2016/12/22

【Xbox360】フェイブル2 - 洋ゲーが動かすエモーション

(ネタバレは特にありません)

●初英国 RPG の独特のノリ
●フェイブルの町暮らし
●洋ゲーのメカニクス不足
●洋ゲーが動かすエモーション
●旅の終わり



●初英国 RPG の独特のノリ




Xbox 360 の良作 RPG と言われる【フェイブル 2】をプレイした。最初は冬の町やキャラの造形が暗く重苦しいなと思ったのだが、自分スパローが無口で、お喋りで行動的なお姉ちゃんのリードで物語が進むのだと徐々にわかってくる。なるほどねと初の英国ゲーのノリに慣れ、盛り上がってきたところでストーリーが急転する。絵もストーリー運びのリズムもやっぱり、日本の RPG とすごく違うな。



そして時代が移り、俺スパローは大人となって知らない村で目覚め冒険が始まった。昼間の風景は Wii ゼルダより数段美しい。さすが Xbox 360。しかし前にやりどちらも中途で飽きた「キングダムオブアマラー」「オブリビオン」同様、やっぱり洋クエスト式 RPG はどこかへ行って指示を果たし帰るお使いゲーだなと感じさせる。

◆A 地点に行き X に会う(道中ザコ敵多数)
◆X に言われ B 地点に行く(道中ザコ敵多数)

の繰り返しなのだ。戦闘は山の中の弓矢戦、線路の陸橋を敵を追いつめての剣戟と舞台設定に工夫があり、コントロールのレスポンスが良く気持ちいい。台詞脚本と声優がうまいのでその辺の品質も高い。しかしプレイヤーが基本やってることは移動→人の話傾聴→戦闘だけで、ストーリーは人々が喋るテキストの中にしかない。この構造はアマラーと同じだった。

●フェイブルの町暮らし




主人公の基点となる大きな町バウワーストーンでの生活は楽しかった。鍛冶屋のバイト代や探索で得たものの売却益を武器宝石の転売で殖やし(貧しい街で高額なものを買い、富裕街で売ると倍以上になるとネットで教わった)、不動産に投資して家賃収入を得る。このシステムが回り始めると十分な定収になるので武器や服は不自由なく買え、安心してストーリーを進められる。こういう仕事はボードゲームの拡大再生産と同じ楽しさで、ドラクエの昔からこうしたちまちました小さな工夫による環境改善が RPG はやっぱり楽しい。

そしてこのゲームのハイライトといえる結婚も悪くなかった。はっきりいって町中のガールズが同じ服で同じ顔なのだが、とりあえず仲良くなった仕立屋ビクトリアさんを町の外にデートに誘い出してみた。こんなきれいな野山を、このむさい長髪でカイゼル髭の俺が君のような女の子と歩くだなんて。うれしい :-)。いやー英国訛りもかわいいよキミと結婚を決意。

結婚にはゲーム上のメリットはないのだが、冒険の合間合間に家に戻って配偶者に会うのは癒される。長く留守にしたらビクトリアさんにはなんと離縁されてしまったのだが、二番目の奥さんは大事にして最後まで添い遂げました。



町暮らしに慣れた頃バウアーストーンの旧市街を歩いていて高台の一角にきたとき、あ! と声が出た。 ここはローズ姉ちゃんと子供時代を過ごしたあの貧民街だったのか。俺はまったく気づいてなかった。そうか…。胸がきゅっと痛む。俺はずっとここで暮らしているわけにはいかないと思った。旅に戻らねばならない。


●洋ゲーのメカニクス不足


娘が小学生だった5~6年前、遊びに行っていた友達の家に迎えに行ったらその家のゲーマーお母さんが Xbox 360 のコントローラを持ったまま玄関に出てきた。ちょ、ちょっとどんなゲームやってるか見せてくださいよと上がり込んで、美麗な中世 RPG を見せてもらった。オブリビオンやスカイリムではなかったので、あれはひょっとするとフェイブル3あたりだったのかもしれない(後日フェイブル1だったと判明!)。



Xbox 360 購入時のモチベの相当分が、あのとき見せてもらった  Xbox RPG の美しい 3D 中世都市光景の中で俺も遊びたいというもので、バウワーストーンはそれに近い。この橋の下の景色など美しい。なのだが実際に来てみると、Xbox の町歩きに案外高まりを感じない。なんでかというと、前述の序盤の経済基盤づくり以外ここでできることがそんなにないからなのだ。

洋 RPG は町でやることがあまりない。リアリティを重んじるので他人の家でものを探すと泥棒になり罰せられるし、ドラクエみたいに住民の声を拾い集めて次の行動のヒントを得る場所にもなっていない。つまり町には謎解きや探索といった要素がないので、どの町に着いてもショップの品揃えをざっとチェックしたあとは、建物を眺めぶらぶらと歩く以外することがないわけ。総体的なエクスペリエンスはゲームというより、TV で街歩き番組を見てるような感じなのだ。



そして、洋ゲーの建造物は緻密できれいだが、開発簡易化のためモジュール化されていて味気ない。建造物は既成パーツを組み合わせただけと思われ(知らんけどおそらくそう)、どの建物も色と間取り以外は同じなので、無数の家を購入したが途中から中に入ることさえしなかった。



日本 RPG の建物は、デザイナーのパッションが注がれたゲームアートとなっている。FF7/9 などには、機械文明が異形に発達した松本零士や宮﨑駿の日本オルタナ未来の系譜がやはり感じられる。そしてそこにはアイテム探しなどやることが仕掛けられているわけで、町の規模は小さいがプレイヤーとのインタラクションが濃い。あれは日本ゲーム製作者のサービス精神の賜だよな。洋ゲーの町は、そこまでの手間暇がかけられているとは感じられないのだ。



フェイブル 2 の風景は多彩で美しい。沼に沈む村あたりのこの風景なんかうわーとなった。なんだこれは廃スキー場かと。しかしこの鉄塔と付近の建物を調べても、何も仕掛けがない。この先の道は行き止まりなので、ゼルダなど日本ゲームなら謎を解いてこの廃リフト的なものを動かし、湖面を渡るなどの達成感を与えてくれるだろう。そういうプレイヤーが考えて何かをすると何かが起こりゲームが進むという「メカニクス」を、洋クエスト式 RPG ゲームは著しく欠いている。

誰かに会ったり敵を倒せばゲームが進むのは単純なフラグ消化であって、クエスト式洋 RPG はそれだけでできてるようなものだ。なんでメカニクスがないかといえば、脚本と声優演技で作れないものは作るのに大きな労力がかかるからだろう。景色も建物も美しいけれど、それを眺め記念写真を撮り通り過ぎていくイベント性の薄い旅が、洋式クエスト型 RPG だと感じるわけです。

洋 RPG で徹底して手がかけられているのはテキスト(文字)で、人物が喋る脚本とその演技はすばらしいし、読んじゃないがどのゲームも膨大な書物がゲーム内に置かれている。そうした製作者がテキストで表現できる部分は中二的にとことん凝っていると感じるのだが、俺はコントローラで動かす自分のキャラで物理的に世界に働きかけたいわけ。だからゼルダはやっぱり最高だと思うし、石を動かして洞窟を発見するという程度のアクションでもドラクエには興奮するのである(※)。

(※)フェイブル 2 でも、サブクエストには建物の中に隠しスイッチがあったり島中にうまく隠された宝箱20個を探し出すなど、メインクエストよりゲームっぽいメカニクスが仕掛けてあって楽しかった。スーファミレベルの簡単な仕掛けでも、考えて進められることが楽しい。メインはプレイヤーが詰まることがないように謎解きなしになってるのかな。

 

 ●洋ゲーが動かすエモーション


途中までメインストーリーは謎の指示者テレサが無線で言ってくる用足しをこなすだけで、正直退屈だった。どんな遠くからでも指示を脳内で囁くテレサという指示者は、このゲームの興を大きく削いでいる。ゼルダシリーズで主人公にまとわりつき用でもないことを話しかけてくる精霊系の相棒たち(ナビィ、舟ライオン、ミドナ、ファイ)より鬱陶しい。ちょっとは俺に考えさせてくれよと思う。



しかしブラッドストーンという大きな港町で、最後の味方メンバーとなる男リーバーを勧誘するところから、メインストーリーがガタンと意外な方向に動き出した。意外な展開は RPG のお約束なので意外性には驚かなかったが、プレイヤーの胸をつらぬくエモーションの強さにたじろいだ。洋ゲーは和ゲーと目指すところが違う。

娘が小さな頃 FF7 を一緒にやり、心温まるあるシーンで「わたし、ショックだよ」と言う彼女に「それはショックじゃなくて、感動してるんだよ」と話したことがあるのだが、そういう柔らかな心には洋ゲーがときに見せるこういうエモーションは、苛烈すぎるかもしれんと思った。まあだから洋ゲーは大人指定なのね。

そしてエンディングへ。戦いの最後は短いものだった。しかしリーバー勧誘からあとの時間のすべてが実は、この物語のエンディングだったのだと思う。その時間に心が貼り付いている。皆と別れ、桟橋で俺スパローは呆然とする。ちょっと泣いてたかもしれない。そして自分の望みが本当にかなったのかどうか、それを知るためにまた世界を巡りたいと思った。


この胸をつらぬくエモーションの大きさ強さが、洋ゲーの力だと思う。「バットマン・アーカムシティ」を終えたときにも、心には感動というよりジャリっとしたエモーションが残った。洋ゲーにはドライで抑制された詩があると思った。


2015年4月「バットマン・アーカムシティ終了」




●旅の終わり


メインストーリーが終わったあとも、サブクエはたくさん残っている。それを消化していて、ある女性を惚れさせてから振ってくれと依頼された。その子に会いに行ったらいい子だったので振るのをやめるという選択をしたら、彼女と結婚することになってしまった。まあ仕方がない、これも人助けだ。善行ばかりしてきた俺様スパローの頭には天使の輪がついている。

でホームタウンに帰ると何も知らないはずの俺の息子が、「最近ダディはマムに冷たい」とか言い出してドキッとする。ななな何を言ってるんだお前! 俺は自分の選択をめっちゃ反省し、ゲームをリセットしたいと思いました(汗)。

まだいくつかサブクエは残ってるが、このへんで終わり次にいこう。面白かった。メインゲームだけのデキで言えばそんなに高い点はつかないと思うのだが、前述の「リーバー勧誘からあと」の時間や今日の息子発言ギクリのように、これまでやったゲームではなかったような経験をいくつもさせてくれた。記憶に残るゲームとなりました。星をつけると★★★★★ ★くらい。



俺のフェイブル 2 感想ツイートにずっと伴走していてくれたのは三多摩でバンドをやってた頃の友人なのだが、当時はお互いがゲーマーだなんて知らなかった。遠くからハローと微笑みだけ交わしてた。気の合う友だちとすれ違っただけでわかるようになるという清志郎の予言は、ネット以降の世界で実現している。

2 件のコメント:

  1. 素晴らしい文章力で感動しました。私もつい最近フェイブル2を購入し遊んでいます。これからブログを拝見させていただきます。僭越ながらツイッターの方もフォローさせて頂きました!

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    1. 感想ありがとうございます、がぶ2世さんかな。いまあなたのツイートを下の方まで遡って見て、FF12はいいのかそうかやってみたいなあと思いました :-)

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