2006/05/19

日記「生きているということ!」

「久々の登校」「萌の絵が塗り絵に」「クリエイティブの炎」ほか。
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■06/04/30(日) □ 中田の苦闘は続く
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 萌は昨夜も夜泣きをした。これで3晩連続、時間もだいたい同じ 11:15 頃のようだ。これはどうやら夜驚症というものらしい。原因は、ストレスや興奮など原因がある場合もあればない場合もあるそうで、今週はフルーで身体的なストレスが高かったのでそのせいかもしれないが、なんとも分からない。起きたときには何も覚えてないのである。

 記録を見ると前に夜泣きがあったのは春休みで、あの頃は毎日が興奮のきわみだったよなあ。日本で昔からいう夜泣きカンの虫というやつで、昼間の興奮と因果関係はやはりあるのだろうと思う。

 今日はもう体調もほとんど回復し、午後は友達と遊べるかなという感じ。

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 トッテナム-ボルトン:ぐわ、のっけから中田が中盤でボールを奪われ味方のイエローを招く。MFをやりたいなら、あそこは自分がファウルしてでも相手にボールを渡すことだけは避けなければならない。言い訳の効かない「判断の遅さ」をのっけから見せてしまったので(やっぱプレミアは速い)、これは何かビッグプレーをしないとまたサブに逆戻りだと思っていると、デイヴィスの落としをハーフボレーでシュート! ポストに弾かれる! 惜しい。しかしプレーに絡む頻度が高く、攻撃的な位置にがんがんと上がっており、コンディションと味方からの認知度は明らか高まっている(TVもそれを感じ取って頻繁にアップにしている)。認めてもらおうと守備に走り回ってイエローをもらっていた頃とは動き方が違い、攻撃で仕事をしようとしている。よし。交代させられないだけの結果を出すのだ。

 コンディションのいい中田が入った中盤を生かそうと選手たちが思うのか、それとも監督のプランが変わったのか、今日のボルトンは長短のパスをつないでなかなか面白いサッカーをやっている。これも失点するなどしていつものロングボール一本やりに戻ってしまう前に、中田ともども結果を出してほしいところ。

 ボルトンはホームのトッテナム(カナダ代表のステリオリがいる)を押し込んでチャンスを多く作ってはいるが、フィニッシュにはなかなかつながらないという展開で前半が終わる。だんだんボルトンのボールが長くなってきて、中田のプレー機会が激減してきた。このままいつものボルトンサッカーを続けるか、後半もう一度パスをつなぐサッカーに戻すか、監督の判断が気になるところ。アナウンサーと解説者は、「どうなんでしょう、この(長いボールからのこぼれ球を生かす)フットボールって、古いんじゃないでしょうか」「たしかにまあ70年代っぽいけれど、シーズン中ずっとこれがうまく行ってるんだから変える気はないだろうね」と言っている。

 後半:中田は....まだいる。ほっ。後半は前半とはガラリと変わって、トットナムが怒涛の押し込みをはかる。中田がPKボックス脇で一度きれいにぶち抜かれた。こういう時間帯に中田の力でゲームの落ち着きを取り戻せるといいのだが、チーム自体がチェルシー戦の最終盤と同じ状態で、攻撃を跳ね返すのが精一杯でつなぎは不可能になっている。

 10分の怒涛がやんでやっとボルトンもボールを持てるようになる。さあ中田を使ってくれ―――というところできれいなつなぎからトッテナム先制! うむー。―――あ、オコチャが入る。あー......中田はここまで。がっくし。やっとここから攻められるのになあ。

 この試合での中田の評価は、5.5 というところじゃないだろうか。シュートを打ったところまではチームともどもよかったのだが、その後はチームともども効果的ではなくなり、何も試合に変化を与えられなかったということで(その後オコチャが大きな変化を与えたわけでもないが)。

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 午後から萌はKT・HNと遊ぶ。まる1週間ぶりに友達と遊べて、萌はうれしそうであった。

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■06/05/01(月) □ 久々の登校
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萌は丸1週間ぶりに学校へ。早めに連れていってプレイグラウンドで遊ばせていると、「萌! 新聞に出てたの見たわよ!(※)」「萌! あなたドローイングコンテストで勝ったのよ、知ってるの?!」とクラスメイトがみな話しかけてきた。なかなかいい感じの welcome back である。

(※)サケの放流祭を見に行って、地元新聞の取材を受け写真が掲載され、後から驚くほど多くの人に見た見たと言われた。

 しかし学校について車から降りるときに、萌は俺の手を緊張気味に握り締めている。前はこんなことはしなかったので、やっぱりまだあの怒鳴りつけられた上級生のことを怖がっているのだ。

 するとちょうどそいつとグラウンドでまたすれ違う。「....いまいたよ」「うん、いたね」と話す。「―――だけどさ萌、こないだ言ったでしょ。あの子はもうペアレンツや先生に叱られたわけ。もう今度萌たちに怒鳴ったりしたら、もう超怒られちゃうわけだから、なにも言わないよ。心配ないよ。もし何か言ってきたら、そう先生に言えばいい」。

 すると萌は、「お父さん、あの子を scare して(怖がらせて)くれて、好き!」などというのだった。「いやお父さんは何もしてないよ。ただあの子と目が合うたびに、『俺は知ってるんだぜ! もうやるなよ』って顔(目くばせ)をしてるだけさ」「ありがとう!」。

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■06/05/07(日) □ 自転車の練習
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 仕事が終わって萌と遊んでいると、自転車の練習を一緒にやろうとHN家に呼ばれる。2人とも車体がまっすぐに立ちひとこぎ目に力がしっかりかかるといった条件が揃えば、すいーと5mくらいいける。が、ああいう極端に小さなバイクでは条件を揃えること自体が難しい。

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■06/05/09(火) □ 庭でピクニック
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 天気がよくて風が涼しく気持ちのいい日が続く。学校前に庭でピクニック。気持ちよし。萌を遊ばせながら草むしりやフェンスの修理をする。翻訳仕事をやっていると、仕事以外の時間で家事をやっつけてしまおうといっそう熱がこもる気がする。

 わざわざ話題に上げて蒸し返すことは避けているが、学校ではもう行き帰りに萌が俺の手を握ることはなくなって、イジメボーイへの恐怖はなくなったようだ。あれから2週彼がモニターをやったわけだが、一度「おいお前、俺のことが好きなのか?」「...うん」という意味のよく分からない会話があった以外は問題ないらしい。その会話の意味は萌にも俺たちにもよく分からないのだが、まあ威嚇しようという意図はなかったらしく萌が気にしてないので、俺たちもまあ気にしても仕方がない。

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■06/05/10(水) □ 萌の絵が塗り絵に
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萌の絵がコンテストで勝って、その後表彰のやり直しをしたという話もないのでどうしたかなと思っていたら、今日クラスのキンダー全員(あるいは学校のキンダー全員?)に萌の絵のコピーが配られ、それにみんなで塗り絵をするというイベントがあったのだそうだ。萌は超うれしかったらしい。よかったよかった。

 その絵のコピーを見てみると、先生の説明を受け塗り絵として使うために、きちんと輪郭だけをクリアに描いているのが分かる。こういう注文にきっちり応え描き分けられる画力がすごい。いやはや。










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■06/05/11(木) □ マグノリアの花
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 午後萌とKTを乗せて日本語学校へ。往復する道すがら、道端に見えるマグノリアなどの花が美しくてハッとする。BCはこの季節が一番美しい。町中にいっせいに花が咲いて実によろしい。日本の桜の春もいいが、マグノリアも甲乙つけがたく美しい。うちの前庭の花も、Mが冬の間に堆肥を入れたおかげで、今年は5年ぶりに見事咲き誇っている。

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■06/05/13(土) □ クリエイティブの炎
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 夕方 Port Coquitlam のメイデイ祭りに行ってきたのだが、今年はCDをインディーズで出してるというロックバンドが来ていた。おおロックだと萌ともどもコオフンしてしまい、ずっと踊ってしまい、萌は特にステージ前まで進出して踊りまくりで楽しかった。

 しかしこのバンドはボーカルの女の子が 20 代でオトコらは 30 代だったのだが、やってる曲はボニーレイットにパットベネターだから、いくらなんでも趣味が中途半端に古くて、正直うーむ (^_^;;) という感じでもあった。バンドのアレンジもイモだったしなあ。

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 古いといえば、12年も一緒にやってたドラマー・TRが最近70年代ポップスのバンドを遊びでやってると昨日音源を送ってくれて、聴いたらカーペンターズの「Close to You」をなかなかいい感じでやっていた。しかし一方で鬼才MRさんは、

> 曲はクリムゾンとザッパとリトル・フィートを合わせたような音楽で全> てオリジナル。最後だけツェペリンのブラックドックをアレンジしてやっ> てました。もううらやまして倒れそうだった。お客さん大勢来て盛り上> がってました。

 なんてことをやってるんだそうだ。メールで読んだだけで、俺もそれを見たくて見たくて倒れそうだ。多摩のクリエイティブの炎は消えていない。たとえキノコ隊長がキノコ専業になっていても。

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■06/05/15(月) □「生きているということ!」
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 夕方日本語学校の発表会へ。全クラス1つずつの出し物だったのだが、一番よかったのは6年生の「生きているということ」という、なつかしい谷川俊太郎の詩の朗読だった。

生きているということ! いま生きているということ! それはのどがかわくということ!

 と、5人の子供たちが体に力をみなぎらせて叫ぶ。それが実によくて、特に6年生にしては体の小さな女の子の可憐な声なんかは、一生懸命に生きているということの愛おしさをまさに体現しているものがあって、胸を震わされた。言葉が分からないMとBRおばあちゃんも、この子たちの朗読の美しさに微笑んでいた。

 このクラスの先生は客席の見えないところに潜んで朗読の指揮をしていたのだが、「あなたの手のぬくみ! 自由ということ!」というリズムを、クラシック指揮者のように両手の力強いフリで子供たちに伝えていた。そのパッションが子供たちをして、人前であんなに大きな声を出させていたのである。まだ若い先生でどういう人なのかは知らないけれど、劇団か何かの経験があるひとじゃないかと思われる。

 萌のクラスはお面をつけての教科書の朗読。最近はクラスを見学できないので、こんなことを練習しているとは知らなかった。悪くはなかったが、教科書の朗読をやったクラスは上記の「生きているということ」以外は正直言って全滅で、ぼそぼそと教科書をみなで朗読しても広い場所(ジム)では聞こえないし、盛り上がりようがない。日本語が分からない父母も多かったわけで、歌や踊りをやってくれたほうがよかった。

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 あの「生きているということ」のインパクトが強烈で、家に帰ってから寝るまで、萌と俺は「生きているということ!」を叫び続けた。

「生きているということ! それは早く寝なさいということ!」「スナックくださいということ!」「いいから歯磨きしなさいということ!」「リンゴくださいということ!」

 といった具合に、なんにでも応用が効くところが谷川俊太郎の偉大さか。

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■06/05/16(火) □ 完璧に真夏
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 今日は外は完璧に真夏で、学校から帰った萌が、外で猫ティガーとずっと遊ぶ声が聞こえていた。子供はやはり夏がきて来るととてつもなくうれしいらしい。その声が仕事のはげみになる。

 なのだがしかし、萌は最近実に頭の回転が速く、こっちが答えに詰まるような口答えをするようになっている。イジメ問題を抜けたことと関係があるのかないのか自立心が高まっており、なかなか言うこともきかないのである。最終的にはいい加減にせよと大きな声を出すしかなくなり、疲れてゲンナリするのであった。やれやれ。

2006/05/17

萌の絵いろいろ(06年5月)

萌の絵いろいろ(2006年5月)



学年コンテスト優勝絵「カラーリング・ガール」
School Prize Awarded "Colouring Girl" (May 2006)

萌の絵がコンテストで勝って、その後表彰のやり直しをしたという話もないのでどうしたかなと思っていたら、今日クラスのキンダー全員(あるいは学校のキンダー全員?)に萌の絵のコピーが配られ、それにみんなで塗り絵をするというイベントがあったのだそうだ。萌は超うれしかったらしい。よかったよかった。

その絵のコピーを見てみると、先生の説明を受け塗り絵として使うために、きちんと輪郭だけをクリアに描いているのが分かる。こういう注文にきっちり応え描き分けられる画力がすごい。いやはや。



「アート・コンサート」
"Art Concert"
英語のスペルは音と一致しないので難しいのですが、萌は日本語で得たスペリングのコツを使い、自力でバリバリ書いています。


It goes, "Lila was a star. She could make a art. She was wondderful. She was so happy. She went in a art concert She was so excited."



「ジュースのふたり」
"Juice for Two"

どう見てもワインかと思いましたが、子供だからジュースだとのこと。この頃は彼女の描くキャラクターが、かわいく美形になってきている。



「しゅくだい」あそび
"Quiz Sheet"
3択クイズを書いて出し合うという遊びのシート。ワタシの字(左3列)と萌の字が、あまり区別がつかない....というか萌の字のほうが味があってナイス....



「すごろく」
"Game Sheet"
3択クイズからの派生で、萌はよくすごろくを作りました。各コマでやらねばならない指示に工夫があって、なかなかよろしい。

2006/04/29

日記「いじわるなモニター」

「FM 2006: 華麗なサッカーは難しい」「下町の学校山の手の学校」ほか。
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■06/04/11(火) □ 忙しい春の日
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 今日は朝のモールでの用足しから始まり、夕方のタンポポ摘みまで外での仕事が途切れず、疲れた。

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 今日から始まった「ごくせん2」を夕方見る。「1」でも少女マンガ的ファンタジーに満ちていたのは最初の方だけで、中盤以降はほとんど熱血本宮ひろし路線だったのでさほど期待はしてなかったが、やはり「ごくせん2」も熱血路線で行くらしい。最初っから殺伐としたケンカばっかりで、もうぜんぜん学園ファンタジーではなくなってしまっている。生徒役のボーイズがなぜか全員老けてかわいげのない奴らなのもしっくりこなくて(萌は「沢田はもういないの?」とがっかりしている)、俺も萌もただ黙って見ているのみだった。まあTVドラマの続編なんてこんなもんか。

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■06/04/14(金) □ 追憶の1996年
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 KT・HNのところに萌を連れて行って、父親のMSさんと話をしていたら、前はバンクーバーのF社で働いていた....という話が出てきた。ん? 待てよ?それってあのF社ですか? ....と記憶をたどり、なんと俺とMSさんは96年ごろ、翻訳&マルチメディアのF社で同時期に働いたことがあるのだと判明した。俺は契約翻訳者で会社にはときおりローカライズを手伝いに行くだけだったので、マルチメディアの部署にいたMSさんとは接点がなかったのだろう。でも会社の全部の人を共通に知っていたので、おそらく当時昼飯なんかは一緒に食べていると思われる。いやー驚いた。

 しかしオークストリートのアパートに住んでたあれから、すでにもう10年だ。東京で過ごした年月ですら12~3年だったのだから、カナダで暮らす年月もそれに近づいている(1年半は帰国してたが)。そう思うと、長いなあと感慨深いものがある。

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■06/04/15(土) □ FM 2006: 華麗なサッカーは難しい
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 チェルシー2-0ボルトン:残り20分で久々に中田を見れた。中田本人は調子がいいので出番をただ待つといい、監督は

>「運動能力や判断スピードというものがネックになっているのかもしれない。
> ミリセカンド(0コンマ何秒)の遅れで、技術を発揮できないのがプレミアだ」

 と論評する中での出場なのだが、率直に言ってボルトンの中盤はボールに触れないのだから、運動能力や判断スピードも見せようがない。びゅんびゅんとボールが飛び交う中でプレーに絡むことが求められており、それには足の速さと判断の早さが必要だと監督は言いたいのだろうけれども、たとえば今日の中田のポジションに鬼フィジカルのMFが入ったとしても、何度ボールに触れたか。

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 サッカーシミュレーション FM 2006 をやっていても思うのは、サッカーというのはスペースのない中盤でのパスを避けて横を回していくのがもう絶対的に効率がよくチャンスにつながる確率が高まるわけで、どこのチームも中盤はプレスが厳しく、MFは自然とボールを持った瞬間にサイドにはたく、つなぎが主な仕事となってしまう。この中で攻撃的MFが何か決定的な仕事をするのは本当に難しい。中田は昔よりもドリブルでボールを運べなくなっているし。

 それでも中田にボールを持たせファンタジーを起こさせようと、中盤で組み立てる 4-3-1-2 フォーメーションにトライしてみる。俺たちの記憶にある「華麗なるペルージャ・ローマ時代の中田」を再現するには、

①相手に押し込まれる②相手攻撃のこぼれ球を拾う(敵のほとんどが前がかりになっている)③中田に渡し、中田がスペースをドリブルで驀進③同時にFWとウィングが猛スピードで上がって複数のパスコースを作る⑤フィニッシュにつながる長く低く美しいグラウンダーパス!

 という流れを人為的に作らなければならない。②の時点で FM 2006 の人工知能は一番ゴールに近いFWかウィングへのミドルパスを選択してしまうのだが、そこをあえて中田に渡せという指示を出すと、中盤からFWへスルーパスが出たりと明らかな変化が現れ、いろんな攻撃パターンを楽しめるようになった。

 だがしかし強い相手にこれをやると当然のことながら、真ん中のやばいところでボールを奪われ一気にシュートに持っていかれ、惨敗を喫する。ボルトンの監督などが恐れているのはまさにこの事態なわけである。華麗なサッカーは難しい。

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■06/04/19(水) □ いじわるなモニター
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 萌は先週水曜に弁当を残し、どうしたのかと聞くと「いじわるなモニター」(※)に早く食い終えて教室を出ろといわれたと言っていたのだが、今日は同じモニターに何かで怒鳴りつけられ、萌と何人かが泣いてしまったらしい。

(※)ランチの時間は先生が職員室に戻り、4年生の係の子供が数人で萌たちを監督している。

 グレイド1の子がなぐさめてくれたそうだが、明らかにかんしゃく持ちのモニターに嫌な目に遭わされているようだ。萌はその子の理不尽な命令に毅然と対処したようだし、先生にも俺たちにもきちんと説明してくれたので即善処されるだろうが(そもそもそういう生徒をなぜモニターに選ぶのか理解できんが)、かわいそうだったなあと胸が痛む。

 そして今日は俺に仕事があるというと萌は一人で静かにレゴをやって遊んでいてくれるので、そのけなげにこれまた胸が痛み、時間がないのについついリビングに出向いていっては遊んでやってしまうのであった。

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■06/04/21(金) □ Pocket PC でどこでも仕事
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 今日はジムナスティックスで萌を待ちながら、Pocket PC 上で仕事を進めた。快調に進んだので、毎日いい子でいて俺に仕事をやらせてくれてありがとうの意を込めて、萌をプレイグラウンドのあるマクドナルドへ連れてきてやった。

 ここでも遊んでいる萌を見ながら、また仕事を進める。機械翻訳をテキストで持ってきて Pocket PC 上で清書一歩手前へと直していくわけだが、Pocket PC では小さなスクリーン上でやっているとは思えないくらいはかどるし、環境が変わるのがいいのか頭もよく回転する。Pocket PC は本当にありがたい機械である。

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■06/04/23(日) □ 停電のかなしみ
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 萌とBRとMがバンクーバーにキッズバレエを見に行くというので、Lougheed 駅まで送り、久々の単独休暇。日本食を仕入れて帰ってきた。アジの干物などうまそう。

 14:15 しかしたまっていた掃除をしつつ、映画を見ながらPCで遊ぼうと思っていたら、掃除の途中で停電になってしまった。なんでこんな春のいい天気の日(日向で28℃にも達している)に停電なんだ? あれもこれもやりたいのになにもできん。はあ。昼寝しよう。春の休日が台無しだ(泣)。

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■06/04/24(月) □ いじわるなモニターと対面
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 今日は昨日にも増して暑く、今年初めて帽子とサンスクリーンを着用して萌を学校へ連れて行く。BCには春らしい春がなくて、先週まで肌寒かったのがいきなりこういう気候になったりするよな。

 で校庭で遊んでいると、萌が「ブリイ(いじめっこ)がいた!」といって俺の袖を掴み体を固くする。―――どの子? あいつか。4年生くらいの、だいたい世界共通イメージ通りの感じのいじめっ子である。顔を見ているとそいつがこちらに気づき、萌の親父が自分を見ているということの意味をたちまち理解したようで、愛想笑いを浮かべて手を振ってきた。先生とこいつとの間でどういう話がついたのか分からんので俺が直接口出しをするわけにはいかないが、とりあえずその愛想に「小僧、俺は知ってるんだぜ」という視線をバシバシと返しておく。

 放課後事件の対処状況を先生に聞いてみると、悪い子ではないがそういう威嚇的な態度をとりがちな子なんだそうで、本人と先生と親とが話し合い、もう一度だけチャンスをやるということになったのだそうだ。つまり二度とキッズに声を荒立てたりしないという約束をしたのだろう。しかし萌は彼をあんなにも怖く思っているわけであり、あと数ヶ月毎週顔を会わせて過ごすのかと思うと単純に気の毒である。もう怖がる必要はないのだと、ていねいに説明してやらねばならない。

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 萌が夕方腹痛を訴え、やがてどぱーっと吐いてしまった。熱はないのだが(ちょっとほてっている程度)、ストマックフルーだろうか。水曜に学校でダンスの発表会を控えていて、萌はそういう楽しみがあるときに間が悪く風邪をひくことがあまりにも多いので先週からずっと気を使ってきたのだが、やっぱりきたかーという感じ。子供の場合どれほど気をつけても駄目なときは駄目なようだ。

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■06/04/26(水) □ 二重に残念な欠席
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 昨日も今日もなかなか萌の体調が上がらない。食べられないのでほとほと心身が弱っているようだ。朝イチでMが薬局にペインキラーと流動食のようなものを買いに行き、この流動食を飲み干したことで元気が出てきた。ふいー。やっぱ食べられんと回復せんよなあ。本日のダンス発表は、やはり行けない。無念。

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 午後、だいぶ回復したところでLSから電話があった。よく分からないが、こないだMと萌の行ったサーモンフェスティバルで撮られた萌の写真がローカル新聞の1面に載り、さらに学校のドローイングコンテストで萌が賞を取ったらしい。つまり今日の生徒集会ではダンスの発表に加えて、ドローイングコンテストの表彰もあったわけだ。萌は楽しみにしていたメキシカンダンスだけでなく、みなの前で絵を表彰される喜びもミスしてしまったのか。かわいそうなり。


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■06/04/28(金) □ 下町の学校山の手の学校
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 10:59 萌は元気になったがまだ回復途上ということで、学校はよしてプレイグラウンドへ。最初は近くの小学校の庭で遊んでいたのだが、休み時間に生徙がワラワラと出てくると萌はやや気圧されて、別の公園へ行こうよという。ここは自分の学校ではないと感じるのだろう。うちの隣家のKTがいたのだが、こちらに目もくれなかった。そのKTの態度がどこか象徴するように、こっちはより雑多で元気でキツイ、下町の学校という感じがする。萌の学校はフレンチイマージョンクラスがあるゆえ、自然と教育熱心傾向の親を持つ子供が広域から集まりやすい(のであろう)、山の手の学校だ。

 ゆっくりと遊び帰ってランチを食べ、即萌は庭へ。俺もタンポポ刈りに出る。カナダではタンポポがナンバー1嫌われ雑草なわけだが(日本じゃもっと背丈の高い強力雑草が無数にあるので、タンポポなんぞなんとも思われていないと思う)、こいつの生命力は日本のセイタカアワダチソウあたりとタメをはるものがある。どれだけ掘り起こしても半日もすれば別なところから花が出てきて、まったくキリがない。これがカナダ中を覆い尽くす事態になってないのが不思議なくらいで、個々の家のこういう地道なタンポポ摘み作業だけが蔓延を食い止めているのであろうか。不思議だ。なんとかならんのかこれは、と庭先で快適モバイルPCをやっているMKに愚痴りながらタンポポを掘り尽くした。尽くしても明日はまた出て来るんだよなあ。やれやれ。

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昨日休んだ日本語学校から宿題と一緒に先生の手紙がファックスで届いていたのだが、俺が知らぬ間に萌は宿題をさっさと終わらせて、先生に長い手紙を書いていた。この手紙がまたいい味で、flu とか vomit といった言葉をうまくカタカナ化&イラスト化しており、最高なのです。

2006/04/24

萌の絵「ヤンクミ」



「Yankcumyi」

★サカタ萌(もうじき6歳)は TV Japan でカナダでもやっていた、「ごくせん」のヤンクミと沢田が大好きなのでした。名前をローマ字で書いていますが、これがなかなか工夫の跡が伺える。英語のスペルはやはり難しい。
"Yankumi (from Japanese TV show)" (April 2006)



「ヤンクミがたたかうところ」

★バットを持った悪い奴らがヤンクミの生徒をいじめ、ヤンクミが『あたしの生徒に手を出すんじゃねえ!』と、さっそうと登場するシーン。この表情が、か、完全にタイプだ。


2006/04/18

萌の絵「たんけんひとたち」



「たんけんひとたち」

ひとりの12さいの ちいさなおんなのこが、 おはなのかびんを もっていたのに、 はなが あんまり なかったのでした。
そして しょうがないから、そのおんなのこは  はなをさがして たんけんにいくことにしました。
ほねを もっている いぬも、「なにやってるの?」と おもいました。
(おわり)

[Note:名前の入った帽子をかぶった探検ガール。手に持ったものは花瓶だそうです。地面にはモグラの穴の断面図が描かれ、もぐら家のテーブルと椅子が見えています。]

"The explorer" (April 2006)

A 12 year-old girl had a vase but she didn't have any flowers, so she decided to explore the world to collect flowers. A dog is watching her wondering what she is doing. There is a mole hole and mole's house (table and chair) in the ground.



「たんけんひとたち」のうた

[Note:いい感じの山か島のようなものの連なり。歌詞がすんばらしい\(^o^)/。]

Song (lyric) for the story "The explorer"

"I always dream about a snowstorm mountain and a snow covered island....."

2006/04/14

日記「Football Manager 2006」

日記「Football Manager 2006」

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■06/03/27(月) □ Football Manager 2006
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 萌が風邪気味なので大事を取って(というかクシャミが出ている今行かせたら他の子にうつるので)休ませたのだが、午前中静かに映画を見たりレゴをやったりしているとえらい元気になってしまい、これは学校に行かせてもよかったかなと思う。がまあ、静かにしてリンゴなどを摂取していたから元気になったのかもしれないしな。

 午後は暖かい春の日の中外に出て萌を遊ばせ、俺は車のオイルチェンジをした。3度目なのでさすがに滞りなくきれいにできた。

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 サッカーシミュレーション Championship Manager の最新版 Football Manager 2006 が届く(版権の関係で名前が変わったらしい)。寝る前に1試合だけ観戦してみると、前のバージョンCM5(Championship Manager 03/04)よりもリアルなプレーが多い。パスがタッチを割るといった凡ミスが多発している。UI がCM5からまた激変していて操作方法がぜんぜん分からないので(CMは世代が進むごとに使い勝手が激しく低下していくという珍しいシリーズなのだ。見栄えを重視しすぎである)、じっくりと試していこう。

 ちなみに中田のデータを見てみたら、イタリー時代は能力値 150 近辺 (200点満点) だったのが、なんと 120 まで下がっていた。今のイングランドではこんなにも評価が低いのかと愕然。120 といえばJリーグのレベル、欧州で試合に出られないわけである。絶頂であったローマ時代よりは下手になっているとは俺も思うが、いくらなんでもそんなに低いわけがないだろう。まったくがっくしくるな。

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■06/03/28(火) □ 難儀なプレミアシップの監督
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 FM 2006 はだんだん操作に慣れてストレスが減り、ゲームを楽しみ始めた。ボルトンはFWの2枚が素晴らしく(速く強くポストがうまく得点力がある)、はまればアーセナルを倒す力がある。しかしチームの厚みはまったくなくて、試合が続くと主力が疲れ怪我人が出、ガタっと力が落ちる。中田は能力値を 140 に修正したがまだたいした仕事はしていない。

 しかしプレミアは相変わらずサブが5人しかベンチに入れなくて、戦術的柔軟性を持てなくて嫌になる。アクシデントを考えるとGKとDFのサブははずせないので(他のポジションの選手をそこに使えば悲惨なことになる)、チームのバリエーションとして使えるのは実は3枚しかない。FW/MF/サイドで1枚ずつしか選手を選べないのだ。現実のボルトンで中田がベンチから外れる理由も、守備が崩れたとき、中盤で怪我が出たときのエマージェンシー要員としてDMF Speed はベンチからはずせなく、そうなると攻撃的MFを入れる余地はないというあたりにあるのだろう。こんなんでどうやってサブ選手をくさらせずにやってるのだろうかプレミアの監督は。不思議である。

 それに加えてイングランドは労働ビザが無闇に厳しくて、南米で若く素晴らしい選手を見つけてきてもまずビザが下りない。各国代表の常連でなければプレミアではプレーできないのである。若く無名で能力が高い選手を見つければこそ掘り出し物の喜びがあるのに、それが絶対に使えないのだから嫌になる。難儀なりプレミアシップの監督業。

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■06/03/29(水) □ ボケとツッコミ DNA
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 最近学校の校庭で萌を遊ばせていると、いつも萌より1年上のOVが俺に話しかけてくる。今日は友達3人をぞろぞろと連れてきて萌と俺に紹介し、プレイグラウンドで遊びながらニコニコとずっと俺のことを見ていた。そのうちに彼女の友達もみな俺が見ていることに気づきはしゃいできて、俺を観客に滑り台でえらいシリーな(ふざけた)ことをやり始める。こりゃ調子に乗って怪我でもしたらえらいことだと思い途中でやめさせたのだが、子供は大人が観客になって反応してくれるとやたらにうれしいらしい。

 こないだRBがうちに来たときも、おとなしいと思っていた彼女が何もしていない俺にふざけてパンチしてきたりしてびっくりしたのだが、それは俺が反応するからだとMは言う。「子供がちょっかいを出してきたときに、あたしを含めたいていの大人は What? って無反応だけど、あなたは律儀にウワっと反応するから喜ばれるのよ」。同様にOVも、自分がバカなことをするたびに俺が見せるリアクションが楽しいのだろう。

 俺も別に喜ばせようと思ってそうしているわけではないのだが、日本人にはボケとツッコミ DNA みたいなものが織り込まれていて、子供がボケると自然に「なんでやねん(ガクッ)」という感じで体が動くのだ。ささいなジョークでも大笑いして楽しむというような、言葉のコミュニケーションをメインにするカナダの大人とは違う反応が俺にはあって、それがOVら子供に喜ばれているのではないかと思われる。

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「ごくせん」が終了した。最終回は当然ながらエモーショナルなシーンが多かったのだが、沢田が「やめるなよヤンクミ!」と叫ぶシーンでは、萌も「ちょっと.....泣きそう」という反応を見せていた。来週からは「ごくせん2」だと予告編が出て、やったやったと大喜びの父娘なのである。

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■06/03/31(金) □ スクールアッセンブリ(生徒集会)
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 月例の生徒集会のようなもので萌が何か賞を受けるというので来たのだが、萌がもらったのは単にクラスの全員が月替わりでもらえる「よくできました賞」だった。が、全校生徒の前で前に出るということ自体がやっぱり子供にはとてもとてもうれしいらしく、顔を真っ赤にして喜んでいた。

 しかしこれを毎月やるのかいとキッズが気の毒になるような退屈な集会であった行事伝達など紙に書いて配布すれば時間を半分にできように。いつも思うことだがカナダ人は一般に、口頭での交信の力を強く信じているように思われる。学校もMも他の家族も、かなり先のことでも物事を口頭で伝えてくる傾向が強く、俺はそれをコンピュータ上に記録しない限りてんで憶えられないのだ。日本語学校が通知を何事もプリントにして配布してくれるのを見れば、日本人は俺と同様に、文字の力を非常に強く頼る傾向があるんじゃないかと思われる。TVだって日本じゃ必要以上にテロップだらけだしな。

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 また、普段文書に頼る度合いが薄いからなのかどうか、カナダの先生たちの通達はプリントでも分かりにくく、毎月のスクールレター等を読むのに苦労している。通達なんてものは↓このように箇条書きにしておいてくれれば一番分かりやすいのだが、

04/19 (Wed) 9:00am Jump Rope Contest

 通達では「On Wednesday 19th we will be attending the Jump Rope Contest」と、口頭で伝える言い回しをそのまま文章にしてあるのだ。情報伝達のスタイルがものすごくアナログなのである。こういう最後まで読まずには何のことだか分からない通達がスクールレターには8ページとかぎっしり書かれているわけで、俺は読むのが苦痛だし、Mですらも分かりにくいとこぼすことしきりなのである。

 またまたこういう通達の中で「Division 14 のキッズは...」とクラス名をよく言ってくるが、学校側はこれまでクラス名が俺たち親には告知されていないことが分かっているのであろうか。「マダムAのクラス名は Division ○○」と書かれたものは俺もMも見たことがないので、俺たちは萌のクラス名を知らないままここまで来ているのだ。こういうところのきっちりしてなさは、日本と最も異なるところである。

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 FM 2006:監督業がつまらないプレミアには見切りをつけて、スペインのセビージャというチームに中田を移籍させてやっている。が、4-4-2 できれいにパスはつながりゴールエリア横までは気持ちよく持っていけるのだが、その頃にはバイタルエリアに相手がきっちり揃ってしまい、サイドから放り込む以外に選択肢がなくなってまるで点が取れない。そしてうちが全体的に前に上がるので相手はチェルシーのごとく、少ないパスで見事に隙を突いてくる。これではわがチームはまるで日本代表ではないか (^_^;;)。

 もっと少ない手数で速く前に運ぶにはどうしたらいいのだろう。悩む。放り込みでも点が取れたCM5とは、組織の緻密性とGKのセーブ率が違うのである。GKはちょっと非現実的にうますぎると思うが、この組織の緻密さはすごいと思う。

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■06/04/04(火) □ 本当のサッカー監督みたいな悩み
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 FM 2006:相変わらず深刻な得点力不足に悩んでいる。相手が戻る前にシュートに持っていくことがどうしてもできない。ボールは十分に持てるのにまるで点が取れない。FWの足も十分に速いのに、どうしても抜け出せないのは何故なんだろう―――と、実に本当のサッカー監督みたいな悩みを抱えているのです。失点も少ないのでリーグではまだ2位につけているが、実にストレスがたまるシーズンを送っている。

 フォーメーション指示をじっくり見直し、あまりにFWに組織プレイをやらせすぎているのだろうと判断して、「プレスに行け」をはずし「自由にやれ」という指示を与えて、攻撃に専念できるようにしてみる。これでやや良化の傾向が見える。

 しかしこの FM 2006、攻撃側守備側ともアルゴリズムが前に比べ実に強化されているなー。攻撃側のパス回しも華麗だが、シュートレンジに入る頃にはゴール前をきっちり固める守備陣の動きにもスキがない。ゲームとしてはシュートが入らずイライラするのだが、攻守とも優れた AI でコマたちが考えしのぎ合う FM 2006 は、見ていて充実感がある。たいしたものである。

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■06/04/07(金) □ ガールズとボーイズの違い
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 日本から帰るのを萌が待ちに待った、KT・HNが久々に来訪。しかし萌はHNとガールズの遊びばかりやっている。KTが一人じゃかわいそうなので、俺とMKが遊んでやるのであった。まあこれは致し方ない。ガールズはどんどんとおませになりいろんな複雑なゴッコをやりたいのに、ボーイズはいつまでも単純だからなー。HNは実際日本に行く前から比べて、短い間に言葉も成長している。KTはMKに単純に抱え上げられ放り投げられ、これこそ最高という単純喜悦の声を上げていた(笑)。

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 FM 2006、やっとフォーメーションが定まりチームがクリックし始めた。両サイドのウィングに攻撃的な指示を与え、ボールを奪ったらできるだけ早く彼らを上がらせてボールをはたく感じ。監督である俺のイメージ通りにこれが運ぶと快感を感じる。

 そしてリーガを無事制覇。よし。CM5で培った俺の監督理論はやはり通じるのであった。実際ビッグクラブに個の力では負けても、セカンドボールを拾う組織力の強さで対抗できる、いいチームになっている。次いで UEFA カップ決勝。

 決勝、ミランに負けたー。やっぱカップ戦の一発勝負では個の力で勝負がつきやすい。ディダが止めに止めジラルディーノが無理なところからゴールを決めてくれた。はー。まあ1年目からリーガが取れただけでも予想外の成功といえよう。

 しかし中田は結局何もはなばなしいことをしなかったなあ。4-4-2 を研ぎ澄まして行けば行くほど、MFは相手の進行を止めてサイドに流す単純労働者の出番が多くなってしまう。まさにボルトン的サッカーになってしまい、中田を生かすことができないのである。中田のよさは中距離パスの発想と精度にあるわけで、2年目はそこを生かすサッカーを追求したい。欧州でパッサーが生きる道はもうないのかどうか。

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■06/04/09(日) □ バンクーバーキッズシンフォニー
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 KDさんが突如発熱で行けなくなったとのことで、急遽萌がバンクーバーキッズシンフォニーに誘われダウンタウンに来た。俺はホールに入るまでの付添いで、あとは自由時間なので念願のブックオフ・バンクーバー店ヘ。

 入った瞬間に、日本レストランでも日本語学校でも感じることのない猛烈な「日本にいる」感覚に襲われ、顔が笑ってしまった。だって本当に日本のブックオフそのままなのである。須坂店より小さく一般の古本屋くらいの狭さだが、品揃えの按配と価格はまさにブックオフ(100 円棚が 200 円になってるだけ)。勤勉な店員の必要以上の礼儀正しさもまるごと輸入されている。この店内は完璧に日本になってるのだ。

 はやる心を落ち着かせ1時間じっくりと、どんな本があるのかに目を通す。品ぞろえもまったく典型的なブックオフ。そんなにコレという本がたくさんあるわけではないが、予算と時間があればいくらでも買えそうだ。インターネット漬けの生活ゆえに、本を買ってまで読みたいというサブジェクトもあまりないのだが、赤瀬川原平の「老人力」の本が手に入ったのがうれしかった。他にこれといったものはなかったが、まあ特に迷うこともなく定番のこち亀コミックスを3冊 :-)。

 しかしダウンタウンを歩くと人々のテンションが高くて本当に緊張する。空気が悪いのもはっきりと臭いで感じ取れて、俺は純正に田舎の人だなあと思った。ありがたいことである。スケールは異なるが東京で言えば、調布基地周辺と上野界隈くらい環境が違うよな。

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 で萌たちを迎えに行くと、何よりもまずシアター内部の内装がすごかったらしくて、撮った写真をお父さんに見せてと萌がNRさんにさかんにせがむ。見せてもらうとなんと内部は、完璧なゴシック・ロココ調(?)のオペラ座になっているのであった。うわーこれはすごい。これを見て萌たちは、お城みたいと超盛り上がっていたらしい。コンサートも長すぎたが楽しかったようで、よかったよかった。誘ってくれてありがとうございました。

2006/03/28

日記「大人な萌」

「腹が出たショック」「レゴの宝の山」ほか。
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■06/03/13(月) □ 春休みのオックスフォードパーク
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 スプリングブレイクで萌は学校もアクティビティも全部休み。午後退屈してきたところであちこちのキッズに電話をしてみるも、都合が合わず遊べない。

 仕方がないので2人だけでオックスフォードパークへ。ずいぶん久しぶりだが、公園から見える Coquitlam→Port Coquitlam バイパスの橋がすでに完成して仕上げをやっていた。土木工事はすごい。そこに至る道も4車線に拡幅されており、これは本格的なハイウェイとなりそうな感じである。

 砂場のあるプレイグラウンドに来たのは久しぶりで、萌は砂をざくざくと無心に掘っては料理を作って長い時間遊んでいた。最近は家でも料理セットはあまり使わないのだが、やっぱりまだこういう遊びもするのね。春の公園に連れてきてよかった。

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■06/03/14(火) □ EL来訪
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 EL来訪。ELは萌に近い笑い上戸で、コミュニケートしながら遊べて楽しい。

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先週、先々週と TV Japan で『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(1973 浅丘ルリ子)、『男はつらいよ 噂の寅次郎』(1978 大原麗子) を楽しんだのだが、その関連記事を探していたら、映画の一字一句までを網羅したどえらいファンのページ「男はつらいよ・覚え書きノート」が見つかった。

 この人はバリ島在住なのである。そういえば渥美清が死んだときにも、普段無愛想なイトコのKがタイから、「海外にいて見る日本の映画といえば Ozu か寅さんなのでなんだか非常に悲しい」とメールに書いて送ってきたのであった。寅さんみたいに象徴的なものはやはり、海外在住日本人にはガンガンに響くのである。じっさい何気ない温泉町の景色とか、すべてがイイもんなー。このよさの半分はまあ海外居住者の単純なホームシック的懐かしさだと思うが、半分は日本の風景―――光や木々や緑、ものの古び方や汚れ方、色、微妙にアジア的な雑然さなど―――からかもし出される、普遍的な味わいのよさだと思う。

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■06/03/17(金) □ 夢の春休み
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 おととい萌はRB家で一日を過ごし、今日はそのお返しでRBがうちに来てるのだが、いつも以上に萌がひゃーと興奮していて抑えが効かず、集中して遊べなくなっている。悪気はないしRBも気にしちゃいないのだが、いくらなんでももうちょっと自分をコントロールする術を覚えてくれんといかん。

 こうして毎日友達の家に行くか招くかで、萌は夢のように楽しいスプリングブレイクの1週間を過ごしているのだが、その昼間の興奮の余韻か毎夜夢を見ては夜泣きしている。昼間になると忘れているので、どんな夢を見ているのか分からないのだが。萌は怒るとかカンシャクを起こすことは本当にない子供なのだが、うれしさと興奮には我を忘れすぎるのだよな。

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■06/03/20(月) □ 腹が出たショック
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 夜着替えているときに、俺は生まれて初めて「腹が出ている」と指摘された。たしかに自分ではまるで気づかなかったが横から鏡を見ると、胸の薄さは前と同じなのに下腹に厚みがついて、ぼよーんと丸くなっている。ややや! 触っても脂肪がついたわけではないし体重も前とあまり変わりないのだが、内臓の位置とか筋肉の関係で体型が変わってきているらしい。こ、これが中年体型なのか。今まで体重を気にする人の気持ちは分からなかったのだが、初めてそのショックの度合いが分かるのでありました(泣)。

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■06/03/23(木) □ 日加の子供の歌
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 日本語学校:ここで歌かなにかやらせてやってほしいなあとずっと思ってきたのだが、今日は突如全クラス合同合唱をやっていた。知らない歌だが卒業生を送る歌らしい。萌たち低学年キッズはビッグキッズと一緒に歌ってうれしそうで、ニコニコであった。めでたや。萌は家に帰ってからも、プリントの歌詞を見て何度も歌っていた。

 しかし日加で子供の歌の傾向はえらい違うなあと今さらながら思う。萌が今キンダーでやってる歌はファンキーな16ビートで、

Working it out, to make this place a better place Working it out, it's a brand new, brand new day

 てなリズミカルで早口の歌を、裏打ちで手をクラップしながら歌うのである。ジャクソンファイブかなんかみたいな感じでかっこよい。カナダじゃ子供のときからこういう歌をやっているから、強力女性シンガーがどんどん生まれてくるのではなかろうか(強力男性ロッカーが出てこない理由は不明だが)。この卒業生を送る歌はよいのだが、日本の子供の歌は「しーろーじーにーあーかーくー」みたいなやつが、いまだに多いのである。

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■06/03/24(金) □ レゴの宝の山
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 MKが子供のときに使っていたレゴの山が、SH家からうちに来た。萌が大きくなりレゴをやらなくなる頃には、生まれているであろうMKの子供のところに行くという次第。何世代でも余裕で遊べるレゴは高いがえらい。Mが子供のときに使っていたものも混じっているとのことで、つまり30年以上をかけてたまりにたまったすごい量だ。こんなに大量のレゴなんてこれまで使ったことがない。技術があればレゴマニアの Web ページにあるような城だって作れそうな量である。さっそく「バッドガイの城」に取り掛かる。かっこいー。


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■06/03/25(土) □ 大人な萌
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 朝外で遊んでいた萌が、ティガーに噛まれ大泣きになった。最近ティガーは萌にえらいなついているが、興奮しやすい猫なので下手に腹などを触るとそういう激烈な反応を示すことがままあり、萌に警告はしてはいたのだが、やはり。まあ深手ではなくよかった。俺が「まったくティガーはバカだ。萌のことを好きなくせに噛みついて。これからバカティガと呼ぼう、バカティガと」というと萌は「バカなんて言っちゃ駄目だよお父さん」と笑って、その後もティガーと変わりなく遊んでいた。

 午後近所のSMがやってきて二人は外で遊び始めたのだが、SMが例によって何かにスネて帰るフリをしている。しかし萌はもう昔のごとくこれで動転せずに、「SM! We need to talk!」と呼びかけている。トラブルへの対処の仕方が実に冷静で、1歳以上離れたSMよりもはるかに大人なのである。

 晩飯のときにこの2件での萌の落ち着きをほめて、「まったく萌はいい子だよ。こんないい子が生まれるなんてお父さんは知らなかったよ。悪い子が生まれたら困るなあって、萌が生まれる前にお母さんに言ってたくらいでさ。こんないい子が生まれるなんて驚きだよ」と話していると、萌はふーんと澄ました顔をしつつもうれしいらしく、野菜をパクパクと一気に食べ、「どう? ごらんなさい?」という顔で俺を見るのであった。

2006/03/15

日記「おひなを今年も出し忘れ」

「コロッケ胸焼け地獄」「KAMATAKI 窯焚」ほか。
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■06/02/24(金) □ ようやく学校に復帰
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 風邪が治り今日から萌がようやく学校に復帰。萌に会いたがってくれていたらしいSHがきゃーっと飛んできてくれたが、萌はSHの強引な愛情表現がちょっと苦手らしく、「腕を引っ張らないでよー」などと苦笑していた。

 この休み中萌はずっとレゴをやっていたのだが、子供がああして工夫していろんなものを作っている姿というのは、人を幸せな気分にする。クリスマスにPolly Pocket セットをもらって以来萌はそれにかかりっきりで、あれほど好きだった絵もあまり描かなくなっていたのだが、レゴのおかげでクリエイティビティが蘇ったのか、最近は絵も昔みたいに素晴らしいものを量産するようになってきた。ありがたやありがたや。

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 オリンピックはもう終わってしまったという感が強い。最後の競技はホッケーだが、カナダがとうに敗退しているし。

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■06/03/02(木) □ おひなを今年も出し忘れ
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 カレンダーを眺めていた萌が、「お父さん、今日は March 2nd?」と聞く。おおカレンダーが読めるのかいすごいじゃんそう3月ふつかだねと答えると、「じゃ明日おひなまつりじゃない!」と萌が叫ぶ。―――! そ、その通り、今年もまた忘れていた。すまん。じゃ週末におひな様を出して、SFも呼んでひな祭りをやろうということになった。

 ◆日本語学校:この頃萌のひらがな書き順がかなり間違っていることが分かってきたので、日本語の宿題は脇について支援しやらせている。萌は字をほとんど自力でチャートを見て覚えてしまったので、俺は特に書き順を見てなかったのだ。

 しかし、萌のいる日本語クラスは時間の制約から、勉強以外のアクティビティがないのが気の毒である。週一クラスで時間がないのは分かるが、歌などもやってくれたらなあと思う。窓から覗いてみれば生徒はみな先生の問いかけに顔を輝かせサッと手を上げており、授業は十分に活発なのだが、家に帰ってから萌が日本の童謡を口ずさんで俺を驚かせるような、ああしたファンはなくなってしまった。そういう文化的なものも含めてのジャパニーズ・スクールが望ましい。

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■06/03/05(日) □ 大おひな祭り
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 昨日からの大掃除を朝だーっと終わらせ、おひなさまを出した。うれしくてうれしくておひな壇の前で踊り続ける萌(笑)。俺はレゴとかプラモデルのほうがずっと燃えるのだが、女の子ってやはりひな人形が好きなのねえ。



 夕方やってきたSHとSFと合わせ、総勢4人が着物姿となり、盛大な大ひな祭りとなった。わしは台所で必死にてんぷらを揚げていたのであまり見れなかったのだが、よかったよかった。どうしてうちにはこんなに着物がたくさんあるのかと問えば、みんな母さんがくれたものらしい。たしかに他にうちに着物があるわけがない。ありがたいことです。


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■06/03/07(火) □ 漢語キッズおそるべし
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 CLバルサ・チェルシー第2戦を見る。まことに「眼福」なシーンが延々と続く。ブルドーザみたいな遠慮のなさでプレミアを突き進むチェルシーも、ロナウジーニョ率いる技術集団を押し返し、少ないチャンスを決めることはできないのであった。

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 雛人形が出ている間に萌の友達を呼んでやろうとクラスで仲のいいALを招待したのだが、ALは萌とただひたすらギャハハと笑い盛り上がってるばかりで、雛人形があることすら気づかず(笑)。まあいいか、楽しければ。

 ALは父母が中国二世なのだが、三世でもちゃんと中国語を習っているらしい。漢字で「敏」「蓉」といった字の入った自分の名前を書いてみせた。えらい。自分の名前とはいえ6歳でこんなに難しい漢字を書けるのだから、漢語キッズおそるべし。俺が思っていたよりもはるかに気さくでよく話し、何の手間もかからないいい子であった。

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■06/03/08(水) □ 子供は天才です
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 昨日日本語学校の宿題をやっていて、萌にはゃゅょの法則性が今ひとつ分かっておらずどう説明したものかと考えていたのだが、今日宿題の残りをやったらもう完璧に書けるようになっていた。あらー、すごいね。

 じゃあとは夜寝るときに教科書の音読をやるだけだと言うと、萌は「がんばれぞうさん、ぺんぎんごじら」と、詩のようなものを暗記していてスラスラと言ってみせる。それ本当にそうなの? と聞くと、読み方の練習プリントをひらいてホラと見せる。うわ完璧だ。おそるべし子供の記憶力。

 萌は最近絵もまた線の美しい細密画を描くようになってきた。遠近法や3Dの要素もつよく入ってきている。猫の後ろ姿を描いたのには驚いた。猫が後ろを向いたら尻尾がどう見えるか、頭の中で立体を捉えられるのである。俺にはそれができないのだよな。

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■06/03/09(木) □ コロッケ胸焼け地獄
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 朝一瞬大雪になった。もう春なのにびっくり。今年は一度もスノータイヤの威力を味わえなかったので、一度くらいどっさり積もってほしいと期待するも、萌を学校へ送る頃にはほとんど溶けてしまった。残念。しかしその雪と関係あるのかどうか、午後停電になる。日本じゃ停電なんて子供の頃しか経験がないが、カナダは公共料金が安い分インフラは弱いのだろう。停電は多い。

 しかし昨日作ったコロッケが例によって鍋の中で割れてしまい(※)、割れて油を吸ったやつは責任を取って全部俺が食べたせいで、昨夜から前代未聞の胸焼けに苦しんでいる。まったく胃が動いていない感じ。お茶漬けくらいしか食えず、口寂しさにクッキーなどを食べるとたちまち胸焼け再発という状態。とほほ。

(※)NRさんに聞くと、油の温度が低いとそうなりやすいとのこと。十分に熱い油でさっと揚げるのが吉なのだが、うちのストーブじゃ油が中温より上がらないんだよなあ。悩ましい。鍋のサイズを小さくするしかない。

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■06/03/12(日) □ 「KAMATAKI 窯焚」
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 TV Japan で日加合作のKAMATAKI 窯焚という映画をやったので、Mと一緒に見た。窯の周りで起こる出来事がみな面白く、日本人と外国人との間柄がごく自然で誇張がなく(調べてみたら監督は日本に長く住んでいた人だった)、主人公が日本語でのコミュニケーションを覚えていくさまや心の移り変わりが鮮やかに描かれ、全体的にひっじょーによかったのだが、―――ただひとつだけ。「女は抱いてみろ、でなきゃ人生は分からん」みたいな陳腐なオヤジ哲学が、どうにもハナにつく。あれは余計だがっかりだというのが俺とM共通の感想なのだった。惜しい。これは日本映画うんぬんの問題ではなくて(監督はカナダ人だし)、映画を作るオトコという種族の多くに共通するものなのかもしれない。

 しかし TV Japan は日英2ヶ国語番組の英語チャンネルをカットしてモノラルで放送してるので、北米放送でありながら英語スピーカーの家族が見れる番組は皆無なのである。これが2年間で初めてMが見れる番組だった。もったいないことだ。

2006/02/24

日記「国民を幸せにする効果・トリノオリンピック」

「女王カトリオナはコメンテイター」「『カリオストロの城』英語版」ほか。
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■06/02/08(水) □ 春のよろこび
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 春になった。寒くない。雨が降らない。ありがたい。前庭にこの春初めて花が咲いているのを、出掛けに萌が発見した。もう寒くないねえと車の窓を開けて走る。BCには秋はなくて、春・夏・雨季の前の冬・雨季の冬という気候だと思う。

 学校が終わった後萌を校庭でずっと遊ばせていると、萌が知らない子に声をかけて一緒に遊び始めた。ジムのすごい高いところからひゅーっとバーをつたって降りてきたりでえらい盛り上がる。

 その子が俺の方を見てニコニコと笑っているので、ん? と顔を見ていて気がついた。「―――あーっ! きみはダンスクラスで一緒だったOVかい!?」「イエス!」「うわー気がつかなかった、大きくなったなあ、何年ぶりだろう」というわけで、あのかわいいOVが萌と同じ学校のグレード1にいるのであった。知らなかった。この子はすごくいい子なので、今後も萌が遊べたらいいな。ナイスな春の日です。

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■06/02/13(月) □ 長野ベテランズ壊滅
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 トリノオリンピック:昨日まではほとんど何も盛り上がりがなかったのだが、今日は朝からスケート 500m があった。俺たちはどうしても長野ベテランズを応援してしまうのだが、ウォザースプーンも清水もまったく駄目であった。スポーツは残酷なり。前回同様盛り上がらない冬のオリンピックだ。

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■06/02/14(火) □ 女王カトリオナはコメンテイター
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 ホッケーの練習風景を延々と流しスケート女子 500m をやってくれないTVを横目で見てイライラする。日本のプロ野球キャンプ情報みたいだ。

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 カナダの男子フィギュアスケートで、長野の頃から期待されては芽が出なかった選手が初のオリンピックで転んでしまったのだそうだ。かわいそうだオーマイガと大騒ぎするM。オリンピックは残酷だよなあ、全員がその時点でのベストを発揮して、それから順位をつけられたらいいのだが。



 スピードスケートでは引退した女王カトリオナ・ルメイドーンが解説をやっていたのだが、引退していっそうチャーミングになった感じで、彼女が画面に映るたびにぱーっと空気が変わる感じがする。「萌はこの人に会ったことがあるんだよ、ほら」と1歳のときに抱かれた写真をみせてやると、萌はすごく興奮してもう一度会いたいというのであった。

 萌は最近「Do you recognize her?(彼女を [記憶の中にある人と同じ人であると] 認識できる?→覚えてる?)」などという言葉を使う。5歳でえらい難しい言葉を使うなあと驚くのだが、考えてみるとMは萌にそういう言葉を平気で使っており、萌は聞き返して覚えているのだ。これは子供の語彙だけの話ではなくて、英語を喋る人は誰も、相手の語彙レベルとかあんまり考えずにどんどん喋り続けるんだよな。

 それに比べ日本人は語彙の難度レベルというのが体に染み付いていて(※)、外国人や子供を相手に難しい言葉を使うことには、非常に高い心理的障壁がある。そんなわけで萌たち日英キッズは自然と、英語語彙の方が先に充実していく傾向がある。

(※)たぶん和語・漢語・複数レベルの敬語・幼児語・年寄り語などさまざまな用語レベルが存在し、常に適切なレベルを選択しながら喋ることが日常の言語だからだろう。

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■06/02/18(土) □ ゲーセンでバースデイパーティ
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 クラスのALのバースデイパーティで Maple Ridge へ。着いたところはゲームセンターだった。狭いところに子供がぎっしり。ですぐさまコインを渡されゲームをやっていいよと言われる。

 萌はあまりゲームをやったことがないのだが、DIやALを見てやり方を学んではトライ。置いてあるゲームはもぐら叩きゲームとかコインを流し込んで別のコインを落とすとかのなつかしいタイプなのだが、ゲットしたスコアに応じてダダダとチケットが出てくるのがキッズの興奮を呼ぶ。ゲームをして何か具体的なモノが出てくるというのが達成感を感じさせるし、そのチケットの総点数で賞品がもらえるのだ。もらえるものはまあキャンディーとかキーホルダーとかその程度なのだが、なーるほどこりゃいいというゲーセンなのであった。キッズはみな夢中で、ALへの祝福もなにもあったどころではないという状態。萌も一生懸命トライしてスティッカーを2シートもらいました。

 萌は昨日から風邪気味だったのだが、帰ると疲れて眠ってしまった。夜また寝る間際に熱も少々出てきた。今夜は熱で目を覚ましそうである。

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■06/02/19(日) □ 「カリオストロの城」英語版
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 昨夜から熱があった萌は、6時に高熱で薬を使う。それで皆目が覚めてしまい起床してしまった。薬が効いていて元気な萌以外全員フラフラ。

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 病気の萌を慰めるために、萌の好きな「カリオストロの城」英語版を皆で一緒に見る。毎度のことだが日本映画の英語吹き替え版はデキが悪い。

 英語圏ではアルセーヌ・ルパンという名前が通じないらしく、ルパンが「ウルフ」というありがちな名前になっている。次元たちもボス泥棒ウルフの子分たちという設定。それはまあいいのだが、ルパンとクラリスの関係が 007 ジェームズボンドとボンドガールみたいな類型に落とし込まれていて、クラリスが20代後半(?)の三流役者の熱のこもった声で、「おおウルフ行かないで愛してるわあなたなしでは生きられないわあなたは私の knight in shining armor(鎧きららかな騎士)なのよおおおおお!」と声を震わせすがりついて泣くのである。クラリスが喋るたびに甚だしく格調低いソープオペラになる。

 つまり「ラピュタ」のシータとまったく同じで、可憐でストイックな少女ヒロインが、吹き替えとシナリオの操作によりベタでチープで熱情的なハリウッド型ヒロインに変えてあるのだ。可憐でストイックなものが北米には受けないのかもしれんが、それにしたって人の作った映画の主人公の性格と年齢設定を変えるなんてことが、どうしてできるのだろう。理解しがたい。人の作ったものをリスペクトするという気持ちは、これを作った人々にはないのだろうかと実に不思議に思う。本当はこんなんじゃないんだといちいちMに説明もする気もせんので黙っていたが、ヒドイ。日本全国のクラリスファンが見たら泣くであろう英語版であった。

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■06/02/20(月) □ レゴの油屋
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萌は熱は下がったのだが、今日は終日鼻づまりと鼻水に苦しんだ。かなりつらい風邪で、今週は家にこもりっきりになりそうだ。かわいそうなので久々にクレイ人形・カリオストロ伯爵を作成して盛り上がる。なかなかのデキ。


 参考にするためにジブリのフィギュアなどを探していて、ものすごい作品を見つけた。レゴで作られた、「千と千尋」のお風呂ハウス(油屋)。萌と二人で、うわーーーーっと軽く10秒は歓声を上げてしまった。

 BCにも有名な「レゴマン」という人がいて、その展示をサイエンスワールドと PNE で見たことがあるのだが、どの作品もはっきりいって大量にブロックを使えるならば誰にでも作れる、単なる大型構造物に過ぎずなーんだという感じだった(その人が LEGO 社などのスポンサーを持っているのかは不明)。それに比べこの「けん・たっきい」氏の作るものは皆、すごいとしか言いようがない。こういうものを構築できる頭脳というものがイメージできないのである。

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■06/02/22(水) □ レゴ道は険しい
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 09:12 萌はやっと朝までしっかり寝てくれた。というかまだ起きてません。これで今日はもう万全だろう。

 ゆっくりと寝て体調万全となった萌は、今日は朝からレゴに励む。これまで萌はそんなにレゴを追求したことはなかったのだが、やはりこないだ見た「千と千尋」のお風呂ハウスが強烈にインスパイアリングだったのである。それにレゴの組み立てに要する手先の器用さとプラン能力も、しばらく前とは段違いであるようだ。小さな「カリオストロ伯爵のお部屋」と「クラリスのベッド」を自力で作成していた。素晴らしい。

 これから徐々にパーツを増やしてやろうと lego.com のカタログを見てみると、レゴマニアのページにあるようなお風呂とかトイレとかいったかわいいパーツや楽しい人形は全然売ってないことが判明した。現在 LEGO 社はセット品とベーシックなパーツしか作ってないらしい(少なくとも LEGO 直販サイトで売っているのはそれだけ)。なんていうことだ。さらにベーシックパーツも高く、ちょっとしたパーツを買うだけで送料が $8 もかかる。レゴを趣味として続けていくことは非常に困難な時代なのである。がっくし。

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 ホッケーでカナダがクォーターファイナルで負けてしまった。セミで負け3位決定戦でさらに負けて終わったグレッギーの長野もさびしかったが、今回はそれ以下の成績となる。はーあ。まあカナダはホッケー以外はすべて絶好調という感じで毎日メダルを量産しているのだが。

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■06/02/23(木) □ 国民を幸せにする効果
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 女子フィギュアの決勝が進んでいる。ファイナルグループに入った荒川さんと村主さんのショートプログラムは共に素晴らしかったので、期待が高まる。

 まず1位だった米国のコーエンが失敗。これで荒川さんの2位以上はほぼ決まった。しかしなんで全員のっけから難しいジャンプから演技を始めねばならんのだろう。ちょっと滑ってリズムが出たところで難しいジャンプに挑めばよかろうにと、メルといぶかしがりながら見る。そういう規定なんだろうか。

 次いで村主さん、魂がこもった演技で次々にジャンプを決めていく。何かすごいシンとしたスピリチュアルなものを感じさせる人である。演技としてはSPの方がよかったと感じるが、ここ一番で自分がやりたいことを完璧に演じきった気迫はただごとではなく、これはあるいはコーエンを抜くのではと思う。だが全然高いスコアは出ず。あれれ(※)。

(※)後から知ったが、ジャンプのポイントのあれこれに加え、反り返って足を掴むなどの技が身体能力上できないので、彼女はどうやっても高い点を取れないらしい。アンフェアな感じ。

そして荒川選手。最初のジャンプを無難にまとめたあたりは、雄大で素晴らしかったSPに比べるとさすがに緊張で足が縮まって見える。大丈夫かとハラハラする。が後半はすごかった。「ああしてジャンプを先に済ませてしまうと、こうして後半のびのびとやれるという利点はあるわよね」とMがいう。それもそうか。義務ジャンプをこなした後の残り時間は本当にため息をつくしかない、体全体でおーほほほほと笑っているかのような女王の滑りであった。素晴らしいとしか言いようがない。これでメダルの色はロシアのスルツカヤさん次第となる。こりゃいくらチャンピオンがすごくても、彼女がミスをすれば簡単にひっくり返るであろう。

 そしてロシアのスルツカヤさんは、転倒という思いがけないほどの大失敗をしてしまった。もー見てるほうは口あんぐり、き、気の毒。だがしかしそれほどの大失敗をして4年間待ち続けたであろう金を逃しても、最後まで笑っていてくれたので救われました。強い人である。オリンピックで失敗しないというのは本当に難しいことだとつくづく思わせる彼女の演技が終わり、見事荒川さんの金メダルとなった。

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 メダルがゼロだと連日日本のメディアは騒ぎ立てたが、メダルがないことへの国民のさびしさなど、いいパフォーマンスができなかった選手の悔しさに比べれば実際どうということはない。この荒川さんのような究極の技と笑顔が大会で一つでも見れれば、その国の国民は幸せだ。

 原田たち長野ベテランズの活躍を俺はやはり本当に見たかったが、失格という最低の結果で終わっても、長野でのあの輝きをもう一度という甘い夢を見せてくれた原田の挑戦には、国民を幸せにする効果はあったのだった。トリノオリンピックの英語サイトでさえも、「オリンピックのジャンプ史上に残る劇的シーンをいくつも演じてきたハラダが復活するかもしれない」と、公式練習での好調を伝えていたのである。

2006/02/10

日記「Mの日本映画週間」

「千年女優」「もののけ姫」「カナダの授業参観」ほか。
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■ 06/01/29(日) 10:15:17 □「千年女優」
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夕方Mにやっとクリスマスプレゼントの「千年女優」を見せたのだが、ちよこさんが青年を追って北海道を目指すあたりから、「そんな、北海道ったって広いじゃないのよ」などと言い出し、あんまりイメージのトランジション(推移)を楽しんでないなと感じる。別にメッセージが優れた映画というわけではないので、そこが楽しめないとどうにもならず。まあ仕方がない。

 「ナウシカ」を見ていたときにも似たことがあって、ナウシカがユパ様にオームの殻を預けて飛び立つときに、MとBTが同時に「あはは」と笑い出したのであった。なにかと思えば、ユパ様と話していたときには画面になかった崖が、ナウシカが飛ぶ瞬間に便利にも現れた、これはご都合主義であると笑っていたのだった。そんなことは日本人は考えもしないことで、説明されないものは存在しないものと同義という、カナダ人(西洋人?)の世界観をすごくよく表していると思った。

論理的じゃないものは基本的に、カナダ人には通じにくいのだと思う。論理的じゃないものをまあいいから、いわく言いがたいものも世の中にはあるから、と流していく日本の文化とその映画は、その面で受け入れられにくい。

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■ 06/01/30(月) 10:20:42 □ 続いて「もののけ姫」
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 今週はほんとMの日本映画週間となっていて、今日はTVで放送された「もののけ姫」を見終わった。「もののけ姫」は俺が見たってよく分からんところだらけで、論理一貫してないと駄目なMには最も不向きといえる。

 Mは、他の部分は楽しめたが、エボシ様のやってることが支離滅裂でぜんぜん満足できんとのことであった。自然を破壊して鉄を作り、とうてい信用できないエンペラーの軍のために森の神を撃ち取りに行き(案の定留守にしたタタラを侍に襲われ)、最後は破壊されたタタラをもう一度復興してまた鉄を作る(自然破壊)という、この人の行動のどこがタタラの人々にカリスマを感じさせているのかワケが分からないとのこと。

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 俺もそういうことに答えを与えることはできないし、この映画がことさらに好きでもないので弁護したいわけではないのだが(最初に見たときはグロであることと、宮崎監督が突如押し出した猛々しい作家性がむき出しで嫌だった)、いい機会なので聞いてみた。

「―――君たちカナダ人は、物語は常に論理一環・起承転結してないと満足できないんじゃないか? 君は日本映画を見たあと必ずそうして論理矛盾点をついてくるが、日本人はあまりそういうところを気にせんのだよ。たとえばこないだの『ナウシカ』で崖が突然出てくるシーンが象徴的で、あそこに違和感を感じる人なんて日本には絶対にいないと思う。TOEFL コースで小論文を採点されたとき、『何事も書き下して証明するまでは、ないものと見なす(※)』という英語アカデミックライティング流儀に俺はえらい徒労感を感じさせられたのだが、映画を一貫性でうんぬんするのには、それに似た英語 or 西洋 or 北米 or カナダ文化的なものを感じる」。

(※)たとえば「日本人は髪が黒い」などの常識を前提にして論文を書いてはいけなくて、「99.999999% の日本人は髪が黒い」という統計値を出さなければいけないという意味。ツーといえばカーという、「阿吽の呼吸」の対極にある考え方。

 するとMは、「またそんな『君たちカナダ人』って一般化して」と俺をいさめたが、論理に一貫性がないと自分が満足できないのは事実であるという。

「でしょ。でさ、アメリカ映画は常にすごいストーリーがハッキリして一貫性が保たれてるんだけど、日本や欧州の映画はハナシが茫洋としていて、『でもなんか良い』というのがけっこうあるんだよね」「あー分かる。でもあたしにはああいう欧州のアートな映画もダメなのよ。学生時代から友達の美大生なんかとよくそれで議論したわ。でもあたしはそういうアートが理解できて好きですなんてフリはできないから仕方がないわ」

 ということであった。そりゃそうだな。まあよしあしではなく単に感性が違うのである、何事も。

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■ 06/01/31(火) 11:56:49 □ 嵐のサイエンスワールド
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 KTHNたちと一緒にサイエンスワールドへ。KTがあまりの楽しさに暴走しており前半はほとんど一緒に遊ぶどころではなかったが、間食を食べた後からは萌は主にHNと一緒に思い切り遊べて、大ハッピーであった。長いことヘルス関連の展示になっていて萌をがっかりさせていたキッズエリアが前よりいっそう楽しいキッズエリアとして蘇っており、そこが最高であった。

 そして帰りは大雨&渋滞で大変だった。BCは俺たちが渋滞にはまっている間に、1月の史上最大月間雨量を記録したそうです。まったくよく降る。もうこうして記録が出ない限り、長雨が話題にもならんほど降るBCの冬雨。

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■ 06/02/01(水) 10:19:06 □ 容貌のよしあし
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 夜「ごくせん」。最初に漂っていた少女マンガ的なフレイバーはもうすっぱりなくなり少年マンガ一直線で、まあ多くを望まずそういうものとして楽しむしかないんだろうな。来週からは沢田が大江戸組を訪ねていくとか新たな展開があるらしいので萌とともに楽しみにしている。

 萌は沢田を「サワダはかわいいよね」といい、結婚したいなどという。沢田君はたしかに美青年だが、5歳半でも容貌のよしあしってそんなに分かるものなのかと驚く。

 いや、逆にこのくらいの年の子は、容貌のよしあしが分かり始めそれを気にしすぎるのかもしれない。今日学校に来たなにかの先生が、「ちょっとオールドだったけどかわいかったよ」などといっていた。「いやだから、かわいいかどうかは年は関係ないじゃん。グランマなんかおばあさんだけどかわいいじゃん」と言い聞かせたのだが。

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■ 06/02/04(土) 12:59:42 □ ボルトンというチーム
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 ボルトン中田の試合を数ヶ月ぶりに見る。中田が目立つシーンは、よくも悪くもない。ギリシャのウィンガー・ステリオスが素晴らしい活躍をしている。このチームはこうしてギリシャ、日本、ジャマイカ、メキシコ、イスラエル....とサッカー2流国の飛び切りの選手を見事に揃え、その全員がファイトすることによって、アーセナルみたいなビッグクラブにも対抗できる戦闘力を具現してるんだなあと実感する。中田もそのチームの一員なのであって、ここでは何も特別な存在ではないのだ。ペルージャ時代みたいに中田のパスから全軍が動くなんて王様サッカーはここでは求められていないし、たとえ求められてもその力は今はもうないのかもしれない。代表でだってそんなにワクワクすることをしてくれるわけじゃないし。

 チームの一員として戦うという意味ではやりがいはありそうだが、誰にでもできることを中田がやっているということについての空しさはぬぐえない。チームとしてもMFにボールを持たせて何かをするなんて戦術はまったく取っておらず、MF中田はボールには触らずにただただ辛抱強く相手の進行を止め、味方のチャンス(外をボールが回って最終的にゴール前にボールが流れてくる)にはプレーに絡むべく上がるという仕事以外、やれることはないのであった。後半は少しボールを持てるようになり、そうすると他のMFとは違う味わいの攻めをやってはみせるのだが、結実はせず。はあ。

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■ 06/02/06(月) 10:00:30 □ 萌の新しい先生
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 今日から産休のA先生に代わり、キンダーに新しい先生がきた。気さくな感じのおばさん先生で、彼女がドアを開けボンジュールと子供らに声をかけるのを見て、俺たち親全員の顔にぱーっと笑顔が広がったのがおかしかった。生徒が中に入ると、いい先生っぽいわね感じいいすねとみなで話しながら帰る。やっぱみんなこれまで愛想のないA先生と付き合ってきたわけで、やっと誰もが思い描くような小学校の先生がきてくれたという共通の安堵感があったのだった。

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■ 06/02/07(火) 10:05:02 □ カナダの授業参観
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 今日から萌の第3レベルのスイミングレッスン。先生は大好きなFRではなく、プリスクールの先生みたいな若い女の人だった。もちろん萌は大ハッピー、最初から絶好調である。ここまで学んだスキルを全て使って、水の中で思い切り遊んでいる。10分に一度皆で流れる周回コースに行くという大サービスまで入っていて、文句なく最高のレッスンです。

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 午後、キンダー。新しい先生マダムEは、始業ベルと同時にやって来る。やはり毎日5分、週に25分、半年で計およそ7時間、雨の日も風の日も職員室からやってこず親子を戸外で待たせ続けたのは、A先生特有のやり方だったのだ。これがなくなって実にありがたい。

今日はクラスの後、ここまでの子供の進歩を発表するという会があった。日本の授業参観の同等品かなと思ったが、Student Led Conference(生徒がリードする会議)という名の通り、先生ではなく萌が俺たちをガイドしてこれまでのさまざまなワークを見せてくれるのであった。何を見せるかを何度も練習したらしく、見事な段取り。あれこれぎっしりと書かれたワークブックやスクラップブック。壁に貼られ天井から吊るされたクラフト。そして先生の真似をしてパネルを指し示して授業の再現と続く。

家にはワークブックを持ち帰ってこなかったので知らなかったが、学校ではずいぶん勉強をしていたのである。俺が思ったよりもずっと進歩している。マダムEとも話したが、実に熱心でいい感じ。

 しかしすでにこんなにフレンチの言葉が書けるようになっているのかと頼もしく思うと同時に、普通の学校に行ってりゃおそらくこれ以上の英語の言葉が読み書きできるようになっているのに、萌たちフレンチ・エマージョン(バイリンガル化カリキュラム)の子は当分英語はお預けなんだよなとかえって気の毒になってしまう。英語が読み書きできれば生活の中でそれを使って楽しいことがどんどん増えていくのに、フレンチは大人になって何がしかの用途ができない限り、学校のクラスだけで終わるのだ。

 何年か経てば英語も普通の学校の子に追いつくカリキュラムになっているのは分かっているのだが、フレンチという言葉のために壮大な無駄をやらせているように思えて仕方がない。体操やスイミングや日本語は萌の人生にプラスしか与えていないが、フレンチは英語学習機会をスポイルして成り立っているのだから、本当にこれでいいのかと悩んでしまう。

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 萌が寝てからMにこの心配を話すと、「萌はすでにグレード1の英語の読み書きレベルを自分でやっているから、英語キンダーに入ったとしても新しく学ぶものは何もなくて退屈するだろう。つまり現時点で失っているものは何もない」とのことだった。萌はおそらく日本語の読み書きがまずできるようになって、それにより文字と音とのつながりが脳内で処理できるようになり、英語の読み書きも普通の子より進んでるのだとMは分析する。

 そうか、それでやや安心した。とりあえず当面は失うものはなく、やがてこのフレンチ・イマージョンの子の英語も普通の学校に追いつくのだから、心配するなということである。萌が習っているフレンチが俺にはサッパリ分からんから、今日のような機会にも達成度が分からずつまらんというのはあるが(Mもすでに萌のやってるフレンチで分からないところがある)、それは俺自身の問題なので我慢するしかない。Mにとっての日本語学校と同じこと。辛抱強く暖かく見守っていくべし。