2016/01/19

デビッドボウイ「ファイブイヤーズ」

日曜にカナダのTVが、BBC制作「デビッドボウイ:ファイブイヤーズ」というドキュメンタリーをやってくれた。奥さんと一緒に見たんだけどすごい番組でしたよ。鮮烈なジギー時代、「残りの人生これをやってくなんてまっぴらだ。髪を染めるだけで全財産を失うと思って」ジギーをやめ、やせてガリガリの真っ白な公爵として海を渡り奇妙なソウル音楽「ヤングアメリカンズ」「ステイションズ・トゥ・ステイションズ」を作っていく時代。どの時代のどこを取っても、映像も喋ってることもすげえすげえの連発だった。

これを見て認識を改めたのだが、「ヤングアメリカンズ」の頃のボウイはまるでアメリカに受け入れられてなかったんだな。それも当然で、こんな顔して現れて奇妙なソウル音楽を歌ってたんだよ。ウケるわけがない(笑)。

暗く高尚な顔でソウルトレインに登壇し「ゴールデンイヤーズ」を歌い、踊るオーディエンスに何の熱狂も与えてなかったボウイを見て、シリアスムーンライト・ツアー(レッツダンス)時のニコニコ顔ボウイは嫌で仕方がなかった自分のアメリカ生活に対するリベンジだったのかと思った。



アメリカに別れを告げヨーロッパに戻り、ベルリンで「ロウ」と「ヒーローズ」を作っているところの話が面白かった。葬式参列者みたいな真っ黒でしわひとつないスーツを着て出てきてコメントした(現代の)ロバートフリップの変人っぷりには笑ったけど(笑)、「ヒーローズ」についてボウイの言葉に感動したので書いときます。

「ロバートフリップのギターが僕のエモーションを掻き立てたんだ。『ヒーローズ』は自分は愚か者でときに馬鹿げたほど危険なことに身を投じてきたが、だけどどうやらそこを切り抜けたようだっていう勝利の歌なんだよ。信じられないほど低い確率に打ち克つことだってあるんだっていう」
 


ブライアンイーノ「フリップは3回テイクを録ったんだけど、(プロデューサーの)ヴィスコンティの天才がひらめいてね、それを全部重ねたんだよ」。――それであのサウンドができたんだ。ノースアメリカの人々はあまりキングクリムゾンを知らないんだけど、彼のギターは「ヒーローズ」で百%耳にしてるんだなと改めて思った。

「ファイブイヤーズ」はジギーから始まって『レッツダンス』で世界的なアリーナスターになるまでの”5年”だった。長年一緒にやってたギターのカルロスアルマーが、「いやーボウイは変わったなあ明るくなったなあと、ちょっと気味が悪かったね」と笑っていた。

『レッツダンス』の「シリアスムーンライトツアー」は武道館に見に行ったんだけど、やっぱり「ちょっと気味が悪い」という印象が残った。5年前か5年後にチャンスがあれば、もっと見たかったボウイが見れたんだろうと思う。ファイブイヤーズ。◆

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