2011/06/30

日記「サヨナラ小学生ライフ」

「チケットトゥライドの交錯の妙」「CONCACAF サッカーの発展」「TTR Euro の味がわかってきた」

=======================
■11/06/20(月) □ チケットトゥライドの交錯の妙
=======================

チケットトゥライド USA Online のデモで対PC5人戦を選択し、必要な路線区間を次々に敵に奪われ負けた。うーむ、面白い。いったんコツが分かったらカルカソンヌ同様コンピュータ相手では楽勝だろうと思っていたのだが、この負け方を体験して考えが変わった。

これはコンピュータの思考ルーチンが優秀だからこうなったわけではなく、それぞれが自分の路線を完成させようと努力するなかで線路が交錯し妨害が自然発生するという、チケットトゥライドのシステムが生む《交錯の妙》が働くのだ。つまり相手が愚かなロボットでも、チケットがうまいこと交錯さえすれば白熱したゲームになるシステムなのである。偶然とも戦術とも運とも違う、「ゲーム的交錯」という感じの絡みが立ち上がる。スポーツのようだ。サッカー的だ。

カルカソンヌで相乗り攻防のやり方が分かったときに、あまりに単純かつ精妙なメカニズムに感動したが、それと同等のコアメカニズムの素晴らしさがこのゲームにはある。それに加え、プレイ中なにもテキスト(=例外処理の説明)を読む必要がないというのもやはり優れている。

というわけで、来月の誕生日に本物ボードゲーム版を買うことはもう決めているのだが、USA を買うか Euro を買うか決めかねているのでデモをプレイしまくっております。

=======================
■11/06/22(水) □ CONCACAF サッカーの発展
=======================

【金杯準決勝メキシコ VS ホンジュラス】両チームとも一歩も引かない真っ向プレス勝負、体の全パーツをゴチゴチとぶつけ合いながら奪ったボールをもの凄い勢いで前に進めていき、すごい試合となっている。まさにメキシカンプロレス。彼らには痛覚がないのか。これは俺が今季見た中で一番面白い試合だ。

中盤を厚くすることでメキシコ相手に完全に互角のプレス勝負をできるホンジュラスなのだが、その分1トップは孤立しており、なかなかシュートに持っていけない。攻撃力ではウィングが3トップ気味に張ったメキシコが1枚上だが、ホンジュラスの守りもラインコントロールもほんとうに素晴らしく、チチャリートまでボールを通させない。

延長になったらホンジュラスに疲れが見えてきたと思う間もなく、メキシコがコーナーから2本ゴール。劣勢なリソースでファイトし抜くホンジュラスを応援してたのだが、ついに守備陣の集中力が尽きたという感じだった。残念だが、あの孤立した1トップでは点は取れそうになかったし、そこがまだメキシコとの力の差と言えるだろう。

しかしメキシコとプレス合戦を90分やり抜けるチームが出てきて、CONCACAF サッカーはすごいことになってきた。カナダは完全に取り残されているが、こんなサッカーが見れるなら CONCACAF の発展ばんざいであります。

ホンジュラスのMFはカンザスシティーにいるそうで、MLSでもこんなうまくてファイトする選手が揃ったサッカーを見れたら面白いんだけどなー。バンクーバーの試合を見る限りでは、まだまだ技術もスピードも希薄もユルすぎて、あまり楽しめないのである。

=======================
■11/06/23(木) □ TTR Euro の味がわかってきた
=======================

【チケットトゥライド Online】複雑な Euro のマップと地名にも慣れ楽しめるようになってきた。マップ自体を比較すると、やはり USA マップは簡単すぎるなと思う。デュルース-ヒューストンなど色なしトラックで5区間8コマも連続しているので、カードを集める必要もなく簡単につなげてしまう。ポートランド-カルガリー5コマ、ロス-デンバー8コマ、アトランタ-モントリオール9コマも同じ、このあたりは同色列車カードを2~3個ずつ揃えていけば簡単に繋げられる。また西海岸と東海岸のロングをいったんつなぐと、その内側のシカゴ-ソルトレイクあたりはすでに繋がっているので宝くじの前後賞的安直な得点増になる。

Euro ではこの反省から、色なしトラックは東欧の辺境に断片的に置くなど調整がなされているわけだ。そして短い路線はトンネルやフェリーでもって難度を上げている。なるほどねー。この辺がわかってくると、Euro マップの味わいもしみてくる。だんだん Euro に購入意欲が定まってきました。

Euro は長距離チケットが6種類しかないのが味気ないが(何回もやっていると、「またこの路線かよ」とすぐ感じ始める)、どこを通って行くかは手持ちのチケットとトレインの引きと敵の分布により変わってくる。だから同じチケットを続けて取ったとしても、工夫の余地はある。これはチケットトゥライド・シリーズのゲームデザインの勝利というか、鉄道網というものの美しさと面白さをそのまま見事にゲーム化しているんだよな。

つなげなかった区間を4ポイント払って自分の区間として点数をカウントできるという Euro の「駅舎」ルールは、評価が難しい。「あー先に取られた! 仕方がない、あっちから回ろう」というのがチケライ最大の面白さなのに、「あー先に取られた、4ポイント失った」では台無しだと思う。しかし対人でブロックが多発するような高度なゲームになると、駅舎なしでは勝てないという説も見聞きする。この辺は人とやってみないと分からない。

----------------------
対PC戦のみとはいえ何度もやってみて思うが、これは本当に面白いゲームである。最愛のカルカソンヌと比較すると、ある程度うまい人とやらないと盛り上がらないカルカソンヌに対し、チケライはコンピュータ相手でも困難を乗り越え物事を完成させる喜びが味わえる。この面白さはビギナーとやっても同じであるはずだ。そこかしこに小さな賭けがあり(これを micro-decisions、小さな決断と呼んでいる人がいた)、その成否が1ゲーム中何度も味わえる。

また、カルカソンヌは全手札を妨害に使うというダーティな戦法が強いわけだが、チケライは妨害をするにもトレインカードが必要で、それを消費すれば自分の路線が伸びない。この自然に備わった兼ね合いにより、破壊者有利というカルカソンヌ的弱点からもおそらくまぬがれているだろう。Euro の「駅舎」ルールと合わせ、妨害が嫌いなうちの奥さんにも完璧なゲームなんではないだろうか。



=======================
■11/06/28(火) □ サヨナラ小学生ライフ
=======================


キモノでセレモニー
萌の卒業セレモニー。キモノを着て行っていいかと聞かれ、いいけど他の子はそれほどドレスアップしないだろうから目立ちすぎるだろうと言ったが、それがいいのだとのこと。さすがに晴れ着的なものはやめて、クリーム色のきれいな浴衣を着ていき、本人の希望通り美しく映えていた。

セレモニーは子供らの感謝のスピーチがいくつもあり、影像担当教師による今年1年の膨大な写真とビデオをまとめたムービーがメインの演し物としてあり、校長が例によって長すぎるスピーチをした以外は期待以上によいものだった。


スクールキャンプで湖に浮いた丸太遊び、
なんてゴージャス
この影像先生の尽力ムービーのおかげで、先々週のキャンプをピークとしてキッズがどれほど楽しいイベントの数々を体験したがよく分かる。これはカナダの教師としてはちょっと例がないほどの親切で、あの先生はおそらく今年1年、どの親よりも多く子供らの写真とビデオを撮ったことだろう。ただカメラを持ってそこにいるだけではなく、アクティブに働きかけなければ撮れないいい映像に満ちているし、そのDVDを頒布もしてくれたし、ありがたいことである。最低限のことしかしてくれない校長と教師が揃った前の学校を捨て、小学校最後の1年をこの学校でとお母さんが決断してよかったとつくづく思わせてくれる影像と卒業セレモニーだった。

----------------------
総体的には素晴らしい1年だったのだが、しかし最後に萌は親友CHRと大ゲンカになり、それが実は多人数でCHR1人を無視するというけしからん状態だったと後からわかり、萌は家では謹慎中になっている。自分の誕生パーティも罰としてキャンセルとなり、グロリアスだったここGLでの小学生ライフはやや末尾を濁す終わり方となってしまった。まあそれほど叱られても本人は、親たちほど落ち込んでいないのだが。


サヨナラ小学生ライフ
カナダだからなのか日本でもこうなのかわからないが、女子11歳は本当に難しい年頃である。萌は反抗的なわけではなく、扱いは難しくないほうだとは思うが、この1年で親のイメージする道理の通りにはまったく行動してくれなくなってしまった。体はこんなに伸びすぎるほどに成長しており、家族友人への自己主張もそれと同期して強くなっている。道理を判断する方面の精神年齢も早く、この外見とシンクロしてもらいたい。

2011/06/25

「カナダサッカーの停滞と NHL 戦術の単調さ」

「カナックスのメンタリティ」「カナダサッカーの停滞」「NHLについて考える」ほか。

=======================
■11/06/13(月) □ カナックスのメンタリティ
=======================

【NHLプレイオフ第6戦】1st ピリオドで 0-4。こ、これは....。うちの嫁は八百長だと怒っておりますが、ここぞというところで何度もガラガラと崩壊してしまうカナックスの姿は、「勝者のメンタリティ欠如」というやつでは....。

とにかく負けすぎはいかん。このファイナルは3戦目の大敗で流れが変わったのは間違いない。大敗するとラフになりすぎて身体的ダメージも残る。落ち着いて、負けは認めつつ点差をできれば詰めて、最後の1戦につなげるいいイメージを掴んでもらいたい。

このNHLプレイオフってやつはとにかく馬鹿げた長さで、2ヶ月28試合にも渡りピークを保たなければならない。優勝経験がないカナックスみたいなチームには本当に厳しいフォーマットだと思う。しかしボストンも調べてみると古豪で40年優勝はないとのことだから、しんどいのは同じか。

カナックス1点返した。よし。負けてもいいから流れをこっちに。クレイジー&クールに(鮎川誠)。カナックス2点目! よし! ――あ、取り消しか。しかしきた、流れがきた。間違いない。カナックスはクールになっている。

ボストン追加点、5-1。しかしこれはパワープレイ中だったので仕方がない。5人の状態で残り時間をきちんとコントロールして終われば、次の最終戦@ホームにいいマインドセットで向かえるはず。

よし。とにもかくにも2点取ってくれましたカナックス。1st ピリオド中はもっとひどいゲームになる可能性もあったので、いいことです。決戦は水曜日。

=======================
■11/06/14(火) □ カナダサッカーの停滞
=======================

【ゴールドカップ:カナダ VS パナマ】20分経過、0-0。今日はカナダのデキがいい。カナダはいつもそうなのだが、トーナメント3戦目くらいになると一緒にいる効果でサッカーがサマになる。前2戦とは段違いの組織感で人とボールが効果的に動き、ボールを支配している。あとはひらめきがあれば点は取れる。

30分、何度も決定機を迎えるも無得点。カナダの支配率はなんと65%。すでに2勝しているパナマのモチベーションが低いという可能性もあるが、パナマも負けると2勝で3チームが並ぶので安泰ではない。やはり今日のカナダのデキがいいのだろう。あと少し、頑張れ。

前半終了。ドン引きのパナマ守備陣を崩せないカナダ。こういう展開では、小回りの効く技巧的な選手のいないカナダはどうしても遠目からのクロスやショットばかりになってしまう。後半から最も得点力のあるジャバーが入ることに期待。というかなぜあいつはいつもフル出場しないんだ? そこが分からん。

分からんといえば、カナダで一番足技があるデロザリオをトップ下に置いた形がこれまで一番よかったのに、試合ごとに彼を左右のウィングに置くこの監督の考えが分からない。サイドでも彼は効いているけれど、彼からFWまで距離がありすぎる。あの距離を隔てて生きたボールをFWに渡すほどの技術はないのである。もっとFWの近くにいなければ生きない。

----------------------
トップ下に移動したデロザリオがいったん外に流してからボックスに飛び込み、DFに倒されPK! 自ら決めて先制。よし。ここでジャバーを投入して一気に大量点を。ぜひ。もう1点取れば得点差で追いつける。

と思ったがジャバーは出ず。コンディションに問題があるのだろうか。

そしてその後は負けるとヤバいと気がついたパナマがモードを切り替え、延々と猛攻することになる。俺は晩飯(お好み焼き)を作りながらの苦しい後追い観戦を余儀なくされたのだが、こうしてパナマが本気になると実はカナダはまったく押し返せないのだった。パナマはこれまで完全に手を抜いていたわけで、そんなチームを後悔させてやらずにどうする、カウンターで息の根を止めてやれ。

しかし前半押し込んでもシュートを打てなかったカナダが、数少ないカウンターから点を取れるわけもなく、最後は守備が決壊し、混戦からキーパーごとゴールにボールを蹴り込まれてドローとなった。敗退確定。

勝ち進めばもっとチーム状態が上がったのだが、カナダの追加点狙いも押し上げもイマイチ必死さに欠けていた。動揺しながらの調理でうちのお好み焼きも味がイマイチであった。がっくし。

----------------------
このゴールドカップ3戦を見て、カナダの選手の質から見てやっているサッカーのレベルが低すぎると痛感した。特にグアドループ戦とパナマ戦前半、あれだけボールを持てていながらシュートがまるで打てないとなると、攻撃陣の位置と動きを整理しアイデアと好機を引き出すことができない監督に問題があるのではないかと思える。具体的にはさっきも書いたように、FWにラストボールを通せる距離にデロザリオや他のドリブラーを置かないから個人技が連鎖しないのだ。

それにこの2戦でのカナダのチームスピリッツにも問題が伺えた。あと1点取れば勝ち抜けるのに、暑さもあるのだとは思うが、本当に必死に戦っている気配が見えてこなかった。

現監督ハート氏は、監督のなり手がないときにいつも臨時で出てくるみたいな人で、経歴を見たらやはりプロチーム監督の経験はない。選手としての経歴も、俺が夏期講習で通ったハリファックス・セントメリーズ大学だけらしい。懐かしい。弱小カナダとはいえ選手のレベルと所属チームの格は上がっているので(昔はスコットランド、今はブンデス勢が多い)、そういうアマチュア監督の指導では動かせないのではないだろうか。戦術的にも、メンタル的にも

実際年表を見てみると、サッカーカナダの監督でプロコーチは、2000 年のゴールドカップを勝ったオジェックだけだ。カナダサッカーはお金がなくプロ監督を雇えないから強くならない、強くないからお金がないという、単純な構図から抜け出せないでいるようだ。

=======================
■11/06/15(水) □ NHLについて考える
=======================

NHL本年度最後の最後の1戦。長いことカナダに住んで、今までオリンピック男女ホッケーの勝利祝福もご相伴に預かったけれど、NHLは本当に特別なんだなと最後の1戦を待つ町の緊張を感じながら思う。他の都市は分からないが、オリンピック男子決勝よりも明らかに盛り上がり張り詰めている。ボストンには野球もバスケットもあるけれど、バンクーバーにはこれしかないのだ。頑張ってくれ。

このファイナル数戦を見ていても、見るスポーツとしてはNHLよりオリンピックホッケーのほうが(さらにはスレッジホッケーのほうが)サッカー的なパスワークと組織プレイがあって面白いという気持ちに変わりはない。NHLは車のドラッグレースやインディ500マイルを見ているような感じで、狭いところをものすごいエンジンを積んだ大男たちが行き交っていく。

この速さとリンクの狭さ(スペースのなさ)でパスは不確実でカウンターが危険すぎるので、NHL はどうしてもドリブル(?)でパックを運ぶのがメインのプレイとなるわけだが、狭いので当然ハーフラインを過ぎたあたりでプレスがかかり手詰まりとなり、遠目からゴール方向へドカンと打って終わる。基本的にその繰り返しが60分間続くスポーツなのだ。選手交代は無限なのでプレスが落ちることもない。

リンクの広いオリンピックホッケーは、うまいドリブラーによるカウンター独走や遅攻でのパスワーク組み立てがあり、誰が上手いのか素人が見てもわかり楽しいのだが(かつてのパベル・ブレは強烈だった↓)、NHL のこの高速往復運動の繰り返しでは、真剣に見ても誰がうまく速いのかすら分からない。プレスサッカーの極致みたいなもので、個人技をやれるスペースも時間もないのだ。本当に、スポーツとして真面目に偏見なく見ていて NHL はひどく単調で戦術的につまらんのである。でこのプレス合戦内の闘いではボストンのほうが地力が高いので、押し上げる圧力が高くこぼれ球を多く拾い優勢というシリーズになっている。



俺にとってはバスケットも同様なのだが、こういう狭いところを超熟練者が猛スピードで行き交うスポーツというのは、戦術的なものはよほどの熟練観戦者にしかわからないのではないかと思う。好きな人はシュートトライや選手の美技や派手な肉弾戦だけでも十分に盛り上がれるだろうが、俺は戦術が分からないとスポーツが半分も楽しめず、したがってこのファイナルを見ていてもスポーツとしては面白くない。だが、とにかくNHLはとにかく、心情的にカナダに勝たせてあげたいのである。

----------------------
【最終戦開始】帰宅早々ボストン先制。しかしまだまだ 1st、時間はある。落ち着いて、まずは同点に。大丈夫。

1st 終了。ホッケーは本当に力量差が分かりにくいけれど、しばらく集中して見ているとカナックスが前にパックを運べないのが分かる。ボストンのフォアチェックがいいのか。ホッケーはパスが非常に繋がりにくいのでドリブル(?)で持ち上がるしかないのだが、すぐに狭い方に追い込まれてしまう。うーむ。

このホッケーの戦術について俺は知りたいのだが(――劣勢なカナックスが局面を変える戦術マジックはないのか、サッカーなら「デロザリオをトップ下に持って来い」と素人でも戦術が語れるぞと――)、ホッケーアナはプレイスピードに合わせ競馬中継並みに早口で、何を言ってるかまったく聞き取れない。戦術をリアルタイムで語ってくれる人はないかと Twitter で探してみるも、日本語では解説ツイートは見当たらず、英語では1万2千ツイート/hour とかでとても読めない状態。

----------------------
2nd ハーフ中盤、カナックスがやや盛り返したが、パスのつなぎはやはり劣勢に見える。先制したボストンが特に引いているようにも見えないが、前に持って行くたびにプレスの網にかかりポゼッションを失う感じ。

そしてカナックスのつかの間の攻勢が止むとまた押し込まれ打ち込まれ、ボストンに2点目。これだけ打たれていてはこぼれ球がいつかは悪いところに行くのである。ふー。

カナックスのパワープレイで攻めている中カウンターを食らい、3ゴール目。打った選手がゴーリーを押し出して入ってるではないか、これはサッカーなら取り消しだろうと思ったが、解説は「もしゴールは認められなかったらDFのファウルでPKだったろう」「打った後のフォロースルーでFWがGKに当たったのだからゴールは認められる」的なことを言っている。そのへんの基準は違うらしい。

さらにもう1点失い残り10分、ボストンはもう点を取る必要はないのでフォアチェックの圧力を落としており、このまま終わるだろう。この数試合を見た感想として、カナックスは単純に地力及ばずということなんだろうな。ボストンの選手が特にうまいとも強いとも感じないが(GKがこの2試合では段違いだったが、カナックスのGKも勝った試合ではスーパーだったらしい)、カナックスのチーム力が相対的に下なのは明らかだった。2ヶ月の長い旅を経てはるかここまでたどり着き、さらに3勝してホームに望みをつないだことが、カナックスにとっては大健闘といえる快挙だったのかもしれない。

----------------------
【試合終了】0-4。ボストンは実はカナックスよりもカナダ人選手が多いのだそうで、優秀な自国選手を国内に留めておけるようにならない限り、気の毒なことだがカナダはスタンレーカップを取り返せないのでありましょう。観衆はまだカナックスに声援を送っている。カナダ人は優しい。

戦術論を探して英語記事を読んでる時に、「カナダ人だけどボストンを応援してる、カナダ選手が多いし、カナックスは嫌いだ」って人がいた。もしかするとカナダのコアなホッケーファンには、カナックスなんて新参者で半可通な存在みたいな価値観があるのかもなーと思いMに聞いてみると、

もともとNHLの伝統対決はトロント対モントリオールで、カナダ対アメリカというライバル感情は昔はなかった。ボストンも昔からいるからおなじみだけど、カナックスが新参者という感覚はわかる

とのこと。なるほどねー。

そのへんの機微は、外国人+ホッケー無知には難しい。しかしそれくらいにカナダ国民にとってホッケーは特別なものなんだなと深みを感じるスポーツ感情のあやではある。静かな、静かな夜。試合中から町中が死んだように、あるいはもう死んだほうがマシだとでもいうかのように静かだ。

----------------------
うわ、夜10時、バンクーバーでは暴動が終わってなかった。試合直後は暴徒をポリスがポカポカ叩いて下火になっていたのに、知らぬ間に暴徒が盛り返し、町中に火が回っている。建物に火が移っている。デパートに泥棒が入っている。ポリスはどこに行ったんだ?

=======================
■11/06/16(木) □ 暴動が終わった朝
=======================

暴動が終わった朝。市長や経済人が、「オリンピックで築き上げた町のイメージに一部の無法者が傷をつけた」とさかんに嘆いているが、そんな風評被害を心配する姿はやや見苦しい。今朝から朝イチで大量のボランティアが掃除をしてるとのことで、素晴らしい町であることに変わりはない。ただ馬鹿者はどこにでもいるということだ。

----------------------
夜、「チケットトゥライド」のオンライン・デモ「USA 1910」をプレイ。ようやくチケライにも慣れてきて、つなげない路線は見切って新チケットを取る、ロス>カルガリーを右から回してつなぐなど戦略性が出せるようになり、非常に面白い。初の勝利。

このデモはもうじき期限が終わってしまう。父の日のプレゼントに鉢植えを買ってくるとMが言うので、「鉢植えよりもチケットトゥライドを買ってくれ」とお願いすると、誕生日じゃないのよと一蹴された。まあそうすね。

2011/06/12

「初めてのボードゲーム会」

「子供カメラを探す」「スペシャル日系買い物誕生日」「ディア・ドクター」「日本語学校でコントを希望」「ゴールドカップ開幕」「日本のミュージックビジネス」

=======================
■11/06/01(水) □ 子供カメラを探す
=======================

 明日萌の誕生日なのだが、Mは出張中だし本人も去年同様暑くなるのを待って水着パーティをやりたいとのことで、明日は何もイベントがない。一切何もしてやらないのはかわいそうなので、こないだ見かけた激安ビデオカメラでも買ってやろうかなと考えている。顔面至近撮影でツバだらけにされるので俺のカメラはもうキッズに貸したくないが、どうせ撮るのは顔のアップなのだから、激安カメラで十分なはずだ。


驚異の廉価カメラ、$9.99
 というわけで、子供用ビデオカメラ$10(!)とDS用スピーカ$5を買ってきた。カメラは単4バッテリー駆動で1GB、カードスロットまであるという本格的なもので、クオリティはダメダメだろうがこんなおもちゃ価格なんだから、動きさえすれば買って後悔するわけがない。Youtube で見る限り、予想通りのキッズ画質で撮れそうである。

=======================
■11/06/02(木) □ スペシャル日系買い物誕生日
=======================

 朝イチで萌にカメラを渡す。期待通り大盛り上がり。さっそく使ってみると絵は予想以上にきれいだ。せっかくの誕生日なんだから、このカメラを学校に持って行ってみんなのバースデーメッセージでも録画しておいで。

----------------------
 学校のインドアホッケーを朝初めて見に行くと、萌のチームはすでに準決勝まで勝ち上がっており、しかし今回は相手が明らかに強い。ガンガン点を取られ、失点のたびにチーム全員の表情がどんどん険悪になっていく。「そんなに気にすんなよ」と横から声をかけるも聞こえない。子供スポーツって難しい。

 萌はホッケーなぞ当然超ヘタでチームの足を引っ張ってるので、交替時にとにかく相手のあのでかくてうまいFWをフリーにするな、間を詰めるだけでもディフェンスになる、ボールを拾ったら体で敵からボールを守り、そして前にクリアするんだとサッカー的にアドバイスする。これは即効性ありで、次のピリオドから萌のディフェンスがそこそこ役に立ち始める。技術はなくてもチームスポーツならやれることはある。

 子供のスポーツを見ていると、自分も子供の頃はこうで、試合中何をしたらいいのかまったく分からず頭が真っ白だったんだよなと思う。コーチがいいチームがすぐに強くなるのは、子供の真っ白な頭に必要な情報を単純な方法で入れてやれば、こうしてすぐさま効果が現れるからだろう。

 結果は 15-0 の爆負けで、あまりの士気の低さに試合後校長がスポーツマンシップとはとチームに5分もの訓示を垂れるほどの負けっぷりだった。だがこれは仕方がない。相手は強かったし、でかくてうまい奴をFWに置いて徹底して攻めてきた戦略勝ちでもあった。

----------------------

指までなめちゃうビアードパパ
 ビデオカメラ+DS用スピーカで狙い通りクラスパーティとなり盛り上がったという萌をピックアップし、Mを空港へ迎えに行くついでにリッチモンド・アバディーンセンターに直行、「ビアードパパ」でシュークリームを食べさせてやる。ついでダイソーで好きなものを5点買っていいよと買い物。そしてたこ焼ディナー。萌の日系買い物誕生日フルコースだ。

 そしてブラブラした後空港でMをピックアップし、プラン通りに9時に帰宅。お疲れ様でした。いい萌の誕生日であった。ダイソーでの買い物は「こんなものがあるのか」と楽しく、買ったアイデア商品を帰ってから使うのも楽しい。萌は何を買うかと思ったら意外や脳トレ的パズルブックを買っていた。これは日本語を読む訓練にもなっていいね。

 あの萌の$9カメラは実際驚きの実用性能で、レンズが超しょぼいので遠距離だと分解能が足りず役に立たない(まるでピンぼけのように写る)が、子供が好きな顔どアップだと文句なくいい絵が撮れる。これは素晴らしいオモチャだな。買ってよかった。

=======================
■11/06/04(土) □ ディア・ドクター
=======================

 映画【ディア・ドクター】。八千草薫が自分の病気について喋り始めた瞬間、鶴瓶は話に集中するためにTVの野球中継を切る。一刻を争う外科処置にうろたえた鶴瓶が、針を刺す位置を余貴美子に目くばせで教えてもらう。そうした細部が実にいい。後者のシーンなど、アメリカ映画なら怒号のやり取りで熱いハートの大成功となるところだが、その代わりに余貴美子の壮絶な表情とささやき声がある。たまらない。メインの物語は「??」と思うところも多いのだが、こうした細部の味わいは日本映画ならではだ。

 刑事が鶴瓶を知る関係者に聞き込みをして回る。警察がそんなに熱心にニセ医者の動機や心情背景を調べるとも思えないのでこの刑事は狂言回し感が強いのだが、ニセ医者とわかったあとの村人の反応が面白い。だまされていたという裏切られ感と、しかし被害といえるようなものは何もなかったという実感とが、小市民のズルさ寄りに表現されていく。そしてその反応の余韻が、ラストシーンにつながっているのだ。いい映画でした。

=======================
■11/06/05(日) □ 日本語学校でコントを希望
=======================

 日本語学校の卒業発表会。萌は小5なのだがカナダ日本語学校ではなぜか卒業となる。直前が日本で育ちバイリンガル弁護士になりたいという強烈な上昇志向の子だったのでいくぶんスパークが奪われたが、萌の卒業スピーチもばっちりだった。

 しかし日本語学校の発表会は「わ・た・し・たち・わあ。なになに・をお。べんきょうしました」みたいな和式唱和スタイルが相変わらず大半である。幼稚園課は仕方がないが、小2~3以上は子供たちも苦笑しており、かんべんしてくれと思ってるだろう。漢字が難しいので日本語学校が嫌いだと正直にスピーチしていた子がいたが、反抗期にさしかかる萌くらいの年頃の子供にとってはこの《日本語キッズライフにまつわる幼稚さ》も、間違いなく日本語学習へのネガティブな要因となっている。

 ー番面白かったのは家で日本語を使わない子たちによる寸劇で、医者で鼻にティッシュを詰め治療されるという、子供ら自身で考えたに違いないコントに皆がゲラゲラ。唱和や原稿丸読みじゃなくて、こういうパフォーマンスのほうがやっぱいいすよ。

 いっそのことだな、こういう日本語コントを習う学校があればいいのではないか。現実としてカナダの日本語学校は、宿題を見る限り単なる漢字読み書き塾にすぎない。これで日本のマンガを読めるようになる子も中にはいるだろうが、それは家で親が日本語物資を子供に与え、子供がそれを消費しているおかげであって、萌のようにカナダカルチャーにずっぽり入っている子にとって日本語学校の勉強は実用には結びつかない。片親がカナダ人の子供はどこもうちと似たようなものだろう。

 だから漢字ドリルの時間を減らしても俺はまったく構わないから、日本語を使うアクティビティとしてコントをやってほしい。こういう楽しみがあれば子供らが毎週通うモチベーションが上がりまくるだろう。萌が卒業スピーチで日本語学校一番の思い出として同級生が言ったジョークを挙げていたように、笑いは一番強いモチベーターなのだ。学校でコントを毎月1本習い、家で親に披露するとかいった具合になったら素晴らしく楽しいことだ。先生に希望を話してみよう。

=======================
■11/06/07(火) □ ゴールドカップ開幕
=======================

 【ゴールドカップ(サッカー北中米選手権):USA対カナダ】見どころのあまりない試合であった。個人の力量で上回りバランスのいい米が順当に勝ったがデキは悪く、コンディションで上回るカナダは長時間攻めることができたのに、まるで攻撃が形にならないのである。長く強い球出しなど個人の力は昔より上がっているのだが、PKエリアなど大事なところでボールをコントロールできない。

 終盤のカナダの猛攻もエヴァートンGKのハワードが止めまくり、調子が悪いなりになんとかしてくれるドノヴァンら一流選手がいるUSAがうらやましいというゲームであった。カナダはカナメのMFの位置にいるのが、今季加入のMLSで全然勝てず、試合を見ても今のところ見るべきものがないバンクーバーホワイトキャップスの選手だもんなー。あそこにうまい選手がいてほしいとほんとに思った。

 ま、カナダのコンディションだけはいい。グアドループとパナマには走り勝ちできるでしょう。それくらいしか今のところは期待できん。

=======================
■11/06/09(木) □ 日本のミュージックビジネス
=======================

 AKB総選挙という(どうせ不愉快になるのでなんの選挙なのか調べたことはない)話題に日本は席巻されたらしい。カナダでもアイドルはいないではないが、たとえばうちの萌はジャスティン・ビーバーにもアヴリル・ラヴィーンにも興味はないように、国民こぞってアイドルに注目するなんてことはあり得ない。日本では大人までもがAKBの話題に付き合っているのが変なところである。

 NHKの音楽番組で今日、ウーバーワールドというバンドが東京ドーム公演を成功させたと紹介されていた。昔 Boowy が武道館をやったとき「ついに国産ロックバンドがここまできた」というエポック感はすごかったわけだが、今は普通に人気があるバンドは東京ドームでやれるらしい。

 つまり、日本ではミュージックビジネスの成功の単位が甚だしくデフレしている。《ロックバンドの普通の成功が東京ドーム公演で、一番人気アイドルグループは総選挙で国民的行事》という成功の尺度になっている。

 それが悪いこととは言えないが、ものごとの価値をなるたけ高所から公平に眺めたならば(まあそんなことは不可能ですが)、ずいぶんイビツに見えるのは間違いない。成功は集中ではなく分散してほしいな。

=======================
■11/06/11(土) □ 初めてのボードゲーム会
=======================

 甥MKの関連会社のバンクーバーボードゲーム会に招かれる。会場につくと昔うちに一時居候していた懐かしいLNがいた。最後に音沙汰を聞いたのは奴が南アWCを見に行った後、放浪していたアフリカで「汚職警官に捕まり出国できず困っている」という話を聞いたあたりで、彼は釈放された後も旅を続け、なんとバイクで転倒し大怪我をしていたのだった。お前なあ、気をつけなきゃ駄目だろうと肩を叩くと、その通りだよねと笑う。まったくいいヤツではある。

----------------------
 会場で山積みのゲームを調べ、俺が欲しくてたまらぬ「チケットトゥライド Euro」を発見。やっ・た。しかしMKが俺の知らぬゲームをどんどん運んでくる。

 まず【ギロチン】というカードゲーム。手札のアクションカードを使い場札の貴族カードの位置を操作しギロチン送りにするというもの。悪いゲームではないが、大量のテキストを読まないと効果が分からないアクションカードが主だというのは、それだけでゲームデザインを好きになれない。ドミニオンでもそうだが、カードに書いてある効果とはつまり《基本ルールに対する例外ルール》なわけで、効果テキストに依存するゲームというのはゲーム中ずっとルールを苦労して読んでいるのに等しい。ドミニオンほど面白ければやがて全部効果を覚えてしまうのでその苦は減少していくが、ギロチン程度のゲームにこれだけのテキスト読み苦労が付随していてはとてもバランスがとれん。

 続いて【カルカソンヌ2】、LNと競って俺の勝ち。やっぱカルカソンヌは例外ルールがなく得点に集中できていいよ。いつやってもサイコー。LNがカルカソンヌ好きだとわかったのもうれしい。


 萌はその間、うちから持っていった「オイそれはオレの魚だぜ」を小さな子とやっていた。ルールが1つだからどんな小さな子にもできるが、子供が盛り上がるにはちょっと少しパンチが足りないかもしれない。他の子供らはやはり「人生ゲーム」をやってました。

 次はまたMKの選択【ゾンビダイス】。ショットガンが3つ出るとバーストというだけの単純なダイスゲーム。子供が学校の休み時間に鉛筆サイコロでやる程度のゲームである。まあ他に何もやることがなければないよりマシだねという程度。

----------------------
 そしてさあ次はというところで、またMKがゲームを出してくる前に俺が【チケットトゥライド Euro】を突っ込み、ようやく開始。オンラインでデモを楽しみ、いつか買いたいと思っているゲームそのものである。ワクワク。

 マップとカードのグラフィックと質感は評判通り素晴らしい。俺は色弱なので、チケライ・オンラインではカードの色が分かりにくく困っているのだが、各カードにわかりやすいマークがついており問題はなかった。素晴らしい。俺以外はみんな初めてなので、ルールのあらましを知っている俺が説明しつつ(※)、トンネルと駅舎ルールは省略してゆっくりと味見プレイ。
(※)しかしこれだけデザインが明快なゲームでも、英文ルールブックは分かりにくい。最初にチケットが何枚か、手札が何枚か、場札が何枚か、ルールブックの地文をほぼ1ページをまるまる読まないとわからない作りになっていたせいで開始に手間取った。各何枚配布なのかを冒頭に箇条書きにしておけば即座にゲームを始め、遊びながら不明な部分をチェックできるのに、なんでこんな当たり前なことが分からないのか英語マニュアル書きピープルは。

 序盤は全員「これでいいの?」という感じで恐る恐るプレイしていたのだが、このゲームのデザインは実にシンプルかつ合理的で、数ターンもしたら全員のゲーム脳がクリックし、どんどん打ち手が早くクレバーになっていく。この説明不要性がカルカソンヌ同様ゲームデザインの勝利だよな。何も読む必要がないし、例外を知る必要もない。どうしたら多く点を取れるかを盤面から読み取り考えるだけでいい。《コアのメカニズムさえわかれば、あとは誰でも知力を絞る気持ちよさが味わえる》、こういうゲームこそが美しいと俺は思う。


俺様の華麗なカディス-ストックホルム線
21点(黄色)完成に憤る甥MK
 俺の向かいのアジア系の奥さんは落ち着き物静かでゲーマー的に賢そうな人で、この人の打つ手がなかなか気持ちがいい。おおそこに打つか、MKの路線が妨害できるではないかえらい、という感じ。こういう声の低いアジア系カナダ女性にはたまに出会うが、スマートでかっこいい。アジアで育ったらこの骨格の人からこんな低い声は絶対出てこない。うちの萌が今そうであるように、小さい頃から高く子供っぽい声を嫌い低く強い声を出そうとするからこうなるのだろう。今の萌の喋り方は年齢不相応で不自然だが、こういう声に育ってくれたならそれはすごくいいよなあと思う。

 中盤、俺は2つの短距離路線が完成し、それを使ってカディス-ストックホルム21点の長距離路線も完成してぶっちぎりとなる。あと少しで長距離路線が完成するというあたりでは、うれしくてニヤけ顔を抑えられない。路線を完成しても見せないのが正式ルールらしいが、完成したらその場で発表しスコアを入れたほうが盛り上がるに決まってるので(デメリットも思いつかない)、みな完成するごとにじゃーんと発表し、オオいいねえ美しいと盛り上がった。

 俺はさらに新チケットで短距離をもう1つつなぎもうスコアは余裕だったのだが、最後にMKがモスクワからリスボンあたりをつなぎ追いついて、俺がもう1枚引いたチケットをつなげずマイナス点を食らい、これで負けとなった。うーん、やはりコンピュータ相手のオンラインよりもはるかに面白い。終了後、これは面白いわねえとアジア系奥さんと話に花が咲く。これは買うしかないな。

----------------------
 最後にMKがまた持ってきた【パンデミック】。俺は同作者の「禁断の島」がまるっきり合わなかったのでパスしたのだが、ゲームはえらい盛り上がっており、誘われて俺も2ゲーム目に入る。しかしやっぱり俺は「禁断の島」と同じ感想だった。

 システムはクレバーである。だんだんリスクが上がっていくところ、閾値を超えると一気に爆発的感染を起こすところなど、誰もがなるほどと唸るだろう。そのシステムの整合美を味わい、システム上の最適解を解いていくドリルという感じで、俺はあまり遊びをやってる気がしないのだ。このゲームシステムでは誰がやっても、分担して感染都市をケアし、知識(カード)を集中させ特効薬を作るという作業内容に大差はないはずである。システムとしては見事だが、これを多人数の「ゲーム」としてやることに意味があるのかどうかよく分からない。ボードゲームをするということはよくできたシステムを工芸品のように慈しみ味わうことでもあるのだが、それだけでは物足りない。

【追記】 パンデミックにおける勝ち負けは、高ポイントを得るために賭けに出てのるかそるかといったゲームっぽいものではなく、前に出た感染(エピデミック?)カードが早すぎるタイミングで再度出るかの「確率」によりもたらされるものとなる。プレイヤーが協力して危機に対処することは楽しいが、感染カードが悪い都市に出てしまえばその努力とあまり関係なくあっという間にゲームセットになる。少なくとも俺の見た2回ではそうだった。好きな人はそれでああ惜しかったと盛り上がるわけだが、俺はゲーム中自分の判断に独自性が薄い上に、ゲーム結果も自分の判断との関連が薄いと感じ、気持ちを深くコミットできない。「禁断の島」でもそうだった。

 しかしMKたちにはほんと大受けで、3回も連続でやっていた。ロジックパズルなどを好む人々にはすごく合うのかもしれない。マイクは数学が異常にできる割にカルカソンヌは妙に弱いし(笑)、チケライも楽しんだけど俺ほど熱狂はしなかったので、俺とは明らかに嗜好が違うんだよな。俺はこうした理詰めのゲームよりも、カルカソンヌやチケライやサンファンのように、偶然性からチャンスを掴みものを作り上げて突き抜けるようなゲームに最も大きな喜びを感じる。

 というわけで、人の希望との兼ね合いがあり思う存分やりたいゲームをできたわけではないが(――「カタン」と「プエルトリコ」もあったのだが、誰も箱を開くことはなかった――)、とにかく憧れのチケット・トゥ・ライドがやれてうれしかったのであります。買います。今でも USA にするか Euro にするかで迷っているけれど。