2010/11/19

日記「カルカソンヌ・オンライン修行」

「秋景色のフレイジャーバレー」「怠惰なハリソン湯治」「複雑なリメンバランスデイ」ほか。

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■10/11/06(土) □ 秋景色のフレイジャーバレー
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 ◆15:19 秋恒例のハリソン・ホットスプリングスへ。すんばらしい秋景色の中を1時間半で着。ハリソンは近くて助かる。フレイジャーバレーはBCで最も美しいとここへ来るたびに思うが、今年はパーフェクトな時期に来たようで、まことに目の覚めるような紅葉だった。


Nicomen Slough (c) iano50
 BCの人里はなれた山奥や島々はどこも一様にのっぺりと美しく、植生も単調で俺はそういう風景にはあまり心が動かないのだが、静水と橋と人の暮らしがワンフレームに収まるようなこうした抑揚のあるフレイジャーバレーの風景はビリビリくる。日本でも農村風景はすごく美しいと感じるもんな。


初心者にゲームを教える娘
 萌と野外プールに入りレストランで食事の後、夜は持参したカルカソンヌを皆に披露する。期待通りSHとADにバカ受けだったのだが、ルールを説明しながらの5人プレイなので倍時間がかかり、1回しかできなかった。普段は超親切なのに意外と人を助けず黙々と点を重ねたSHが1人勝ち、残りは全員団子レースであった。SFとADが都市を奪い合って盛り上がり、SFが初めて負けたと憮然とする。

 これは最高だとADはルールブックを読みだし(「フォーミュラD」でもルールの緻密さに喜んでいたが、カナダ・ドイツのインテリピープルは概念の整合性にしびれて喜ぶところがすごくある)、どうやってこんなパーフェクトな家族ゲームを見つけたのかとSHは不思議がる。家族旅行に来ると俺はいつも退屈するのだが、今年はカルカソンヌをやりたいので時間が足りなく感じるほどだ。

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■10/11/07(日) □ 怠惰なハリソン湯治
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 この旅では boardgamegeek.com という英語圏最大のボードゲームサイトのフォーラム記事を大量に Axim に入れ持ってきたのだが、参加する全員がことごとく知的で文章がうまい。もともと英語圏で 2ch みたいにキテレツに奇形化したフォーラムは見たことがないが、これほどうまい文がずらずらと並ぶフォーラムというのも珍しい。目と頭に実に心地よい。日本でも同じ傾向があるが、いろいろな面倒をいとわずボードゲームを入手し学び遊ぶ人々はやはりいい人たちなのだろう。

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 ハリソン2日目はみな風呂に入り自分の部屋で本を読み、いつも通りの怠惰なハリソン湯治となっている。俺はもっとカルカソンヌをやりたかったのだが、結局数戦しかやれなかった。やれば盛り上がるのにどうして連チャンにならないのだろう。やっぱ対戦ゲームでスキルと運の違う全員をうまく楽しませるのは難しいのかな。フレンドリーマッチでは攻防が十分に発生しないので、タイルの引き運で割合アッサリと盛り上がらずゲームが終わってしまうことがある。もっと回数を重ねみんなにうまくなってもらうしかないのだが、そんなにしょっちゅう会うわけでもないしなあ。

 萌が興奮と疲労の限度を超え、夕方頭痛を訴える。3年前とまったく同じだ。今年も同じ日本食レストランから寿司をテイクアウトとなった。寿司はこんな山の中でと驚くほどネタがうまく、板さんの握る姿が真摯できれいで皆に絶賛されていたのだが、カナダ人向けなのか酢と塩がかなり多すぎるという味。惜しい。

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■10/11/08(月) □ 大人と子供を分けるなよ
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 ハリソン名物の朝食バッフェをパスして朝風呂。あそこのバッフェは文句なくうまいが、2日続けて肉卵イモ系の朝食を食べたいとは思わなかった。

 萌がバッフェにいる間大人専用の静かなプールにいくが、やはりハリソンでほんとにいい湯なのはここだけだなあと思う。子供プールは寒いしジャグジーは塩素臭い。ここもややぬるく足元を見ればコンクリートなのが興醒めだが、山の景色もそれなりに見え、湯気だけ眺めていれば立派な露天風呂だ。30 分1人で入っていても飽きないくらい気持ちいい。


ハリソンしっぽり大人風呂
 腹が立つのはこの一番気持ちのいい露天風呂に 18 歳以下の子供は入れないことで、大人同伴であれば入れてやればいいではないかと思う。カナダでは大人と子供を妙に分け隔て、子供は外で遊ばせておいて親はロマンチックにワインをみたいなノリがある。この露天風呂もそのノリで、大人というよりしっぽりカップル専用プールとなっている。

 子供用プールは湯温がまったく低すぎて、こういう冬場はとても長く入ってはいられない。冷えてしまった子供らは、温泉ホテルに滞在していながら屋内の小さなプールで泳いでるのだから馬鹿ばかしい。あんなインドアプールはどこの町内にもあるコミュニティプールに劣るのである。大人と子供を分けるなよ。というか、分けたければ親が自分で分ければいいではないか。規則で決めないでほしい。

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 家に帰り夜は「怪物くん」を萌と一緒に見る。1回目は駄目駄目だと思ったが、怪物くんが「労働とお金(お金は悪くない! お金に謝れ!)」「友情と悪口(悪口サイコー!)」といったファンダメンタルな道徳則を徐々に、大きく勘違いしながら会得していくという展開が萌のツボに入り、久しぶりに「これ面白いね!」と爆笑している。やっぱりこういう間抜けな展開になると、ボケとツッコミで鍛えられた日本のコメディは面白いよな。日本の笑いの愉しさは間抜けを愛でるところにある。

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■10/11/10(水) □ 複雑なリメンバランスデイ
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 萌が栄えある司会をすることになったので、学校のリメンバランスデイ(戦没将兵記念日)集会へ。俺は元敵国出身なのでこういう集まりは肩身が狭いのだが、第二次大戦を直接指してるのではなく、第一次大戦以降のすべての国の戦没兵士を記念する行事なのだから気にするなと妻に言われる。とはいってもスライドには、「彼ら兵士のおかげで自由は守られたと忘れてはなりません」とか出るので、当然ながら連合国側の行事なんだよな。日独伊出身者はやはり肩身が狭い。

 リメンバランスデイは日本の戦没者慰霊祭よりもはるかに津々浦々で行われる大々的なものであり、ここの校長はやや右な軍隊式規律大好きな人なので、ことにリキを入れた厳粛な集会となっている。厳粛さゆえに拍手も写真もビデオも禁止と言われた。無視してこっそりビデオは撮ったけれど。

 戦没兵士を称える言葉が子供の口から盛んに重ねられる。日本でも戦没者を慰霊しようという気持ちは同じにあるが、「兵士」とピンポイントで指定し言葉や行事で積極的に称えることはしないので、毎年のことながら気持ちの持って行きどころがよくわからない。

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 ―――ともあれ萌の司会だが、緊張から内容を完全にど忘れしてディズアスターだった2年前の日本語暗記スピーチでのトラウマもさすがに乗り越えたようで、落ち着いて堂に入り穏やかな表情を絶やさず、かつはしゃいで厳粛さを失うということもなく、英語フランス語とも完璧だった。

 途中子供らがガヤガヤと騒ぎ立てると、萌が「静かにしてください」とぴしゃりといい、場内が静まる。これはもう超快感だったそうだ(笑)。これで過去の屈辱も忘れられるだろう。よかったよかった。

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■10/11/13(土) □ カルカソンヌ・オンライン修行
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 最近1人2役ソリテアで極まってきたカルカソンヌ腕試しをしたくて、オンラインゲームのメッカといわれるドイツのBSW (BrettspielWelt)にログインしてみる(カルカソンヌの出版元が出資してるらしい)。ドイツ語なので使い方がわからず苦労するが(ヘルプを独日訳してくださった BlueBear 氏のページがあって助かった)、ちょうど日本人プレイヤーが見つかったので挑戦し、問題なく勝利。本物をソリテアでやるよりも早く20分くらいで終わったと思うが(自分が打つべきエリアをお互い絞れるからだろう)、やってる間他のことをできないオンラインゲームというのはやはりちょっと緊張するな。あとで強そうな人にも挑戦してみたい。

 【2戦目】はやや手ごわいドイツ人で、好勝負だったがビッグミープルを置くコマンドがわからないせいでレイクロードを2本、草原を1箇所取りそこね、メインの草原がシェアされてるのも見落として負けた。しかしこれらの不利は慣れればなくなる。だんだん面白くなってきた。

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 【3戦目】は5人という多人数戦となった。すると待ち時間がえらい長い。みな長考するのでときには2~3分待ちがあり、とても集中してやってられん。これは3人戦くらいまでにしておきたいなあ。

 しかしちゃんとプレイできる人4人を相手にするというのはまったく初めてのことなので、どういう勝負になるのかそれだけでも興味深いか....と思ってると、簡単に不可能タイルを置かれて序盤で2コマ失い万事休した。ぐわ。うまい。さすがだドイツ人。これでもう勝ち目はまるでないが、5人戦なので最下位だけは避けようと努力し、最終的に草原でうまく点を取り4位で終わる。

 そして【4戦目】はなんと序盤にして2箇所で閉じ込められ、後半をミープル0(得点不能状態)で延々とプレイすることになった。屈辱。俺は弱いのだ。カルカソの里ドイツ人はやはり強いのだ。こりゃもっと修行してから行かないと、弱すぎて相手プレイヤーにも迷惑だな。

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 その後も負け続け、なんと1回目に初心者に1勝しただけであとは全敗という想像以下の結果となった。今日は萌にも負けたので1勝7敗である ^_^;。

 この1ヶ月、ほぼソリテアだけとはいえ百回はプレイしているはずの俺がこれほどに弱いとは。俺より明らかに強いと思ったのは2人ほどで、あとは俺が間抜けで下手すぎたゆえの結果だ。カルカソンヌはソリテアでは強くなれないらしい。しかしこれほど対戦に苦戦するほど奥が深いゲームなのだということでもあるな。修行しよう。

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■10/11/14(日) □ 真剣勝負のドキドキ
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 朝イチで気を入れ直して BSW に再挑戦、運も来ず完敗。それを見ていた萌がやりたがり完敗、もう2勝10敗くらいだろう。しかしようやくオンライン対戦に慣れて勝てる手応えが出てきた。

 3戦目、??Lady という女の子と戦う。この子がすごくクレバーにバシバシ乗っ取りをかけてくる子で、途中からもう笑ってしまい「君はうまいね」「サンクス ^^」という会話がどんどん入る楽しいゲームとなる。で残り3枚まで俺がギリギリ勝っていたのだが(もう一手一手で胸ドキドキ状態)、最後に57点長大都市を完成させる大聖堂タイルを見事に引き当てられ大逆転された。ファームで30点近く取り返したものの 170-130 の負け。しかし面白かった。彼女にとってもこれはよほど会心の勝負だったようで再戦を持ちかけられたが、2戦続けてこのテンションは保てないので辞退。

 ふー、カルカソンヌ真剣勝負は面白い。これを運が勝負を大きく左右する戦術的深みのない「運ゲー」と呼ぶ人が多いが、ここでプレイしてみれば考えを改めるだろう。運ゲームで普通のプレイヤーがかくも連続で負け続けるわけがない。うまい人はうまいのである。少なくともソリテア&初心者同士でひと月やりこんだ俺くらいの力量では読めない程度の先から達人はワナを張ることができる。そして素晴らしいことに普通のプレイヤーでもいい手をひらめき運が少しあれば (With a Little Luck)、そんな達人とも楽しく競り合える。そこが運が見事に組み込まれたシステムの美点なのだ。

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 稀勢の里、白鵬を破る。白鵬は伝説の力士を超える程の相撲をこれまでしてきたわけじゃないので、こうして力のある力士が朝青龍並みに心の底から立ち向かえば、やはり倒せるんだよなと思った。白鵬にとっても悪い結果ではないだろう。朝青龍より強くなればよい。

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