「雨本降り停滞日」「アービュータスの島」「バスカーたち」
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■14/08/13(水) □ 雨本降り停滞日
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今日は雨。寒い。静かにボードゲーム「中世の建築士たち」「グレンモア」などを楽しむ。グレンモアは久々にやったが、牛羊を集めることが好きな俺はどうしても序盤に木と石を他に奪われ、これらがないとその先の買い物ができないので村が発展せず負ける。家畜農家必敗の法則である。
3人戦だと牛羊に固執していなくても木と石が手に入らないことは往々にしてあり、そこを金で補うと非常な不利となる。そこでその場合の家畜農家/石木のない不運プレイヤー救済策をハウスルールでずっと考えている。思いついたのは
①資材2個で必要資材1を取れるというカタン風ルール
②小さな市場や家畜市場で得られるのを4点の代わりに3金とする
という2案。今度やるときに試してみたい。
◇
ソルトスプリングに1週間も行ってやることがあるのかなと計画時から思っていたが、雨となるとやはりやることがないな。各種工芸家のスタジオへ行きお金を払いワークショップに参加するくらいしかやることはない。これはかなり高額なものなので、ちょいと気軽にというわけにはいかない。この島の工芸家たちは作品収入と夏の体験ワークショップ収入の両輪で暮らしてるんだろう。
萌たちは雨の中散歩に出て写真を撮ってきた。
◇
普段は階下に住むM母と同フロアで毎日過ごしていると、いろいろと驚きの発見がある。夜8時に就寝時間を知らせる超大音量アラームが彼女の寝室で鳴るのだが、そんなアラームがなぜ必要なのか不明なのはともかく、耳の遠い彼女にはこれがなんと聞こえない(笑)。毎夜萌が止めに行っている。
また冷たい食べ物が苦手なのだそうで、ポテトサラダ等を電子レンジで温めて食べておられる。一番驚いたのは毎夜寝る前に翌朝飯のシリアルにミルクを注ぎキッチンテーブルに出したまま寝ることで、夏なのにまる一晩常温じゃアカンだろうと思うのだが、何十年もこうしていて悪くなったことはないんだそうだ。ホント? ミルクってそんなに大丈夫なものなの?
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■14/08/14(木) □ 観光農場巡り
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雨はやんで薄曇り。本日は農場訪問をメインに島をぐるりと廻る本格的な観光ドライブとなった。まず南岸の海へ行ってカヤックやボートを眺めながらサンドイッチをいただき、島中の観光農場やベーカリーを巡る。Mがマップをきっちりリサーチしていたのですべてが予定通りにうまく行った。
観光農場はどこも無人の売店に生産物が置かれ、客が金を置いて釣り銭を取り品物を持っていく日本の田舎みたいなシステムになっている。これで金を持って行かれないのだから、カナダ善男善女の善性は日本と変わりないのだ。
しかしまあ農場訪問は楽しいが、市価の2倍もする生産物をわざわざ買いに行くのはそのクオリティに加え巡り歩きが楽しいからであって、それぞれの農場はその目的地アイコンとして存在している。M母とMが盛り上がる試食や購入行為自体には俺と萌は乗れずにいた。
日本のセンスだと田舎の直売所は新鮮割安なのだが、カナダでは「ローカルの生産物=高くても高価値」となる。だから漁師船の魚直売も高い。高くてうまいなら別に特別ではないではないかと思う。この丘の上のベーカリーは駐車場が満杯だったが、うまいパンがほしいというよりも丘の上に薪でパンを焼くベーカリーが建っているというのが素敵だから千客は万来しているのだろう。
要はアートの島ソルトスプリングの森の店・工房というプレミアム感に人々は高揚するわけだが、俺にとってこの島で大切なのはそこではない。道だ。やわらかな景色を眺めつつ、アップダウンとツイストに満ちた島の道をゆるゆると中速で車を流しカーブをきれいに曲がっていくことが、この島で最も気持ちのいいことだ。
それはバイクで日本の山をツーリングしていた時の幸せに、カナダにおいて最も近い。小さな島に合うのか日本の軽トラがたくさん輸入されトコトコ走っている。めっちゃ古いBMWバイクでバタバタ走ってるライダーとも話したよ。自転車ならもっと気持ちいいだろうからたくさん走っている自転車野郎&ガールズがうらやましくて仕方がないが、島なのでアップダウンが超きついのが明らかゆえ、俺は車でよし。
Mはここに住んで農場をやれたら素晴らしいと思わないかと力説する。うーんどうかなあと俺と萌は答える。ソルトスプリングは俺が行ったことのあるBC観光地で最もナイスだが、実際この島のナイスネスのほとんどは観光地らしいゆるい雰囲気と道にある。住んだらどうかはなんとも言えない。
◇
古いBMWバイクを見つけたフェリー港フルフォードは、5軒ほどの店が並ぶかわいい町だった。アンティークの錠前やらインド綿のスカーフやら、アジア圏に傾倒するヒッピー系の人々が好みそうな品物が狭い店内に何万点も詰め込まれた素晴らしい雑貨店があった。もう博物館と呼んでも過言ではないレベル。見ても楽しいし手軽な値段で買えるんだから素晴らしい。数年前に行った京都国立博物館の百倍楽しい。小1時間も店内をめぐり写真を撮りまくり、拝観料としてあれこれとかわいいものを購入した。
◇
この旅はほぼ全部の写真を標準レンズ MZ14-42mm で撮ってるのだが、やっぱり使いやすくてえらいレンズだなと思う。全部の描写がグレイトではないが、ヒットを連発している。単焦点 SIGMA 19mm なら近~中景のヒット率も長打率も上がるが、遠景は撮れなくなってしまう。遠景を見たままの迫力で捉えられる 42mm の気持ちよさはやはり捨てがたい。
クラシックBMW発進のこの写真も、ハンドルとステップの高さが絶妙で低速でくるっと曲がることが気持ちよさそうなこのバイクの美点を、離れた位置(33mm)からうまく捉えてくれたと思う。RZ250 を思い出させるポジションだ。あれは最高の街乗りバイクだった。
この旅で初めて使っている i-Finish もいい。同じものを撮って比較すると Vivid のほうが色がこってりし好ましく感じられるのでこれまでは Vivid を使っていたのだが、iF はオリンパスが言うように見た時のおおという気持ちを PC 画面上に蘇らせてくれることが多い。Vivid は色を濃く出すが、i-Finish は光を強調し絵がバリっとしていて立体感が出るからだろう。Vivid よりシャープネスが低く、柔らかく仕上がるのもいい感じだな。
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■14/08/15(金) □ アービュータスの島
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島の最終日、最後だからハイクでもしようと出かける。地図上では楽勝なルートに見えたのだが登ってみたら死ぬほど急峻で、途中で追い抜かれたローカルの人に聞けば頂上まで1時間だというので無理だと断念し、下界の海が見えるところまで登り写真を撮りヨシとした。
この島にはアービュータスという、真っ赤な樹皮が紙のように薄くきれいにピロ~とむけて美しい地肌を見せる不思議な木がたくさん生えている。BCメインランドでは見かけない木で、潮風を好む樹木なのかもしれない。
◇
そして本日の満潮夜8時を待って、宿の前の浅い入江で初めての2人乗りカヤックに挑戦。1人乗りは何度も乗り「面白いが前に進まない」という感想だったのだが、コイツは進むわ進むわ、まるで別の乗り物だった。最高。
考えてみれば2人乗り自転車と同じで走行抵抗は1人乗りと大差ないのにエンジン2倍なんだから、そりゃ進むよね。これだ。俺はもうこのスピードでしかカヤックには乗りたくない。それも漕ぐのが上手な萌と常にペアを組みたい。真っ暗で桟橋が見えなくなるまで交代でシュパーと滑走を楽しんだのです。
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■14/08/16(土) □ バスカーたち
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車に荷物を積み込んで1週間の宿を出る。さよならコテージ、さよならチキンたち。土曜のマーケットをまた見て歩き、ランチ。観光地価格のカレーはまあ予想通り、タイ/インド/日本のカレーを食べたことのない外国人が作ったカレーという味であった。マーケットは盛況だが、まあ買うようなものはないよなあ。たしかに初日に野菜をここで買えたらよかっただろうな程度で。
カヤックを取り込むショップの兄さん、カナダじゃ珍しいうずらの卵、美しい古本屋等の写真を撮って旅は終わり。マーケット(朝市)ではきれいな女の子がバンドネオンを弾いてたのだが、写真を撮るとギャラを払わねばならないので撮れなかった(笑)。
カナダのマーケットに行くとギターを弾き歌う人や、今日の美しいバンドネオン奏者のように楽器を弾き小銭をもらうバスカーと呼ばれる芸人が必ずいるのだが、客の財布が緩いこういう観光地ではけっこうな勢いでお金をもらっている。
しかしこの人たちは別に人に自分の音を聞かせたくてやってるわけじゃないので、俺はその音を聴く気も起こらない。今日は「7歳の天才」と書かれた少年がちゃんとコードを弾いて「サージェントペパーズ」を歌いごっそり稼いでいたが、少しも楽しそうではなかった。楽しくないなら猿まわしじゃん。
日がな一日不機嫌そうな顔で屋台に座り自分の CD を売ってるセミプロらしいフォークシンガーもいるのだが、こういう人も理解に苦しむ。声を出して人を集め自分の歌を聞かせたくはないのかね。ああいう人にとっての音楽ってなんなんだろう。ソルトスプリングは音楽家の島だから引っ越したらトモも地元ミュージシャンとジャムセッションをやれるとMがいうが、BC の田舎系音楽家ってどうもああいうノリの悪いイメージがあるな。
◇
こういう稼ぎのいいマーケット等でバスカーをやるには、しかるべきところに届け出て技量を示しお金を払いライセンスを取る必要があるらしい。萌とその友達も一時バスカーをやって稼ぎたいといい、友達のお母さんがライセンス料は払ってあげるわとか言って盛り立てていたのだが、よしとけばいいのにと俺は思っていた。
人前でやるほど練習してないじゃん。若い女の子が2人で歌えばそりゃそこそこ稼げるだろうけど、そんなの本当の労働や本当のバンド活動に比べたら負うものが少なすぎてフェアではないと思う。そんなやっつけのカジュアル金儲けシンガーズじゃなくて、ちゃんとバンドをやってくれたまえよ。それならサポートするよムスメたちよ。
2014/08/23
2014/08/22
ソルトスプリング再再訪①グリーンゲイブルズみたいな宿
「飯ごう炊飯」「島でも暑い」「羊牧場ドライブ」
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■14/08/09(土) □ グリーンゲイブルズみたいな宿
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本日から1週間Mの夏休暇、ソルトスプリングアイランドへ。朝からフルスピードでラストミニットパックをして出発、双眼鏡で遠くの景色を楽しみながらフェリーで海上を行く。遠くが見えると楽しい。船内で同じ島に滞在する萌の小学同級生とばったり会った。カナダは広いが、長距離移動せずに行ける旅先は限られているから皆似たようなところに行くのだ。
コテージはバードウオッチングができる場所なので絶対必要だと昨日Mに言われ双眼鏡を買ったのだが、Tasco の 16 倍(16x32)で、覗いてみた感じカメラの 300mm の倍以上という拡大率。調べてみると 800mm に相当するらしい。素晴らしい。クオリティはばっちりである。
島に着くやいなやM母が早くも疲れたといい、楽しみにしていたマーケットはぐるりと通り過ぎるだけとなる。まあ特に珍しいものが売ってるわけでもないので見て回るだけでいいんだけど。食料買い出しの間俺と萌は広場のフリーコンサートを楽しんでいた。ソルトスプリング島はヒッピーの島として有名なのだが、公園のフリーコンサートのバンドから出てる音はクールでダンサブルなクラブ系で意外だった。しかし踊ってる連中はやっぱりこうだった(笑)。
16:00 コテージ着。農園の真っ只中にある小さな家で、売りである宿前の入り江は木で見えないが、昔の農家風でなかなか素晴らしい。庭にはチキンの大家族がおりコッコッコと寄ってくるし、虫の声がずっとしている。赤毛のアンのグリーンゲイブルズに泊まっているような心地よさがある。森を見下ろすデッキに座り夕涼みしていると、海に近いので夕方には肌寒さを感じるほど。いいところです。
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■14/08/10(日) □ 飯ごう炊飯
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どうしたことか昨夜萌が食あたりで不調となり――他の家族は無事なので原因不明――、外は今年最後となるだろう熱波で暑すぎることもあり、宿で静かに過ごす一日となる。宿の前は入り江になっており、前庭を降り見に行くと昼間は泥の海で、夕方にたっぷりと水が入ってくる。すごい。宿に備え付けのタイドテーブル(水位表)を見ると、ハイタイドの時間は毎日えらい違う。どういう法則性があるのか見て取れない乱数みたいな数値になっている。
萌の腹具合もあり、本日はライスと地元の魚で軽い和食とした。飯ごう炊飯は1人で行ったキャンプ以来久しぶりだが、ふっくらと柔らかめにうまく炊けた。底が予想以上に焦げついていたので、最後の方の炊き上げはとろ火にすべきだったかな。
扇風機を見つけて設置し、魚定食を一気に食う。うまい。米のコゲ以外は完璧。コゲはもう一度トライすればもっとうまくいくと思う。萌もライスと魚を少しずつ食べられた。食欲が戻ればすぐに元気になるだろう。
キャンプナイフと持ってきた醤油と飯ごうで完璧な夕飯を作れたことに満足する。俺はキャンプでもこれだけのものを作れるわけだ。萌の病気と暑さ以外は快適な休暇。
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夜、M萌と一緒にサイエンス番組を見た。俺は家にいると米加の番組をぜんぜん見ないので(日本 TV を購読する前からそうだった)、珍しく TV で一家団欒という雰囲気になる。Mが寝たあとも萌ともう1番組。コメディアンが土木作業を体験する番組。面白くはないが興味深い。お互い PC と iPod に没頭するよりも、こうして何かを一緒に見るほうがやはりいいことだよなあ。
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■14/08/11(月) □ 島でも暑い
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3日め。赤毛のアン的田舎ライフはやはりなんともいえない滋味がある。毎朝隣の家のチキンがコケコッコと起こしに来てくれる。お、お前……かわいすぎる。
萌の体調がほぼ回復しついに初の外出となったが、直近の町ベスビアスはなにもなく、炎天下岩場のビーチを二ヶ所歩いて疲弊し帰宿。32度のヒートウェーブが続いており、昼間の活動はきつい。島の海岸はやはり基本的に岩ばかりという感じ。
カナダのバカンス地は別に避暑地ではないので、どこへ行っても気温は地元バンクーバー地域と特に変わらず(ウィスラー等の高山に行っても内陸気候なので昼間は気温がガンガン上がる)、熱波下だと日差しは厳しい。
地元にいるときは暑さの中わざわざ出歩いたりはせず家にいるので「軽井沢に住んでるみたいだ」とありがたい思いをしているが、観光客となると暑くても出歩かなければならない。観光はハードワークなのである。去年の赤毛のアンの島 PEI も陽射しが痛くてハードだった。
◇
この旅では最近あまり使ってなかった PEN の標準レンズ MZ14-42mm を使ってるのだが、これと標準モードである i-Finish で撮った写真が非常にいい。初日に使った Vivid の色がよくなかったので試したのだが、明らかにこっちのほうがよく感じる。やっぱりオリンパスは記憶色を狙ったこのモードと標準レンズの組み合わせを元に PEN をチューニングしてるんだろうなと思わせる。この旅はこの組み合わせで撮りまくってみよう。
この旅行の楽しみはこれまでのところ写真と双眼鏡に尽きるな。小さなフェリー港ベスビウスから海をはさんで 5km ほどの距離にあるクロフトンの町の道路と車が見えるのにはぞくぞくした。遠くが見えるのってほんとに楽しい。
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うちは旅行時いつもキッチン付きのコテージ/モーテルに泊まるのだが、米加どこでも調理器具がひどい。宿の持ち主はここで調理など絶対せんので足りないものだらけだし(ここでは野菜を洗うボウルや調理ハサミがない)、包丁は切れないしまな板は1枚しかない。フライパンは薄くフライ返しはない。
暑い台所でこういう劣悪道具で調理していると、何を作るにも普段以上の労力と時間がかかり出来栄えは悪いわけで(うまい人はこれでもうまく作れるだろうけど)、非常に消耗する。昨日は持ってきた飯盒でおいしくライスが作れたのがうれしかったんだけど、今日は肉も野菜も全部失敗だった。ガックシ。
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■14/08/12(火) □ 羊牧場ドライブ
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10時を過ぎてもまだ萌とM母が起きてこず、半日が終わってしまった。Mは本、M母はクロスワード、萌は iPod で「進撃の巨人」再視聴、俺は PC で写真整理。全員が家にいるのと変わりない毎日である。なのに宿代はかかってるのだから俺はこれでいいのかとジリジリするのだが、家から離れこの絶景の中何もせずにいるということがかけがえのないリラックスなのだとMは力説する。
M母もM姉夫妻も似た傾向はあって、リラクゼーションと食べることがいつの旅も最大の目的となっている。旅先でイベントなく過ごしていると俺の頭の中はやったこと/コスト比がカチカチとタクシーメーターのように上がっていきリラックスできんのだが、旅行好きなカナダ人のバケーション観は「何もしないという快適さ=プライスレス」でメーターが精算済みになっているようだ。
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午後はソルトスプリング島の北端をゆるりとドライブ。小さな島なのでゆっくり回っても1時間かそこらで回れちゃうゆるドライブ。水の澄んだ入江と森の別荘地と牧草地帯が続き、なかなかいい景色である。鹿が非常に多く、民家の畑はがっちりネット等で囲まれている。鹿害が大変らしい。
晩飯用の肉を買いに羊牧場に行く。その牧場売店の骨董品の向こうに、うちのかわいいイエロースズキが見えたので撮る。ワイングラスがいい色に出た。i-Finish はいい。
その後通りかかった石垣と沼を持つ邸がすごかった。かつての豪農の館という感じ。でその豪農領主の沼でおっさんたちが4人、ラジコンヨットレースをやっていた。無音で水上をすいすい走る小さなヨットたち。ちょ、ちょっとこれはと車を止め見物する。なんというのどかな島なのか(笑)。 こうして行き先と時間を決めずゆるゆると走り、見たいものがあればすぐさま止まれる旅はやっぱり楽しいな。車が少なく交通が遅い島ではそういう旅ができるのがありがたい。
しかしM母は景色や自然に興味がなく、美しい森や牧草地帯を走る車の外は見ず顔を伏せ島ガイドを熟読し、皆が景色におおと感動しているタイミングで突如「このレストランはよさそうよ!」とか大声で提唱してくれる。なんせハワイに行っても水に入らず火山を見なかったというマイペースな人なのである(笑)。
◇
写真は全写真 WB を間違えて「日陰」にしていた。赤すぎる。あとで青側に大幅に補正したが、その分色が褪せてしまった。ガックシ。しかし i-Finish の色の出方はいい。牧場でのエリオとワイングラスなんて、これまでに撮った写真の中でも出色の色だと思う。
ほんといいカメラだなと久々に PEN の喜びを感じている。MZ40-150mm を買ったら手振れ補正が弱いという弱点が露呈して写真モチベーションにやや影を差していたのだが、標準レンズでも撮り方と後処理ででいい結果が出せると気がついたあたりから再燃した。そしてこの旅では i-Finish でさらに可能性が広がっている。
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■14/08/09(土) □ グリーンゲイブルズみたいな宿
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本日から1週間Mの夏休暇、ソルトスプリングアイランドへ。朝からフルスピードでラストミニットパックをして出発、双眼鏡で遠くの景色を楽しみながらフェリーで海上を行く。遠くが見えると楽しい。船内で同じ島に滞在する萌の小学同級生とばったり会った。カナダは広いが、長距離移動せずに行ける旅先は限られているから皆似たようなところに行くのだ。
コテージはバードウオッチングができる場所なので絶対必要だと昨日Mに言われ双眼鏡を買ったのだが、Tasco の 16 倍(16x32)で、覗いてみた感じカメラの 300mm の倍以上という拡大率。調べてみると 800mm に相当するらしい。素晴らしい。クオリティはばっちりである。
島に着くやいなやM母が早くも疲れたといい、楽しみにしていたマーケットはぐるりと通り過ぎるだけとなる。まあ特に珍しいものが売ってるわけでもないので見て回るだけでいいんだけど。食料買い出しの間俺と萌は広場のフリーコンサートを楽しんでいた。ソルトスプリング島はヒッピーの島として有名なのだが、公園のフリーコンサートのバンドから出てる音はクールでダンサブルなクラブ系で意外だった。しかし踊ってる連中はやっぱりこうだった(笑)。
16:00 コテージ着。農園の真っ只中にある小さな家で、売りである宿前の入り江は木で見えないが、昔の農家風でなかなか素晴らしい。庭にはチキンの大家族がおりコッコッコと寄ってくるし、虫の声がずっとしている。赤毛のアンのグリーンゲイブルズに泊まっているような心地よさがある。森を見下ろすデッキに座り夕涼みしていると、海に近いので夕方には肌寒さを感じるほど。いいところです。
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■14/08/10(日) □ 飯ごう炊飯
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どうしたことか昨夜萌が食あたりで不調となり――他の家族は無事なので原因不明――、外は今年最後となるだろう熱波で暑すぎることもあり、宿で静かに過ごす一日となる。宿の前は入り江になっており、前庭を降り見に行くと昼間は泥の海で、夕方にたっぷりと水が入ってくる。すごい。宿に備え付けのタイドテーブル(水位表)を見ると、ハイタイドの時間は毎日えらい違う。どういう法則性があるのか見て取れない乱数みたいな数値になっている。
萌の腹具合もあり、本日はライスと地元の魚で軽い和食とした。飯ごう炊飯は1人で行ったキャンプ以来久しぶりだが、ふっくらと柔らかめにうまく炊けた。底が予想以上に焦げついていたので、最後の方の炊き上げはとろ火にすべきだったかな。
扇風機を見つけて設置し、魚定食を一気に食う。うまい。米のコゲ以外は完璧。コゲはもう一度トライすればもっとうまくいくと思う。萌もライスと魚を少しずつ食べられた。食欲が戻ればすぐに元気になるだろう。
キャンプナイフと持ってきた醤油と飯ごうで完璧な夕飯を作れたことに満足する。俺はキャンプでもこれだけのものを作れるわけだ。萌の病気と暑さ以外は快適な休暇。
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夜、M萌と一緒にサイエンス番組を見た。俺は家にいると米加の番組をぜんぜん見ないので(日本 TV を購読する前からそうだった)、珍しく TV で一家団欒という雰囲気になる。Mが寝たあとも萌ともう1番組。コメディアンが土木作業を体験する番組。面白くはないが興味深い。お互い PC と iPod に没頭するよりも、こうして何かを一緒に見るほうがやはりいいことだよなあ。
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■14/08/11(月) □ 島でも暑い
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3日め。赤毛のアン的田舎ライフはやはりなんともいえない滋味がある。毎朝隣の家のチキンがコケコッコと起こしに来てくれる。お、お前……かわいすぎる。
萌の体調がほぼ回復しついに初の外出となったが、直近の町ベスビアスはなにもなく、炎天下岩場のビーチを二ヶ所歩いて疲弊し帰宿。32度のヒートウェーブが続いており、昼間の活動はきつい。島の海岸はやはり基本的に岩ばかりという感じ。
カナダのバカンス地は別に避暑地ではないので、どこへ行っても気温は地元バンクーバー地域と特に変わらず(ウィスラー等の高山に行っても内陸気候なので昼間は気温がガンガン上がる)、熱波下だと日差しは厳しい。
地元にいるときは暑さの中わざわざ出歩いたりはせず家にいるので「軽井沢に住んでるみたいだ」とありがたい思いをしているが、観光客となると暑くても出歩かなければならない。観光はハードワークなのである。去年の赤毛のアンの島 PEI も陽射しが痛くてハードだった。
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この旅では最近あまり使ってなかった PEN の標準レンズ MZ14-42mm を使ってるのだが、これと標準モードである i-Finish で撮った写真が非常にいい。初日に使った Vivid の色がよくなかったので試したのだが、明らかにこっちのほうがよく感じる。やっぱりオリンパスは記憶色を狙ったこのモードと標準レンズの組み合わせを元に PEN をチューニングしてるんだろうなと思わせる。この旅はこの組み合わせで撮りまくってみよう。
この旅行の楽しみはこれまでのところ写真と双眼鏡に尽きるな。小さなフェリー港ベスビウスから海をはさんで 5km ほどの距離にあるクロフトンの町の道路と車が見えるのにはぞくぞくした。遠くが見えるのってほんとに楽しい。
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うちは旅行時いつもキッチン付きのコテージ/モーテルに泊まるのだが、米加どこでも調理器具がひどい。宿の持ち主はここで調理など絶対せんので足りないものだらけだし(ここでは野菜を洗うボウルや調理ハサミがない)、包丁は切れないしまな板は1枚しかない。フライパンは薄くフライ返しはない。
暑い台所でこういう劣悪道具で調理していると、何を作るにも普段以上の労力と時間がかかり出来栄えは悪いわけで(うまい人はこれでもうまく作れるだろうけど)、非常に消耗する。昨日は持ってきた飯盒でおいしくライスが作れたのがうれしかったんだけど、今日は肉も野菜も全部失敗だった。ガックシ。
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■14/08/12(火) □ 羊牧場ドライブ
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10時を過ぎてもまだ萌とM母が起きてこず、半日が終わってしまった。Mは本、M母はクロスワード、萌は iPod で「進撃の巨人」再視聴、俺は PC で写真整理。全員が家にいるのと変わりない毎日である。なのに宿代はかかってるのだから俺はこれでいいのかとジリジリするのだが、家から離れこの絶景の中何もせずにいるということがかけがえのないリラックスなのだとMは力説する。
M母もM姉夫妻も似た傾向はあって、リラクゼーションと食べることがいつの旅も最大の目的となっている。旅先でイベントなく過ごしていると俺の頭の中はやったこと/コスト比がカチカチとタクシーメーターのように上がっていきリラックスできんのだが、旅行好きなカナダ人のバケーション観は「何もしないという快適さ=プライスレス」でメーターが精算済みになっているようだ。
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午後はソルトスプリング島の北端をゆるりとドライブ。小さな島なのでゆっくり回っても1時間かそこらで回れちゃうゆるドライブ。水の澄んだ入江と森の別荘地と牧草地帯が続き、なかなかいい景色である。鹿が非常に多く、民家の畑はがっちりネット等で囲まれている。鹿害が大変らしい。
晩飯用の肉を買いに羊牧場に行く。その牧場売店の骨董品の向こうに、うちのかわいいイエロースズキが見えたので撮る。ワイングラスがいい色に出た。i-Finish はいい。
その後通りかかった石垣と沼を持つ邸がすごかった。かつての豪農の館という感じ。でその豪農領主の沼でおっさんたちが4人、ラジコンヨットレースをやっていた。無音で水上をすいすい走る小さなヨットたち。ちょ、ちょっとこれはと車を止め見物する。なんというのどかな島なのか(笑)。 こうして行き先と時間を決めずゆるゆると走り、見たいものがあればすぐさま止まれる旅はやっぱり楽しいな。車が少なく交通が遅い島ではそういう旅ができるのがありがたい。
しかしM母は景色や自然に興味がなく、美しい森や牧草地帯を走る車の外は見ず顔を伏せ島ガイドを熟読し、皆が景色におおと感動しているタイミングで突如「このレストランはよさそうよ!」とか大声で提唱してくれる。なんせハワイに行っても水に入らず火山を見なかったというマイペースな人なのである(笑)。
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写真は全写真 WB を間違えて「日陰」にしていた。赤すぎる。あとで青側に大幅に補正したが、その分色が褪せてしまった。ガックシ。しかし i-Finish の色の出方はいい。牧場でのエリオとワイングラスなんて、これまでに撮った写真の中でも出色の色だと思う。
ほんといいカメラだなと久々に PEN の喜びを感じている。MZ40-150mm を買ったら手振れ補正が弱いという弱点が露呈して写真モチベーションにやや影を差していたのだが、標準レンズでも撮り方と後処理ででいい結果が出せると気がついたあたりから再燃した。そしてこの旅では i-Finish でさらに可能性が広がっている。
2014/08/19
日記「進撃の巨人グッズ発注」
「アニメの叙述作法」「外国人の娘」「キッズの頃に書いたヤツ」「親子で聴くボーカロイド」
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■14/07/30(水) □ アニメの叙述作法
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SF 好きの奥様が、家族で見る日本アニメ第二弾として「シドニアの騎士」をチョイスした。CG と手描きがミックスされた絵は悪くないのだが(アキラや FF フレーバーもいい)、「ナガーテ・くん! なんとかだゾっ」と体を斜めにして喋るふわふわな女の子などは苦手な感じ。この日本学園アニメテーストがやはり家族にも不評で、2話で中止となった。
SF 部分の話も2話見て依然意味不明だしな。日本アニメは意味不明なまま展開しフラッシュバック(回想)で断片的に説明をハメていき「ああそういうことだったのか」と徐々にフォーカスしていくのを好むが、これがイライラすると家族で評する。なにもわからないという宙ぶらりんに置かれた状態が長い。
「進撃の巨人」は巨人のことが何もわからないのは視聴者もエレンも同じ不条理で、ワケもわからず引っ張り回される疾走感に身を任せていられたが、それでも回想シーンがあるとストーリーの速度が落ちるのでMが苛立っていた。このフラッシュバックで過去に戻るジグソーパズル的背景描写は明らかに日本アニメのクセだと思う。記憶喪失ものが多いのもそれがハマるからだろう。「東のエデン」も俺は1話だけ見たのだが、これも初回は全編記憶喪失+無筋力女子コンボでうーんという感じであった。
アニメ好きはこのスタイルが好きなんだろうが、そういう嗜好を持たない俺たちはこのシドニアのように、宙ぶらりんから地面に着地する前に飽きてしまう。ストーリーが視聴意欲にグリップしてこない。シドニアはたとえば「未来少年コナン」のように、ナガテと祖父の物語から始まり時間軸通りに物語が進み、『見るほうがシンパシーを感じられる存在としてのナガテ』が謎だらけの地表に出て冒頭の食料庫シーンになっていたなら、俺たちも楽しめただろう。
アニメやゲームファンはそういうフラットな叙述を好まないのだろうか。アニメソングはどれもハードロックのシンコペの嵐で独特の「アニメ調」としか言いようがない音楽なのだが、物語の叙述作法もまた独特なものがあると感じる。
あ、そういえばシドニアの騎士のテーマソングは軍歌・ネオ Jpop ミックスで、あれは素晴らしかったな。
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■14/08/01(金) □ 外国人の娘
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今日も朝から家事に頑張る。掃除は苦ではないし新洗濯機のおかげで洗濯は楽しいのだが、萌が朝から晩まで iPod をいじっていて他のことを何もしないので、長期休暇はいつもケンカになる。
MKたちがまた引っ越しするのでガレージセールをやるそうで、萌もいらないものを出品せよと言われ、5つものダンボールに入れてあった不要おもちゃ類を整理する。「これも捨てるの? これはまだ小さい子が遊びに来たら使えるじゃん」と1つ1つチェックしていく。10品ほどはもしかするとという感じで出品用に選択。お金はいらないが、欲しい人にいてもらわれてくれたらうれしいという感じ。
カナダで子供を育てていると、この子はモノへの愛着とお金へのありがたみがえらい薄いなと感じる。やっぱり我が娘ながら外国人だなという感じ。 小さな頃のおもちゃとか簡単に捨てるし、お金も入ればすぐ使う。夏休み中家の手伝いをしたらお小遣いを増してやると言ってるのだが、「どうせ働いても○ドルだからいい」とか言う(笑)! ほしいものがあるんだろ、貯めろよ!
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■14/08/05(火) □ 進撃の巨人グッズ発注
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今日は晴れてるのだが風がありめっちゃ涼しい。山の方から吹いてるのだろうか。いつも通り猛暑の季節は7月で終わり感が漂う。ちょうどいいので萌の小遣い稼ぎに芝刈りをやらせることにした。フロントが 1 ドル、バックが 3 ドル。先週のお小遣い+手伝い賃を積立て総計19ドルとなったので、これでほしがっていた進撃グッズを買いなさいと eBay を検索させる。
萌は狂喜しほしいグッズを片っ端から wish list に入れていく。あとで予算と突き合わせて 20 ドル相当をチェックアウトに入れよう。Pay Now だけは絶対に押してはならないと厳命する。
今回買ったのはペンダント、財布、ポスター、そして巨人の指輪。この指輪はなかなか見事なグロさですばらしい。学校で巨人を知る友達にホラと見せたら盛り上がるだろう。Tシャツやケープは高いので保留となった。また働いて小遣いを貯めなされ。
萌が iPod とファッション以外のものを欲しがらなくなって久しく、こうしてファンなものに子供のように夢中になってくれるのはうれしい。惜しむらくは回りにアニメ好き女子がまるでいないことで、数少ないアニメボーイズとテキストをやりとりして盛り上がっているらしい。
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■14/08/06(水) □ 「キッズの頃に書いたヤツ」
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カナダ国営ラジオで「キッズの頃に書いたヤツ」という番組があり、これが実に誰もが皆子供の頃はバカだった的内容で大笑いなのだが、今日のは秀逸だった。10歳くらいの姉妹の日記を交互に読むというもの。
「Dear日記。なにか赤いできものができて心配なの」
『Dear日記。私の妹はなにか赤い腫れ物ができて超キモいwww』
「Dear日記。私はジョンが好きなの。キュートなの」
『Dear日記。私の妹はジョンが好きなんだって笑うwwwどこがキュートwww』
「Dear日記。誰かが私の日記を読んでる気がする。誰なの教えて。それから私の姉は太ってるし、おっぱいとか出てきてる」
『Dear日記。私の妹は本当に性格が悪い』
「Dear日記。私の日記を読むのをやめて。それから早くやせて」
『Dear日記。読んでないわよ。失礼な妹は死ぬべき』
こういう日記や手紙を本人たちが読むというのが「キッズの頃に書いたヤツ」の番組内容で、その朗読がまたみんな見事にうまくてカナダ国民みなコメディアンと感心してしまうのだが、しかしプロの芸人の多くも内容はこのテの『自分(また妻、夫)はバカであった』モノなんだよなあ。カナダのお笑い番組の漫談家の 3/4 はこの系統だろう。
プロが素人と同じことをやっていては俺はまったく見る気もせんのだが、カナダではこれがバカウケする。お笑いに関する批評性はカナダ国民みな好々爺という感じである。笑いというものに才能とか新しいものとか磨き抜かれた芸とかを求める感性がないのかもしれない。
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■14/08/07(木) □ 親子で聴くボーカロイド
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萌がボーカロイドにはまっていて俺にあれこれ見せたがるのだが、いやはや音と詩がすごい。これを聴きたいとは思わんが見たことも聞いたこともない音楽があるので驚いてしまう。すごい表現方法が生み出されているなあ。
(赤心性:カマトト荒療治/スズム feat.鏡音リン・レン)
有名な初音ミクというのもいくつも見たのだが、音楽はスタンダードで(共犯新聞KBの弟がやってるらしい)、さっき見たやつみたいなアナーキーなところはない。声がかわいくて人気なのはまあわかるが、ダンスがなんであんなに森高千里のイモ化が進行したヤツみたいなんだろう。Perfume みたいにカッコよくできないのかな。
俺がそう感想を言うと萌は「きっとホログラムでは Perfume みたいに複雑な動きが表現できないのだ」と弁護する。そうかなあ。Perfume の先生にプログラムしてもらえばもっとカッコいい動きができるようになるんじゃないかなあ、初音ミク。
◇
やがて初音ミクたちが歌う「ありのままで」にたどり着き、二人で笑い転げる。日本語の歌詞はやはりよくないねと萌がいう。ツイッターでも議論になっているが、これは致し方ない、翻訳者はわかっていてこう決断したのだ説に俺は同意すると説明した。
つまり「抑えていたものを解き放つ」「ドアを閉め理解されない不安と決別する」「孤独には元々耐えてきたのだからいまさら何も変わりはない」というオリジナルの行間に込められたエモーションを日本語の歌詞にして歌に乗せることは無理なのだ。だから「ありのままで」という日本人にわかりやすい部分だけをすくい取ったことは正解だったと思うのである。
こういうことを夜Mが寝てから話すことが多いな最近。Mが推奨していたように、アニメが希薄になってしまった親子関係のリビルドをしてくれている感じ。
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■14/07/30(水) □ アニメの叙述作法
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SF 部分の話も2話見て依然意味不明だしな。日本アニメは意味不明なまま展開しフラッシュバック(回想)で断片的に説明をハメていき「ああそういうことだったのか」と徐々にフォーカスしていくのを好むが、これがイライラすると家族で評する。なにもわからないという宙ぶらりんに置かれた状態が長い。
「進撃の巨人」は巨人のことが何もわからないのは視聴者もエレンも同じ不条理で、ワケもわからず引っ張り回される疾走感に身を任せていられたが、それでも回想シーンがあるとストーリーの速度が落ちるのでMが苛立っていた。このフラッシュバックで過去に戻るジグソーパズル的背景描写は明らかに日本アニメのクセだと思う。記憶喪失ものが多いのもそれがハマるからだろう。「東のエデン」も俺は1話だけ見たのだが、これも初回は全編記憶喪失+無筋力女子コンボでうーんという感じであった。
アニメ好きはこのスタイルが好きなんだろうが、そういう嗜好を持たない俺たちはこのシドニアのように、宙ぶらりんから地面に着地する前に飽きてしまう。ストーリーが視聴意欲にグリップしてこない。シドニアはたとえば「未来少年コナン」のように、ナガテと祖父の物語から始まり時間軸通りに物語が進み、『見るほうがシンパシーを感じられる存在としてのナガテ』が謎だらけの地表に出て冒頭の食料庫シーンになっていたなら、俺たちも楽しめただろう。
アニメやゲームファンはそういうフラットな叙述を好まないのだろうか。アニメソングはどれもハードロックのシンコペの嵐で独特の「アニメ調」としか言いようがない音楽なのだが、物語の叙述作法もまた独特なものがあると感じる。
あ、そういえばシドニアの騎士のテーマソングは軍歌・ネオ Jpop ミックスで、あれは素晴らしかったな。
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■14/08/01(金) □ 外国人の娘
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今日も朝から家事に頑張る。掃除は苦ではないし新洗濯機のおかげで洗濯は楽しいのだが、萌が朝から晩まで iPod をいじっていて他のことを何もしないので、長期休暇はいつもケンカになる。
MKたちがまた引っ越しするのでガレージセールをやるそうで、萌もいらないものを出品せよと言われ、5つものダンボールに入れてあった不要おもちゃ類を整理する。「これも捨てるの? これはまだ小さい子が遊びに来たら使えるじゃん」と1つ1つチェックしていく。10品ほどはもしかするとという感じで出品用に選択。お金はいらないが、欲しい人にいてもらわれてくれたらうれしいという感じ。
カナダで子供を育てていると、この子はモノへの愛着とお金へのありがたみがえらい薄いなと感じる。やっぱり我が娘ながら外国人だなという感じ。 小さな頃のおもちゃとか簡単に捨てるし、お金も入ればすぐ使う。夏休み中家の手伝いをしたらお小遣いを増してやると言ってるのだが、「どうせ働いても○ドルだからいい」とか言う(笑)! ほしいものがあるんだろ、貯めろよ!
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■14/08/05(火) □ 進撃の巨人グッズ発注
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今日は晴れてるのだが風がありめっちゃ涼しい。山の方から吹いてるのだろうか。いつも通り猛暑の季節は7月で終わり感が漂う。ちょうどいいので萌の小遣い稼ぎに芝刈りをやらせることにした。フロントが 1 ドル、バックが 3 ドル。先週のお小遣い+手伝い賃を積立て総計19ドルとなったので、これでほしがっていた進撃グッズを買いなさいと eBay を検索させる。
萌は狂喜しほしいグッズを片っ端から wish list に入れていく。あとで予算と突き合わせて 20 ドル相当をチェックアウトに入れよう。Pay Now だけは絶対に押してはならないと厳命する。
今回買ったのはペンダント、財布、ポスター、そして巨人の指輪。この指輪はなかなか見事なグロさですばらしい。学校で巨人を知る友達にホラと見せたら盛り上がるだろう。Tシャツやケープは高いので保留となった。また働いて小遣いを貯めなされ。
萌が iPod とファッション以外のものを欲しがらなくなって久しく、こうしてファンなものに子供のように夢中になってくれるのはうれしい。惜しむらくは回りにアニメ好き女子がまるでいないことで、数少ないアニメボーイズとテキストをやりとりして盛り上がっているらしい。
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■14/08/06(水) □ 「キッズの頃に書いたヤツ」
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カナダ国営ラジオで「キッズの頃に書いたヤツ」という番組があり、これが実に誰もが皆子供の頃はバカだった的内容で大笑いなのだが、今日のは秀逸だった。10歳くらいの姉妹の日記を交互に読むというもの。
「Dear日記。なにか赤いできものができて心配なの」
『Dear日記。私の妹はなにか赤い腫れ物ができて超キモいwww』
「Dear日記。私はジョンが好きなの。キュートなの」
『Dear日記。私の妹はジョンが好きなんだって笑うwwwどこがキュートwww』
「Dear日記。誰かが私の日記を読んでる気がする。誰なの教えて。それから私の姉は太ってるし、おっぱいとか出てきてる」
『Dear日記。私の妹は本当に性格が悪い』
「Dear日記。私の日記を読むのをやめて。それから早くやせて」
『Dear日記。読んでないわよ。失礼な妹は死ぬべき』
こういう日記や手紙を本人たちが読むというのが「キッズの頃に書いたヤツ」の番組内容で、その朗読がまたみんな見事にうまくてカナダ国民みなコメディアンと感心してしまうのだが、しかしプロの芸人の多くも内容はこのテの『自分(また妻、夫)はバカであった』モノなんだよなあ。カナダのお笑い番組の漫談家の 3/4 はこの系統だろう。
プロが素人と同じことをやっていては俺はまったく見る気もせんのだが、カナダではこれがバカウケする。お笑いに関する批評性はカナダ国民みな好々爺という感じである。笑いというものに才能とか新しいものとか磨き抜かれた芸とかを求める感性がないのかもしれない。
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■14/08/07(木) □ 親子で聴くボーカロイド
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萌がボーカロイドにはまっていて俺にあれこれ見せたがるのだが、いやはや音と詩がすごい。これを聴きたいとは思わんが見たことも聞いたこともない音楽があるので驚いてしまう。すごい表現方法が生み出されているなあ。
(赤心性:カマトト荒療治/スズム feat.鏡音リン・レン)
有名な初音ミクというのもいくつも見たのだが、音楽はスタンダードで(共犯新聞KBの弟がやってるらしい)、さっき見たやつみたいなアナーキーなところはない。声がかわいくて人気なのはまあわかるが、ダンスがなんであんなに森高千里のイモ化が進行したヤツみたいなんだろう。Perfume みたいにカッコよくできないのかな。
俺がそう感想を言うと萌は「きっとホログラムでは Perfume みたいに複雑な動きが表現できないのだ」と弁護する。そうかなあ。Perfume の先生にプログラムしてもらえばもっとカッコいい動きができるようになるんじゃないかなあ、初音ミク。
◇
やがて初音ミクたちが歌う「ありのままで」にたどり着き、二人で笑い転げる。日本語の歌詞はやはりよくないねと萌がいう。ツイッターでも議論になっているが、これは致し方ない、翻訳者はわかっていてこう決断したのだ説に俺は同意すると説明した。
つまり「抑えていたものを解き放つ」「ドアを閉め理解されない不安と決別する」「孤独には元々耐えてきたのだからいまさら何も変わりはない」というオリジナルの行間に込められたエモーションを日本語の歌詞にして歌に乗せることは無理なのだ。だから「ありのままで」という日本人にわかりやすい部分だけをすくい取ったことは正解だったと思うのである。
こういうことを夜Mが寝てから話すことが多いな最近。Mが推奨していたように、アニメが希薄になってしまった親子関係のリビルドをしてくれている感じ。
2014/08/04
日記「進撃のミカサヘアー」
「りすパニック」「リス問題なんとか解決」「ゲーム東海道」
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■14/07/24(木) □ りすパニック
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最近うちの屋根でリスが何度も目撃され巣を作ろうとしてるのではないか疑惑が浮上していたのだが、今日タタタと走る音が聞こえ屋根を見上げたら、前庭の木の枝を歯でカットし口に咥えたまま屋根に跳び移り、煙突にガンガン運び込んでる奴をついに発見した。やはり。見事なリス技だがこれは困る。
毎年アライグマ駆逐に苦闘しているK氏に教わり、あわてて少量のファイアウッドを暖炉にくべて煙を送ると、リスはその臭いを嗅ぎ取って静止ししばし考え、さっといなくなった。シャープなやつだ。野生のカンだ。しかしこれでリスがキッパリ諦めるとは思えないので、当分戻ってくるたびに煙で戦うことになりそう。
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ところが夜になると、暖炉のあたりからピーピーとなにかの鳴き声が聞こえてきた。――あ! もうリスのベイビーが生まれていたのか。いぶしだすのが遅かった。暖炉の真上辺りから聞こえるので煙突内に落ちてしまっている様子。煙は割り箸数本分だったのでクサいだけで実害はないと思うが、これはどうしたらいいのか………。
途方に暮れていると、ガサガサガサっとすごい音がして母リスが煙突を駆け下りてきた! そしてベイビーもろともどさっと暖炉内に降りてしまう母リス! ひえええ!
ベイビーが危ないと怒りに震える母リスは、怒声を上げ俺が抑える暖炉のガラスドアにガツッ・ガツッとアタックしてくる。城門を破られるぞ、なにか塞ぐものを持ってきてくれと叫ぶのだが、萌はハハハと笑いながらインスタグラム用の写真を撮っている。「早く!」「I know、でもまず写真 LOL」「それどころじゃない、エマージェンシーだ!」
とりあえず重いギターアンプでドアを塞ぎ、黒い覆いをかける。これでやっと静かになった。ふー。
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入ってこれたということは出ていけるのかとネットで調べてみるが、よくわからない。煙突や暖炉にリスが入ってしまう事例はそんなに珍しいことではないらしく対策法はネットで見つかるが、『ファイヤプレイスを開けてリビングルームに出し、窓に誘導し逃してやる。リスは必ず明るい窓へ走る』とか書いてある。家に入れるのかよ。それはリスクが高い。結局朝を待ち業者を呼ぶしかないかもしれない。はあ。また足元を見られ法外な業者価格を取られそうだ。
まあとにかく明日の朝煙突から光が射せば、そこから自力で出て行ってくれると祈ろう。ばったり静かになったが聞き耳を立てるとまだノド鳴りが聞こえ、二度ほど声が聞こえた。まだいると思う。
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■14/07/25(金) □ リス問題なんとか解決
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悪夢を見つつ寝て起きたら打開策を思いついた。うちには大きな合板がたくさんあるので、それで囲い暖炉から窓まで一直線の動線を作ってやればいい。暗闇から外に出たくて気も狂わんばかりのリスが、窓の光に向かわず板を乗り越えて人のいるリビングに進入してくるはずがない。万が一パニック状態に陥りリビングに入った場合でもベッドルーム・階下には行かないよう板で塞ぐ。Mには反対されそうだが、失敗する確率のほうが低いと思う。
そうしようと決意して起き、Mに告げて準備をしながら暖炉の覆いを外してみると、巣作りに使っていた葉っぱが全部暖炉に落ちている。ということは煙突内をよじ登ったということだ。ガラスドアを閉めたままライトで照らしてももう見当たらない。出たのか? ―――ともあれエンクローズド化を進めようと板を用意していると、母リスが外を走っている! やっ・た。出られたんだ。
しかしベイビーはどうなったんだと覗き込んでいるとまたガサガサガサっと煙突から暖炉までリスが降りてきて、ガサガサやりまた出て行った。ベイビーを連れ出しに来たに違いない。これで無事ベイビーも咥えて出られたかどうかは確認できなかった。動くものの気配はもう一切ない。
◇
とにかくリスが暖炉まで自由に出入りできることが判明したので(苦笑)、煙突を塞がないと暖炉のドアを開けることができない。萌を起こしてハシゴを抑えさせ、屋根に上がって煙突をチェックすることにした。
煙突を見ると、驚いたことに金網もグリルもなんにもない。筒抜けなのか! これじゃ動物が入ってくるのは当たり前ではないか。普通は金網かフタかなんかがついてるんじゃないのか。なんでついてないんだ。
どこに巣を作っていたのかと煙突内をライトで照らしてビデオを突っ込み撮影してみると、下まで何も障害物はない。暖炉真上に火の粉返し的な折り返しがついてるだけという異常単純構造だった。こんなんだったのか。その暖炉真上の折り返し(smoke shelf)に木の枝葉がたまっている。ここに巣を作ろうとしてたのか。つまり人のいる部屋からレンガ1枚隔てただけの暖炉の上で子育てしようとしてたんだ。なんてことだ。
これまで物音は聞こえなかったのであそこでベイビーが生まれたとは思えず、おそらくは今日運び込まれ、俺が煙でいぶしたときの混乱で葉っぱの中にもぐり落ちてしまい、それを助けるために母親が折り返しから暖炉にがさっと落ちてしまったというのが事件のあらましだろう。煙突内側はレンガを接着したセメントで十分に突起があり、明かりさえあれば親リスが安全に登り降りできたのは間違いない。朝になって冷静になってみれば、ベイビーを咥えていても問題なく昇れたのだろう。
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とりあえず再度入れないよう角材とレンガで臨時のフタをし、アクセスしやすい回りの高枝を切り落とす。リスが必要ならばどこからでも屋根には上がれるが、もう煙突には入れない。もしまだ煙突に入ろうとするならベイビーがいるということで、その場合はまた開けてやるしかない。
そして暖炉を慎重に開けて掃除。ふー。中は信じられないほど大量の葉っぱがたまっていた。どれもフレッシュな葉っぱだったので、やはり巣作りは始めたばかりだったと思われる。ここに長く住んでいたとは思えない。葉っぱを全部捨て、中にもう何もいないのを確認し、もうホコリ等が怖いのでガラスドアにテープを張って封印してしまった。こげなもん! こげなもん! こげなもーん!
ふー。よし。終わった。着ていたものをすべて新洗濯機に放り込み終了。ふー。近日中に煙突ネットをちゃんと付け直そう。
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■14/07/27(日) □ ゲーム東海道
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M が借りている市の農園に寄る。水撒きをするMとLDと野菜たちの写真を撮りまくった。
うちの畑は食物価値のみで美的価値は薄かったが、他のぶどう棚とかが美しい。露出と F 値を変えて撮影を楽しむ。標準レンズ MZ14-42 でも光がいいとなかなかいい写真が撮れる。手ぶれ補正が弱い、手頃な望遠レンズがないなどいろいろと弱点のあるマイクロフォーサーズ E-PM1 だが、やはりこのカメラを格安で買えたのは素晴らしいことだったとしか言いようがない。
----------------------
夕方MK家に出直し、彼がお気に入りのゲーム「東海道」をプレイ。ボードを見てルールを聞き想像した通りの、気軽なひざくりげという感じだった。最初から最後までこういう「オイオイ押すな押すな」の団子状態だったのが意外。東海道狭い(笑)。日本の事物の名称が全部マトモで、ひとつもヘンなのがなかったのも意外。デザイナーは近所に日本人の友だちがいるんだろう。
全員団子になってしまうというのは実はやや薄味なゲーム内容を示していて、要は大きく跳ぶことのメリットが小さいのだ。グレンモア同様常に最後尾がプレイするルールで、大きく先へ跳ぶと手番が後回しになる。で自分がスキップしたマスは敵が取り、どこに止まっても2~3点にはなるので跳べば跳ぶほど自分が取れた点が敵に入る。一番大きなコレクションである風景セットも長い道中いずれかは揃うくらいの枚数バランスだし、セット完成一番乗りボーナスもわずか3点なので、手番×得点機会をロスしながら無理して今取ることもないかとなってしまう。計算したわけではないが直感的にそう感じるので、全員最も手近なマスへ1つずつ移動していくだけとなる。つまり全員が同じプレイになりがちなゲームシステムなのだ。
同じ最後尾手番制のグレンモアは、「大きく跳んで○○城を取ればぐっと点が伸びる」というメリットが大きく、さらに「跳ばずに全部のタイルを拾っていくとタイル数過剰で税金(マイナス点)がつく」という2つのルールセットで冒険を奨励している。あれくらいのほうがメリハリがあって面白いわけである。
そんなわけで、勝つとか負けるとか点を伸ばそうと知恵を絞って楽しむというゲームではない。その点では「建築士」のほうが面白い。しかし風景セットを揃えていくのは楽しく、説明を聞きながらでも1時間かからなかったので好感度は高い。何も難しくないし、皆が楽しく遊べるゲームですね。
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■14/07/28(月) □ 進撃のミカサヘアー
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萌が「進撃の巨人」のミカサヘアーにしたいといいヘアドレッサーへ。萌はずっとロングヘア横分け顔丸出しスタイルなのだが、これがよくないと俺はずっと思っていて、前回は前髪を下ろせと主張しケンカになり結局説得に失敗したのだ。今回はなんとしてもミカサっぽくなるようちゃんとサンプル写真を複数用意させる。
萌を含めカナダの一般ティーン女子は皆このロングヘア横分け顔丸出しである。みんなニキビも出てるし自分の顔のあちこちが気になる年頃なのに、なんでそうやって顔を全面的に出したがるのか謎だ。矛盾している。
それにたとえ顔丸出しが似合う子でも、髪を下ろしおでこや頬を飾ったほうがよりカワイイではないか。
要はちょっと前に話題になった前髪モナリザ効果である。
こっちのほうがかわいいじゃん。この前髪モナリザは毛先に日本人の好みが多量に入ってると思うが、英語サイトでも「ヘアスタイルの奇跡」と題してこの写真が見つかるので、なにもしないより隠したり飾ったりデザインしたほうが心を揺らすと感じるのは万国共通だろう。
丸出ししたがるのは服のスタイルも同じで、カナダ女子のファッションはとにかく可能な限り肌を出すことが最優先事項となっている。セクシーにしたいわけではなく、健康的な肌は自分の自慢のパーツで、それを見せたいらしい。オープンで隠さないことがなにかアイデンティティ的に重要なのかもしれない。かわいい服で自分をラップするアジア女子の発想とはまるで違う。
◇
今回はちゃんと写真を持って行かせた甲斐あって、ヘアカットを見ていると予想以上にバサッとしてミカサっぽくなっていた。いいじゃん。横顔なんか上がった眉とポインティな鼻のラインに前髪がかかり実にアニメっぽい。萌のヘアドレッサーCHは東南アジア美人なのだが、彼女が東アジア人だったら前からこういう東アジア人好みの髪型をプッシュしてくれてただろうと思う。1年前に染めた金髪もほとんど裁ち落とされ、ちょうどよく毛先だけブロンドが残ったし、きれいな首のラインも見える。うまくいってよかったよかった。
◇
しかし萌は帰ってきてから鏡を見て、失敗した前のほうがよかったかもしれないとか言って機嫌が悪くなっている。ヘアスプレーで固めていた間はよかったが、シャンプーしてみたらただのショートボブになってたということらしい。たしかに写真を撮った時点で十分短かったのに、その後も延々刈りこんでたからなあ。しかしこっちのほうが前より全然かわいいじゃん。アニメじゃん。「――ミカサになりたかったんだよ! くだらないアニメになんかなりたくなかったよ!」と泣き出した。うーん。でもまあマジでかわいいので、きっとそのうち皆に褒められて落ち着くと思う。
夕方きた MK は萌の新髪型を見て「スゴイとは思わないが悪くはない」と言ったらしい。アホか。お前は嫁にもそれをいい張り倒されろ。
しかしお母さんが帰り「キュート! アニメガールだわ!」と褒めるとようやく、そうかしらウフフと少女の想像の翼がふわり広がりました。
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■14/07/24(木) □ りすパニック
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最近うちの屋根でリスが何度も目撃され巣を作ろうとしてるのではないか疑惑が浮上していたのだが、今日タタタと走る音が聞こえ屋根を見上げたら、前庭の木の枝を歯でカットし口に咥えたまま屋根に跳び移り、煙突にガンガン運び込んでる奴をついに発見した。やはり。見事なリス技だがこれは困る。
毎年アライグマ駆逐に苦闘しているK氏に教わり、あわてて少量のファイアウッドを暖炉にくべて煙を送ると、リスはその臭いを嗅ぎ取って静止ししばし考え、さっといなくなった。シャープなやつだ。野生のカンだ。しかしこれでリスがキッパリ諦めるとは思えないので、当分戻ってくるたびに煙で戦うことになりそう。
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ところが夜になると、暖炉のあたりからピーピーとなにかの鳴き声が聞こえてきた。――あ! もうリスのベイビーが生まれていたのか。いぶしだすのが遅かった。暖炉の真上辺りから聞こえるので煙突内に落ちてしまっている様子。煙は割り箸数本分だったのでクサいだけで実害はないと思うが、これはどうしたらいいのか………。
途方に暮れていると、ガサガサガサっとすごい音がして母リスが煙突を駆け下りてきた! そしてベイビーもろともどさっと暖炉内に降りてしまう母リス! ひえええ!
ベイビーが危ないと怒りに震える母リスは、怒声を上げ俺が抑える暖炉のガラスドアにガツッ・ガツッとアタックしてくる。城門を破られるぞ、なにか塞ぐものを持ってきてくれと叫ぶのだが、萌はハハハと笑いながらインスタグラム用の写真を撮っている。「早く!」「I know、でもまず写真 LOL」「それどころじゃない、エマージェンシーだ!」
とりあえず重いギターアンプでドアを塞ぎ、黒い覆いをかける。これでやっと静かになった。ふー。
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入ってこれたということは出ていけるのかとネットで調べてみるが、よくわからない。煙突や暖炉にリスが入ってしまう事例はそんなに珍しいことではないらしく対策法はネットで見つかるが、『ファイヤプレイスを開けてリビングルームに出し、窓に誘導し逃してやる。リスは必ず明るい窓へ走る』とか書いてある。家に入れるのかよ。それはリスクが高い。結局朝を待ち業者を呼ぶしかないかもしれない。はあ。また足元を見られ法外な業者価格を取られそうだ。
まあとにかく明日の朝煙突から光が射せば、そこから自力で出て行ってくれると祈ろう。ばったり静かになったが聞き耳を立てるとまだノド鳴りが聞こえ、二度ほど声が聞こえた。まだいると思う。
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■14/07/25(金) □ リス問題なんとか解決
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悪夢を見つつ寝て起きたら打開策を思いついた。うちには大きな合板がたくさんあるので、それで囲い暖炉から窓まで一直線の動線を作ってやればいい。暗闇から外に出たくて気も狂わんばかりのリスが、窓の光に向かわず板を乗り越えて人のいるリビングに進入してくるはずがない。万が一パニック状態に陥りリビングに入った場合でもベッドルーム・階下には行かないよう板で塞ぐ。Mには反対されそうだが、失敗する確率のほうが低いと思う。
そうしようと決意して起き、Mに告げて準備をしながら暖炉の覆いを外してみると、巣作りに使っていた葉っぱが全部暖炉に落ちている。ということは煙突内をよじ登ったということだ。ガラスドアを閉めたままライトで照らしてももう見当たらない。出たのか? ―――ともあれエンクローズド化を進めようと板を用意していると、母リスが外を走っている! やっ・た。出られたんだ。
しかしベイビーはどうなったんだと覗き込んでいるとまたガサガサガサっと煙突から暖炉までリスが降りてきて、ガサガサやりまた出て行った。ベイビーを連れ出しに来たに違いない。これで無事ベイビーも咥えて出られたかどうかは確認できなかった。動くものの気配はもう一切ない。
◇
とにかくリスが暖炉まで自由に出入りできることが判明したので(苦笑)、煙突を塞がないと暖炉のドアを開けることができない。萌を起こしてハシゴを抑えさせ、屋根に上がって煙突をチェックすることにした。
煙突を見ると、驚いたことに金網もグリルもなんにもない。筒抜けなのか! これじゃ動物が入ってくるのは当たり前ではないか。普通は金網かフタかなんかがついてるんじゃないのか。なんでついてないんだ。
どこに巣を作っていたのかと煙突内をライトで照らしてビデオを突っ込み撮影してみると、下まで何も障害物はない。暖炉真上に火の粉返し的な折り返しがついてるだけという異常単純構造だった。こんなんだったのか。その暖炉真上の折り返し(smoke shelf)に木の枝葉がたまっている。ここに巣を作ろうとしてたのか。つまり人のいる部屋からレンガ1枚隔てただけの暖炉の上で子育てしようとしてたんだ。なんてことだ。
これまで物音は聞こえなかったのであそこでベイビーが生まれたとは思えず、おそらくは今日運び込まれ、俺が煙でいぶしたときの混乱で葉っぱの中にもぐり落ちてしまい、それを助けるために母親が折り返しから暖炉にがさっと落ちてしまったというのが事件のあらましだろう。煙突内側はレンガを接着したセメントで十分に突起があり、明かりさえあれば親リスが安全に登り降りできたのは間違いない。朝になって冷静になってみれば、ベイビーを咥えていても問題なく昇れたのだろう。
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とりあえず再度入れないよう角材とレンガで臨時のフタをし、アクセスしやすい回りの高枝を切り落とす。リスが必要ならばどこからでも屋根には上がれるが、もう煙突には入れない。もしまだ煙突に入ろうとするならベイビーがいるということで、その場合はまた開けてやるしかない。
そして暖炉を慎重に開けて掃除。ふー。中は信じられないほど大量の葉っぱがたまっていた。どれもフレッシュな葉っぱだったので、やはり巣作りは始めたばかりだったと思われる。ここに長く住んでいたとは思えない。葉っぱを全部捨て、中にもう何もいないのを確認し、もうホコリ等が怖いのでガラスドアにテープを張って封印してしまった。こげなもん! こげなもん! こげなもーん!
ふー。よし。終わった。着ていたものをすべて新洗濯機に放り込み終了。ふー。近日中に煙突ネットをちゃんと付け直そう。
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■14/07/27(日) □ ゲーム東海道
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M が借りている市の農園に寄る。水撒きをするMとLDと野菜たちの写真を撮りまくった。
うちの畑は食物価値のみで美的価値は薄かったが、他のぶどう棚とかが美しい。露出と F 値を変えて撮影を楽しむ。標準レンズ MZ14-42 でも光がいいとなかなかいい写真が撮れる。手ぶれ補正が弱い、手頃な望遠レンズがないなどいろいろと弱点のあるマイクロフォーサーズ E-PM1 だが、やはりこのカメラを格安で買えたのは素晴らしいことだったとしか言いようがない。
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夕方MK家に出直し、彼がお気に入りのゲーム「東海道」をプレイ。ボードを見てルールを聞き想像した通りの、気軽なひざくりげという感じだった。最初から最後までこういう「オイオイ押すな押すな」の団子状態だったのが意外。東海道狭い(笑)。日本の事物の名称が全部マトモで、ひとつもヘンなのがなかったのも意外。デザイナーは近所に日本人の友だちがいるんだろう。
全員団子になってしまうというのは実はやや薄味なゲーム内容を示していて、要は大きく跳ぶことのメリットが小さいのだ。グレンモア同様常に最後尾がプレイするルールで、大きく先へ跳ぶと手番が後回しになる。で自分がスキップしたマスは敵が取り、どこに止まっても2~3点にはなるので跳べば跳ぶほど自分が取れた点が敵に入る。一番大きなコレクションである風景セットも長い道中いずれかは揃うくらいの枚数バランスだし、セット完成一番乗りボーナスもわずか3点なので、手番×得点機会をロスしながら無理して今取ることもないかとなってしまう。計算したわけではないが直感的にそう感じるので、全員最も手近なマスへ1つずつ移動していくだけとなる。つまり全員が同じプレイになりがちなゲームシステムなのだ。
同じ最後尾手番制のグレンモアは、「大きく跳んで○○城を取ればぐっと点が伸びる」というメリットが大きく、さらに「跳ばずに全部のタイルを拾っていくとタイル数過剰で税金(マイナス点)がつく」という2つのルールセットで冒険を奨励している。あれくらいのほうがメリハリがあって面白いわけである。
そんなわけで、勝つとか負けるとか点を伸ばそうと知恵を絞って楽しむというゲームではない。その点では「建築士」のほうが面白い。しかし風景セットを揃えていくのは楽しく、説明を聞きながらでも1時間かからなかったので好感度は高い。何も難しくないし、皆が楽しく遊べるゲームですね。
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■14/07/28(月) □ 進撃のミカサヘアー
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萌が「進撃の巨人」のミカサヘアーにしたいといいヘアドレッサーへ。萌はずっとロングヘア横分け顔丸出しスタイルなのだが、これがよくないと俺はずっと思っていて、前回は前髪を下ろせと主張しケンカになり結局説得に失敗したのだ。今回はなんとしてもミカサっぽくなるようちゃんとサンプル写真を複数用意させる。
萌を含めカナダの一般ティーン女子は皆このロングヘア横分け顔丸出しである。みんなニキビも出てるし自分の顔のあちこちが気になる年頃なのに、なんでそうやって顔を全面的に出したがるのか謎だ。矛盾している。
それにたとえ顔丸出しが似合う子でも、髪を下ろしおでこや頬を飾ったほうがよりカワイイではないか。
要はちょっと前に話題になった前髪モナリザ効果である。
こっちのほうがかわいいじゃん。この前髪モナリザは毛先に日本人の好みが多量に入ってると思うが、英語サイトでも「ヘアスタイルの奇跡」と題してこの写真が見つかるので、なにもしないより隠したり飾ったりデザインしたほうが心を揺らすと感じるのは万国共通だろう。
丸出ししたがるのは服のスタイルも同じで、カナダ女子のファッションはとにかく可能な限り肌を出すことが最優先事項となっている。セクシーにしたいわけではなく、健康的な肌は自分の自慢のパーツで、それを見せたいらしい。オープンで隠さないことがなにかアイデンティティ的に重要なのかもしれない。かわいい服で自分をラップするアジア女子の発想とはまるで違う。
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今回はちゃんと写真を持って行かせた甲斐あって、ヘアカットを見ていると予想以上にバサッとしてミカサっぽくなっていた。いいじゃん。横顔なんか上がった眉とポインティな鼻のラインに前髪がかかり実にアニメっぽい。萌のヘアドレッサーCHは東南アジア美人なのだが、彼女が東アジア人だったら前からこういう東アジア人好みの髪型をプッシュしてくれてただろうと思う。1年前に染めた金髪もほとんど裁ち落とされ、ちょうどよく毛先だけブロンドが残ったし、きれいな首のラインも見える。うまくいってよかったよかった。
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しかし萌は帰ってきてから鏡を見て、失敗した前のほうがよかったかもしれないとか言って機嫌が悪くなっている。ヘアスプレーで固めていた間はよかったが、シャンプーしてみたらただのショートボブになってたということらしい。たしかに写真を撮った時点で十分短かったのに、その後も延々刈りこんでたからなあ。しかしこっちのほうが前より全然かわいいじゃん。アニメじゃん。「――ミカサになりたかったんだよ! くだらないアニメになんかなりたくなかったよ!」と泣き出した。うーん。でもまあマジでかわいいので、きっとそのうち皆に褒められて落ち着くと思う。
夕方きた MK は萌の新髪型を見て「スゴイとは思わないが悪くはない」と言ったらしい。アホか。お前は嫁にもそれをいい張り倒されろ。
しかしお母さんが帰り「キュート! アニメガールだわ!」と褒めるとようやく、そうかしらウフフと少女の想像の翼がふわり広がりました。
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