長野の街へ遊びに行った。大工仕事を終えたらあとは荷造りなどして、夕方の花火で信州滞在は終わりだ。寂しいが。
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この家に来てからずっと気にしていた猫が玄関引き戸を開けてしまう問題は、要は猫の爪が引き戸の隙間に入らなければいいのだから、そこを何かでふさげばいい。そこで薄いバルサ材を買ってきて引き戸の隙間をふさぐ角度で取り付けた。この仕事はきれいに完璧にうまくいった。よし。
そして東京で世話になるハチ家へ、母さんの作った食べ物とジャムと信州野菜を大量に送る。俺の大トランクも同時に名古屋空港へ送ってしまい、これで残りの旅は身軽になる。
よし。うまくいった。あとは母さんと残りの時間をゆっくりと過ごすだけ。
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萌はキキとカラオケに行ったそう。ビデオを見せてもらう。
うわ! 最高だな。最高だよこれは。最高すぎる :-)!
なんで何の打ち合わせもなく曲が始まった瞬間二人でこうなれるんだ。それが共通文化というものなのか(笑)。まるで世界のバンドマンが共通のコードでいきなり合わせられるかのように、カナダとブラジルのティーンは見事に共鳴してノリまくってたのであった。若いってすばらしい。
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この滞在最後の晩ごはん。俺は母さんの元を去るのがさびしくて困っている。萌も同じ気持ち。この暑さじゃ外出に誘うこともできないし、ただ一緒にいて話をしご飯を食べることしかできないのだけれど。
だから LINE と Google チャットで盤石のビデオ通話態勢を整えたわけである。一緒にいますよこれからも。カナダ帰ってからだけじゃなく、東京からも顔見せますよ。そのために徹底的にネットスピード上げといたので。
俺がこの家のネット環境強化に力を入れすぎるので母さんは呆れていた。そこまでやらなくてもあたしはいいんだよと。いやいやいや、せめてものことじゃないこんなの。遠い遠い国に住んでいて、俺にできることなんて。
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夜は市営グラウンドの駐車場おおおおで花火。信州の夕暮れは美しい。
LINE/Google チャットのテストも兼ねて、歩きながら母さんのところへ中継テキストと写真を送る。ビデオチャットで映像も送ろうとしてるのだが、周りがうるさくて届いているのかどうかわからない。
聞こえますかー。しーん。聞こえてると信じて映像送りますよー。しーん。
久しぶりに見る日本の花火はうわーーーーと声が止まらぬほど美しかったが、時間的にはびっくりするほど短かった。これはスゴイというのが次々に打ち上がってたのは正味10分ほどだった気がする。花火のスポンサーになるようなお大尽がいかに減ったかこの時代…ということなんだろうか。
あとから写真を見るとすごいのが撮れてた。俺のマニュアルフォーカス技術すごくないですか(笑)! 母さんも花火に誘ったのだが、近くで見ると首が痛くなるからいいよと家の玄関から眺めていたとのこと。Google チャットの動画中継は、やっぱり見てくれてなかった(笑)。
最後の花火に今年もなったな
何年経っても思い出してしまうな
(フジファブリック「若者のすべて」)
帰り道、市営グラウンドの駐車場から出たところで、看護学校の前で渋滞にハマる。「…高1の時公園でボートに乗ってるとかわいい子がいて友だちがナンパしちゃったんだけど、その子がこの看護学校の生徒で、つまり3つも年上で、しかもうちの店の真向かいの医院にインターンで勤めてる子だったんだよ。『あなたサカタさんちの子でしょ』って言われて恥ずかしかった。この町にはやっぱりいろいろ思い出があるよ」と萌に話し、笑いながら帰る。
そんな話をしたんだよと帰ってから母さんにいうと、「ああ、あの子ねえ、きれいで目立ってたわよね。あれから他の病院に移っていて、一度会ったことがあるわ」と覚えていた。なんと。やっぱりきれいだったもんなあの人。――というか、向かいの医院に子供らがクラクラするほどきれいな看護婦がいると気づいていたお母さんの観察眼すごい(笑)。俺は自分が観察屋だと思っているが、それはまるまるそっくり母さんから来てるのだなと思う。
あの看護婦さんは名前も覚えてないけれど、一度夜の舗道に一緒に座り、ギターを弾いて聞かせたことがある。あのときはドキドキしたなあ。
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明日は東京へ。夜眠れず日記を見返していて、俺と萌は 10 日もここにいたのだと気付く。なのに俺は観光ドライバーとしてただただ走りまわっていたので、母さんとゆっくりできたという感覚がない。一緒に出かけたのはスーパー買い出し数回とランチが一回だけで。
Mもいってるが、今度帰ってくるときはこんな暑くないときにしよう。そして俺は自分と母さんのためにもっとゆっくり時間を使おう。ただここでうまいものを食べてゴロゴロしているだけで俺は幸せなのだし。
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■18/07/23(月) □ Oh リサ
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出発の朝。10日間の滞在中お世話になりました、とカナダ訪日団(サカタ家と AD 夫妻)共同でおばあちゃんに掃除機ルンバをプレゼント。こいつで猫の毛をブイブイ吸い取ってください :-)
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店に寄ってお世話になりました、おたくの配達クルマの6人乗りキューブはすばらしいとお礼をいい、駅に向かう。汽車が駅を離れると萌は、子供の頃のように泣きはしなかったのだが、おばあちゃんとの別れを惜しみ明らかに気持ちが沈んでいた。
東京で厄介になるハチ宅は想像したよりもずっと広くて美しく快適なところだったのだが、それでもあまり浮かない顔をしている。慣れ親しんだところを離れ知らない人の家に泊まるのは、若い娘には少し気が引けることなのかもしれない。
夕食は信州から届いたサカタのお店のローストビーフとトマト。ハチはトマトの皮をむき、薄味をつけさわやかな食べ物にしていた。昔飯を作ってくれた頃は薫製だとかきのこ汁だとかの豪快なキャンプ飯だったが、アウトドア料理の本を出すエキスパートとなっている今はより繊細でより食材そのままの味を活かす調理スタイルとなっているのかもしれない。
夕食が済み、ギターが出てきてハチが歌い始める。俺がいつも車でかけ萌も好きな彼の歌。
「Oh リサ。お前の話をしたいんだ。Oh リサ。ヘビーでハッピーなお前の」。
(ああ本物だ!)という顔で萌の顔が輝き、大きな声で彼女も一緒に歌う。――ああよかった。Oh 萌。大きな風で揺られてる。Oh 萌。無防備でつよい花。
リサは、恋を失った友だちの女の子を思い作ったのだ、レコーディングのときは前日に野草を食べすぎて(そのアクで)声が出なかったとハチは話してくれた。
「こんな大事な、インポータントな日にね、野草で声が出ないってことは、俺の運命はミュージックよりも野草の方に向かってるんだと気がついて、今(の野外活動家という仕事)に至るんだよ」。ハチは萌に英語で話しかける。それがおかしくて笑ってしまう。ははは :-)
『このバラバラの世の中で俺をそのままに見ている
お前のような人こそが、嵐からの隠れ場所だ
Oh リサ、お前の話がしたいんだ
Oh リサ、ヘビーでハッピーなお前の』
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