「カナックスのメンタリティ」「カナダサッカーの停滞」「NHLについて考える」ほか。
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■11/06/13(月) □ カナックスのメンタリティ
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【NHLプレイオフ第6戦】1st ピリオドで 0-4。こ、これは....。うちの嫁は八百長だと怒っておりますが、ここぞというところで何度もガラガラと崩壊してしまうカナックスの姿は、「勝者のメンタリティ欠如」というやつでは....。
とにかく負けすぎはいかん。このファイナルは3戦目の大敗で流れが変わったのは間違いない。大敗するとラフになりすぎて身体的ダメージも残る。落ち着いて、負けは認めつつ点差をできれば詰めて、最後の1戦につなげるいいイメージを掴んでもらいたい。
このNHLプレイオフってやつはとにかく馬鹿げた長さで、2ヶ月28試合にも渡りピークを保たなければならない。優勝経験がないカナックスみたいなチームには本当に厳しいフォーマットだと思う。しかしボストンも調べてみると古豪で40年優勝はないとのことだから、しんどいのは同じか。
カナックス1点返した。よし。負けてもいいから流れをこっちに。クレイジー&クールに(鮎川誠)。カナックス2点目! よし! ――あ、取り消しか。しかしきた、流れがきた。間違いない。カナックスはクールになっている。
ボストン追加点、5-1。しかしこれはパワープレイ中だったので仕方がない。5人の状態で残り時間をきちんとコントロールして終われば、次の最終戦@ホームにいいマインドセットで向かえるはず。
よし。とにもかくにも2点取ってくれましたカナックス。1st ピリオド中はもっとひどいゲームになる可能性もあったので、いいことです。決戦は水曜日。
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■11/06/14(火) □ カナダサッカーの停滞
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【ゴールドカップ:カナダ VS パナマ】20分経過、0-0。今日はカナダのデキがいい。カナダはいつもそうなのだが、トーナメント3戦目くらいになると一緒にいる効果でサッカーがサマになる。前2戦とは段違いの組織感で人とボールが効果的に動き、ボールを支配している。あとはひらめきがあれば点は取れる。
30分、何度も決定機を迎えるも無得点。カナダの支配率はなんと65%。すでに2勝しているパナマのモチベーションが低いという可能性もあるが、パナマも負けると2勝で3チームが並ぶので安泰ではない。やはり今日のカナダのデキがいいのだろう。あと少し、頑張れ。
前半終了。ドン引きのパナマ守備陣を崩せないカナダ。こういう展開では、小回りの効く技巧的な選手のいないカナダはどうしても遠目からのクロスやショットばかりになってしまう。後半から最も得点力のあるジャバーが入ることに期待。というかなぜあいつはいつもフル出場しないんだ? そこが分からん。
分からんといえば、カナダで一番足技があるデロザリオをトップ下に置いた形がこれまで一番よかったのに、試合ごとに彼を左右のウィングに置くこの監督の考えが分からない。サイドでも彼は効いているけれど、彼からFWまで距離がありすぎる。あの距離を隔てて生きたボールをFWに渡すほどの技術はないのである。もっとFWの近くにいなければ生きない。
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トップ下に移動したデロザリオがいったん外に流してからボックスに飛び込み、DFに倒されPK! 自ら決めて先制。よし。ここでジャバーを投入して一気に大量点を。ぜひ。もう1点取れば得点差で追いつける。
と思ったがジャバーは出ず。コンディションに問題があるのだろうか。
そしてその後は負けるとヤバいと気がついたパナマがモードを切り替え、延々と猛攻することになる。俺は晩飯(お好み焼き)を作りながらの苦しい後追い観戦を余儀なくされたのだが、こうしてパナマが本気になると実はカナダはまったく押し返せないのだった。パナマはこれまで完全に手を抜いていたわけで、そんなチームを後悔させてやらずにどうする、カウンターで息の根を止めてやれ。
しかし前半押し込んでもシュートを打てなかったカナダが、数少ないカウンターから点を取れるわけもなく、最後は守備が決壊し、混戦からキーパーごとゴールにボールを蹴り込まれてドローとなった。敗退確定。
勝ち進めばもっとチーム状態が上がったのだが、カナダの追加点狙いも押し上げもイマイチ必死さに欠けていた。動揺しながらの調理でうちのお好み焼きも味がイマイチであった。がっくし。
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このゴールドカップ3戦を見て、カナダの選手の質から見てやっているサッカーのレベルが低すぎると痛感した。特にグアドループ戦とパナマ戦前半、あれだけボールを持てていながらシュートがまるで打てないとなると、攻撃陣の位置と動きを整理しアイデアと好機を引き出すことができない監督に問題があるのではないかと思える。具体的にはさっきも書いたように、FWにラストボールを通せる距離にデロザリオや他のドリブラーを置かないから個人技が連鎖しないのだ。
それにこの2戦でのカナダのチームスピリッツにも問題が伺えた。あと1点取れば勝ち抜けるのに、暑さもあるのだとは思うが、本当に必死に戦っている気配が見えてこなかった。
現監督ハート氏は、監督のなり手がないときにいつも臨時で出てくるみたいな人で、経歴を見たらやはりプロチーム監督の経験はない。選手としての経歴も、俺が夏期講習で通ったハリファックス・セントメリーズ大学だけらしい。懐かしい。弱小カナダとはいえ選手のレベルと所属チームの格は上がっているので(昔はスコットランド、今はブンデス勢が多い)、そういうアマチュア監督の指導では動かせないのではないだろうか。戦術的にも、メンタル的にも。
実際年表を見てみると、サッカーカナダの監督でプロコーチは、2000 年のゴールドカップを勝ったオジェックだけだ。カナダサッカーはお金がなくプロ監督を雇えないから強くならない、強くないからお金がないという、単純な構図から抜け出せないでいるようだ。
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■11/06/15(水) □ NHLについて考える
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NHL本年度最後の最後の1戦。長いことカナダに住んで、今までオリンピック男女ホッケーの勝利祝福もご相伴に預かったけれど、NHLは本当に特別なんだなと最後の1戦を待つ町の緊張を感じながら思う。他の都市は分からないが、オリンピック男子決勝よりも明らかに盛り上がり張り詰めている。ボストンには野球もバスケットもあるけれど、バンクーバーにはこれしかないのだ。頑張ってくれ。
このファイナル数戦を見ていても、見るスポーツとしてはNHLよりオリンピックホッケーのほうが(さらにはスレッジホッケーのほうが)サッカー的なパスワークと組織プレイがあって面白いという気持ちに変わりはない。NHLは車のドラッグレースやインディ500マイルを見ているような感じで、狭いところをものすごいエンジンを積んだ大男たちが行き交っていく。
この速さとリンクの狭さ(スペースのなさ)でパスは不確実でカウンターが危険すぎるので、NHL はどうしてもドリブル(?)でパックを運ぶのがメインのプレイとなるわけだが、狭いので当然ハーフラインを過ぎたあたりでプレスがかかり手詰まりとなり、遠目からゴール方向へドカンと打って終わる。基本的にその繰り返しが60分間続くスポーツなのだ。選手交代は無限なのでプレスが落ちることもない。
リンクの広いオリンピックホッケーは、うまいドリブラーによるカウンター独走や遅攻でのパスワーク組み立てがあり、誰が上手いのか素人が見てもわかり楽しいのだが(かつてのパベル・ブレは強烈だった↓)、NHL のこの高速往復運動の繰り返しでは、真剣に見ても誰がうまく速いのかすら分からない。プレスサッカーの極致みたいなもので、個人技をやれるスペースも時間もないのだ。本当に、スポーツとして真面目に偏見なく見ていて NHL はひどく単調で戦術的につまらんのである。でこのプレス合戦内の闘いではボストンのほうが地力が高いので、押し上げる圧力が高くこぼれ球を多く拾い優勢というシリーズになっている。
俺にとってはバスケットも同様なのだが、こういう狭いところを超熟練者が猛スピードで行き交うスポーツというのは、戦術的なものはよほどの熟練観戦者にしかわからないのではないかと思う。好きな人はシュートトライや選手の美技や派手な肉弾戦だけでも十分に盛り上がれるだろうが、俺は戦術が分からないとスポーツが半分も楽しめず、したがってこのファイナルを見ていてもスポーツとしては面白くない。だが、とにかくNHLはとにかく、心情的にカナダに勝たせてあげたいのである。
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【最終戦開始】帰宅早々ボストン先制。しかしまだまだ 1st、時間はある。落ち着いて、まずは同点に。大丈夫。
1st 終了。ホッケーは本当に力量差が分かりにくいけれど、しばらく集中して見ているとカナックスが前にパックを運べないのが分かる。ボストンのフォアチェックがいいのか。ホッケーはパスが非常に繋がりにくいのでドリブル(?)で持ち上がるしかないのだが、すぐに狭い方に追い込まれてしまう。うーむ。
このホッケーの戦術について俺は知りたいのだが(――劣勢なカナックスが局面を変える戦術マジックはないのか、サッカーなら「デロザリオをトップ下に持って来い」と素人でも戦術が語れるぞと――)、ホッケーアナはプレイスピードに合わせ競馬中継並みに早口で、何を言ってるかまったく聞き取れない。戦術をリアルタイムで語ってくれる人はないかと Twitter で探してみるも、日本語では解説ツイートは見当たらず、英語では1万2千ツイート/hour とかでとても読めない状態。
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2nd ハーフ中盤、カナックスがやや盛り返したが、パスのつなぎはやはり劣勢に見える。先制したボストンが特に引いているようにも見えないが、前に持って行くたびにプレスの網にかかりポゼッションを失う感じ。
そしてカナックスのつかの間の攻勢が止むとまた押し込まれ打ち込まれ、ボストンに2点目。これだけ打たれていてはこぼれ球がいつかは悪いところに行くのである。ふー。
カナックスのパワープレイで攻めている中カウンターを食らい、3ゴール目。打った選手がゴーリーを押し出して入ってるではないか、これはサッカーなら取り消しだろうと思ったが、解説は「もしゴールは認められなかったらDFのファウルでPKだったろう」「打った後のフォロースルーでFWがGKに当たったのだからゴールは認められる」的なことを言っている。そのへんの基準は違うらしい。
さらにもう1点失い残り10分、ボストンはもう点を取る必要はないのでフォアチェックの圧力を落としており、このまま終わるだろう。この数試合を見た感想として、カナックスは単純に地力及ばずということなんだろうな。ボストンの選手が特にうまいとも強いとも感じないが(GKがこの2試合では段違いだったが、カナックスのGKも勝った試合ではスーパーだったらしい)、カナックスのチーム力が相対的に下なのは明らかだった。2ヶ月の長い旅を経てはるかここまでたどり着き、さらに3勝してホームに望みをつないだことが、カナックスにとっては大健闘といえる快挙だったのかもしれない。
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【試合終了】0-4。ボストンは実はカナックスよりもカナダ人選手が多いのだそうで、優秀な自国選手を国内に留めておけるようにならない限り、気の毒なことだがカナダはスタンレーカップを取り返せないのでありましょう。観衆はまだカナックスに声援を送っている。カナダ人は優しい。
戦術論を探して英語記事を読んでる時に、「カナダ人だけどボストンを応援してる、カナダ選手が多いし、カナックスは嫌いだ」って人がいた。もしかするとカナダのコアなホッケーファンには、カナックスなんて新参者で半可通な存在みたいな価値観があるのかもなーと思いMに聞いてみると、
「もともとNHLの伝統対決はトロント対モントリオールで、カナダ対アメリカというライバル感情は昔はなかった。ボストンも昔からいるからおなじみだけど、カナックスが新参者という感覚はわかる」
とのこと。なるほどねー。
そのへんの機微は、外国人+ホッケー無知には難しい。しかしそれくらいにカナダ国民にとってホッケーは特別なものなんだなと深みを感じるスポーツ感情のあやではある。静かな、静かな夜。試合中から町中が死んだように、あるいはもう死んだほうがマシだとでもいうかのように静かだ。
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うわ、夜10時、バンクーバーでは暴動が終わってなかった。試合直後は暴徒をポリスがポカポカ叩いて下火になっていたのに、知らぬ間に暴徒が盛り返し、町中に火が回っている。建物に火が移っている。デパートに泥棒が入っている。ポリスはどこに行ったんだ?
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■11/06/16(木) □ 暴動が終わった朝
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暴動が終わった朝。市長や経済人が、「オリンピックで築き上げた町のイメージに一部の無法者が傷をつけた」とさかんに嘆いているが、そんな風評被害を心配する姿はやや見苦しい。今朝から朝イチで大量のボランティアが掃除をしてるとのことで、素晴らしい町であることに変わりはない。ただ馬鹿者はどこにでもいるということだ。
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夜、「チケットトゥライド」のオンライン・デモ「USA 1910」をプレイ。ようやくチケライにも慣れてきて、つなげない路線は見切って新チケットを取る、ロス>カルガリーを右から回してつなぐなど戦略性が出せるようになり、非常に面白い。初の勝利。
このデモはもうじき期限が終わってしまう。父の日のプレゼントに鉢植えを買ってくるとMが言うので、「鉢植えよりもチケットトゥライドを買ってくれ」とお願いすると、誕生日じゃないのよと一蹴された。まあそうすね。
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