2015/09/12

廃墟の記憶サイト



Totoro Times - Fuchu Abandoned US Air Force Base

昔俺がガードマンとして働き、廃墟マニアのカメラマンが入ってくるたびに捕まえては追い出していた府中基地の素晴らしい写真ブログを発見。全部の部屋に見覚えがある。なつかしい。



別なページで他の人が撮った写真の中には、俺自身が座って写真を撮った椅子までそのまま残っていた! 20年経っても完全に時間が止まっている廃墟の中。(抱えてるのは基地内で採れたキノコです・笑)。

俺がいた基地廃墟関連の写真は昔調布関東村のブログ記事を書いたときに探してたくさん目にしていたんだけど、今日見つけたサイト群の府中の写真はどれも明らかにデジタルで撮られており、写真としての世代が違う。ということは今でも府中基地は変わらずあるということだ。調布基地跡は味スタになっちゃったけれど。

自分のカメラを持って府中基地に忍び込みたいな。どこから入れるかはよくわかっている。通りからの死角になっている金網の一角が侵入者にいつも破られ、俺がおのれおのれ写真家どもめ入ってくんなよと直していたからね。

上記 Totoro Times の作者ジョーディさん(なんと廃墟写真集を出してるプロの写真家だった)と話したんだけど、今は以前よりも警備が厳重らしい。というか前は俺みたいなバンドマンとか画家とかそういういい加減なやつらがガードしてたんだけど(笑)、もっと厳しい警備員が入ってるのかもしれない。

俺の相棒だった警備員は芸大を出たというすごい経歴の青年で、ドラムもまた素晴らしかったのだが朝交代の時間にちゃんとやって来たためしがなかった。警備中に野犬に追いかけられたりとかいう大事件が発生すると、すごくうまい絵付きの報告書を書いてくれた。まるで夏休みの絵日記みたいだったよ。楽しかったなあ。◆



【関連記事】
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追憶の調布関東村(終)さよなら関東村
日記「立川基地の青春」(ランドリーゲイトの想い出)

2015/09/03

2015年日本旅行(2)沖縄:空飛ぶ座間味サンゴ礁

千と千尋とめくるめく美ら海サーカス」「うるま市の意外な楽しみ」「ウミガメ見つからず」「灼熱那覇」

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■15/07/20(月) □ 千と千尋とめくるめく美ら海サーカス
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本日は有名な美ら海(ちゅら海)水族館へ。半島を右まわりで屋我地島、古宇利島、今帰仁城遺跡と島を巡りながら美ら海を目指す。島々を見下ろす高台で写真を撮っていると、農家のじい様がニコニコと話しかけてきた。しかし地言葉で早口なので何を言っているのかさっぱりわからない。どれだけ集中しても 1/4 くらいしかわからなかった。沖縄すごい。しかもこの人もやはり男前。沖縄すごい。

じい様は古宇利島には源氏の末裔が住んでいたとかなんとか言っていたような気がする。俺はハイハイと相づちを打ち話を合わす。聞き取れなくても旅で地元の人と話せるのは楽しい。こうして地元の人と多く話せるのはうちのMのあふれる好奇心が発光して地元の人々を吸い寄せるからで、よその人が沖縄をどう感じながら旅してるのかを向こうも知りたいのだろう。彼女はこう言ってますと俺が説明するとすごく喜んでくれる。萌も久々の日本語で知らない人と話すことにナーバスではなくなってきた。

 じい様の写真を撮らせてもらえばよかったな。奥様を発光剤として人と話すことはできるが、写真を撮らせてもらうのはさらにハードルが高い。俺は旅行写真家として大成しない。間違いない。








 今帰仁城を経て美ら海を目指す。その道すがら高台に見つけたのがこの建物! なんだあれとグイと道を曲がりうひょーと車を突き進め、興奮して門をくぐっていく俺と妻。



なにか不吉を感じたのか車に残り、「お父さん! お母さん!」と呼び止めようとする娘。なんという千と千尋フィーリング!



 豚にされちゃう恐怖を感じながらそろりそろりと入っていったのだが、そこは無人のなかば廃墟となっている。そしてなんの建物なのかさっぱりわからない。お寺? レストラン? なにかの工房? とにかくすごい和洋中華折衷の千と千尋フィーリングなのだった。あまりのすごさに奥様笑ってます(笑)。



 いやはや旅はすごいものに出会うなあ。なんなのかさっぱりわからんが眼福眼福と車に戻ると萌が怒っていた。ああヤブ蚊に刺されたのかゴメン。それで車から出てこなかったのか。すまんすまんと薬屋を探し、ムヒを買いました。萌は蚊に刺されるとその箇所の周りがアレルギー的に腫れるのだ。

宿に戻ってから調べると、かつては外装内装ともきれいに塗られたシーサー工房兼骨董屋兼カフェだったらしい。その廃墟だったのか。いにしえの写真を見るとその違いに驚く。




 最高にうまい美ら島地元もとぶ牛の焼き肉ランチで気を取り直し、そしてついに美ら海水族館へ。ジンベエザメは文句なくすごかった。その水槽だけで1時間くらい眺めていられた。巨大なものが目の前を泳いでいくめくるめく快感。




 しかしそこにリソースを傾注し過ぎ、他はバンクーバー水族館に比べると…という感じ。沖縄在住魚類しばりがあるのかもしれないが展示品種が少なく、誰もが「これだけ?」と拍子抜けするだろう。展示が少ないのにミニ水槽の間隔が妙に狭くて、人の流れが悪く見辛いのもよくない。



 Mが「海ぶどうの展示はないのか」といかにも直球外国人的な質問を水族館員にすると「海ぶどうは動きませんので(笑)」と答えられ、ああこの人は海の生物学者ではなくエンターテイメントの人なんだなと思った。つまるところここはジンベエザメのサーカス施設なのだろう。そこはもう見事なものだった。満喫しました。しかしジンベエザメのおかげで儲かってるんだろうから、他ももうちょっとなんとかしてほしいと思う。「沖縄の海で海ぶどうがこう育っている」という展示があれば観光客の知的興味は満たされるに決まってるではないか。

 大雨で海洋博公園内の「郷土村」等の施設や近隣の村には行けず断念。園内のシャトルバスが頻繁に走っていれば郷土村に行けたかもしれないが、最低1時間待ちというレベルで利用できなかった。ここも水族館の管轄ではないのかもしれないが、もうちょっとなんとかしてほしいと思ったのである。

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■15/07/21(火) □ うるま市の意外な楽しみ
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 はやくも沖縄本島観光最終日。本日も天気がよくなく海には行けず(晴れていても波があるとシュノーケルは難しい)、奥様の希望でガラス工や陶芸家が集まる村に行く。石畳のきれいな村で(火事で焼け落ちた窯元的な建物の再建をしていた)、絵に描いたようにカッコいい爺様工がキリリと仕事をしていてしびれたが、まあそれだけのことなので萌があまりにも退屈そう。

村内にレストランもなく、例によって疲れと空腹でつまらんものを食いそうな流れになったので工芸村はさっと切り上げ、コンビニでお菓子と飲み物を買ってポリポリしながら見知らぬ土地をのんびり走る「こころ旅・とうちゃこ」モードに切り替える。時間を決めずのんびり走る旅は楽しい。

 沖縄にはお寺がまったくなく、墓地には見えないただの道端にこういう墓がどこへ行ってもたくさん立っている。ときにあまりに巨大で驚くようなものもある。これが本土との最大の風物の違いだとMも指摘していた。墓を立てますという看板も多く見かけるので、産業としても大きいのだと思う。

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 そしてほぼランダムに車を向けたうるまという町で観光案内に飛び込み、教えてもらった製塩施設へ。うるまの海水から特殊な製法で作られた美味な塩を使ったランチと買い物をたっぷりと楽しめる、よく整備された観光スポットだった。沖縄は豚が有名な割にホテルで食べるものは特にうまくもなかったのだが、ここで食べた塩豚は最高だった。昨日のもとぶ牛もそうだったが沖縄の肉は全般的に本土よりも若干堅めに仕上げられていて、噛むとじっくり味わい深い。

うるま市にきたのはよくできた英語パンフレットをMがたまたま目にしていたからで、観光施設には英語を流暢に話す職員もおり、市が外国人観光客の誘致に力を入れてるんだろう。美ら海水族館みたいな目玉施設はなくともこうしてうまいものと居心地のいい場所と人材があれば、俺たち観光客は満足するのである。ここの塩はひと舐めしただけで誰もがウオウと声を上げる美味なもので、普通の塩と明らかに違う。舐めておいしい珍味のような塩といえる。おみやげとして塩パックをしこたま購入しました。


 さらに近辺の小さな島ドライブを楽しむ。沖縄は人口利用率的に割が合うわけないのに無数の小さな島が立派な橋で結ばれてるので、米軍基地を持つことに対する補償がこういう公共工事に使われてるんだろうな。

 沖縄はハワイに似ているが、違うのは地元県民の暮らしがまずあって後から観光地化してることで、米国人入植と同時進行で観光地化されたハワイのように隅々まで美しく整えられてはいない。公共建造物の立派さと民間の雑駁が入り交じっている。ハワイにはホテルを持つほがらかな白人資本家と現場で働く不機嫌な有色人種しか住んでないが(他はツーリスト)、沖縄はもっと公平だという気がする。





 最後に観光案内で推奨されたかき氷屋へ。生マンゴーで 650 円もするバカ高いものだったが、これは人生最高級のかき氷だった。材料がよくてうまい上に途中で熱いお茶が出てくるのである。絶妙なるそのタイミングとバランスはまるで茶の湯だ。最高。

 帰りはさすがに毎日使って操作に慣れたカーナビに案内を任せ、指示通りに寄宿。自分がどこを走ってるのかさっぱりわからなくても、交通安全にだけ気を配っていれば目的地に着くのだからやはりカーナビとはありがたいものである。

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 沖縄なんだから海と伝統的な村をという気概が俺にはありいろいろと計画しておいたのだが、雨風のせいで企画はあまり実現しなかった。美ら海園内の伝統村と近隣の村に行けなかったのは痛かった。しかし地元村祭りのエイサーは見事に見れたしうるま市はとても居心地がよかったしうまいものも食えたし、地元の人々とも楽しく話せてまあまあいい旅だったかな。明日は離島の座間味へ。

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■15/07/22(水) □ ウミガメ見つからず
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 練りに練った分単位のスケジュールにきっちり合わせ那覇に戻り(那覇市の高速降り口あたりは無国籍で面白い風景だった)、座間味に向け2時間のフェリー。席が足りなくフロアに座っての 2 時間旅となる。ローリングはかなり強い。



 宿(共用キッチンと屋上シャワーのある非常によく出来たクリーンなゲストハウス)に入り、ついに旅のクライマックス、ウミガメの住む阿真ビーチへ。沖縄行きはすべてMの希望から始まったのだが、やがて「ウミガメと泳ぎたい」という夢物語みたいなことを言い出し、座間味島にまで渡るプランとなったのである。



 旅の途中で美しい海にたどり着いても、うちの娘はまずその海を背景に自分が立つ画角を探しモデルポーズで iPod 写真を俺に撮らせ、その場でアップロード用に着色とトリミングを始めてしまう。いいから海に入れと言われてしぶしぶ編集作業をやめて水に入るインスタグラム脳(笑)。

 彼女のそういう行動を見ていると、自分が素晴らしい経験をするよりも「素晴らしい経験をしてるミー」を友達とシェアすることのほうが(ほうがということはないか、ことが同等に)大事なようである。シェア劇場型の青春。今のティーンはそういうものなのかな。まあ俺も素晴らしい場所についた喜びより、そこで写真が撮れる喜びに高まることはままあるけど。おとといの今帰仁城遺跡とかね。

 岸近くのサンゴは白化してるのだが超遠浅の沖の方まで泳いで行くと素晴らしいサンゴが点在し、驚くべき大きな魚がうじゃうじゃ泳いでいる。これまで見た中で最高のきれいなサンゴもあったが、しかしウミガメが見つからない。

 俺が休んでいる間もMたちはトライするが、ウミガメはついに見つからなかった。まあMは沖縄本島とはレベルの違う魚の豊富さに満足であると言ってくれたけれども。うーん。ビーチの監視員によれば、早朝に来れば確実にいるとのこと。明日に賭けよう。






 Mにウミガメを見せてやれなかったことと宿の周りが蚊だらけで萌がフリークしてることで俺は気持ちがダウンする。しかし蚊が多いことを除けばこの宿は素晴らしい。断熱防音のいいコンクリート部屋が数棟連なる「別館」に滞在したのだが、クリーンで快適で共用キッチンは自宅並みに整備され、海から戻れば屋外シャワーでスノーケルの砂を流せ、そのまま屋上シャワーで体を洗うこともできる。旅行者の利便を実によく考えたいい宿だと思う。共用キッチンから遠いと WiFi 電波が弱いこと以外は盤石だ。



 島自体も本島リゾート地帯では見れなかった古い瓦の沖縄ハウスが見れ、動植物の息吹が濃くて面白い。人家の軒先には巨大な鳥(カラスではない)が、部屋の中には大きなバッタが、玄関先には大きなヤドカリがやってきていた。すごい自然の濃さだ。

 晩飯はスーパーで買ってきた冷凍野菜と餃子でちゃっちゃと済ませ、満足。明日に賭ける。

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■15/07/23(木) □ 空飛ぶ座間味サンゴ礁
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 座間味二日め、エアコンが強すぎて何度も目が覚めてしまった。沖縄本島のホテルでもそうだったが、日本のエアコンって本当に操作方法がわからない。冷えすぎるか暑すぎるか風が強すぎるか風向きが悪く身体に直接当たるかで、どうしてもちょうどよく維持できないのだ。カーナビの操作体系の奇妙さと共に、日本家電のガラパゴス体験である。

 朝8時半に徒歩で出発し再度阿真ビーチ。今朝こそはウミガメを見ねばならんと張り切って泳ぐが、満潮で水位が昨日より1m以上上がっていて脚をつく場所が一切なく、波もかなり強くて泳ぎ続けなければならない。エントリーポイントも悪かったので今日はサンゴすら見えず、俺は疲れて先に岸に戻る。



 ああウミガメおらんのうとビーチでしょぼんとしていると、やがてM萌が戻る。カメいた? いたわよ、来なさいよ! と亀のいる浅瀬に連れて行かれる。――いた! 本当にウミガメだ。うひょー!



 カメはこのビーチにびっしりある白化したサンゴ(の死骸?)をガリガリ食べている。ぜんぜんうまそうに見えないのだが。人が近づいてもまったく気にしない。そのうちに息をするために俺の目の前にふーっと上がってきたので、衝突を避けるために手のひらで甲羅に触れてしまった。すごいなこりゃ。すごい。スゴイ。





 午後は古座間味ビーチへ。これか! これが世界に冠たる座間味珊瑚礁か! 今朝までいた阿真なんて行ってる場合じゃなかった(まあカメはあの白化サンゴを食べるので阿真ビーチにしか現れないのだが)。究極サンゴビーチ。水中で三人がそれぞれシュノーケルをくわえたまま「すげ~~~~」と叫んでいた。すごすぎて笑ってしまう。



 サンゴ礁は美しい青白の砂床からそそり立つように盛り上がっていて、その高低差はまるで峡谷のようだ。峡谷の上空をおれたちはグライダーのようにすいすいと滑空していくのである。空を飛んでるみたいだ。



この気持ちよさはこれまで体感したことがない。魚がいなくてもサンゴ礁だけでも笑ってしまうくらい気持ちいい。そこに大小様々の無限の魚がやってきて俺たちを取り囲む。指を伸ばせば触れられるんじゃないかと思うほどに。サンゴと魚のパワーはすごい。


 「座間味に行ってウミガメと泳ぐ」と奥様が言い出した時にはまたそんな夢みたいなことをドリーマー妻はいうと思い、俺に一任された船や宿の手配には苦労したのだが、実際にウミガメと泳ぎこのサンゴ礁で泳ぐことを体験すると、ドリカム妻はえらかったと言わざるをえない。ほんと空を飛んでるようだったよ。砂浜のパラソルから15m30秒で世界屈指のサンゴの上空を子供でも滑空できるなんて、こんな経験は他ではできないだろう。



 俺は体力尽きるまで歓喜の泳ぎを続け、その後はパラソルの下で休息していたのだが、M萌はさらに2セッション泳ぎ続け、Mは背中が日焼けで大変なことになっていた。しかしその甲斐はあるとしか言いようがない。素晴らしかった。





 晩飯後、カメラに SIGMA 19mm をつけて夕暮れの座間味村を撮って歩く。電灯の下にはイモリがいた。なんにもないけど美しい島である。海がちょっと荒れたら1週間も船が来ず物資が止まり苦労したりするらしい。大変だけどこれてよかった。

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■15/07/24(月) □ 灼熱那覇
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 また台風が近づいている。朝7時頃の村内有線放送で、俺たちが乗る9時の座間味→那覇だけは船が出るが次の便からは波高く欠航と知る。いやはや関空→那覇につづきまったくギリギリだな。

 サンゴの島に別れを告げ那覇へ。国際通りで土産を買うがとにかく暑い。頭の真上に太陽がある。それなのに店の店員は路上に立って客引きをしている。きっと彼らは暑くもなければ特に日焼けもしないんだろう。環境によって進化してるのだ。

Mは昨日の日焼けで背中がえらいことになっていてダウンしており、夕方萌と俺だけで再度散歩した。しかし国際通りは土産物通りなのでたいした店はないな実際。地元の人が行く面白いところはまた別なのだろう。アニメストアがあったが、アニメグッズの値付けはヒドイと思う。それでも売れるのだろうがひどい。

 というわけで沖縄の旅はおしまい。いい旅でした。明日は那覇→名古屋→長野入りである。



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2015年日本旅行(1)沖縄エイサーまつり

2015/09/02

マンガの思い出

Web マンガというものを教えてもらった。楽器も弾けないやつらがバンドを始めちゃうという話で、とても楽しい。マンガ内でかかってる 80 年代ロックを聞きながら読めるのがとてもいい。第2話に出てくるバンクーバーの 80's パンクバンド「ポインテッドスティックス」なんて知らなかったな。同時代の日本のルースターズなんかよりイナタイ(笑)。


「Private World」 by Zawa氏


むかし大好きだった少女マンガ家の仕事場にお呼ばれし(友人の友人がアシスタントだったという奇遇)、バンドとはどうやるのか、レコーディングとはどういうものなのかという話を取材として夜通しさせてもらい、ご飯とサインをもらったのを思い出した。

その少女マンガ家は絵とそれが感じさせる音のセンスが 80 年代のあの時代に見事に合っていて人気があったんだけど、その後はあまり作家活動してないみたい。マンガ家ってバンドと同じで、商業ベースで続けていくのは本当に難しいんだろうな。今でも日本でブックオフに行くと探すんだよ、耕野裕子さん。

2015/08/31

2015年日本旅行(1)沖縄エイサーまつり

「熱狂ゲスの極み乙女」「ここが大阪やで」「沖縄カーナビ苦戦」「エイサー祭り」「モールでのんびりデイ」

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■15/07/13(月) □ 熱狂ゲスの極み乙女
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 日本行きの荷造りをしながら、萌はゲスの極み乙女をガンガンかけている。歌詞はほとんど意味がわからないだろうが(俺だってよくわからない)、音に現れる若さゆえの刹那感に共鳴してるんだろう。音量は小さいのに他のどんなバンドよりもインテンスなのだ。たとえばギターはチャーに似ているし、伝わらないもどかしい言葉を畳み掛けていく感じは友部正人みたいでもある(語彙はすごく現代ユース的で俺にはガツンとこないけども)。

 こないだ俺が初めて聞かせてわずか3日でゲスマニアとなった萌は、これを聞けとおすすめ3連発を聞かせてくれた。「パラレルスペック」「キラーボール」「私以外私じゃないの」。す、す、スゲえ! カッコいい!



ギターもドラムもピアノもこの若さでなんでこんなにすごいんだ(ベースはおじさんぽいのでまあわかるが)。そして汲めども尽きぬこの音楽的ひらめき。もう音楽のワンダーキッズとしか言いようがない。歌詞を分析する気もバンド経歴を調べる気もしないよ、かまわないからその音でもうどこまでも連れてってくれウヒョー! という感じ。

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 うあー台風11号がちょうど私らの飛行機と同日に日本に接近する模様。大阪までは行けたとして、翌日沖縄に行けるかどうか。

 まあ心配してもどうしようもない。最悪の予測でも沖縄に上陸するわけではないし、東日本に抜けるのではという予想もある。空港で夜を明かすとかそういう最悪の事態にはならないだろう。あれほどの労力をかけて分単位まで詰めても、風が吹けばそれまでなんだから飛行機の旅なんてするもんじゃないとほんと思う。

 しかしちょうどいい日に恩納村のお祭りもあるのでエイサーはたっぷり見れそうだと判明し、期日通りに行けさえすれば沖縄本島での観光はこれまでの旅行でもなかったくらい充実しそうである。大阪から那覇まで無事飛んでくれさえすれば。

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■15/07/15(水) □ ここが大阪やで
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 10:47 空港チェックインと朝飯を無事済ませ、あとは待つのみ。Air Canada 職員によれば台風は南にそれており本フライトには影響ないとのこと。明日の乗り換え便が問題だよなー。まあ一晩待ち台風がどうするつもりか見るしかない。

この旅は日本行きとしては初めてのエアカナダで、しかも通常より大幅に安い便。格安というほど食事もサービスも悪くはなく、唯一の違いはエンターテインメントモニターがないことで、乗客各自が手持ちのデバイスに WiFi で受信するというシステムになっている。座席にコンセントもある。

これは機内液晶より高い解像度の機材で見れるという点でメリットはあるが、映画のラインナップがやはり格安で全然ダメで、いい映画がまったくなくMたちに呆れられてしまった。まあそういうところで経費を削ってるのかもね。

 俺は1本「深夜食堂」だけ見たが、日本はこういう素材のうまみのとろろかけご飯映画ばかり作っていてはいかんと思う。我らが小林薫を擁してもこれでは伝わらぬ。外国人や若者には見てもらえぬ。「天皇の料理番」級の骨太ドラマを映画で作ってほしい。「そうか。陛下のお料理番というのは、言われるままに飯を炊くだけか。おれにもできそうだな」と篤三を挑発した小林薫の無表情はすごかった。あの日本を見せてほしい。

 Mと萌は Netflix でコリアン映画をけっこう見てるのだが、日本映画はまったく見ない。それは日本がこういう純文学とろろかけ映画ばかり送ってくるからだ。外国人に見せたいなら、素材の旨味がわからなくても面白い映画を作らなければ。

◇     ◇



 無事関西空港着。疲れているが俺と萌は興奮して眠くないのでコンビニで軽食を買い、びゅーびゅー生暖かい風が吹く関空とホテルの周りを萌とぐるぐると歩く(奥様は先に寝た)。俺たちは外国人目線なので何を見てもおーすごいジャパン! クールジャパンやで! となってしまって笑いが止まらない。空港でたくさん見かけたアジアからのお客さんもそうであってくれたらいいな。

 風は強いが暴風というほどではない。「ええか、ここが大阪やで。よーく見とき!」と公衆内で俺が浮かれていると、萌が「お父さんシャラップ・シャラップ・シャットアップ!」とツッコミを入れる。ええでええでその感じや。夕方7時 (カナダ時間午前3時)、ベッドに入る。明日の朝の5時頃までできれば眠りたい。

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■15/07/17(金) □ 沖縄カーナビ苦戦
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 夕方7時に寝て断続的に目覚めつつ2時に起きる。計6時間強。もっと寝ていたいがカナダ時間ではもう朝の10時なので致し方なし。

 台風は今まさに中心が神戸あたりに達しているようだが、大阪は雨は強いものの風はさほどでもなさそう。――あ、すでに大阪府の暴風警報は朝4時過ぎに解除されてるとのこと。飛行機は定時発。よかった。

> これ、ヤバイな……
> 普通に学校あるやつやん……
>
> てか、毎度毎度なんやねん
> 結局大阪には台風来ないみたいなやつ!
> 大阪のことオチに使うのマジやめろよ

 と、大阪っていつもこうなんだそうだ。学生が怒ってる。はは :-)。

 沖縄は曇り、降っていないし風も吹いていないとのこと。よし。うまくいっている。関空はバスターミナルみたいなオープンな店や食事処と空港施設が混在した面白い空港だった。時間と空腹があればあれもこれも食ってみたいと思う。おっちゃんたちが「(台風が鼻の先なのに飛べるんだから)奇跡やな!」と声を掛け合っていた。

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飛行機機材の不具合で 1 時間遅れて出発、空の上から海底のサンゴが見える美しい島々に興奮しつつ那覇に到着。さすがに暑い。

 まずレンタカーを借りるのだが、キーがなくてエンジンをかける方法がわからずレンタカー屋に笑われた。人生初のキーレスエントリーである。車から降りてロックし、鍵がかかったかチェックしようとドアに手を触れるとまた開いてしまい一向に車から離れられないというジレンマに陥る。

 とにかく暑いしレンタカー屋は混んでいたのでそのへんの操作習得は後回しにしてとりあえず道に出たのだが、カーナビの設定方法がわからないので右も左もわからない。萌が操作するがわからない。ナビと一体となっているらしいカーラジオでは若干イラつく Jpop 系番組が流れてるのだが、この局を変える方法さえわからない。日本電気製品はなんか操作体系の迷路にハマっているのではないか。これがいわゆるガラパゴス化かと実感する。

 スーパーの駐車場でいったん止まり近場のモスバーガーをカーナビにセットしたのが、走り出してみると表示と実際の位置に30mほどの誤差があり、交差点を曲がり損ねてしまった。するとえらい遠回りにマップが再計算される。それが非効率的なのは自明だが土地カンゼロなのでナビに従うしかなく、ぐるぐるえらい遠回りしてモスバーガーへ。ふー。もうこの時点で馬鹿カーナビに対するストレスで俺はすでに消耗している。



 ここでカーナビにホテルをセット。しかし海沿いを走りたいので高速は通らず行こうとカーナビのマップを見ながら自力で海を目指していくと、カーナビの誤差のせいで曲がるべき道をまた何本もミスし、一向に距離が稼げない。あーイライラするなこのジャパニーズカーナビ。Google ナビはこんなに誤差ないぞ。



 那覇市のはずれで沖縄のメインルートと思われる R58 にようやく入るが、意外や海はよく見えない道だった。日本じゃないみたいなところ(ハワイっぽさと箱物建物がやたらと大きい奇妙なスケール感)と日本の地方都市そのものなところが入り混じり、そこに沖縄ならではの小さな店や民家が点在していて面白い。嘉手納基地は福生立川あたりと同じ風景。基地内の住宅は調布関東村と同じ規格で作られているので俺にはなつかしい。軍関係だけではなく、プライベートな服装のアメリカ人もすごく多い。



 1時間ちょいで着くだろうという見込みが2時間以上かかりへトへトで恩納の外れのホテル着。恩納でビーチが見えるとようやくやはりおおと盛り上がった。
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ホテル前のビーチで萌を少し泳がせ、ホテルのバフェットレストランへ。食べ物は和食と沖縄料理だった。沖縄料理は和食と中華のまさに中間という感じ。うちはみな中華が苦手なので、一口味見してなるほどねという感じ。黒いイモのあれと海ぶどうはたしかにうまい。

 そして今日も M は早く寝て、俺は全日本芸人歌合戦的なものを萌と見る。なんでニッチェが負けるんだおかしいだろ! 「日本ってこういうバカなショーをいつもやっててイイよねー」と喜ぶムスメ in 沖縄。

 萌は「うまい普通の声の人より、特別な声を持った下手な人のほうが聞いてて気持ちいいよね」と超鋭い歌合戦評を述べる。その通り。日本って歌唱力の尺度がおかしいよな。来日のたびに楽しむ日本のコマーシャルにも大喜び。なんかすごい腹筋マシーンの CM を見て、二人で笑い転げた。「I LOVE ジャパニーズコマーシャルズ!」。

CM「積水ハウスです」
萌「セクスィーハウス?」
俺「違う(笑)」


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■15/07/18(土) □ エイサー祭り
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 朝、恩納村はずれの真栄田岬裏という絵に描いたように美しいビーチでシュノーケルをし、サンゴに群がるネオンテトラを見た。すごい。しかしこんな観光地なのに国道沿いに手頃なレストランが見つからない。高級ホテルのレストランかジャンクかの二択しかない。

 結局ジャンクを選択したのだが、毎日コンビニ食とジャンクなのでMがアンハッピーとなる。スーパーでパンと野菜を買いたいのだが見つからないのだ。1時間も恩納近辺を走り回るが見つからず、ついにあきらめて無理やり車を止め地元の人に聞くと、スーパーは金武か名護にしかありませんと言われた。マジですか。

 仕方なく粛々と名護市のスーパーまでパンを買うために往復1時間を走る。ふう。

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 ホテルで休み、夕方恩納の村祭りヘ。ステージで音曲が披露され屋台の食べ物屋が並ぶ。いいではないか。



 しかし沖縄の祭りをなめていた。暑い。屋台を眺めて歩くだけでクラクラする。ステージ前のテントの日陰にいても熱風で体力が削られていく。沖縄の人々はこんな日差しの中平気で立ち食いしてるんだからすごい。お好み焼きを買ったのだが俺は気分が悪くなり食えなくなり、これはいかんとステージ前を諦め建物の日陰に避難してエイサーが始まるまでポカリを飲んで休んでいた。

 音楽舞踊音曲は沖縄フォーク青年デュオがよかった。それ以外の演し物はどのグループにも沖縄風味はもちろんあるけれど、まあどこの田舎町もこんなもんかなという感じ。この沖縄音楽を見たくて早めに祭りに来たのだが、エイサーだけにしとけばよかったと思うほど暑くてしんどい。



 しかし待った甲斐あってエイサーは素晴らしかった。村々ごとに個性があるし、踊る沖縄男子は惚れ惚れするほどかっこよく、後ろで可憐な踊りを添える女子はみんな AKB よりかわいい。すごい美男美女の島であります。いやーいいものを見せていただきました。やっぱりグループによる伝統は、音楽をやった人個々人の創造性を上回っていた。

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■15/07/19(日) □ モールでのんびりデイ
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今日は雨。連日のスケジュールの疲れも出てきたので(――まだ観光は一日しかしてないが、恩納のホテルに着くのにバンクーバー→大阪→那覇→恩納と都合3日かかってるので、出発して今日でもう5日めという非効率さ――)、沖縄で一番大きなモールというところに入ってのんびりと過ごした。沖縄ならではではないものの面白い店が多く楽しい。

奥様が「これいいわね」とある婦人服屋に入ったので看板を見るとSM2とある。…20代の頃俺が働いてたサマンサモスモスじゃん!

 バンドマン時代に俺が婦人服飾会社で働いてたのは言ってあったが、これまで話だけの幻だったサマンサモスモスが実在していたことに妻子が超ウケる。「こんなフェミニンな会社で何してたのよ」。いや服を畳んで箱に詰めて担いでただけだけど。休憩中に本を読んでたから「先生」と尊敬されてたんだぜ。

サマンサモスモスで今は偉くなっておられるらしいF下さんにはお世話になったなあ。俺がいくら寝過ごしてもクビにせず、廃墟警備の仕事が見つかりやめたいと言ったときには嫌な顔もせず送迎会までしてくれた彼のお陰でバンドもやれ英語も覚えられて、いまカナダに住んでいるんです。尊敬してます。

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(これは45mm、見事なボケ)

モール内のカメラ屋で自分のカメラに自由につけて試し撮りしてくれというレンズ群があったので憧れのオリンパスの 25mm-F1.8、45mm-1.8 で撮ってみる。めっちゃシャープでめっちゃボケる。しかも F2.8 で 1/60s の明るさで 1/160s! 3 倍の速さである。ああ最高。25mm が中古で安かったらほしい!

 そして奥様の提案でモールのスーパーで食材を仕入れ、ダイソーでまな板やプラスチックの食器を買って帰り、ホテルでサンドイッチを作り食べる。ああ家で食べるっていいな。落ち着くな。「そうよね、外食はいくらおいしくても続くと嫌になるわよね」。カナダじゃ売ってないプリンも食いましたうまい。



 萌の沖縄買い物戦利品は、ジブリ下敷き3種となでしこジャパンユニフォーム! 試合観戦時に BC プレイススタジアムで探して見つからず買えなかった本物ユニ! 宿に戻り雨の海を眺めながら、娘は幸せを噛みしめるのであった。

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2015年日本旅行(2)沖縄:最強の座間味サンゴ礁