ザ・バンドのドキュメンタリー映画『Once Were Brothers(かつて俺たちは兄弟だった)』をTVで見た。俺はミュージシャンの伝記にはあまり興味を感じないのだが、ロビーの語りと豊富な写真の見せ方ですごく面白く、選曲で感動させてくれる。
ボブ・ディランのバックバンド時代、どこへ行ってもフォークソングをやれとブーイングを浴びるディランのツアーは実際つらかったらしい。ロビーが兄弟と愛するレヴォン・ヘルム(Drums)がこんなことは馬鹿げていると一時抜けてしまう。
しかしロビーは「俺たちの音楽は良いのだ。ブーイングする彼らが間違ってるんだよ」とメンバーに説く。世界最高級のバンドでディランが歌って客が怒るという、想像できない夜明け前の世界がある。
そしてウッドストック、伝説の地下室スタジオのある家ビッグピンクの思い出。「前みたいに移動に追われ、夜にはしがないギグをやるみたいな生活じゃないんだ。音を出したくなったら地下室に行って音を出し、録音して、庭でフットボールを蹴ったり薪を割ったり…」。そこから創造が生まれてくるという幸福。ここで俺は友人が隠れ家につくったスタジオにこもった自分のバンド&基地警備員時代も重ねていた。
しかし驚くほど初期から、ドラッグがバンドの絆を割いていたのだった。「かつて俺たちは兄弟だった」という題名、過ぎ去った青春と音楽に、最後は涙が止まらなかった。ロビー・ロバートソンがこの映画を紹介し、「ザ・バンドの物語には心揺さぶられる」と言っている。これは実際本当で、特別なバンドが見せる、人生の普遍的な輝きと痛みがある。だからマーティン・スコセッシが二度にわたりザ・バンドの映画を作った(「ラスト・ワルツ」は監督、今作は製作総指揮)のだとよくわかる映画だった。◆