2011/08/20

日記「二輪の自由」

「チケライの子供向け指導」「コロレットを発見」「『愛のむきだし』感想」「15年ぶりのソロキャンプ」「フレイジャーバレー放浪」ほか。

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■11/08/08(月) □ チケライの子供向け指導
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しあさってからM萌はイングランド行きなのだが、ロンドンは暴動で炎に包まれている。カナックス敗退時のバンクーバーと同じで、火祭りを起こして物を盗みたいだけなんだろう。昨日津波に消えた町で祭りの山車を引く人たちを見て、人間ってなんと切なく愛すべきものなのかと涙が出たが、こういう映像を見ると人間はダメだとも思う。


キッズ3人楽しく樹上
KT・HNが来訪し、子供らみんなでツリーハウスに弁当を持ち込みDSで遊びながらランチを取る。そして裏の路地でローラーブレード、中に入ってチケットトゥライド・ヨーロッパと、夏休みらしいいい1日であった。

KT・HNは家でボードゲームをやる子ではないが、どちらも筋金入りのゲーマーなのでチケライも飲み込みは早い。ゲーム半ばで完全にルールを把握したKTが駅舎を効果的に使い早めに路線を達成したのだが、萌のアシストを受けたHNがなんと最長路線を取って勝利となった。やっぱチケライは初回でも盛り上がるわ。

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夜もM萌とチケライ。俺とメルが上達するにつれ、萌が勝てなくなってきた。萌は必要なカードがオープン場札に出ないと何度も何度もブラインドドロー(伏せた場札から取ること)をするので、不要なカードが山ほど貯まる。何ターンも路線を敷けず遅れる上に不要なゴミカードがたまるという悪循環に陥り、どんどん離され大負けしてしまうのだ。

そこで俺が思うダイレクトな改善案2点、
  • ①あと何枚かで長距離がつながるくらいの状態になったら、その色だけを待っていないで新チケットを取る(待ちカードを多面的にする)
  • ②ブラインドドローは最小限にする(場に出ているカードを取って場札を動かし、必要なカードがオープンされる可能性を高める→取ったカードで同色カードセットを作り、単独トラックでこつこつ点を取るか①につなげる)

をトクと説明する。

これにヒントを得たのか、次のゲームでは自分の長距離チケットに捉われず、カードを集積して8・6・6のロング路線を全部取り、計51点を取るという作戦で僅差に持ち込んできた。おお、それはいい手ではないか。特定カードをブラインドドローで待つことは命取りだということはわかってくれたようである。

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■11/08/11(木) □ M萌出発
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M萌が準備してなかったカメラのメモリー準備、DSバッテリーチャージなどを朝から忙しく行い、昼前に終わる。自分が行かないとなると、旅先でのバッテリーやメモリカードの心配などもしてやらねばならない。よし。萌はすでに昨夜から興奮疲れでブレインがまったく働いておらず、何を言ってもぼーっとしている。何歳になってもそこは変わりないな。

しかしMはチケットトゥライド Euro を持っていかないという。ええっ! デカすぎるから? じゃカルカソンヌは? 箱なしでタイルとコマだけ持っていけるじゃん。ダメ? じゃ「オレの魚」は? ダメ? えーーーっ! ラゲッジがきつきつで余分なものは一切持っていけないとのこと。ゲームは余分じゃないと思うが。

しかしこういうときのために、なにか軽くて楽しいユーロ系カードゲームを買っておくべきだったのかもしれん。カルカソンヌ・チケライと同等の手軽さと深さを備えたカードゲームがあるのかわからないが。

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【出発】寝不足と興奮で萌は道中ずっと黙っていたのだが、空港に入っていくとまたアドレナリンが出たのか元気が出てきた。そして車から降ろすと、「ハ! ここでお父さんとはオサラバよ!」と大声を上げ喜んでいる。俺が1人で日本に行った4年前と大違いだなオイ(笑)。あのときは大泣きだったくせに。まあともあれいい旅をしてくれ。

帰ってきて、1人は気楽で自由だがやっぱ家ががらーんとして寂しい。複雑な気持ち。

とりあえず前からためていた映画を見ようと思い、そこで気がついた。リビングから DVD プレイヤーを俺の部屋に持って来ても、誰にも文句は言われない。俺は完全に自由だ。自由の翼を広げ「愛のむきだし」を見ていると、あっという間に真夜中に。毎夜の日課である皿洗いを今日はしていない。これは「罪」ですか。「罪」ですね。皿を洗わずに映画を呆けて眺めていることの罪の意識が俺を苛む。皿が俺を呼んでいる。

しかし今夜やらなくたって誰にも文句は言われない。そこで台所に行きちょっと考えて、汚れた皿を台所の一角にまとめて視覚的な雑然さを下げるという手法を考えだし罪を飲み干し、そしてあとは眠くなるまで心ゆくまで「愛のむきだし」を見ることに決めたのだ。だって俺は自由、自由、自由なのだ。

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■11/08/12(金) □ コロレットを発見
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名作カードゲーム「コロレット」
Mたちが結局チケライもカルカソンヌも持って行かなかったので、今さらだが旅行用にドイツカードゲームを買っときゃよかったなあと考え、前からオンラインデモ版があると知っていたがあまり興味を感じずやってなかった「コロレット」をやってみた。最初はあまり面白く感じない。勝負どころはわかるしうまくいくと気持ちいいこともあるが、まあなるほどねという感じ。

がとにかく5分もかからず1ゲーム終わるのでどんどんサクサクやっていると、プレイ総計5回を過ぎたあたりから良手悪手、取られて悔しい場合、自分に利は薄い代わりに敵に損害を与えられる手などさまざまな手が見えてきた。するとなるほど面白い。同じく有名なカードゲーム「6ニムト」オンライン版は、何回やっても自分がやってることがいいのか悪いのか、どうしたら勝てるのかというゲームのキモがわからずワクワクしてこなかったのだが、これはそれが見える。

そして10回を過ぎる頃(それでも1時間くらい)にはもう、コンピュータ3名との熱い勝負に熱中するようになってしまった。これは素晴らしい。サンファンほどでかいプラン(役)を立て勝負に出るスリルはないが、場の流れを読む楽しさ、グッドラック・バッドラックの楽しさ、次はこうしようと上達する感覚があり、5分でできるゲームとして実に素晴らしい。

◆札を引き列に置くか、列を取る
◆3色まで得点、4色以降はマイナス

これだけのルールで、例外が一つもない美しさ。カルカソンヌ並みのメカニズムのシンプル美だ。超絶シンプルルールでゲーム性がすべてインタラクションにかかっている点は「オイそれはオレの魚だぜ」と同じだが、これは「オレの魚」より勝ち筋負け筋が明確に見え、戦略性が非常に高い。かつラックの味わいも十分に入っているので、ビギナーでも楽しめる。

旅行用と考えるとカードを手持ちでやるゲームがベストだが、これは手持ちではないものの小さなスペースがあればできる。ボードゲームができないビーチのマットの上や飛行機のテーブル上でやるのも可能だろう。ツリーハウスの上でもできる。手持ち無沙汰のファミリーパーティでの時間つぶしにもやれる。

テーマ性がない抽象的(アブストラクト)なゲームなので萌が気に入るかどうかは微妙だが、パズルやソリテアが好きなMには間違いなくウケる。そして15ドルだもんな。買おう。よし。

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家族の留守中ソロキャンプに行きたいので、準備を開始する。テントを広げてみると、やはりかなりカビくさい。まあ風を通し乾かせば大丈夫だろう。あと水タンク、マットか長ザブトン、コッヘル等が必要だ。

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■11/08/13(土) □ 「愛のむきだし」感想
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テントを一昼夜ほしたがカビ臭さが取れない。うーむ。芳香剤でごまかし我慢するしかないか。天気予報は少し改善しており、火曜から気温は夏に戻りそうだ。どこへ行くかを考えているのだが、至近でよいと評判のローリーレイクキャンプ場でまず1泊、そして前からハリソン・ホットスプリングスへ行くたびに寄り道したいと思っていたフレイジャーバレーのどこかをうろつきつつもう1泊したいな。情報を集めよう。

夕方テントを片付けに外に出ると、もう夏の終わりの空気だった。今年はついに夏が来なかった。やれやれ。

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くれぐれも独身状態になるまで見るなと言われていたバイオレントな日本映画、「愛のむきだし」4時間を観劇終了。

【以下ネタバレ】前半は満島ひかりさんが怖いコイケにレズの道に連れて行かれる描写などすごくよかったが、最後の1時間の大バイオレント・クライマックスはあまり意味がないなあと思った。どうせ大団円になるなら、人を死なせたりしないでなんとかしてもらいたかった。ユウの一途な愛が他者への破壊に結びつき、狂い、戻ってくるというクライマックスの全部が弱い。教団のヘッドが単なるオタク大学生みたいなのもヘンならそいつがユウに殺されてしまうのも馬鹿げている。満島さんが聖書の長い節を一気に暗証しきるシーンには感動したが、結局それが何かを意味してはいなかった。

この映画を本当の純愛映画だとか、”むきだしの愛”の映画だとか言っているけれど、この映画の中で純愛だとかの部分は多分全体の10%も無い、それもほとんど最後の部分だ。90%はギャグでありコミックでありギミックだ。観客はコミックの部分が面白くて映画を見続け、最後の部分でガツンとちょっとシリアスなストーリーでクイっと栓を締められたものだから「ああ、面白かった、ああなんて素晴らしい愛の映画なんだ」と飲み込まれ丸め込まれ、それまでのストーリー全部を純愛だと意識を操作されてしまっているのではないか? (『愛のむきだし』むきだしているのは愛ではなく傲慢な感情。)

という辛辣な評があったが、その通りであり、90%のマンガはすごく楽しかった。しかし10%の純愛部分は取るに足らないものだったのである。

しかし「悪のコイケ」さんがすごかった。いったい誰だ、そもそも役者なのか、町で見つけた風変わりな女子なんじゃないかという凄みがある。で調べたら「奥田瑛二の娘・安藤サクラ」だって。サラブレッドなのだ。いやはや恐れ入りました。
【ネタバレ終わり】

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大恐竜の前で、イトコと
萌と Hotmail 経由でチャットができた。萌はタイプが十分早く、ちゃんと会話になる。これはいいわ。いい時代になったものだ。写真もアップロードしている。博物館がやはりすごいな。

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■11/08/15(月) □ キャンプ準備
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天気は良化している。明日出発と決定。今日荷造りと買い出しを終えるぞ。

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最後の買い出しで「コロレット」本物も入手。これがカバンに入っていれば、電話や Pocket PC みたいにユーロゲームを携帯できるわけである。キャンプにも持っていける。使う可能性はゼロだが、ユーロゲームは持っていること自体が嬉しいという趣味性が強くある。

スリーピングマットはこれだというのが見つからないのだが(薄くて硬い時代遅れなものか、巨大なエアマットしかない)、これはもう仕方がないので家の座布団2枚を持っていってしのごう。

―――うわ、ローリーレイクキャンプ場は1グループ $30 だって。高い。カナダなのに。ちょっと待ってくれよ。マットも買わないほど切り詰めてる質素キャンプなのに、これじゃ2泊できんぞ。しかし調べてみるとやっぱサイトごとの料金なので、BC 州立はどこでも $30 が標準らしい。あちゃー。これは考えなかったな。弱った。

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■11/08/16(火) □ 15年ぶりのソロキャンプ
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旅の本職KZ氏にキャンプ場アドバイスを求めると、安いところは遠くて要4WDであるという傾向が見えてきた。つまり家族連れが気軽に行け都会から近いところは高いということなのかもしれない。

昨日キャンプ用品を探していて、カナダでは一般の量販店では家族向けキャンプ用品の売れ線以外はまったく手に入らないなとわかった。家族向けのコールマン系キャンプ用品とその廉価版しか売っておらず、ソロ用のキャンプ用品(欧州登山用品由来の EPI など)なんて1つも売っていない。俺は1人用のコッヘルセットと EPI パーツが必要なのだが、そういうものは MEC などの山屋専門店に行かないと手に入らないのだ。キャンプ場も同様に、ファミリー用とアウトドアエキスパート用に分かれているわけだろう。

ゴールデンイヤズ公園のノースビーチなら $10 安いとKZ氏の助言が入り、そこに決定し出発。

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うーん、フツーだ...
15:37 1時間でついてテントを張りコーヒー。うまい。が、思ったほどワンダフルではないなあ。うちの近所の森にテーブルを置いただけという感じ。アロエットレイクがまったく見えない。それでいて茂みがないので 360℃死角なく、隣のサイトが全部見えてしまう。地面は砂利混じりの堅い土で、テントのペグが入らない。全体的に、森の中の駐車場にテントを張っているという感じである。

とりあえずはるか下方にある湖まで降りて景色を眺め(湖につながる河口で泳げるようになっていて、そこはナイスだった)水を汲みに行くと、ポンプが滅茶苦茶重い上に汲み取り口の位置が悪く、1人では汲めない構造になっている。5分ほど苦闘して諦めた。はあ。まあいいや、ミネラルウォーター4Lは持ってきたので、それが尽きたら帰ろう。2泊の予定だったが、サイトは魅力ないし湖でオトコ1人泳いでも仕方ないし、この森の駐車場に2泊したい理由はないのである。

テントに寝袋を敷いて横になるとようやく快適に感じてきた。

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晩飯は野菜スープとゆで卵と質素に。昨日作ったおひたしも持ってきたのでお茶のツマミとする。うまい。

◆18:27 日没。山際なので早い。だんだん野営気分が出てきました。
◆19:02 日が落ちると一気に冷えてきた。やっぱここは山なんだな。焚き火を開始しよう。
◆20:39 いやー焚き火サイコー、2時間近く火を絶やさぬよう熱中してた。火の世話をしていると時間を忘れる。

しかしこういう車を入れることをまず考えたキャンプ場は、日本でもそうだが、あんまりよくないな。日本で俺が行ってた廻り目平などのキャンプ場は、狭くて車が入れないので荷物の搬入はリアカーを借りたりして大変だったが、ガヤガヤと混み合い子供が駆け回り、山の中の臨時集落のお祭りという感じで楽しかった。そこにいるだけで気分が盛り上がった。隣りのテントがバイク野郎だと話をすることもあったし、水場や炊事場を共用するのでそこでもコミュニティ感覚があった。こういうガランとしたところにポツネンといるのは、どうも気勢が上がらない。

炊事場はともかく洗い場もないのには参ったな。カナダはどこでもこうなんだろうか(前にキャンプをしたのは15年も前なので覚えていない)。持ってきた皿2枚ボウル2個を使ったら俺は余分な水もないのでどうしようもない。各自大量の水とタライを持ち込んで汚れ物を洗っているんだろうな。そうしてなんでも持ち込む必要があるので装備は重大化し、やがてキャンパーになるわけだろう。ここから見渡せる中、5サイト中3軒がキャンパー(キャンピングトレーラー)である。

ここでソロなのは俺だけであり、やはり自分が孤立しているという感がどうしてもある。1人でいることが寂しいわけではないが、自分だけが異質だというのはあまり気分がよくない。たとえばビデオで自分撮りをしたいのだが、こんな静かなキャンプ場の中大声でひとりごとを言っているという図はどう考えても奇っ怪なので、周りに聞こえないようささやき声で録画しなくてはならない。ウクレレを持ってきたがそれを弾き歌うなんてことももちろん不可。1人でいることの居心地の悪さがある。

◆21:38 テントイン。初めて使って気がついたが、このテントは隙間風が入ってくる。体は冬用シュラフで暖かいが耳が冷える。天気がもし崩れたらかなり辛いだろう。もらい物だから仕方がないが、ヘボなテントである。


このLEDライトが明るくて長持ちでサイコー
LED ランタンで読書、明るさと持続時間はばっちり。このランタンで野外でいろいろしたい、テントで本を読みたいというのが長年の夢だったので、それはかなった。実際今日は旅でも避暑でもなんでもない純キャンプなので、最大の目的はこのランタン読書という話もあるのである。

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■11/08/17(水) □ フレイジャーバレー放浪
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◆07:25 起床。夜半は寒かった。真冬用の分厚い寝袋だが、それでも上面の腿が冷えて何度も目を覚ましてしまった。薄いブランケットを腿の上に敷いたら全身が暖かくなったので、念のため持ってきてよかった。まだ谷間に日が差さないのでコーヒーを入れて寝袋に戻る。

朝飯後荷物をまとめる。でゲートに行って2泊目をキャンセルしたいと相談してみると、理由も聞かず今夜の分は返してくれた。こういうところはカナダのよさなり。

ピクニックエリアに周り10年前今は亡きPL叔母さんを連れてきた懐かしいアロエットレイクを見に降りる。急いで帰ることもないのでここでのんびりしてもいいのだが、お茶も飲んだばかりだし今はタバコも吸えない。ローリーレイクへ移動しピクニックして、それからフレイジャーバレーをのんびり巡ってから帰ろう。決めた。

◆11:30 AKさん一家が宿泊したローリーレイク着。ここでカレーを解凍してランチ。炊飯したかったのだが時間がかかりすぎるし、白昼人目のあるところで炊飯というのもちと異様かと思いカレーを温めたのみ。しかしうまい。

ローリーレイクは小さなレイクで、したがって水も暖かく子供向け。キャンプして四六時中このレイクに入れたら子供はうれしいだろう。しかし水辺は蚊が多いな。

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そこからミッションの裏山を抜けていく。ここは俺が知るかぎりこのエリアで最も日本の山道に近く、山と谷と道が連なる景色が長野の山みたいで走っていて気持ちがいい。でもやっぱりカナダの山道はコーナーのRのつけ方がユルすぎるんだよなあ。ユルいコーナーでおいしいコーナリングフォースを出すには必要以上のスピードを維持し走らなければならない。そんなことは危なくてできんし、のんびり景色を見ながら走りたいのだ。

そしてミッションを抜けローヒードハイウェイに降りる。いつもハリソン・ホットスプリングス往復でいい景色だなあと思うフレイジャーバレーで、どこかいいところを見つけコーヒーを淹れのんびりしたかったのだが、景色がいいところで車を停める場所がない。公園的なところもまったく見つからなかった。1度川沿いまで思い切って降りてみると、蚊がうわっと押し寄せてきて大変なことになった。川沿いフォートラングレーでも蚊はすごかったもんなー。母なるフレイジャーリバーは素晴らしいが、近くに住むとなると蚊は大問題だろう。

川を見渡す高台の公園みたいなところも探したのだが、これも見つからず。景色を好きなドロチェあたりまで行ったが、ガスもなくなってきてだんだん心細くなる。夏の山河を眺めて走りながら、なんだかセカセカと追い立てられてるみたいでリラックスできない。地図でドロチェにも公園はないと確認し、これ以上ハイウェイをさまよってもあまり意味ないなと引き返した。3時過ぎに帰宅。2時間余を無為にさまよい、寝不足と日差しで疲れた。

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ワインディングロードを走っていてもで星の下で寝ていても昔ほど盛り上がらないのは、これはやっぱり結婚して子供ができて、家族全体での楽しみが基本になっちゃったからなのかなと帰り道ずっと考えていた。旅やキャンプは変わらなくても俺が変わったのかもしれない。これは自分じゃ答えが出ない。

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■11/08/18(木) □ 二輪の自由
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キャンプ場で早起きしたからか、今日も早起きしてしまった。

盛り上がらなかったキャンプトリップのことを考え悶々としていたのだが、何かしようと久々に自転車で買い物に出たら、ぶわーっとほしかった自由フィーリングが湧いてきた。あ! これか! 俺がほしかったのは二輪の自由さだったのだ。瞬時に行き先を決めて軽やかに進み、いつでも止まれる二輪の自由。歩道を通り裏通りにまわり無限のルートを自由に組み上げ、適当なところにキッと止めて用を足す気持ちよさ。これだ。

車の旅は、目的地に着くか適当な駐車場がない限り止まることができない。基本的に「移動」なのだ。昨日だって丘の上から一瞬見えたフレイジャーリバーが美しかったが、車を停める場所がついぞ見つからずその後一度も見られなかった。切ないではないか。「リラックスできないセカセカ感」の正体は、止まりたいけど止まれないというプレッシャーだったのだ。多人数なら止めちゃおうかと集団意志の強引さで無理くり止めてしまいもう少しのんびりできるのだが、一人だとなおさら車を停めるには意志力がいる。だから昨日は延々とつまらない気持ちで走り続けていたのだ。

二輪ならば交通の邪魔にならないので好きなところに止まり、好きなだけ景色や町を味わえる。それが俺がしたい旅なのだ。俺はびゅんびゅん車が流れる伊豆のスカイラインでバイクを止め、路上のタヌキの死骸を横の草むらにのけてやったことがある。そういう瞬時の判断で行き・止まる自由がなく、移動を計画し粛々と実行しなければならないから、四輪の旅は燃えないのだ。分かったわ。

今後モーターサイクルを購入して二輪野郎に戻るというのは無理だが、車に自転車を積んでいき、出先でちょこちょこと二輪の自由を味わおう。

バイクにテントと寝袋を積んで走った鬼怒川→伊香保→長野の旅、食べ物とパンク修理セットを持って富士山中を駆け抜けたMTBの旅。あれらと同じ、必要なものを身につけて小さな旅に出る自給自足自由感が自転車にはある。ラブ&ピース。




2011/08/09

「『ゼルダ・大地の汽笛』の素晴らしさ」

「涼しすぎる夏」「ダンジョンズ&ドラゴンズ見学」「アクション映画不感症」

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■11/07/31(日) □ 「ゼルダ・大地の汽笛」の素晴らしさ
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寒い日となってしまったが、萌は今日もツリーハウスで DS。前から欲しがっていた「ゼルダ Spirit Tracks (大地の汽笛・英語版)」を中古屋で見つけたのだが、これが素晴らしい。ゲームキャラの芝居のかわいさ、「うっ、はっ」と入るボイスや高音質効果音の気持ちよさ(DSi XL はアコースティックが DSL の数倍いい)、テキストの適度な分量と挿入タイミング、繰り返しがまったく気にならない絶妙な音楽。これらすべての高品質要素が相まって、物語に入り込み自分が役を演じ謎を解く楽しみを味わいまくれる。萌がやってるのを見ているだけでワクワクする。


ゼルダとリンクの演技がキュート
リンクたちが移動しアクションをするゲームステージ上でカメラアングルが切り替わり、アップとなったゼルダたちがシームレスに芝居を続ける。これがなんとも自然で気持ちいい。DS の画面の中にリンクとゼルダがいるミニ 3D 世界がしっかりと存在することが感じられる。

どれくらい物語に入り込めるかというとたとえば、ゼルダを先導して城から脱出する際、リンクが監視の兵たちに話しかけ、その間にゼルダが兵の背後を通るという楽しいシーンがあるのだが(超楽しい2人同時操作)、ここで自然と

「(萌)ハローソルジャー、えーと、奥さんは元気?」
「(俺)ん? 俺は結婚してないぞ?」
「えーと、えーと、娘さんは元気?」
「いやだから結婚してないって、なんだお前は?」
「(ゼルダが背後を通過したのを確認し)さよならーw」


といった按配に、テキストに書かれていない部分を萌と俺が即興で演じてしまう。「炎の魂の裏切りの底の裏側の...」といった意味不明なテキストを延々と読まなければならない FF 等の RPG の正反対で、話が単純なのでプレイヤーがたちまち合点し、よっしゃわかった俺に任せろと演技をしたくなってしまうのだ。これこそ至高のロールプレイング体験だろう。画面上でタッチパネルを使う操作感も前作よりいい。汽車で爆走するのも前作の船より行き先が明確になり楽しい。

さらにセリフの和英訳が素晴らしい。原文日本語では「どうしたらよいのじゃろう」といったセリフだと思われる部分が、「いかにせんとや思いもよらぬ (I am at a loss as to what to do)」といった古文調英文になっている。王朝ムード丸かじりで、声に出して読んでいると俺でもエセ格調高い英国訛りになってしまい、音読することがとにかく気持ちいい。ハリーポッター好きの萌もそうなのよーと同意見(※)。

(※)これの反対のうーんな翻訳がそのハリーポッターの日本語版で、リズムが悪く音読しにくい。なんだこりゃ読みにくい本だなと呆れて英語版ハリーポッターと対比してみると、原文は前述のような音読が気持ちいい英語で書かれていたのであった。英語って音読の歴史で底力があるのかな。これを説明すると萌は、「ハリーポッターもこのゼルダの人がトランスレートすればよかったのに」と残念がる。ほんとだよね。

ゼルダで残念なのは、せっかくきれいな町や城に来ても宝探しと物品売買の楽しみはないことだ。細部まで描きこまれた町や家は、そこにいる人の話を聞くためにしか存在しない。ドラクエ的センスでは家々の全ての引き出しを開けたくなるのだが。ゲットしたきれいな宝物も、使い道もなければ(現時点では)売ることもできない。謎とパズルを解く楽しみには大満足だが、RPG としてはそこだけが惜しい。


ちなみに任天堂DSの英語版は「リズム天国ゴールド」もデキがすごい。どこでこんな日本アイドル声の英語ガールを見つけてきたのだと驚く完璧な声に、完璧にカワイイ和英訳。「かもね」が「I suppose」となるところが、I think より自信なさげで胸ワシ掴みのキュートなシャイさなわけです。これは英語圏ゲーマーを有無を言わせず日本アイドルオタクの猿ハピネス境地に送り込んだに違いない。任天堂英語化部門にはすごい人がいるんだろうなー。

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■11/08/04(木) □ 涼しすぎる夏
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今年の夏は本当に暑くならないのだが、このままじゃ夏休みがあんまりだと月曜にバーネットマリンパーク行きを決行。行けばもちろん最高に気持ちがいいところなのだが、やっぱ平地でも暑くはない程度の気候24℃だったので、水辺に降りると寒く長居はできなかった。

そして今日は今年一番の暑さ26℃との予報なので、もう一度トライだとCHを連れて再度同じマリンパークへ。やっぱ暑いというほどではなく風はひんやりなのだが、ともかくサイコーの海日となった。やっぱり子供同士で来たほうが百倍盛り上がる。よかったよかった。

あと1週間で萌とメルはイングランド旅行に出る。これがこの夏最後のサマーリーデイ(夏らしい1日)かもしれない。留守番の俺は1人でキャンプに行きたいのだが、どこに行っても夜は寒いだろうなあ。

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■11/08/06(土) □ ダンジョンズ&ドラゴンズ見学
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友達の誕生パーティに行く萌をポートムーディで降ろし、ちょうどその町のゲーム屋で定例ダンジョンズ&ドラゴンズ会をやっているMKを訪ねる。すると無愛想なオヤジたちがテーブルを囲みダンジョン&ドラゴンをやっていた。あとでMKに聞いたらうち2人は大学生だったそうで、カナダのオタクは日本と違い恰幅がいいゆえ年齢不詳だ。俺の意外な来訪にMKが驚き友達に紹介するといったこともない、静かなゲーム屋の片隅。

ダンジョンズ&ドラゴンズ(テーブルトーク RPG)というのは地味なゲームで、ボードゲームのような豪華なボードはなく、ぺらぺらの紙の上に例の小さなフィギュアのコマがずらりと置かれている。

ゲームはサイコロを振りなにか数値を読み上げて、各自自分の手元のチェックシートに何ごとか操作を加えるという感じ。パラメータを確認するためなのか、各自分厚いリファレンスブック的なものも開いている。見ていても何をしているのかはわからなかったが、まあ RPG の数値のやり取りをアナログでやってるということなんだろう。RPG って数字のやり取りだから、グラフィックがなければああなるのね。

これはやっぱボードゲームとはだいぶ違う。ボードがないから華やぎに欠けるし、メンバーの口調からしておそろしく地味で、彼らは「おおイエス」かなんか言って盛り上がってるのだが、目に見える現象は数値の移動だけだ。MKが言うにはこれは「ゲームマスターがシナリオを作って、プレイヤーはその世界観の中でプレイする」のだそうで、たとえばストーリーライティングが趣味の萌がシナリオを作り家族全員がプレイするということも可能なんだそうだ。しかし戦闘部分はあの紙とコマとサイコロで納得できるが、RPG に不可欠のストーリーはどうゲームに反映するんだろう。そこは見当もつかない。

短時間でキャラを育て買い物をして強くして旅をする「RPG ボードゲーム」がもしあれば楽しいだろうなと思うが、ダンジョンズ&ドラゴンズはそういう夢想から出てくるものとはまったく違うものだった。見た印象はボードゲームよりウォーゲームにより近い。

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ここを出て、あとは萌のパーティが終わるまで2時間待ち。夕飯時になったのでなにか軽く食いたいのだが、カナダというところはバーガー類を食うかちゃんとしたレストランに入るかしかなく、バーガーだって安くはない。海外在住日本人は誰もが日本の安い飯屋を恋しがる。

適当な軽食が見つからず仕方なく缶ジュースを購入し(カナダには缶コーヒーもない)、公園で Pocket PC 読書をしつつ待っていた。固いベンチに座っているのは苦痛だし腹が減った。それに風が冷たく最後は冷えた。今年の夏はまったくロクでもないぜ。汗をかくほど暑くないのに紫外線だけが無闇に強く、しかも短いんだからね。

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■11/08/07(日) □ アクション映画不感症
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ツリーハウスにハシゴがついて、ついに完成。あとは使いながら細部をちょいちょい良化するだけ。設計施工のMKが「子供のときこんなのがほしかったと思わない!?」と興奮して聞くので、「いや子供のときというか、お前がここに住んでる間にこれができて、お前が使えていたらと思うぜブラザー」と答える。ほんと奴はうちに10年も住んでいたんだから、5年前にでもこれを作っていたら自分も楽しめただろうにな。もったいない。

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TV Japan で「K-20 怪人二十面相・伝」を見ていて、すごいスペクタクルなのだが面白さを感じず視聴中止。これはこの映画がつまらないということではなく、俺にはアクション映画というものがつまらんのだと気がついた。ハリウッド大作アクション映画はくだらん過大評価極まると常々思っていたが、日本映画でもまったく同じことだ。いったいどこで撮影したんだろう、日本にこんなすごい明治建築風景があるのかなとそればかり気になった。

アクション映画というのは役者の躍動に胸踊らすものなわけだが、どわーんとバットマンみたいに役者が飛んでも、スポーツでアスリートの動きの美しさに感じる快感に匹敵するものが俺には感じられない。そういえば俺がアクション映画を見なくなったのは、バイクレースや競馬やサッカーなど、自分が超スポーツ観戦好きであると意識するようになった20代以降だろう。関連は大ありだ。

その俺の目にも快感を感じさせるのが宮崎アニメの動きなわけである。「ハリーポッター」を見た時、あのホウキに乗り戦うシーンのしょぼさに呆れたが、それは日本人の目が宮崎アニメの飛行シーンを覚えているからだろう。ジャッキーチェンなどのカンフー映画にも快感を感じる。「マトリックス」はその点でダメであった。

というわけで、宮崎監督には長生きし、もう何本か映画を作っていただきたいいものです。アリエッティの米本監督にも頑張ってほしい。

2011/08/07

ツリーハウス完成

裏庭のツリーハウスにハシゴがついて、ついに完成しました。あとは使いながら細部をちょいちょい良化するだけ。

設計施工の甥(去年までうちに10年住んでいた青年)が「子供のときこんなのがほしかったと思わない!?」と興奮して聞くので、「いや子供のときというか、お前がここに住んでる間にこれができて、お前が使えていたらと思うぜブラザー」と答えると、彼は目頭を熱くしてました。


ワタナベカットの小学男子
ちなみに萌は先週からスーパーショートヘアになっております。なんかファッションモデルっぽいピクシーカットというらしいですが、私から見ると故郷の町のワタナベ理髪店の「小学男子カット」にしか見えない。サカタ兄弟は子供時代ずっとこのワタナベカットでした。

2011/08/02

チケライ達成チケット公開ルール考察

「3人娘で家が外国化」「女子W杯決勝見直し」

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■11/07/23(土) □ 3人娘で家が外国化
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ツリーハウスに壁と屋根の梁がついた。すごい。壁があるともう登ってもまったく怖くない。屋根を張らなくても梁があるだけで、いきなり居心地のよさが5割増しという感じ。フライを張る前のテントみたいだ。

ちょうどSPとBLがスリープオーバーで来訪し、飯を速攻で食いツリーハウスに上がりDSで遊びまくる。こりゃ幸せな夏休みですなあ。

しかしガールズが3人も揃うとうちはもはや完全に外国となり、交わされる会話や食習慣その他は外国文化現象となって、俺はどうしていいのか皆目分からない。こういうときはMがほがらかでジョークを連発するお母さん役を全部やってくれるので、俺は遠巻きに見守っているだけとなる。

俺はツリーハウスはこうやって登り降りしろ手を洗え足を洗えなど実務的会話しかできず我ながらつまらん父親だと思うが、自分をいつわって英語人格を作ってまでフランクに接せられないので致し方ない。ボードゲームならばやれるが(笑)、11歳ガールズ3人がおとなしくコマを使って遊ぶことなどあり得ず、全然やってくれなかった。

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■11/07/25(月) □ 女子W杯決勝見直し
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今頃になって女子W杯決勝を見直してみる。落ち着いて見ると米に点が入らなかったのは運がよかっただけというヤツは立ち上がりの3回ほどで、それ以外は普通にサッカー的な攻防の範囲で打たれたシュートだった。やられまくったという印象が薄まっていく。リアルタイムでは立ち上がりで完全にやられたと感じ、それを引きずって実際より悲観的に感じていたのだろう。まさに見てる日本応援者は「敗者のメンタリティ」の中に叩き込まれていたのである。

しかし澤たちはそのメンタリティに囚われず、その時間帯以降は本当によくやっている。1対1の劣勢で縦に大きく運べず決定機は作れないが、横パスで米のプレスを交わす動きは試合を通じてほぼ完璧だし、そして後半最後はやはり日本のゲームだった。リアルタイムでは力量差6-4という印象のゲームだったのだが、実際はもっと五分五分に近かったのだろう。

同じ試合をもう一度やったら負けると試合後つよく思い、その気持ちはいま見ても変わらないが、この次に当たるときは日本がより善戦できるのではないかとも思う。次は畳み込まれたところで決壊しワンバックらのシュートがスコっと入りあっさりという可能性もあるが、試合の流れとしてUSAはあれ以上のプレス&ラッシュはかけられないが、日本は落ち着けばもっとパスを回しいい攻撃ができるはずである。女子サッカーは今後も楽しみだ。

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米女子リーグも客が足りず風前の灯と聞くが、この試合を見ればスポーツ的に楽しめないはずがないわけで、要はすごい女子選手はどの国にも20~30人くらいしかいなくて、リーグとなるとレベルの高い試合を展開できないんじゃないかな。

ならば一番可能性の高い米女子リーグが女子プレミアリーグとなって、各国代表をリーグで競わせたら楽しいだろうなあと夢想する。つまりバンクーバー日本なでしこズ、トロントイタリアンズみたいな。これはもう試合は面白いに決まっている。しかしW杯とオリンピックサッカーをやる意味がなくなってしまうか。

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■11/07/30(土) □ チケライ達成チケット公開ルール考察
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【チケットトゥライド・ヨーロッパ】うちはハウスルールとして

●チケット達成ごとに完成しましたと公開する
●駅舎を使ったら借りた路線の相手に4点払う


という改変ルールでチケライをやってるのだが、今日は試しに達成を公開しない正式ルールでやってみた。公開ありでは達成のたびに「おおナイス、だからそっちに曲がったのか、クレバーだなー」と拍手と感想戦があり、スコア上でダイナミックな追いつ追われつが起きるので中盤から終わりまでずっと盛り上がりがあるのだが、ゲーム終了時に全チケット達成点をまとめて精算する正式ルールでは、皆が自分の路線をコツコツと最後まで敷き続け非常に静かなゲームとなる。多人数同時ソロプレイ感が強くなり、チケット交錯が少ない2P戦では特に寂しい。

それにゲーム後4~5枚ものチケットを人数分いちいち確認するのはさほど興の乗る作業でもなく(ゲームの勝敗はゲーム中の盛り上がりに比べればさほど重要なことではないので)、「エッセン-キエフ10点」「はい」「スミルナ-ソフィア6点」「はい」といった具合に点だけを公開するあっさりした精算になる。ゲーム中に逐次達成を公開すれば個々に意味と個性があるアチーブメントが、単なる数値になってしまう気がする(※)。
(※)おまけとして逐次公開式では、終盤チケットを取ったときに「もうつながってましたハイ」「うあー」という小盛り上がりもあるのだが、ゲーム後の清算時ではいつ取ったチケットかなんてわからないので、この「追加の幸運があったかどうか」という部分は情報として完全に破棄される。チトもったいない。

2つめのメリットとして、逐次公開式では全員の進捗状況があらまし見えるので、トップに追いつくにはどれだけの点が必要かと思案を立てやすい。追加チケットを取るべきか、既存のチケットでロンゲストルートを伸ばすかといった楽しい悩みをクリアに描ける。萌は最近1人だけ達成非公開でプレイしていたのだが(ひそかに達成して最後にジャーンとやるのがうれしいらしい)、まったく勝てなくなってきた。これは非公開だとスコアボード上で点差が大きく離れ、それが挽回可能な差なのかどうか測りかねてラストスパートをかけられないからだろう。

達成チケットを公開すると残りのチケットが推測し易くなるというのが達成非公開ルールの理由だろうが、うちは《路線の奪い合いはOKだがブロックはやめとく》というぬるいモードでやってるのでこれは問題にならない。それにブロックありの真剣勝負ならばむしろ、達成が進むにつれ残りチケットが絞られ攻撃されやすくなったほうが、攻防が尻上がりに増しゲームは盛り上がるんじゃないかな。「ヨーロッパ」はブロックが熾烈になっても、それを乗り越える駅舎があるわけだし。

というわけで、うちではやはり達成チケット公開ルールで落ち着いた。

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チケットトゥライド・ヨーロッパは、2P戦では路線の交錯(同じ路線の奪い合い)はあまり望めない。これはチケットが交錯しやすいチケットトゥライド USA に劣るだろうと思う。しかし交錯の少ないゲームでも、各自のチケットを元にどちらがよりすぐれたプランを立て実現するかというレースは楽しめる。ボドゲでレースといえばフォーミュラDだが、チケライの直感性と戦略実現難易度と運は、フォーミュラDとは比べものにならないほど優れたバランスを成立させている。俺と萌に遅れ数日前に始めたばかりのMでも、ゲーム中存分に戦略を練り俺を負かすのだから素晴らしい。ルールセットと目的の明瞭さが皆の頭脳をドライブしてくれるのだ。


勝ち筋研究に余念がない私
じっさい俺はオンラインで鍛えたはずなのにMにてんで勝てん。たぶんつなぐことをあせり最短距離でつなぎすぎるんだろう。4コマトラック7点揃いの東欧ルートが実は強いと気がついているのだが、ぐいっと横にそれてそちらに遠回りして4コマトラックを通すなど、1枚のチケットから取れる点数を最大化すべきなんだろう。

そこには「こっちからも行けるぞ」というひらめきが必要で、その回り道がチケットトゥライドというゲームの最大の魅力である。ルールがこんなに簡単でも人に勝つには思案とひらめきが必要で、だからボードゲームは面白い。

2011/07/28

習作のアリエッティ

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■11/07/19(火) □ 習作のアリエッティ
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送ってもらった「借りぐらしのアリエッティ」をついに見る。アリエッティたちの生活を描く前半は、子供の頃に読んだこのテのファンタジー(木彫りの人形が夜動き出すとかの欧州童話に俺も萌えた)をジブリが高品質映像化してくれた、ありがたいありがたいと実に楽しい。人物や猫の動きに「非純正宮崎アニメ」的違和感は感じるが(人がステップ数細かくコマ落とし的に動くのがヘン)、俺ごときがこれと指摘できるほどの大きなものではない。宮崎監督が絵を描かなくてもこれほど気持ちのいい絵が延々と作り出せるのだからジブリはたいしたものである。ジブリの蓄積技術がすごいとも言えるし、宮崎駿はすでに学び写し取られる古典技法になったのかもしれない

【以下ネタバレです】前半の屋内冒険シーンには何度も巻き戻し絵の1枚1枚を味わうほどワクワクさせられたが、しかし映画コピーが「人間に見られてはいけない」であるにも関わらず開始3分でアリエッティが見つかってしまい、次の冒険で再度確認されるというバタバタな拙速感をはじめとして、ストーリーには終始ウーム感がある。やがてドールハウス押し付け、ハルさんの暴挙、アリエッティお母さんの無力といったドタバタが続くあたりは、「こりゃ宮崎監督はがっかりしたろうなあ」としか感じなくなってしまった。後半のほぼ全てがウームという感じ。俺だけではなく、萌もウームという顔をしていた。

見終わると萌は「あのドールハウスに住むっていうハッピーエンドにしてほしかったのにー」と不満を述べる。「だけどまあハルさんがいたらあの家にはいられないからねえ」と答えると、「ハルさんなんかクビにすればいいじゃない」という。そりゃそうだよな。家の主が3代にもわたり小人を待ってることを知りながら、メイドが害獣駆除業者を呼んでしまうという行動は馬鹿げている。その理由すらわからない。翔が小人を見つけたことにハルさんが気づくあたりからしてすでに俺も萌も、そんなわけないじゃないかと非合理性を強く感じていた。こういう明らかなご都合主義は楽しさを削ぐ。樹木希林の声も樹木希林すぎてゲンナリさせられる。身を捩るシーンは「寺内貫太郎一家」になっていた。
追記:《ハルさん(家政婦)は若い頃小人が借りていったせいで盗人疑惑をかけられ、一緒に働いていた人はやめさせられてます。という背景がある故の行動であることが端折られているので悪者のように見える》というツイートを後日発見。見たものにこうして大きな違和感を残す描写の責任って、ジブリの場合鈴木プロデューサーにあるんじゃないのかな。違うのかな。(11/12/17)

アリエッティ母のパニック無力足手まとい人物造形もほとんど醜悪と言えるほどで、彼女がハルさんに捕まったことすら、ドールハウスの食器を持ち出そうとした愚かさゆえとして描かれている。宮崎監督が描いてきた強く聡明な女たちの正反対だ。張りのある大竹しのぶの声ともひどく合っていない。トトロのメイと同じ役割だが、これを大人にやらせるのは不愉快である。このお母さんはジブリ映画登場人物で初めて、世界に出したくないなと思った。千尋のお母さんもひどくてMに不評だったが、あれは現実にいるお母さんだ。

結局宮崎駿の後継者は、ジブリからは出てこないんだな。天才は天才の弟子になんかならないのかもしれない。これは秀才である弟子が作った、ロボット兵や猫バスなどオマージュにあふれた「古典技法・宮崎駿」の習作であり、製品版としては完成していないのだろう。

しかし見終わってから調べると、脚本は宮崎駿だという。ええっ? どういうことだ?

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ショックを受けつつ考える。アニメーションは優秀だ。誰が見てもこの映画で弱いのは人物と脚本だろう。アリエッティとお父さんだけは歴代宮崎アニメからの借りぐらしなのですんなりシンパシーを感じられるが、翔をはじめとした他の人物には魅力が皆無である(―――萌とMは「君たちは滅び行く種族だ」というあたりで「なんて不愉快な子なの」と声を出していた―――)。そしてシータとロボット兵のあの名シーンのコピーが感動シーンとしてそのまま使われていることが、このストーリーのクオリティを示している。

若手監督にハードワークを委ね、自分は脚本だけに仕事を限定しても宮崎駿はもうこれしか書けないのだろうかと思うとがっくりするものがある。宮崎駿が関わってないのなら上記の通りなるほど習作だねで済むが。

この脚本で前半だけでも楽しめるものを作った米本監督は、むしろすごく頑張ったとさえ思える。こんな自立を求めて旅に出るみたいな結末にせず、萌のいう通りドールハウスに住み幸せに暮らしましたというディズニー的結末にしてしまえばいっそすっきりしただろう。哲学的寓意はジブリ(または日本劇場アニメ全般)の社風だが、このくらいの筋立てでそれを持たせようとする方が不自然だ。「勇気をもらった」とか「君は僕の心臓の一部だ」という言葉には、萌ですら「これどういう意味?」と違和感を表明していた。言葉がまったくリアルに響いてこないのだ。

監督は宮崎監督じゃないよというと、萌は「Thank God! なんでジブリなのにこんなにハッピーじゃなくて悲しいのって思ったよ!」とまで言っていた。まあそんなにひどくはないと思うが、ストーリーは宮崎監督作らしいとは、俺は萌とMに言えなかった。がっかりさせたくなかったのである。

ジブリはもう、若手監督を使うときに宮崎脚本や原案を使うといったことはやめて、作品ごとに外部の優れた才能を探した方がいいのではないか。ピクサーやディズニーみたいに産業化してほしいわけではないが、ジブリに物語を書く才能が生まれてこないのなら仕方がないではないか。そういうクリアーな割り振りができないジブリの鈴木敏夫プロデューサーという人も、実のところなんの仕事をしてるのか、なんらかの能力があるのかどうかよくわからない人である。

毎年夏向けのメイン部門はそうして合理化した上で、宮崎監督には隠居仕事をやってもらえばいい。締め切りや長さ規定を設けず彼のアニメ的イマジネーションを発揮してもらえば、今でも「ハウル」や「ポニョ」のように興奮を呼ぶ映像ができるだろう。

萌は「実は私、ポニョもあまり好きじゃないの。キュートだけど、なんか感動しなかったの」と言っていたが、あの謎だらけのストーリーでは当たり前だ。しかしNHKでポニョのストーリーに苦悩する宮崎監督というドキュメンタリーをやっていたように、時間とストーリーテリングの制約は間違いなく大きい。この映画だってそうである。「毎年夏にジブリ映画」という時間の制約があるから米本監督は死にそうになってやっていた。米本監督にはより優れたストーリーテラー脚本家を与え、宮崎監督には時間を与えてほしい。たとえ意味がよくわからず謎だらけでも宮崎駿の新しい映像は一も二もなく見たいし、間が開いてもいいからいつまでも作ってほしいとファンは願っています。

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翌日、
今回の作品は宮崎監督が企画・脚本、監督は新人の米林宏昌が務めた。だが周知の通り、宮崎駿は映画を作るときに脚本を必要とせず、直接絵コンテを描きながら作り込むという作風だ。今回の“脚本”という役割も、大まかなプロットを監督に口頭で伝える程度だったのではないかと想像する。すると監督の役割は、宮崎駿の与えたイメージを膨らませ、大まかだったキャラクタに肉付けする作業になる。これがどうにもうまく行っていない。
という詳しい人の評を見つけた。宮崎監督の関わりがこの人が言うように、「大まかなプロット」程度であってくれたならいいのだが。

2011/07/22

日記「その者青き衣をまといて」

「ツリーハウス作り」「女子サッカーの成熟」「チケライ追加チケット」「パーティでゲーム会」「US敗戦の弁を堪能」

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■11/07/10(日) □ ツリーハウス作り
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作業中萌は私の誕生日ケーキを
製作
昔から萌のために作ってやりたいとMKが言っていたツリーハウスの材料がとある経路で無償で手に入り、ついに作業が始まった。俺も終日作業。巨大な板で庭木を挟み、木が風で揺れてもストレスがかからないよう遊びを1インチ取って巨大なボルトで締める。そこに2x4を縦横に渡し上に上物を載せるという構造で、やってることはほんとの家を建てるのと変わらない本格大工仕事だ。こんなことをやる知識と技術と道具があるんだからカナダの男衆はすごい。

MKと一緒に働いたのはうちの排水システム修繕以来数年ぶりだが、俺たちは相変わらず息が合い何事もテキパキとうまく進む。俺は大工仕事の知識がないので基本MKの指示に従うだけだが、彼は人に意見をインプットされるとアイデアが飛躍してモチベーションが上がるタイプで、常に俺に意見を求めてくる。で俺は何ごとも最もラクで合理的な方法をつねに追求したいので、これはこうしたほうがラクだなと述べる。でオオそれはグレイトアイデア! と盛り上がり仕事がはかどる次第。ちょっとすごい安全で豪華なツリーハウスとなりそうである。

とりあえず床まで完成した。上がってみるといい眺めである。高くて怖い。こんなものが作ってもらえるんだからカナダの子供は恵まれておる。完成したら萌は友達を呼び、ここでスリープオーバーしたいという。いやオープンエアだから、寝るのはなあ。蚊とラクーンが問題だ。まあ完成したら考えましょう。

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■11/07/13(水) □ 女子サッカーの成熟
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日本がワールドカップのセミファイナルにいるなんてすごいことである。そしてスウェーデンなんてもう過去に何度も破っており、勝つに決まってるのである。

まずは【米仏戦】を高みの見物。カナダはドイツには少し抵抗できたけどフランスにはボコボコにされたから、強いよなあフランスと思っていると、米がカウンターから幸運な先制点。決勝で日仏美しいパス合戦を見たいのでフランスを応援してるのだが、先制点とハードな当たりで米はペースを握り返してしまった。さすがだ。

後半技術で優勢なフランスが追いつくが、追加点を奪えず、こうして押していながら決められないとブラジル同様USAの勝負根性に押し切られるぞと思っていると、恐れていた通りアメリカが追加点を取り試合終了。米は男子もそうだけどたたきつぶさないと息を吹き返す。優勢勝ちはできない相手である。日本はその教訓を胸に決勝に進みましょう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

【日本・スウェーデン】双方静かな立ち上がり。ドイツを相手にしても落ち着いていた日本はここでは格上としてグイグイ押し込んでもらいたいところだけれど、ガツガツと畳み掛けていくといった持ち味はないようだ。―――うわ、パスミスをいきなり決められ失点。――え、ミスは澤? うーむ。まあ次行こう。

ほどなく大野が高速ドリブルで仕掛けてDFを引きつけサイドに流したところを宮間がクロス、そこに川澄が飛び込んでいて押し込む。よし! まだ日本は油が回りきってない感じがあるが、ミスを早めにリセットできたのでここからエンジンを回していこう。

【後半】点が取れずに膠着が続くと、フィジカルで勝る相手にゲームが傾くかと心配してたのだが、日程のせいなのかスウェーデンは後半も走力が上がってこない。徐々に試合は一方的になってきて、日本がサイドで持って崩して切り返し、存分に振り回して最後は澤が押し込む。崩して崩してポンという、日本らしいゴールだった。

残り時間はもう、日本サッカーのショーケースと言える美技の連発。川澄のボレー&ロブゴール、英語アナが絶賛する活躍のオオノの素晴らしいクロス、同じくアナがもうほとんど舌づつみを打つほど美しい鮫島さんのドリブル突破。素晴らしい。

【試合終了】決勝の相手は苦戦に苦戦を重ねてきた米国。やってるサッカーの質はドイツよりも低いけれど、勝負根性はとんでもない相手である。ボールキープは日本ができるだろう。しかし返す刀の重さは大会随一かもしれない。

このくらいのレベルの試合を見ていると、女子サッカーは文句なく面白い、レベルの高いスポーツになってるとつくづく思う。男子に比べてパワーがどうこうとかまったく思わない。昔ウィンブルドンでグラフ-ナブラチロワを見て熱狂してたのと同じ、究極のスポーツ感がある。そしてそのただ中に日本チームがいてくれるのである。素晴らしいな。

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■11/07/15(金) □ チケライ追加チケット
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起きると同時に、雨で寒いと思う。まだ山には雪が残ってるそうだが、なんという悪天候の夏であることか。


チケライファン謹製美麗拡張チケット
朝イチで萌が「チケットトゥライド・ヨーロッパ」を対戦要求。望むところだが早くも長距離チケットが6枚しかないことに飽きてきているので、ネットで見つけたファン謹製の中長距離チケット18枚をプリントしてみた。ロング6枚、ミドル12枚のセットで、作者はロング1、ミドル1、ショート2としてのプレイを推奨しているが、とりあえず18枚全部を6枚のロングチケットの代わりに取るという単純なルールでやってみる。

するとやはり引くたびに見たことのない路線がでてきて、これまで全然進んだことがないルートを通れるので実に楽しい。萌もウォウと盛り上がっている。既存のショートチケットとの交錯も増しているようだ。これはいいわ。サイコー。チケライはチケットの種類とその交錯が増えれば増えるほど楽しい。


赤の美しいロンゲストトラック完成
2ゲーム目は萌のプランが素晴らしく、ベルリン-ソチという新路線を敷いたあと短距離数本を小気味良くつなぎ、そしていつの間にトレインを8枚ためたのかストック-ペトロという高得点難路をつなぎ、さらにそこからリーガに鋭角にターンしてダンジグ経由でメイン路線ベルリンにつないで、とうとうロンゲストトラックまで作ってしまった。あまりにも美しい完勝。オンラインでPC相手のチケライだともう俺はまったく負けないのだが、ひととゲームをし負けることの楽しさに惚れ惚れする。

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■11/07/16(土) □ パーティでゲーム会
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またファミリーパーティに呼ばれ、大人が2階で社交をやってる間俺は下で子供らとゲームをやっていた。小さな子供がいる場で小さなピース満載のチケライはコマをなくすのがちょっと心配なので「オイそれはオレの魚だぜ」とカルカソンヌを持って行き、「オレ」は9歳のDF、大人のABに大受け。ルールがたった1つしかないところ、1回の勝負が超短いところがよかったようである。カルカソンヌはメカニズムの優秀さはわかってもらえたが、子供らには(草原ルール抜きでも)ちょっと難しいという感触だった。

面白かったのは非ボードゲーマーであるABが「オレの魚」を連続6回やるほどガッチリはまり(これってチェスみたいねと言っていた)、次いでカルカソンヌをやらせると即座にそのすべてを理解したことで、「つまり横から合流すれば相乗りできるのね」「じゃこうしたら相乗りを防げて安全よね」「スペースがある方に構築したほうが町は完成しやすいわよね?」と初回プレイにして完璧にストラテジックに思考を始めており、びっくりさせられた。彼女のボドゲ脳にスイッチが入ったとしか思えない。

だいたいABってこれまで何度もこうしてパーティで顔を合わせ、お互いシャイで話題も思いつかず喋ったことは一度もなかったのだが、ゲームを挟んでいると気軽に喋れる。「なかなかやるではないか君」「うう、それは痛い」といったたわいもないやりとりなのだが、何も話さないより百倍マシである。LD家の家族クリスマスにカルカソンヌを持っていった時も大盛り上がりになったし、やっぱボードゲームはよい。特にその場で一発でルールが説明でき面白いやつは本当に貴重だ。



ウケたが勝ち方が分からない「オレの魚」
しかし「オレの魚」って楽しいんだが先行きがまったく読めないゲームで、自分が打った手が良手か悪手は後から打つ人次第という感じがする。俺は大人のMかABを追い詰めたく行動するのだが、気がつくと自分も不利な心中状態になっていることがほとんどであった。結局何も考えず3魚2魚タイルを単純に抑えていく子供のDFが勝つので結果としてはよかったのだが、俺はやはり丁々発止をやりたいのである。1対1ならばガチの勝負になるが、多人数だと勝ち筋はないゲームなのかな。家に帰ったらまたソリテアで研究してみよう。

萌がこういうパーティや親戚といるときにあまりカルカソンヌをやりたがらないのは、乗っ取りを自重して手加減しないとビギナーが楽しめないので、その加減が面倒だからだろう。俺は適度にゆるく打ち楽しくやれるのだが、萌はやるなら自分の全カルカソ力を発揮して勝ちたいわけで、これは子供だから当然である。

今日は持ってこなかったがチケライ Euro ならば対戦相手への攻撃要素が少ないので、たとえ俺たちが上達しても、ビギナーと楽しく遊べるゲームになるんじゃないかと思う。ビギナー&多人数だとちょっと時間がかかるのが難点だが。

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■11/07/17(日) □ その者青き衣をまといて
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女子W杯決勝。試合は昼からなのに5時半に目が覚めてしまった。ベッドで1時間ほど Wi-Fi してから起床。

アメリカは、個々のフィジカル能力は女子スポーツ選手の究極を感じさせるほどにすごいが、ブラジル戦でもフランス戦でもチーム戦術で相手を上回ることがまったくできなかった。耐えてしのいでここしかないというロング一閃のチャンスに懸け、相手を下してきている。

つまりUSAはコケの一念で岩を通すサッカーであり、アジアカップのときの韓国に似ている。日本はあの試合前半怒涛のダイレクトパスで韓国をズタズタにしながら息の根を止められず、ここしかないという隙を突いてくる韓国のコケ念攻撃に優位を持続できず追いつかれた。

かように米国と韓国は、念入りに叩き潰さないと息を吹き返すのである。日本がやることは念入りにスリッパで数多く叩くことで、これはこれまでのゲーム同様間違いなくできる。問題は回数とヒット率。あるいはスリッパ底の堅さ。

◆   ◆   ◆

【試合開始】ファーストプレイでいきなりFWチェニーにスピード勝負に持ち込まれ、1対1でシュートを打たれる。ワールドユース決勝惨敗の悪夢を思い起こすような出だし。運動能力はほんとうに凄いわこのチーム。ドイツのフィジカル差は体格とパワーの差だったのだが、ここではそれに加えてスピードでも圧倒的な差がある。しかしプレスをアジャストできればスピードは抑制できるはず。

USAはパスサッカーを目指していて、それがうまくいかず中盤でボールを失うことが多いとのことだが、たしかにゆるいつなぎは想像以上に拙くインターセプトは簡単にできる。だが中盤でつなぐのはじきにやめてしまい、プレスとランでガンガンに脅威を与えてくる。―――うわ、8分、折り返され詰められ完全にやられた(冷や汗)。左を破る銀髪のラピノーを止められない。ボックス横が狙われている。フィジカル差を最大化するやり方は得意中の得意という感じ。この展開が続くとどうにも止められないので、日本がポゼッションを上げて相手を下げるしかない。

20分過ぎ、USAの最大パワーが若干落ち日本はようやくボールを持てるようになる。が、単純な裏狙いが多すぎ、相手に読まれてイングランド戦同様簡単にボールを渡してしまう。もっとていねいに攻めてほしい。

流れが悪い時間を運でしのげたので、ようやく日本がペースを上げてきた。ここからだ。もうゲームはある程度コントロールできている。ここからは力通りに行けるはず。日本のパスとプレスが上か、相手のフィジカルと個人力量が上か。しかし日本は技術で上回れると思っていたが、全然そんなことはないな。ドイツ戦ではパスワークは日本のほうがうまいと思ったが、USAがグラウンダーで30mの強く長い縦パスをばしっと出し一発でコントロールして前に進むのも日本にはない技術である。おそらく速筋遅筋骨格の違いで、近距離のワンタッチパスの連鎖と連動したプレスは日本が得意、長いボールはUSA(白人)が得意と、所持技術分野が違うだけだ。USAの持つ技術は間違いなく世界最高である。

29分:うわ、ワンバックが左で強烈なシュート! クロスバーが折れるほどの勢い。USAは他の選手もそうだが、キックの強さは性別を超えている。恐るべし。

大野のスルー、やや外にずれ安藤が打つもシュートは弱くGK正面。全速で抜けだして角度と時間がないところから強いシュートを打てるのがアメリカのフィジカル、打てないのが日本で、そこは骨格上致し方ない。当たり負けしないフィジカルという点では日本女子も非常にレベルが高くなっており、中盤で競り合えば重心の低さを生かしてボールをちゃんと奪えるのだが、アスリートとしての運動能力という意味でのフィジカルでは工夫と技術で劣勢を補い切れない。たとえばこうした体勢が不十分なところから強いキックを打つには足の長さ重さと筋力が必要なわけで、それは日本人にはないのだ。だからもっと多人数でゴールに近づき、相手を崩して打たなければならない。日本が縦パスぽんで強いシュートを打つことは絶対にできない(そこを振りの強さでカバーしようと強振してミートしないというのも、男女を問わず日本選手にありがちだし)。

【前半終了】ふー。立ち上がりはホント運に助けられたけれど、日本もいい感じになってきた。鮫島が何度か上がっていたということは、立ち上がり苦しんだサイド攻撃の対策にもメドが立ってきたということだろう。しかし遅攻から裏を狙うとDFにもGKにも読まれてしまうので、このままでは点など取れるはずがない。さらなる攻撃の切れが必要だ。

しかしUSAはブラジル戦、フランス戦から予想したよりもはるかに強い。ということはブラジルブラジル・フランスが無茶苦茶強くてUSAが苦戦していただけで、これが本当の世界最強レベルであり、ドイツは調子が悪かったということなんだろう。USA優位とさかんに言っていたカナダTV解説陣が正しかった。しかし最後は勝ったほうが強いということになるだろう。

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【後半】短いブレイクで前半終わりの優勢はリセットされ、また猛攻にさらされる。ゴールポストが助けてくれているうちに、ペースを握り返してくれ。USAの守備陣は実に堅く厚くラストパスを通すスペースはない。ドリブルで勝負するしかない。大野のドリブルは効いているが、川澄と安藤はドリブラーではないのだろうか。

15分、USAのペースが落ち着いた。ここからはまた日本の工夫の戦いだ。USAのプレスは個の運動能力による単独の詰めなのだが、その個の鋭さがドイツより格段に上で、日本は交わして前に進めない。たとえプレスを横に交わせても、日本の攻撃スピードよりもUSAの戻りが速く、日本はよーいドンではいかなる勝負でも上回れないので、スルーパスは通らないのである。高い位置で奪い即座に突っかけていく以外、何事も起こせないと思う。

日本は2枚同時に早めの交替。この試合大野のドリブルがほとんど唯一の鍵だったのでえーともったいない気がするが、これだけ押されていると前線は守備に疲れ、前に走れなくなっているのかもしれない。フレッシュな脚に期待しよう......と交替を前向きに捉えていると、69分この大会噛み合っていない永里が絶好の位置でボールが脚につかず悪いタイミングで奪われ、ずばっと出された縦パス1本でモーガンと熊谷の完璧な走力勝負に持ち込まれ、ついに破られた。これはボールを出したラピノーと相手FWモーガンを褒めるしかない。まさにここしかないピンポイント勝負。これに勝つ個の力がUSAの強さなのだ

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日本がボールを持つ時間が徐々に増すが、USAは縦への速さと戻りの速さの両方で日本を上回っている。日本はプレスを横には交わせるが、前には一向に持っていけない。日本がラインを上げると失点時のようにものすごい槍が飛んでくる。このUSAを破ることは本当に難しい。これはダメかも......と思っていると80分、うわ! 日本同点! クロスに飛び込んだ丸山が潰れ、こぼれ球に宮間が詰めていた。見てるほうがもう諦めてるのに、なんてすごい人たちなんだ。

【後半終了】ぷー。すごい。勝てる。完全に五分にまで持って来てしまった。現時点では五分以上かもしれない。が、ここのブレイクからの立ち上がりでまたUSAはまた息を吹き返してくるだろう。まったく厄介な敵である。しかしだからこそ互角に戦っている日本が素晴らしい。

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【延長前半】お互いに攻め合いとなるが、米の攻めはシュートにつながるのに日本は打てない。永里が走らない。引き出す動きがないのは彼女のスタイルなのだろうが(他のFWは裏に抜けるタイプで、その動きは読み切られまったく効果がない)、流れたボールにフルスピードで詰めないのはスタイルとは関係ない。追えば相手DFのミスをまた誘えるのに。丸山と宮間が走って相手のミスを誘ったから点を取れたのであり、その努力をしないFWはこの試合ピッチにいても仕事はないだろう。大野がどれほど疲れていたのか不明だが、永里インは監督の失敗と感じる。ここはいっそダメもとで、日本のメッシを入れてくれ。

だんだん相手のクロスに対する間合いが甘くなって、ついにワンバックにヘッドを決められ前半終了。丸山は動いているからシュートを打てる。動かない永里に代えて岩渕を!

延長後半、日本の攻め圧力が増す。近賀のシュートがあと少しでネットに入りかけるが、DFが掻き出す。あと一歩なんだ。あと一歩なんだ!

そしてコーナーキックから澤! すごい。涙が出てきました。

【PK戦】「PK戦は追いついたほうが有利」というカナダ解説陣のコメント通り、海堀が全部止めてくれた。やっ・た。やってくれた。海堀さん、実を言うと私はあなたを下手だと思ってました。間違ってました。すいません。カナダTVは負けた美女GKの泣き顔を延々と映しているが、勝者はあなたですカホリさん。

◆   ◆   ◆

実際戦ってみるとUSAはなんと強いチームか、なんと素晴らしい選手を揃えていることかと圧倒された。試合前にアジアカップでの日本-韓国を、つまり力量五分で技術の日本優位とイメージしていたのだが、USAは日本より強かった。

失点を免れた前半はラッキーだったとしか言いようがないし、ボールを持てた中盤以降も日本は相手のプレスに持ち味を出せず、ほとんど破壊力のある攻めをできなかった。ドイツ戦を見てるときは勝てる、日本のよさがいつかきっと君にも、わかってもらえるさと明るい気持ちが湧いて仕方がなかったのだが、この試合はこれはわかってもらえないなと思っていた。USAの圧力が下がった後半以降はそうそう点を取られる気はしなかったが、点を取れる可能性はもっと低いと思っていた。失点後は、どうしようもないと途方に暮れていた。

しかしそうして見ている方があきらめているのに、やっている彼女たちは誰もあきらめなかったのだ。日本の組織攻撃はドイツ戦、スウェーデン戦のような華やかなゴールは生み出せなかったが、陣取りのようにこつこつと前に進み、諦めずへこたれず走った丸山たちが敵の守備に小さな小さな針の穴を開け、宮間と澤という天才が信じがたい技巧でそこに金の糸を通したのである。その奇跡には本当に涙が出た。

もう一回やったらおそらく負けると正直思う。それが試合後の俺に複雑な感情を残す。もちろん素晴らしくうれしいけれど、その気持ちはドイツ戦後に比べると感動や喜びよりもハッピーエンドの物語を見届けた安堵感に近い。「ポニョ」を見たときのような感じ(笑)。しかしそんなことはどうでもいいことだ。こんな凄い試合をして、こんな凄い敵に、日本は勝ったのだよ。わは。わはははは。

そうだ。日本は男子W杯では「もう一回やったら勝てる、今日はちょっとだけやり方を間違えた」という試合を何度も落とし、悔しい気持ちを存分に味わってきた。フランスのジャマイカ戦、日本のトルコ戦、ドイツの豪戦、南アのパラグアイ戦。そろそろその逆があってもいい頃だった。それが澤という偉大な選手の選手人生に間に合ったのだから、これはほんとうに素晴らしい。男子日本代表は中田英寿の選手人生に、なんの達成感も得ることができなかったのだから。

試合後まもなくツイッターに、「その者青き衣をまといて金色の野に降りたつべし」と澤の写真が流れてきた。そうか、そういうことなんだなともう一度胸が熱くなる。おめでとう、澤と仲間たち。

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■11/07/18(月) □ US敗戦の弁を堪能
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米スポーツ局 ESPN のTVアナ(Bill Simmons)が、「女子W杯の日本はトーナメントを通じて世界最高レベルの技術を発揮していた、ポッドキャストをアップしたから聞いてくれ」というので探して聞いてみる。

「こんなにチャンスを逃していると、日本がくるぞ。いつも俺たちが相手にするように、熱いガッツで追いつかれるぞとずっと思ってたんだ。その通りになったよ」

「モーガンがレターマンショー(米の笑っていいとも)に出てスターになり女子サッカー人気が爆発するぞと思ってたんだけど、もう駄目だよね。違うストーリーになってしまった。米のサッカー選手はみんな金が必要なのに」

相手アナ「だけどさ、日本だよ。他の国なら『こいつらにだけは絶対負けねー』とも思うけど、日本にはそんな感情が起きてくるわけないよね。最初はUSAがボコボコにしてるから、日本のシンデレラストーリーもここで終わりだなと思ったんだけど、まさかあそこからカムバックしてくるなんてねえ」

それが日本のハートなんだよ。そうやって働き、そうやって生き、そうやってスポーツをプレイするんだ。サッカー男子代表だってそうじゃないか。不屈の精神で突き進むんだ。尊敬に値するよ」

「アメリカ社会は日本のそういうひたむきさをやや失っていると思うよ。それに日本に起きたあの厄災を思うと、やっぱり負けてもあきらめがつく相手があるとすれば、日本だったよね」

なかなかいいことを言う :-)。米国スポーツ狂の心痛がじかに伝わり実に面白い。こういう対戦国ポッドキャストをわざわざ聞く気がするのも、勝ったからこそ。わはは。本当にありがとう、キャプテン・サワと仲間たち。

このポッドキャストはその後、「MLSクラブは各チーム1名女子代表選手を入れるべきだ。モーガンが来たら人気が出るぞ!」「いやお前、モーガンなら人気も出ようが、他の選手だったら...」とフモフモに脱線していきました :-)

2011/07/10

女子W杯・わかってもらえるさ

「陽光と風のエリア」「日本文化紹介の難しさ」「ニンテンドーDSの完成形」「ワイルドプレイの綱渡り」「でかいぞチケットトゥライド Euro」

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■11/06/30(木) □「陽光と風のエリア」
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山川健一のツイッターアカウントが見つかった。「クロアシカバーの悲劇」「マギーメイによろしく」「みんな十九歳だった」なんてタイトルが出てきて、強烈な懐かしさにうあとうめき声が出る

東京で最も煮詰まり先が見えない生活をしてた80年代末、彼のロックとバイクのエッセイは俺と弟の教則本だった(小説とバンドはイマイチだったが)。山川の言葉とストーンズとRZを食って、俺は井の頭で生きていた。彼のように言葉で世界と組み合って自由を稼ぎ出し暮らしていきたいと思い、バイク雑誌の編集部などにも行ってみた。

ツイートを読むと山川は東北の大学でなにかを教えたりしているらしい。長い年月が経っているけれど、原発反対の発言にボブ・マーリィの言葉を引用する彼は、なにも変わらない。

バイクにテントを積み「陽光と風のエリア」に行く日を思い描いて、高円寺で汗を流していた追憶の1989年が胸に甦る。カナダにいると「クソ暑い、山に行きたい」という欲求は起きてこないが、自分の人生に対する焦燥感はいまだ解消できていない。

この夏家族がイングランドに行ってる間俺は、15年ぶりに1人でテント旅行に出ようと思っている。BCの夏にも「陽光と風のエリア」みたいなものはあるだろう。1冊だけカナダに持って来た山川の文庫本を持って行こう。

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■11/07/01(金) □ 日本文化紹介の難しさ
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カナダデイフェスティバル。地元 PoCo 市のフェスは3度行ってそんなに盛り上がったこともないので、今年は別の町のやつに行こうかなと思っていると、ちょうどAYさんたちが日本関連の催事を隣町コキットラムでやるというのでそちらに行くことにする。フェスティバルの内容はコキットラムも似たようなものだったが、やはり PoCo より大きな街なので規模が大きかった。

ロシア屋台のピロシキを食べた後、日本カルチャー展示兼大震災支援サイトを開くAYさんのテントを訪問する。こういう場で日本文化紹介というと折り紙と七夕くらいしかないのがちと地味で、訪問者はパラパラという感じ。日本食を出しゲームやアニメを見せればテントが大入り満員になるだろうが、商売じゃないんだからそうもいかんしな。

カナダに最も影響を与えている異文化は、アニメ・ゲームや様々な商品を経由した日本のサブカルに違いない。中韓物事は多々あるが、それは人口比の多い中韓移民とその子孫のためにある。どうして日本移民は中韓より少ないのだと聞かれることがたまにあるが、それは日本のほうが中韓よりも面白く、離れがたい国だからに決まっている。しかしその日本の面白さをこうしてお祭りでカナダ人にプロモートするなんてことは、やりようがないんだよな。

萌は最初は戸惑っていたのだが、やがてテーブルの内側に入り、後は帰るまでずっと来客に折り紙を指導していた。

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カーラジオで John Mayer - No Such Thing という歌を聞く。「高校の廊下を走り抜け、腹の底から叫びたいよ」。いい歌だな、なんかモンキーマジックみたいな...と思い、MONKEY MAJIK ってクオリティ高いよなあと改めて思う。

MONKEY MAJIK ってなんで母国カナダで売らないのかな。カナダのラジオでこんなふうに流れていてもまったく違和感なく受け入れられる音なんだけれど。というか、ラジオで流れているほとんどのカナダ製ポップスより MONKEY MAJIK のほうがいいと思うのだが。

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■11/07/02(土) □ ニンテンドーDSの完成形
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今日は萌が非常に前向きでいい日で、朝からTVなど見ずに掃除を開始し、午後はずっとBRおばあちゃんのクッキングを手伝っているので、学校でのケンカ謹慎でずっと保留になっていた誕生プレゼントの DSi XL オープンとなった。そんなにほしかったのかと驚くほどの大盛り上がり。

08 年に日本でもらった DS がすでにあるし、KTの DSi を見てもさほど驚いている様子もなかったのだが、実はあの落書き写真だのボイスチェンジャーだのをやりたくて仕方がなかったらしい。


こういうのって子供だましだよなと
思ってましたが、

大人が作るとこれほどまでに低レベル
(庭のたらいで行水の図)
しばらくは落書き写真などをする萌を半ば呆れて見ていたのだが、落書きだけでなく顔のモーフィングだの顔近似性診断だの手書きアニメ制作だのといった新しい遊びをやり始め、そうかこれはハードとソフトが一体化した新しい遊び開発ツールなのかとこの3世代目 DS ハードの優秀さに気がついた。単に安いデジカメと顔画像デフォーメーションが入った子供ダマシと思った俺が間違っていた。ニンテンドーがそんなケチなものを作るわけもなかったのである。

つまりこれが DS ハードの完成形なんだな。俺はコントローラがでかすぎて繊細な操作感に欠ける Wii よりも DS の方が好みなので、その究極の形態がうちに来たということにけっこうな満足感がある。よかったよかった。

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■11/07/03(日) □ ワイルドプレイの綱渡り
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LDから萌へのクリスマスと誕生プレゼント合体として、メイプルリッジのワイルドプレイというものに行く。森の中に張り巡らされたワイヤー上を滑車を使い滑りまくるという遊びで、日本で遊んだ忍者村の高品質バージョンである。俺はカメラ係。


これで7mの高さがわかるかと
で行ってみると信じがたいほど高いところに綱渡りの綱がある。小学生が行けるレベルで7mというから、3階建ての建物の屋上くらいか。最上層は10mありそうで、これはもう見てるだけで嫌になってしまう高さであった。

安全確保のハーネスにはフックが2つあり、どんな場合でもそのうち1つは繋がっているというロッククライミングのロジックで安全は保たれているのだが、それにしたって高い。もし萌が夢中になりフックを一瞬かけ忘れ、そこでもしバランスを大きく崩したらと思うと、胃がきゅーとするのである。

まあ実際萌は人並み以上に慎重なのでそんな心配はなかったのだが、ちゃんとフックをかけているか俺からもLDからも見えない場面も多々あって、そういうときはまことにハラハラした。まあ自分が子供でも、間違いなくこれは楽しんだだろうな。ホントすごかった。

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■11/07/07(木) □ でかいぞチケットトゥライド Euro
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ようやく誕生日、ついに「チケットトゥライド Euro」をゲットした。家で実物をやってみると、オンライン版ではわからなかったゲームの物理的アスペクトをあれこれと実感する。

◆チケットを伏せて置くと目的地を忘れてしまう
◆トレインカードはとても手で持ちきれず、隠し持つと分類できんので結局表向きに置いてしまう
◆ボードがえらいでかいので、カードデッキをどこに置いても反対側の人は苦しい
◆ボードを逆から見る側が視覚的に不利(参照用マップを印刷して対処)


といったあたりに戸惑う。手元を隠す衝立とカード立てとゲーム用テーブルが猛烈に欲しくなる、初の大型ボードゲームです。今のところ人の手札など見てる余裕はないので、隠さなくても実害はないが。

ルールの説明でトンネルは意外や一発で通じたが、駅舎の説明で「使わなかった駅数×4を後で加点」というのがまだるっこしい。めんどくさいので【使ったらマイナス4】と説明する。ルール的には同じことだろう。

チケット達成点も、「ルールではゲーム終了時に計算するとなっているが、完成時に発表したほうが盛り上がるので、まあ各自自由に」とする。完成したら当然うれしいので、萌も俺も発表しオオと拍手して盛り上がる。この即時発表のデメリットは完成していないチケットがどこかわかってしまうことだろうが(特にロング)、ブロックを狙わないフレンドリー家族ゲームでは問題はない。真剣勝負をするようなメンバーなら、6枚しかないロングチケットなどいずれにせよバレるだろうし。

でオランダからスイスまでを網羅的に制覇した萌が俺の中欧路線を分断するという初戦から願ってもない面白い展開になり、俺は駅を使わねばならず苦戦となったのだが、最後に萌がカディス-ダンジグの20点をつなげなかったことが判明し、俺の勝ちとなった。「つまりベルリン-ダンジグを自分でつないで、フランクフルト-ベルリンはステーションで借りれば16点取れたんだよ」と説明すると、あーそうかと納得していた。この駅舎はPC相手にやってるときはスリルを減じるヌルいルールだと思ったが、やっぱりビギナーにはいいルールだわ


This is the best game
ever invented!
萌は前のめりになり、自分の番が待ち切れないと何度も口にし、「これは史上最高のゲームだよ!」と期待通りに盛り上がった。必要なトレインカードをうまく揃え、路線を作り上げていくというのは子供にも大人にも鉄壁の面白さで、たまらなく楽しいらしい。俺もわざとつなぎにくい難しいチケットを選ぶなどしてひそかに自分にハンデを課しつつ、興奮に体温を上げながらトレイン駒を打つ。カルカソンヌの興奮再び、萌の反応を見ればそれ以上だな。

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晩飯前にもう1ゲーム。今度は萌はまず大量にカードを集め、そして一気に長距離チケットをつなぎ快勝。そして3戦目はちょうどやってきたMK夫妻との4人戦となり、萌が大量カード集め作戦に失敗し大敗。萌はカルカソンヌでも、みんなとやると鮮やかに勝とうとしすぎて墓穴を掘るのである。俺はハンデとしてロングを取らずにプレイしていたので、ゲーマーMKにまんまと勝たれてしまった。奴の路線だけはブロックすべきだったのだが、俺はまだ本物ボード上ではそこまでゲームが俯瞰できない。

多人数戦だとどうしてもみな駅舎使いまくりになるのだが、「ここを自力でつなぎあそこに駅舎を置けばつながる」とパズルを解く感覚になり結構面白い。そして「ステーションを使ったら路線の持ち主に4ポイント払う方が面白い(※)」とMKがいう。実は俺もそうしたいと思っていたのだ。珍しくハウスルールで奴と意見が合った。次からそうしよう。
(※)次の日気づいたのだが、4点を敵に払うと相対点差はマイナス8になり、ペナルティが大きすぎてショートチケットではマイナスにすらなりかねない。安易な駅舎利用を抑制し、路線早い者勝ちのスリルを保つ上ではいいと思うが、相対点差8点はでかすぎるかも。要テストプレイ。

というわけでカルカソンヌ以上に大ウケの初日であった。萌が夢中になってくれたので、今後カルカソンヌ並みにうまくなってくれたら最高だな。

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■11/07/09(土) □ 女子W杯 - わかってもらえるさ
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【女子W杯ドイツ-日本】すごいブーイング。日本は、技術的には自分たちは格下ではないと自信を持った立ち上がり。よしよし。同じメンバーで来ているがゆえのフィジカルの不安が出る前に、ペースを掴んでおきたい。

軽い接触で次々にドイツ選手が倒れ、1人は怪我で交替。「ドイツは昨夜長時間シュート練習を行った」とのことで、地元ゆえのプレッシャーでオーバーワーク気味のコンディションになっているのかもしれない。うわ、澤さまがフランクフルトな容貌のおばちゃんにエルボーを食らった。やめろ。しかし澤率いる効率のいいプレス網によりポゼッションは日本が上です。悪くない悪くない。

パワープレイで来られると、やはりゴールマウスで紙一重のクリアが続く。これを避けるには日本がポゼッションをキープするしかない。落ち着いて、ヘンな横パスを取られずセーフに行けば大丈夫。

30分、永里こぼれ球をフリーで外す!! く~。返す刀ですごいミドルを打たれわずかに外れる。ふー。しかし押されてはいない。日本は試合をコントロールできている。ドイツはFWがプレスをかけていない。ホームのスタジアムが静まりかえるこの流れが戦略とも思えないので、フィジカルがやはり落ちてるのではないか。前夜の練習しすぎで。

日本の保持率58%と出る。やはり思い通りにプレイできている。よし。

【前半終了】澤が一度前に抜け出しボールを呼ぶが通らなかった。澤はいる場所、プレスをかける場所、ボールを流す場所と実に間違いがない人で、ミスはあっても間違いはしない人らしい。その彼女が得点の匂いに上がっていけば、間違いなく点は取れる。いつかきっとそんな日になる。もうすぐなんだ。

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カナダTV解説は澤が上がっていたもう1つのシーンをスロー解析し、「日本のMFが澤が上がっていることに気づかず後ろに戻してしまった。これをやっていれば高いポゼッションは保てるが、勝つにはここを見逃さず勝負に出なければならない」とコメント。その通り。

【後半】ドイツが圧力を上げてくる。またゴールマウスでDFが紙一重のクリア。ムトーさんが言っていたけれど、女子にとって男子と同じゴールマウスは広すぎて、GKが2人いないと守り切れないのかもしれない。日本のGKは特に下手っぴではある。

大野と丸山はキープしてチーム全体が上がるのを待たねばならないのに、苦しいので前に進み無為に失ってしまう。我慢するんだ。我慢するんだ。ここであきらめちゃ、奴らの思う壺。―――イワブチ IN!

カナダTVアナはドイツ女子がいかに強いプレッシャーと戦っているのかと延々5分くらい喋っている。ノイローゼで代表を辞退した選手がいるとかそういう話。第3者がそういう敗因っぽいものを話しだすくらい、ドイツは精細を欠いている。

完全なシーソーゲームです、と加アナ。しかし日本の守備に穴が開いてきた。苦しいのはお互い同じだ、我慢するんだ。キープするんだ。

岩渕初のドリブルから、ハーフチャンスを宮間がミドル。惜しい。あの形を続けたい。ポゼッションは高いが位置が後ろすぎる。長いパス数本で危険なところまでボールを運べる相手は楽である。ドイツ怒涛の放り込み、耐えて耐えて跳ね返す日本。そして延長へ。

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【延長】ふー。ボールをどうにもキープできない丸山に、「交替で入った丸山はゲームに入りきれていない」と的確な加アナ。2枚の交代が早すぎしかも外れ気味だったので、あと1枚の交替で状況を変えられる気がしないというのが正直なところ。

日本にミスが頻発し、ドイツが攻め込んでくる。しかしこれで岩渕がカウンターに走るスペースもまたできる。我慢して前に運ぶんだ。

元カナダ代表主将デヴォスが、日本のフィジカルが鍵になってきているね、と日本の体力限界を示唆。しかしドイツのサッカーがいいわけでもないんだ。我慢するんだ。走れる奴にボールを渡すんだ。

そして澤のロブ→丸山! ゴール! ―――完璧。完璧すぎる。鳥肌。

ヘボを重ねていた日本GKもここに来て好セーブを見せる。よし。行ける。行けるぞ。宇津木 In、あと4分。ここまで放り込みを守り切れたんだ。最後の4分が前より難しいわけではない。大丈夫。

【試合終了】やっ・た。やってくれた。

このサッカーのよさが、いつかきっと君にも、わかってもらえるさ。いつかそんな日になる。僕はなにも間違ってない。もうすぐなんだ。

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この試合はストイチコフのブルガリアがドイツを倒した94W杯準々決勝に匹敵する。あの巨象が倒れたようなショックを、ついに日本が成し遂げてしまったのだ。いつかそんな日になる。僕はなにも間違ってない。もうすぐなんだ。

2011/06/30

日記「サヨナラ小学生ライフ」

「チケットトゥライドの交錯の妙」「CONCACAF サッカーの発展」「TTR Euro の味がわかってきた」

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■11/06/20(月) □ チケットトゥライドの交錯の妙
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チケットトゥライド USA Online のデモで対PC5人戦を選択し、必要な路線区間を次々に敵に奪われ負けた。うーむ、面白い。いったんコツが分かったらカルカソンヌ同様コンピュータ相手では楽勝だろうと思っていたのだが、この負け方を体験して考えが変わった。

これはコンピュータの思考ルーチンが優秀だからこうなったわけではなく、それぞれが自分の路線を完成させようと努力するなかで線路が交錯し妨害が自然発生するという、チケットトゥライドのシステムが生む《交錯の妙》が働くのだ。つまり相手が愚かなロボットでも、チケットがうまいこと交錯さえすれば白熱したゲームになるシステムなのである。偶然とも戦術とも運とも違う、「ゲーム的交錯」という感じの絡みが立ち上がる。スポーツのようだ。サッカー的だ。

カルカソンヌで相乗り攻防のやり方が分かったときに、あまりに単純かつ精妙なメカニズムに感動したが、それと同等のコアメカニズムの素晴らしさがこのゲームにはある。それに加え、プレイ中なにもテキスト(=例外処理の説明)を読む必要がないというのもやはり優れている。

というわけで、来月の誕生日に本物ボードゲーム版を買うことはもう決めているのだが、USA を買うか Euro を買うか決めかねているのでデモをプレイしまくっております。

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■11/06/22(水) □ CONCACAF サッカーの発展
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【金杯準決勝メキシコ VS ホンジュラス】両チームとも一歩も引かない真っ向プレス勝負、体の全パーツをゴチゴチとぶつけ合いながら奪ったボールをもの凄い勢いで前に進めていき、すごい試合となっている。まさにメキシカンプロレス。彼らには痛覚がないのか。これは俺が今季見た中で一番面白い試合だ。

中盤を厚くすることでメキシコ相手に完全に互角のプレス勝負をできるホンジュラスなのだが、その分1トップは孤立しており、なかなかシュートに持っていけない。攻撃力ではウィングが3トップ気味に張ったメキシコが1枚上だが、ホンジュラスの守りもラインコントロールもほんとうに素晴らしく、チチャリートまでボールを通させない。

延長になったらホンジュラスに疲れが見えてきたと思う間もなく、メキシコがコーナーから2本ゴール。劣勢なリソースでファイトし抜くホンジュラスを応援してたのだが、ついに守備陣の集中力が尽きたという感じだった。残念だが、あの孤立した1トップでは点は取れそうになかったし、そこがまだメキシコとの力の差と言えるだろう。

しかしメキシコとプレス合戦を90分やり抜けるチームが出てきて、CONCACAF サッカーはすごいことになってきた。カナダは完全に取り残されているが、こんなサッカーが見れるなら CONCACAF の発展ばんざいであります。

ホンジュラスのMFはカンザスシティーにいるそうで、MLSでもこんなうまくてファイトする選手が揃ったサッカーを見れたら面白いんだけどなー。バンクーバーの試合を見る限りでは、まだまだ技術もスピードも希薄もユルすぎて、あまり楽しめないのである。

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■11/06/23(木) □ TTR Euro の味がわかってきた
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【チケットトゥライド Online】複雑な Euro のマップと地名にも慣れ楽しめるようになってきた。マップ自体を比較すると、やはり USA マップは簡単すぎるなと思う。デュルース-ヒューストンなど色なしトラックで5区間8コマも連続しているので、カードを集める必要もなく簡単につなげてしまう。ポートランド-カルガリー5コマ、ロス-デンバー8コマ、アトランタ-モントリオール9コマも同じ、このあたりは同色列車カードを2~3個ずつ揃えていけば簡単に繋げられる。また西海岸と東海岸のロングをいったんつなぐと、その内側のシカゴ-ソルトレイクあたりはすでに繋がっているので宝くじの前後賞的安直な得点増になる。

Euro ではこの反省から、色なしトラックは東欧の辺境に断片的に置くなど調整がなされているわけだ。そして短い路線はトンネルやフェリーでもって難度を上げている。なるほどねー。この辺がわかってくると、Euro マップの味わいもしみてくる。だんだん Euro に購入意欲が定まってきました。

Euro は長距離チケットが6種類しかないのが味気ないが(何回もやっていると、「またこの路線かよ」とすぐ感じ始める)、どこを通って行くかは手持ちのチケットとトレインの引きと敵の分布により変わってくる。だから同じチケットを続けて取ったとしても、工夫の余地はある。これはチケットトゥライド・シリーズのゲームデザインの勝利というか、鉄道網というものの美しさと面白さをそのまま見事にゲーム化しているんだよな。

つなげなかった区間を4ポイント払って自分の区間として点数をカウントできるという Euro の「駅舎」ルールは、評価が難しい。「あー先に取られた! 仕方がない、あっちから回ろう」というのがチケライ最大の面白さなのに、「あー先に取られた、4ポイント失った」では台無しだと思う。しかし対人でブロックが多発するような高度なゲームになると、駅舎なしでは勝てないという説も見聞きする。この辺は人とやってみないと分からない。

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対PC戦のみとはいえ何度もやってみて思うが、これは本当に面白いゲームである。最愛のカルカソンヌと比較すると、ある程度うまい人とやらないと盛り上がらないカルカソンヌに対し、チケライはコンピュータ相手でも困難を乗り越え物事を完成させる喜びが味わえる。この面白さはビギナーとやっても同じであるはずだ。そこかしこに小さな賭けがあり(これを micro-decisions、小さな決断と呼んでいる人がいた)、その成否が1ゲーム中何度も味わえる。

また、カルカソンヌは全手札を妨害に使うというダーティな戦法が強いわけだが、チケライは妨害をするにもトレインカードが必要で、それを消費すれば自分の路線が伸びない。この自然に備わった兼ね合いにより、破壊者有利というカルカソンヌ的弱点からもおそらくまぬがれているだろう。Euro の「駅舎」ルールと合わせ、妨害が嫌いなうちの奥さんにも完璧なゲームなんではないだろうか。



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■11/06/28(火) □ サヨナラ小学生ライフ
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キモノでセレモニー
萌の卒業セレモニー。キモノを着て行っていいかと聞かれ、いいけど他の子はそれほどドレスアップしないだろうから目立ちすぎるだろうと言ったが、それがいいのだとのこと。さすがに晴れ着的なものはやめて、クリーム色のきれいな浴衣を着ていき、本人の希望通り美しく映えていた。

セレモニーは子供らの感謝のスピーチがいくつもあり、影像担当教師による今年1年の膨大な写真とビデオをまとめたムービーがメインの演し物としてあり、校長が例によって長すぎるスピーチをした以外は期待以上によいものだった。


スクールキャンプで湖に浮いた丸太遊び、
なんてゴージャス
この影像先生の尽力ムービーのおかげで、先々週のキャンプをピークとしてキッズがどれほど楽しいイベントの数々を体験したがよく分かる。これはカナダの教師としてはちょっと例がないほどの親切で、あの先生はおそらく今年1年、どの親よりも多く子供らの写真とビデオを撮ったことだろう。ただカメラを持ってそこにいるだけではなく、アクティブに働きかけなければ撮れないいい映像に満ちているし、そのDVDを頒布もしてくれたし、ありがたいことである。最低限のことしかしてくれない校長と教師が揃った前の学校を捨て、小学校最後の1年をこの学校でとお母さんが決断してよかったとつくづく思わせてくれる影像と卒業セレモニーだった。

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総体的には素晴らしい1年だったのだが、しかし最後に萌は親友CHRと大ゲンカになり、それが実は多人数でCHR1人を無視するというけしからん状態だったと後からわかり、萌は家では謹慎中になっている。自分の誕生パーティも罰としてキャンセルとなり、グロリアスだったここGLでの小学生ライフはやや末尾を濁す終わり方となってしまった。まあそれほど叱られても本人は、親たちほど落ち込んでいないのだが。


サヨナラ小学生ライフ
カナダだからなのか日本でもこうなのかわからないが、女子11歳は本当に難しい年頃である。萌は反抗的なわけではなく、扱いは難しくないほうだとは思うが、この1年で親のイメージする道理の通りにはまったく行動してくれなくなってしまった。体はこんなに伸びすぎるほどに成長しており、家族友人への自己主張もそれと同期して強くなっている。道理を判断する方面の精神年齢も早く、この外見とシンクロしてもらいたい。

2011/06/25

「カナダサッカーの停滞と NHL 戦術の単調さ」

「カナックスのメンタリティ」「カナダサッカーの停滞」「NHLについて考える」ほか。

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■11/06/13(月) □ カナックスのメンタリティ
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【NHLプレイオフ第6戦】1st ピリオドで 0-4。こ、これは....。うちの嫁は八百長だと怒っておりますが、ここぞというところで何度もガラガラと崩壊してしまうカナックスの姿は、「勝者のメンタリティ欠如」というやつでは....。

とにかく負けすぎはいかん。このファイナルは3戦目の大敗で流れが変わったのは間違いない。大敗するとラフになりすぎて身体的ダメージも残る。落ち着いて、負けは認めつつ点差をできれば詰めて、最後の1戦につなげるいいイメージを掴んでもらいたい。

このNHLプレイオフってやつはとにかく馬鹿げた長さで、2ヶ月28試合にも渡りピークを保たなければならない。優勝経験がないカナックスみたいなチームには本当に厳しいフォーマットだと思う。しかしボストンも調べてみると古豪で40年優勝はないとのことだから、しんどいのは同じか。

カナックス1点返した。よし。負けてもいいから流れをこっちに。クレイジー&クールに(鮎川誠)。カナックス2点目! よし! ――あ、取り消しか。しかしきた、流れがきた。間違いない。カナックスはクールになっている。

ボストン追加点、5-1。しかしこれはパワープレイ中だったので仕方がない。5人の状態で残り時間をきちんとコントロールして終われば、次の最終戦@ホームにいいマインドセットで向かえるはず。

よし。とにもかくにも2点取ってくれましたカナックス。1st ピリオド中はもっとひどいゲームになる可能性もあったので、いいことです。決戦は水曜日。

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■11/06/14(火) □ カナダサッカーの停滞
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【ゴールドカップ:カナダ VS パナマ】20分経過、0-0。今日はカナダのデキがいい。カナダはいつもそうなのだが、トーナメント3戦目くらいになると一緒にいる効果でサッカーがサマになる。前2戦とは段違いの組織感で人とボールが効果的に動き、ボールを支配している。あとはひらめきがあれば点は取れる。

30分、何度も決定機を迎えるも無得点。カナダの支配率はなんと65%。すでに2勝しているパナマのモチベーションが低いという可能性もあるが、パナマも負けると2勝で3チームが並ぶので安泰ではない。やはり今日のカナダのデキがいいのだろう。あと少し、頑張れ。

前半終了。ドン引きのパナマ守備陣を崩せないカナダ。こういう展開では、小回りの効く技巧的な選手のいないカナダはどうしても遠目からのクロスやショットばかりになってしまう。後半から最も得点力のあるジャバーが入ることに期待。というかなぜあいつはいつもフル出場しないんだ? そこが分からん。

分からんといえば、カナダで一番足技があるデロザリオをトップ下に置いた形がこれまで一番よかったのに、試合ごとに彼を左右のウィングに置くこの監督の考えが分からない。サイドでも彼は効いているけれど、彼からFWまで距離がありすぎる。あの距離を隔てて生きたボールをFWに渡すほどの技術はないのである。もっとFWの近くにいなければ生きない。

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トップ下に移動したデロザリオがいったん外に流してからボックスに飛び込み、DFに倒されPK! 自ら決めて先制。よし。ここでジャバーを投入して一気に大量点を。ぜひ。もう1点取れば得点差で追いつける。

と思ったがジャバーは出ず。コンディションに問題があるのだろうか。

そしてその後は負けるとヤバいと気がついたパナマがモードを切り替え、延々と猛攻することになる。俺は晩飯(お好み焼き)を作りながらの苦しい後追い観戦を余儀なくされたのだが、こうしてパナマが本気になると実はカナダはまったく押し返せないのだった。パナマはこれまで完全に手を抜いていたわけで、そんなチームを後悔させてやらずにどうする、カウンターで息の根を止めてやれ。

しかし前半押し込んでもシュートを打てなかったカナダが、数少ないカウンターから点を取れるわけもなく、最後は守備が決壊し、混戦からキーパーごとゴールにボールを蹴り込まれてドローとなった。敗退確定。

勝ち進めばもっとチーム状態が上がったのだが、カナダの追加点狙いも押し上げもイマイチ必死さに欠けていた。動揺しながらの調理でうちのお好み焼きも味がイマイチであった。がっくし。

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このゴールドカップ3戦を見て、カナダの選手の質から見てやっているサッカーのレベルが低すぎると痛感した。特にグアドループ戦とパナマ戦前半、あれだけボールを持てていながらシュートがまるで打てないとなると、攻撃陣の位置と動きを整理しアイデアと好機を引き出すことができない監督に問題があるのではないかと思える。具体的にはさっきも書いたように、FWにラストボールを通せる距離にデロザリオや他のドリブラーを置かないから個人技が連鎖しないのだ。

それにこの2戦でのカナダのチームスピリッツにも問題が伺えた。あと1点取れば勝ち抜けるのに、暑さもあるのだとは思うが、本当に必死に戦っている気配が見えてこなかった。

現監督ハート氏は、監督のなり手がないときにいつも臨時で出てくるみたいな人で、経歴を見たらやはりプロチーム監督の経験はない。選手としての経歴も、俺が夏期講習で通ったハリファックス・セントメリーズ大学だけらしい。懐かしい。弱小カナダとはいえ選手のレベルと所属チームの格は上がっているので(昔はスコットランド、今はブンデス勢が多い)、そういうアマチュア監督の指導では動かせないのではないだろうか。戦術的にも、メンタル的にも

実際年表を見てみると、サッカーカナダの監督でプロコーチは、2000 年のゴールドカップを勝ったオジェックだけだ。カナダサッカーはお金がなくプロ監督を雇えないから強くならない、強くないからお金がないという、単純な構図から抜け出せないでいるようだ。

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■11/06/15(水) □ NHLについて考える
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NHL本年度最後の最後の1戦。長いことカナダに住んで、今までオリンピック男女ホッケーの勝利祝福もご相伴に預かったけれど、NHLは本当に特別なんだなと最後の1戦を待つ町の緊張を感じながら思う。他の都市は分からないが、オリンピック男子決勝よりも明らかに盛り上がり張り詰めている。ボストンには野球もバスケットもあるけれど、バンクーバーにはこれしかないのだ。頑張ってくれ。

このファイナル数戦を見ていても、見るスポーツとしてはNHLよりオリンピックホッケーのほうが(さらにはスレッジホッケーのほうが)サッカー的なパスワークと組織プレイがあって面白いという気持ちに変わりはない。NHLは車のドラッグレースやインディ500マイルを見ているような感じで、狭いところをものすごいエンジンを積んだ大男たちが行き交っていく。

この速さとリンクの狭さ(スペースのなさ)でパスは不確実でカウンターが危険すぎるので、NHL はどうしてもドリブル(?)でパックを運ぶのがメインのプレイとなるわけだが、狭いので当然ハーフラインを過ぎたあたりでプレスがかかり手詰まりとなり、遠目からゴール方向へドカンと打って終わる。基本的にその繰り返しが60分間続くスポーツなのだ。選手交代は無限なのでプレスが落ちることもない。

リンクの広いオリンピックホッケーは、うまいドリブラーによるカウンター独走や遅攻でのパスワーク組み立てがあり、誰が上手いのか素人が見てもわかり楽しいのだが(かつてのパベル・ブレは強烈だった↓)、NHL のこの高速往復運動の繰り返しでは、真剣に見ても誰がうまく速いのかすら分からない。プレスサッカーの極致みたいなもので、個人技をやれるスペースも時間もないのだ。本当に、スポーツとして真面目に偏見なく見ていて NHL はひどく単調で戦術的につまらんのである。でこのプレス合戦内の闘いではボストンのほうが地力が高いので、押し上げる圧力が高くこぼれ球を多く拾い優勢というシリーズになっている。



俺にとってはバスケットも同様なのだが、こういう狭いところを超熟練者が猛スピードで行き交うスポーツというのは、戦術的なものはよほどの熟練観戦者にしかわからないのではないかと思う。好きな人はシュートトライや選手の美技や派手な肉弾戦だけでも十分に盛り上がれるだろうが、俺は戦術が分からないとスポーツが半分も楽しめず、したがってこのファイナルを見ていてもスポーツとしては面白くない。だが、とにかくNHLはとにかく、心情的にカナダに勝たせてあげたいのである。

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【最終戦開始】帰宅早々ボストン先制。しかしまだまだ 1st、時間はある。落ち着いて、まずは同点に。大丈夫。

1st 終了。ホッケーは本当に力量差が分かりにくいけれど、しばらく集中して見ているとカナックスが前にパックを運べないのが分かる。ボストンのフォアチェックがいいのか。ホッケーはパスが非常に繋がりにくいのでドリブル(?)で持ち上がるしかないのだが、すぐに狭い方に追い込まれてしまう。うーむ。

このホッケーの戦術について俺は知りたいのだが(――劣勢なカナックスが局面を変える戦術マジックはないのか、サッカーなら「デロザリオをトップ下に持って来い」と素人でも戦術が語れるぞと――)、ホッケーアナはプレイスピードに合わせ競馬中継並みに早口で、何を言ってるかまったく聞き取れない。戦術をリアルタイムで語ってくれる人はないかと Twitter で探してみるも、日本語では解説ツイートは見当たらず、英語では1万2千ツイート/hour とかでとても読めない状態。

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2nd ハーフ中盤、カナックスがやや盛り返したが、パスのつなぎはやはり劣勢に見える。先制したボストンが特に引いているようにも見えないが、前に持って行くたびにプレスの網にかかりポゼッションを失う感じ。

そしてカナックスのつかの間の攻勢が止むとまた押し込まれ打ち込まれ、ボストンに2点目。これだけ打たれていてはこぼれ球がいつかは悪いところに行くのである。ふー。

カナックスのパワープレイで攻めている中カウンターを食らい、3ゴール目。打った選手がゴーリーを押し出して入ってるではないか、これはサッカーなら取り消しだろうと思ったが、解説は「もしゴールは認められなかったらDFのファウルでPKだったろう」「打った後のフォロースルーでFWがGKに当たったのだからゴールは認められる」的なことを言っている。そのへんの基準は違うらしい。

さらにもう1点失い残り10分、ボストンはもう点を取る必要はないのでフォアチェックの圧力を落としており、このまま終わるだろう。この数試合を見た感想として、カナックスは単純に地力及ばずということなんだろうな。ボストンの選手が特にうまいとも強いとも感じないが(GKがこの2試合では段違いだったが、カナックスのGKも勝った試合ではスーパーだったらしい)、カナックスのチーム力が相対的に下なのは明らかだった。2ヶ月の長い旅を経てはるかここまでたどり着き、さらに3勝してホームに望みをつないだことが、カナックスにとっては大健闘といえる快挙だったのかもしれない。

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【試合終了】0-4。ボストンは実はカナックスよりもカナダ人選手が多いのだそうで、優秀な自国選手を国内に留めておけるようにならない限り、気の毒なことだがカナダはスタンレーカップを取り返せないのでありましょう。観衆はまだカナックスに声援を送っている。カナダ人は優しい。

戦術論を探して英語記事を読んでる時に、「カナダ人だけどボストンを応援してる、カナダ選手が多いし、カナックスは嫌いだ」って人がいた。もしかするとカナダのコアなホッケーファンには、カナックスなんて新参者で半可通な存在みたいな価値観があるのかもなーと思いMに聞いてみると、

もともとNHLの伝統対決はトロント対モントリオールで、カナダ対アメリカというライバル感情は昔はなかった。ボストンも昔からいるからおなじみだけど、カナックスが新参者という感覚はわかる

とのこと。なるほどねー。

そのへんの機微は、外国人+ホッケー無知には難しい。しかしそれくらいにカナダ国民にとってホッケーは特別なものなんだなと深みを感じるスポーツ感情のあやではある。静かな、静かな夜。試合中から町中が死んだように、あるいはもう死んだほうがマシだとでもいうかのように静かだ。

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うわ、夜10時、バンクーバーでは暴動が終わってなかった。試合直後は暴徒をポリスがポカポカ叩いて下火になっていたのに、知らぬ間に暴徒が盛り返し、町中に火が回っている。建物に火が移っている。デパートに泥棒が入っている。ポリスはどこに行ったんだ?

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■11/06/16(木) □ 暴動が終わった朝
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暴動が終わった朝。市長や経済人が、「オリンピックで築き上げた町のイメージに一部の無法者が傷をつけた」とさかんに嘆いているが、そんな風評被害を心配する姿はやや見苦しい。今朝から朝イチで大量のボランティアが掃除をしてるとのことで、素晴らしい町であることに変わりはない。ただ馬鹿者はどこにでもいるということだ。

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夜、「チケットトゥライド」のオンライン・デモ「USA 1910」をプレイ。ようやくチケライにも慣れてきて、つなげない路線は見切って新チケットを取る、ロス>カルガリーを右から回してつなぐなど戦略性が出せるようになり、非常に面白い。初の勝利。

このデモはもうじき期限が終わってしまう。父の日のプレゼントに鉢植えを買ってくるとMが言うので、「鉢植えよりもチケットトゥライドを買ってくれ」とお願いすると、誕生日じゃないのよと一蹴された。まあそうすね。

2011/06/12

「初めてのボードゲーム会」

「子供カメラを探す」「スペシャル日系買い物誕生日」「ディア・ドクター」「日本語学校でコントを希望」「ゴールドカップ開幕」「日本のミュージックビジネス」

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■11/06/01(水) □ 子供カメラを探す
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 明日萌の誕生日なのだが、Mは出張中だし本人も去年同様暑くなるのを待って水着パーティをやりたいとのことで、明日は何もイベントがない。一切何もしてやらないのはかわいそうなので、こないだ見かけた激安ビデオカメラでも買ってやろうかなと考えている。顔面至近撮影でツバだらけにされるので俺のカメラはもうキッズに貸したくないが、どうせ撮るのは顔のアップなのだから、激安カメラで十分なはずだ。


驚異の廉価カメラ、$9.99
 というわけで、子供用ビデオカメラ$10(!)とDS用スピーカ$5を買ってきた。カメラは単4バッテリー駆動で1GB、カードスロットまであるという本格的なもので、クオリティはダメダメだろうがこんなおもちゃ価格なんだから、動きさえすれば買って後悔するわけがない。Youtube で見る限り、予想通りのキッズ画質で撮れそうである。

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■11/06/02(木) □ スペシャル日系買い物誕生日
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 朝イチで萌にカメラを渡す。期待通り大盛り上がり。さっそく使ってみると絵は予想以上にきれいだ。せっかくの誕生日なんだから、このカメラを学校に持って行ってみんなのバースデーメッセージでも録画しておいで。

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 学校のインドアホッケーを朝初めて見に行くと、萌のチームはすでに準決勝まで勝ち上がっており、しかし今回は相手が明らかに強い。ガンガン点を取られ、失点のたびにチーム全員の表情がどんどん険悪になっていく。「そんなに気にすんなよ」と横から声をかけるも聞こえない。子供スポーツって難しい。

 萌はホッケーなぞ当然超ヘタでチームの足を引っ張ってるので、交替時にとにかく相手のあのでかくてうまいFWをフリーにするな、間を詰めるだけでもディフェンスになる、ボールを拾ったら体で敵からボールを守り、そして前にクリアするんだとサッカー的にアドバイスする。これは即効性ありで、次のピリオドから萌のディフェンスがそこそこ役に立ち始める。技術はなくてもチームスポーツならやれることはある。

 子供のスポーツを見ていると、自分も子供の頃はこうで、試合中何をしたらいいのかまったく分からず頭が真っ白だったんだよなと思う。コーチがいいチームがすぐに強くなるのは、子供の真っ白な頭に必要な情報を単純な方法で入れてやれば、こうしてすぐさま効果が現れるからだろう。

 結果は 15-0 の爆負けで、あまりの士気の低さに試合後校長がスポーツマンシップとはとチームに5分もの訓示を垂れるほどの負けっぷりだった。だがこれは仕方がない。相手は強かったし、でかくてうまい奴をFWに置いて徹底して攻めてきた戦略勝ちでもあった。

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指までなめちゃうビアードパパ
 ビデオカメラ+DS用スピーカで狙い通りクラスパーティとなり盛り上がったという萌をピックアップし、Mを空港へ迎えに行くついでにリッチモンド・アバディーンセンターに直行、「ビアードパパ」でシュークリームを食べさせてやる。ついでダイソーで好きなものを5点買っていいよと買い物。そしてたこ焼ディナー。萌の日系買い物誕生日フルコースだ。

 そしてブラブラした後空港でMをピックアップし、プラン通りに9時に帰宅。お疲れ様でした。いい萌の誕生日であった。ダイソーでの買い物は「こんなものがあるのか」と楽しく、買ったアイデア商品を帰ってから使うのも楽しい。萌は何を買うかと思ったら意外や脳トレ的パズルブックを買っていた。これは日本語を読む訓練にもなっていいね。

 あの萌の$9カメラは実際驚きの実用性能で、レンズが超しょぼいので遠距離だと分解能が足りず役に立たない(まるでピンぼけのように写る)が、子供が好きな顔どアップだと文句なくいい絵が撮れる。これは素晴らしいオモチャだな。買ってよかった。

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■11/06/04(土) □ ディア・ドクター
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 映画【ディア・ドクター】。八千草薫が自分の病気について喋り始めた瞬間、鶴瓶は話に集中するためにTVの野球中継を切る。一刻を争う外科処置にうろたえた鶴瓶が、針を刺す位置を余貴美子に目くばせで教えてもらう。そうした細部が実にいい。後者のシーンなど、アメリカ映画なら怒号のやり取りで熱いハートの大成功となるところだが、その代わりに余貴美子の壮絶な表情とささやき声がある。たまらない。メインの物語は「??」と思うところも多いのだが、こうした細部の味わいは日本映画ならではだ。

 刑事が鶴瓶を知る関係者に聞き込みをして回る。警察がそんなに熱心にニセ医者の動機や心情背景を調べるとも思えないのでこの刑事は狂言回し感が強いのだが、ニセ医者とわかったあとの村人の反応が面白い。だまされていたという裏切られ感と、しかし被害といえるようなものは何もなかったという実感とが、小市民のズルさ寄りに表現されていく。そしてその反応の余韻が、ラストシーンにつながっているのだ。いい映画でした。

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■11/06/05(日) □ 日本語学校でコントを希望
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 日本語学校の卒業発表会。萌は小5なのだがカナダ日本語学校ではなぜか卒業となる。直前が日本で育ちバイリンガル弁護士になりたいという強烈な上昇志向の子だったのでいくぶんスパークが奪われたが、萌の卒業スピーチもばっちりだった。

 しかし日本語学校の発表会は「わ・た・し・たち・わあ。なになに・をお。べんきょうしました」みたいな和式唱和スタイルが相変わらず大半である。幼稚園課は仕方がないが、小2~3以上は子供たちも苦笑しており、かんべんしてくれと思ってるだろう。漢字が難しいので日本語学校が嫌いだと正直にスピーチしていた子がいたが、反抗期にさしかかる萌くらいの年頃の子供にとってはこの《日本語キッズライフにまつわる幼稚さ》も、間違いなく日本語学習へのネガティブな要因となっている。

 ー番面白かったのは家で日本語を使わない子たちによる寸劇で、医者で鼻にティッシュを詰め治療されるという、子供ら自身で考えたに違いないコントに皆がゲラゲラ。唱和や原稿丸読みじゃなくて、こういうパフォーマンスのほうがやっぱいいすよ。

 いっそのことだな、こういう日本語コントを習う学校があればいいのではないか。現実としてカナダの日本語学校は、宿題を見る限り単なる漢字読み書き塾にすぎない。これで日本のマンガを読めるようになる子も中にはいるだろうが、それは家で親が日本語物資を子供に与え、子供がそれを消費しているおかげであって、萌のようにカナダカルチャーにずっぽり入っている子にとって日本語学校の勉強は実用には結びつかない。片親がカナダ人の子供はどこもうちと似たようなものだろう。

 だから漢字ドリルの時間を減らしても俺はまったく構わないから、日本語を使うアクティビティとしてコントをやってほしい。こういう楽しみがあれば子供らが毎週通うモチベーションが上がりまくるだろう。萌が卒業スピーチで日本語学校一番の思い出として同級生が言ったジョークを挙げていたように、笑いは一番強いモチベーターなのだ。学校でコントを毎月1本習い、家で親に披露するとかいった具合になったら素晴らしく楽しいことだ。先生に希望を話してみよう。

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■11/06/07(火) □ ゴールドカップ開幕
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 【ゴールドカップ(サッカー北中米選手権):USA対カナダ】見どころのあまりない試合であった。個人の力量で上回りバランスのいい米が順当に勝ったがデキは悪く、コンディションで上回るカナダは長時間攻めることができたのに、まるで攻撃が形にならないのである。長く強い球出しなど個人の力は昔より上がっているのだが、PKエリアなど大事なところでボールをコントロールできない。

 終盤のカナダの猛攻もエヴァートンGKのハワードが止めまくり、調子が悪いなりになんとかしてくれるドノヴァンら一流選手がいるUSAがうらやましいというゲームであった。カナダはカナメのMFの位置にいるのが、今季加入のMLSで全然勝てず、試合を見ても今のところ見るべきものがないバンクーバーホワイトキャップスの選手だもんなー。あそこにうまい選手がいてほしいとほんとに思った。

 ま、カナダのコンディションだけはいい。グアドループとパナマには走り勝ちできるでしょう。それくらいしか今のところは期待できん。

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■11/06/09(木) □ 日本のミュージックビジネス
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 AKB総選挙という(どうせ不愉快になるのでなんの選挙なのか調べたことはない)話題に日本は席巻されたらしい。カナダでもアイドルはいないではないが、たとえばうちの萌はジャスティン・ビーバーにもアヴリル・ラヴィーンにも興味はないように、国民こぞってアイドルに注目するなんてことはあり得ない。日本では大人までもがAKBの話題に付き合っているのが変なところである。

 NHKの音楽番組で今日、ウーバーワールドというバンドが東京ドーム公演を成功させたと紹介されていた。昔 Boowy が武道館をやったとき「ついに国産ロックバンドがここまできた」というエポック感はすごかったわけだが、今は普通に人気があるバンドは東京ドームでやれるらしい。

 つまり、日本ではミュージックビジネスの成功の単位が甚だしくデフレしている。《ロックバンドの普通の成功が東京ドーム公演で、一番人気アイドルグループは総選挙で国民的行事》という成功の尺度になっている。

 それが悪いこととは言えないが、ものごとの価値をなるたけ高所から公平に眺めたならば(まあそんなことは不可能ですが)、ずいぶんイビツに見えるのは間違いない。成功は集中ではなく分散してほしいな。

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■11/06/11(土) □ 初めてのボードゲーム会
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 甥MKの関連会社のバンクーバーボードゲーム会に招かれる。会場につくと昔うちに一時居候していた懐かしいLNがいた。最後に音沙汰を聞いたのは奴が南アWCを見に行った後、放浪していたアフリカで「汚職警官に捕まり出国できず困っている」という話を聞いたあたりで、彼は釈放された後も旅を続け、なんとバイクで転倒し大怪我をしていたのだった。お前なあ、気をつけなきゃ駄目だろうと肩を叩くと、その通りだよねと笑う。まったくいいヤツではある。

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 会場で山積みのゲームを調べ、俺が欲しくてたまらぬ「チケットトゥライド Euro」を発見。やっ・た。しかしMKが俺の知らぬゲームをどんどん運んでくる。

 まず【ギロチン】というカードゲーム。手札のアクションカードを使い場札の貴族カードの位置を操作しギロチン送りにするというもの。悪いゲームではないが、大量のテキストを読まないと効果が分からないアクションカードが主だというのは、それだけでゲームデザインを好きになれない。ドミニオンでもそうだが、カードに書いてある効果とはつまり《基本ルールに対する例外ルール》なわけで、効果テキストに依存するゲームというのはゲーム中ずっとルールを苦労して読んでいるのに等しい。ドミニオンほど面白ければやがて全部効果を覚えてしまうのでその苦は減少していくが、ギロチン程度のゲームにこれだけのテキスト読み苦労が付随していてはとてもバランスがとれん。

 続いて【カルカソンヌ2】、LNと競って俺の勝ち。やっぱカルカソンヌは例外ルールがなく得点に集中できていいよ。いつやってもサイコー。LNがカルカソンヌ好きだとわかったのもうれしい。


 萌はその間、うちから持っていった「オイそれはオレの魚だぜ」を小さな子とやっていた。ルールが1つだからどんな小さな子にもできるが、子供が盛り上がるにはちょっと少しパンチが足りないかもしれない。他の子供らはやはり「人生ゲーム」をやってました。

 次はまたMKの選択【ゾンビダイス】。ショットガンが3つ出るとバーストというだけの単純なダイスゲーム。子供が学校の休み時間に鉛筆サイコロでやる程度のゲームである。まあ他に何もやることがなければないよりマシだねという程度。

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 そしてさあ次はというところで、またMKがゲームを出してくる前に俺が【チケットトゥライド Euro】を突っ込み、ようやく開始。オンラインでデモを楽しみ、いつか買いたいと思っているゲームそのものである。ワクワク。

 マップとカードのグラフィックと質感は評判通り素晴らしい。俺は色弱なので、チケライ・オンラインではカードの色が分かりにくく困っているのだが、各カードにわかりやすいマークがついており問題はなかった。素晴らしい。俺以外はみんな初めてなので、ルールのあらましを知っている俺が説明しつつ(※)、トンネルと駅舎ルールは省略してゆっくりと味見プレイ。
(※)しかしこれだけデザインが明快なゲームでも、英文ルールブックは分かりにくい。最初にチケットが何枚か、手札が何枚か、場札が何枚か、ルールブックの地文をほぼ1ページをまるまる読まないとわからない作りになっていたせいで開始に手間取った。各何枚配布なのかを冒頭に箇条書きにしておけば即座にゲームを始め、遊びながら不明な部分をチェックできるのに、なんでこんな当たり前なことが分からないのか英語マニュアル書きピープルは。

 序盤は全員「これでいいの?」という感じで恐る恐るプレイしていたのだが、このゲームのデザインは実にシンプルかつ合理的で、数ターンもしたら全員のゲーム脳がクリックし、どんどん打ち手が早くクレバーになっていく。この説明不要性がカルカソンヌ同様ゲームデザインの勝利だよな。何も読む必要がないし、例外を知る必要もない。どうしたら多く点を取れるかを盤面から読み取り考えるだけでいい。《コアのメカニズムさえわかれば、あとは誰でも知力を絞る気持ちよさが味わえる》、こういうゲームこそが美しいと俺は思う。


俺様の華麗なカディス-ストックホルム線
21点(黄色)完成に憤る甥MK
 俺の向かいのアジア系の奥さんは落ち着き物静かでゲーマー的に賢そうな人で、この人の打つ手がなかなか気持ちがいい。おおそこに打つか、MKの路線が妨害できるではないかえらい、という感じ。こういう声の低いアジア系カナダ女性にはたまに出会うが、スマートでかっこいい。アジアで育ったらこの骨格の人からこんな低い声は絶対出てこない。うちの萌が今そうであるように、小さい頃から高く子供っぽい声を嫌い低く強い声を出そうとするからこうなるのだろう。今の萌の喋り方は年齢不相応で不自然だが、こういう声に育ってくれたならそれはすごくいいよなあと思う。

 中盤、俺は2つの短距離路線が完成し、それを使ってカディス-ストックホルム21点の長距離路線も完成してぶっちぎりとなる。あと少しで長距離路線が完成するというあたりでは、うれしくてニヤけ顔を抑えられない。路線を完成しても見せないのが正式ルールらしいが、完成したらその場で発表しスコアを入れたほうが盛り上がるに決まってるので(デメリットも思いつかない)、みな完成するごとにじゃーんと発表し、オオいいねえ美しいと盛り上がった。

 俺はさらに新チケットで短距離をもう1つつなぎもうスコアは余裕だったのだが、最後にMKがモスクワからリスボンあたりをつなぎ追いついて、俺がもう1枚引いたチケットをつなげずマイナス点を食らい、これで負けとなった。うーん、やはりコンピュータ相手のオンラインよりもはるかに面白い。終了後、これは面白いわねえとアジア系奥さんと話に花が咲く。これは買うしかないな。

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 最後にMKがまた持ってきた【パンデミック】。俺は同作者の「禁断の島」がまるっきり合わなかったのでパスしたのだが、ゲームはえらい盛り上がっており、誘われて俺も2ゲーム目に入る。しかしやっぱり俺は「禁断の島」と同じ感想だった。

 システムはクレバーである。だんだんリスクが上がっていくところ、閾値を超えると一気に爆発的感染を起こすところなど、誰もがなるほどと唸るだろう。そのシステムの整合美を味わい、システム上の最適解を解いていくドリルという感じで、俺はあまり遊びをやってる気がしないのだ。このゲームシステムでは誰がやっても、分担して感染都市をケアし、知識(カード)を集中させ特効薬を作るという作業内容に大差はないはずである。システムとしては見事だが、これを多人数の「ゲーム」としてやることに意味があるのかどうかよく分からない。ボードゲームをするということはよくできたシステムを工芸品のように慈しみ味わうことでもあるのだが、それだけでは物足りない。

【追記】 パンデミックにおける勝ち負けは、高ポイントを得るために賭けに出てのるかそるかといったゲームっぽいものではなく、前に出た感染(エピデミック?)カードが早すぎるタイミングで再度出るかの「確率」によりもたらされるものとなる。プレイヤーが協力して危機に対処することは楽しいが、感染カードが悪い都市に出てしまえばその努力とあまり関係なくあっという間にゲームセットになる。少なくとも俺の見た2回ではそうだった。好きな人はそれでああ惜しかったと盛り上がるわけだが、俺はゲーム中自分の判断に独自性が薄い上に、ゲーム結果も自分の判断との関連が薄いと感じ、気持ちを深くコミットできない。「禁断の島」でもそうだった。

 しかしMKたちにはほんと大受けで、3回も連続でやっていた。ロジックパズルなどを好む人々にはすごく合うのかもしれない。マイクは数学が異常にできる割にカルカソンヌは妙に弱いし(笑)、チケライも楽しんだけど俺ほど熱狂はしなかったので、俺とは明らかに嗜好が違うんだよな。俺はこうした理詰めのゲームよりも、カルカソンヌやチケライやサンファンのように、偶然性からチャンスを掴みものを作り上げて突き抜けるようなゲームに最も大きな喜びを感じる。

 というわけで、人の希望との兼ね合いがあり思う存分やりたいゲームをできたわけではないが(――「カタン」と「プエルトリコ」もあったのだが、誰も箱を開くことはなかった――)、とにかく憧れのチケット・トゥ・ライドがやれてうれしかったのであります。買います。今でも USA にするか Euro にするかで迷っているけれど。