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■15/07/20(月) □ 千と千尋とめくるめく美ら海サーカス
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本日は有名な美ら海(ちゅら海)水族館へ。半島を右まわりで屋我地島、古宇利島、今帰仁城遺跡と島を巡りながら美ら海を目指す。島々を見下ろす高台で写真を撮っていると、農家のじい様がニコニコと話しかけてきた。しかし地言葉で早口なので何を言っているのかさっぱりわからない。どれだけ集中しても 1/4 くらいしかわからなかった。沖縄すごい。しかもこの人もやはり男前。沖縄すごい。
じい様は古宇利島には源氏の末裔が住んでいたとかなんとか言っていたような気がする。俺はハイハイと相づちを打ち話を合わす。聞き取れなくても旅で地元の人と話せるのは楽しい。こうして地元の人と多く話せるのはうちのMのあふれる好奇心が発光して地元の人々を吸い寄せるからで、よその人が沖縄をどう感じながら旅してるのかを向こうも知りたいのだろう。彼女はこう言ってますと俺が説明するとすごく喜んでくれる。萌も久々の日本語で知らない人と話すことにナーバスではなくなってきた。
じい様の写真を撮らせてもらえばよかったな。奥様を発光剤として人と話すことはできるが、写真を撮らせてもらうのはさらにハードルが高い。俺は旅行写真家として大成しない。間違いない。
今帰仁城を経て美ら海を目指す。その道すがら高台に見つけたのがこの建物! なんだあれとグイと道を曲がりうひょーと車を突き進め、興奮して門をくぐっていく俺と妻。
なにか不吉を感じたのか車に残り、「お父さん! お母さん!」と呼び止めようとする娘。なんという千と千尋フィーリング!
豚にされちゃう恐怖を感じながらそろりそろりと入っていったのだが、そこは無人のなかば廃墟となっている。そしてなんの建物なのかさっぱりわからない。お寺? レストラン? なにかの工房? とにかくすごい和洋中華折衷の千と千尋フィーリングなのだった。あまりのすごさに奥様笑ってます(笑)。
いやはや旅はすごいものに出会うなあ。なんなのかさっぱりわからんが眼福眼福と車に戻ると萌が怒っていた。ああヤブ蚊に刺されたのかゴメン。それで車から出てこなかったのか。すまんすまんと薬屋を探し、ムヒを買いました。萌は蚊に刺されるとその箇所の周りがアレルギー的に腫れるのだ。
宿に戻ってから調べると、かつては外装内装ともきれいに塗られたシーサー工房兼骨董屋兼カフェだったらしい。その廃墟だったのか。いにしえの写真を見るとその違いに驚く。
最高にうまい美ら島地元もとぶ牛の焼き肉ランチで気を取り直し、そしてついに美ら海水族館へ。ジンベエザメは文句なくすごかった。その水槽だけで1時間くらい眺めていられた。巨大なものが目の前を泳いでいくめくるめく快感。
しかしそこにリソースを傾注し過ぎ、他はバンクーバー水族館に比べると…という感じ。沖縄在住魚類しばりがあるのかもしれないが展示品種が少なく、誰もが「これだけ?」と拍子抜けするだろう。展示が少ないのにミニ水槽の間隔が妙に狭くて、人の流れが悪く見辛いのもよくない。
Mが「海ぶどうの展示はないのか」といかにも直球外国人的な質問を水族館員にすると「海ぶどうは動きませんので(笑)」と答えられ、ああこの人は海の生物学者ではなくエンターテイメントの人なんだなと思った。つまるところここはジンベエザメのサーカス施設なのだろう。そこはもう見事なものだった。満喫しました。しかしジンベエザメのおかげで儲かってるんだろうから、他ももうちょっとなんとかしてほしいと思う。「沖縄の海で海ぶどうがこう育っている」という展示があれば観光客の知的興味は満たされるに決まってるではないか。
大雨で海洋博公園内の「郷土村」等の施設や近隣の村には行けず断念。園内のシャトルバスが頻繁に走っていれば郷土村に行けたかもしれないが、最低1時間待ちというレベルで利用できなかった。ここも水族館の管轄ではないのかもしれないが、もうちょっとなんとかしてほしいと思ったのである。
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■15/07/21(火) □ うるま市の意外な楽しみ
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はやくも沖縄本島観光最終日。本日も天気がよくなく海には行けず(晴れていても波があるとシュノーケルは難しい)、奥様の希望でガラス工や陶芸家が集まる村に行く。石畳のきれいな村で(火事で焼け落ちた窯元的な建物の再建をしていた)、絵に描いたようにカッコいい爺様工がキリリと仕事をしていてしびれたが、まあそれだけのことなので萌があまりにも退屈そう。
村内にレストランもなく、例によって疲れと空腹でつまらんものを食いそうな流れになったので工芸村はさっと切り上げ、コンビニでお菓子と飲み物を買ってポリポリしながら見知らぬ土地をのんびり走る「こころ旅・とうちゃこ」モードに切り替える。時間を決めずのんびり走る旅は楽しい。
沖縄にはお寺がまったくなく、墓地には見えないただの道端にこういう墓がどこへ行ってもたくさん立っている。ときにあまりに巨大で驚くようなものもある。これが本土との最大の風物の違いだとMも指摘していた。墓を立てますという看板も多く見かけるので、産業としても大きいのだと思う。
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そしてほぼランダムに車を向けたうるまという町で観光案内に飛び込み、教えてもらった製塩施設へ。うるまの海水から特殊な製法で作られた美味な塩を使ったランチと買い物をたっぷりと楽しめる、よく整備された観光スポットだった。沖縄は豚が有名な割にホテルで食べるものは特にうまくもなかったのだが、ここで食べた塩豚は最高だった。昨日のもとぶ牛もそうだったが沖縄の肉は全般的に本土よりも若干堅めに仕上げられていて、噛むとじっくり味わい深い。
うるま市にきたのはよくできた英語パンフレットをMがたまたま目にしていたからで、観光施設には英語を流暢に話す職員もおり、市が外国人観光客の誘致に力を入れてるんだろう。美ら海水族館みたいな目玉施設はなくともこうしてうまいものと居心地のいい場所と人材があれば、俺たち観光客は満足するのである。ここの塩はひと舐めしただけで誰もがウオウと声を上げる美味なもので、普通の塩と明らかに違う。舐めておいしい珍味のような塩といえる。おみやげとして塩パックをしこたま購入しました。
さらに近辺の小さな島ドライブを楽しむ。沖縄は人口利用率的に割が合うわけないのに無数の小さな島が立派な橋で結ばれてるので、米軍基地を持つことに対する補償がこういう公共工事に使われてるんだろうな。
沖縄はハワイに似ているが、違うのは地元県民の暮らしがまずあって後から観光地化してることで、米国人入植と同時進行で観光地化されたハワイのように隅々まで美しく整えられてはいない。公共建造物の立派さと民間の雑駁が入り交じっている。ハワイにはホテルを持つほがらかな白人資本家と現場で働く不機嫌な有色人種しか住んでないが(他はツーリスト)、沖縄はもっと公平だという気がする。
最後に観光案内で推奨されたかき氷屋へ。生マンゴーで 650 円もするバカ高いものだったが、これは人生最高級のかき氷だった。材料がよくてうまい上に途中で熱いお茶が出てくるのである。絶妙なるそのタイミングとバランスはまるで茶の湯だ。最高。
帰りはさすがに毎日使って操作に慣れたカーナビに案内を任せ、指示通りに寄宿。自分がどこを走ってるのかさっぱりわからなくても、交通安全にだけ気を配っていれば目的地に着くのだからやはりカーナビとはありがたいものである。
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沖縄なんだから海と伝統的な村をという気概が俺にはありいろいろと計画しておいたのだが、雨風のせいで企画はあまり実現しなかった。美ら海園内の伝統村と近隣の村に行けなかったのは痛かった。しかし地元村祭りのエイサーは見事に見れたしうるま市はとても居心地がよかったしうまいものも食えたし、地元の人々とも楽しく話せてまあまあいい旅だったかな。明日は離島の座間味へ。
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■15/07/22(水) □ ウミガメ見つからず
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練りに練った分単位のスケジュールにきっちり合わせ那覇に戻り(那覇市の高速降り口あたりは無国籍で面白い風景だった)、座間味に向け2時間のフェリー。席が足りなくフロアに座っての 2 時間旅となる。ローリングはかなり強い。
宿(共用キッチンと屋上シャワーのある非常によく出来たクリーンなゲストハウス)に入り、ついに旅のクライマックス、ウミガメの住む阿真ビーチへ。沖縄行きはすべてMの希望から始まったのだが、やがて「ウミガメと泳ぎたい」という夢物語みたいなことを言い出し、座間味島にまで渡るプランとなったのである。
旅の途中で美しい海にたどり着いても、うちの娘はまずその海を背景に自分が立つ画角を探しモデルポーズで iPod 写真を俺に撮らせ、その場でアップロード用に着色とトリミングを始めてしまう。いいから海に入れと言われてしぶしぶ編集作業をやめて水に入るインスタグラム脳(笑)。
彼女のそういう行動を見ていると、自分が素晴らしい経験をするよりも「素晴らしい経験をしてるミー」を友達とシェアすることのほうが(ほうがということはないか、ことが同等に)大事なようである。シェア劇場型の青春。今のティーンはそういうものなのかな。まあ俺も素晴らしい場所についた喜びより、そこで写真が撮れる喜びに高まることはままあるけど。おとといの今帰仁城遺跡とかね。
岸近くのサンゴは白化してるのだが超遠浅の沖の方まで泳いで行くと素晴らしいサンゴが点在し、驚くべき大きな魚がうじゃうじゃ泳いでいる。これまで見た中で最高のきれいなサンゴもあったが、しかしウミガメが見つからない。
俺が休んでいる間もMたちはトライするが、ウミガメはついに見つからなかった。まあMは沖縄本島とはレベルの違う魚の豊富さに満足であると言ってくれたけれども。うーん。ビーチの監視員によれば、早朝に来れば確実にいるとのこと。明日に賭けよう。
Mにウミガメを見せてやれなかったことと宿の周りが蚊だらけで萌がフリークしてることで俺は気持ちがダウンする。しかし蚊が多いことを除けばこの宿は素晴らしい。断熱防音のいいコンクリート部屋が数棟連なる「別館」に滞在したのだが、クリーンで快適で共用キッチンは自宅並みに整備され、海から戻れば屋外シャワーでスノーケルの砂を流せ、そのまま屋上シャワーで体を洗うこともできる。旅行者の利便を実によく考えたいい宿だと思う。共用キッチンから遠いと WiFi 電波が弱いこと以外は盤石だ。
島自体も本島リゾート地帯では見れなかった古い瓦の沖縄ハウスが見れ、動植物の息吹が濃くて面白い。人家の軒先には巨大な鳥(カラスではない)が、部屋の中には大きなバッタが、玄関先には大きなヤドカリがやってきていた。すごい自然の濃さだ。
晩飯はスーパーで買ってきた冷凍野菜と餃子でちゃっちゃと済ませ、満足。明日に賭ける。
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■15/07/23(木) □ 空飛ぶ座間味サンゴ礁
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座間味二日め、エアコンが強すぎて何度も目が覚めてしまった。沖縄本島のホテルでもそうだったが、日本のエアコンって本当に操作方法がわからない。冷えすぎるか暑すぎるか風が強すぎるか風向きが悪く身体に直接当たるかで、どうしてもちょうどよく維持できないのだ。カーナビの操作体系の奇妙さと共に、日本家電のガラパゴス体験である。
朝8時半に徒歩で出発し再度阿真ビーチ。今朝こそはウミガメを見ねばならんと張り切って泳ぐが、満潮で水位が昨日より1m以上上がっていて脚をつく場所が一切なく、波もかなり強くて泳ぎ続けなければならない。エントリーポイントも悪かったので今日はサンゴすら見えず、俺は疲れて先に岸に戻る。
ああウミガメおらんのうとビーチでしょぼんとしていると、やがてM萌が戻る。カメいた? いたわよ、来なさいよ! と亀のいる浅瀬に連れて行かれる。――いた! 本当にウミガメだ。うひょー!
カメはこのビーチにびっしりある白化したサンゴ(の死骸?)をガリガリ食べている。ぜんぜんうまそうに見えないのだが。人が近づいてもまったく気にしない。そのうちに息をするために俺の目の前にふーっと上がってきたので、衝突を避けるために手のひらで甲羅に触れてしまった。すごいなこりゃ。すごい。スゴイ。
午後は古座間味ビーチへ。これか! これが世界に冠たる座間味珊瑚礁か! 今朝までいた阿真なんて行ってる場合じゃなかった(まあカメはあの白化サンゴを食べるので阿真ビーチにしか現れないのだが)。究極サンゴビーチ。水中で三人がそれぞれシュノーケルをくわえたまま「すげ~~~~」と叫んでいた。すごすぎて笑ってしまう。
サンゴ礁は美しい青白の砂床からそそり立つように盛り上がっていて、その高低差はまるで峡谷のようだ。峡谷の上空をおれたちはグライダーのようにすいすいと滑空していくのである。空を飛んでるみたいだ。
この気持ちよさはこれまで体感したことがない。魚がいなくてもサンゴ礁だけでも笑ってしまうくらい気持ちいい。そこに大小様々の無限の魚がやってきて俺たちを取り囲む。指を伸ばせば触れられるんじゃないかと思うほどに。サンゴと魚のパワーはすごい。
「座間味に行ってウミガメと泳ぐ」と奥様が言い出した時にはまたそんな夢みたいなことをドリーマー妻はいうと思い、俺に一任された船や宿の手配には苦労したのだが、実際にウミガメと泳ぎこのサンゴ礁で泳ぐことを体験すると、ドリカム妻はえらかったと言わざるをえない。ほんと空を飛んでるようだったよ。砂浜のパラソルから15m30秒で世界屈指のサンゴの上空を子供でも滑空できるなんて、こんな経験は他ではできないだろう。
俺は体力尽きるまで歓喜の泳ぎを続け、その後はパラソルの下で休息していたのだが、M萌はさらに2セッション泳ぎ続け、Mは背中が日焼けで大変なことになっていた。しかしその甲斐はあるとしか言いようがない。素晴らしかった。
晩飯後、カメラに SIGMA 19mm をつけて夕暮れの座間味村を撮って歩く。電灯の下にはイモリがいた。なんにもないけど美しい島である。海がちょっと荒れたら1週間も船が来ず物資が止まり苦労したりするらしい。大変だけどこれてよかった。
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■15/07/24(月) □ 灼熱那覇
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また台風が近づいている。朝7時頃の村内有線放送で、俺たちが乗る9時の座間味→那覇だけは船が出るが次の便からは波高く欠航と知る。いやはや関空→那覇につづきまったくギリギリだな。
サンゴの島に別れを告げ那覇へ。国際通りで土産を買うがとにかく暑い。頭の真上に太陽がある。それなのに店の店員は路上に立って客引きをしている。きっと彼らは暑くもなければ特に日焼けもしないんだろう。環境によって進化してるのだ。
Mは昨日の日焼けで背中がえらいことになっていてダウンしており、夕方萌と俺だけで再度散歩した。しかし国際通りは土産物通りなのでたいした店はないな実際。地元の人が行く面白いところはまた別なのだろう。アニメストアがあったが、アニメグッズの値付けはヒドイと思う。それでも売れるのだろうがひどい。
というわけで沖縄の旅はおしまい。いい旅でした。明日は那覇→名古屋→長野入りである。
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2015年日本旅行(1)沖縄エイサーまつり
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