2026/08/01

【2026イングランド旅行記②】リゾート古都バース:見られるために歩く都市

「見られるために歩く都市」「地下に眠るローマンバス」

■5月31日               リゾート古都バースへ

【英国6日目】次の滞在地バース(Bath)へ移動中。ロンドンへの長距離卜レインは混んでいて、そこら中にアーセナルサポが乗っている。なにがあるんだろうとトレイン内からサッカー詳しい親戚にテキストすると、CLは負けプレミアリーグは勝ったので(20年ぶりだろう)、ロンドンで祝勝パレードがあるらしい。

ロンドンで降りると彼ら彼女らは歩きながら、朗々とチャントを歌っていた。ハハ、イングランドだなあ。 

パディトン駅で乗り換えたロンドン → バースの高速トレインもハルトレインと同じく日立だった。イギリス中を日立が走ってるのかすごいなと俺は驚いた(実際2000もの日立車両が走っているらしい)。えらいねえ日立。

イギリスの日立トレインは、席が予約されてるかどうかサイン表示があるのが素晴らしい。

俺たちは予約アプリの不備で指定席が取れてなく、とりあえず空席に座りどうしようと様子を伺っていたのだが、予約表示を見た地元の人が「あそこの2席は予約ないから座れるよ」と教えてくれた。予約のない席は自由席の切符で座って構わないというルールなのだ。

合理的で無駄がない。ケチケチしていない。得する者はズルだと妬む文化もないのだろう。英鉄道と英国民えらい。運賃は新幹線よりだいぶ高いが。

ただ日立のせいじゃないと思うが、俺たちの乗った日立トレイン車両はバース駅でプラットフォームからはみ出し、ドアが開かず降りられなかった。ウソだろウソだろといいながらトランクを引きずり通路を駆け抜け、後方ドアから降りねばならなかった。渡英初日の暑さによるピカデリー線全線停止といい、英国鉄道のおおらかさというか、苦笑するしかない。 





 

大昔にローマ人が温泉ローマン・バスを開拓し、Bathの語源となったというバース市は、駅に降りるやいなや風景の美しさに笑ってしまった。駅裏が運河! 

駅自体も古風で美しい。時間が止まった町、フェリーニ『8 1/2』の温泉場世界に来ちゃったじゃん! って感じ。 pic.x.com/8XPSlLiwQf

フェリーニあるいはトーマス・マン的欧州リゾート世界。四方を山に囲まれ、古いものに取り囲まれるこの心地よさは京都のようでもある。 pic.x.com/ZaCzsBKIJA 

誰もがゆったりと景色を味わい、散歩している人しかいない。生活から切り離されたこの感覚はまさにリゾートで、軽井沢のようでもある。いやー和むなー🙂 pic.x.com/qt3ZbRw16V 

レンタルアパートへと歩きながら、こりゃすごいねとMに声をかける。小さな頃の家族旅行でこの町に寄り、以来一度はゆっくり滞在をと焦がれたというMがうれしそうだ。

駅から15分ほどのアパートは、上の写真にある世界的に有名なプルトニー橋のたもとという奇跡のロケーションだった。 1774年に建てられた、橋の上にベーカリーやショップが載ってる世界に3つしかないという橋である。窓からは川沿いのカフェやメイズが見える。こりゃすごいねと浮かれが止まらない。

晩飯はこの旅で初めて自炊をする。コメが食べたかったウマ! とMともどもしみじみと味わう。お肉はカナダで売ってないタイプの細切れベーコン。塩が強いので調味料がいらない。米はレンジで温めるレトルト。

ロンドンは別だろうがイギリスは驚くほどホワイトな国で、田舎ではほとんどアジア人を見かけない。なのでヨークシャーでは米を食べる場所がなかった。これはカナダでも田舎に行くと同じ。アジア飯屋がなくて米が食えない。旅するたびに米が食いたくなるのである。

■6月2日                    「見られるために歩く都市」


【英国バース2日め】M待望のバース市内を歩く。橋のたもとから高台まで歩き、高台から別の道を選び下っていく。すばらしい景観だ。

しかしこういう築200年級(18世紀後半、250年前!)の古い住宅に住むのは大変だろう。隙間風も雨漏りもありそうだ。外装の修理をする業者の足場がどこに行っても立っている。世界遺産ゆえ外観を変えることは許されず、Bath Stone(バース石)という石灰岩でできた外壁の石を一枚ずつ直すという、手間のかかる作業をやってるのだそうだ。

そして18世紀に富裕層の集合住宅として作られたというロイヤル・クレセントに出る。なんだこれは。住宅ってw 国会議事堂だろうこれはww pic.x.com/wTq0ZLHYED 


ロイヤル・クレセントはMが好きな19世紀英国小説、ジェイン・オースティン(映画「プライドと偏見」の原作者)作品に出てくる名所なんだそうだ。貴族と上流階級が別荘としていた(今もいる)という。ひゃー。

これも同じく、ジェイン・オースティンに登場するザ・サーカスという、円形に並んだ3つの巨大マンション。すごい。

当時のバースは上流階級の社交のための都市、「見られるために歩く都市」という言葉があったそうだ。昨日到着したときにそう感じたもんな、誰も急いでいない、皆が散歩している町。避暑地ではないが英国のリゾート軽井沢だったんだろうね。ロンドンから直通列車もあるし。

Mが興奮するのは、日本人が軽井沢万平ホテルを見て皇室のロマンスやジョンとヨーコに思いをはせるようなものだ。宮崎駿「風たちぬ」も万平ホテルが舞台だった。

ジェーン・オースティン・センターでMが友人へのお土産を買う。ここで働く女性たちはビクトリア期の衣装をまとい、クラシカルな古英語風のアクセントで接客をしていた。素敵だ。

■6月2日           地下に眠るローマンバス

いったん宿に戻ってランチを取り(旧軽銀座の裏に宿があるような便利さ!)、Mが子供の時に訪れたというバースの最大観光施設、ローマンバスを見に行った。古代ローマ帝国の貴族が作った温泉施設の上に、18世紀王室が温泉プールを作ったという遺構である。

18世紀のプールはどうということはないが、地下のローマ時代の風呂遺構が素晴らしい。ヨーク・ミンスターの地下遺構もローマ時代のものだった。この「ローマ時代のイングランド」というのが世界史無知の俺にはピンとこないのだが、ローマ帝国は本当にヨーロッパ全土を支配し、英国も西暦43年から370年ローマ人が君臨していたのだという。英国の地下を掘ればローマが出てくるとは、想像もしなかった。

その頃日本は「弥生時代の途中から古墳時代の終わり」となるから、前史時代の話だ。文字もない。そんな時代にはるかローマから軍隊と官僚が派遣され、こんな温泉治水施設を作るという高度な文明が、ローマ=ブリテンにあったのである。驚きだ。

しかしこの史跡が20ドルくらいなら見て損はないと思うが、Mが値段を見るなと俺に警告してたのでその倍以上の料金なんだろう。そのオーバープライスを思うだけで感動が減る。イギリスはなにもかも素晴らしいが、いくらなんでもと思う観光料の高さにゲンナリさせられる。

だがここもMの文学的憧れ(ジェーン・オースティンに出てきた「ポンプ・ルーム」という社交場がローマンバス2階にあり興奮していた)と、子供の頃の来てすごかったという思い出コミの観光なわけで、料金高いと不平を言ってそれを無碍にするわけにはいかない。子供のMにとってイングランドは、魔法の泉が湧くような場所だったのだ。

今日はよく歩いた。小さな町を15キロもくまなく歩いたのだった。