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■10/06/27(日) □ マラドーナ殿様
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【イングランド・ドイツ】英オールスター即席チーム VS 独製高性能フットボールマシンという感じ。1人1人の名声とポテンシャルでは英が上回っても、油の回りで大差が付いている。こんなに油が回らないチームを作るカペッロに10億払ってるのかと、ひと事ながら腹が立つ。いや世界中のサッカーファンがイングランドのこの黄金世代のサッカーを楽しみにしていたのだから、純粋にひと事ではないよな。失われた楽しみを返してくれカペッロ。
2点取られたところでバカバカしくなって見るのをやめて魚の世話を始めると、セットプレイからDFが1点取る。あれだけスターがいながら点を取るのはDFのヘッドかと思い世話を続けていると、イングランドに火がついていて攻めまくり、ランパードがループでゴール、しかしリプレイではボール3個分も入ってるのに、誤審だらけのこのWCの白眉となりそうな誤審で取り消される。いくらなんでもこれほどの大きな誤審が、四半世紀前ならともかく現代のスポーツで見逃されるのはおかしいだろう。どちらにも見えるような際どい判断は主審に委ねるというのは当たり前のセンスだが、そういう範疇には収まらぬ馬鹿ばかしい誤審だった。
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続く【アルゼンチン・メキシコ】も誤審で勝負の趨勢が決まってしまい、がっくりであった。アルゼンチンは文句なく強いが、メキシコも本当にみんなうまい。こういうのを見ると、日本の力が出るようになったとはいってもこの辺とは階級が違うと感じざるを得ない。破綻なく端正にパスをつなぐダッチやイングランド相手にならいい試合ができるが、こういううまくて走る国には今でもボコボコにされそうな気がする。中南米こわし。パラグアイこわし。
マラドーナの横に有能そうな海千山千風コーチが2人寄り添い、「殿、ここはDFラインを2mほど下げてはどうかと」と囁き、マラドーナがバカ殿風に「ん? ああ、よきにはからえ」と答えているシーンがカメラで捉えられていた。素晴らしいカメラワークというか、マラドーナ専用カメラがあるんだよな、当然。最高。最後までずっと見ていたいチームだ。
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今日オランダと背中に大書されたお父さんにおめでとうと声をかけ、「僕は日本人なんだよ」と続けると、「お前たちは明日だろ? グッドラック」とうれしいことをいってくれた。ここがグループリーグとは違う。ノックアウトラウンドになれば、他国の人々でもその出番を知っていてくれるのである。
いよいよ明日。パラグアイがウルグアイ程度だったら完璧に勝負になるが、もっと強かったらどうしようとハラハラしてしまう。どうも南米勤勉チームには押し込まれるイメージが......。中盤のプレスに負けてポゼッションが落ちると疲労してキツイなあとか、ハラハラしとります。
パラグアイに勝てるという根拠を読んでから寝たいのだけれど(カナダでの放送は明日早朝)、Twitterなどをサーチしてみてもこれといったつぶやきは見つからず。まあ仕方がない、寝ます。
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■10/06/29(火) □ 憲剛システム時間不足
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【日本・パラグアイ】朝6時、スタメン発表。4試合連続同一、サプライズはなし。まあ「ここでサプライズをやるとトルシエになる」という話もあるしな。
日本を常に格下に見るカナダCBCは、今回も当然パラグアイ優勢というムードで伝えている。ここまで3試合中2試合で予想を外しているのだよ君たちは。カメルーン戦はまあ俺も相手が悪すぎたというマグレ要素が強いと認めるが、デンマーク戦は完勝だったではないか。
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【試合開始】最初のタッチでいきなり大久保が打つ。よし。いいぞ。プレスで押し込まれるイメージがあったのだが、パラグアイは割合キープ力が低く日本のプレスの方が効いている。やっぱり相手はアルゼンチンではないのだ。これまで通りに戦えば勝てる。本田のトップでのボールの受け方がうまくなっており、大久保と2人で攻撃への足がかりになっている。
15分、パラグアイの保持時間が長いが向こうも技術がないので危険な攻撃にはならず、デッドなゲームが続く。日本はボールを持てばどんどん前へ進んでいるので、デッドなのは後ろでばかり回し仕掛けてこない(仕掛けるためのパス精度が足りない)パラグアイのせいである。
20分、ゴール前のゴチャゴチャからスルーを流し込まれ、川島が止める。ふー。あれくらいはまだ大丈夫。力で崩されたわけではない。続いて松井のミドルがクロスバー直撃。よし。向こうは事故だがこっちは攻めている。これは日本の方が強い。
27分、パラグアイも攻めてきた。CK時にわざと3人が団子になり密集を作ったりして、くんずほぐれずからフィジカルで押し込むといった事故をやはり狙っている。セコイ感じである。ボールを奪い返しキープせねばそのセコさを打ち破れない。頑張れ。このボールキープできなさはやっぱり相手の老練なプレスに今のところ絡め取られてるんだろうが、ボールを持てば日本は上がっているので、選手はさほど怖さを感じてないのだとは思うが。
35分、本田がボールを引き出しFKを取る。本田の1トッププレイは素晴らしいレベルになっている。走っている場所もキープする強さも文句ない。すごい成長だな。いいプレイをしてもPKエリアははるか前方なのでシュートには持ち込めないが、それは1トップシステム自体の問題だ。FKはファーへ走った闘莉王へわずかに届かず。しかしよいプレーだった。
38分、闘莉王が慎重に様子を見つつも攻撃に上がっている。パラグアイの攻撃は怖くはないのだ。松井のドリブルから本田のシュート、枠を切る! あれを入れてたらワールドクラスだったな。
前半終了。イタリーが攻め切れなかったチームゆえ守備が堅いのは分かっていたが、別にプレスがハードなわけでもなく、攻撃力は想像以上にない。退屈なゲームだがペースを落としているのはボールを持ってる相手の方で、ガンガン打ち合う自信はないのだろう。競り合いからこぼれ球をフィジカルで押し込むといった得点が狙いだろうが、今の日本はジーコ時代と違ってブロック・アタック・カバーがソリッドに作動し、事故に非常に強い。
日本は持ったら後ろ髪引かれずに攻め切る意識が高く、そしてゴールの近くまでは行けないがフィニッシュまではかなりの率で行けている。これは行ける。勝てる。間違いない。顔がにやけてくる。気分が盛り上がり日本のワールドカップ狂マザーに電話。精神安定剤を飲んで見てるそうです(笑)。これは勝てるよ、心配ない。
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【後半】48分、阿部がカットからドリブルで上がるが、いいところまで行ったところでアイデアが浮かばずつぶされる。阿部ってほんとに攻撃では消極的な選手である。直後にパラグアイが1・2でPA内に入り込むも、シュートは打てず。あそこで神のような足技がない国で助かった。ようやくサッカーらしくなってきた。
52分、双方ちょっとペースが落ちたかな。日本の脚がちょっと止まってきた感がある。松井や駒野のドリブルで前に運ぼうと努力するが、簡単に止められてしまう。松井のクライフターンでハーフチャンスが生まれ長友のシュート。長友が攻撃に上がれるくらい双方ペースの遅い、ゆるいゲームになってきた。90分で勝負をかけるなら早めのサブ投入だろうが、岡田監督はやらんだろうなー。
55分、カウンターを食らい左からフリーのベニテスに打たれ中澤がブロック。あれはいかん。駒野は攻撃ではるか前方に上がっていた。何をやってるんだ。57分またもカウンターで駒野が裏を取られる。うーむ。おかしい。日本の脚が止まってるのだろうか。しかしこれだけ右サイドを破られても駒野はまだ上がって空振り気味のシュートを打っている。駒野は走力があるのでいいところでボールを受けやすく、アジアカップでもまるでプレーメーカーのようにたくさんボールに触っていたが、肝心のクロスが下手なのであまりいい攻撃につながることはないんだよな。むしろ彼は後ろをがっちり守り、長友を前に上げてもらいたい。なにかちぐはぐな感じがする。デンマーク戦のように、こういうモヤモヤな時間にセットプレイで点を取ってくれると助かるのだが。
67分、完全に膠着。両者何も起こせない状態となってしまった。日パラのサポーターも座ってしまっている。負けているわけではないがこれはトルコ戦と同じだ。なにかを変えなければ負ける。サブを入れてくれ。―――岡崎が入る。走れオカザキ! 本田のスルーを岡崎が打ちブロックされる。お前はそうしてコツコツ裏を狙うしかない。
80分、ついに憲剛投入!! 遅いよ監督。阿部に替えて。するとアンカーをやめ前を増やすのか。入るとすぐに前線で激しくボールを追う憲剛。AMFだ。よし!
闘莉王が憲剛にいいクサビを出し、左の長友に流しクロスというきれいな攻撃がさっそく出る。これだ。前に元気な奴がいると攻撃力が蘇る。あと8分、攻め切れるか延長か。クロスに飛び込んだ勇気ある大久保が痛むも立ち上がる。
憲剛がヘッドでまたPKエリアの大久保に送る。フォーメーションが変わり大久保はこの時間攻撃に専念しているのかもしれない。いいぞ。87分憲剛ドリブル突破、キレている! これは憲剛が試合を決めて、「実はこれまでプロフェッサー岡田が秘密兵器を隠していたのだ」みたいな結果オーライ低能報道になると見た。しかし時間がない。岡田監督はいつも打つ手が遅い。
そして時間はやはり足りず延長へ。最後は相手の脚が止まっていた。もう1人攻撃手を使える。森本を使いケリをつけるのだ。ここでストライカーに勝負させなくてどうするのだ。
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【延長】冒頭から大久保がクレバーなプレイでボールを運び、憲剛がミドル、コーナーを取る。実にいい速攻。森本を見たいが大久保もまだキレキレで下げるのはもったいない。難しい。岡崎のヘッドがミートせず枠を外れる。しかしいいぞ、サブが活気を生んでいる。カウンターからバルデスがキープ、シュートにはならず。サンタクルスに替わりカルドーソ。エースを下げたと思ったらベンフィカのFWとは、地味なチームだがやはりWCは豪華である。
7分、スルーをバルデスがうまくコントロールしスライディングシュート、川島がブロック。川島は試合を重ねるにつれどんどん落ち着き、今日は当たっているし完全に冷静だ。オランダ戦のあれがあったし、ここまでの3試合どこか挙動に危なっかしい雰囲気があったのだが、壁を乗り越えたのだろう。DFも落ち着いて常にシュートコースを切っており、この素晴らしい日本守備陣が点を取られる気がしない。俺の一番古いサッカー観戦記憶にあるWC90のアルゼンチンや94のイタリーを思い出させてくれる。攻撃されることが楽しいぜ。長友が張り切っていた割に相手FWとの1対1がほとんどなく目立たないのは、この組織守備ゆえだろう。
ロングボールとフィジカルでポゼッションを取られ、せっかくフレッシュな憲剛がボールを触れない時間がじりじりと続く。どうにか奪って憲剛にボールを持たせてくれと願うも、何も起こらず延長前半終了。玉田が用意される。ボールに触れば天才だが年に一度くらいしか枠に行くシュートを打てない玉田よりは、ここまでゼロトップで何も起こせていないのだから、シュートが本職の森本をPKエリアで勝負させてほしかった。岡崎を左、本田を右に置けば森本をトップに置けるではないか。
【延長後半】ときおりボールを持っても、日本は相手のプレスと疲れからかほとんどつなげなくなっている。4分、ようやくゴールキックから憲剛→長友→玉田→岡崎でハーフチャンスができる。長友はPKエリア付近で倒れる動きがあまりに軽く顔演技が際立ち、CBCのアナウンサーにさえファウルだと信じてもらえずにいる。もっとこらえてから転ばないと説得力がない。しかしやはり憲剛が持てば攻撃のスイッチが入る。ああして速い攻撃をすれば相手もしんどいはずなのだが、ピッチ全体ほぼ全員の脚が止まった膠着状態では、ボールも人も十分に動かずつなげないのかな。
11分、本田ポスト→玉田がかっさらいラン→こぼれ球が岡崎→玉田にスルー→憲剛に折り返して通らず。くー。惜しい。サブ組はまだこうして脚力は残っているのだが、精度と頻度が......。そしてそれが最後のアタックであった。
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ふー。仕方がない。よく1点も取られず頑張った。もう1回やれば憲剛をもっと早く投入しきっと勝てるけど、でもトルコ戦みたいなやり残し感はない。負けたのはお前のせいではない、泣くな駒野。
この試合だけじゃなく4試合で持てるものは出し尽くし、出せなかったもの(大久保玉田の華麗なドリブルシュートとかとんとん)はたぶんポケットの中にもなかったのだというやり尽くし感が強く、思ったほど敗戦にはがっくりきていない。しかしここで先に進めれば次で憲剛をフル出場させることができたのにと思うと、強烈な悔しさが湧いてくる。憲剛が入りあれほど躍動した攻撃陣を見れば、あれをチームがもっとフレッシュな状態でぶつけていたらどうだったのだろうと思わずにいられない。3点のマージンがあったデンマーク戦後半で憲剛森本らの攻撃テストは十分に可能だったのに、試されないまま終わってしまった。ここで負けてもあきらめはつくけれど、内田や森本や稲本や今野を見たかった。
「日本が守備的すぎて退屈だった」みたいな世界や日本の論調を見るとしかし、違うだろと悔しく思う。長時間ボールを持てたパラグアイにアイデアと技術と勇気が足りず仕掛けてこないから膠着し退屈な試合になったわけで、日本はボールを持ったら奪われるかフィニッシュするまで必ず攻めていたではないか(まあ奪われちゃだめなんだけど)。勇気が足りなかったとオシムも(むろん好意から)述べているけれど、このチームはアジアカップでのオシムジャパンよりずっと攻撃的だったよ。4戦を通してサブを十分に活用しなかった岡田監督はコンサバティブだったけれど、ピッチの選手はみんな本当に攻めていた。
岡田監督は最後の4週間だけ水際立った仕事をし、この守備陣を作り完璧な心身のコンディションと戦闘態勢を整えたのは偉業としか言いようがないが、観念に縛られ2年半をトータリィ無駄にしネガティブな気持ちをサッカーファンに与え続け、WCでサブを使えるところまでチーム戦術を練り上げられなかったことには今でも納得がいかない。予選通過後にこの守備を作り攻撃を積み上げていけば、パラグアイに負けることはなかっただろう。
これより強い日本代表も今後きっと生まれてくると思うが、初戦の相手が絶不調で、最強国のエースが怪我で不在、2番手のチームは年寄りで脚力なし、そしてベスト16でパラグアイのように弱い相手に当たるなんて、こんな神風吹きまくりのWCは今後なかなかないだろうと思う。パラグアイがベスト16で日本ほど弱い相手に当たるにも数十年かかったわけだしな。はあ。
まあだがしかし、上に進むことよりも俺たち日本人サッカーファンは、とにかく日本の総力を合理的に振り絞る戦いが見たかったわけであり、それは果たされたのだ。お疲れ様でした。楽しかった。
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■10/06/30(水) □ 自分が出るワールドカップ
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1日経って、いろんな人が日本代表のWCを総括してくれている。リアルタイムではわからなかったことが見えてきて、ネット時代はありがたいとしみじみと思う。紙メディア時代は競馬でどれほど素晴らしいレースがあっても、その感動を翌日文章で味わえるのは高橋源一郎の新聞コラムくらいだったもんな。
特筆すべきは、パラグアイというハードな相手と戦った日本代表が、激しいぶつかり合いにも一歩も引かず、逃げることなく対等に闘い続けたことだ。グループステージのカMーン戦では、うまく90分をマネージメントして無駄な動きをしない戦い方で勝点3をゲット。オランダ戦でも、先制ゴールを決められた後、攻めに行きながらも守りもきちんとケアして、失点を1にとどめるクレバーな戦いを繰り広げた。そして、世界のサッカー界の中でもハードなプレーで知られるパラグアイとも互角の「どつき合い」を演じたのだ。
(「日本代表のサッカーはアンチフットボールなのか?」後藤健生)
しかしW杯における日本は、ある程度パスがぶれても、ボールの受け手が「よっこらどっこいしょ」とボールを持ち直し、そこからまた攻撃の起点を作ることもできた。目指していた精巧さは落ちたかもしれない。せわしなさはまだ見受けられる。それでもようやく日本にも“サッカーの間合い”が生まれつつあるんじゃないかと思った。
(「日本に生まれつつある“サッカーの間合い”」中田徹)
戦術解説はいつも納得の後藤さん。カナダの放送でもこういう解説がリアルタイムで出てくるとうれしいのだが。
できた中華料理も一応の体裁を整えていたが、守備面だけだった。アンカーに阿部を入れたのはいいが、攻撃に関してはフリーハンド。この戦術においてはシステマティックなカウンターが重要な武器だと思うのだが、結局それを練習する閑がなく、本田の素敵個人技に全てをゆだねることになってしまった。それでもなんとかしていた本田はすごいのだが。(「4年に1度見る夢」picture of player)
PK戦で次に進めないことが決まった直後、本当に悔しさを感じなかった。勝てるチャンスもあったのにチャンスを逃してしまったと感じていたけれど、それでも悔しさは感じなかった。なんだか、このチームの限界が垣間見えていた気がして。長友など選手が出場停止になって勝ち進んだ場合、別の選手が出てきて穴を埋めてくれるとは思いますが、それはあくまでスクランブル状態でチームの幅と言える総合力ではないのではないかと感じてしまう。(「サッカーのある幸せ」エルゲラ)
俺の気持ちはこれらの人たちに近い。このパラグアイから点が取れないのだから、たとえPK戦で勝っても次にはもっと何もできないと思うと、負けてもどよーんという気持ちにはならなかったのである。むろん最後のPKまで勝ちを祈っていたが。そしてエルゲラさんとは違い俺は、遠藤の代わりに憲剛が入るチームをぜひ見てみたかったが。
試合中は見ている方も実にいろいろなことを考える。俺はそれをノートに書き留め、同時に見ている友人にテキストで送り、Twitter に貼りつけつつ見ているわけである。代表チームのサッカーが楽しいのはそれが完全に自分のチームであって、出ているメンバーもサブのメンバーもほぼみな知っていることにある。ここで誰を出してくれよ、そいつじゃないだろう、あいつを連れてきていたらな、日本には誰みたいな選手がいない、このフォーメーションじゃ駄目だといくらでも考えが進む。これはCLなどを見ていても出てこない、WCに自国代表を送り込めた国民だけの楽しみなのである。この大会はまことに、自分が出るワールドカップだった。楽しかった。
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