「木更津キャッツアイでオフ」「夏服の女たちも見納め」「バンクーバー散策」「YT名画劇場」「絵にならない不幸-自転車泥棒」
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■14/08/31(日) □ 木更津キャッツアイでオフ
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親戚のランチに呼ばれたが長駆出かけて飯を食い帰るだけなので俺は辞退し、一人でスパゲティを食べつつ「木更津キャッツアイ」を見ながらブログを書いたりカメラのテストをする。落ち着いた休日。
「木更津キャッツアイ」は12年も前のドラマなのだが、アナーキーでキック力半端なくありつつ投げやりなところが全然なくちゃんとしていて素晴らしい。「あまちゃん」の頃みんながクドカン節として影の伏線的に楽しんでいたのがこれかーと改めて感じられる。
それに櫻井翔が天下の二枚目とされてる理由も阿部サダヲがコメディ俳優として人気の理由も、これを見てよくわかった。阿部サダヲこりゃすごいわ、すべてがキレキレだったんすね。薬師丸ひろ子もすでにこの頃キュート極まりないコメディエンヌだったんだなー。なんにも知らなかったよという思い。
こういうベースとなるエンタメ背景知識がない俺はやっぱり半分外国人で、「あまちゃん」を見る喜びも木更津ネイティブな人たちに比べるとやや体温低かったのかもしれない。それでも十分に楽しかったけど。
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■14/09/03(水) □ 夏服の女たちも見納め
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もう日が射しても暑くなくなってしまった。夏服の女性たちもそろそろ見納めだなと望遠 75mm あたりでカシャリ。小心な俺はこれくらい遠くで、これくらい「レンズはそちらに向いてませんからご心配なく」なフリをしないと通りがかりの人を撮れない。ときには通り過ぎる人をやり過ごし、その美しい後ろ姿をありがたいありがたいと撮らせていただいたりしております。
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久しぶりに萌と日本語勉強会、お題は進撃の巨人「紅蓮の弓矢」。家畜の安寧虚偽の繁栄この豚野郎とすごい歌詞なんで笑いながら意味を解釈していく。萌はいつもとはケタ違いの熱意でサビを歌える英詞にしていた。
この歌は曲も転調の嵐ですごいんだが、萌はコードをネットで探し、間違ったところを耳で拾って一生懸命直し弾いている(ネットでコードを探すとどうして必ず間違っているんだろう?)。まあ頑張ってくれ。
萌が自発的に(!)辞書を引いて調べたのだが、この写真の下に書かれたイェーガー(Jagar)って「狩人」って意味だった。おーなるほど。難解な歌詞を読解しつつ、こうして単語や意味がわかるたびに詞がアニメの世界観に見事に合っているので盛り上がるのである。グローバル学習である。
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■14/09/06(土) □ 空返事される父の背中
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US オープン準決勝の錦織を見て緊張した静かな午後。錦織はブレイクポイントを握られぎりぎりジュースに戻し、しかしまたブレイクポイントを握られ……が1ゲームで10回ほども続いた第3セットあたりは本当に苦しかった。テニスって勢いでは格上に勝てないスポーツだなとつくづく思った。そのセットを取ったのだから本当に偉い。
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最近萌がなんの返答にも「ンー・フン」という空返事を使い始め困っている。「起きて朝飯食べなさい」「ンー・フン」「iPod はやめなさい」「ンー・フン」。そして何の行動も起こさない。
返事界ではこれまで「はい」が最も好ましく「I know(わかってるから言わないで)」が最低だったのだが、「ンー・フン」はもはや口を開けることすらしない鼻音(だから表記不能)による I know であり、これはかなわん。完全に定着する前に消し止めたい。
しかしやめろと言っても TV でもみんな言ってるしフツーだと萌は主張する。
「いや萌のンー・フンは I know をさらにレイジーにした、つまり《口を開いて返事をするのも面倒なときの I know》じゃん。わかる?」
「……」
「TV や会話の中ではちゃんとしたフィードバック(相槌)だけど、言いつけに《ンー・フン》というのはほぼ無視なの、わかる?」
「ノー」
「……」
やれやれ。ため息。
『はい→うん→んー→Yeah→Ya→→(ここからはもはや返事としての魂を失っている)→→OK→I know→ンー・フン』
という序列かな、日系ティーンエイジャーの返事ワールド。
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【おやじの背中:なごり雪】大声を出さないと聞き取れず声量を上げると怒鳴るなという、うちのばば様と同じな西田敏行に苦笑してしまった。しかしペーソスある倉本聰人情噺として展開しまとまるのかと思ったら、最初から最後までわがままは許され皆に愛されて、よかったですね頑張った人生に甲斐がありましたねとしか言いようがない話だった。
この「おやじの背中」連作はずっと見ているが、田村正和、役所広司とどの親父も愛らしい娘に大事にされ、よかったですねとしか言いようがないファンタジーばかり作られている。3作目にして老いの孤独がテーマなのかと思ったら、さらにしょうもない敬老ばなしだという。
「おやじの背中」なんて大層なお題をつけるなら、愛されないおやじも描いたらどうなんだろう。そしたらなにか特別な感情が生まれるかもしれない。この連作に描かれたおやじたちとは違い十代の娘にンー・フンとあしらわれ憤慨している俺には、これらの話がリアルに感じられないのである。西田敏行は俺よりも上の世代なので、「なごり雪」もやっぱりどう説明されても空回りしてると思ったし。
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【倉本聰】俺とMが日本に住んでた頃に「北の国から SP」を毎週連続でやっていて、日本の超メジャーなドラマと説明するとMが食いついたので、純が東京の出稼ぎ先で事件を起こしてしまう回などを一緒に見た。Mはもごもご僕わ僕わ言う純にフラストレーションを感じ、「はっきり喋れ純!」と毎回イラついていた。まあそうだろうね。
しかしとつとつと喋りながら純のために風呂を沸かしてやる五郎の姿には感動してましたよ。やっぱり日本の口下手な若者はどうだかわからんが、日本の寡黙なおっさんには世界に通じる魅力があるのである。
Mと見た「北の国から SP」でもう一つ覚えてるのは純がラブホテルに入るも女の子に拒否されショボとなったときに女の子が同情してその気になってくれたシーンで、「男 は す ぐ こ れ だ!」と奥様が激高したことである。そそそそうなんですか(笑)。
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■14/09/08(月) □ バンクーバー散策
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ついにMの博士論文審査。Mがこれほど緊張したのは出産以降見たことがないくらいな状態。教育系の専門的な分野で俺と萌は立ち会っても内容がわからんので来なくていいと言われ、バンクーバーダウンタウンを散策して待機し、打ち上げに合流することとなった。
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久しぶりに歩くバンクーバーは日本食屋が非常に多くて、「Sushi なんとか」系は怪しいが丼専門店はちゃんと日本の人がやってるっぽい。そういう店の1つに行列ができてたので入ったのだが、めっちゃ大衆食堂的な作りで、1人客は相席する感じの店になっていた。
おばちゃんが大声で注文を読み上げ、エプロンをした日本人のお姉さんが「すいません」とかいいつつさささっと走り回ってテーブルを拭いてくれ、お茶は自分で湯のみに汲んでくる。そして味もまったく普通においしい大衆食堂で満足したのだが、しかしカツ丼9ドルは大衆食堂の値段ではないような気がする。この店の作りと味でこの値段でこんなにお客が入るんだから、やっぱり日本人が普通の日本食を出せばカナダの外食産業では無敵という状態なんではないかと思う。
しかし都会はタバコを吸う人が多いなあと気がついた。町のどこを歩いていてもタバコの煙が漂ってくる。俺も昔はタバコを好きだったんだけど、頭が痛くなってしまった。郊外のほうが明らかに空気はクリーンです。
カナダは公共の屋内では全面禁煙なので大丈夫なんだけど、日本に行くと食べ物屋でタバコの煙に苦しい思いをする。禁煙を成し遂げた者はたいてい「もう余命いくばくもないと宣告されたらもう一度タバコを吸いたい」などと禁煙直後は言うんだけど、実際はもう吸えないんだろうな。あイタタタタタ…。
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夏休み中毎週恒例行事としてグランマとバンクーバーを散策している萌は「バンクーバーを熟知」しており、出かける前は俺を案内すると張り切っていたのだが、ガスタウン以外は知っているところはなく、あてどなくグランヴィルやロブソンをぶらぶら歩く。やっぱ俺たちは観光客ではないので、バンクーバーを歩いてもそんなに盛り上がるわけでもない。食べ物屋は充実しているがそうそう面白い店もない。レコード店や古い建物がある路地に入って写真を撮る程度。
萌とグランマはいったい毎週ここで何をやってるのかと尋ねると、ゴージャスなランチを食べ図書館でグランマの本を借り帰ってくるだけらしい。なんだそうなのか。まあグランマも萌も外食が好きなのはわかるが、2時間半かけて往復して実質ランチを食べてるだけか。気長なことである。
写真は前半ガスタウンは曇っていて色が出ず露出が合わず(空に引っ張られ地上が非常に暗く写る。中央重点測光で改善した)、途中から晴れたが撮るものが見つからず高層ビルばかり撮っていた。人を撮りたいのだが、やはり怒られそうな気がしてレンズを向けられない。
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そして審査が終わる頃に大学の会議室へ。まだ結果は出ておらず、取り囲む同僚の研究者たちが「素晴らしかった、絶対間違いない」と力説する中「駄目だったらもう論文書き直しなんてする気力がないからあきらめるわ」とそわそわするMを半時間ほど待たせ、審査結果が出る。合格! やっ・た。仕事をしながら途切れ途切れに研究と執筆を続け足掛け8年、ようやくM博士の誕生です。
審査員や研究者たちとパブで祝杯を上げ帰宅。「当初思っていたほどの論文にはならなかった…」と本人が落ち込んでいたので心配してたのだが、皆が絶賛していた。やっただけのことはあったのだろう。本当に長いことお疲れさまでした。明日はお祝いになにかうまいものを作ってあげよう。
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■14/09/09(火) □ YT名画劇場
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嘘かと思うが6月に始まった BC 教組のストライキは間に教師たちの夏休みをはさみ継続中で、8月から政府との話し合いが再開され、交渉が決裂に次ぐ決裂となっている。つまり小中高は新学期がいつ始まるかまだまったくわからないという状態。
「政府はわざと交渉を決裂させ父兄の敵意を教師に向けようとしている」と識者は見るが、生徒も親もとにかくイラついている。学校を始めてオンゴーイングで交渉してくれまいか。子供がアホになっていく。学力はともかく、子供がスマホにかじりつきくだらん動画ばかり見る日々が続くのは耐えられん。
夜は博士号お祝いに完璧な天ぷらを作った。うまい。おめでとう。
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BSで古い映画をやるというツイを見て、そう日本に住んでた頃は古い伊仏日米名画をたくさん見れたんだよなあと切なくなった。カナダじゃハリウッド以外のクラシックはまったく放送されないし、レンタルにも有料ネット映画にも在庫はほぼ皆無。俺はああいうものをもはや見れずに死んでいくのか…
…とふと前にチャップリンがあったなと思い立って Youtube に行ってみたらフェリーニの「道」があった。ああ素晴らしい。隅から隅まで美しい。なんとどこまでもかわいらしいと、ジェルソミーナと戦後間もないイタリアの景色や結婚式や大道芸の人たちの様子にただただうっとりさせられる。映画を見てこんなに美しいと思ったのはいつ以来だろう。まったくハリウッド大作とか CG とかどうでもいいな俺は。
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■14/09/10(水) □ 絵にならない不幸-自転車泥棒
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「道」に続き今夜もYTでクラシック映画「自転車泥棒」。ただ自転車を盗まれただけすべてが台無しになってしまう、戦争直後の貧困がヒリヒリと悲しい。
俺は萌が大騒ぎする「レ・ミゼラブル」にまったく心動かず30分で見るのをやめたのだが、この映画は最後まで目を離せなかった。「レ・ミゼラブル」はヒロインとその不遇が美麗すぎて逆に「ここに描かれなかったのが本当の、絵にならない不幸だろう」と思ってしまい感動できなかったのだが、絵にならない不幸はこういうところに凝縮されていた。この映画にはストーリーなど何もない。「道」のような美しいシーンも特にない。主演の男は役者ですらないらしい。ただただ焦燥感だけが描かれている。それがどんな現代ハリウッド大作よりも痛々しいのだ。
最後にセリエ A のローマとモデナの試合が出てきた。さすがはカルチョの国だ。――あ、Youtube には小津もあるではないか。見ねば。ありがたし。
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