2012/09/28

日記「タフなカナダのティーンライフ」

「センチメンタルジャーニー」「キモノパーティ」「スチルカメラの力」「田舎のロックフェス」「日本語テキストブック」

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■12/09/01(土) □ センチメンタルジャーニー
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 帰国初日、家の冷蔵庫には当然なにも入ってないので、階下のおばあちゃんところからミルクを借りてシリアルを食う。考えてみれば日本にいて食わなかったのはラーメンとシリアルだな。ラーメンは日本が暑すぎたからで、シリアルだけはカナダのほうがうまいから。

 ひと月分のメールその他を消化する。個人メールはもちろん日本でも受信していたのだが、8月初旬に読み書きしたものを再度目にすると、オリンピックで寝不足だったあの夏のおばあちゃんちの気持ちが蘇り、切なくなる。萌も楽しかった夏の日々の写真を眺めてはため息をつき、「なんか甘悲しい気持ちがする」と言っている。センチメンタルジャーニー。

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■12/09/02(日) □ キモノパーティ
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 萌は帰国後、起きてる時間はずっと TV を見ている。カナダは TV チャンネルが多すぎ、子供は TV を見過ぎるんだよな。何十チャンネルもあり人気番組は何十回もリピートされてるおかげで、Mも萌も何か何か好きな番組を見つけては1日じゅうだって TV を見ていられる。日本じゃ子供が見て面白い番組なんてそんなにないから、TV だけずっと見てるなんて不可能である。日本の子供にとっては TV なんてそんなに面白くないのだ。

 Mは日本の子供は TV ゲームをやりすぎると言い実際その通りではあるが、何一つ新しい笑いが出てこない SAME OLD アメリカ製 TV コメディを見るよりも、ゲーム内で工夫してなにかを作ったり問題を解決していくほうがよほどクリエイティブで子供らしいだろう。萌にはなにか面白いゲームをやってほしいと思う。DS の「バンドブラザーズ」をやってた頃なんかすばらしく創造的だったよ。



午後SPを呼んでおみやげを渡しキモノパーティとなる。このSPが着てる方のキモノは萌が東寺マーケットでおみやげに買ったものだが、コンディションがよく素晴らしく美しい。萌が着てるのはおばあちゃんのイトコ(?)にあたる方が少女時代に着ていたものだそうだ。そんなものがまだ着れるんだから、すごいことだよな。美しい。

 萌は大学生になったらSPと一緒に日本に留学したいなんてけっこう本気で言っている。SPは実に明るくイージーな子で、2人は子供の頃のままの表情でゲラゲラ笑っている。学校の友達がみんな彼女みたいにイージーな子ならば、萌の人生はハッピーなのだがなあ。萌は他の子と一緒にいるときはどこか気を張っていると思う。

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■12/09/05(水) □ タフなカナダのティーンライフ
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 今日萌を迎えに学校に行くとSLと話していたのだが、帰ると暗い顔をしていた。ケンカ等があったわけじゃないが、あのグループは気の強い子ばかりなので気疲れするんだろう。日本でひと月年下のイトコたちと思いっきり子供らしい生活をした萌は学校が始まった今週、日本的イノセンスとカナダ的クールの両方から引っ張られているのが見ていてよくわかる。仲のいい「クール&ポピュラーガールズ」と共にクールでいたいけれど、イノセントだった日本での自分も好きなのだ。難しいな。

 日本のことを話したかとMに聞かれた萌は、「そんなの誰も興味ないし」と堅い表情で答えた。Mによるとティーンにとっては現在のこと、学校のこと、友達やボーイズのことが「クール」なのであり、家族のこと、親戚と過ごしたことなんかは「アンクール」なのだという。日本語で言えば「そんなのイマ関係ねえし」とバッサリと切り捨てるメンタリティが支配的なんだろうな。そんな話題を持ち出すことすら憚れるんだろう。

 そんな疲れる背伸びソーシャルライフはさっさとやめて、SPのようなハッピーな友達やナードな趣味仲間を作っていけば無用なストレスから遠ざかりハッピーになれるはずなのだが、周りにどんな子がいるかなんて自分でコントロールできないわけで、そんなにうまくはいかないよな。カナダのティーンライフは本当にタフだと思う。

 Mはこうしたカナダのティーンライフをすごく嫌っていて、「日本に住んだらこの環境からは離れられるけど、でも日本だってイジメとか深刻らしいし、どこに行っても子供は大変よね」と溜息をついている。

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■12/09/06(木) □ スチルカメラの力
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今朝は完璧日本式弁当を作成。おばあちゃんの梅漬けのおにぎり、塩麹サケ、親戚の関谷醸造でいただいた味噌&きゅうり、麦茶、そしてむかしの宗石亭の包装紙という、萌のスキのないオーダーにきちんとお応えしました。

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 旅行中メモ程度にしか書けなかった日記をまとめブログにアップしようとすると、案外京都や信州観光地の写真が少ないことに気づく。暑くて暑くて屋外では立ち止まるのも嫌でなかなか写真を取れなかった上に、ビデオとカメラを両方携帯してたのが失敗だった。ビデオはスチルカメラのおまけ動画程度にしておいて、写真の枚数を稼ぐべきだった。ビデオは撮ってもやっぱ見ないわ。旅行はビデオよりスチルだと改めて思う。子供が大きくなるとビデオの出番は習い事やスポーツ関連だけだな実際。


この光の甘さが気に入っている、
キャノンPowershot A530
MIさんが斑尾と戸隠で撮った写真ももらえ、これがまたいい写真ばかりで助かったのだが、リコーとパナソニックは画質がシャープな分やや絵柄が平板な感じがする。俺のキャノンはホワイトバランスをグリーン気味にセットしてあり露光も常時1つ上げてあるのだが、この甘い画質が日本での俺と萌のホンワカおめでた気分をうまく表してくれている。よくよく見るとレンズのシャープさ(ピントかな?)が甘くなってきた感はあるしこの旅でファインダーにゴミが入っちゃったけど、そこは我慢して使っていこう。

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■12/09/09(日) □ 田舎のロックフェス
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 昨夜信州須坂ミュージックフェスという史上初らしいイベントのネット放送があり、見ているとなんと長野の長老バンド So-Do のアクタさんが出てきたので、市民向けの某所で So-Do などのリアルタイム解説をしながら見ていた。

2012/09/09(日) 14:44:00
長野で一番のバンド、SoDoのアクタさんとキンボーだ! 始まるよ。須坂ミュージックフェス。 (録画 - 0:50から「キンボーバンド」) http://www.ustream.tv/recorded/25284798
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(♪アリとキリギリス)やっぱいいなアクタさん。キンボーが須坂出身なんですよね。僕が高校の頃(70年代)先輩ドラマーとしてキンボーは有名だったのです。
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高校の学祭に見に行ったら、当時おそらく20くらいだったキンボーのバンドがゲストでクラプトンの「アフターミッドナイト」をやっていて、「すげえ16ビートだ」とぶったまげました。当時身内で16をちゃんと叩ける奴はいなかった(笑)。
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その後キンボーはこのアクタさんとSo-Doというバンドを長野で結成し、僕は何度か見に行ってます。長野じゃ有名なんだけど、須坂の若者は知らないだろうな。4年前に見たときはRCサクセションのG2がメンバーとなりピアノを弾いててびっくりしたな。
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(♪Everybody Must Get Stoned)キンボーバンド終了。うーん、よかったでした。So-Doはアクタさんはじめみな楽器がうますぎて、バンドでライブをやると楽器のアドリブソロが長すぎプログレみたいな難解音楽になっちゃうんだけど、アクタさんの歌とギターだけだとほんとに適度でいい感じ。ピアニカも効いていた。

 しかしこれを書いている間反応はなし。町ではこのフェス自体が盛り上がってなかったんだろうな。須坂というのはライブハウスもなく本当に音楽不毛の地で、このフェスティバルに出た人たちも見ていた人たちも、基本的に有名なミュージシャンでしか音楽を体験したことがないのだろうと思う。小さなライブハウスでアクタさんのような素性の分からぬ体験したことのないたぐいの音を聞いたり、そういう場所で厳しい目線にさらされ演奏したことはそんなにないんじゃないかな。

「♪電気ガスに水道、それに家賃。保険も少々入っておかなくちゃ。
キミが疲れて眠る頃、僕は座ってギター弾いてる。
アリとキリギリス、いつもすまないね」

 俺とMは長野の焼き鳥屋でたまたまアクタさんと同席し、この歌を歌ってもらい感動したことがあるのだが、貧乏ブルースマン・アクタさんのこの男おいどんペーソスは、どうも理解されてなさそうな客席の静かさだった。3曲め Everybody Must Get Stoned ではジミーペイジばりの華麗な生ギターソロもあったのだが、その薄くも素晴らしく充実した音に拍手が沸くこともなかったのである。残念。

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■12/09/14(金) □ 日本語テキストブック
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 今年から日本語学校をやめ俺が教えることにした萌の日本語勉強用に、「日本語能力試験 N3(日本語勉強歴半年~1年向け)」というテキストを日本で買ってきたのだが、のっけから

『広告の少ない文字数の中から、情報を読み取ります。「募集」とは……』

 なんて文体の説明が2ページに渡ってびしーっと書いてある。全部ふりがなは振ってあるが、学習者にこの説明が読解できるとも思ってるのかな。なんだこれは。これしか見つからず買ってきたんだけど、基本的に日本語学習者に日本で解説をするテキストは役に立たん。もちろん俺が教えるわけだからわからんところは補助できるが、こんな内容ではワークブックの大半が使いものにならないわけである。

 日英併記のテキストを探さねばと検索するが、アマゾンでもロクなものが見つからない。日本語教育は英語教育よりよほど後進的なんだろうな。

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「Kanji Power」というカタイ本だが
本屋で日本語テキストを探す。完璧なものは見つからないが、俺が英語を習ったときに使ったようなロジカルな構成のワークブックが見つかった。JLPT 4-5 で必要な漢字のすべてにその成り立ちが、つまり

「にんべん」は人を表し、「云」は言葉を表すので、「伝」は communication となる

 みたいな説明が【英語で】書いてある。これは俺がこれまで見たすべての日本語教科書を超えている。俺が日本語学習者ならばこれを使うだろう。ちょっと真面目過ぎて子供の教科書としては堅いのだが、そこは他のテキスト等で補うとして漢字読み訓練はこれをベースにしていこう。

 このように学習対象を【わかり】【納得】することが学習には大事なわけで、日本人は完璧に駆使できる日本語を使い外国語を【わかり】【納得】して覚えればいいし、カナダ人は英語を使えばいいのだ。大事なことは仕組みを理解し納得し、意味のある記憶としていくことなのだから。

 言語学習はどこの言葉も原語絶対主義が強くて、学習対象言語以外の言葉を使うことを拒否し、いいからそのまま飲み込め、習うより慣れろと母語を廃す。この原語絶対主義は効率が悪い上に、学習者の知的ポテンシャルをフルに発揮することを不可能にすると思う。会話訓練は口を動かし耳を鍛えることが眼目なので母語を使ったら意味がないが、文法・構造理解と語彙学習は、学習者のありとあらゆる知的能力を使い簡易化し定着させるべきだろう。その能力のベースとなるのが母語なわけである。

 というわけで、萌たちにふさわしい、最も効率のいい=ラクして身になる日本語学習法を探していきたい。

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