2017/01/11

【Xbox 360】LA ノワール日記(2)殺人課編「気の毒なエブリン・サマーズ」

(ネタバレは特にありません)

12月28日


前「墜ちた偶像」事件、巨大な映画オープンセット廃墟での大アクションで交通課の仕事を終えたのだが、頼みもしないのに殺人課に昇進されてしまった。事件は怖いわ相棒はいけすかないオッサンに代わっちゃうわで、俺フェルプス刑事は仕事に行くのが鬱である。

「なんでこう事件が多いんだろうね」とぼやくと嫌味なおっさん相棒ラスティは、「戦争だよわかるだろ。帰ってきた連中が荒れてるんだ」と答えた。

物語が進む大戦直後 47 年の LA は実際に、犯罪多発で荒れてたのだそうだ。このゲームの事件はそれらの事件をモデルにしてるらしい。日本も同じだったろう。勝っても負けても戦争は傷を残す。フェルプスの軍隊回想シーンもそろそろ戦中の出来事になっていくと思われ、それがこのゲームの大きなテーマなんだろう。

俺フェルプス刑事が被害者やその娘さんに気を使うシーンがよく出てくる。フェルプスは正義感が強すぎ腹立たしい奴だが、弱者を守ることには非常にセンシティブである。徐々に彼のそういう気質が見えてきて、シンパシーが湧いてくる。

殺人課最初の事件「赤い口紅殺人事件」解決とともに Disc1 終了。え? なんだこのあっけない終わり方は――と書いたら、結論はまだ早いと先にプレイしていたマコ署長がリプしてきた。そうかこの事件が伏線として続くのか。なるほど。面白い。

12月29日

殺人課第二話、「金の蝶事件」。被疑者が二人おり、尋問後どちらかを俺が選ぶことになる。しかし状況証拠は揃っていても、確定的なものも自白もない。仕方なく片方を選んだが釈然としない。ニ事件続けて立件が弱すぎるだろうこれは…。



これでいいのだろうか…と納得行かない俺フェルプス刑事は、続くカットシーンで「本当に事件は解決したんでしょうか」とボスに問うてしまう。すると機嫌よかった彼がいきり立った。ボウズお前は黙って働け! ボスボスボス! そんな言い方ひどいわ。彼は何かを隠している。俺が確信なく拙速に犯人を選ばされているのは、手柄を急ぐ上からの圧力なのだ。なるほど。面白い。





路上強盗(メインストーリーとは関係のない単発事件)を追いかけていたら地下鉄の構内に入ってしまった。電車が通っている! すごい。興奮して通り過ぎる電車とのセルフィーにトライしたが、ピンぼけで失敗した。残念。

しかし地下鉄まであるとはすごいなと構内を5分ほどテクテク歩く。駅もあるのかもしれんが見つからず、あきらめて非常口から地上に戻ると事件現場から何キロも離れた場所だった。地下道が本当につながっているこの精密模型感が素晴らしい。これを作ることはどれほど楽しく、かつ大変だったことだろう。

パトカーを取りに徒歩で帰るのは億劫なので、通り過ぎる車に刑事証を見せ「警察だ! 緊急なのだ車貸してくれ!」と車を借りて帰る。刑事って自由だ :-)

12月30日

3話「絹の靴下事件」4話「白い靴事件」。いくつもの事件がやはりネックレスのようにつながっていることが見えてきた。そのつながりを暴きたくて、俺フェルプスは LA の町を駆けずり回っている。戦傷者が暮らすホームレスの村なんてものがあった。そしてそこに住む浮浪者たちが米政府や警察への鋭い敵意を抱いている。そういう想像してみたこともない社会背景が描かれる。戦争が終わって明るい LA の、陰になった部分にフェルプスたちの仕事がある。



そして第5話、エブリン・サマーズの孤独な死。捜査はどの事件も大差ないので中盤にかかると繰り返し感が強いのだが、このゲームの物語とそれを演じるキャラの訴求力に、俺は心を持って行かれている。故郷に帰れという母からの手紙を持ったまま都会で荒んだ暮らしをしたこの女性のエピソードは、フォレストガンプみたいだと思った。ゲームでは手がかりを求め彼女の何もないねぐらに立ち入ることになり、胸が痛む。



身寄りのないエブリンの死を知った知人の酒屋店主は、彼女の身の上を俺に短く語り、「彼女は悪いことなど何もしていない」と無念を口にする。俺フェルプス刑事は彼をハグしたくなった。エブリンのことは、母の手紙とこの店主の言葉しか知らない。それだけで彼女の孤独と哀しきイノセンスを感じ、胸が揺さぶられる。家族とうまくいかないジェーン(というドラッグクイーン)を歌ったディランの、「クイーンジェーン・アプロキシメートリー」が脳内に流れてくる。

『クイーンジェーン・アプロキシメートリー』

When your mother sends back all your invitations
And your father to your sister he explains
That you’re tired of yourself and all of your creations
Won’t you come see me, Queen Jane?
Won’t you come see me, Queen Jane?

君の母親は君の招待状を全部突き返し
父親は君の妹にこう説明する
君が自分自身と、自分がなしたことの全てに飽き飽きしてるとね
まあ俺に会いにこないか、クイーンジェーン

Now when all the clowns that you have commissioned
Have died in battle or in vain
And you’re sick of all this repetition
Won’t you come see me, Queen Jane?
Won’t you come see me, Queen Jane?

いまや君があてにした道化師たちも皆
戦争やら犬死にやらで死んでしまった
そんな繰り返しに君はもううんざりしているんだろう
まあ俺に会いにこないか、クイーンジェーン

ディランのような友人を持たなかった、哀れなエブリン・サマーズ。彼女を死なせた者に罰を受けさせねばならない。俺はそう強く思った。物語に俺の心が掴まれ、俺がフェルプス刑事に同化している。

始める前は、LA の町の作り込みと犯人のリアルな顔色演技を見ての尋問が画期的くらいの認識で、物語面にそこまで期待はしてなかったので、ストーリーがよくできていると教えてくれたおすすめ人東京国立のマコ署長に感謝しなければならない。挿入される回想シーンも今はフェルプスが沖縄で戦闘中。戦争中の心の傷がサブテーマになってるのは明らかなので、こちらも早く先を見たいと思う。物語の先が知りたくて延々とプレイ時間を注ぎ込むゲームは久方ぶりだ。

12月30日



最後の事件「半月の殺人事件」。いくつもの事件を『解決』し名を上げた俺フェルプス刑事に、犯人からの挑戦状が届く。英国詩人シェリーの高踏な詩に込められた謎を解いてたどり着く LA の名所に次の詩が置かれ、どこかへと誘導されていく。複雑な経路を見つけるパズルやメカニクス(構造物が動いたりする仕掛けや罠)もあり最高だ。そしてめったに来れない名所ではこうやってセルフィーを撮るのも忘れてはいけない。高いなー。



あった。次の名所はここだ。俺フェルプス刑事の英詩の読解力たるやですよ。大学は英文科だったしね。いやーこりゃいいところですな。写真写真…あ、目をつぶっちゃった! 撮り直したいが後ろで相棒ラスティが…もしかしてむっとしてる?



そして殺人課最後の事件が完了。いやはや。とんでもない事件だった。ゾクゾクと肌が泡立つ思いを抱えながら町中を走った。仔細はすべてネタバレになるので書けないが、洋ゲーがストーリーでえぐってくる感情の内角ギリギリは本当にエグいと思う。日本人のクリエイターはここまでのストーリーを書くことをためらうだろう。良し悪しではなく、やはり表現への向かい方が違う。



…ふう。いや大変だったねラスティ。これでお別れだ。インテリの俺フェルプス刑事は叩き上げのあんたとは気が合わなかったが、思えばいい相棒だったよ。最後に中華でも食おう。――え? 中華嫌い? これだからイモと肉しか食えないホワイトのオッサンは…(人種差別発言) 。





L.A. ノワール日記(1)交通課編
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