2011/11/10

日記「タブッターオム先生に土井亜紀を」

「北杜夫チルドレン」「カナダ中学3者会談」「スクールロックコンサート」

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■11/11/02(水) □ 北杜夫チルドレン
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小田嶋隆「マンボウ先生が残していったもの」
私が北杜夫(以下敬称略)の読者だったのは、主に中学生の頃だ。それ以前も以後も、あまり読んだ記憶がない。

影響は非常に大きかった。中学校に通っていた3年の間、私は北杜夫の作品を耽読し、文体を模倣し、世界を眺める時の視点の置き方を、いつも微妙にドクトルの方向にシフトさせていた。その3年間の、いま思えば異質な期間が、私の性格のうちにあるどことなく人工的な部分を形成している。

私は、ビートルズに出会い、ヘルマン・ヘッセに後頭部をガツンとやられ、北杜夫に影響され、遠藤周作に憧れ、立川談志を追いかけまわし、古い切手を蒐集し、体操部と卓球部と水泳部に同時入部し、なにひとつモノにならず、そうやって中学校の3年間をあわただしく、まとまりなく、ころげまわるみたいにして走り抜けた。

マンボウ先生は、進行方向に三叉路があれば、自分が、苛烈さよりも安逸の側の道を選ぶ人間である旨を声高らかに宣言している人で、そこのところが、中学生にはなんとも洒脱に見えたものなのである。大げさに言えば、そういう大人が日本にいるということだけで、自分がこの先生きて行くことにも、多少の希望が持てるような気がしたのだ。

世代が近いせいだろうけど、シンクロニシティを感じるくらい同じだなあ。中学時にのめり込んだものといえばビートルズと北杜夫だ。北杜夫の文体を真似て教師にシニカルな評をもらい、大人って実は意地悪なんだなと学んだりもした。

萌があまり本を読まないのは、俺にとっての北杜夫ほど面白い作家に出会ってないからだろう。英語世界の読書知識がないのでヘルプできないんですが。ハリーポッターなぞがどれほど売れようと、北杜夫が 70 年代の日本の中学生に与えた影響のほうが大きくプレシャスだと思う。

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■11/11/03(木) □ カナダ中学3者会談
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萌の中学3者会談へ。先生が仏英それぞれいて4者会談だった。俺は「とにかく宿題が多すぎる、課外活動がある日なんか寝るまで宿題漬けでひどいことになっている」と訴えたのだが、「宿題は2時間がノーム(標準的)だ」と言われてしまった。マジですか。おらは日本から来たで知らんのですが、カナダはどこもそうなんですか? イエス。えー(絶句)。

しかしイエスと言ったフランス語数学教師が所用で出ていくと、担任の英語教師がやや軟化した態度で、「2時間とはいっても、それは学校で課題をやっていかなかった場合。私はクラスで子供たちに課題をやる時間を十分に与えている。学校でしっかり集中してやれば、家に帰ってからは1時間で済むはずだ」という。

なるほど、じゃ本人がクラスで頑張れば家では楽になると。「イエス」。わかりました。しかし2時間というのはショックですと俺が言うと、「2時間はたしかに長すぎると私も思う、でも高校になったらもっと厳しいわよ」と担任は言うのであった。

まったくマジメすぎるなカナダの中学校。なんなんだこれは。こんなに厳しくして、ついていけない子供はどうなるんだ。こんな努力を続けられない子供は当然大量にいるだろう。でそういう子供が反抗期に入り、居残りも拒否したらどうするのだ。ドロップアウトさせるのかよ。馬鹿ばかしい。

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9月に始まった萌の中学生活を、俺はこうしてどっぷりと身を漬けるようにしてサポートしてるのだが、実際そうしないと萌の自由時間がなくなり見てられんのだ。萌は毎日の宿題で自分が苦労する数学を苦手だと思っているが、やっているのは分数やら公約数やらで、こんなものは誰だっていずれわかるようになる。ただそのスイッチが入ってないだけだ。俺だって子供の当時は算数を苦手としており今だって暗算は苦手だが、その仕組みはわかる。単に頭脳の論理演繹能力が年齢により自然と上がったということだろう。脳内のある種のスイッチをいれる要素として、年齢というのはやはり大きい。

実際思うのだが、カナダで11歳の子供がこうして負荷の高い中学生活を送るというのは早過ぎるんじゃないか。うちの学区の小学校は日本より1年早く6歳から始まり(これは学区によって違うらしい)、6年生から中学なので萌たち遅生まれの子供はわずか11歳で中1となっている。数学等のカリキュラムの進度は日本と比べても年齢相応なので難度が高いわけではないが、部活と学課と宿題による心身の量的負荷・拘束時間は小学校と中学では段違いなわけで、11歳=日本の小5でそのすべてをこなしていくのは時間&作業量的にきついのだ。この学齢システムはバランスが悪い。

カナダは住環境と子供の養育環境はいいと思っていたが、萌がキンダー(小学予科・5歳)に入って以来各担任の能力には疑念を感じており、カナダの初等教育のレベルが高いとは俺は思わない。日本に比べてどうこうではなく、個々の教師に教育者としての素養があり、子供のために力を尽くしているのかが疑わしいのである。単に大量の課題をやらせてるだけじゃないのか、と。萌が今分数や小数点に苦労しているのも、結局小学校の教師たちと彼らが使ったあの百科事典風バカ重算数教科書が助けにならなかったからである(それに気づいて俺が夏休み中に算数のベーシックをドリルさせとくべきだったので、これは自分で反省してます)。

教育専門家であるMはこうしたカナダ初等中等教育の現状に我慢できず、理想の自然保護系教育を施す私立のスペシャルスクールへ萌をやりたかったわけだが、普通の学校に付随するクラブやスクールライフをばっさり捨てるのはあんまりだといって俺は反対したのだ。普通の学校にやったことを後悔はしていないが、しかし普通の学校のこの宿題の馬鹿さ、校則の理不尽さにはMよりも萌よりも俺のほうがイライラする毎日である。

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■11/11/04(金) □ スクールロックコンサート
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【スクールロックコンサート】音楽クラスの発表がありますと昨日急に通知が来たので萌のクラスだけの音楽室での発表かと思ったら、体育館にステージを組み全校計6クラスが演奏を披露する大コンサートだった。PA システムもライブハウス相当のものがちゃんとあり、ステージ上にはカクテルライトやモニタースピーカもあり、どえらい大音響でリハーサルをやっていて驚いた。こんな本格的なものだったとは。こんな機材は日本の学校じゃありえない。PA システムの操作も先生が子供らに指導しやらせている。すごいな。


ジャイアン的風貌だが
「すごくいいヤツ」と並ぶムスメ
演奏したのは全6クラス6バンド。楽器はドラム、キーボード、ベースギター、エレキが各2台くらい、その他は全員アコースティックギターで、シンガーが6~8名という構成。みんな楽器は当然下手だが、1 バンド 30~40 人もいるのでしっかりと音圧があり、なかなか気持ちいい。しかし楽器の音がでかいので歌は難しいようだった。モニターが聞こえづらいらしく―――聞こえないときは耳を半分塞ぐというのも音楽の先生(教師になる前はバンドマンだったらしい)に習ってやっていた―――、そしてマイクは声のでかいボーイズのピーク音ばかり拾ってしまうので、音程のいいガールズの声が聞こえない。ボーイズは基本的に音痴で、しかもみんな自分の声が聞こえないので余計に声を張り上げてしまい、さらに音程がはずれていくという悪循環になっていた。

そんなわけでどのバンドも、演奏はなかなかいいのだが歌が♪んとかんとかんとかでーと、音程が悪くラップ風なボーイズの蛮声だけが鳴り響くという、聞きづらいものになってしまっていた。萌のクラスは男女3人ずつがボーカルだったのだが、萌が風邪をひいていたせいもありガールズの声はまったく聞こえなかった。残念。1つだけボーカルの音程がいいバンドがあったのだが、なんでかと思ったらこのバンドだけ歌が全員ガールズだった(笑)。

この問題を解消するには楽器の音量を下げるかボーイズのマイクを絞ればいいのだが、ミキサーをやってるのも生徒で、先生もそこまで微妙な指導はできないのかもしれない。楽器が 30 台もあるとやっぱ自然と音量はでかくなってしまうんだろう。まあともあれ、楽しかった。萌は来年(?)はギターかキーボードをやってもらいたい。

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■11/11/05(土) □ タブッターオム先生に土井亜紀を
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世界最強Twitterクライアント・タブッター
愛用する Twitter クライアントのタブッターが、なんと無料版は1日1時間までというシェアウェアみたいな制限をつけてきた。しかも、これに併せて有料版の費用を払いやすくすればドカーンと行くと思うが(俺は1回払えば OK の使用権買取なら買います、一生払い続けるのは気が重いと以前メールを送ったのだが返答はなかった)、逆に年 1900→2900 円と同時値上げしている。こんな便乗値上げをされては、好意的なユーザーも移行しにくいではないか。もういいです、これまで払ってくれたユーザーだけで排他的にやっていきますというメッセージが強すぎる。つまりヤケクソになっている。いかん。

こんな世界最高に便利な Twitter クライアントが、こんなに儲からず消えていくなんてどうかしているぜ。海外では大金持ちを生み出すネットビジネスが、日本ではどうして駄目なんだろう。欧米発の優れたネットサービスは全部フリーですごい収益を生んでいるではないか。あいつらはどうやって金を儲けているんだ。日本でもネトゲ会社は球団を買えるのに、優秀なツール作者はサーバーも維持できないのか? そのへんの謎を解き、皆を幸せにできる会社はないのかな。謎だらけだ。

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「タブッター」で検索すると、有料化ありえないバカなのという罵倒がすごいスピードで流れていく。こんなに使ってる人がいたのか。そしてこれ以上のクライアントはないと認めながら、使えなくなったらみんなこんなことを言うのか。世の中こういう連中に満ちているんだから、自分の努力を無償で提供する気がなくなるのはよくわかる。タブッターに対する罵倒を流さなかった人だけ無料使用時間を延長できたらよかったのに。

しかし人を傷つける日本語って増えたなあと、検索タブを眺めていて思う。タブッター作者がこれを眺め、「モテキ」のオム先生みたいにシオシオになってなければいいがと心配してしまう。

好みは個人差があるが、タブッターの便利さは客観的に見て他のクライアントとは比較にならない。世界中の Twitter クライアントを全部併せて使っても、まだタブッターにしかできないことがいくらでもある。

  • タイムラインのグループ分け
  • タブごとのミュートワード設定(正規表現が使え、ミュートの効き具合をチェックするための一時解除機能まである)
  • 各タブの発言比率表示(時間ごとの各タブのツイート量がわかり、流量の調整に役立つ)
  • 既読位置の簡易 AI 的保持
  • 多 PC 間での設定の移行
  • 発言の一括 html 式ダウンロード
  • アイコンの拡大表示(!)
  • フォロワーの通知、マーク付け
  • 音声通知
  • すべての操作にキーボードショートカットあり
などなど。他のクライアントが持つ機能を当たり前に備えた上で、これだけのものを生み出しているのである。人ごとながら、グループ分け機能なんか他のクライアントが真似をしてくる前にタブッター氏が実用新案等を取っておけないかなと思うくらいである。
「Twitter が無料なのにクライアントが有料ってどういうことだよ」という文句が多くあるが、その2つが提供してるのは別ものなのだ。Twitter は革新的なコミュニケーション手段を提供し、タブッターはそれを使うことを気持ちよくする革新的な便利さを提供しているのである。
世界でも日本でも人はイノベイティブなものを神のごとく崇めるが、不備なものを完璧にする仕事への評価が低い。Twitter 本家や Google の独創性対タブッターや日本製ソフトウェアの使いやすさで、後者への評価が低すぎる。日本技術の美点はものを最高に使いやすくできることで(よく英米人が we invented it, but Japanese perfected it という)、タブッターはツイッター世界においてのその日本文化の頂点に立つ。
この作者がお金をもらうだけの価値は当然ある。それがユーザーから作者への直接の課金送付という、今どき類を見ないユーザー重負担の形でしか実現できないのは不幸なことだが、これはその実体がオム先生であろうタブッター作者の商才の不足と、儲かるほうが不思議でどうなってるのか誰にもわからないネットビジネスの難しさ故。現時点でそれを責めてみても仕方がない。才能ある技術者に商売の才覚がないことなどいくらでもあることだろう。商才だけあり技術アイデアがないよりよほどえらい。タブッターオム先生に土井亜紀みたいな美人敏腕マネージャがいればみんなが幸福になれるのだが。

「えーWebアプリ作者さんなんですか?
私会うの初めてですーっ」
―――というわけで、これを機にタブッターの業績が上がり安定し永年使用権買い切りオプションを用意してくれることを祈りながら、俺は課金を払おう。どうかこのお金で土井亜紀を雇ってください。

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