2011/06/12

「初めてのボードゲーム会」

「子供カメラを探す」「スペシャル日系買い物誕生日」「ディア・ドクター」「日本語学校でコントを希望」「ゴールドカップ開幕」「日本のミュージックビジネス」

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■11/06/01(水) □ 子供カメラを探す
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 明日萌の誕生日なのだが、Mは出張中だし本人も去年同様暑くなるのを待って水着パーティをやりたいとのことで、明日は何もイベントがない。一切何もしてやらないのはかわいそうなので、こないだ見かけた激安ビデオカメラでも買ってやろうかなと考えている。顔面至近撮影でツバだらけにされるので俺のカメラはもうキッズに貸したくないが、どうせ撮るのは顔のアップなのだから、激安カメラで十分なはずだ。


驚異の廉価カメラ、$9.99
 というわけで、子供用ビデオカメラ$10(!)とDS用スピーカ$5を買ってきた。カメラは単4バッテリー駆動で1GB、カードスロットまであるという本格的なもので、クオリティはダメダメだろうがこんなおもちゃ価格なんだから、動きさえすれば買って後悔するわけがない。Youtube で見る限り、予想通りのキッズ画質で撮れそうである。

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■11/06/02(木) □ スペシャル日系買い物誕生日
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 朝イチで萌にカメラを渡す。期待通り大盛り上がり。さっそく使ってみると絵は予想以上にきれいだ。せっかくの誕生日なんだから、このカメラを学校に持って行ってみんなのバースデーメッセージでも録画しておいで。

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 学校のインドアホッケーを朝初めて見に行くと、萌のチームはすでに準決勝まで勝ち上がっており、しかし今回は相手が明らかに強い。ガンガン点を取られ、失点のたびにチーム全員の表情がどんどん険悪になっていく。「そんなに気にすんなよ」と横から声をかけるも聞こえない。子供スポーツって難しい。

 萌はホッケーなぞ当然超ヘタでチームの足を引っ張ってるので、交替時にとにかく相手のあのでかくてうまいFWをフリーにするな、間を詰めるだけでもディフェンスになる、ボールを拾ったら体で敵からボールを守り、そして前にクリアするんだとサッカー的にアドバイスする。これは即効性ありで、次のピリオドから萌のディフェンスがそこそこ役に立ち始める。技術はなくてもチームスポーツならやれることはある。

 子供のスポーツを見ていると、自分も子供の頃はこうで、試合中何をしたらいいのかまったく分からず頭が真っ白だったんだよなと思う。コーチがいいチームがすぐに強くなるのは、子供の真っ白な頭に必要な情報を単純な方法で入れてやれば、こうしてすぐさま効果が現れるからだろう。

 結果は 15-0 の爆負けで、あまりの士気の低さに試合後校長がスポーツマンシップとはとチームに5分もの訓示を垂れるほどの負けっぷりだった。だがこれは仕方がない。相手は強かったし、でかくてうまい奴をFWに置いて徹底して攻めてきた戦略勝ちでもあった。

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指までなめちゃうビアードパパ
 ビデオカメラ+DS用スピーカで狙い通りクラスパーティとなり盛り上がったという萌をピックアップし、Mを空港へ迎えに行くついでにリッチモンド・アバディーンセンターに直行、「ビアードパパ」でシュークリームを食べさせてやる。ついでダイソーで好きなものを5点買っていいよと買い物。そしてたこ焼ディナー。萌の日系買い物誕生日フルコースだ。

 そしてブラブラした後空港でMをピックアップし、プラン通りに9時に帰宅。お疲れ様でした。いい萌の誕生日であった。ダイソーでの買い物は「こんなものがあるのか」と楽しく、買ったアイデア商品を帰ってから使うのも楽しい。萌は何を買うかと思ったら意外や脳トレ的パズルブックを買っていた。これは日本語を読む訓練にもなっていいね。

 あの萌の$9カメラは実際驚きの実用性能で、レンズが超しょぼいので遠距離だと分解能が足りず役に立たない(まるでピンぼけのように写る)が、子供が好きな顔どアップだと文句なくいい絵が撮れる。これは素晴らしいオモチャだな。買ってよかった。

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■11/06/04(土) □ ディア・ドクター
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 映画【ディア・ドクター】。八千草薫が自分の病気について喋り始めた瞬間、鶴瓶は話に集中するためにTVの野球中継を切る。一刻を争う外科処置にうろたえた鶴瓶が、針を刺す位置を余貴美子に目くばせで教えてもらう。そうした細部が実にいい。後者のシーンなど、アメリカ映画なら怒号のやり取りで熱いハートの大成功となるところだが、その代わりに余貴美子の壮絶な表情とささやき声がある。たまらない。メインの物語は「??」と思うところも多いのだが、こうした細部の味わいは日本映画ならではだ。

 刑事が鶴瓶を知る関係者に聞き込みをして回る。警察がそんなに熱心にニセ医者の動機や心情背景を調べるとも思えないのでこの刑事は狂言回し感が強いのだが、ニセ医者とわかったあとの村人の反応が面白い。だまされていたという裏切られ感と、しかし被害といえるようなものは何もなかったという実感とが、小市民のズルさ寄りに表現されていく。そしてその反応の余韻が、ラストシーンにつながっているのだ。いい映画でした。

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■11/06/05(日) □ 日本語学校でコントを希望
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 日本語学校の卒業発表会。萌は小5なのだがカナダ日本語学校ではなぜか卒業となる。直前が日本で育ちバイリンガル弁護士になりたいという強烈な上昇志向の子だったのでいくぶんスパークが奪われたが、萌の卒業スピーチもばっちりだった。

 しかし日本語学校の発表会は「わ・た・し・たち・わあ。なになに・をお。べんきょうしました」みたいな和式唱和スタイルが相変わらず大半である。幼稚園課は仕方がないが、小2~3以上は子供たちも苦笑しており、かんべんしてくれと思ってるだろう。漢字が難しいので日本語学校が嫌いだと正直にスピーチしていた子がいたが、反抗期にさしかかる萌くらいの年頃の子供にとってはこの《日本語キッズライフにまつわる幼稚さ》も、間違いなく日本語学習へのネガティブな要因となっている。

 ー番面白かったのは家で日本語を使わない子たちによる寸劇で、医者で鼻にティッシュを詰め治療されるという、子供ら自身で考えたに違いないコントに皆がゲラゲラ。唱和や原稿丸読みじゃなくて、こういうパフォーマンスのほうがやっぱいいすよ。

 いっそのことだな、こういう日本語コントを習う学校があればいいのではないか。現実としてカナダの日本語学校は、宿題を見る限り単なる漢字読み書き塾にすぎない。これで日本のマンガを読めるようになる子も中にはいるだろうが、それは家で親が日本語物資を子供に与え、子供がそれを消費しているおかげであって、萌のようにカナダカルチャーにずっぽり入っている子にとって日本語学校の勉強は実用には結びつかない。片親がカナダ人の子供はどこもうちと似たようなものだろう。

 だから漢字ドリルの時間を減らしても俺はまったく構わないから、日本語を使うアクティビティとしてコントをやってほしい。こういう楽しみがあれば子供らが毎週通うモチベーションが上がりまくるだろう。萌が卒業スピーチで日本語学校一番の思い出として同級生が言ったジョークを挙げていたように、笑いは一番強いモチベーターなのだ。学校でコントを毎月1本習い、家で親に披露するとかいった具合になったら素晴らしく楽しいことだ。先生に希望を話してみよう。

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■11/06/07(火) □ ゴールドカップ開幕
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 【ゴールドカップ(サッカー北中米選手権):USA対カナダ】見どころのあまりない試合であった。個人の力量で上回りバランスのいい米が順当に勝ったがデキは悪く、コンディションで上回るカナダは長時間攻めることができたのに、まるで攻撃が形にならないのである。長く強い球出しなど個人の力は昔より上がっているのだが、PKエリアなど大事なところでボールをコントロールできない。

 終盤のカナダの猛攻もエヴァートンGKのハワードが止めまくり、調子が悪いなりになんとかしてくれるドノヴァンら一流選手がいるUSAがうらやましいというゲームであった。カナダはカナメのMFの位置にいるのが、今季加入のMLSで全然勝てず、試合を見ても今のところ見るべきものがないバンクーバーホワイトキャップスの選手だもんなー。あそこにうまい選手がいてほしいとほんとに思った。

 ま、カナダのコンディションだけはいい。グアドループとパナマには走り勝ちできるでしょう。それくらいしか今のところは期待できん。

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■11/06/09(木) □ 日本のミュージックビジネス
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 AKB総選挙という(どうせ不愉快になるのでなんの選挙なのか調べたことはない)話題に日本は席巻されたらしい。カナダでもアイドルはいないではないが、たとえばうちの萌はジャスティン・ビーバーにもアヴリル・ラヴィーンにも興味はないように、国民こぞってアイドルに注目するなんてことはあり得ない。日本では大人までもがAKBの話題に付き合っているのが変なところである。

 NHKの音楽番組で今日、ウーバーワールドというバンドが東京ドーム公演を成功させたと紹介されていた。昔 Boowy が武道館をやったとき「ついに国産ロックバンドがここまできた」というエポック感はすごかったわけだが、今は普通に人気があるバンドは東京ドームでやれるらしい。

 つまり、日本ではミュージックビジネスの成功の単位が甚だしくデフレしている。《ロックバンドの普通の成功が東京ドーム公演で、一番人気アイドルグループは総選挙で国民的行事》という成功の尺度になっている。

 それが悪いこととは言えないが、ものごとの価値をなるたけ高所から公平に眺めたならば(まあそんなことは不可能ですが)、ずいぶんイビツに見えるのは間違いない。成功は集中ではなく分散してほしいな。

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■11/06/11(土) □ 初めてのボードゲーム会
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 甥MKの関連会社のバンクーバーボードゲーム会に招かれる。会場につくと昔うちに一時居候していた懐かしいLNがいた。最後に音沙汰を聞いたのは奴が南アWCを見に行った後、放浪していたアフリカで「汚職警官に捕まり出国できず困っている」という話を聞いたあたりで、彼は釈放された後も旅を続け、なんとバイクで転倒し大怪我をしていたのだった。お前なあ、気をつけなきゃ駄目だろうと肩を叩くと、その通りだよねと笑う。まったくいいヤツではある。

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 会場で山積みのゲームを調べ、俺が欲しくてたまらぬ「チケットトゥライド Euro」を発見。やっ・た。しかしMKが俺の知らぬゲームをどんどん運んでくる。

 まず【ギロチン】というカードゲーム。手札のアクションカードを使い場札の貴族カードの位置を操作しギロチン送りにするというもの。悪いゲームではないが、大量のテキストを読まないと効果が分からないアクションカードが主だというのは、それだけでゲームデザインを好きになれない。ドミニオンでもそうだが、カードに書いてある効果とはつまり《基本ルールに対する例外ルール》なわけで、効果テキストに依存するゲームというのはゲーム中ずっとルールを苦労して読んでいるのに等しい。ドミニオンほど面白ければやがて全部効果を覚えてしまうのでその苦は減少していくが、ギロチン程度のゲームにこれだけのテキスト読み苦労が付随していてはとてもバランスがとれん。

 続いて【カルカソンヌ2】、LNと競って俺の勝ち。やっぱカルカソンヌは例外ルールがなく得点に集中できていいよ。いつやってもサイコー。LNがカルカソンヌ好きだとわかったのもうれしい。


 萌はその間、うちから持っていった「オイそれはオレの魚だぜ」を小さな子とやっていた。ルールが1つだからどんな小さな子にもできるが、子供が盛り上がるにはちょっと少しパンチが足りないかもしれない。他の子供らはやはり「人生ゲーム」をやってました。

 次はまたMKの選択【ゾンビダイス】。ショットガンが3つ出るとバーストというだけの単純なダイスゲーム。子供が学校の休み時間に鉛筆サイコロでやる程度のゲームである。まあ他に何もやることがなければないよりマシだねという程度。

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 そしてさあ次はというところで、またMKがゲームを出してくる前に俺が【チケットトゥライド Euro】を突っ込み、ようやく開始。オンラインでデモを楽しみ、いつか買いたいと思っているゲームそのものである。ワクワク。

 マップとカードのグラフィックと質感は評判通り素晴らしい。俺は色弱なので、チケライ・オンラインではカードの色が分かりにくく困っているのだが、各カードにわかりやすいマークがついており問題はなかった。素晴らしい。俺以外はみんな初めてなので、ルールのあらましを知っている俺が説明しつつ(※)、トンネルと駅舎ルールは省略してゆっくりと味見プレイ。
(※)しかしこれだけデザインが明快なゲームでも、英文ルールブックは分かりにくい。最初にチケットが何枚か、手札が何枚か、場札が何枚か、ルールブックの地文をほぼ1ページをまるまる読まないとわからない作りになっていたせいで開始に手間取った。各何枚配布なのかを冒頭に箇条書きにしておけば即座にゲームを始め、遊びながら不明な部分をチェックできるのに、なんでこんな当たり前なことが分からないのか英語マニュアル書きピープルは。

 序盤は全員「これでいいの?」という感じで恐る恐るプレイしていたのだが、このゲームのデザインは実にシンプルかつ合理的で、数ターンもしたら全員のゲーム脳がクリックし、どんどん打ち手が早くクレバーになっていく。この説明不要性がカルカソンヌ同様ゲームデザインの勝利だよな。何も読む必要がないし、例外を知る必要もない。どうしたら多く点を取れるかを盤面から読み取り考えるだけでいい。《コアのメカニズムさえわかれば、あとは誰でも知力を絞る気持ちよさが味わえる》、こういうゲームこそが美しいと俺は思う。


俺様の華麗なカディス-ストックホルム線
21点(黄色)完成に憤る甥MK
 俺の向かいのアジア系の奥さんは落ち着き物静かでゲーマー的に賢そうな人で、この人の打つ手がなかなか気持ちがいい。おおそこに打つか、MKの路線が妨害できるではないかえらい、という感じ。こういう声の低いアジア系カナダ女性にはたまに出会うが、スマートでかっこいい。アジアで育ったらこの骨格の人からこんな低い声は絶対出てこない。うちの萌が今そうであるように、小さい頃から高く子供っぽい声を嫌い低く強い声を出そうとするからこうなるのだろう。今の萌の喋り方は年齢不相応で不自然だが、こういう声に育ってくれたならそれはすごくいいよなあと思う。

 中盤、俺は2つの短距離路線が完成し、それを使ってカディス-ストックホルム21点の長距離路線も完成してぶっちぎりとなる。あと少しで長距離路線が完成するというあたりでは、うれしくてニヤけ顔を抑えられない。路線を完成しても見せないのが正式ルールらしいが、完成したらその場で発表しスコアを入れたほうが盛り上がるに決まってるので(デメリットも思いつかない)、みな完成するごとにじゃーんと発表し、オオいいねえ美しいと盛り上がった。

 俺はさらに新チケットで短距離をもう1つつなぎもうスコアは余裕だったのだが、最後にMKがモスクワからリスボンあたりをつなぎ追いついて、俺がもう1枚引いたチケットをつなげずマイナス点を食らい、これで負けとなった。うーん、やはりコンピュータ相手のオンラインよりもはるかに面白い。終了後、これは面白いわねえとアジア系奥さんと話に花が咲く。これは買うしかないな。

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 最後にMKがまた持ってきた【パンデミック】。俺は同作者の「禁断の島」がまるっきり合わなかったのでパスしたのだが、ゲームはえらい盛り上がっており、誘われて俺も2ゲーム目に入る。しかしやっぱり俺は「禁断の島」と同じ感想だった。

 システムはクレバーである。だんだんリスクが上がっていくところ、閾値を超えると一気に爆発的感染を起こすところなど、誰もがなるほどと唸るだろう。そのシステムの整合美を味わい、システム上の最適解を解いていくドリルという感じで、俺はあまり遊びをやってる気がしないのだ。このゲームシステムでは誰がやっても、分担して感染都市をケアし、知識(カード)を集中させ特効薬を作るという作業内容に大差はないはずである。システムとしては見事だが、これを多人数の「ゲーム」としてやることに意味があるのかどうかよく分からない。ボードゲームをするということはよくできたシステムを工芸品のように慈しみ味わうことでもあるのだが、それだけでは物足りない。

【追記】 パンデミックにおける勝ち負けは、高ポイントを得るために賭けに出てのるかそるかといったゲームっぽいものではなく、前に出た感染(エピデミック?)カードが早すぎるタイミングで再度出るかの「確率」によりもたらされるものとなる。プレイヤーが協力して危機に対処することは楽しいが、感染カードが悪い都市に出てしまえばその努力とあまり関係なくあっという間にゲームセットになる。少なくとも俺の見た2回ではそうだった。好きな人はそれでああ惜しかったと盛り上がるわけだが、俺はゲーム中自分の判断に独自性が薄い上に、ゲーム結果も自分の判断との関連が薄いと感じ、気持ちを深くコミットできない。「禁断の島」でもそうだった。

 しかしMKたちにはほんと大受けで、3回も連続でやっていた。ロジックパズルなどを好む人々にはすごく合うのかもしれない。マイクは数学が異常にできる割にカルカソンヌは妙に弱いし(笑)、チケライも楽しんだけど俺ほど熱狂はしなかったので、俺とは明らかに嗜好が違うんだよな。俺はこうした理詰めのゲームよりも、カルカソンヌやチケライやサンファンのように、偶然性からチャンスを掴みものを作り上げて突き抜けるようなゲームに最も大きな喜びを感じる。

 というわけで、人の希望との兼ね合いがあり思う存分やりたいゲームをできたわけではないが(――「カタン」と「プエルトリコ」もあったのだが、誰も箱を開くことはなかった――)、とにかく憧れのチケット・トゥ・ライドがやれてうれしかったのであります。買います。今でも USA にするか Euro にするかで迷っているけれど。

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