2012/09/12

【日本滞在記5】戸隠忍者の謎が解ける

「意外や信州も暑い」「須坂観光」「日本のおばあちゃん」

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■12/08/22(水) □ 意外や信州も暑い
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京都の宿を早めに発ち、京都駅で買い物等をする。Mたちは駅ビルでばっちりうまい炭焼きうな重を食べられたそうで、京の食はどうにか惨敗を免れた感。俺は萌を本国よりうまいので有名な日本のマクドナルドに連れて行ったのだが、京都駅マクドの味はカナダとまったく同じかそれ以下で、胸が悪くなりそうだった。食うんじゃなかった。長野まで汽車でゆっくりと移動。いやはや京都は暑かった。春に来た時の半分も楽しめなかったな。

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長野に着くと家族が、「....これ京都より別に涼しくないんじゃない?」という。う。たしかに大差ない。京都じゃ家に TV がなかったので天気概況をチェックしてなかったが、どうやら現在日本は全面的にヒートウェイブに覆われているらしい。まずい。まあ須坂はもうちょっと涼しいよ。本当なんだ。

京都でろくな物を食えなかったので楽しみにしていたおばあちゃんのご飯は、野沢菜、須坂地場きゅうり、果物、サイコロステーキその他。京都でのダメ飯無念を一発で拭い去ってくれるうまさである。おばあちゃんが例によって品数を揃えすぎて主食だけで2食半分くらいあったのだが、暑さに異常に強く胃が鬼のように強いADが素晴らしい勢いでうまいうまいうまいと食いまくる。はるばるカナダから連れてきた甲斐があった。素晴らしい。

萌も大好きなこの家に帰ってきて大喜びなのだが、長野は異常に、異常に夏休みが短くもう小学校が始まっており、萌が京都であれほど恋しがった子供たちはやってこず。萌はがっくりきていたが、京都じゃ TV も見れなかったからと夜はリビングの定位置につき麦茶を入れ、カナダじゃ見ない日本の番組を見るのであった。京都に行くまでずっとこうして、おばあちゃんとオリンピックを見ていたようにね。

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■12/08/23(木) □ 須坂観光
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朝からうちの兄貴謹製のローストビーフが出てきた。めちゃくちゃうまいが朝からこんなストロングなものは食えんと思っていると、ADがこれもバクバクと全部食いおばあちゃんを喜ばせる。




信州の観光初日はうちの墓参り、次いで須坂市内の田中本家博物館へ。ここは旧家の家の中に家宝を展示しているだけの小ぶりな博物館なのだが、展示品の説明を読んでみるとどの絵も、パトロンである田中家に招かれた地方画家ががこの家に逗留して描いた絵なのだった。つまり「この家で描かれた絵」がこの博物館のテーマなのである。

それは非常にナイスなテーマであり、皆に説明するとなるほどと喜ばれる。絵に付けられた詳しい説明を伝えていると、「京都国立博物館よりずっと説明がいい」と家族が笑う。まったくだよな。

そしてここは庭がいい。信州とはいえ日向にいれば京都と大差ないような暑さだが、日陰の風通しのいいところにいればやっぱり違う。休憩室とされた庭を見わたせる風通しのいい茶室でぬるいお茶をもらっていると、これはもうアニメ「サマーウォーズ」の縁側のような気持ちよさであった。



萌のイトコたちが放課後やってきてくれた。しかし小2のTSまで宿題がえらいあるとのことで、帰ると1時間以上机に張り付いている。俺が子供の頃はこんなになかったぞ。毎日の拘束時間がカナダより長い上に夏休みが他県より短く、さらにこんなに宿題があるのかよ。口には出さないが俺も萌も顔を見合わせるのであった。

宿題が終わるともう晩飯で、すると平日なので子供たちはそうそう遅くまで遊んでもいられず、早々に帰宅。もう何度も遊べないのにと萌はホトホトがっくりきてました。バカめ長野教育委員会。

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■12/08/24(金) □ 日本のおばあちゃん
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本日は小布施の寺と北斎ミュージアムへ。ADとSHは北斎を知らなかったのだが、画力と構図の見事さに一発でノックアウトされポスターを買いまくっていた。北斎って京都のお寺でもポスターを売ってたけど、著作権ないんだろうな。小布施は丸儲けなんじゃないのかな。

皆に説明するためにパンフレットを読み、「ミスター高井という金持ちの地方名士が北斎ら著名人を招いて絵を描かせていたのだよ。でそのミスター高井の子孫が、この小布施栗菓子屋/酒屋の店主なわけだね」と説明していると、そうだったのかと自分にも改めてよく分かる。パンフレット読むべし。昨日の田中家にも北斎を呼ぶだけの財力があれば、北斎ミュージアムは須坂にできていたのかもしれないね。でもまあミスター高井は自身も文人だったようだから、単なる商家とは違うか。

桜井甘精堂でうまいそばと栗ご飯を食べたあと、手打ちそば実演を10分もじーっと見学してしまった。素晴らしいよな、ああいう職人技を見せてくれるのって。しかし桜井甘精堂のあの栗ご飯&そば定食が 1500 円ほどというのはすごいといつも思う。須坂宗石亭のとんかつ定食 850 円なんて、いずれADが食ったらたまげるだろう。カナダでそんな値段でうまいものなんか食えるはずがない。

そして各自カナダへのおみやげを買って帰宅。充実した観光日であった。暑さも峠を越した感あり。

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日本がどれほど暑くとも、うまいものを食わせておけばADたちは基本ハッピーである。おばあちゃんのうまいものが毎食炸裂し、SHは暑さで本領を発揮していないがADがそれを補うほどうまいうまいと食いまくってくれ、おばあちゃんも目を丸くして喜んでいる。隣の客はよく肉喰う客なり。ADはカナダ人だが北ドイツ出身なので、日本の酢や味噌などのストロングな味なども大好きなのだ。

おばあちゃんはこの夏 30 日間俺たちに何を食わせるか、それだけに集中し暮らしているようだ。俺たちや子供らがいい夏を過ごすことに喜びを感じ、自分は暑いから出かけるのはゴメンだよとあの斑尾以外外出せず、食材を買い3食あつらえ俺たちの世話をせっせと焼いている。この滅私奉仕の心というのはほんと日本の母ならではだよなあと思う。ほんとうに頭が下がる。

俺は家族のために四六時中通訳をやってるのだが、俺の家族向け通訳は名人の域に入ってきた。伝える必要がないところはスパっと省略し、精髄だけを瞬時に伝えて話をコロコロとロールさせている。うちの母さんの食べ物&地元話題の豊富さと、ADの好奇心とが噛み合って、食卓は毎夜笑いと幸福感に包まれている。

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■12/08/25(土) □ 戸隠忍者の謎が解ける
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本日は長野の霊峰戸隠の忍者屋敷へ。ここはさまざまな仕掛けが仕込まれたよくできた忍者屋敷で、何度行っても楽しい。初めて行った萌のイトコたちも、チャイルドライクなADも大喜びであった。

昼は草むらにシートを敷いて、買い込んできた菓子パンその他でピクニック。やっぱりあそこまで上がると涼しい。戸隠奥社参道入口のあのあたり(標高 1200m)まで上がってちょうど、バンクーバーくらいの気候だなと思った。暑さに苦しんでいたSH姉も一息ついていた。


見るたびにあの夏を思い出す、美しい写真たち。




戸隠では過去2回外国人忍者に遭遇している。7年前は忍者屋敷展示館で、「『忍者村現当主』なんてイマドキいるわけないよな」と写真を見て英語で軽口を叩いていると、いつの間にか音もなく迫っていた修行中のドイツ人忍者に背後を取られ、「その方は私の師匠だ!」ときつい声で叱責され冷や汗をかいた。


自称「ウェールズの鷹匠」氏 (2008年)

どうということはないこの人形が実は
4年前は中社前の土産物屋で、「ウェールズからきて鷹匠の技術を習っている」という男と出会い話をしたのだが、あとから彼が戸隠紹介の TV 番組に登場し、実はアメリカ人忍者だったと判明したのである。必要もないのに俺たちに身元を明かさず嘘をついていたのだ。忍者だからとしか言いようがない。

で今回は外国人を見かけなかったので忍者事件もさすがにネタ切れかと思ったのだが、4年前鷹匠と出会った同じ中社前土産物屋でADが忍者のキーホルダーを買っていると、店の親父が俺に話しかけてきた。

「それは私だと、お連れの方にお伝えください」。

―――は? 意味がわからず、「つまりこの人形のモデルになったということですか?」と尋ねると、彼はにこやかに宣った。

「そうではなくて、私なんです。私が6万の弟子を持つ、戸隠村忍者の当主なんです」。

―――え、えーっと驚愕し、2人揃って飛びすさり頭を下げ店を飛び出て奥さんたちにこの大発見を報告していると、興奮したADが「ちょ、これはスゴイ。もう2個買ってくる」と再度店に駆け込んだ。すると気をよくしたのか当主は、計3個の忍者人形に「ウンバハンヤラヌワカソワカ」みたいな気を送り込んでくれたんですよ! 忍者マジックですよ! すごくないですか? ADは当然随喜の涙であった。

3回目にしてついに、伝説の『忍者村当主』に出会ってしまったこの事実。その人がしがない土産物屋の亭主として、ちゃんと世を忍ぶ仮の姿でいたという、その道の密やかさ。しびれる。あのウェールズの鷹匠がこの店に入り浸っていたのも道理で、あの店は忍者の隠れ家だったのだ。そうだったのか。そうだったのだ。すべての謎が熱風に吹かれた氷のごとく解けていく、真夏の信州旅なのである。

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