今年の紅白で一番印象に残ったショットはこれでしたね。このドラマは見たことないんだけど。
◇
PUFFY。バンクーバーに彼女らは来たんですよ。かつて。ステージ上の彼女らはロッキンミューズでした。後光が差してましたね。前座の地元バンドもよかったけどPUFFYバンドは圧倒的だった。あの轟音バンドを引き連れ紅白に出てたらすごかっただろうなー。
セカイノオワリ。そんなに大掛かりじゃなく、スマホの小さな画面のRPGみたいなキュートなセットでやるのがよかった。
タモリとマツコの入場押し問答コント。この間にうまく合わせ面白くするのは、2人の司会には無理があるなあ。まあそのへんは別に面白くなくてもいいのかw
真田丸スペシャル。えーこれだけ…? と全国のお茶の間が昨夜いってたであろう真田丸SP。あまちゃんSPクラスのすごいのをやってくれそうなものを…もう真田丸のセットを作って壊して予算が尽きちゃったのかな。このあとまだ本編があるのだろうか。
椎名林檎。娘がいま一番気に入ってる音楽はゲーム「どうぶつの森」そっくりな音を出すグラスアニマルズという英環境テクノバンドなのだが、椎名林檎がその音を取り入れていた。流行ってるんだろう。娘もおおとうなづいてました。あの音の大元はYMOや任天堂だから里帰り。
郷ひろみ。ここで土屋太鳳さんの舞踏(素敵!)を披露するなら、さっきの真田丸のガラシャ様の舞踏はいわゆる演し物として被ってるというやつであって、先ほどの真田丸SPはあれはなんだったんだ感がいや増すのである。
ゆず。嵐相葉くんの声質はホールでの司会に向いてないと思うのだが、ゆずの説明語りを聞いて彼は朗読声なんだなと思った。二宮くんが出てくるとほっと安心感が出て、最初から皆でゆるくやればいいのにと思う。曲も、永さん追悼したいなら山崎まさよしあたりに頼めばいいのにと思う。アレンジが曲と合ってなさすぎて、ゆずの持ち歌を聞いてるかのようであった。
◇
RADWIMPS。左右の二人がノリすぎてるのが今時のバンドで気恥ずかしいのだが、センターの彼は抑制が効いていて、バンドの音とビジュアルで紅白を3分間支配するよという気迫も感じられて非常にカッコよかった。あそこでカッコよく演奏するというのは難儀なことだと思う。
RADIO FISH。公募のアマチュアダンサーズがイキイキしていて素晴らしい。この歌って意味がまったくわからないのだが(中田あっちゃんという人がどう天才なのかまったく知らないので)、意味を乗り越えとにかくカッコいいものを作ろうという心意気なのかな。カッコいいです。
AKB48。早送りで見たんだけど、あれは彼女たちの”選挙”の発表を紅白でやったということなのかな。部外者にはどうでもいいことを推し進めて、どこが限度なのかを試すゲームを見せられてる感。
Perfume。ムスメを呼んで一緒に見つつ、あーちゃんきれいだなあ、のっちきれいだなあ、かしゆかもきれいだねえとお父さんは声が出てしまう。空手だ。これは空手の型だ。キックした! カッコいいなあうっとり。ほんとうっとり。こりゃあゴジラもうっとり血液氷結だよ。
星野源「恋」。この歌はダンサブルで体が自然に動いちゃうというにはテンポが速すぎると思うのだが(こんな速いディスコヒットチューンはないだろう)、手や指が自然に動いちゃう。だからくるくると手や指を動かすダンスというよりもフリにバッチリ合うんですね。
「ゴジラを止める良質な音楽」という体でX JAPAN。これを日本中のおじいさんおばあさんが見てるのかーw 高橋真梨子。この人は声もかわいらしさもいつまでもかわらないなあ。
イエモン。初出場でこんなデンジャラスにトリに近い、この別格感はなんだろうw 彼らの歌を聞くと一時帰国して長野に住んでいた1998~99年を思い出す。WOWOWでいつも彼らがかかっていた。バンドは淡々と淡々と演奏を続け、歌のエモーションが徐々に徐々に高まっていく。
宇多田ヒカル。こういう中継はお客が客席にいるショーとしての紅白のノリと勢いを削ぐと思うし、宇多田さんも緊張していてSONGSのときとは違ったな。
◇
今回の紅白はとにかくショーが全然ワゴンに乗っていけない感がすごかった。最後まで片輪が側溝にはまったままだった。演出責任者はドツボな正月を過ごしていることであろう。
紅白というのはあの散漫で広すぎるステージの上から、雑多なオーディエンスとTVを見てる人々の気持ちをどれだけワシづかみにできるか合戦にすべきだと思う。前半の添え物以外は中継はやめテンポよくして、なによりも音楽好きな人を司会にして盛り上げてほしいものであります。
そしていま新年まったり生さだ録画を見てるんだけど、林家たい平のさだまさしモノマネが似すぎてクドすぎて笑った。たい平さんは並外れて速い頭の回転をすべて場をいい感じに楽しくすることのみに使ってくれて、見上げた落語家だ。紅白の司会にすればいい。
生さだ 「メリークリスマス」はジョンの「ノーバディラブズユー」と同じコードなんだと気がついた。ジョンは自分や人との関係というものに諦観に似た態度を歌い、しかしコードと口笛の美しいリフレインに余韻を託す。人を信じるさだまさしはどこまでもどこまでも、歌と言葉と思いを詰め込んでいく。
生さだは去年の「案山子」英訳が泣けた。
「調子はどうだい。都会はどう? 友だちができてたらいいけど
お前が寂しくないか、お金があるかと思うことがあるよ。今度いつ帰るんだ
手紙がトゥーマッチなら電話でもいい、金送れだけでいい。
お前の笑顔その声、元気なことをマムに知らせてやんなきゃ」
(2015紅白歌合戦と「生さだ」の感想)
2016/12/31
【MLS】礼節よりも熱情を~工藤の退団について
(2017/01/03)「FW 海外移籍の難しさ」から改題、追記
●移籍は致し方なし
●Jストライカー海外挑戦の難しさ
●地元サッカーメディアの不毛さ
(注:エイダンさんは、柏レイソルで歌われてたエキセントリッククドーという応援歌を BC プレイススタジアムで歌ってくれてた、サポーター界の生き仏)
工藤なんの前触れもなくバンクーバー退団(笑)。まあ彼が MLS への挑戦を1年でやめたことを残念に思う気持ちは自分にもあるけども、バンクーバーの試合を1年間見て工藤が生きるパスサッカーへの希望は抱けなかったので、正直安堵している。貢献できなかったことを工藤が悔やみ来年こそと頑張っても、実りは薄いだろうと考えていた。
詳細は省くが(詳細すぎる呪われた記事はこちら→【ホワイトキャップス/2016 年シーズン大敗のまとめ】)、もともとホワイトキャップスにはつないで崩すチームではなくロングボールを出しそこに殺到するアメフトみたいな戦術のチームで、工藤の長所であるワンタッチで敵の意表をつきゴールするというひらめきを活かせる場面は今シーズンまったくなかったし、監督の方針上来年もそうそうないだろうということです。
この縦ポンサッカーに多様性を加えるためにロボ監督は工藤を取ったのかもしれない。前半期の工藤は出れば必ずワンタッチでシンプルにつなぎ、ボールをキープしリズムを作ろうとしていた。これはチームの変革として効いていた。しかし成果が出始めさあここからというタイミングで工藤は大怪我をし、チームは気候がきつくなる夏に絶不調となりロングボール戦術に戻ってしまう。
シーズン終盤絶不調から立ち直りバンクーバーがたどり着いたのは、ハードな全員プレスで相手を圧殺し、こぼれ球を叩き込むのがこのチームのベストだという結論だった。そんな中で工藤が他のフィジカルな選手より有効にやれることは特にないわけ。移籍で正解だというのは、チームを追う皆が思うことなのである。
だから移籍はいいのだが、戦術が合わず能力を見せられぬ工藤に対し「MLS では通用しない」という声があったことは悔しい。Jを下に見られたような気がして本当に悔しい。工藤も眠れぬほど悔しいことだろう。MLS チームは大陸クラブ杯でメキシコを破れないが、工藤レイソルはクラブW杯でメキシコを破ってるんだぞと言いたくなる。今年なんかJ王者が決勝に進みレアルに2-4だぞ、Jリーグの優秀さをお前らわかってんのか。と、言っても工藤の弁護にはならぬ世迷い言を言いたくなってしまう。
Jリーグを見たことがない人たちから見れば、点を取れない理由は工藤の能力不足に見えるわけである。これが高名な欧州ストライカーなら、点が取れないのは彼の能力を活かすチャンスを作れないチーム戦術に問題があるのではと熟考してもらえたかもしれない。工藤のJ実績はなにも評価されない。わが国からの FW の海外移籍とはかくも難しいものだということだろう。
もし難しいことをせず普通につなぐ実直 MF 小林大悟がまだバンクーバーにいたら、工藤がほしいところにボールをくれただろう。簡単にプレイしボールを無駄にせぬ彼のような選手がホワイトキャップスには足りない。その大悟を切ったのもロボ監督だしな。
しかしまあホワイトキャップスのサポは、工藤のことを悪く言ったりなどせぬいい人ばかりです。「おまえ工藤がいなくなってもうちを応援してくれるんだろうな!」とビールの香りをプンプンさせてるみたいなツイートが届きました。見ます見ます(笑)。
今年の実績的に無理だとはわかっていたが、できることなら MLS の別チームが工藤を取ってはくれまいかと願っていた。ホワイトキャップスは MLS で最もフィジカルな、プレスの強度と縦へのスピードと肉体的接触の激しさに依存したチームで、リーグ最多クラスのファウル数とカード数となっている。そしてアシスト数はリーグ最少(リーグ最高64平均45に対し25)。つまりリーグで最も非創造的なサッカーをやっていた。他のどのチームもキャップスよりは相手ゴール付近のつなぎが良いので、どこに移籍しても今年よりは足元にいいボールをもらえ仕事をできただろう。しかし繰り返しになるが、今年の成績で取ってくれるところは MLS にはなかったということです。
シーズン終盤は出番の少なさからか工藤はキレがなかったが、サンフレッチェ広島で調子を取り戻し活躍することだろう。俺はこれでホワイトキャップスの試合を見るモチベーションは正直下がるが、工藤のことを心配しないで気楽に見れるのはありがたいです。工藤になにかニュースがあると俺に英語問い合わせツイートが届く、彼のスポークスマンみたいな状況だったので(笑)。
◇
【追記】
移籍発表翌日、ご恩は忘れません、これからもホワイトキャップスとMLSを応援しますと工藤が英語メッセージを出した。
終わったことだからもういいんだけど工藤、こういうことをするよりもね、ほしいボールがこないフラストレーションをシーズン中の試合で示してくれてたほうが、ファンに強い印象を残せたと思うよ。
◇
これを見て感じるところがあったので、シーズン中抱いていた工藤とホワイトキャップス周辺メディアに関するモヤモヤを書いておく。
ファンが選んだホワイトキャップスの今季 MVP は左 SB のベテラン・ハーヴェイである。彼はモラレスと共に最も頻繁に、ハーフラインあたりから ST がポストすらできない無駄なアーリークロスを送り続けた選手である。ハーヴェイの高評価は、工藤や俺がイメージするつなぐサッカーとバンクーバーのサッカーに大きな隔たりがあったことのひとつの象徴だ。
工藤はシーズン後の Number インタビューで「DF よりも一歩前に出て触って決める、点に合わせるという部分は練習から研ぎ澄ますことができた」と語っていたが、後期は特に工藤が DF の鼻先で触れる速いボールなんて来やしなかった。ハーヴェイたちサイドの選手がボックス横までえぐって横から速いクロスを入れてくれたら、工藤はニアに入る巧さを活かせたはずだが(これは彼の明確なタレントである)、彼らにはそうした力がなかった。ロボ監督のシステムもサイド高くへ人を送るには弱かった。サブには強力なクロスを送れる左サイド選手が2人いて(デヨングとリーヴァイス)その起用を俺は願ったのだが、ハーヴェイの先発は揺るがず使われなかった。おそらくクロスの品質なんてロボ監督にもハーヴェイを愛す観客にも、優先順位の高いことではないのだろう。
工藤という選手はとにかく最初から最後まで、何をやれる選手なのかまったくわかってもらえていなかった。強靭なフィジカルや華麗な個人技ではなくチームとの連携で美しく点を取る FW というものが、チームにもファンにもメディアにもイメージできなかったのだと思う。そういうJリーグ的なサッカーをホワイトキャップスがやったことがないんだろう。
このコミュニケーション不足は工藤のせいだけではない。バンクーバーのサッカーメディアはシーズン中、工藤に一度もインタビューしなかった。ホワイトキャップス周辺のメディアは英語ができない選手には基本話を聞かないので、中南米アジア選手の気持ちはメディアに載らずファンに伝わらず、チームの雰囲気に影響を与えられない。番記者は工藤とより俺とツイッターを通じて交わした言葉のほうが多いだろう。シーズン中三度ほどあった工藤インタビューはすべて日本のメディアで、俺がそれを英語要約しツイートすると多くのファンから反応があった。しかし日本メディアはホワイトキャップスの試合を見てないので、戦術的に突っ込んだ話は出てこないというもどかしさがあった。
ホワイトキャップス周辺のメディアは戦術分析面で怠慢で、チーム戦術を批評しよくする方向に働いていない。TV解説もユーロ杯などでは前カナダ代表キャプテンが戦術を解説してくれるのだが、MLS 担当は選手の出来不出来しか語れないスポーツアナがやっている。
怪我から復帰直後オーランド戦の工藤好調ぶりに「工藤はベリー、ベリーグッド」「チームが待ち望んだエースが見つかったかもしれない」と書いてたメディアが、その後のチーム絶不調時に何もできない工藤はただ「無力だった」と評するだけで、なぜオーランド戦のようにプレイできないのかを訊ねなかったし分析もしなかった。彼らは怠慢というか、戦術がわからないのだろう。
最も影響力ある地元紙記者は「練習場では最高のストライカーなのに」と工藤を揶揄していた。じゃあ練習と試合で何が違うのか教えてくれよ。練習では速いクロスが来てるの? 足元にスルーパスが出てるの? それとも試合と同じようなフラフラとしたゆるいクロスを、工藤がマジカルに決めてるの? それをファンに伝えどん底のチームを活性化するのが君ら地元メディアの役目だろうと腹が立った。こういう環境でストライカーが結果を出すのは難しいとしみじみ思った。
工藤は「ボックス内でフィニッシュしてもらいたい」とロボ監督にずっといわれていたそうだが、「ボックス内にいてもボールが来ないんで」と仕事のやりにくさを秋にほのめかした。これを俺が英訳ツイートしサポーターグループの大物がまとめて RT してくれた(←)ので関係者はみな読んだと思うのだが、この意見を監督にぶつけ「ストライカーがフィニッシュできるようなボールがボックスに届いているでしょうか」と戦術論を持ちかけられるジャーナリストは、バンクーバーにはいなかったのである。そこは MLS 加入6年の歴史の浅さゆえかもしれない。
俺はそんなバンクーバーメディアに代わり工藤に直接コンタクトして、彼の考えをファンに伝えたかった。日系センターのサイン会で出待ちをして話をしようかと粘ったが、同行の娘にもう帰ろうよと却下された(笑)。まあ俺のような素人が口をはさむと、たとえ本音を引き出しても炎上を起こし選手の墓穴を掘ることになりかねんとは、わたくしも分別ある大人なのでさすがにわかってました。英語ツイッターでのロボ戦術批判も、その辺を慮ってほどほどにしていたし。
しかしまあメディアなんかいずれにせよ当てにはならぬ。工藤は試合中に、観客の目の前で、自分が何をしたいのか身振り手振りでチームに訴えるべきだった。もし練習場で来てたようなクオリティのボールが試合では来なかったのなら(そうなんでしょ?)、観客の前で味方にプレッシャーを与えその場で結果を出すべきだったのだ。
終わったことだからもういいんだけど工藤。外国人助っ人ストライカーというのは、自分がベストを尽くすだけじゃダメだったんだよきっと。その慎ましさやナイスさとは別のものが必要だったんだ。礼節よりも熱情だ。
技術レベルとか懸命さとかそうことじゃなく別なところで工藤はチャンスを掴めなかったのではないかと、彼の日本的な思いやりに満ちた英語メッセージを見て俺は思ったのです。さよなら工藤壮人。元気でやってくれ。ホワイトキャップス界隈で話題になるほどの大活躍を待っているよ。◆
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●Jストライカー海外挑戦の難しさ
●地元サッカーメディアの不毛さ
(工藤移籍? ノオオオオオオオ!)@tomosakata NOOOOOO! https://t.co/6XjcEhi0Wg— Aidan (@AidanRantoul) December 31, 2016
(注:エイダンさんは、柏レイソルで歌われてたエキセントリッククドーという応援歌を BC プレイススタジアムで歌ってくれてた、サポーター界の生き仏)
(ゴメン! 工藤の移籍はいいんだけど、あなたには申し訳ないよ、ホワイトキャップス随一の工藤サポ・エイダンさん! 愛してる!)Soorryyy! I feel alright for Kudo about this move but feel really sorry for you, the best Kudo supporter in ##VWFC Aidan-san! We love you! https://t.co/WCVNf2PfSR— サカタ@カナダ (@tomosakata) December 31, 2016
●移籍は致し方なし
工藤なんの前触れもなくバンクーバー退団(笑)。まあ彼が MLS への挑戦を1年でやめたことを残念に思う気持ちは自分にもあるけども、バンクーバーの試合を1年間見て工藤が生きるパスサッカーへの希望は抱けなかったので、正直安堵している。貢献できなかったことを工藤が悔やみ来年こそと頑張っても、実りは薄いだろうと考えていた。
詳細は省くが(詳細すぎる呪われた記事はこちら→【ホワイトキャップス/2016 年シーズン大敗のまとめ】)、もともとホワイトキャップスにはつないで崩すチームではなくロングボールを出しそこに殺到するアメフトみたいな戦術のチームで、工藤の長所であるワンタッチで敵の意表をつきゴールするというひらめきを活かせる場面は今シーズンまったくなかったし、監督の方針上来年もそうそうないだろうということです。
(C)Vancouver Southsiders |
シーズン終盤絶不調から立ち直りバンクーバーがたどり着いたのは、ハードな全員プレスで相手を圧殺し、こぼれ球を叩き込むのがこのチームのベストだという結論だった。そんな中で工藤が他のフィジカルな選手より有効にやれることは特にないわけ。移籍で正解だというのは、チームを追う皆が思うことなのである。
●Jストライカー海外挑戦の難しさ
だから移籍はいいのだが、戦術が合わず能力を見せられぬ工藤に対し「MLS では通用しない」という声があったことは悔しい。Jを下に見られたような気がして本当に悔しい。工藤も眠れぬほど悔しいことだろう。MLS チームは大陸クラブ杯でメキシコを破れないが、工藤レイソルはクラブW杯でメキシコを破ってるんだぞと言いたくなる。今年なんかJ王者が決勝に進みレアルに2-4だぞ、Jリーグの優秀さをお前らわかってんのか。と、言っても工藤の弁護にはならぬ世迷い言を言いたくなってしまう。
Jリーグを見たことがない人たちから見れば、点を取れない理由は工藤の能力不足に見えるわけである。これが高名な欧州ストライカーなら、点が取れないのは彼の能力を活かすチャンスを作れないチーム戦術に問題があるのではと熟考してもらえたかもしれない。工藤のJ実績はなにも評価されない。わが国からの FW の海外移籍とはかくも難しいものだということだろう。
もし難しいことをせず普通につなぐ実直 MF 小林大悟がまだバンクーバーにいたら、工藤がほしいところにボールをくれただろう。簡単にプレイしボールを無駄にせぬ彼のような選手がホワイトキャップスには足りない。その大悟を切ったのもロボ監督だしな。
しかしまあホワイトキャップスのサポは、工藤のことを悪く言ったりなどせぬいい人ばかりです。「おまえ工藤がいなくなってもうちを応援してくれるんだろうな!」とビールの香りをプンプンさせてるみたいなツイートが届きました。見ます見ます(笑)。
(ドモアリガト、マサト。うちでは花開かなかったが偉大なタレントよ。がんばれ。トモサカタはクドーがいなくなってもホワイトキャップスを日本に伝えてくれるんだよな、そうだよな!)Domo arigato, Masato. A great talent who didn't pan out here. Suerte. ...Hopefully @tomosakata will continue to cover #VWFC in Japan, no? https://t.co/EM1LVZaNwv— Vancouver Armada (@VancouverArmada) December 31, 2016
今年の実績的に無理だとはわかっていたが、できることなら MLS の別チームが工藤を取ってはくれまいかと願っていた。ホワイトキャップスは MLS で最もフィジカルな、プレスの強度と縦へのスピードと肉体的接触の激しさに依存したチームで、リーグ最多クラスのファウル数とカード数となっている。そしてアシスト数はリーグ最少(リーグ最高64平均45に対し25)。つまりリーグで最も非創造的なサッカーをやっていた。他のどのチームもキャップスよりは相手ゴール付近のつなぎが良いので、どこに移籍しても今年よりは足元にいいボールをもらえ仕事をできただろう。しかし繰り返しになるが、今年の成績で取ってくれるところは MLS にはなかったということです。
シーズン終盤は出番の少なさからか工藤はキレがなかったが、サンフレッチェ広島で調子を取り戻し活躍することだろう。俺はこれでホワイトキャップスの試合を見るモチベーションは正直下がるが、工藤のことを心配しないで気楽に見れるのはありがたいです。工藤になにかニュースがあると俺に英語問い合わせツイートが届く、彼のスポークスマンみたいな状況だったので(笑)。
◇
【追記】
●地元サッカーメディアの不毛さ
終わったことだからもういいんだけど工藤、こういうことをするよりもね、ほしいボールがこないフラストレーションをシーズン中の試合で示してくれてたほうが、ファンに強い印象を残せたと思うよ。
◇
これを見て感じるところがあったので、シーズン中抱いていた工藤とホワイトキャップス周辺メディアに関するモヤモヤを書いておく。
ファンが選んだホワイトキャップスの今季 MVP は左 SB のベテラン・ハーヴェイである。彼はモラレスと共に最も頻繁に、ハーフラインあたりから ST がポストすらできない無駄なアーリークロスを送り続けた選手である。ハーヴェイの高評価は、工藤や俺がイメージするつなぐサッカーとバンクーバーのサッカーに大きな隔たりがあったことのひとつの象徴だ。
工藤はシーズン後の Number インタビューで「DF よりも一歩前に出て触って決める、点に合わせるという部分は練習から研ぎ澄ますことができた」と語っていたが、後期は特に工藤が DF の鼻先で触れる速いボールなんて来やしなかった。ハーヴェイたちサイドの選手がボックス横までえぐって横から速いクロスを入れてくれたら、工藤はニアに入る巧さを活かせたはずだが(これは彼の明確なタレントである)、彼らにはそうした力がなかった。ロボ監督のシステムもサイド高くへ人を送るには弱かった。サブには強力なクロスを送れる左サイド選手が2人いて(デヨングとリーヴァイス)その起用を俺は願ったのだが、ハーヴェイの先発は揺るがず使われなかった。おそらくクロスの品質なんてロボ監督にもハーヴェイを愛す観客にも、優先順位の高いことではないのだろう。
工藤という選手はとにかく最初から最後まで、何をやれる選手なのかまったくわかってもらえていなかった。強靭なフィジカルや華麗な個人技ではなくチームとの連携で美しく点を取る FW というものが、チームにもファンにもメディアにもイメージできなかったのだと思う。そういうJリーグ的なサッカーをホワイトキャップスがやったことがないんだろう。
このコミュニケーション不足は工藤のせいだけではない。バンクーバーのサッカーメディアはシーズン中、工藤に一度もインタビューしなかった。ホワイトキャップス周辺のメディアは英語ができない選手には基本話を聞かないので、中南米アジア選手の気持ちはメディアに載らずファンに伝わらず、チームの雰囲気に影響を与えられない。番記者は工藤とより俺とツイッターを通じて交わした言葉のほうが多いだろう。シーズン中三度ほどあった工藤インタビューはすべて日本のメディアで、俺がそれを英語要約しツイートすると多くのファンから反応があった。しかし日本メディアはホワイトキャップスの試合を見てないので、戦術的に突っ込んだ話は出てこないというもどかしさがあった。
ホワイトキャップス周辺のメディアは戦術分析面で怠慢で、チーム戦術を批評しよくする方向に働いていない。TV解説もユーロ杯などでは前カナダ代表キャプテンが戦術を解説してくれるのだが、MLS 担当は選手の出来不出来しか語れないスポーツアナがやっている。
怪我から復帰直後オーランド戦の工藤好調ぶりに「工藤はベリー、ベリーグッド」「チームが待ち望んだエースが見つかったかもしれない」と書いてたメディアが、その後のチーム絶不調時に何もできない工藤はただ「無力だった」と評するだけで、なぜオーランド戦のようにプレイできないのかを訊ねなかったし分析もしなかった。彼らは怠慢というか、戦術がわからないのだろう。
(7月のオーランド戦。この頃はチームの調子がまだよく、工藤も今季ベストの働きぶりだった。1点目につながるクサビ縦パスを工藤に送った控えCMジェイコブソンとの相性がよかったのだと思う。他のMFはあのタイミングで浮き球を送るわけ )#MLSJP 画面撮り低画質ながらホワイトキャップス×オーランドの工藤動画を作りました。①右に引き出してからの高品質クロス②自分で持ち上がりミドル~メスキーダのゴール③カウンターからの完璧ヘッド。工藤の選択のよさがわかる3点セット。 pic.twitter.com/ZYcbbooQhf— サカタ@カナダ (@tomosakata) July 19, 2016
最も影響力ある地元紙記者は「練習場では最高のストライカーなのに」と工藤を揶揄していた。じゃあ練習と試合で何が違うのか教えてくれよ。練習では速いクロスが来てるの? 足元にスルーパスが出てるの? それとも試合と同じようなフラフラとしたゆるいクロスを、工藤がマジカルに決めてるの? それをファンに伝えどん底のチームを活性化するのが君ら地元メディアの役目だろうと腹が立った。こういう環境でストライカーが結果を出すのは難しいとしみじみ思った。
工藤は「ボックス内でフィニッシュしてもらいたい」とロボ監督にずっといわれていたそうだが、「ボックス内にいてもボールが来ないんで」と仕事のやりにくさを秋にほのめかした。これを俺が英訳ツイートしサポーターグループの大物がまとめて RT してくれた(←)ので関係者はみな読んだと思うのだが、この意見を監督にぶつけ「ストライカーがフィニッシュできるようなボールがボックスに届いているでしょうか」と戦術論を持ちかけられるジャーナリストは、バンクーバーにはいなかったのである。そこは MLS 加入6年の歴史の浅さゆえかもしれない。
俺はそんなバンクーバーメディアに代わり工藤に直接コンタクトして、彼の考えをファンに伝えたかった。日系センターのサイン会で出待ちをして話をしようかと粘ったが、同行の娘にもう帰ろうよと却下された(笑)。まあ俺のような素人が口をはさむと、たとえ本音を引き出しても炎上を起こし選手の墓穴を掘ることになりかねんとは、わたくしも分別ある大人なのでさすがにわかってました。英語ツイッターでのロボ戦術批判も、その辺を慮ってほどほどにしていたし。
しかしまあメディアなんかいずれにせよ当てにはならぬ。工藤は試合中に、観客の目の前で、自分が何をしたいのか身振り手振りでチームに訴えるべきだった。もし練習場で来てたようなクオリティのボールが試合では来なかったのなら(そうなんでしょ?)、観客の前で味方にプレッシャーを与えその場で結果を出すべきだったのだ。
終わったことだからもういいんだけど工藤。外国人助っ人ストライカーというのは、自分がベストを尽くすだけじゃダメだったんだよきっと。その慎ましさやナイスさとは別のものが必要だったんだ。礼節よりも熱情だ。
技術レベルとか懸命さとかそうことじゃなく別なところで工藤はチャンスを掴めなかったのではないかと、彼の日本的な思いやりに満ちた英語メッセージを見て俺は思ったのです。さよなら工藤壮人。元気でやってくれ。ホワイトキャップス界隈で話題になるほどの大活躍を待っているよ。◆
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【ホワイトキャップス/2016 年シーズン大敗のまとめ】
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- 【MLS】バンクーバー・ホワイトキャップス/工藤加入からここまで
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2016/12/30
【Xbox 360】LA ノワール日記(1)交通課編
(ネタバレは特にないです)
12月22日
三多摩旧友おすすめのXboxゲーム、第二弾は犯罪捜査の【LAノワール】。絵がすごい! 市街がほんとにある! 好き勝手に走れる! 俺フェルプス巡査は一刻を争う捜査中の車を舗道に止め、ウィンドウに見入っちゃいました。これですか。これがゲーム市場を物量パワーで席巻したオープンワールドですか。
人物の表情が素晴らしいと評判のゲームで、たしかに「千年女優」今敏のアニメみたいなリアル感がある。しかしオープンワールドRPGの野山を見てもどうせ自動生成でしょと驚かなかったが、市街はすごいな。精巧なミニチュア模型のLAが手に入ったみたいな高揚感がある。これはどう考えても人の手が作ってるとしか思えない。すごい。
警官なので次々に事件に遭遇する。そのたびに操作法も知らぬまま戦うことになり、表示されるボタンを必死で押す。銀行強盗との撃ち合いなどえらい切迫感で、ひー弾当たらんでくれーと必死です。合間合間の回想シーンの意味がわからんが、とりあえずばっちり面白い。
12月23日
初の尋問仕事があったのだが、殺人を目撃し動揺して泣きながら話す靴屋の女の子の表情がリアルでかわいくて見とれてしまった。すごいなあ。しかし彼女の証言が必要なのだが、表情を読んでの尋問は思ったより難しい。嘘をついても動揺しても、視線が定まらないのは同じだろ(笑)。
何度も質問の選択に失敗し彼女の協力が得られず、ネットでガイドを見て「正解」を知る。これがけっこう恣意的で、観察推理すればわかるロジカルな選択順ともいえない。しかしその正解順で尋問を進めるとよりたくさん話してくれて、彼女の演技がかわいくて楽しい。
その次の犯人尋問も全然当たらず(笑)。答えを見て進めるとすごくドラマチックな話になった。なるほどー。外れても捜査が詰むというわけでもなく、捜査は続き犯人はやがて捕まるらしい。しかし当てたほうが当然楽しいし演技が楽しめる。推理はまず自力で頑張って、外れたら答え合わせをして楽しもう。
Xboxを買い英語ゲームをやり始めた時から思ってるのだがこのゲームでは特に、キャラが喋るのを見ているのが楽しい。やっぱり英語圏の人たちの演技は大きく派手で、それをゲームキャラでアニメートするとめっちゃ見栄えがするのだ。まあ驚くからちょっと見てみてください、14分くらいから↓。
12月24日
今日はあれこれあって気分がダウナーな日で、そんな夜は【LAノワール】で犯罪捜査だとかしたくならないな。犯行現場とか検分したくないし、取り乱した関係者と話す気もしない。洋ゲーは一般にダークなので、気分が沈んだときにやるものではない。
ぼんやり走っていて丘を登る道を見つけ、登って行ったら古いLAの町を一望できる所があった。車を停めてゆっくりと町を眺める。バンクーバーのイーストサイドに似ている。坂のある町を車で流していると、レースゲームForzaよりこっちのほうがずっと気分がいいと思う。
LA ノワールは面白いが、1つ事件を解決したらしばらく休暇をとりたくなる。しかし捜査は大変だが、広大な町を自由に走るのはほんと気持ちいい。話を早く先に進めたいという気持ちもないので、どこの捜査現場へ行くにも回り道をしている。土地勘がないので自分がどこを走ってるのかはまるでわからず、一度通った道は地図上で色を変えておいてくれたら未踏の道を選んで走れるのだがなあと思う。
また高台を見つけ車を止めて散歩していると、民家の庭に洗濯物があった。なんとまあ。これをつくった人たちはプログラマーというより、ある種のジオラマ制作マニアなんだろう。俺もやりたい。
ゲーム会社の技術者をやってる友人に俺が【LAノワール】の街景にいかに驚いているかを話し、どうやってあんなものを作るのかと訊ねると、やっぱりあれは手作業なんだそうだ。何百人もが何年もかけて作ってるのだと。やっぱりデジタルのジオラマ制作班なんだな。
12月26日
6章ひき逃げ事件。派手なカーチェイスの末犯人を見事捕まえたのだが、その後から俺刑事が現場付近の重大証拠を見落としていたことが判明する。Youtube で正解進行を見たら、それを見つけるかどうかで話が変わっていた。いやすまんかった俺が捕まえた犯人(笑)。しかしこの演出はすごいな。よくできたプロットだと唸った。しかしこの正解進行を見れないのは残念なので、ハズレが出たらやり直したくなる。やり直しはけっこう前からになってしまい面倒なのが難点である。
このゲームのアクションはアクション・シューティング好きから見れば相当にぬるいらしいのだが、オートでいい感じに照準を合わせてくれるシューティングは俺にはちょうどいいし、カーチェイスはレースシミュレーターマニアの俺から見ても非常によくできている。グリップやハンドリングがリアルということではなく、敵車の取るコース取りが絶妙で、コーナーで突然ガバッと曲がる敵に巻かれないようにライン取りとスピードを準備しつつ追うことが非常に楽しい。
また普段の走行でもそうなのだが、サイレンを使うとだいたいの一般車は道と交差点を開けてくれる。とはいえ相手も人間なので完璧ではなく、交差点に入ってくる車をよけたり隙間がない車間に突っ込んでいくことも多々発生する。この辺のダイナミズムがすばらしいわけ。タイヤがグリップせずコースも読みにくい Forza より思い切り走れ楽しいのだ。願わくば LA の地形がもっと多彩だったらなあとは思うけども。 もっと坂がほしい。
寄り道の足を伸ばしたら狛犬の置かれたチャイナタウンがあった。おお。散歩するとウィンドウの商品が美しい。この店は日本の骨董屋なんじゃないかな。
12月27日
【LAノワール】今日はロング道草をしたくて相棒を路上に置き去り延々西上すると、飛行場があった。もしや飛行機もあるのかとフェンスを破り入って行くと…格納庫にあった!
…いやーすごいなとセルフィー撮って表に出ると、パトカーを捕まえ俺を追尾してきてた相棒が待ってた。あ、ゴメン怒った?(笑)。
相棒「お前な。こんな公的資源と人材を無駄遣いして、悪いと思わないのか?」。思う! ゴメン! パトカーのお二人もむっとしてますよね、夜中にソーリー! ――しかし楽しいなあ道草。どこまでも行こう、道は険しくとも。
しかし金網に囲まれた立川基地みたいな場所に無理して入るプレイヤーなどいるかわからないのに、そこにちゃんと格納庫と飛行機が用意されているんだからすごい。感動してます。置いてけぼりにした相棒が追いついてきたのにも感動(笑)。
(「墜ちた偶像」事件の舞台本物写真を見つけた。こんなセットが当時LAの町にあったわけである。すごい)
第7の事件、俺の交通課最後の仕事「墜ちた偶像」事件。映画産業末端のクズどもめ、ブタ箱にぶち込んでやると俺フェルプス刑事は証拠を集め推理して、犯人を巨大なオープンセットへと追い詰めていく。とんでもない巨大セットでトゥームレイダーみたいな大活劇! 楽しめました。
この頃主人公が徐々に弱きを助け強きをくじく人間味を見せ始め、だんだん彼のことが好ましくなってきた。バットマンACをやったときにも感じたのだが、こうした大型ゲームのシナリオ台詞の見事さは米映画産業に裏付けられた感があり、惚れ惚れさせられる。相棒がギャング相手にまくし立てた前らはゴミだ的なアジりは、清水の次郎長森の石松の一節のごとき言葉炸裂で快感だった。
相棒が7話でギャングに言った言葉。「いいか。お前らがまだ鉄格子の中にいないのは、取るに足らんハエだからだ。お前らにかまうヒマなど警察にはないんだ。わかったかアスホール」。しびれるなあ相棒ビコウスキー。今朝キミを置き去りにしてドライブ行って悪かった :-)
L.A. ノワール日記(2)殺人課編「気の毒なエブリン・サマーズ」
L.A.ノワール日記(終)夢と裏切りの園でフェルプスとなる
12月22日
三多摩旧友おすすめのXboxゲーム、第二弾は犯罪捜査の【LAノワール】。絵がすごい! 市街がほんとにある! 好き勝手に走れる! 俺フェルプス巡査は一刻を争う捜査中の車を舗道に止め、ウィンドウに見入っちゃいました。これですか。これがゲーム市場を物量パワーで席巻したオープンワールドですか。
人物の表情が素晴らしいと評判のゲームで、たしかに「千年女優」今敏のアニメみたいなリアル感がある。しかしオープンワールドRPGの野山を見てもどうせ自動生成でしょと驚かなかったが、市街はすごいな。精巧なミニチュア模型のLAが手に入ったみたいな高揚感がある。これはどう考えても人の手が作ってるとしか思えない。すごい。
警官なので次々に事件に遭遇する。そのたびに操作法も知らぬまま戦うことになり、表示されるボタンを必死で押す。銀行強盗との撃ち合いなどえらい切迫感で、ひー弾当たらんでくれーと必死です。合間合間の回想シーンの意味がわからんが、とりあえずばっちり面白い。
12月23日
初の尋問仕事があったのだが、殺人を目撃し動揺して泣きながら話す靴屋の女の子の表情がリアルでかわいくて見とれてしまった。すごいなあ。しかし彼女の証言が必要なのだが、表情を読んでの尋問は思ったより難しい。嘘をついても動揺しても、視線が定まらないのは同じだろ(笑)。
何度も質問の選択に失敗し彼女の協力が得られず、ネットでガイドを見て「正解」を知る。これがけっこう恣意的で、観察推理すればわかるロジカルな選択順ともいえない。しかしその正解順で尋問を進めるとよりたくさん話してくれて、彼女の演技がかわいくて楽しい。
その次の犯人尋問も全然当たらず(笑)。答えを見て進めるとすごくドラマチックな話になった。なるほどー。外れても捜査が詰むというわけでもなく、捜査は続き犯人はやがて捕まるらしい。しかし当てたほうが当然楽しいし演技が楽しめる。推理はまず自力で頑張って、外れたら答え合わせをして楽しもう。
Xboxを買い英語ゲームをやり始めた時から思ってるのだがこのゲームでは特に、キャラが喋るのを見ているのが楽しい。やっぱり英語圏の人たちの演技は大きく派手で、それをゲームキャラでアニメートするとめっちゃ見栄えがするのだ。まあ驚くからちょっと見てみてください、14分くらいから↓。
12月24日
今日はあれこれあって気分がダウナーな日で、そんな夜は【LAノワール】で犯罪捜査だとかしたくならないな。犯行現場とか検分したくないし、取り乱した関係者と話す気もしない。洋ゲーは一般にダークなので、気分が沈んだときにやるものではない。
ぼんやり走っていて丘を登る道を見つけ、登って行ったら古いLAの町を一望できる所があった。車を停めてゆっくりと町を眺める。バンクーバーのイーストサイドに似ている。坂のある町を車で流していると、レースゲームForzaよりこっちのほうがずっと気分がいいと思う。
LA ノワールは面白いが、1つ事件を解決したらしばらく休暇をとりたくなる。しかし捜査は大変だが、広大な町を自由に走るのはほんと気持ちいい。話を早く先に進めたいという気持ちもないので、どこの捜査現場へ行くにも回り道をしている。土地勘がないので自分がどこを走ってるのかはまるでわからず、一度通った道は地図上で色を変えておいてくれたら未踏の道を選んで走れるのだがなあと思う。
また高台を見つけ車を止めて散歩していると、民家の庭に洗濯物があった。なんとまあ。これをつくった人たちはプログラマーというより、ある種のジオラマ制作マニアなんだろう。俺もやりたい。
ゲーム会社の技術者をやってる友人に俺が【LAノワール】の街景にいかに驚いているかを話し、どうやってあんなものを作るのかと訊ねると、やっぱりあれは手作業なんだそうだ。何百人もが何年もかけて作ってるのだと。やっぱりデジタルのジオラマ制作班なんだな。
12月26日
6章ひき逃げ事件。派手なカーチェイスの末犯人を見事捕まえたのだが、その後から俺刑事が現場付近の重大証拠を見落としていたことが判明する。Youtube で正解進行を見たら、それを見つけるかどうかで話が変わっていた。いやすまんかった俺が捕まえた犯人(笑)。しかしこの演出はすごいな。よくできたプロットだと唸った。しかしこの正解進行を見れないのは残念なので、ハズレが出たらやり直したくなる。やり直しはけっこう前からになってしまい面倒なのが難点である。
このゲームのアクションはアクション・シューティング好きから見れば相当にぬるいらしいのだが、オートでいい感じに照準を合わせてくれるシューティングは俺にはちょうどいいし、カーチェイスはレースシミュレーターマニアの俺から見ても非常によくできている。グリップやハンドリングがリアルということではなく、敵車の取るコース取りが絶妙で、コーナーで突然ガバッと曲がる敵に巻かれないようにライン取りとスピードを準備しつつ追うことが非常に楽しい。
また普段の走行でもそうなのだが、サイレンを使うとだいたいの一般車は道と交差点を開けてくれる。とはいえ相手も人間なので完璧ではなく、交差点に入ってくる車をよけたり隙間がない車間に突っ込んでいくことも多々発生する。この辺のダイナミズムがすばらしいわけ。タイヤがグリップせずコースも読みにくい Forza より思い切り走れ楽しいのだ。願わくば LA の地形がもっと多彩だったらなあとは思うけども。 もっと坂がほしい。
寄り道の足を伸ばしたら狛犬の置かれたチャイナタウンがあった。おお。散歩するとウィンドウの商品が美しい。この店は日本の骨董屋なんじゃないかな。
12月27日
【LAノワール】今日はロング道草をしたくて相棒を路上に置き去り延々西上すると、飛行場があった。もしや飛行機もあるのかとフェンスを破り入って行くと…格納庫にあった!
…いやーすごいなとセルフィー撮って表に出ると、パトカーを捕まえ俺を追尾してきてた相棒が待ってた。あ、ゴメン怒った?(笑)。
相棒「お前な。こんな公的資源と人材を無駄遣いして、悪いと思わないのか?」。思う! ゴメン! パトカーのお二人もむっとしてますよね、夜中にソーリー! ――しかし楽しいなあ道草。どこまでも行こう、道は険しくとも。
しかし金網に囲まれた立川基地みたいな場所に無理して入るプレイヤーなどいるかわからないのに、そこにちゃんと格納庫と飛行機が用意されているんだからすごい。感動してます。置いてけぼりにした相棒が追いついてきたのにも感動(笑)。
(「墜ちた偶像」事件の舞台本物写真を見つけた。こんなセットが当時LAの町にあったわけである。すごい)
第7の事件、俺の交通課最後の仕事「墜ちた偶像」事件。映画産業末端のクズどもめ、ブタ箱にぶち込んでやると俺フェルプス刑事は証拠を集め推理して、犯人を巨大なオープンセットへと追い詰めていく。とんでもない巨大セットでトゥームレイダーみたいな大活劇! 楽しめました。
この頃主人公が徐々に弱きを助け強きをくじく人間味を見せ始め、だんだん彼のことが好ましくなってきた。バットマンACをやったときにも感じたのだが、こうした大型ゲームのシナリオ台詞の見事さは米映画産業に裏付けられた感があり、惚れ惚れさせられる。相棒がギャング相手にまくし立てた前らはゴミだ的なアジりは、清水の次郎長森の石松の一節のごとき言葉炸裂で快感だった。
相棒が7話でギャングに言った言葉。「いいか。お前らがまだ鉄格子の中にいないのは、取るに足らんハエだからだ。お前らにかまうヒマなど警察にはないんだ。わかったかアスホール」。しびれるなあ相棒ビコウスキー。今朝キミを置き去りにしてドライブ行って悪かった :-)
L.A. ノワール日記(2)殺人課編「気の毒なエブリン・サマーズ」
L.A.ノワール日記(終)夢と裏切りの園でフェルプスとなる
2016/12/25
クリスマスとベルベット
除雪車がつくったうちの前の雪山を奥様がスロープにして、昨日子供たちに開放してあげた。これはすてきなクリスマスイブでした。
そして今日親戚の集まりがあり、クリスマスの行事全終了、疲れた。クリスマスというのは朝からスコーンとクロワッサンとチーズ、夜はターキーとローストベジタブルとケーキと一日中リッチなものを食べるので、味覚的にもくたびれる。帰宅して一つ食べた日本のお母たまが送ってくれた明治板チョコのシンプルな味がしみじみとうまかった。
クリスマスの夜リビングで夜更かししていた娘が、「ベルベット・アンダーグラウンドってどこがいいのかわからない」という。「そうか。やっぱジェネレーションで耳って違うんだろう。たとえばさ、ビーナスインファーズの後ろでずーっと鳴ってるバイオリンを聞いたとき、私はすごいと思ったよ。
オールトモローズパーティのメロディも、何度聞いてもどうなってるのか分からない不思議さがある。パーティに着ていく服を思い悩む子という歌詞を知った時もガーンときた」と話すと、娘はささっとそれらの曲を聴く。「そう聞くと、そんな好きじゃなくてもなるほどと思うでしょ」「うん」
「それがクリティーク(批評、評論)というものでさ、ムスメはロック批評を読むべきなんだよ。私たちは今の子ほど音楽をたくさん聴けなかったけど、本を読んでたわけ。知識を得ると頭のサーキット(回路)が開いて、いま言ったような音や詩のすごさが耳にビビビと飛び込んでくるようになるのよ。
好みの曲を探したくさん聞いてるだけじゃ開かないサーキットがあるんだ。若い人は批評や文学を読むことが必要なんだよ。ネットでこれはすごいと思う人を見つけてもいい」てなことを話すと、娘は久しぶりにちゃんと話を聞いてくれたのです。やっぱりホーリーナイトは違うな。メリークリスマス。
2016/12/22
【Xbox360】フェイブル2 - 洋ゲーが動かすエモーション
(ネタバレは特にありません)
●初英国 RPG の独特のノリ
●フェイブルの町暮らし
●洋ゲーのメカニクス不足
●洋ゲーが動かすエモーション
●旅の終わり
Xbox 360 の良作 RPG と言われる【フェイブル 2】をプレイした。最初は冬の町やキャラの造形が暗く重苦しいなと思ったのだが、自分スパローが無口で、お喋りで行動的なお姉ちゃんのリードで物語が進むのだと徐々にわかってくる。なるほどねと初の英国ゲーのノリに慣れ、盛り上がってきたところでストーリーが急転する。絵もストーリー運びのリズムもやっぱり、日本の RPG とすごく違うな。
そして時代が移り、俺スパローは大人となって知らない村で目覚め冒険が始まった。昼間の風景は Wii ゼルダより数段美しい。さすが Xbox 360。しかし前にやりどちらも中途で飽きた「キングダムオブアマラー」「オブリビオン」同様、やっぱり洋クエスト式 RPG はどこかへ行って指示を果たし帰るお使いゲーだなと感じさせる。
◆A 地点に行き X に会う(道中ザコ敵多数)
◆X に言われ B 地点に行く(道中ザコ敵多数)
の繰り返しなのだ。戦闘は山の中の弓矢戦、線路の陸橋を敵を追いつめての剣戟と舞台設定に工夫があり、コントロールのレスポンスが良く気持ちいい。台詞脚本と声優がうまいのでその辺の品質も高い。しかしプレイヤーが基本やってることは移動→人の話傾聴→戦闘だけで、ストーリーは人々が喋るテキストの中にしかない。この構造はアマラーと同じだった。
主人公の基点となる大きな町バウワーストーンでの生活は楽しかった。鍛冶屋のバイト代や探索で得たものの売却益を武器宝石の転売で殖やし(貧しい街で高額なものを買い、富裕街で売ると倍以上になるとネットで教わった)、不動産に投資して家賃収入を得る。このシステムが回り始めると十分な定収になるので武器や服は不自由なく買え、安心してストーリーを進められる。こういう仕事はボードゲームの拡大再生産と同じ楽しさで、ドラクエの昔からこうしたちまちました小さな工夫による環境改善が RPG はやっぱり楽しい。
そしてこのゲームのハイライトといえる結婚も悪くなかった。はっきりいって町中のガールズが同じ服で同じ顔なのだが、とりあえず仲良くなった仕立屋ビクトリアさんを町の外にデートに誘い出してみた。こんなきれいな野山を、このむさい長髪でカイゼル髭の俺が君のような女の子と歩くだなんて。うれしい :-)。いやー英国訛りもかわいいよキミと結婚を決意。
結婚にはゲーム上のメリットはないのだが、冒険の合間合間に家に戻って配偶者に会うのは癒される。長く留守にしたらビクトリアさんにはなんと離縁されてしまったのだが、二番目の奥さんは大事にして最後まで添い遂げました。
町暮らしに慣れた頃バウアーストーンの旧市街を歩いていて高台の一角にきたとき、あ! と声が出た。 ここはローズ姉ちゃんと子供時代を過ごしたあの貧民街だったのか。俺はまったく気づいてなかった。そうか…。胸がきゅっと痛む。俺はずっとここで暮らしているわけにはいかないと思った。旅に戻らねばならない。
娘が小学生だった5~6年前、遊びに行っていた友達の家に迎えに行ったらその家のゲーマーお母さんが Xbox 360 のコントローラを持ったまま玄関に出てきた。ちょ、ちょっとどんなゲームやってるか見せてくださいよと上がり込んで、美麗な中世 RPG を見せてもらった。オブリビオンやスカイリムではなかったので、あれはひょっとするとフェイブル3あたりだったのかもしれない(後日フェイブル1だったと判明!)。
Xbox 360 購入時のモチベの相当分が、あのとき見せてもらった Xbox RPG の美しい 3D 中世都市光景の中で俺も遊びたいというもので、バウワーストーンはそれに近い。この橋の下の景色など美しい。なのだが実際に来てみると、Xbox の町歩きに案外高まりを感じない。なんでかというと、前述の序盤の経済基盤づくり以外ここでできることがそんなにないからなのだ。
洋 RPG は町でやることがあまりない。リアリティを重んじるので他人の家でものを探すと泥棒になり罰せられるし、ドラクエみたいに住民の声を拾い集めて次の行動のヒントを得る場所にもなっていない。つまり町には謎解きや探索といった要素がないので、どの町に着いてもショップの品揃えをざっとチェックしたあとは、建物を眺めぶらぶらと歩く以外することがないわけ。総体的なエクスペリエンスはゲームというより、TV で街歩き番組を見てるような感じなのだ。
そして、洋ゲーの建造物は緻密できれいだが、開発簡易化のためモジュール化されていて味気ない。建造物は既成パーツを組み合わせただけと思われ(知らんけどおそらくそう)、どの建物も色と間取り以外は同じなので、無数の家を購入したが途中から中に入ることさえしなかった。
日本 RPG の建物は、デザイナーのパッションが注がれたゲームアートとなっている。FF7/9 などには、機械文明が異形に発達した松本零士や宮﨑駿の日本オルタナ未来の系譜がやはり感じられる。そしてそこにはアイテム探しなどやることが仕掛けられているわけで、町の規模は小さいがプレイヤーとのインタラクションが濃い。あれは日本ゲーム製作者のサービス精神の賜だよな。洋ゲーの町は、そこまでの手間暇がかけられているとは感じられないのだ。
フェイブル 2 の風景は多彩で美しい。沼に沈む村あたりのこの風景なんかうわーとなった。なんだこれは廃スキー場かと。しかしこの鉄塔と付近の建物を調べても、何も仕掛けがない。この先の道は行き止まりなので、ゼルダなど日本ゲームなら謎を解いてこの廃リフト的なものを動かし、湖面を渡るなどの達成感を与えてくれるだろう。そういうプレイヤーが考えて何かをすると何かが起こりゲームが進むという「メカニクス」を、洋クエスト式 RPG ゲームは著しく欠いている。
誰かに会ったり敵を倒せばゲームが進むのは単純なフラグ消化であって、クエスト式洋 RPG はそれだけでできてるようなものだ。なんでメカニクスがないかといえば、脚本と声優演技で作れないものは作るのに大きな労力がかかるからだろう。景色も建物も美しいけれど、それを眺め記念写真を撮り通り過ぎていくイベント性の薄い旅が、洋式クエスト型 RPG だと感じるわけです。
洋 RPG で徹底して手がかけられているのはテキスト(文字)で、人物が喋る脚本とその演技はすばらしいし、読んじゃないがどのゲームも膨大な書物がゲーム内に置かれている。そうした製作者がテキストで表現できる部分は中二的にとことん凝っていると感じるのだが、俺はコントローラで動かす自分のキャラで物理的に世界に働きかけたいわけ。だからゼルダはやっぱり最高だと思うし、石を動かして洞窟を発見するという程度のアクションでもドラクエには興奮するのである(※)。
途中までメインストーリーは謎の指示者テレサが無線で言ってくる用足しをこなすだけで、正直退屈だった。どんな遠くからでも指示を脳内で囁くテレサという指示者は、このゲームの興を大きく削いでいる。ゼルダシリーズで主人公にまとわりつき用でもないことを話しかけてくる精霊系の相棒たち(ナビィ、舟ライオン、ミドナ、ファイ)より鬱陶しい。ちょっとは俺に考えさせてくれよと思う。
しかしブラッドストーンという大きな港町で、最後の味方メンバーとなる男リーバーを勧誘するところから、メインストーリーがガタンと意外な方向に動き出した。意外な展開は RPG のお約束なので意外性には驚かなかったが、プレイヤーの胸をつらぬくエモーションの強さにたじろいだ。洋ゲーは和ゲーと目指すところが違う。
娘が小さな頃 FF7 を一緒にやり、心温まるあるシーンで「わたし、ショックだよ」と言う彼女に「それはショックじゃなくて、感動してるんだよ」と話したことがあるのだが、そういう柔らかな心には洋ゲーがときに見せるこういうエモーションは、苛烈すぎるかもしれんと思った。まあだから洋ゲーは大人指定なのね。
そしてエンディングへ。戦いの最後は短いものだった。しかしリーバー勧誘からあとの時間のすべてが実は、この物語のエンディングだったのだと思う。その時間に心が貼り付いている。皆と別れ、桟橋で俺スパローは呆然とする。ちょっと泣いてたかもしれない。そして自分の望みが本当にかなったのかどうか、それを知るためにまた世界を巡りたいと思った。
この胸をつらぬくエモーションの大きさ強さが、洋ゲーの力だと思う。「バットマン・アーカムシティ」を終えたときにも、心には感動というよりジャリっとしたエモーションが残った。洋ゲーにはドライで抑制された詩があると思った。
2015年4月「バットマン・アーカムシティ終了」
メインストーリーが終わったあとも、サブクエはたくさん残っている。それを消化していて、ある女性を惚れさせてから振ってくれと依頼された。その子に会いに行ったらいい子だったので振るのをやめるという選択をしたら、彼女と結婚することになってしまった。まあ仕方がない、これも人助けだ。善行ばかりしてきた俺様スパローの頭には天使の輪がついている。
でホームタウンに帰ると何も知らないはずの俺の息子が、「最近ダディはマムに冷たい」とか言い出してドキッとする。ななな何を言ってるんだお前! 俺は自分の選択をめっちゃ反省し、ゲームをリセットしたいと思いました(汗)。
まだいくつかサブクエは残ってるが、このへんで終わり次にいこう。面白かった。メインゲームだけのデキで言えばそんなに高い点はつかないと思うのだが、前述の「リーバー勧誘からあと」の時間や今日の息子発言ギクリのように、これまでやったゲームではなかったような経験をいくつもさせてくれた。記憶に残るゲームとなりました。星をつけると★★★★★ ★くらい。
◇
俺のフェイブル 2 感想ツイートにずっと伴走していてくれたのは三多摩でバンドをやってた頃の友人なのだが、当時はお互いがゲーマーだなんて知らなかった。遠くからハローと微笑みだけ交わしてた。気の合う友だちとすれ違っただけでわかるようになるという清志郎の予言は、ネット以降の世界で実現している。
●初英国 RPG の独特のノリ
●フェイブルの町暮らし
●洋ゲーのメカニクス不足
●洋ゲーが動かすエモーション
●旅の終わり
●初英国 RPG の独特のノリ
Xbox 360 の良作 RPG と言われる【フェイブル 2】をプレイした。最初は冬の町やキャラの造形が暗く重苦しいなと思ったのだが、自分スパローが無口で、お喋りで行動的なお姉ちゃんのリードで物語が進むのだと徐々にわかってくる。なるほどねと初の英国ゲーのノリに慣れ、盛り上がってきたところでストーリーが急転する。絵もストーリー運びのリズムもやっぱり、日本の RPG とすごく違うな。
そして時代が移り、俺スパローは大人となって知らない村で目覚め冒険が始まった。昼間の風景は Wii ゼルダより数段美しい。さすが Xbox 360。しかし前にやりどちらも中途で飽きた「キングダムオブアマラー」「オブリビオン」同様、やっぱり洋クエスト式 RPG はどこかへ行って指示を果たし帰るお使いゲーだなと感じさせる。
◆A 地点に行き X に会う(道中ザコ敵多数)
◆X に言われ B 地点に行く(道中ザコ敵多数)
の繰り返しなのだ。戦闘は山の中の弓矢戦、線路の陸橋を敵を追いつめての剣戟と舞台設定に工夫があり、コントロールのレスポンスが良く気持ちいい。台詞脚本と声優がうまいのでその辺の品質も高い。しかしプレイヤーが基本やってることは移動→人の話傾聴→戦闘だけで、ストーリーは人々が喋るテキストの中にしかない。この構造はアマラーと同じだった。
●フェイブルの町暮らし
主人公の基点となる大きな町バウワーストーンでの生活は楽しかった。鍛冶屋のバイト代や探索で得たものの売却益を武器宝石の転売で殖やし(貧しい街で高額なものを買い、富裕街で売ると倍以上になるとネットで教わった)、不動産に投資して家賃収入を得る。このシステムが回り始めると十分な定収になるので武器や服は不自由なく買え、安心してストーリーを進められる。こういう仕事はボードゲームの拡大再生産と同じ楽しさで、ドラクエの昔からこうしたちまちました小さな工夫による環境改善が RPG はやっぱり楽しい。
結婚にはゲーム上のメリットはないのだが、冒険の合間合間に家に戻って配偶者に会うのは癒される。長く留守にしたらビクトリアさんにはなんと離縁されてしまったのだが、二番目の奥さんは大事にして最後まで添い遂げました。
町暮らしに慣れた頃バウアーストーンの旧市街を歩いていて高台の一角にきたとき、あ! と声が出た。 ここはローズ姉ちゃんと子供時代を過ごしたあの貧民街だったのか。俺はまったく気づいてなかった。そうか…。胸がきゅっと痛む。俺はずっとここで暮らしているわけにはいかないと思った。旅に戻らねばならない。
●洋ゲーのメカニクス不足
娘が小学生だった5~6年前、遊びに行っていた友達の家に迎えに行ったらその家のゲーマーお母さんが Xbox 360 のコントローラを持ったまま玄関に出てきた。ちょ、ちょっとどんなゲームやってるか見せてくださいよと上がり込んで、美麗な中世 RPG を見せてもらった。オブリビオンやスカイリムではなかったので、あれはひょっとするとフェイブル3あたりだったのかもしれない(後日フェイブル1だったと判明!)。
Xbox 360 購入時のモチベの相当分が、あのとき見せてもらった Xbox RPG の美しい 3D 中世都市光景の中で俺も遊びたいというもので、バウワーストーンはそれに近い。この橋の下の景色など美しい。なのだが実際に来てみると、Xbox の町歩きに案外高まりを感じない。なんでかというと、前述の序盤の経済基盤づくり以外ここでできることがそんなにないからなのだ。
洋 RPG は町でやることがあまりない。リアリティを重んじるので他人の家でものを探すと泥棒になり罰せられるし、ドラクエみたいに住民の声を拾い集めて次の行動のヒントを得る場所にもなっていない。つまり町には謎解きや探索といった要素がないので、どの町に着いてもショップの品揃えをざっとチェックしたあとは、建物を眺めぶらぶらと歩く以外することがないわけ。総体的なエクスペリエンスはゲームというより、TV で街歩き番組を見てるような感じなのだ。
そして、洋ゲーの建造物は緻密できれいだが、開発簡易化のためモジュール化されていて味気ない。建造物は既成パーツを組み合わせただけと思われ(知らんけどおそらくそう)、どの建物も色と間取り以外は同じなので、無数の家を購入したが途中から中に入ることさえしなかった。
日本 RPG の建物は、デザイナーのパッションが注がれたゲームアートとなっている。FF7/9 などには、機械文明が異形に発達した松本零士や宮﨑駿の日本オルタナ未来の系譜がやはり感じられる。そしてそこにはアイテム探しなどやることが仕掛けられているわけで、町の規模は小さいがプレイヤーとのインタラクションが濃い。あれは日本ゲーム製作者のサービス精神の賜だよな。洋ゲーの町は、そこまでの手間暇がかけられているとは感じられないのだ。
フェイブル 2 の風景は多彩で美しい。沼に沈む村あたりのこの風景なんかうわーとなった。なんだこれは廃スキー場かと。しかしこの鉄塔と付近の建物を調べても、何も仕掛けがない。この先の道は行き止まりなので、ゼルダなど日本ゲームなら謎を解いてこの廃リフト的なものを動かし、湖面を渡るなどの達成感を与えてくれるだろう。そういうプレイヤーが考えて何かをすると何かが起こりゲームが進むという「メカニクス」を、洋クエスト式 RPG ゲームは著しく欠いている。
誰かに会ったり敵を倒せばゲームが進むのは単純なフラグ消化であって、クエスト式洋 RPG はそれだけでできてるようなものだ。なんでメカニクスがないかといえば、脚本と声優演技で作れないものは作るのに大きな労力がかかるからだろう。景色も建物も美しいけれど、それを眺め記念写真を撮り通り過ぎていくイベント性の薄い旅が、洋式クエスト型 RPG だと感じるわけです。
洋 RPG で徹底して手がかけられているのはテキスト(文字)で、人物が喋る脚本とその演技はすばらしいし、読んじゃないがどのゲームも膨大な書物がゲーム内に置かれている。そうした製作者がテキストで表現できる部分は中二的にとことん凝っていると感じるのだが、俺はコントローラで動かす自分のキャラで物理的に世界に働きかけたいわけ。だからゼルダはやっぱり最高だと思うし、石を動かして洞窟を発見するという程度のアクションでもドラクエには興奮するのである(※)。
(※)フェイブル 2 でも、サブクエストには建物の中に隠しスイッチがあったり島中にうまく隠された宝箱20個を探し出すなど、メインクエストよりゲームっぽいメカニクスが仕掛けてあって楽しかった。スーファミレベルの簡単な仕掛けでも、考えて進められることが楽しい。メインはプレイヤーが詰まることがないように謎解きなしになってるのかな。
●洋ゲーが動かすエモーション
途中までメインストーリーは謎の指示者テレサが無線で言ってくる用足しをこなすだけで、正直退屈だった。どんな遠くからでも指示を脳内で囁くテレサという指示者は、このゲームの興を大きく削いでいる。ゼルダシリーズで主人公にまとわりつき用でもないことを話しかけてくる精霊系の相棒たち(ナビィ、舟ライオン、ミドナ、ファイ)より鬱陶しい。ちょっとは俺に考えさせてくれよと思う。
しかしブラッドストーンという大きな港町で、最後の味方メンバーとなる男リーバーを勧誘するところから、メインストーリーがガタンと意外な方向に動き出した。意外な展開は RPG のお約束なので意外性には驚かなかったが、プレイヤーの胸をつらぬくエモーションの強さにたじろいだ。洋ゲーは和ゲーと目指すところが違う。
娘が小さな頃 FF7 を一緒にやり、心温まるあるシーンで「わたし、ショックだよ」と言う彼女に「それはショックじゃなくて、感動してるんだよ」と話したことがあるのだが、そういう柔らかな心には洋ゲーがときに見せるこういうエモーションは、苛烈すぎるかもしれんと思った。まあだから洋ゲーは大人指定なのね。
そしてエンディングへ。戦いの最後は短いものだった。しかしリーバー勧誘からあとの時間のすべてが実は、この物語のエンディングだったのだと思う。その時間に心が貼り付いている。皆と別れ、桟橋で俺スパローは呆然とする。ちょっと泣いてたかもしれない。そして自分の望みが本当にかなったのかどうか、それを知るためにまた世界を巡りたいと思った。
この胸をつらぬくエモーションの大きさ強さが、洋ゲーの力だと思う。「バットマン・アーカムシティ」を終えたときにも、心には感動というよりジャリっとしたエモーションが残った。洋ゲーにはドライで抑制された詩があると思った。
2015年4月「バットマン・アーカムシティ終了」
●旅の終わり
メインストーリーが終わったあとも、サブクエはたくさん残っている。それを消化していて、ある女性を惚れさせてから振ってくれと依頼された。その子に会いに行ったらいい子だったので振るのをやめるという選択をしたら、彼女と結婚することになってしまった。まあ仕方がない、これも人助けだ。善行ばかりしてきた俺様スパローの頭には天使の輪がついている。
でホームタウンに帰ると何も知らないはずの俺の息子が、「最近ダディはマムに冷たい」とか言い出してドキッとする。ななな何を言ってるんだお前! 俺は自分の選択をめっちゃ反省し、ゲームをリセットしたいと思いました(汗)。
まだいくつかサブクエは残ってるが、このへんで終わり次にいこう。面白かった。メインゲームだけのデキで言えばそんなに高い点はつかないと思うのだが、前述の「リーバー勧誘からあと」の時間や今日の息子発言ギクリのように、これまでやったゲームではなかったような経験をいくつもさせてくれた。記憶に残るゲームとなりました。星をつけると★★★★★ ★くらい。
◇
俺のフェイブル 2 感想ツイートにずっと伴走していてくれたのは三多摩でバンドをやってた頃の友人なのだが、当時はお互いがゲーマーだなんて知らなかった。遠くからハローと微笑みだけ交わしてた。気の合う友だちとすれ違っただけでわかるようになるという清志郎の予言は、ネット以降の世界で実現している。
2016/12/17
大雪のハリソン・ホットスプリングス
今年のBCは5年ぶりくらいの寒波で、ちょうど近くのハリソン温泉を予約していた12月の第二週末に大雪が降ってしまい、困ったことになった。初日(↑)は道が最悪な状態でキャンセルせざるを得ず。12月の遠出はリスク高いよな。道路事情が考慮されキャンセル料は発生しなかったが。
二日目にはハリソン周辺の除雪が完了したとのことでSH姉の車に相乗りし向かったのだが、その日も夜も振り続け翌日は一面銀世界。そりゃ美しかったが、しかし帰路が…(笑)。帰れるんだろうか。
近年の家族旅行は甥のMK青年の子供たちが団欒の中心となっている。温泉の中で雪合戦をして楽しそうでした。
このハリソン温泉に行くたびに、実家近くの信州小布施の露天風呂は温度も眺めも最高だったという話になる。ハリソンはやはりカナダ人向けなのでぬるいのよね。そこにビール飲んで酔っ払った会社員の団体がヒャッホーと入ってる感じ。雪見風呂は悪くなかったけど、ぬるいしうるさいしで今ひとつ温まりきれなかったです。
ボードゲームもいくつか持って行った。大人には簡単ルールで絶妙な駆け引きが楽しめる「ボーナンザ」。経理士をやってるSH姉は取引と小さな決断が連続するこのゲームのメカニクスをすぐに理解し、非常に気に入ってくれた。これはほんと傑作です。
4歳5歳の小さな子供たちには「ブロックス」。角と角が接しなければならない(辺と辺は接してはならない)というルールは難しく子供には無理なので、テトリスみたいに隙間なく組み合うように置けたら OK というルールにして、けっこう盛り上がりました。
結局行きに乗せていってもらったSH姉は大雪による道の凍結を心配し、延長してその夜も宿泊。うちの一家は4駆のMK甥の車で帰宅することになった。めったにこんなには降らないBCだけど、たまに降るからみな4駆に乗るのね。
◇ ◇ ◇
そして帰るとクリスマスの準備。軒下にクリスマスライトをつけていると、つららが美しいことに気がついた。
去年はクリスマスツリーを立てなかったので、猫のピカには初めてのツリー。「なんすかこれ? 木? 家の中に木? 急に?」と彼はえらい興奮し、一晩中ツリーに張り付いて匂いをかぎ枝を噛みツリーで遊んでいた。無茶して倒さないでくれよ。
クリスマスは普段見ない珍しいものがいろいろあるので、ピカが狙っております。やめろ(笑)。彼の手が届く高さのクリスマスツリー飾りは、みんな高いところへ移動せねばならない。はは。
2016/11/24
ムスメ演劇部ショー
ムスメ演劇部のショーを見る。晩飯またぎの夜練や土曜出までするという彼女が経験したことがないほど真剣な部活だったのだが、その甲斐があるデキだった。部活いいよな部活。
カナダ中高の演劇は日本のあの不自然なほど滑舌がいい舞台用演技はやらず映画TV風演技なので、うまい子なんかすごいな即プロ戦力だなと思うが、声が小さくて台詞が半分以上聞き取れない。
なので終わってから「あれはどういう意味だったの?」とストーリーを解説してもらった。ああそういうことか、なーるほどね。「最後のあいつのスピーチはよかったね、あいつはなりたければプロになれるよね」というと、「he's my friend!」とすごく喜んでいた。そうかいい友だちを持ったな :-)
200年前のロンドン貧民街を舞台にした芝居で、みんなちゃんと英国訛りで芝居をしていた。これもうまい子とそうでもない子がいたが、やればみんなそれなりにできるんだなあと感心しましたで。ワイはたとえば関西弁で芝居なんてできまへん。
娘は持ち台詞の少ない群衆の一人だったが、ステージにいる間は切れ目なく表情で演技していてその真面目さが非常によかった。生き生きとしていてビジュアルインパクトもあったと思う。
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しかし XZ-2 のレンズの明るさとブレ防止の強力さにはたまげている。
ライトが当たるステージ上は 63mm 1/60s ISO200で楽勝。
この薄暗さでさえ 72mm 1/15s ISO1000 で楽勝。うちの M4/3 の PEN E-PM1では、この暗さでブレずにはまず撮れないと思う。夜間撮影ではコンデジなのにこっちが完勝なのであります。いやはや。
2016/11/18
青春のペイン
いろいろと悩み多き年頃の娘にディランやジョン・レノンを聴かせ、サリンジャーとか読ませようとあれこれ画策している策謀家の父である俺。おのおの、抜かりなく。
娘に読ませたいおすすめ図書を借りてきた。「なんすかこれ」。ライ麦畑のキャッチ君だよ、有名だろ知らないのかよ。市営図書館の司書さんは、『これを課題で読ませる高校があるのよ。議論を呼ぶところよね』と眉をひそめていた。保守寄り司書さんなのだろう。私はこの図書館のおしゃれ司書さんとウクレレ部リーダー司書さんのファンです。
ライ麦畑のキャッチ君はロック詞のようにリズムがあり読みやすい。それこそこれを近年訳したという村上春樹を読んでるがごとくすいすいと読める。しかしペーパーバックは日本の文庫本よりも紙質が悪く、字と地のコントラストが低いので読みにくい。文庫本で読みたいですわ。
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こないだ聴かせた「マインドゲームズ」に娘はピンとこなかったようなのだが、今朝かけた Mother、Isolation、God の「ジョンの魂」主砲3発は届いた気がする。助手席の彼女の顔を伺ったりはしなかったがこの歌詞の一字一句が、青春のペインに届かないわけがないなと思った。
「Mother」を聞きながら娘に話す。「私は子供の頃、ジョンのソロはよくわからなかったんだ。彼が亡くなったとき友だちのフォーク野郎がわーわー泣いてね、彼の家でこのアルバムを聴かせてもらったんだ。なんだかわからないがすごい歌だと思ったよ」。
数年前帰郷したときに、そのフォーク野郎父娘と夏祭りで出くわした。髪ボサボサで若干フーテンな俺をいぶかって彼の娘が「誰なの誰なのー」と訊ね、俺が代わって答えた。「私とお父さんはバンド仲間で、君のお父さんはカッコいいフォークシンガーだったんだよ」。嘘だーと娘さんうれしそうだった。
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