2011/07/10

女子W杯・わかってもらえるさ

「陽光と風のエリア」「日本文化紹介の難しさ」「ニンテンドーDSの完成形」「ワイルドプレイの綱渡り」「でかいぞチケットトゥライド Euro」

=======================
■11/06/30(木) □「陽光と風のエリア」
=======================

山川健一のツイッターアカウントが見つかった。「クロアシカバーの悲劇」「マギーメイによろしく」「みんな十九歳だった」なんてタイトルが出てきて、強烈な懐かしさにうあとうめき声が出る

東京で最も煮詰まり先が見えない生活をしてた80年代末、彼のロックとバイクのエッセイは俺と弟の教則本だった(小説とバンドはイマイチだったが)。山川の言葉とストーンズとRZを食って、俺は井の頭で生きていた。彼のように言葉で世界と組み合って自由を稼ぎ出し暮らしていきたいと思い、バイク雑誌の編集部などにも行ってみた。

ツイートを読むと山川は東北の大学でなにかを教えたりしているらしい。長い年月が経っているけれど、原発反対の発言にボブ・マーリィの言葉を引用する彼は、なにも変わらない。

バイクにテントを積み「陽光と風のエリア」に行く日を思い描いて、高円寺で汗を流していた追憶の1989年が胸に甦る。カナダにいると「クソ暑い、山に行きたい」という欲求は起きてこないが、自分の人生に対する焦燥感はいまだ解消できていない。

この夏家族がイングランドに行ってる間俺は、15年ぶりに1人でテント旅行に出ようと思っている。BCの夏にも「陽光と風のエリア」みたいなものはあるだろう。1冊だけカナダに持って来た山川の文庫本を持って行こう。

=======================
■11/07/01(金) □ 日本文化紹介の難しさ
=======================

カナダデイフェスティバル。地元 PoCo 市のフェスは3度行ってそんなに盛り上がったこともないので、今年は別の町のやつに行こうかなと思っていると、ちょうどAYさんたちが日本関連の催事を隣町コキットラムでやるというのでそちらに行くことにする。フェスティバルの内容はコキットラムも似たようなものだったが、やはり PoCo より大きな街なので規模が大きかった。

ロシア屋台のピロシキを食べた後、日本カルチャー展示兼大震災支援サイトを開くAYさんのテントを訪問する。こういう場で日本文化紹介というと折り紙と七夕くらいしかないのがちと地味で、訪問者はパラパラという感じ。日本食を出しゲームやアニメを見せればテントが大入り満員になるだろうが、商売じゃないんだからそうもいかんしな。

カナダに最も影響を与えている異文化は、アニメ・ゲームや様々な商品を経由した日本のサブカルに違いない。中韓物事は多々あるが、それは人口比の多い中韓移民とその子孫のためにある。どうして日本移民は中韓より少ないのだと聞かれることがたまにあるが、それは日本のほうが中韓よりも面白く、離れがたい国だからに決まっている。しかしその日本の面白さをこうしてお祭りでカナダ人にプロモートするなんてことは、やりようがないんだよな。

萌は最初は戸惑っていたのだが、やがてテーブルの内側に入り、後は帰るまでずっと来客に折り紙を指導していた。

----------------------
カーラジオで John Mayer - No Such Thing という歌を聞く。「高校の廊下を走り抜け、腹の底から叫びたいよ」。いい歌だな、なんかモンキーマジックみたいな...と思い、MONKEY MAJIK ってクオリティ高いよなあと改めて思う。

MONKEY MAJIK ってなんで母国カナダで売らないのかな。カナダのラジオでこんなふうに流れていてもまったく違和感なく受け入れられる音なんだけれど。というか、ラジオで流れているほとんどのカナダ製ポップスより MONKEY MAJIK のほうがいいと思うのだが。

=======================
■11/07/02(土) □ ニンテンドーDSの完成形
=======================

今日は萌が非常に前向きでいい日で、朝からTVなど見ずに掃除を開始し、午後はずっとBRおばあちゃんのクッキングを手伝っているので、学校でのケンカ謹慎でずっと保留になっていた誕生プレゼントの DSi XL オープンとなった。そんなにほしかったのかと驚くほどの大盛り上がり。

08 年に日本でもらった DS がすでにあるし、KTの DSi を見てもさほど驚いている様子もなかったのだが、実はあの落書き写真だのボイスチェンジャーだのをやりたくて仕方がなかったらしい。


こういうのって子供だましだよなと
思ってましたが、

大人が作るとこれほどまでに低レベル
(庭のたらいで行水の図)
しばらくは落書き写真などをする萌を半ば呆れて見ていたのだが、落書きだけでなく顔のモーフィングだの顔近似性診断だの手書きアニメ制作だのといった新しい遊びをやり始め、そうかこれはハードとソフトが一体化した新しい遊び開発ツールなのかとこの3世代目 DS ハードの優秀さに気がついた。単に安いデジカメと顔画像デフォーメーションが入った子供ダマシと思った俺が間違っていた。ニンテンドーがそんなケチなものを作るわけもなかったのである。

つまりこれが DS ハードの完成形なんだな。俺はコントローラがでかすぎて繊細な操作感に欠ける Wii よりも DS の方が好みなので、その究極の形態がうちに来たということにけっこうな満足感がある。よかったよかった。

=======================
■11/07/03(日) □ ワイルドプレイの綱渡り
=======================

LDから萌へのクリスマスと誕生プレゼント合体として、メイプルリッジのワイルドプレイというものに行く。森の中に張り巡らされたワイヤー上を滑車を使い滑りまくるという遊びで、日本で遊んだ忍者村の高品質バージョンである。俺はカメラ係。


これで7mの高さがわかるかと
で行ってみると信じがたいほど高いところに綱渡りの綱がある。小学生が行けるレベルで7mというから、3階建ての建物の屋上くらいか。最上層は10mありそうで、これはもう見てるだけで嫌になってしまう高さであった。

安全確保のハーネスにはフックが2つあり、どんな場合でもそのうち1つは繋がっているというロッククライミングのロジックで安全は保たれているのだが、それにしたって高い。もし萌が夢中になりフックを一瞬かけ忘れ、そこでもしバランスを大きく崩したらと思うと、胃がきゅーとするのである。

まあ実際萌は人並み以上に慎重なのでそんな心配はなかったのだが、ちゃんとフックをかけているか俺からもLDからも見えない場面も多々あって、そういうときはまことにハラハラした。まあ自分が子供でも、間違いなくこれは楽しんだだろうな。ホントすごかった。

=======================
■11/07/07(木) □ でかいぞチケットトゥライド Euro
=======================

ようやく誕生日、ついに「チケットトゥライド Euro」をゲットした。家で実物をやってみると、オンライン版ではわからなかったゲームの物理的アスペクトをあれこれと実感する。

◆チケットを伏せて置くと目的地を忘れてしまう
◆トレインカードはとても手で持ちきれず、隠し持つと分類できんので結局表向きに置いてしまう
◆ボードがえらいでかいので、カードデッキをどこに置いても反対側の人は苦しい
◆ボードを逆から見る側が視覚的に不利(参照用マップを印刷して対処)


といったあたりに戸惑う。手元を隠す衝立とカード立てとゲーム用テーブルが猛烈に欲しくなる、初の大型ボードゲームです。今のところ人の手札など見てる余裕はないので、隠さなくても実害はないが。

ルールの説明でトンネルは意外や一発で通じたが、駅舎の説明で「使わなかった駅数×4を後で加点」というのがまだるっこしい。めんどくさいので【使ったらマイナス4】と説明する。ルール的には同じことだろう。

チケット達成点も、「ルールではゲーム終了時に計算するとなっているが、完成時に発表したほうが盛り上がるので、まあ各自自由に」とする。完成したら当然うれしいので、萌も俺も発表しオオと拍手して盛り上がる。この即時発表のデメリットは完成していないチケットがどこかわかってしまうことだろうが(特にロング)、ブロックを狙わないフレンドリー家族ゲームでは問題はない。真剣勝負をするようなメンバーなら、6枚しかないロングチケットなどいずれにせよバレるだろうし。

でオランダからスイスまでを網羅的に制覇した萌が俺の中欧路線を分断するという初戦から願ってもない面白い展開になり、俺は駅を使わねばならず苦戦となったのだが、最後に萌がカディス-ダンジグの20点をつなげなかったことが判明し、俺の勝ちとなった。「つまりベルリン-ダンジグを自分でつないで、フランクフルト-ベルリンはステーションで借りれば16点取れたんだよ」と説明すると、あーそうかと納得していた。この駅舎はPC相手にやってるときはスリルを減じるヌルいルールだと思ったが、やっぱりビギナーにはいいルールだわ


This is the best game
ever invented!
萌は前のめりになり、自分の番が待ち切れないと何度も口にし、「これは史上最高のゲームだよ!」と期待通りに盛り上がった。必要なトレインカードをうまく揃え、路線を作り上げていくというのは子供にも大人にも鉄壁の面白さで、たまらなく楽しいらしい。俺もわざとつなぎにくい難しいチケットを選ぶなどしてひそかに自分にハンデを課しつつ、興奮に体温を上げながらトレイン駒を打つ。カルカソンヌの興奮再び、萌の反応を見ればそれ以上だな。

----------------------
晩飯前にもう1ゲーム。今度は萌はまず大量にカードを集め、そして一気に長距離チケットをつなぎ快勝。そして3戦目はちょうどやってきたMK夫妻との4人戦となり、萌が大量カード集め作戦に失敗し大敗。萌はカルカソンヌでも、みんなとやると鮮やかに勝とうとしすぎて墓穴を掘るのである。俺はハンデとしてロングを取らずにプレイしていたので、ゲーマーMKにまんまと勝たれてしまった。奴の路線だけはブロックすべきだったのだが、俺はまだ本物ボード上ではそこまでゲームが俯瞰できない。

多人数戦だとどうしてもみな駅舎使いまくりになるのだが、「ここを自力でつなぎあそこに駅舎を置けばつながる」とパズルを解く感覚になり結構面白い。そして「ステーションを使ったら路線の持ち主に4ポイント払う方が面白い(※)」とMKがいう。実は俺もそうしたいと思っていたのだ。珍しくハウスルールで奴と意見が合った。次からそうしよう。
(※)次の日気づいたのだが、4点を敵に払うと相対点差はマイナス8になり、ペナルティが大きすぎてショートチケットではマイナスにすらなりかねない。安易な駅舎利用を抑制し、路線早い者勝ちのスリルを保つ上ではいいと思うが、相対点差8点はでかすぎるかも。要テストプレイ。

というわけでカルカソンヌ以上に大ウケの初日であった。萌が夢中になってくれたので、今後カルカソンヌ並みにうまくなってくれたら最高だな。

=======================
■11/07/09(土) □ 女子W杯 - わかってもらえるさ
=======================

【女子W杯ドイツ-日本】すごいブーイング。日本は、技術的には自分たちは格下ではないと自信を持った立ち上がり。よしよし。同じメンバーで来ているがゆえのフィジカルの不安が出る前に、ペースを掴んでおきたい。

軽い接触で次々にドイツ選手が倒れ、1人は怪我で交替。「ドイツは昨夜長時間シュート練習を行った」とのことで、地元ゆえのプレッシャーでオーバーワーク気味のコンディションになっているのかもしれない。うわ、澤さまがフランクフルトな容貌のおばちゃんにエルボーを食らった。やめろ。しかし澤率いる効率のいいプレス網によりポゼッションは日本が上です。悪くない悪くない。

パワープレイで来られると、やはりゴールマウスで紙一重のクリアが続く。これを避けるには日本がポゼッションをキープするしかない。落ち着いて、ヘンな横パスを取られずセーフに行けば大丈夫。

30分、永里こぼれ球をフリーで外す!! く~。返す刀ですごいミドルを打たれわずかに外れる。ふー。しかし押されてはいない。日本は試合をコントロールできている。ドイツはFWがプレスをかけていない。ホームのスタジアムが静まりかえるこの流れが戦略とも思えないので、フィジカルがやはり落ちてるのではないか。前夜の練習しすぎで。

日本の保持率58%と出る。やはり思い通りにプレイできている。よし。

【前半終了】澤が一度前に抜け出しボールを呼ぶが通らなかった。澤はいる場所、プレスをかける場所、ボールを流す場所と実に間違いがない人で、ミスはあっても間違いはしない人らしい。その彼女が得点の匂いに上がっていけば、間違いなく点は取れる。いつかきっとそんな日になる。もうすぐなんだ。

----------------------
カナダTV解説は澤が上がっていたもう1つのシーンをスロー解析し、「日本のMFが澤が上がっていることに気づかず後ろに戻してしまった。これをやっていれば高いポゼッションは保てるが、勝つにはここを見逃さず勝負に出なければならない」とコメント。その通り。

【後半】ドイツが圧力を上げてくる。またゴールマウスでDFが紙一重のクリア。ムトーさんが言っていたけれど、女子にとって男子と同じゴールマウスは広すぎて、GKが2人いないと守り切れないのかもしれない。日本のGKは特に下手っぴではある。

大野と丸山はキープしてチーム全体が上がるのを待たねばならないのに、苦しいので前に進み無為に失ってしまう。我慢するんだ。我慢するんだ。ここであきらめちゃ、奴らの思う壺。―――イワブチ IN!

カナダTVアナはドイツ女子がいかに強いプレッシャーと戦っているのかと延々5分くらい喋っている。ノイローゼで代表を辞退した選手がいるとかそういう話。第3者がそういう敗因っぽいものを話しだすくらい、ドイツは精細を欠いている。

完全なシーソーゲームです、と加アナ。しかし日本の守備に穴が開いてきた。苦しいのはお互い同じだ、我慢するんだ。キープするんだ。

岩渕初のドリブルから、ハーフチャンスを宮間がミドル。惜しい。あの形を続けたい。ポゼッションは高いが位置が後ろすぎる。長いパス数本で危険なところまでボールを運べる相手は楽である。ドイツ怒涛の放り込み、耐えて耐えて跳ね返す日本。そして延長へ。

----------------------
【延長】ふー。ボールをどうにもキープできない丸山に、「交替で入った丸山はゲームに入りきれていない」と的確な加アナ。2枚の交代が早すぎしかも外れ気味だったので、あと1枚の交替で状況を変えられる気がしないというのが正直なところ。

日本にミスが頻発し、ドイツが攻め込んでくる。しかしこれで岩渕がカウンターに走るスペースもまたできる。我慢して前に運ぶんだ。

元カナダ代表主将デヴォスが、日本のフィジカルが鍵になってきているね、と日本の体力限界を示唆。しかしドイツのサッカーがいいわけでもないんだ。我慢するんだ。走れる奴にボールを渡すんだ。

そして澤のロブ→丸山! ゴール! ―――完璧。完璧すぎる。鳥肌。

ヘボを重ねていた日本GKもここに来て好セーブを見せる。よし。行ける。行けるぞ。宇津木 In、あと4分。ここまで放り込みを守り切れたんだ。最後の4分が前より難しいわけではない。大丈夫。

【試合終了】やっ・た。やってくれた。

このサッカーのよさが、いつかきっと君にも、わかってもらえるさ。いつかそんな日になる。僕はなにも間違ってない。もうすぐなんだ。

----------------------
この試合はストイチコフのブルガリアがドイツを倒した94W杯準々決勝に匹敵する。あの巨象が倒れたようなショックを、ついに日本が成し遂げてしまったのだ。いつかそんな日になる。僕はなにも間違ってない。もうすぐなんだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿