2015/03/08

日記「中島みゆき的イメージ(マッサン)」

「ピンナップベイビー、アイラブユー」「ハリウッド的なものにしらけている俺」「春の庭仕事」「闘士のエリー」「ヘドバンギャー」

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■15/02/14(土) □ ピンナップベイビー、アイラブユー
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 起きたらシーナの訃報がネットを流れてた。ああ。シーナはその存在感だけでなく声が唯一無二の人で、1曲の中で少女のような可憐な声と男に恋い焦がれダメになった大人の女のような声がコロコロ入れ替わるという、他じゃ聞いたことがないような歌い方をしていた。

 法政で見て、「クライクライクライ」のオーディエンス着火性はスゴイと話し盛り上がったのはTRさんとだったかな。芝浦でOKOと見た時は娘さんたちがステージに降りてきて幸せそうだったよ。HMさんとはパーティで「プロポーズ」を演奏しましたね。



 このビデオには本当に泣くな。死んだからじゃなくて美しいから泣けてくる。怪獣みたいな声してなんてかわいらしいんだろうシーナ。わずか2年前だよ。ピンナップベイビー、アイラブユー。

 日本のロックを知らない奥様にもこれを見せてしまった。大好きなロックシンガーが死んじゃったんだ、だけど見てよこれって。なんてかわいいんだろうって。彼女は微笑んでくれたよ。

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■15/02/15(日) □ ハリウッド的なものにしらけている俺
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 映画【007 スカイフォール】を一緒に見ようと奥様に言われ、まあそうだなバレンタインだしなとゲームやりたい心を抑えてカウチに座ったのだが、画面で起きてることのすべてが Xbox のゲームに見えた。はは。

 映画の感想は(ネタバレなし)、誰のモチベーションも俺にはわからんかったなというところ。あと最後はスコットランドでの戦いで、「マッサン」エリーの故郷ハイランドケルトはこんな寒々してるのかと思った。やっぱりノバスコシア州(カナダの「新たなスコットランド」)に似てる。そしてこの程度の熱中度だとツイッターするとか感想をリアルタイムで書くとかせずに2時間集中するなんて、俺には無理だなというところ。

 映画のテーマにピンと来なかったのもあるけど、映像的な好みもこういう欧米メインストリームと俺とでは大きく違うのかもしれない。たとえばこないだ見たフェリーニの「道」ではあらゆる瞬間が神々しいほど美しいと思ったし、アクションで言えば「カリオストロの城」は何度見ても快感を感じる。対してスカイフォールのトルコの陸橋を通る列車上での格闘では、「ああこういうきれいなところがあるのか」「落ちて怪我しなきゃいいな」くらいしか感じない。壮絶な実写アクションシーンが展開されても、感じるセンセーションは SFX やゲームとたいして変わりないなと思う。意外性におーと声まで出たのは1箇所だけだった。



 それとこれは言っても詮無きことなのだが、311 報道をリアルタイムで見てしまった俺たちには、あれより怖いものは何もない。なのでハリウッド映画(――これは英国映画かもしれないが、とにかく世界中の人が無条件に見るという意味での「ハリウッド映画」――)の多くを占めるパニックやサスペンスに俺は完全にしらけてしまっている。そういうものを目にするたびに「悪いけどもう世界は変わってしまってるので…」と思う。

 また、去年から「Radioactive(放射能汚染)」という核戦争後の崩壊した近未来を歌う古くさい SF 的テーマの歌が流行ってるのだが、実際にレディオアクティブな地域に何万人もの人たちが住まざるを得ない世界でこの歌を歌うバンドの自然保護団体的な意識の高さや、解決の道さえ見えないテロと人種対立の時代にこんなのんきな反戦歌がヒットしちゃう欧米ポップカルチャーにも鈍感さを感じてしまう。もう世界は変わってしまってるので。俺が考え過ぎなのかな。

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■15/02/17(火) □ 春の庭仕事
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すごいぽかぽか天気だ。今日は外仕事をしようと、もう倒れるのは時間の問題だったバックフェンスを一念発起して板材で直した。傾いていた柱もまっすぐにしてつっかい棒を両側に添えた。よし。見た目は悪いがこれでうちのフェンスはあと数年持つ。持たせてみせる。フェンスを直していると隣のおじさんが芝刈りを始めた。「こんな早くから芝刈りなんて記憶にないよ!」。春だなあ。

 作業中聴いてたバンクーバーの FM 104.3 がなんか選曲が変わったぞと調べると、70~80 年代に育ったユーたちへと方針が変わったらしい。前からあるクラシックロック局はプリンスすらかけない真のオヤジ向けだったので若干若返りと言えなくもないが、若干だなー。90 年代まで広げりゃいいじゃん。というか年代やジャンルを限定なんてせず、いい音楽をかけてくれればいいんだよ。それができないから限定してるんだろう。

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■15/02/18(水) □ 中島みゆき的イメージ
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 【マッサン】戦争が激化し、特高にハラスメントを受ける政春夫妻というつらい週。エリーを日本に連れてきたのがいかんかったと政春は後悔する。自分が連れてきたばっかりにという政春の気持ちはわかる。だけどエリーは「新しい大好きをマッサンと探したい」と故郷を離れ、行く先々でそれを見つけてきているんだから、何が起きてももう誰のせいでもないよ。

 エリーという人の描き込みがイマイチ足りない(ですよね)のは、実のところリタさんの人生がどういうものだったのか、作者にはよくわからないからじゃないかな。俺も評伝等は読んでないけれどあの笑顔のない写真群を見ると、彼女は何を感じてるのかなと不思議に思う。幸せだったのかなと思ってしまう陰がある。


しかし「大好きな人々、大好きな明け暮れ」という主題歌の2番を聞いた時には、中島みゆきにはリタさんの人生が見えているのかと驚いた。国を捨て幸せだったのか、後悔があったのかなんてわからない。しかし母国に残してきたそれらに恋い焦がれないわけがない。それでも「新しい大好きをあなたを探したい」というリタさんの気持ちを、中島みゆきはピンで留めるように見事に書き表している。リタさんもシャーロットさんも俺もそうなんだよ。国を出たあらゆる人の気持ちをこの歌は、狂いなく射抜いている。

 竹鶴さんも政春もそれを知っているから、人生かけてパートナーを幸せにしたいと狂わしいほどに思う。「みんなエリーのおかげなんじゃ」という政春の言葉は実際的なエリーの内助の功を言ってるわけではなくて、そこまでしてわしを思ってくれる君がいたから生きてこれたということでしょう。

 君がいなくなればわしの火は消える。工場は止まり樽は割れ、すべては地面に流れ消えていく。あなたから離れたら私の庭の花は枯れる。窓は割れ水差しの水は蒸発し、空に消える。「マッサン」はそういう愛の物語なのだと思う。シャーロットさんと玉鉄のおかげで、脚本に書かれていないところまで中島みゆき的にイメージできる。

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■15/02/19(木) □ 闘士のエリー
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 【マッサン】エリーが特高に連行される。はあ。シャーロットさんの朗報(ブロードウェイで主演)が本日発表されたのは、特高によるエリーと政春への理不尽な仕打ちに耐えられん弱き私たちのスピリットを、あらかじめ少し上げておこうかなー的な希望のともしびだったのだろうか。はあ。

 いつもは家族のことでポロポロと、指でつついただけで泣いてしまうエリーなのに、今日は泣かなかった。わしも連れて行けと特高に食って掛かる政春の背中で、家族のために立ち向かう泣かない闘士に切り替わっていた。「私は亀山エリーです! この国に愛する夫と娘がいます!」。すごい。ため息。

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■15/02/24(火) □ ヘドバンギャー
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 こないだカレッジバンド合戦を見てロック気分が高揚した萌が帰りの車でベイビーメタルをかけたんだけど、最後に女の子が「ヘドバンギャーッ!!」と叫ぶのがおかしくて、家につき車を止めてからゲラゲラ笑った。なんだそれ。すばらしい。ヘドバンギャーッ(笑)。

 萌はいつも車で俺にアークティックモンキーズを聴かせる。カッコいいけど自分から聞こうとは思わないというくらいの感想なんだけど、今朝親子沈黙の車内でまたこれを聞かされ、「このバンドってヘドバンギャーだよね。ダークなヘドバンギャー。私にはダークにヘドバンギャーな青春はなかったからな。ただのバカで」と話した。

 歌詞は読んだことがないんだけど、アークティックモンキーズの音は硬く無愛想で、彼らが練習する狭いスタジオに入っていって迷惑そうな視線を受けながら聞いてるような感じ。その居心地悪さに打ち克つほどの快感は俺に湧いてこない。お呼びでない? こりゃまた失礼しましたヘドバンギャーって感じ。



 萌が「自分のパッションを語る」という学校の課題で作った『私のパッション:写真とビデオ』というビデオクリップが素晴らしい。学校から帰るバスから見える風景や友だちと行ったバンクーバーの映像を、流れるように美しくまとめている。フランス語科なので何を言ってるかぜんぜんわからんけれども、きっと言ってることも情熱的なんでしょう。ヘドバンギャー。

 私のオリンパス・マイクロフォーサーズを持って本人は映像に収まっているけれど、実は彼女はこの映像を全部 iPod で撮っている。iPod だけで写真とビデオと編集ができてしまうんだからすごいよね。いまどきの子供は、その気になればこんなクオリティのものを作れてしまうのだ。

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