2012/01/10

日記「キミらの世界じゃそれを愛と呼ばないんだろう」

「コリア餅の正月」「日本ロック教育」「チケライ実験中」 - 俺は本当の自分を日本に置いてきたかもしれない。君をもっと日本で愛したいのかもしれない。夢みたいな日々と、美しい君。

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■12/01/01(日) □ コリア餅の正月
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正月の餅はコキットラム近辺では今年も見つからず、コリアの小さな小判型の餅を買ってきてみたのだが、こんな小さな餅なのにいくら煮込んでも柔らかくならない。もち米自体の質が日本のものとは違うらしい。あんこはおいしいものが手に入るのだが、まったくおいしくない残念おしることなってしまった。

正月恒例の鍋も手頃なカニと貝が手に入らず、タラ鍋。しかしタラだけではダシが十分に出ず、味はさっぱりであった。チャイニーズはんぺんも想像通りうまくはなかったのである。がんもどきとか食いたいなあ。

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食べ物的には全然ダメな正月だったが、まあ静かに楽しくお正月らしく過ごす。『年の初めはさだまさし』でさだまさしと指揮者の佐渡裕が「案山子」をやったのがすごくよかった。佐渡裕はフルートできれいに伴奏し、サビではハモるのだが、これがヘタなのである。下手歌は胸を打つ。大人に残された最後のイノセンスである。

萌がたまたま TV の近くにいたので、「これ日本のおばあちゃんが好きな歌なんだよ」と『案山子』の内容を説明してやると、生意気ざかりで Perfume 以外の日本のアイドルなんかには失笑しシニカルなコメントを発するこのカナダのプリティーンが、静かに最後まで聴いていた。さだまさしと佐渡裕に感動してたということですね。

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■12/01/06(金) □ 日本ロック教育
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俺はグロウンアップで大人な女性の低い声を好み、NHK歌番組のナレーションなんかで使われるタドタド少女声などがとても苦手なのだが、トリプルH「イカれちまったぜ」を聴いたら少女ボイスにうおと電撃を感じてしまった。元歌を知ってるからなおさら違いが快感につながるのかな。こりゃパフュームに明け暮れる萌の日本ロック教育に使えるかもしれないと聴かせてみたのだが、なにこれーと笑われてしまった。うーん、声の年代が近いだけじゃロック教育効果はないのか。

次いで奥田民生が「レーザービーム」を歌ってるのをりかぞう氏ツイートで知り、萌に見せる。ほら日本のロックのトップの人がパフューム歌ってるよ。あの「♪半人前が~」の人だよ。いいねえ。日本ロックは Perfume と親和性高いねえ。


アッコちゃんかわいい
さらに畳み掛け、「パフュームはテクノだから一番最初のテクノポップを聴きなさい」とYMO「ナイスエイジ」を聴かせてみる。この曲は歌詞が英語のせいもあり、かなり反応がよかった。よし、ムスメの日本ロック化はYMO方面から道をつけていこう。しかし当時はオッサンに見えたYMOの面々が、みんな若いなー(汗)。

萌が後で、「なに歌ってるのあの人(ユキヒロ)?」と「ナイスエイジ」の英詞を検索していた。俺も実は全然知らないので一緒に読んでみると、

「彼女のおもちゃは壊れた少年! ドアの横で心を寄せる! 彼女の唇でキスは燃え尽き、喜びの尺度なりー!」

と、全然意味が分からない(笑)。タモリのハナモゲラ語のごとくわからない。しかしかっこいいと2人で大笑い。

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■12/01/07(土) □ キミらの世界じゃそれを愛と呼ばないんだろう
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紅白歌合戦での猪苗代湖ズが人々にどう見られたかということに興味があり、あれからずっとツイートを追っている。あのアクトに対する感想ツイートは賛9否1くらいの割合なようだ。2chなどの掲示板ではこれが逆転する。猪苗代湖ズはキモい、引くという書き込みが目立つ。ツイッターなどと違い、特定の人格・ID であることを知られたくないという負のモチベーションを持つものが掲示板に行くという構造的バイアスがあるので、そこに集まる声もネガティブに傾きやすい。



猪苗代湖ズを批判するツイートに対しては「彼らが福島にどれほど尽くしてきたか…」みたいな怒りの声が常に殺到するが、それは彼らにとってメインテーマではないと思う。彼らの歌は「大好きな福島がなくなってしまいそうなんだ!」という悲鳴だろう。この歌は前からあったとのことで、震災によって意味ががらりと変わったのだ。『福島がなくなってしまいそうなんだ、悔しくてたまらないんだ、どうしたらいいんだ』と猪苗代湖ズは悲嘆にくれている。それを声と音と顔で表しているのであって、震災被害者を代表し支援を訴える政治的存在ではない。そうであると捉えて応援する人も批判する人もいるが、それは本分ではないだろう。


サンボマスターの
「アイラブユーふくしま」
猪苗代湖ズの音楽性云々と語る人々に対しては、ロックであることを否定されたようで悔しい気持ちは俺も感じる。紅白での演奏はよくはなかった。山口の声は最初から枯れていたし、ドラムも力んでいていいリズムが出ていなかった。ベースもそんなにうまくないし(本来ボーカル&ギターの人だとのこと)、箭内氏はスポークスマンなわけだし、演奏力はもともとそんなにないのである。震災直後に山口隆がサンボマスターでやった「アイラブユー・アイニージューふくしま」が見つかったが、こっちのほうが音は百倍すごい。こんなギターを弾ける奴はやっぱり他にいないよ。喋りも歌もギターも素晴らしい。福島に飛んで行ってしまいそうな山口を音楽につなぎ止めていく、バンドの抑えたリズムも素晴らしい。


胸かきむしるエア歌唱@箭内氏
山口隆は喉の調子が悪かった上に、「絶対泣かねえと心に決めていたが、出番寸前にマイクを受け取ってくれたNHKのおじさんの笑顔があまりにも温かくて泣いてしまった」とのこと。気持ちが入りすぎ、固くなり、自己ベストが出なかった。つまりオリンピックのアスリートと同じですね。「猪苗代湖ズは固くなりメダルを取れませんでした。しかし力は尽くしました」ということである。残念ではある。しかしたとえサンボマスターで紅白に乗り込んでいって完璧な演奏をしてみせたとしても、箭内さんのあの熱い「エア歌唱」「ヘタ歌唱」よりも多くの気持ちが人々に伝わったかどうかは分からない。あれはあれで胸を打つアクトだった。



ああいう加工前のむき出しロックを嫌いな人がいるのは仕方がない。「キモい、引く」という感覚も、俺が長渕剛や尾崎豊が持つスタイリッシュな熱さには共感できないのと同じことで、人それぞれと言うしかない。仕方がない、キミらの世界じゃそれを愛と呼ばないんだろう

しかし掲示板で散見する「押し付けがましい、何様のつもりか、被害者気取り、補助金もらってたくせに、フクシマいらない」といった悪罵はなんなのか。自分の心の負担になるものは全部切り捨てたいという衝動しか見えてこない。福島もキミらが嫌う国の1つになったんですかと思うような拒否反応、世界じゃそれをネトウヨと呼ぶんだぜ。

この歌は彼らのふるさとを歌った歌ではあるけれど、郷愁はホームにあるとは限らない。俺は今はもうない警備員時代の勤務地・調布基地を思うと胸が痛む。調布基地なんて何の用途もない廃墟が撤去されただけだが、それでもあの景色とそこで過ごした膨大な時間はもうないんだということに胸が疼く。君がそれを失ったとき、取り戻したくなるでしょう。サマーフィーリング、君は初めて気づく(「サマーフィーリング」by タイドプール)。俺は本当の自分を日本に置いてきたかもしれない。君をもっと日本で愛したいのかもしれない。夢みたいな日々と、美しい君。I love you baby、吉祥寺。I need you baby、調布基地。I want you baby、競馬場。三多摩が好き。

誰にもあるそんな気持ちを猪苗代湖ズは歌っているんだよ。それがたまたま、とてつもなく悲しい歌になっちまったんだ。

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■12/01/08(日) □ チケライ実験中
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チケットトゥライド Europe のヴァリアント(派生)ルールのテストプレイをやってみた。チケライ Euro は、そのゲーム内容の単純さ(もちろんすごく楽しい単純さ)に比してゲーム時間がやや長いと俺も萌も思っているので、2人で普通40分かかるのを20分にすると目標を立ててプレイ。

実験ヴァリアントルール(いずれも BoardGameGeek のフォーラムから)
《3枚取りルール》最初の手札7枚、場札は6枚を並べ各ターン3枚を取る→必要なトレインカードを揃える速度を理論上 1.5 倍にできる
《ロングチケット不使用ルール》ショートチケットのみ6枚配り、4枚をキープ→ロングチケットが通らないところを通り、交錯が増す(らしい)

でやってみると《3枚取りルール》はまったくまごつくことなく「1枚・2枚・3枚ね」と軽快スムーズに運用できる。余分な手札が増えかえってマネージメントに手こずるかなとも思ったが、場札選択肢の増大効果は思考と戦略を助ける方に働き、双方とも迷う時間が減っている。

チケライの難しさは必要な色がなかなか場札に出てこないときに生じるのだが、このルールでは常時3枚が入れ替わるし、場に何もないときでもデッキから3枚取れば、3/10 の確率で何がしか役に立つカードが入ってくる。機関車カードも同様に、場に出る率もデッキからブラインドで取れる率も上がるので、萌も俺もサクサクと必要カラーを揃え、通常よりハイパーな高速路線敷設合戦となった

《ロングチケット不使用ルール》はショートチケットを組み合わせロンゲストルートを作るのが非常に重要な戦略となるので、最初のチケット選択にかなり悩む。結果として俺も萌も効能書き通り普段あまり通らないような面白いルートを通れ盛り上がったのだが、このルールに期待した『人数が少なくても交錯が増し、同一路線を奪い合い盛り上がる』という効果はまったくなかった。やはり普通のロングチケットがあったほうが達成時に盛り上がるなとも感じるし、こちらはとりあえずボツ。



赤の路線が紡いだ見事な45個ループ
【結果】いつも手札を余して負ける萌が手札もトレインもきれいに使い切り、45個全部をつなぐ完全ロンゲストルートを達成して13点差勝利。手札マネージメントがやや苦手な彼女にとっては、明らかにプラスに働く3枚取りルールである。アテネ→ペテログラード→エッセン→ベルリンという、ロングチケットがあったらまず見ないだろう珍しいロンゲスト&ループ完成で大拍手が起こり、久々にカメラを取り出し盤面を撮影するほどいいゲームだった。時間はちょうど30分で、3枚取りでゲームが短くなったかというと微妙だが、展開は大幅に軽く速くなり、フラストレーションが少ない爽快なゲームになったという印象。



3枚取ることで手札マネージメントの難易度が大幅に下がるわけで、ゲームとしてはぬるくなる。しかし子供入りファミリーゲームとしてのチケライは、これくらいの重さでちょうどいいような気がする。チケライのゲーム性は

『①手札マネージメント』
『②ルートプランニングと実行』

にあり、3人プレイくらいだとどうやっても路線交錯が少ないのでルートプランニングの面白味がやや薄く、メインは手札マネージメントとなる。子供はひらめきや機転でプレイすることを喜ぶのだが、「欲しい色がない、困った」という手札詰まり状況はひらめきや機転で打開することが難しく、我慢と地道なマネージメント力が求められる。そういうプレイは子供にはあまり楽しめず上手にもできず、やる気を段々なくしてしまうわけである。

だからそこを軽くする3枚取りは子供に向いていると思う。ゲームの面白さが上がるわけではないが(ジレンマが減るので面白さ減と感じる人もいるだろう)、ままならなさは確実に下がり、軽快になるのだ。これで何度かやってみよう。ゲーム性を損なわず子供に勝つチャンスをもっと与えてやりたいけど、チケライではうまいハンデが思いつかないとずっと思ってたのだが、子供が苦手な手札マネージメントの難易度を下げれば、それだけで子供はちゃんとプランを立て勝負をかけてくるのであった。素晴らしい。

新鮮さを失ってきたゲームに新風を吹き込める、ボードゲームのヴァリアントルールは楽しい :-)。

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