2011/07/28

習作のアリエッティ

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■11/07/19(火) □ 習作のアリエッティ
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送ってもらった「借りぐらしのアリエッティ」をついに見る。アリエッティたちの生活を描く前半は、子供の頃に読んだこのテのファンタジー(木彫りの人形が夜動き出すとかの欧州童話に俺も萌えた)をジブリが高品質映像化してくれた、ありがたいありがたいと実に楽しい。人物や猫の動きに「非純正宮崎アニメ」的違和感は感じるが(人がステップ数細かくコマ落とし的に動くのがヘン)、俺ごときがこれと指摘できるほどの大きなものではない。宮崎監督が絵を描かなくてもこれほど気持ちのいい絵が延々と作り出せるのだからジブリはたいしたものである。ジブリの蓄積技術がすごいとも言えるし、宮崎駿はすでに学び写し取られる古典技法になったのかもしれない

【以下ネタバレです】前半の屋内冒険シーンには何度も巻き戻し絵の1枚1枚を味わうほどワクワクさせられたが、しかし映画コピーが「人間に見られてはいけない」であるにも関わらず開始3分でアリエッティが見つかってしまい、次の冒険で再度確認されるというバタバタな拙速感をはじめとして、ストーリーには終始ウーム感がある。やがてドールハウス押し付け、ハルさんの暴挙、アリエッティお母さんの無力といったドタバタが続くあたりは、「こりゃ宮崎監督はがっかりしたろうなあ」としか感じなくなってしまった。後半のほぼ全てがウームという感じ。俺だけではなく、萌もウームという顔をしていた。

見終わると萌は「あのドールハウスに住むっていうハッピーエンドにしてほしかったのにー」と不満を述べる。「だけどまあハルさんがいたらあの家にはいられないからねえ」と答えると、「ハルさんなんかクビにすればいいじゃない」という。そりゃそうだよな。家の主が3代にもわたり小人を待ってることを知りながら、メイドが害獣駆除業者を呼んでしまうという行動は馬鹿げている。その理由すらわからない。翔が小人を見つけたことにハルさんが気づくあたりからしてすでに俺も萌も、そんなわけないじゃないかと非合理性を強く感じていた。こういう明らかなご都合主義は楽しさを削ぐ。樹木希林の声も樹木希林すぎてゲンナリさせられる。身を捩るシーンは「寺内貫太郎一家」になっていた。
追記:《ハルさん(家政婦)は若い頃小人が借りていったせいで盗人疑惑をかけられ、一緒に働いていた人はやめさせられてます。という背景がある故の行動であることが端折られているので悪者のように見える》というツイートを後日発見。見たものにこうして大きな違和感を残す描写の責任って、ジブリの場合鈴木プロデューサーにあるんじゃないのかな。違うのかな。(11/12/17)

アリエッティ母のパニック無力足手まとい人物造形もほとんど醜悪と言えるほどで、彼女がハルさんに捕まったことすら、ドールハウスの食器を持ち出そうとした愚かさゆえとして描かれている。宮崎監督が描いてきた強く聡明な女たちの正反対だ。張りのある大竹しのぶの声ともひどく合っていない。トトロのメイと同じ役割だが、これを大人にやらせるのは不愉快である。このお母さんはジブリ映画登場人物で初めて、世界に出したくないなと思った。千尋のお母さんもひどくてMに不評だったが、あれは現実にいるお母さんだ。

結局宮崎駿の後継者は、ジブリからは出てこないんだな。天才は天才の弟子になんかならないのかもしれない。これは秀才である弟子が作った、ロボット兵や猫バスなどオマージュにあふれた「古典技法・宮崎駿」の習作であり、製品版としては完成していないのだろう。

しかし見終わってから調べると、脚本は宮崎駿だという。ええっ? どういうことだ?

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ショックを受けつつ考える。アニメーションは優秀だ。誰が見てもこの映画で弱いのは人物と脚本だろう。アリエッティとお父さんだけは歴代宮崎アニメからの借りぐらしなのですんなりシンパシーを感じられるが、翔をはじめとした他の人物には魅力が皆無である(―――萌とMは「君たちは滅び行く種族だ」というあたりで「なんて不愉快な子なの」と声を出していた―――)。そしてシータとロボット兵のあの名シーンのコピーが感動シーンとしてそのまま使われていることが、このストーリーのクオリティを示している。

若手監督にハードワークを委ね、自分は脚本だけに仕事を限定しても宮崎駿はもうこれしか書けないのだろうかと思うとがっくりするものがある。宮崎駿が関わってないのなら上記の通りなるほど習作だねで済むが。

この脚本で前半だけでも楽しめるものを作った米本監督は、むしろすごく頑張ったとさえ思える。こんな自立を求めて旅に出るみたいな結末にせず、萌のいう通りドールハウスに住み幸せに暮らしましたというディズニー的結末にしてしまえばいっそすっきりしただろう。哲学的寓意はジブリ(または日本劇場アニメ全般)の社風だが、このくらいの筋立てでそれを持たせようとする方が不自然だ。「勇気をもらった」とか「君は僕の心臓の一部だ」という言葉には、萌ですら「これどういう意味?」と違和感を表明していた。言葉がまったくリアルに響いてこないのだ。

監督は宮崎監督じゃないよというと、萌は「Thank God! なんでジブリなのにこんなにハッピーじゃなくて悲しいのって思ったよ!」とまで言っていた。まあそんなにひどくはないと思うが、ストーリーは宮崎監督作らしいとは、俺は萌とMに言えなかった。がっかりさせたくなかったのである。

ジブリはもう、若手監督を使うときに宮崎脚本や原案を使うといったことはやめて、作品ごとに外部の優れた才能を探した方がいいのではないか。ピクサーやディズニーみたいに産業化してほしいわけではないが、ジブリに物語を書く才能が生まれてこないのなら仕方がないではないか。そういうクリアーな割り振りができないジブリの鈴木敏夫プロデューサーという人も、実のところなんの仕事をしてるのか、なんらかの能力があるのかどうかよくわからない人である。

毎年夏向けのメイン部門はそうして合理化した上で、宮崎監督には隠居仕事をやってもらえばいい。締め切りや長さ規定を設けず彼のアニメ的イマジネーションを発揮してもらえば、今でも「ハウル」や「ポニョ」のように興奮を呼ぶ映像ができるだろう。

萌は「実は私、ポニョもあまり好きじゃないの。キュートだけど、なんか感動しなかったの」と言っていたが、あの謎だらけのストーリーでは当たり前だ。しかしNHKでポニョのストーリーに苦悩する宮崎監督というドキュメンタリーをやっていたように、時間とストーリーテリングの制約は間違いなく大きい。この映画だってそうである。「毎年夏にジブリ映画」という時間の制約があるから米本監督は死にそうになってやっていた。米本監督にはより優れたストーリーテラー脚本家を与え、宮崎監督には時間を与えてほしい。たとえ意味がよくわからず謎だらけでも宮崎駿の新しい映像は一も二もなく見たいし、間が開いてもいいからいつまでも作ってほしいとファンは願っています。

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翌日、
今回の作品は宮崎監督が企画・脚本、監督は新人の米林宏昌が務めた。だが周知の通り、宮崎駿は映画を作るときに脚本を必要とせず、直接絵コンテを描きながら作り込むという作風だ。今回の“脚本”という役割も、大まかなプロットを監督に口頭で伝える程度だったのではないかと想像する。すると監督の役割は、宮崎駿の与えたイメージを膨らませ、大まかだったキャラクタに肉付けする作業になる。これがどうにもうまく行っていない。
という詳しい人の評を見つけた。宮崎監督の関わりがこの人が言うように、「大まかなプロット」程度であってくれたならいいのだが。

2011/07/22

日記「その者青き衣をまといて」

「ツリーハウス作り」「女子サッカーの成熟」「チケライ追加チケット」「パーティでゲーム会」「US敗戦の弁を堪能」

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■11/07/10(日) □ ツリーハウス作り
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作業中萌は私の誕生日ケーキを
製作
昔から萌のために作ってやりたいとMKが言っていたツリーハウスの材料がとある経路で無償で手に入り、ついに作業が始まった。俺も終日作業。巨大な板で庭木を挟み、木が風で揺れてもストレスがかからないよう遊びを1インチ取って巨大なボルトで締める。そこに2x4を縦横に渡し上に上物を載せるという構造で、やってることはほんとの家を建てるのと変わらない本格大工仕事だ。こんなことをやる知識と技術と道具があるんだからカナダの男衆はすごい。

MKと一緒に働いたのはうちの排水システム修繕以来数年ぶりだが、俺たちは相変わらず息が合い何事もテキパキとうまく進む。俺は大工仕事の知識がないので基本MKの指示に従うだけだが、彼は人に意見をインプットされるとアイデアが飛躍してモチベーションが上がるタイプで、常に俺に意見を求めてくる。で俺は何ごとも最もラクで合理的な方法をつねに追求したいので、これはこうしたほうがラクだなと述べる。でオオそれはグレイトアイデア! と盛り上がり仕事がはかどる次第。ちょっとすごい安全で豪華なツリーハウスとなりそうである。

とりあえず床まで完成した。上がってみるといい眺めである。高くて怖い。こんなものが作ってもらえるんだからカナダの子供は恵まれておる。完成したら萌は友達を呼び、ここでスリープオーバーしたいという。いやオープンエアだから、寝るのはなあ。蚊とラクーンが問題だ。まあ完成したら考えましょう。

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■11/07/13(水) □ 女子サッカーの成熟
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日本がワールドカップのセミファイナルにいるなんてすごいことである。そしてスウェーデンなんてもう過去に何度も破っており、勝つに決まってるのである。

まずは【米仏戦】を高みの見物。カナダはドイツには少し抵抗できたけどフランスにはボコボコにされたから、強いよなあフランスと思っていると、米がカウンターから幸運な先制点。決勝で日仏美しいパス合戦を見たいのでフランスを応援してるのだが、先制点とハードな当たりで米はペースを握り返してしまった。さすがだ。

後半技術で優勢なフランスが追いつくが、追加点を奪えず、こうして押していながら決められないとブラジル同様USAの勝負根性に押し切られるぞと思っていると、恐れていた通りアメリカが追加点を取り試合終了。米は男子もそうだけどたたきつぶさないと息を吹き返す。優勢勝ちはできない相手である。日本はその教訓を胸に決勝に進みましょう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

【日本・スウェーデン】双方静かな立ち上がり。ドイツを相手にしても落ち着いていた日本はここでは格上としてグイグイ押し込んでもらいたいところだけれど、ガツガツと畳み掛けていくといった持ち味はないようだ。―――うわ、パスミスをいきなり決められ失点。――え、ミスは澤? うーむ。まあ次行こう。

ほどなく大野が高速ドリブルで仕掛けてDFを引きつけサイドに流したところを宮間がクロス、そこに川澄が飛び込んでいて押し込む。よし! まだ日本は油が回りきってない感じがあるが、ミスを早めにリセットできたのでここからエンジンを回していこう。

【後半】点が取れずに膠着が続くと、フィジカルで勝る相手にゲームが傾くかと心配してたのだが、日程のせいなのかスウェーデンは後半も走力が上がってこない。徐々に試合は一方的になってきて、日本がサイドで持って崩して切り返し、存分に振り回して最後は澤が押し込む。崩して崩してポンという、日本らしいゴールだった。

残り時間はもう、日本サッカーのショーケースと言える美技の連発。川澄のボレー&ロブゴール、英語アナが絶賛する活躍のオオノの素晴らしいクロス、同じくアナがもうほとんど舌づつみを打つほど美しい鮫島さんのドリブル突破。素晴らしい。

【試合終了】決勝の相手は苦戦に苦戦を重ねてきた米国。やってるサッカーの質はドイツよりも低いけれど、勝負根性はとんでもない相手である。ボールキープは日本ができるだろう。しかし返す刀の重さは大会随一かもしれない。

このくらいのレベルの試合を見ていると、女子サッカーは文句なく面白い、レベルの高いスポーツになってるとつくづく思う。男子に比べてパワーがどうこうとかまったく思わない。昔ウィンブルドンでグラフ-ナブラチロワを見て熱狂してたのと同じ、究極のスポーツ感がある。そしてそのただ中に日本チームがいてくれるのである。素晴らしいな。

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■11/07/15(金) □ チケライ追加チケット
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起きると同時に、雨で寒いと思う。まだ山には雪が残ってるそうだが、なんという悪天候の夏であることか。


チケライファン謹製美麗拡張チケット
朝イチで萌が「チケットトゥライド・ヨーロッパ」を対戦要求。望むところだが早くも長距離チケットが6枚しかないことに飽きてきているので、ネットで見つけたファン謹製の中長距離チケット18枚をプリントしてみた。ロング6枚、ミドル12枚のセットで、作者はロング1、ミドル1、ショート2としてのプレイを推奨しているが、とりあえず18枚全部を6枚のロングチケットの代わりに取るという単純なルールでやってみる。

するとやはり引くたびに見たことのない路線がでてきて、これまで全然進んだことがないルートを通れるので実に楽しい。萌もウォウと盛り上がっている。既存のショートチケットとの交錯も増しているようだ。これはいいわ。サイコー。チケライはチケットの種類とその交錯が増えれば増えるほど楽しい。


赤の美しいロンゲストトラック完成
2ゲーム目は萌のプランが素晴らしく、ベルリン-ソチという新路線を敷いたあと短距離数本を小気味良くつなぎ、そしていつの間にトレインを8枚ためたのかストック-ペトロという高得点難路をつなぎ、さらにそこからリーガに鋭角にターンしてダンジグ経由でメイン路線ベルリンにつないで、とうとうロンゲストトラックまで作ってしまった。あまりにも美しい完勝。オンラインでPC相手のチケライだともう俺はまったく負けないのだが、ひととゲームをし負けることの楽しさに惚れ惚れする。

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■11/07/16(土) □ パーティでゲーム会
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またファミリーパーティに呼ばれ、大人が2階で社交をやってる間俺は下で子供らとゲームをやっていた。小さな子供がいる場で小さなピース満載のチケライはコマをなくすのがちょっと心配なので「オイそれはオレの魚だぜ」とカルカソンヌを持って行き、「オレ」は9歳のDF、大人のABに大受け。ルールがたった1つしかないところ、1回の勝負が超短いところがよかったようである。カルカソンヌはメカニズムの優秀さはわかってもらえたが、子供らには(草原ルール抜きでも)ちょっと難しいという感触だった。

面白かったのは非ボードゲーマーであるABが「オレの魚」を連続6回やるほどガッチリはまり(これってチェスみたいねと言っていた)、次いでカルカソンヌをやらせると即座にそのすべてを理解したことで、「つまり横から合流すれば相乗りできるのね」「じゃこうしたら相乗りを防げて安全よね」「スペースがある方に構築したほうが町は完成しやすいわよね?」と初回プレイにして完璧にストラテジックに思考を始めており、びっくりさせられた。彼女のボドゲ脳にスイッチが入ったとしか思えない。

だいたいABってこれまで何度もこうしてパーティで顔を合わせ、お互いシャイで話題も思いつかず喋ったことは一度もなかったのだが、ゲームを挟んでいると気軽に喋れる。「なかなかやるではないか君」「うう、それは痛い」といったたわいもないやりとりなのだが、何も話さないより百倍マシである。LD家の家族クリスマスにカルカソンヌを持っていった時も大盛り上がりになったし、やっぱボードゲームはよい。特にその場で一発でルールが説明でき面白いやつは本当に貴重だ。



ウケたが勝ち方が分からない「オレの魚」
しかし「オレの魚」って楽しいんだが先行きがまったく読めないゲームで、自分が打った手が良手か悪手は後から打つ人次第という感じがする。俺は大人のMかABを追い詰めたく行動するのだが、気がつくと自分も不利な心中状態になっていることがほとんどであった。結局何も考えず3魚2魚タイルを単純に抑えていく子供のDFが勝つので結果としてはよかったのだが、俺はやはり丁々発止をやりたいのである。1対1ならばガチの勝負になるが、多人数だと勝ち筋はないゲームなのかな。家に帰ったらまたソリテアで研究してみよう。

萌がこういうパーティや親戚といるときにあまりカルカソンヌをやりたがらないのは、乗っ取りを自重して手加減しないとビギナーが楽しめないので、その加減が面倒だからだろう。俺は適度にゆるく打ち楽しくやれるのだが、萌はやるなら自分の全カルカソ力を発揮して勝ちたいわけで、これは子供だから当然である。

今日は持ってこなかったがチケライ Euro ならば対戦相手への攻撃要素が少ないので、たとえ俺たちが上達しても、ビギナーと楽しく遊べるゲームになるんじゃないかと思う。ビギナー&多人数だとちょっと時間がかかるのが難点だが。

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■11/07/17(日) □ その者青き衣をまといて
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女子W杯決勝。試合は昼からなのに5時半に目が覚めてしまった。ベッドで1時間ほど Wi-Fi してから起床。

アメリカは、個々のフィジカル能力は女子スポーツ選手の究極を感じさせるほどにすごいが、ブラジル戦でもフランス戦でもチーム戦術で相手を上回ることがまったくできなかった。耐えてしのいでここしかないというロング一閃のチャンスに懸け、相手を下してきている。

つまりUSAはコケの一念で岩を通すサッカーであり、アジアカップのときの韓国に似ている。日本はあの試合前半怒涛のダイレクトパスで韓国をズタズタにしながら息の根を止められず、ここしかないという隙を突いてくる韓国のコケ念攻撃に優位を持続できず追いつかれた。

かように米国と韓国は、念入りに叩き潰さないと息を吹き返すのである。日本がやることは念入りにスリッパで数多く叩くことで、これはこれまでのゲーム同様間違いなくできる。問題は回数とヒット率。あるいはスリッパ底の堅さ。

◆   ◆   ◆

【試合開始】ファーストプレイでいきなりFWチェニーにスピード勝負に持ち込まれ、1対1でシュートを打たれる。ワールドユース決勝惨敗の悪夢を思い起こすような出だし。運動能力はほんとうに凄いわこのチーム。ドイツのフィジカル差は体格とパワーの差だったのだが、ここではそれに加えてスピードでも圧倒的な差がある。しかしプレスをアジャストできればスピードは抑制できるはず。

USAはパスサッカーを目指していて、それがうまくいかず中盤でボールを失うことが多いとのことだが、たしかにゆるいつなぎは想像以上に拙くインターセプトは簡単にできる。だが中盤でつなぐのはじきにやめてしまい、プレスとランでガンガンに脅威を与えてくる。―――うわ、8分、折り返され詰められ完全にやられた(冷や汗)。左を破る銀髪のラピノーを止められない。ボックス横が狙われている。フィジカル差を最大化するやり方は得意中の得意という感じ。この展開が続くとどうにも止められないので、日本がポゼッションを上げて相手を下げるしかない。

20分過ぎ、USAの最大パワーが若干落ち日本はようやくボールを持てるようになる。が、単純な裏狙いが多すぎ、相手に読まれてイングランド戦同様簡単にボールを渡してしまう。もっとていねいに攻めてほしい。

流れが悪い時間を運でしのげたので、ようやく日本がペースを上げてきた。ここからだ。もうゲームはある程度コントロールできている。ここからは力通りに行けるはず。日本のパスとプレスが上か、相手のフィジカルと個人力量が上か。しかし日本は技術で上回れると思っていたが、全然そんなことはないな。ドイツ戦ではパスワークは日本のほうがうまいと思ったが、USAがグラウンダーで30mの強く長い縦パスをばしっと出し一発でコントロールして前に進むのも日本にはない技術である。おそらく速筋遅筋骨格の違いで、近距離のワンタッチパスの連鎖と連動したプレスは日本が得意、長いボールはUSA(白人)が得意と、所持技術分野が違うだけだ。USAの持つ技術は間違いなく世界最高である。

29分:うわ、ワンバックが左で強烈なシュート! クロスバーが折れるほどの勢い。USAは他の選手もそうだが、キックの強さは性別を超えている。恐るべし。

大野のスルー、やや外にずれ安藤が打つもシュートは弱くGK正面。全速で抜けだして角度と時間がないところから強いシュートを打てるのがアメリカのフィジカル、打てないのが日本で、そこは骨格上致し方ない。当たり負けしないフィジカルという点では日本女子も非常にレベルが高くなっており、中盤で競り合えば重心の低さを生かしてボールをちゃんと奪えるのだが、アスリートとしての運動能力という意味でのフィジカルでは工夫と技術で劣勢を補い切れない。たとえばこうした体勢が不十分なところから強いキックを打つには足の長さ重さと筋力が必要なわけで、それは日本人にはないのだ。だからもっと多人数でゴールに近づき、相手を崩して打たなければならない。日本が縦パスぽんで強いシュートを打つことは絶対にできない(そこを振りの強さでカバーしようと強振してミートしないというのも、男女を問わず日本選手にありがちだし)。

【前半終了】ふー。立ち上がりはホント運に助けられたけれど、日本もいい感じになってきた。鮫島が何度か上がっていたということは、立ち上がり苦しんだサイド攻撃の対策にもメドが立ってきたということだろう。しかし遅攻から裏を狙うとDFにもGKにも読まれてしまうので、このままでは点など取れるはずがない。さらなる攻撃の切れが必要だ。

しかしUSAはブラジル戦、フランス戦から予想したよりもはるかに強い。ということはブラジルブラジル・フランスが無茶苦茶強くてUSAが苦戦していただけで、これが本当の世界最強レベルであり、ドイツは調子が悪かったということなんだろう。USA優位とさかんに言っていたカナダTV解説陣が正しかった。しかし最後は勝ったほうが強いということになるだろう。

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【後半】短いブレイクで前半終わりの優勢はリセットされ、また猛攻にさらされる。ゴールポストが助けてくれているうちに、ペースを握り返してくれ。USAの守備陣は実に堅く厚くラストパスを通すスペースはない。ドリブルで勝負するしかない。大野のドリブルは効いているが、川澄と安藤はドリブラーではないのだろうか。

15分、USAのペースが落ち着いた。ここからはまた日本の工夫の戦いだ。USAのプレスは個の運動能力による単独の詰めなのだが、その個の鋭さがドイツより格段に上で、日本は交わして前に進めない。たとえプレスを横に交わせても、日本の攻撃スピードよりもUSAの戻りが速く、日本はよーいドンではいかなる勝負でも上回れないので、スルーパスは通らないのである。高い位置で奪い即座に突っかけていく以外、何事も起こせないと思う。

日本は2枚同時に早めの交替。この試合大野のドリブルがほとんど唯一の鍵だったのでえーともったいない気がするが、これだけ押されていると前線は守備に疲れ、前に走れなくなっているのかもしれない。フレッシュな脚に期待しよう......と交替を前向きに捉えていると、69分この大会噛み合っていない永里が絶好の位置でボールが脚につかず悪いタイミングで奪われ、ずばっと出された縦パス1本でモーガンと熊谷の完璧な走力勝負に持ち込まれ、ついに破られた。これはボールを出したラピノーと相手FWモーガンを褒めるしかない。まさにここしかないピンポイント勝負。これに勝つ個の力がUSAの強さなのだ

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日本がボールを持つ時間が徐々に増すが、USAは縦への速さと戻りの速さの両方で日本を上回っている。日本はプレスを横には交わせるが、前には一向に持っていけない。日本がラインを上げると失点時のようにものすごい槍が飛んでくる。このUSAを破ることは本当に難しい。これはダメかも......と思っていると80分、うわ! 日本同点! クロスに飛び込んだ丸山が潰れ、こぼれ球に宮間が詰めていた。見てるほうがもう諦めてるのに、なんてすごい人たちなんだ。

【後半終了】ぷー。すごい。勝てる。完全に五分にまで持って来てしまった。現時点では五分以上かもしれない。が、ここのブレイクからの立ち上がりでまたUSAはまた息を吹き返してくるだろう。まったく厄介な敵である。しかしだからこそ互角に戦っている日本が素晴らしい。

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【延長前半】お互いに攻め合いとなるが、米の攻めはシュートにつながるのに日本は打てない。永里が走らない。引き出す動きがないのは彼女のスタイルなのだろうが(他のFWは裏に抜けるタイプで、その動きは読み切られまったく効果がない)、流れたボールにフルスピードで詰めないのはスタイルとは関係ない。追えば相手DFのミスをまた誘えるのに。丸山と宮間が走って相手のミスを誘ったから点を取れたのであり、その努力をしないFWはこの試合ピッチにいても仕事はないだろう。大野がどれほど疲れていたのか不明だが、永里インは監督の失敗と感じる。ここはいっそダメもとで、日本のメッシを入れてくれ。

だんだん相手のクロスに対する間合いが甘くなって、ついにワンバックにヘッドを決められ前半終了。丸山は動いているからシュートを打てる。動かない永里に代えて岩渕を!

延長後半、日本の攻め圧力が増す。近賀のシュートがあと少しでネットに入りかけるが、DFが掻き出す。あと一歩なんだ。あと一歩なんだ!

そしてコーナーキックから澤! すごい。涙が出てきました。

【PK戦】「PK戦は追いついたほうが有利」というカナダ解説陣のコメント通り、海堀が全部止めてくれた。やっ・た。やってくれた。海堀さん、実を言うと私はあなたを下手だと思ってました。間違ってました。すいません。カナダTVは負けた美女GKの泣き顔を延々と映しているが、勝者はあなたですカホリさん。

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実際戦ってみるとUSAはなんと強いチームか、なんと素晴らしい選手を揃えていることかと圧倒された。試合前にアジアカップでの日本-韓国を、つまり力量五分で技術の日本優位とイメージしていたのだが、USAは日本より強かった。

失点を免れた前半はラッキーだったとしか言いようがないし、ボールを持てた中盤以降も日本は相手のプレスに持ち味を出せず、ほとんど破壊力のある攻めをできなかった。ドイツ戦を見てるときは勝てる、日本のよさがいつかきっと君にも、わかってもらえるさと明るい気持ちが湧いて仕方がなかったのだが、この試合はこれはわかってもらえないなと思っていた。USAの圧力が下がった後半以降はそうそう点を取られる気はしなかったが、点を取れる可能性はもっと低いと思っていた。失点後は、どうしようもないと途方に暮れていた。

しかしそうして見ている方があきらめているのに、やっている彼女たちは誰もあきらめなかったのだ。日本の組織攻撃はドイツ戦、スウェーデン戦のような華やかなゴールは生み出せなかったが、陣取りのようにこつこつと前に進み、諦めずへこたれず走った丸山たちが敵の守備に小さな小さな針の穴を開け、宮間と澤という天才が信じがたい技巧でそこに金の糸を通したのである。その奇跡には本当に涙が出た。

もう一回やったらおそらく負けると正直思う。それが試合後の俺に複雑な感情を残す。もちろん素晴らしくうれしいけれど、その気持ちはドイツ戦後に比べると感動や喜びよりもハッピーエンドの物語を見届けた安堵感に近い。「ポニョ」を見たときのような感じ(笑)。しかしそんなことはどうでもいいことだ。こんな凄い試合をして、こんな凄い敵に、日本は勝ったのだよ。わは。わはははは。

そうだ。日本は男子W杯では「もう一回やったら勝てる、今日はちょっとだけやり方を間違えた」という試合を何度も落とし、悔しい気持ちを存分に味わってきた。フランスのジャマイカ戦、日本のトルコ戦、ドイツの豪戦、南アのパラグアイ戦。そろそろその逆があってもいい頃だった。それが澤という偉大な選手の選手人生に間に合ったのだから、これはほんとうに素晴らしい。男子日本代表は中田英寿の選手人生に、なんの達成感も得ることができなかったのだから。

試合後まもなくツイッターに、「その者青き衣をまといて金色の野に降りたつべし」と澤の写真が流れてきた。そうか、そういうことなんだなともう一度胸が熱くなる。おめでとう、澤と仲間たち。

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■11/07/18(月) □ US敗戦の弁を堪能
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米スポーツ局 ESPN のTVアナ(Bill Simmons)が、「女子W杯の日本はトーナメントを通じて世界最高レベルの技術を発揮していた、ポッドキャストをアップしたから聞いてくれ」というので探して聞いてみる。

「こんなにチャンスを逃していると、日本がくるぞ。いつも俺たちが相手にするように、熱いガッツで追いつかれるぞとずっと思ってたんだ。その通りになったよ」

「モーガンがレターマンショー(米の笑っていいとも)に出てスターになり女子サッカー人気が爆発するぞと思ってたんだけど、もう駄目だよね。違うストーリーになってしまった。米のサッカー選手はみんな金が必要なのに」

相手アナ「だけどさ、日本だよ。他の国なら『こいつらにだけは絶対負けねー』とも思うけど、日本にはそんな感情が起きてくるわけないよね。最初はUSAがボコボコにしてるから、日本のシンデレラストーリーもここで終わりだなと思ったんだけど、まさかあそこからカムバックしてくるなんてねえ」

それが日本のハートなんだよ。そうやって働き、そうやって生き、そうやってスポーツをプレイするんだ。サッカー男子代表だってそうじゃないか。不屈の精神で突き進むんだ。尊敬に値するよ」

「アメリカ社会は日本のそういうひたむきさをやや失っていると思うよ。それに日本に起きたあの厄災を思うと、やっぱり負けてもあきらめがつく相手があるとすれば、日本だったよね」

なかなかいいことを言う :-)。米国スポーツ狂の心痛がじかに伝わり実に面白い。こういう対戦国ポッドキャストをわざわざ聞く気がするのも、勝ったからこそ。わはは。本当にありがとう、キャプテン・サワと仲間たち。

このポッドキャストはその後、「MLSクラブは各チーム1名女子代表選手を入れるべきだ。モーガンが来たら人気が出るぞ!」「いやお前、モーガンなら人気も出ようが、他の選手だったら...」とフモフモに脱線していきました :-)

2011/07/10

女子W杯・わかってもらえるさ

「陽光と風のエリア」「日本文化紹介の難しさ」「ニンテンドーDSの完成形」「ワイルドプレイの綱渡り」「でかいぞチケットトゥライド Euro」

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■11/06/30(木) □「陽光と風のエリア」
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山川健一のツイッターアカウントが見つかった。「クロアシカバーの悲劇」「マギーメイによろしく」「みんな十九歳だった」なんてタイトルが出てきて、強烈な懐かしさにうあとうめき声が出る

東京で最も煮詰まり先が見えない生活をしてた80年代末、彼のロックとバイクのエッセイは俺と弟の教則本だった(小説とバンドはイマイチだったが)。山川の言葉とストーンズとRZを食って、俺は井の頭で生きていた。彼のように言葉で世界と組み合って自由を稼ぎ出し暮らしていきたいと思い、バイク雑誌の編集部などにも行ってみた。

ツイートを読むと山川は東北の大学でなにかを教えたりしているらしい。長い年月が経っているけれど、原発反対の発言にボブ・マーリィの言葉を引用する彼は、なにも変わらない。

バイクにテントを積み「陽光と風のエリア」に行く日を思い描いて、高円寺で汗を流していた追憶の1989年が胸に甦る。カナダにいると「クソ暑い、山に行きたい」という欲求は起きてこないが、自分の人生に対する焦燥感はいまだ解消できていない。

この夏家族がイングランドに行ってる間俺は、15年ぶりに1人でテント旅行に出ようと思っている。BCの夏にも「陽光と風のエリア」みたいなものはあるだろう。1冊だけカナダに持って来た山川の文庫本を持って行こう。

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■11/07/01(金) □ 日本文化紹介の難しさ
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カナダデイフェスティバル。地元 PoCo 市のフェスは3度行ってそんなに盛り上がったこともないので、今年は別の町のやつに行こうかなと思っていると、ちょうどAYさんたちが日本関連の催事を隣町コキットラムでやるというのでそちらに行くことにする。フェスティバルの内容はコキットラムも似たようなものだったが、やはり PoCo より大きな街なので規模が大きかった。

ロシア屋台のピロシキを食べた後、日本カルチャー展示兼大震災支援サイトを開くAYさんのテントを訪問する。こういう場で日本文化紹介というと折り紙と七夕くらいしかないのがちと地味で、訪問者はパラパラという感じ。日本食を出しゲームやアニメを見せればテントが大入り満員になるだろうが、商売じゃないんだからそうもいかんしな。

カナダに最も影響を与えている異文化は、アニメ・ゲームや様々な商品を経由した日本のサブカルに違いない。中韓物事は多々あるが、それは人口比の多い中韓移民とその子孫のためにある。どうして日本移民は中韓より少ないのだと聞かれることがたまにあるが、それは日本のほうが中韓よりも面白く、離れがたい国だからに決まっている。しかしその日本の面白さをこうしてお祭りでカナダ人にプロモートするなんてことは、やりようがないんだよな。

萌は最初は戸惑っていたのだが、やがてテーブルの内側に入り、後は帰るまでずっと来客に折り紙を指導していた。

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カーラジオで John Mayer - No Such Thing という歌を聞く。「高校の廊下を走り抜け、腹の底から叫びたいよ」。いい歌だな、なんかモンキーマジックみたいな...と思い、MONKEY MAJIK ってクオリティ高いよなあと改めて思う。

MONKEY MAJIK ってなんで母国カナダで売らないのかな。カナダのラジオでこんなふうに流れていてもまったく違和感なく受け入れられる音なんだけれど。というか、ラジオで流れているほとんどのカナダ製ポップスより MONKEY MAJIK のほうがいいと思うのだが。

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■11/07/02(土) □ ニンテンドーDSの完成形
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今日は萌が非常に前向きでいい日で、朝からTVなど見ずに掃除を開始し、午後はずっとBRおばあちゃんのクッキングを手伝っているので、学校でのケンカ謹慎でずっと保留になっていた誕生プレゼントの DSi XL オープンとなった。そんなにほしかったのかと驚くほどの大盛り上がり。

08 年に日本でもらった DS がすでにあるし、KTの DSi を見てもさほど驚いている様子もなかったのだが、実はあの落書き写真だのボイスチェンジャーだのをやりたくて仕方がなかったらしい。


こういうのって子供だましだよなと
思ってましたが、

大人が作るとこれほどまでに低レベル
(庭のたらいで行水の図)
しばらくは落書き写真などをする萌を半ば呆れて見ていたのだが、落書きだけでなく顔のモーフィングだの顔近似性診断だの手書きアニメ制作だのといった新しい遊びをやり始め、そうかこれはハードとソフトが一体化した新しい遊び開発ツールなのかとこの3世代目 DS ハードの優秀さに気がついた。単に安いデジカメと顔画像デフォーメーションが入った子供ダマシと思った俺が間違っていた。ニンテンドーがそんなケチなものを作るわけもなかったのである。

つまりこれが DS ハードの完成形なんだな。俺はコントローラがでかすぎて繊細な操作感に欠ける Wii よりも DS の方が好みなので、その究極の形態がうちに来たということにけっこうな満足感がある。よかったよかった。

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■11/07/03(日) □ ワイルドプレイの綱渡り
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LDから萌へのクリスマスと誕生プレゼント合体として、メイプルリッジのワイルドプレイというものに行く。森の中に張り巡らされたワイヤー上を滑車を使い滑りまくるという遊びで、日本で遊んだ忍者村の高品質バージョンである。俺はカメラ係。


これで7mの高さがわかるかと
で行ってみると信じがたいほど高いところに綱渡りの綱がある。小学生が行けるレベルで7mというから、3階建ての建物の屋上くらいか。最上層は10mありそうで、これはもう見てるだけで嫌になってしまう高さであった。

安全確保のハーネスにはフックが2つあり、どんな場合でもそのうち1つは繋がっているというロッククライミングのロジックで安全は保たれているのだが、それにしたって高い。もし萌が夢中になりフックを一瞬かけ忘れ、そこでもしバランスを大きく崩したらと思うと、胃がきゅーとするのである。

まあ実際萌は人並み以上に慎重なのでそんな心配はなかったのだが、ちゃんとフックをかけているか俺からもLDからも見えない場面も多々あって、そういうときはまことにハラハラした。まあ自分が子供でも、間違いなくこれは楽しんだだろうな。ホントすごかった。

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■11/07/07(木) □ でかいぞチケットトゥライド Euro
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ようやく誕生日、ついに「チケットトゥライド Euro」をゲットした。家で実物をやってみると、オンライン版ではわからなかったゲームの物理的アスペクトをあれこれと実感する。

◆チケットを伏せて置くと目的地を忘れてしまう
◆トレインカードはとても手で持ちきれず、隠し持つと分類できんので結局表向きに置いてしまう
◆ボードがえらいでかいので、カードデッキをどこに置いても反対側の人は苦しい
◆ボードを逆から見る側が視覚的に不利(参照用マップを印刷して対処)


といったあたりに戸惑う。手元を隠す衝立とカード立てとゲーム用テーブルが猛烈に欲しくなる、初の大型ボードゲームです。今のところ人の手札など見てる余裕はないので、隠さなくても実害はないが。

ルールの説明でトンネルは意外や一発で通じたが、駅舎の説明で「使わなかった駅数×4を後で加点」というのがまだるっこしい。めんどくさいので【使ったらマイナス4】と説明する。ルール的には同じことだろう。

チケット達成点も、「ルールではゲーム終了時に計算するとなっているが、完成時に発表したほうが盛り上がるので、まあ各自自由に」とする。完成したら当然うれしいので、萌も俺も発表しオオと拍手して盛り上がる。この即時発表のデメリットは完成していないチケットがどこかわかってしまうことだろうが(特にロング)、ブロックを狙わないフレンドリー家族ゲームでは問題はない。真剣勝負をするようなメンバーなら、6枚しかないロングチケットなどいずれにせよバレるだろうし。

でオランダからスイスまでを網羅的に制覇した萌が俺の中欧路線を分断するという初戦から願ってもない面白い展開になり、俺は駅を使わねばならず苦戦となったのだが、最後に萌がカディス-ダンジグの20点をつなげなかったことが判明し、俺の勝ちとなった。「つまりベルリン-ダンジグを自分でつないで、フランクフルト-ベルリンはステーションで借りれば16点取れたんだよ」と説明すると、あーそうかと納得していた。この駅舎はPC相手にやってるときはスリルを減じるヌルいルールだと思ったが、やっぱりビギナーにはいいルールだわ


This is the best game
ever invented!
萌は前のめりになり、自分の番が待ち切れないと何度も口にし、「これは史上最高のゲームだよ!」と期待通りに盛り上がった。必要なトレインカードをうまく揃え、路線を作り上げていくというのは子供にも大人にも鉄壁の面白さで、たまらなく楽しいらしい。俺もわざとつなぎにくい難しいチケットを選ぶなどしてひそかに自分にハンデを課しつつ、興奮に体温を上げながらトレイン駒を打つ。カルカソンヌの興奮再び、萌の反応を見ればそれ以上だな。

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晩飯前にもう1ゲーム。今度は萌はまず大量にカードを集め、そして一気に長距離チケットをつなぎ快勝。そして3戦目はちょうどやってきたMK夫妻との4人戦となり、萌が大量カード集め作戦に失敗し大敗。萌はカルカソンヌでも、みんなとやると鮮やかに勝とうとしすぎて墓穴を掘るのである。俺はハンデとしてロングを取らずにプレイしていたので、ゲーマーMKにまんまと勝たれてしまった。奴の路線だけはブロックすべきだったのだが、俺はまだ本物ボード上ではそこまでゲームが俯瞰できない。

多人数戦だとどうしてもみな駅舎使いまくりになるのだが、「ここを自力でつなぎあそこに駅舎を置けばつながる」とパズルを解く感覚になり結構面白い。そして「ステーションを使ったら路線の持ち主に4ポイント払う方が面白い(※)」とMKがいう。実は俺もそうしたいと思っていたのだ。珍しくハウスルールで奴と意見が合った。次からそうしよう。
(※)次の日気づいたのだが、4点を敵に払うと相対点差はマイナス8になり、ペナルティが大きすぎてショートチケットではマイナスにすらなりかねない。安易な駅舎利用を抑制し、路線早い者勝ちのスリルを保つ上ではいいと思うが、相対点差8点はでかすぎるかも。要テストプレイ。

というわけでカルカソンヌ以上に大ウケの初日であった。萌が夢中になってくれたので、今後カルカソンヌ並みにうまくなってくれたら最高だな。

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■11/07/09(土) □ 女子W杯 - わかってもらえるさ
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【女子W杯ドイツ-日本】すごいブーイング。日本は、技術的には自分たちは格下ではないと自信を持った立ち上がり。よしよし。同じメンバーで来ているがゆえのフィジカルの不安が出る前に、ペースを掴んでおきたい。

軽い接触で次々にドイツ選手が倒れ、1人は怪我で交替。「ドイツは昨夜長時間シュート練習を行った」とのことで、地元ゆえのプレッシャーでオーバーワーク気味のコンディションになっているのかもしれない。うわ、澤さまがフランクフルトな容貌のおばちゃんにエルボーを食らった。やめろ。しかし澤率いる効率のいいプレス網によりポゼッションは日本が上です。悪くない悪くない。

パワープレイで来られると、やはりゴールマウスで紙一重のクリアが続く。これを避けるには日本がポゼッションをキープするしかない。落ち着いて、ヘンな横パスを取られずセーフに行けば大丈夫。

30分、永里こぼれ球をフリーで外す!! く~。返す刀ですごいミドルを打たれわずかに外れる。ふー。しかし押されてはいない。日本は試合をコントロールできている。ドイツはFWがプレスをかけていない。ホームのスタジアムが静まりかえるこの流れが戦略とも思えないので、フィジカルがやはり落ちてるのではないか。前夜の練習しすぎで。

日本の保持率58%と出る。やはり思い通りにプレイできている。よし。

【前半終了】澤が一度前に抜け出しボールを呼ぶが通らなかった。澤はいる場所、プレスをかける場所、ボールを流す場所と実に間違いがない人で、ミスはあっても間違いはしない人らしい。その彼女が得点の匂いに上がっていけば、間違いなく点は取れる。いつかきっとそんな日になる。もうすぐなんだ。

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カナダTV解説は澤が上がっていたもう1つのシーンをスロー解析し、「日本のMFが澤が上がっていることに気づかず後ろに戻してしまった。これをやっていれば高いポゼッションは保てるが、勝つにはここを見逃さず勝負に出なければならない」とコメント。その通り。

【後半】ドイツが圧力を上げてくる。またゴールマウスでDFが紙一重のクリア。ムトーさんが言っていたけれど、女子にとって男子と同じゴールマウスは広すぎて、GKが2人いないと守り切れないのかもしれない。日本のGKは特に下手っぴではある。

大野と丸山はキープしてチーム全体が上がるのを待たねばならないのに、苦しいので前に進み無為に失ってしまう。我慢するんだ。我慢するんだ。ここであきらめちゃ、奴らの思う壺。―――イワブチ IN!

カナダTVアナはドイツ女子がいかに強いプレッシャーと戦っているのかと延々5分くらい喋っている。ノイローゼで代表を辞退した選手がいるとかそういう話。第3者がそういう敗因っぽいものを話しだすくらい、ドイツは精細を欠いている。

完全なシーソーゲームです、と加アナ。しかし日本の守備に穴が開いてきた。苦しいのはお互い同じだ、我慢するんだ。キープするんだ。

岩渕初のドリブルから、ハーフチャンスを宮間がミドル。惜しい。あの形を続けたい。ポゼッションは高いが位置が後ろすぎる。長いパス数本で危険なところまでボールを運べる相手は楽である。ドイツ怒涛の放り込み、耐えて耐えて跳ね返す日本。そして延長へ。

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【延長】ふー。ボールをどうにもキープできない丸山に、「交替で入った丸山はゲームに入りきれていない」と的確な加アナ。2枚の交代が早すぎしかも外れ気味だったので、あと1枚の交替で状況を変えられる気がしないというのが正直なところ。

日本にミスが頻発し、ドイツが攻め込んでくる。しかしこれで岩渕がカウンターに走るスペースもまたできる。我慢して前に運ぶんだ。

元カナダ代表主将デヴォスが、日本のフィジカルが鍵になってきているね、と日本の体力限界を示唆。しかしドイツのサッカーがいいわけでもないんだ。我慢するんだ。走れる奴にボールを渡すんだ。

そして澤のロブ→丸山! ゴール! ―――完璧。完璧すぎる。鳥肌。

ヘボを重ねていた日本GKもここに来て好セーブを見せる。よし。行ける。行けるぞ。宇津木 In、あと4分。ここまで放り込みを守り切れたんだ。最後の4分が前より難しいわけではない。大丈夫。

【試合終了】やっ・た。やってくれた。

このサッカーのよさが、いつかきっと君にも、わかってもらえるさ。いつかそんな日になる。僕はなにも間違ってない。もうすぐなんだ。

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この試合はストイチコフのブルガリアがドイツを倒した94W杯準々決勝に匹敵する。あの巨象が倒れたようなショックを、ついに日本が成し遂げてしまったのだ。いつかそんな日になる。僕はなにも間違ってない。もうすぐなんだ。