2010/03/29

日記「フィギュアにおける眼福」.

「アイススレッジホッケー決勝」「ボンバーマン」「久々のクレイ焼き物」

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■10/03/20(土) □ アイススレッジホッケー決勝
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 【スレッジホッケー決勝】カナダは3位決定戦で負けたらしい。となると現在最強は明らかにグループリーグで日本を粉砕し、準決勝で3位フィンランドを下した米国である。さあ決勝。

 【P1終了】うーん、ゴール前の団子から押し込まれた失点はやや不運で仕方がないが(サッカーなら団子になれば危険を避けるために笛が鳴るが、基準が違うのだろう)、日本の攻撃の組み立てが拙い。パックを奪うのとハーフウェイまでは準決勝と同様にプレイできており、先制した米が下がってるせいもあってポゼッションは高いのに、前に運ぶ段階で簡単なパスミスが出てシュートに持っていけないのがもどかしい。そして米のFWが恐ろしく速く、奴に渡るたびにうわー止めろーと萌と大声を上げ盛り上がっております。楽しい。

 【P2終了】米はゴール前のバイタルエリアをブロックでしっかりと埋めて日本の攻撃を潰し、とんでもない能力のFWを走らせカウンターで攻めるというクレバーなゲームを完璧に展開し、まったく付け入る隙がない。日本のポゼッションは高いものの、持たされている感が強い。しかしまあ持てないよりは持たされている方がまだマシなので、とにかくこのまま諦めず根気よく攻めてシュートに結びつけないと。


決勝後、萌が日本の親戚へ書いた葉書。
「ドゥーム」とは、「どよーん」と
した感情を表す音。
 【試合終了】まるでサッカー代表と同じくハードワーキングな組織と縦への強さを武器にした非の打ち所のない米チームが(スレッジホッケーは通常ホッケーよりもお国柄が出て面白い)、先制点を取り残り時間を完璧にプレイし、隙を見せてはくれなかった。しかし米が追加点を取りにきたのを耐えに耐え、足(腕か)が止まった米をあと一歩まで追い詰めたのだから素晴らしい。「(決勝の残り2分を切ったあの時点のあの程度のファウルでパワープレイを取るなんて)これは酷だ」とカナダアナウンサーもつぶやいた最後のファウルまでは、日本も本当によくやったと思う。攻守に獅子奮迅の遠藤は、「こいつは本当に信じられないアスリートだ!」と絶賛されていた。パワープレイで2点目が押し込まれ力尽きたときには、萌はMの肩で少し泣いていた。スポーツの喜びと悲しさを思い知っている9歳の春です。

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 しかしアイススレッジホッケーの面白さを無知な大衆である俺に教えてくれ、ワンサイドゲームになるかもという下馬評と心配を覆し存分に見ごたえのあるファイナルをやってくれた日本チームには感謝したい。北京オリンピック女子サッカー以来の興奮を味わえた、いい試合でした。

 気がつけば日本は知らぬ間にスキーで金も取っていて、メダル11個で6位と素晴らしい成績になっていた。通常オリンピックでも自国有望種目以外は国がまったく力を入れていないという韓国(1個)・中国(0個)とは、こうして草の根で差がつくんだな。日本のスポーツは民本的だ。

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■10/03/25(木) □ ボンバーマン
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 WLが来る。天気が悪いのでボンバーマンをやらせた。古いゲームなので彼は半信半疑な感じで始めたが、数分でやることがわかると狙い通りガッチリはまる。しかしボンバーマンはクイックシンキングがキモなゲームで、モンスターが迫り逃げ道が限られているみたいな複数のファクターを同時に判断するような場面になると、子供は思考停止してすぐにやられてしまう。

 そこでの脳の使い方のスイッチが入らずバトルで負け続け、落ち込み始めたWLが気の毒なので萌に目配せすると、萌は「じゃあチームでモンスターと戦おう」と別のモードにしてくれた。これで2人で協力して面を進めボス敵を倒し、「Yes、俺たちはいいチームだぜ」とWLが超盛り上がる。よしよし。やっぱガールズよりもWLらボーイズの方が単純でよい。

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 【フィギュア世界選手権・男子】高橋が競技史上初のクアドフリップというジャンプを跳んで、カナダ解説が「オーマイゴ! 初めて見たよ! 両足着地だしクリーンじゃなかったが、しかしクールだ!」と興奮する。オリンピックほどのパッションとコンディションがないのは明らかな高橋だが、格の違う勝利であった。ブライアン・ジュベールという人はルックスと4回転で人気があるらしいが、カンフー映画に出てくる白人スターがキレがなくてブルース・リーやジャッキー・チェンの引き立て役にしかなれないように、今日ここでは高橋の敵ではなかったのである。

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■10/03/26(金) □ 久々のクレイ焼き物
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 春休み初日、萌は急にクレイ(粘土焼き物)をやりたいという。今読んでるファンタジー本に出てくるライティング(書き物をする)ドラゴンを作りたいのだという。


ライティングドラゴン。
ノートとペンを持ってます。
 で完成がこれです。萌がこれまで作った中で最もトータルデザインに優れたものができたので、焼き中に形が崩れないようアルミ箔で前後左右をサポートしてオーブンに投入。そしていつもより低温で時間をかけ、まめにチェックしながら細心の注意を払って焼き完成。


念願のロボット兵
 そして俺は1年前にボディを作ったまま放ってあったロボット兵に腕と顔をつけて完成させた。これが実にいいデキになり、萌と抱き合って喜んでしまいました。何歳になっても細工物は面白い。萌がこの楽しみを思い出してくれてよかった。

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 【フィギュア女子SP】浅田真央さんはフィジカルレベル的にオリンピックより落ちており(やせた?)、ジャンプの切れにそのへんの影響が感じられるが、しかしその分と言っていいのかどうか肩の力が抜け後半のステップパートは実によかった。

 カナダのTV解説陣はこの浅田選手のプログラムを、「僕らがシーズン当初これがよくないと言っていたのを申し訳なく思う、見るたびに好きになっていくよ」「この音楽に圧倒されずついにモノにしてしまったわよね」と言っていたが、俺もオリンピック時よりずっとこの振り付けがいいなと感じる。スピードと切れはピークになくても、綱渡り的なテンションが落ちている分柔らかみがうまく表現されている。このSPはキム選手のうっふん007より絶対にいいなと改めて思った。むろんジャッジがつける点は違うと誰もが覚悟しているが。

 大きなミスはまったくなく会場も存分に湧いていたが、しかしトリプルアクセルで回転不足が取られ非常に低いスコアに終わる。カナダのTV解説がスローで見ても気づかないほどのミスなのに、回転不足だとマイナス5とかの爆落ちになるのだそうで、これがフィギュアファンのブログにさんざ出てきた浅田選手の大差負けパターンだ。げんなり。

 続く長洲未来選手がまたも溌剌とした演技を決め、浅田選手を抜いてしまう。頂点を争わなかった分長洲選手のほうがバンクーバーでのダメージが少ないようで、絶品のスピンをはじめ持ち味の切れが随所に出ていたが、しかしスピン以外は浅田選手をどこかで上回ったとも思えないのにいきなり逆転とは。浅田選手のトリプルアクセル減点(結局-5.8点とのこと; 不足というか実は回りすぎらしい)だけでひっくり返ってしまったとしか考えようがない。

 まったくくだらん減点制度だ......と思っているとキム選手が驚きのミス連発。スピンでつまづき、単なる足上げ滑走でバランスを崩すなど、これは試合放棄するのではないかと思うようなヨタヨタになってしまい、フィニッシュして観客に挨拶をする前に両手を広げフラストレーションを示すなど態度も悪く(あれは相撲なら戒告モノだろう)、なんと7位。あらら。オリンピック後にもう一勝負とは、かくも難しいことなのだ。こんな状態で勝った高橋はえらいし、回転不足などという些末ごと以外は完璧に観客を楽しませた浅田選手もアスリートの鏡だな。

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■10/03/27(土) □ フィギュアにおける眼福
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◆フィギュア世界選手権・女子フリー
【安藤美姫】オリンピック時は難解なつまらんプログラムだと思ったが、今日はリラックスしていたのか途中の休止ポーズではっとするほど美しい笑顔が見られ、そこからの躍動には胸が踊った。こんなに魅力がある人だったのかと驚いて巻き戻し、後半を見直してしまった。オリンピックだけのにわかファン(俺)には本当のところはわからないものだの122ポイント。

【キム・ユナ】昨日のあの状態から持ち直すのは不可能かと思ったが、途中の転倒まではさすがと唸るしかない演技。オリンピック時より1つ1つの技の鮮やかさが明らかに落ちているが、こんな状態でここまでできるのだから五輪王者はまことに伊達ではないなと逆に感嘆させられた。

 ―――がしかしそれと勝負は別もので、130ポイントというのはなんなのか。試合にコンディションをちゃんと上げてこず大きなミスを2つした選手にこんな高得点をつけては、他の選手に非礼極まりないではないか。しかもその非礼スコアを見た本人の態度まで「Not bad (なんだ、悪くないじゃない)」と、まことに高飛車女王だったのである(嘆息)。

【浅田真央】切れがない分五輪よりかえってよかったSPよりもフィジカルの不足が目立つが、明らかなミスはなく演技終了。俺はやはりこの「鐘」のどこにも良さを見いだせないが、とにかく「SP・FSともクリーンに決める」という彼女のささやかな願いが叶い、納得のすっきりした表情でシーズンを終えられてよかった。このプログラムに否定的なカナダ解説者も彼女が最後のスピンに入ると、「....これは....多分今年私が見たなかでベストだわ」と押し出されるようにつぶやく。それだけの説得力があった。

 しかしスコアは129ポイント。明確なミスがあった自己のオリンピック時に及ばず、なんと転んだキム選手にも負けている。浅田選手の顔からは何の感情も読み取れない。能面のようなあの無表情をどう受け取ったらいいのだろう。キム選手の高飛車女王レスポンスと浅田選手のこの表情を、ジャッジはきちんと胸に刻んでほしい。

【長洲未来】前半だけでジャンプのミスが小中1回ずつあり、後半は疲れてへろへろになり105、7位にまで転落。酷だが勝負は致し方なし。というわけで結局キム選手が2位になってしまった。浅田選手とのポイント差は1詰まって7。試合放棄に近いSPに加えFSで2つの大ミスをしても浅田選手以外の選手は彼女に勝てないというのは、いくらなんでもなんなのだろう。

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 浅田選手の「鐘」はつまらない。曲や振り付けが凡庸で印象に残らない人は他にも多いが、「鐘」は選手の素の魅力を生かさない度合いで、今日放送があった全選手のプログラム中もっとも大きく才能をスポイルするものではないかと思う。

 大会を通じいろんな選手のさまざまな瞬間が記憶に残る。たとえばレピスト選手の冒頭のスローからエッジを効かせた急発進加速→高速3x3ジャンプは浅田3A2Tより美しいと思うし、彼女や(はるかに格下の)ファヌフ選手のまったりとした動きから急転体がひるがえるような様には、なんともいえぬ味わいを感じる。安藤選手の緩急と歓喜の表現もよかった。そういう女性らしい柔らかみを持つ美しさを徹底的に練り頂点を極めたのがすなわち、キム選手なわけである。浅田ファンはストイックなのかそれを媚だと嫌うようだが、「うっふん」には無論ゲンナリするけれど(今回SPのうっふんはまことに空虚だった)、女性スケーターの動作から溢れ出る優美さは自然な眼福だろう。浅田「鐘」はその眼福をなぜか排除し、何かとてつもないものへと突き進む。

 前半はカナダ解説者も指摘した通りただジャンプのためにリンクを往復し、後半は何事かに取り乱した様子で腕を振り回しステップを踏みぐるぐると回る。あのビンタと激情演技で何かを表現したいのはわかるが、俺はそれがなんなのかに興味が湧かないし、それはその演技が美しいとも、それが表そうとする何事かがきれいだろうとも思わないからである。カナダ解説者は安藤選手のSP時に、「日本女子選手はリンクの外では明るくラブリイな女の子なのに、氷上ではこういうダークで重くネガティブな音楽と苦闘する。まるで合ってない」と残念がっていたが、これが「鐘」を愛せない人々の素朴な感想だろう。ワカンナイ人にはワカンナイ、これはどうしようもないことで、そういう価値観に左右されすぎるものを多くの人が見る競技の場へ持ってくること自体に意義を感じない。

 五輪も今回も俺はつらくて途中で見るのをやめたくなった。五輪時はミスが出て負けが確定したから見るのがつらいのかと思ったが、今回は勝利が間違いなくてもしんどさは同等だった。演技が終わり彼女がほっと息を抜きガッツポーズをした瞬間が、見ていて一番カタルシスを感じる瞬間だった。

 ―――しかしである。こういう不満はファンや批評家が持つものであり、現在の異常な足かせ採点システムを作った当のスケート協会は、選手の努力と達成に対しきちんとしたスコアで報いなければならない。それしか道義は立たないではないか。ルールの厳格化で飛べるジャンプを減らすなどさまざまな足かせを与えておいて、それを律儀にクリアしてもまだまっとうな点をくれない。あげくに目下のコンディションでも「クリーン」な演技をしてみせた高潔な浅田選手に、転倒したキム選手より低いスコアを与えるなんて、これはもう侮辱と呼ぶしかない。得点を見た浅田選手のあの無表情は、もうどう感じていいのかもわからないという呆然だったのだろう。

 俺には「鐘」の良さはわからない。しかしこの日の彼女の演技が誰よりも素晴らしかったことに疑いはない。それを正当に評価してやらない採点システムは、悲しすぎるのである。

2010/03/19

日記「鳥肌のアイススレッジホッケー」

「鄭大世が日本にほしかった」「全盛期の中田のような」ほか。

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■10/03/12(金) □ イモリ水槽にも春
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 イモリ水槽を4L(1/3)換水する。前の全換水からもう 39 日だが、水質が安定し一向にぬめりが出てこない。魚たちが毎日大量に食べ大量に糞をしてるわけだが、ぬめりが出ないということは汚れが分解されているということで、バクテリアの活性が高まっているようだ。この水は大事にしないとな。


そり返ってこっちを見てるんです。
 水温一定でも春がきたのがわかるのか、ここ1週間ほどイモリたちが活発になってきた。水槽ガラスに指をつけると寄ってくる。かわいい :-)。ノボリ・ジムシーはフェイクプラントの葉っぱが好きで、葉っぱに半ば体を隠して過ごしていることが多い。そして俺が覗き込むとエサかなと首をえらい急角度でグイっともたげる。イモリはああしないと角度的に上が見えないのだろうか。これがまたかわいいのである。

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■10/03/13(土) □ 鄭大世が日本にほしかった
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 【Jリーグ・名古屋 VS 川崎】という好カードが TV Japan で放送、前半終了 1-2。なかなか面白い試合だが、しかしお目当ての玉田はJリーグでも今ひとつ真価を発揮していない。勝負機会が訪れるとスピード勝負に持ち込み、半身振り切ってシュートまでは行けるがきっちりミートしないのである。昔のアジアカップの映像では速さではなく緩急で敵を振り回せるところに天賦の才を感じたのだが(※)、代表でもJリーグでも同程度の切れとなると、タマちゃんの緩急と方向転換力はもう出ないのかもしれない。方向転換力で川崎のレナチーニョあたりに劣る選手が、WCでチームに違いをもたらせるとは思えなくなる。
(※)俺はCロナウドみたいにフィジカルに相手を上回り点を取ってしまう選手には感動しないが、タイミングで相手の裏を取れる人間には心底天才を感じ感服する。

 そして鄭大世が強さと反転力と集中力を示す素晴らしい決勝ゴール。ああテセが日本代表を選んでくれていたらば。日本協会はテセを勧誘しなかったんだろうか。日本育ちで現在最強のFWではないか。

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■10/03/16(火) □ 全盛期の中田のような
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 CLチェルシー・インテルを見ていると、本田のチームとセビージャ戦のダイジェストが入る。1アシスト1ゴール。見事。先週に続きカナダ Sponet のダイジェストで本田の名前が呼ばれるのは気持ちよかった。

 ゴールもよかったが、FWとのシンプルなパス交換で崩し自分のシュートまで行ったシーンと、それに続くアシストのプレイが実に素晴らしかった。代表で見る本田はとにかくボールをゴリゴリ持ち出しシュートを打つオレオレ野郎というイメージだが、高いレベルではあんな愚直勝負ではシュートなど打てんとちゃんとわかっているらしい。素早くシンプルなタッチと動きで味方を使い、敵の意表を突き崩してしまうところがなんとも気持ちがいい。プレイの判断と実行が早いので、欧州一流のDF陣が本田の手の先が読めないのである。本田があんなセンスを持った選手だったとは。まるで中田英寿ではないか。

 この2つのプレイではどちらもFWはフリーではなかったのだが、「ここでボールを渡せばあいつが仕事をできる」という瞬間が彼には見えるのだろう。ペルージャ時代の中田が乏しい人材で美しい攻撃を展開できたのは、このように自ら厳しい場所で勝負しつつ味方を生かすというセンスが抜群に優れていたからで、彼がひらめきと技術をシンプルに発揮してラパイッチを操れば、どんな強いチームの守備陣でも破れるというカルチョの夢がそこにあったのである。

 これはもしかすると日本は、全員が猛プレスしやがて力尽きるだけの芸のないチームではなくて、全盛期の中田英寿のような選手を核としたチームでWCに行けるのかもしれない。本田は中田ほどプレイがエレガントでスマートでスター性のある選手ではないが、2002 年でもすでに代表酷使・怪我等でベストの状態になかった中田よりもフレッシュな状態でWCを迎えられそうだし。セリエに中田がいた頃の胸の高鳴りがじわじわと甦ってきた。

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■10/03/18(木) □ 鳥肌のアイススレッジホッケー
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 【スレッジホッケー・VS カナダ】日本はセミに進めれば万歳だと言っていたので、ここはおとといのノルウェーのごとくカナダにボコボコに粉砕されるのだろうと思い期待もせずに 10 分過ぎから見始めたが、スコアはなんとまだ0-0で、なんとなんと日本がパスワークでちゃんとゲームを作っている。驚きつつ数分試合を見つめて、そうかとその理由がわかった。スレッジホッケーは普通のホッケーほどにはフィジカルコンタクトで差が出ないんだ。ならば日本得意の組織プレイがカナダを上回っても不思議はないな。これは面白いと真剣に見始める。パワープレイで圧力に抗し切れず1失点で1P終了、しかしこれは勝負になるぞ。

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 【P2】パワーの違いがプレスの差となってだんだん日本が押し込まれてきた。プレスに負けて苦し紛れの縦パスを出すとパックを失い悪循環で苦しくなるのはサッカーと同じなので、ショートパスでポゼッションを上げてくれ。しかし選手の滑りが遅い分技術と戦術が鮮明に見えて、こりゃ普通のホッケーより面白いな。普通のホッケーほどフィジカル差で優劣が決まらないのが面白いというか、カナダが普通のホッケーで強いのは、単にフィジカルが強いからではないかと思えてきた(笑)。

 長時間の猛攻に耐え、カナダのペースが落ちたところでパワープレイから全員守備と全員攻撃でラッシュを仕掛け、きれいなインターセプトから日本が追いつく。よし。あれだけ守備に頑張った後の攻撃で点が取れないときつかったので、これは勝機があるぞ。ここで一息つきたい。その後のカナダの猛攻もしのいで、ペースを取り戻しイーブンのまま2P終了。日本は落ち着いている。カナダは焦っている。大アップセット(番狂わせ)の匂いがしてきた。カナダ放送の解説にも焦りが見えます。しかし日本はグループリーグ最終戦でステーツにボロ負けしたそうだが、それはこの試合のために捨てたということなのだろうか。信じられないほどいいホッケーをしている。

 「日本は見たことがないほどきついフィジカルトレーニングを昨日やっており、それがコンタクトプレイに生きている。フィジカルで勝るカナダに臆すことなくぶつかっている」とカナダ解説。それに加え、岡田ジャパン的ショートパス全員ホッケーが効いてると私は思う。組織プレイでは明らかに日本が優っている。カナダは個の力で勝る部分で決めてしまおうと選手間が離れがちで、日本はその間隙を縫ってのパスワークが小気味よく決まる。こぼれ球を拾う率とインターセプト率も非常に高い。

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 【P3】組織プレイの日本、個人パワーのカナダで完全に互角なラストピリオド。2ピリオドからカナダにラフプレイが増え、日本のパワープレイが頻発している。それが日本ペースを生んでいるが、だがしかし日本選手も疲れており、コンタクトプレイで相当なダメージも負っている。日本がやや優勢だがお互いフィニッシュまではつながっていない展開で残り5分。

 残り2分、カナダが最後のラッシュを仕掛け、疲れが激しい日本がギリギリまで押し込まれてきた。クリーンなショットは許していないが、混戦からポロっと押し込まれるリスクは非常に高い。これはPKに持ち込むしか勝ち目はないかもしれない。―――と、フェイスオフから突如日本のカウンターアタック、前がかりになったカナダはゴール前に1人しかおらず2対1になり、決めた―――っ! 鳥肌! スレッジの刃の下を通すトリッキーなアシストからの完璧なシュート、ビューティフル!

 そしてカナダが5人で全員攻撃となった無人のゴールにもう1ゴール。うわー鳥肌(笑)。試合終了。大泣きの日本選手たち。やっ・た。やってくれたわ、こいつら。えらい。

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 カナダの解説は大ショックを受けた顔で、カナダに規律が乏しく(ラフプレイによる)パワープレイを与えすぎた、そして日本のGKが人生最高のゲームをしたといっているが、シュート数でカナダが大きく上回ったという類のアップセットではないのだから、GKを日本の勝因に上げるのは当たっていない。パスとインターセプトで上回った日本の組織力の勝利だろう。

 しかし面白かった。この種目はマジで普通のホッケーより面白いと思う。日本が強かったからではなくて、サッカーと同等のプレイスピードやフィジカルx組織バランスになり、パスワークと戦術が楽しめるのがいい。普通のホッケーは狭いリンクに対し選手たちの身体能力が高すぎて、大男たちが猛烈に往復しはじき飛ばし合ってるようにしか見えないのである(パックすらも速すぎて見えないし)。スレッジホッケーではボディチェックもスピードと体重で敵をつぶすのではなく、当たる角度で敵の動きを止めパックのコントロールを奪うという技術の競り合いになり、実に面白い。


Go for the gold medal!
 放課後校庭で「萌、日本がカナダに勝っちゃったよ」と伝えると、「What!?」と萌は狂喜し、大声で友達にニュースを伝える。「ちょっとちょっと、みんなカナダを応援してるんだから、日本が勝ったと大喜びするのはちょっとまずいぞ」と抑えたが、萌の興奮は止めようもなかった。残念なのはこれが昼間の放送だったことで、夕方だったら友達の多くがリアルタイムで見て、萌は鼻高々だっただろうな :-)。

2010/03/10

日記「She Shall be Released」

「フィギュアスケートファン恐るべし」「フィンケ監督の芸のなさ」「日加メンタリティ」ほか

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■10/03/01(月) □ フィギュアスケートファン恐るべし
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 「MURMUR 別館」に続いて Mizumizu さんという、これまたすごいフィギュアスケートファンのブログが見つかってしまった。JリーグとWC94でサッカーに夢中になった頃、ニフティサーブでファン評論の数々を読んでサッカーファンはなんてインテリジェントなんだと驚いたが、フィギュアファンの知性にもドギモを抜かれる。他のどんなスポーツにも負けないほど深くシャープな評論がなされている分野なのだった。

 この Mizumizu さんの記事は冷徹な技術と芸術性評論で、ビデオテープで細かく分析できる演技最長3分ほどのスポーツならではといえる顕微鏡分析(―――と同時にそうした顕微鏡分析による減点システムが自由と美をないがしろにすることへの猛烈な批判!―――)に満ちており唸らされる。キムヨナ選手や浅田真央選手の長所短所を解説した上で、浅田安藤に勝たせないためにキム選手の点がどうやって上げられているかを丁寧に解析している。
この2人にはそれぞれの強さと弱さがある。今のルールがキム選手を過剰に評価し、浅田選手の欠点を徹底的にマイナスにしてくるだけだ。ルール策定でそうなっているのだから、ジャッジはそのとおりに採点する。それにジャッジ団は事前に意識合わせをして採点するから、そこで何かしらの調整が行われる。それだけの話だ。(「いくら完成度を高めても点がもらえない、ジョニー・ウィアー選手」(2010年02月27日))

レベル取りを考えると結局みな、同じようなことをするようになるんですね。そうした要求事項をこなすのにいっぱいいっぱいになって、1人1人の個性を生かした芸術性が消えていく。たとえば、ライザチェックはシーズン初めはかなり密度の濃い、難しいプログラムにしてました。でも、それだと今の採点だと点がでない。逆に減点ポイントが増えちゃうんでしょうね。なんでかなりプログラムをスカスカにして、エレメンツの条件を満たすことに注力したら、点がのびてきました。すぐに対応させた彼も素晴らしいですが…
よくキム選手の演技について、「いつも同じように見える」「つまらない」とメールをくださる方がいます。(中略)つまり今のシステムで点を出そうとすると、どうしてもああいった演技になるんですね。ところがファンは、個性的な美しい振付を見たいと思っている。フィギュアの演技自体が全体的に「つまらなくなった」と言う人も多い。どちらも同じ背景があります。あれこれ詰め込んだエレメンツのレベル取りのための要件を満たすための演技になってしまうんですね。(「なぜ「つまらない」演技の点が高いのか」(2009年04月03日))

 こうした技術解説を読んで、ライサチェクを退屈と感じ、キム選手をライサチェクの切れ向上版と俺が感じたのはそのあたりだったんだなあと思う。この2人は「減点が出にくい技を選び、技を少なめにして時間と体力に余裕のあるプログラムにして失敗を防ぎ、完璧に磨き上げスコアを上げるという」方法で成功したわけである。だから変化に乏しく退屈だと俺も感じたのだ。こうして微に入る分析を読めばキム選手の銀河得点にはロビー活動と過大評価も強力に作用していたとしか考えられず、俺はそれも感じ取ったのである。

 惜しむらくは浅田選手の滑りにもこの状況を打ち破るだけの力はなかったのだが、しかしこの2つのサイトでルールの変遷と状況変化を追えば、彼女(と安藤選手)の得意技がルールによりガリガリと削られていく様が見て取れ、同情の余地は大いにあるとわかる(ジャンプの回転不足ジャッジが厳しすぎて一昨年まで使えた3+3が使えず、あのいかにもショボイ3+2にせざるを得なかったなどなど)。こんな異常なルールが今後も続くはずがなく、浅田選手にとってこれから状況は間違いなくよくなるはずだ。

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■10/03/04(木) □ これがウオッカの見納めかもしれない
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 【ドバイ・マクトゥームチャレンジ】ウオッカが出るので日時をチェックして Youtube で見たのだが、大外を豪快に来た馬は一緒に行ったレッドディザイアだった。ウオッカは好位からまったく伸びず。よく見ると伸びないとわかった時点で騎手(ルメール)が無理に追わずに馬なりで走らせている。もしレースに行ってもウオッカに闘争心が出ないなら、無理はさせずここで(ドバイWCはキャンセルして)引退と陣営は決めているのかもしれない。

 もうほんとそれでまったく構わないです、ファンは。チャンピオンシップはレッドディザイアが戦ってくれる。あれもまったく素晴らしい馬だ。日本の優れたチャンピオンホースなら、つまり十年に一度の名馬クラスではなくても、世界トップレベルでしっかりと走れるだろう。

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■10/03/06(土) □ フィンケ監督の芸のなさ
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 【Jリーグ開幕:鹿島-浦和】興梠がファーストタッチをゴールしてしまった。際どいクロスをトラップせずそのまま打つところがJの規格外にいけそうな興梠の意外性で、素晴らしい。坪井とGKは彼がダイレクトで打つとは思っておらず対処できなかったのである。代表では岡崎がいるので出番がないまま落ちてしまうだろうが、もう少しチャンスを与えてみてほしかった。

 しかしフィンケ浦和はオフがあったのに去年から何も進歩してないのでびっくりした。柏木はいい選手だが、エスクデロという一本調子な選手がいることで何かをやろうとするたびに読まれ潰されてしまう。前がかりな選手が多い中後ろからボールを散らしていたゲームメーカー闘莉王はもういないし。結局みんな平均以上にうまいがちっともシュートが打てないし反撃にはもろいという、去年と同じ浦和なのである。フィンケ監督のこの芸のなさには日本中がびっくりしてるだろう。浦和はどうするつもりなんだろう。

【ウオッカ引退】あ。やはり。鼻出血だそうだ。ルメールが直線追ってなかったのは、おかしいと感じてのことだったのだろう。とにかく大事に至らなくてよかった。考えたくはなくても、同じドバイで悲運にあったホクトベガのことが頭をよぎって仕方がなかったのである。お疲れさまでした、ほんとに。

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■10/03/07(日) □ 日加メンタリティ
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 夜、恒例の「YAWARA」を萌に読む。しかし最近マンガを読んでやってると、俺の日本語発音がえらい弱まっており情けない。もともと声が小さくカツゼツは悪いが、「全日本女子柔道大会選手権」みたいな長い単語が入ると「ぜんにほんジョジュジョ」ともつれてしまう。英語の発音はここ 10 年くらいよくも悪くもなってないと思うが、日本語のほうは萌との語彙少なめ英語交じり会話しか喋る機会が少ないので、こういう普段発音することがない堅い熟語の発音が特に劣化しているようだ。うーむ。

 まあ日本に住んでいても本を音読するなんて機会はないし、在宅で仕事をしていたら似たような環境になるよなあ。意識して口の筋肉を動かすよう、「アエイウエオアオ」みたいな運動をやっていこう。それにこうして読んでやること自体が俺の訓練となる。考えてみれば雑誌「おひさま」を読まなくなってもう2~3年、俺が萌に何かを読んでやったことなどないからな。

 最近萌が英語で話していると、俺はJDその他のクラスメイトと喋っているかのような気がする。内容よりもスタイルが勝った、レトリックをべらべらべらと喋ることが多い。クールであるべく何事も断定口調になるところに虚勢があり、ディズニーチャンネルのハナモンタナその他にも似ている。おいおい日本語を喋ってくれと指摘すると元の萌に戻るのだが、カナダの小学校にいるとこれはもうどうしようもないのだろうか。学校が違うKTたちにも似た傾向はあるしなー。

 日本語の語彙が増えないことには、表現法として英語が圧倒的優位になりメンタリティも英語化して行く一方なので、こうしてマンガやゲームの力を借りて日本語力を伸ばしていきたい。TV Japan がここ1年ほど面白い番組をやってくれないのが残念。

 萌はこないだのオリンピックもあって「自分は日本人」という強い自我があるが、別に日本人でなくてもいいから、誰かみたいではなく彼女らしくビューティフルな精神を持っていてほしいのだ。

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■10/03/08(月) □ She Shall be Released
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 今日は掃除&オフ。そして Mizumizu さんのフィギュア評論をついに完読となる。最初に見つけた「MURMUR 別館」さんもスケート愛にあふれ素晴らしかったが、微に入り細に入る技術探求がなされた Mizumizu さんブログはテキストだけで 1.3MB もあり、これは書籍1冊では済まないほどの量だろう。すばらしい。フィギュア評論界の武藤さんだ。

 この2つのサイトのおかげさまで、過去4年ほどのフィギュア界の流れがばっちりわかり実に面白かった。キム選手は引退するそうだが、今後改正されるだろうルール下で浅田選手たちと彼女が競う機会がなくなるのは残念ではあるものの、やることをやり尽くし頂点に達したわけでその引退を惜しむ声はさほど上がらないんじゃないかと思う。あのエキジビジョンの「After the Thrill is Gone」といった感じの静かな演技と会場の反応を見てもそう思った。それと違い浅田選手はエキジビジョンを見ただけで、縛られているものから解放されればもっと素晴らしいものが見せてもらえるなと誰にでも分かる。

 Youtube で伊藤みどり選手のカルガリーオリンピックの演技が見つかり、これがすごかった。ダブルのジャンプで1発目着地に失敗(ステップアウト)しても躊躇なく2発目を飛び、その着地も同様に失敗してるのにもうどうにも止まらないという勢いで一瞬もためらわず次の技へと突き進んでいく。アメリカの解説者が楽しすぎて大笑いし、観客総立ち、みどり感激大泣きという素晴らしい演技だった。

 浅田選手が現役の間に、こういう演技が見られたらと願う。あの人の才能と美が自然に発露され、人々に楽しまれ、そして正当に評価されますように。Any day now, any day now, she shall be released。

2010/03/01

日記「真央とヨナへの違和感」

「世界最高得点の謎」「終わっちゃうのって悲しいよね」ほか。

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■10/02/25(木) □ 真央とヨナへの違和感
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快適なオリンピック臨時トレインで
 【オリンピックムード味わいツアー#2】今度はオリンピック関連エキジビジョンが3つほどあるグランヴィル・アイランドへ行った。なんと今はうちの近所のコキットラム駅からトレイン2本とオリンピック臨時シャトルトレインを乗り継ぎ、グランヴィルまで行けるようになっているのである。こりゃまるで東京じゃないか、すごいなと乗り継ぎのたびに感動しラクラクと到着。やっぱ電車はいいよなー。オリンピックを機にこれほど素晴らしいパブリックトランスポートができているとは、恐れ入りました。萌はカナダ応援帽子をかぶっています。

 グランヴィルは大賑わいだったが、各国パビリオン的なものは結局入れず、1時間半も並んでMが目を付けていた「イーストコースト館」に入る。これは東海岸の料理学校生徒が作ったシーフード味見のみと実はしょぼかったのだが、このムール貝蒸し煮とチャウダーがめっちゃうまかった。調味料が何も入ってない完璧にシーフードだけで出たダシが素晴らしく、昆布の入ってない鍋という感じの絶妙な味がする。料理学校生徒にこんなにうまいものがつくれるのに、なんでレストランはハズレが多いのだろう。

 次に行ったのは「フランス語館」で、これはもちろん萌のフランス語を試すという目的で入ったのだ。入るやいなややや緊張しつつも決然とした面持ちで萌はブースの女の子にフランス語で話しかける。そしてペラペラと長時間会話を楽しんでしまうのだから驚いた。難しい語彙はおそらくないのだろうが、英語・日本語とまったく同じように無問題で喋っている。うーん、すごい。俺とMは内容がチンプンカンプンで横で聞いてるだけ。

 萌は自分がフレンチを喋れること、それがこうしてフランス語圏で完全に通じることに大いなる喜びを感じ、次々にブースに飛び込み「このブースはなんなんですか?」と会話をして景品をもらってくる。ついに全ブースを制覇し、ポスターやらバッジやら帽子やらを大量にゲットしました。フランス語科(※)に萌が入りよかったと思ったことは俺は正直あまりないのだが(何をやってるか課題がわからんので嫌だと思うことは多々ある)、実地でここまで喋れるのを目の当たりにすると、その効果のすごさを認めざるを得ない。
(※)教室では英語を喋ってはいけないという、カナダ公立学校のフレンチエマージョン(フランス語漬け)プログラム。


ダウンタウンの賑わい。萌は
フランス語館でもらった帽子を
かぶってます。
 帰りはトレインを1つ前で降り、バンクーバーのオリンピックホコ天の雑踏を歩き帰ってきた。街頭芸人やらイベントテントやらで盛り上がっておりお祭りムードで楽しい。例によってピンバッジの屋台が大量に出てるので、萌はこういうの欲しくないのと聞くと、「ほしい!」と目の色を変えて物色し、日本の旗がついてるやつを苦労して見つけ購入。これはいい思い出になるだろう。

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◆女子フィギュアスケート・フリー
【安藤美姫】何がポイントなのかよくわからないアラビア風を粛々と遂行し、本人も客もこの演目の何を楽しめばいいのかわからんという感じで終わる。カナダ解説もダイナミズムの不足を指摘し、「ミキは慎重にやりすぎている。慎重にやって、上位が落ちるのを待つという戦略なのかしら」とコメント。そういう計算ずくをするメンタリティが日本女子選手にあるとは思えず、観衆を沸かせられなかった振付・コーチ選択の失敗としか言いようがない。

【キムヨナ】連続ジャンプを笑顔のまま軽々と決めていく。短い助走でダブルを完璧に回ってしまうところやエッジをきかせくるりと弧を描いたりする優雅さが素晴らしいが、「オリンピック史上最高のフリー演技の一つでしょう!」とアナウンサーが連呼するのには違和感を感じて仕方がない。あっさり淡白な味わいで、そんなに特別なものを見ているとは感じられないのだ。単にうまいから余裕で苦もなくやってるように見え、ゆえに全身全霊を傾けた演技に見えないだけのことかな。このプログラムの地味さはコーチが男だからというのもあるのだろうか。

 「そんなにすごいかなあ」と俺がつぶやくと解説を聞いたMが、「エッジのイン・アウトとか、素人には分からない細かいところが全部ポイントになって差がついてるのよ」という。そりゃそうなんだろうが、素人に見えないものが本当に大切な美なのだろうか。カナダ人は何事も前評判を鵜呑みにするところがある(俺は逆に前評判を疑うクセがあるが)。キムさんはコーチがカナダ人の元悲運の人気スケーターで、本人も英語が喋れるというところもポイントが高いのだろう。

 ヨナさんの演技が終わり、「史上最高得点! 世界新記録だ!」と大騒ぎになる。そんな新記録って言ったってフィギュアは採点システムがコロコロ変わるわけで、数字で盛り上がる種目ではない(※)。スコアはともかく小味が端々に効いて見事でしたというのが俺の感想。
(※)翌日の英字記事で、「もしヨナが後半ただ8の字を描いて滑っていたとしても、スコア上はヨナが浅田を上回っていたことになる」「オーサーコーチは、『あれほど完璧だとそういうスコアが出ることもあるんだよ...』と語尾を濁した」という記事があった。それくらいインフレの激しかったスコアだということだろう。

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【浅田真央】キム様万歳と大騒ぎになってる中リンクへ登場。もう逆転なんてあり得ない点差になってるわけで、とにかくやれることをすべてやりきってほしい。SP同様緊張の面持ちながら果敢にアタックする浅田さん。中盤まではヨナひいきの解説までもが「彼女は最後まで諦めず戦い抜く覚悟だわ」と嘆声をもらすほどの演技を見せていたのだが、その直後のトリプルで回転が足りず、次のジャンプで氷に足を引っ掛けてしまい万事休すとなる。力尽きた。こうなると残りの時間はどう熱を込めて演技しようとも過剰な荘厳さだけが重く響き、見ていてつらくなってくる。フィニッシュでの悲愴な表情は実に悲しかった。

 どう見ても本人の資質になさそうなこういう鬼気悲壮激情を演じるというのはしかし、どうなんだろう。あれほどイノセントな魅力にあふれた少女が、生まれてこの方プライベートでしたことがなさそうな表情と感情を演技のために全身にまとっているわけで、フィギュアスケートというものにそこまで演劇的要素を込めるべきものなのかどうかよくわからん。あれほどのアスリートがなんでそこまでしなくちゃならんのだ、美しいジャンプと滑りを心ゆくまで披露してくれるだけでこの上ない眼福になるではないかという筋の通らなさを感じる。この曲でたとえすべての技が成功していても、痛々しいという俺が受ける印象に変わりはなかっただろうし、キムヨナさんよりいいとも思わなかっただろう。

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【ロシェット】浅田さんがこうなった以上は、ジョアニーに完璧な滑りで銀を取ってほしいと皆で期待する。彼女は練習から完璧な集中を見せており、スケートなしで歩く姿からしてチャンピオンとして振る舞い、グレイトなことを成し遂げるためのゾーンに入ってるのが明らかだった、だが能力がその精神にわずかながら追いつかず、ミスをして得点は伸びず。浅田さん同様彼女もSPのほうがよかった。

【長洲未来】そしてフリーも長洲未来さんが一番よかった。スコアはともあれ解説にも会場にも一番ウケていた。浅田さんもあんな異様に荘重なロシア風ではなく、こうした軽く明るく飛びしなるスケートをやってほしかった。ロシア振付なんて、浅田さんのイノセンスを世界に見せる機会をゼロにしただけではないか。

 韓国国内はともかく世界スケート界がキム様万歳になってるのは何かが絶対におかしいと感じるが、それとは別に浅田さんの点が伸びないのは、実は見てて心地いいかどうかという単純な部分があるんじゃないだろうか。この点差は若い女性のよさをスポイルしているロシア的美学への「古い!」というメッセージなんじゃないのかな。浅田さんがあの超級の身体能力とイノセンスを全開に楽しく滑ってくれたなら、誰もが喜んだろうしさぞかし素晴らしかったことだろうと残念で仕方がない。コーチ(=本人の方針?)を変えない限り浅田さんは今後もキムさんを敗れないだろうが、長洲さんはこのまま行けばどこかで必ずやってみせるだろうと思う溌剌たる滑りだった。

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 4年前の日記を見ると、荒川さんの滑りに俺は「義務ジャンプをこなした後の残り時間は本当にため息をつくしかない、体全体でおーほほほほと笑っているかのような女王の滑りであった。素晴らしいとしか言いようがない」と感動しているが、今回のメダリストたちの滑りはそこまで俺の琴線には触れなかった。ヨナ・浅田さんのほうが荒川さんより数段格上の才能を持つアスリートだと思うが、しかしそれと感動は別なのだ。

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■10/02/26(金) □ 世界最高得点の謎
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 話題になってるので、浅田真央さんの涙のインタビューというのを Youtube で見てみると、悔しさでボロボロになりながらも、死ぬほどつまらない、何のインスピレーションも呼び起こさないインタビュアーの質問に最後まで答える姿が健気の一語。今回浅田さんの滑りも喋りも初めて見たのだが、どうしてこれほど人々に愛されるのかがよくわかった。なんか天然なアイドルみたいな子なのかなと思っていたけれど、天才で健気なんだから、そりゃ愛さずにいられないな。

 Mは女子フィギュアの表彰式を見て、シルバーを取ったのになんであんなにアンハッピーなのといぶかっており、泣くのをこらえているだけではないか何を言ってるんだと俺がやや声を荒らげたのだが、Youtube の英語コメントにも同じような感想がずらずらと並んでいる。欧米人には悔し泣きというのはメンタリティとして理解できないのだろうか。負けて笑うのは立派なスポーツマン精神だが、笑えないほど打ちのめされることだってあるのである。

 四年に一度の一瞬の完璧さに人生をかけ、夢破れて打ちのめされた人の涙の意味を理解できないメンタリティがつまり、オリンピックに楽しい楽しいスノボクロスやらビーチバレーを組み入れているんだよな。

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 Youtube のこのページから『キムヨナ選手の「世界最高得点」の意味を考える(MURMUR 別館)』という熱心なフィギュアファンのページが見つかり、キムヨナさんの今回のSP超高得点はやはり異常だというストイコ、キャンデロロらのコメントも読めた。キャンデロロはフランスの放送で真央との得点差に激怒していたとのこと。カナダのスケート記事はクイーンキム万歳一色なので(※)、ネットでもこうしたコメントが見つからなかった。動画を見るとストイコは、「あまりにも高すぎる、馬鹿げている (way too high, ridiculous)」と言っている。カナダのTVコメンテーターと正反対の意見だ。

 この人の記事が点差増大の経緯をまとめてくれているのだが、
  • 高難度ジャンプ失敗の厳罰化とエッジングの厳格化で調子を崩す選手たち
  • しかしキムヨナのみ厳格化除外
  • 過去3年くらい同じプログラムで点数がどんどんと上がっていくキムヨナ
  • 韓国系カナダ人の ISU スケート協会副会長(まるで鄭夢準!)の存在
  • 韓国協会のロビー活動

 等々、WC2002 そっくりのバックグラウンドがあるのだそうだ。うーむ。まあしかし真偽の程も WC2002 と同等なんだろうな。起こった現象と状況は限りなく怪しいが、韓国選手が究極の力を出し切り素晴らしかったのは事実だということで。こういうもろもろを読んでも男女フィギュアの順位が不当だとはまったく思わないが、史上最高銀河系スコアを俺が不自然と感じたのも道理なのだと裏付けが取れ、気持ちが落ち着いた。

 浅田さんは彼女だけができるベストをびしっと示すことで、キム様万歳の流れと戦い抜きたかったのだろう。しかし彼女はスランプに陥っても帰ってきて銀メダルを取ってみせたのだ。まだ 19 歳で、幸いに日本人なのでこれから体重がつくこともあるまい。今後を楽しみにしよう。しかし俺がフィギュアスケートをこんなに熱心に見ることになるとは思わなかった(汗)。

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 スピードスケートの【団体追い抜き】という種目決勝になんと日本女子が残り、相手は準決勝で痙攣で倒れたジャーマニーだ、勝てると盛り上がる。実際レースが始まるとドイツ選手は疲れているのか動きが鈍く、日本チームは他のチームが全然やってないきれいなローテーションを実行してあっというまに大差がついていく。金メダルレースなのにこりゃ一方的になってしまった、これ以上見苦しい差はつけずペースを維持してもらいたいと思っていると、残り1周でドイツがぐあああと加速し追いついてきた。


なんてことだの団体追い抜きレース
 うわ、頑張れ頑張れ頑張れ抜かれるなと萌と必死に応援するも、ゴールインは完璧に同時。残ったか? ―――あー、日本選手の足が1本ゴールを超えてない~~。これで今回日本は金メダルなしとなってしまった。ま、これは取れたら望外の番狂わせだったので、よく頑張ってくれましたというところだが、選手はあの足を引っ込めていればと悔しいことだろう。萌は5分もの間、へたり込んで呆然としてました。まことにまことに金メダルというのは難しいね。

 あとでちょうどドイツ移民の子であるM姉の旦那が来たので「ドイツの女は強い」と話すと、「あいつら実は男なんだ。腋毛もそってない」という。そうかー(笑)。

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 浅田さんのエキジビジョンを見て、この人は本当にスポーツの天才なんだなと感じる。3回転くらいだともうほとんど止まったようなスピードからふわっと驚くような高さに浮かび回ってみせる(また氷に足を引っ掛けていたが)。本番よりもこのエキジビジョンのほうが音楽も演技もよかった。リズムにのって首を激しく揺すり踊る動きなど、スケートの大技に勝るとも劣らない強さで俺の目を捉える。なんでこの天然の美を本番で見せないのかなあ。彼女のこの笑顔が見たかった。実に惜しい。「MURMUR 別館」さんによればやはりSPもフリーもロシア曲で重すぎるとファンの間でも賛否が別れたのだそうで、ロシアの大御所おばあさんコーチを選んだのが道の誤りだったのだろう。

 本番が終わると研ぎ澄まされたものが緩むのか、どのスケーターもジャンプでミスを連発していたが、プルシェンコは本番同様ぶれていてもスポットライトに氷を飛ばし転ぶ寸前まで攻めたジャンプを飛びまくり、ライサチェクに至っては本番とほとんど同じなんではないかと思うほどの密度の演技を完璧に決めてみせ、プルシェンコよりもウケることで金メダルの説得力を証明してみせたのが面白かった。

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■10/02/28(日) □ 終わっちゃうのって悲しいよね
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 【ホッケー決勝】予選で米国に為すすべなく負けて以後は反省し調子を取り戻しているらしいカナダが、2-1でリードを保ったまま試合が続く。しかしリンクがオリンピック国際規格より幅が狭い(4m?)NHL規格なので、双方調子がよく陣形のバランスが取れているとパスなど通すスペースがなく、ドリブル(?)で持ち上がってチェックで潰され、反撃してチェックで潰されが延々と繰り返される。試合はピンチとチャンスの繰り返しなので白熱しているが、やってることは持ちすぎパスなし小学生サッカーみたいなもので、俺のような部外者にはさほど面白くない。オリンピックだけは広いリンクでパスが通りカウンターが効き、速い選手、強い選手といった個性も際立つのでホッケーが面白いと思っていたのだがなー。どうしてアメリカカナダってこう単調なスポーツが好きなのだろう。

 最後の1分、自陣にこもったカナダを米が猛攻し、なんと残り25秒で追いついてしまった。この国ってやっぱガッツあるよなあと認めざるを得ない。結局延長戦でカナダがサドンデスゴールを決め、盛り上がる国中の映像が流され、うちの近所からもラッパの音と花火が上がりまくり、ハッピーな幕切れとなった。よかったよかった。友達の家にいた萌を迎えに行くと、道にホッケーシャツを着た人々が溢れ出し旗を振りラッパを吹いている。国中大盛り上がり。よかったよかった :-)。

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 【閉会式】異常にイモな「オーバンクーバー」と歌うバンド、つまらんポップシンガー、オペラ歌手連発と開会式よりもはるかにつまらない演し物が続き、会場がしーんとしている。各種スピーチがあって、やっと、やっときたのニールヤングが「Long May You Run」を歌い(スタジアム中が歌える「Heart of Gold」をやるかと思ったが、それじゃ「金メダルにひっかけた」みたいで下品か)、その後は終幕までトーク&ミュージックショーとなった。

 トークはカナダで一番ウケる「あるある」もので、世界の人々は「カナダ人はなんでもないことに『Sorry』とつい言ってしまう。」「カナダ人はバックベーコンを食べている」「国全体が氷漬けだと思われている」などなどの、カナダに対するステレオタイプ観念をからかうものが多い。こういうゆるいジョークが妙に好きだというのもカナダ人の特徴だと思う(笑)。

 後は延々と音楽。しかしこのミュージシャンの粒がどうにも揃わない。アヴィリルラビーンははまあ旬だからいいが、アラニス・モリセットはバラードをやっちまうし、その他は名前も聞いたこともない若手バンドがぞろぞろと出てきて実にレベルの低い音楽をやらかしてしまい、客もアスリートも盛り上がりようがなかった。もっといいのはそれなりにいるぞ。ファイストとかベアネイキッドレディーズとか呼べなかったのかね。

 ニール・ヤングが歌ってる時、彼のあとカナダから1人もロックグレイトが出てないのはなぜなのだと考えたが、強力女性ポップボーカリストはどんどん出てくるのにバンドはホント駄目だなとつくづく思う。開会式はカナダ文化をうまく表し見事なものだったが、閉会式はカナダポップ音楽のレベルの低さを示すプレゼンテーションになってしまいました。残念。

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 閉会式が終わったTVをぼんやり眺めながら、あーあ、終わってしまったなと萌と話す。萌は「終わっちゃうのって悲しいよね、ハワイとか、スリープオーバー(お泊り)とか」とつぶやく。そうだね、寂しいね。お父さんが子供の時札幌オリンピックがあって、子供たちはすごく盛り上がったんだよ。萌もこのオリンピックをきっと絶対忘れないだろうね。

2010/02/24

日記「新興オリンピック種目は皆ジョーク」

「史上最悪のオリンピック?」「まだ誰も見たことがないもの」「ストイコの戦評」「オリンピックの北米化」ほか。

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■10/02/16(火) □ 「史上最悪のオリンピック?」
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 【男子フィギュア】で高橋が完璧な演技でショートプログラム暫定2位、織田が余裕のミスなし演技で暫定3位を抑えてみせた。あとで米選手のこれまた完璧な演技に2位を奪われたが、高橋と織田の演技前後の落ち着いた様子を見ると、上村さんの渾身の滑りから始まった力を出し切るいい流れが日本にあるように感じる。今日も女子 500m スケートで金を取った新興スピードスケート国韓国の怒涛の勢いにはかなわないが。

 最後の長野スケーター岡崎さんは、スタートから最後のコーナーまでは見事な滑りだったが、直線でぴたっと止まりぶち抜かれてしまった。お疲れさまでした。

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 英ガーディアン紙のコラムニストが、バンクーバーオリンピックを「史上最悪のオリンピック」と言ってるそうである。カナダのニュースは当然動揺を隠せない。練習での死亡事故、気温が高すぎ雨中で行われる競技、交通の悪さ、段取りの悪さ(遅延、キャンセル)といったあたりがヤリ玉に上がっているらしい。

 しかし死亡事故はともかくある程度のゴタゴタはいつだってあるわけで、史上最悪だなんて下衆なことを言うその神経が分からない。長野のときはどこかの英文コラムが「長野の町はウィンターオリンピック史上最もアグリイ」に近いことを書いていたし、「サマランチが『史上最高の冬季オリンピックでした』という閉幕決まり文句を言わなかった」と揶揄もしていた。こういうところは欧米メディアの、批評のミノをかぶった底意地の悪さとしか感じられない。

 お前らこれからアフリカでWCをやるんだぞ。段取りの悪さくらいでケチなぞつけてる場合か。おもてなしをありがたくちょうだいする心を持たない客は、段取りのつたないホストより見苦しい。

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■10/02/17(水) □ ショートトラックは面白いけれど
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 【ショートトラック女子 500m】 で、4人の決勝で最外のイタリーの子がスタート直後にアグレッシブ過ぎる斜行でカナダ選手を2人なぎ倒した。競馬なら失格だがこの競技では1コーナーまではルール上単にリスタートとなるという。そしてこのイタリー娘は2回目もまったく同じ斜行を敢行し、転びたくないので本能的に足を引いたカナダ選手1名の前に入ってしまったのである。斜行して同走者を転ばしても罰則がつかないのだから、なりふり構わず勝ちたい奴はやるよな。斜行以外に外枠の選手が勝負に出る道はないわけだし。

 3位に上がったイタリー娘はさらに2位のカナダ選手のインをスキあらば接触覚悟で飛び込む気ありありなので、カナダ選手はインベタで回らねばならず、最速ラインを取れない。もともと1位の中国選手とは力の差もあるのだろうが、そのうえラインが苦しいのでコーナーの立ち上がりごとに大きな差がつき、あっという間に差は広がりレースは終わってしまった。競輪でこんなレースをやったら、2位カナダ選手の単勝を買ってた客が怒るだろうな。たとえ勝てなくてもトップを追えよと。

 このショートトラックの抜きつ抜かれつは面白い。こういう紙一重のオーバーテイクが楽しめるのは他にはバイクレースしかないだろう。しかし 500m なんてどうやっても短すぎるのである。スタートダッシュで勝敗がほぼ決まるから内外で有利不利がありすぎるし、抜かれたらリカバーする時間などないから、こうして前を追うより順位を守るレースというものができてしまう。人数を絞らねば1列でスタートできないから4人中1人だけメダルを取れないという酷な仕様にもなる。こういう種目ならスプリント能力だけでは勝つのが不可能な距離(1000m 以上?)でなければフェアな競技にならないのは明らかではないか。まじめに考えてもらいたい。

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■10/02/18(木) □ まだ誰も見たことがないもの
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 【男子フィギュアスケート・フリー】どんどこどんどことジャンプで下位が皆転んでいく。織田がジャンプが安定し、軽快な体を生かした動きが小気味よく素晴らしかったのだが、途中でジャンプを失敗しグキっとなってしまった。あ、捻挫かと思ったら、なんと靴ひも切れ。これで得点マイナスとなり、それがなければ5位以上だったろう。惜しい。音楽「街の灯」もよかったが、チャップリン/エノケン路線のコミカルな動きはちょっと狙いすぎた感もある。男女ともスケートでコミカルなことをすると見てて気恥ずかしい気がする。

 高橋は最初のジャンプを失敗し転倒。しかしその後の滑りはまったく素晴らしかった。ジャンプは織田の方がうまいと思うが、この人はスケートと体の使い方が美しい。「ジェルソミーナ」という音楽の使い方も見事で、すべての技が完璧だったが長い手足を持て余し退屈だったライサチェクよりもはるかによかったし、観衆を惹き込んでいた。しかし高橋はジャンプでずいぶんマイナスがあるので、ポイントで負けるのは致し方なし。

 でアメリカのウェアという選手がこれまたジャンプを全部完璧に決める。滑りはライサチェク同様退屈なのだが、ウケてるからこれでも高橋より上に来ちまうのかねと萌とハラハラ見ていると、今時はスケートジャッジの目も節穴ではなく5位。これで高橋のメダルが確定。最後のプルシェンコはおとといもなんか揺れてるじゃん、なんでそんなにすごい点が出るのかと思ったが今日も明らかに調子が悪く、ジャンプ着地がことごとく揺れる。トレードマークらしい傲慢キング演技を続けるが、技に切れがないので傲慢ジェスチャーにも客がちっとも湧かない。これでもキングだから点が出るのかねと思ったら今時はジャッジも先入観バカではなく、2位となった。高橋納得の銅メダルである。えらい。

 滑りと舞いに関しては織田も本当によかった。総身にコントロールが及ばず切れがないライサチェクたちよりも、コンパクトなボディパーツを存分に振り回せる高橋や織田の方が氷上の表現には向いてるんじゃないかとも思う試合だった。高橋と織田の体の動きの先にビールマンスピンやイナバウアーのような、まだ誰も見たことがないものがいつか見える気がした。

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■10/02/19(金) □ ストイコの戦評
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 長野の銀メダリスト、エルビス・ストイコが昨夜のフィギュアを、「4回転を飛ばずに金なんて馬鹿げてる。ジュニアでもできる技ばかりじゃ客にはつまらない」と批判している。「金はミスはあってもプルシェンコ。4回転にトライした高橋は素晴らしかった、ライサチェクよりも上とされるべき」。彼は小塚の4回転ジャンプも激賞している。高橋は別のカナダコラムニストにも最高だった、最も観客を湧かせたと評されている。

 しかしライサチェクが退屈だったことには同意するが、難しいジャンプが必須となりボタボタと選手が次々に転んでいくというシステムは、それはそれで嫌である。今回も本当に転倒が多かったので、かわいそうで見るに耐えんとMはTVを離れていたしな。

 ストイコが現役時4回転を決めても、そのさらに前に伊藤みどりさんがトリプルアクセル(?)を跳んでも「芸術点」でライバルに負け、当時はスポーツ的感動が「芸術点」の下に置かれるシステムにアンフェアさを強く感じたが、今回はそれとは違うと思う。今回のプルシェンコの滑りに、ストイコ・伊藤のような「芸術点」を上回ろうというアスリート的気迫と説得力はなかったし、ライサチェクに高い芸術性もなかった。ただただ難度×成功度の単純計算でライサチェクが2人を上回ったという、やや不調だった競技結果なのだと思う。

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■10/02/20(土) □ ジャンプ・ラージヒル
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 【ジャンプ・ラージヒル】昨日の予選で葛西たちが飛び過ぎたのでスタート点が下がり、低調な記録が続く。葛西と伊東もK点に届かない。昨日の結果から 10 位以内くらいは狙えるのかと思ったが、2人にとって昨日の高さが物理&フィーリング的にスイートスポットだったのだろうか。しかしあのままの条件で上位が飛んでいたら、それは間違いなく危険だったろうから致し方ない。

 昨日と今日のこの大きな違いを見ると、日本人ジャンプ選手はスイートスポットが非常に狭いようだ。欧州系よりも筋力が弱い分、すべてのスポットがぴたりと合わないと遠くへ飛べず、98 年以後のルールではそのスイートスポットが極端に狭く弱くなってしまったということなのだろうか。日本選手が勝てなくなった理由は科学的にも謎なのだろうが(科学的にアジア人不利とはっきり証明できるならルールが改正されるだろう)、返す返すもルール改変が残念である。

 2本目、さらにスタート位置が下げられたが伊東がいい踏み切りで 128m を飛んだ。速度は落ちても日本人にはこっちのスタート位置のほうがスイートスポットに近いらしい。難しいものである。葛西も 135m。見事。これは両者とも、少なくとも1本は力を出し切った感があるだろう。葛西は2本目の飛距離はアマンからわずか 3m 差の3位タイに相当し、1本目がもう少しまともに飛べていればメダルの可能性すらあったかもしれない。お疲れ様でした。

 しかし今回のオリンピックは、カナダTV観戦者には最高だな。ジャンプなんかカナダ選手は上位にきっこないのにちゃんと全編放送してくれる。こんなのはカナダに移住後 15 年余のオリンピックで初めてだ。地元開催以外でもいつもこれくらいやってくれないかな。

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 【男子ショートトラック】1000m 決勝、人気のあるカナダの兄弟、コリア2名、悪名高いオーノと面子が揃って超盛り上がったのだが、結局コリアとオーノにやられてしまい、カナダ兄弟は完敗。会場とカナダお茶の間がとことんしょぼんとする結果となった。TVアナは、「この種目はコリアのものだ。どうやっても勝てない」とあきらめコメント。実際中韓以外はやる気をなくすような結果が続いている。長野の頃は日本も強かったはずだが、なんで日本だけいなくなってしまったのかしら。

 「五輪の強化費は韓国がダントツ」という話を聞くと、おそらくそうなんだろうなあとは思うが、しかし競技自体の歴史が浅いショートトラックなら金をかければ強くなるような気がするが、スピードスケートやフィギュアスケートは競技環境や指導陣が整った上で個人の資質がモノを言うような気がする。Jリーグで韓国人ストライカーが常に幅をきかすように、どこかにあるその違いがなんなのか分からないし、悔しい。

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■10/02/21(日) □ オリンピックの北米化
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 今日は【スキークロス】というものをやっている。こないだのスノボクロスのコースをスキーで滑るというもので、スキーでもこういう BMX 風人工コースでは体が浮いてしまい、全然スピードが出ないのだと分かる。クロカンスキーの下りと大差ない遅さである。スノボクロス同様やってる方は楽しいだろうが、これに出るのは一般スキー競技でコンペティティブなレベルに到達できない人々だろうから(※)、一瞬の完璧さに人生をかけたスキースケートその他のトラディショナルな競技と同じメダルがもらえるというのは理不尽だと感じざるを得ない。
(※)事実カナダ女子チームには、アルペンで振るわずスキークロスでもやってみたらどうだとコーチにいわれ、スキークロス大会当日に現地に飛び初めてのエントリーで2位となり、以後スキークロスに衣替えした選手がいると判明。そういう話を聞いてしらけずにこれを真剣なスポーツとして見れる人がいるのだろうか。

 これを見てつくづく理解したが、つまりオリンピック/スキー協会は北米で人気のあるスーパークロス(モトクロス)/BMX を雪上でやりたいわけだ。「バンクーバーオリンピックは NASCAR レースみたいなチープスリルを追い求めている」と批判されているがその通りで、これは見た目にエキサイティングな抜きつ抜かれつとクラッシュが楽しめればOKという北米モータースポーツだよな。

 オリンピックスポーツは「究極」というものと密接に関わっているべきで、これ以上のものはないというものを見せてもらいたい。スキーのアルペンは「この山を彼らよりも速く降りられる者はいない」と素直に思えるし、モーグルもあの坂をモーグル選手以上に速くきれいに降りられる者はないだろう(コブさばきだけでは競技として単調なのでジャンプをつけるのも納得できる)。しかしスノボ競技はスキークロスを見れば明瞭に分かる通り、このコースはスノボの性能がフルに出るように作ってあるが、それでもスキーの方が 10 秒も速いのだ。遅いスノボで競争するなら俺が一番という人々や、従来のスキー競技では勝てない人々のために、オリンピック種目を作る意義があるのだろうか。その競技内で世界選手権をやる分にはまったく完璧に文句ないが、オリンピックは別だろう。

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■10/02/22(月) □ 最後の長野ベテラン
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 【ジャンプ団体】葛西が台につくたびに、「この人はすごいんだ、∨ジャンプのパイオニアの1人で、昔から僕のヒーローでいまだにチャレンジしている」と、ジャンプ経験者らしいカナダTV解説者の声に熱がこもる。世界の一線からもう10年以上落ちていても、まだ日本のジャンパーは尊敬を受けているのだとわかり胸が暖かくなる。ここまで来れなかった他の長野ベテランたちのためにも頑張ってくれ。

 2本目。これが葛西の、長野ベテランの最後の最後の1本だろう。渾身のやつを決めてくれ。―――140m、素晴らしい。これから上位4チームが飛ぶので3位にはとても届かないだろうが、葛西のオリンピック・ジャンプは最後の3本すべてが素晴らしかったと、誰の記憶にも残るだろう。

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■10/02/23(火) □ 新興オリンピック種目は皆ジョーク
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 ノルディック複合が見たいのだが、カーリング2つと女子スキークロスでチャンネルがふさがっている。カーリングは予選だけで9試合もあるそうで、いくらなんでもオリンピック放送枠の偏りではないか。他にこんなに長時間放送される競技はないだろう。こうして自国チームの全試合(2時間半?)を参加各国が放映してるのだろうか。

 日本で大騒ぎになっているらしいカーリングの英国選手がいまプレイしている。ごく普通のきれいな子だが、ああしたきれいな子が人目を気にせず真剣な顔で物事に打ち込む様子はなかなか見ることはなく新鮮だという意味で、日本チームのあの子同様人気になってるのかなと思う。

 その裏では【大回転】をやっており、これはやはり最高。やっぱスキーの王道はステンマルクの昔から回転/大回転だよなと思う。これぞ問答無用で世界最高峰というスピードとターンが味わえ、バイクレースのように実に気持ちがいい。ヨーロッパじゃダウンヒルが英雄の競技だとして人気だというが、あれはスゴイけれどあのスピードと雪面の硬さではとにかく板をワイドに開きコースアウトを避けるのに必死というスキーヤーの様相となり、美しくはないのである。

 【スキークロス】は後半みぞれでコースがスーパーヘビーとなり、まるでスキーが滑らず全員クロカンスキーのようにストックで漕ぎながら進むという滑稽な競技になった。人工的に作った急造競技だからテストが足りず、気温上昇という予定外のファクターが入るとこうして台無しになってしまう。この条件でスノボが滑ったらストックで漕げないからまじで止まるんじゃないか? と思っていると、決勝で1人の選手がほんとに最初のジャンプ台を超えられず止まってしまった。スキー競技で転倒以外で止まるというのは、これはもう前代未聞ではないだろうか。新興オリンピック種目はほんとに皆ジョークである。

 と思ったら夜うちの奥さんがこれを見て面白いと大喜びしている。君ね、カナダのある選手はスキーじゃ一流になれずぶっつけでこれの代表になったのだよと教え、「そんな競技レベルのものをオリンピックにする必要はないと思わないか」と説くと、「でもエキサイティングで楽しいし人気があるならいいじゃない」と全然わかってもらえない。「しかし見ろよ、スキー競技なのに止まっちゃってるんだぜ。ホラ!」「クロカンスキーだって漕がなきゃ止まるじゃない」。―――くー。なんでオマイはそんなにスポーツ観戦音痴なんだ(泣)。

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 【女子フィギュアスケート・SP】うーん。浅田真央さん(滑るのは初めて見たが、立ち姿が驚異的に美しい)は緊張でわずかに動作が揺れ、それでも大技を含め見事に滑ったが自己能力比 90 点という感じ。キムヨナさんは緊張してもまるで動じず同 98 点で恐れ入ったが、SP世界歴代最高点なんていわれるとそんなにすごかったかなと腑に落ちない。スケーティングはシャキシャキと切れがあり気持ちがいいが―――浅田さんはスピード感にやや欠けた―――、007 の振付なんて織田のチャップリンや子供紅白みたいな気恥ずかしさを感じるし、ジャンプを除けば技術は昔のミシェル・クワンのほうがより完璧で優美じゃなかったろうか。まあスピードスケートと同じで、日本が得意の分野で韓国に負けることが俺は悔しくて受け入れ難いだけかもしれないが(Hard to swallow)、ヨナさんにも浅田さんにも特に心を動かされることはなかった。

 お母さんが2日前に急死という悲劇にあったカナダのロシェットが、驚くべき完璧な滑りで3位。4位の安藤があまりぱっとせず―――目立つ失敗はないが内容がつまらなく、観客を静かにしてしまった―――、表彰台はこの3人でほぼ決まりとなる。しかし一番良かったのは 100% 以上を出し切り飛び滑りまくった、日系アメリカ人の長洲さんだったような気がする。

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 萌は日本が負けたといって声を上げ悔しがる。開催国カナダをも上回りかねない韓国のメダルラッシュが、最近目覚めているっぽい彼女の日本人アイデンティティになんとなく障っているのだろう。しかしそれは仕方がない、韓国も日本もカナダもみんな一生懸命なんだから、勝てないからと言って不平を言ってはイカンよ。

 萌はこないだ学校の作文に、ニンテンドーやポケモンを初めとするカナダで普及した日本製品の多さを書き連ね、だから日本はイントレスティングなのだと力説していた。うーん、なんか違うなあ。普及してるのがすごいんじゃなくて、なんでもいいものを作ってしまうところが面白いのだよ。しかしそんなことを説明しても、小学生にはまだわからない。

 浅田さんがヨナさんを逆転することはできないだろうが、こないだ高橋がそうしたように、フリーでは突き抜けて力を尽くした滑りをしてほしい。そして高橋がそうだったようにゴールドメダリストよりも胸を掴むものを見せてくれたなら、順位に関わらず萌も俺も喜べるだろう。

2010/02/16

日記「オリンピック開幕」

「遅い車への愛情」「オリンピックムードを味わいに」「モーグルの競技性」ほか。

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■10/02/07(日) □「YAWARA」
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 日本語学校マンガ文庫で借りてきた「YAWARA」を萌に読んでやる。思った通り萌のハートにがっちりはまった模様。浦沢さんは軽音の先輩なので「YAWARA」でのブレーク前から俺たち後輩はその作品を読んでおり、いかにも大衆向けのこれは当時リアルタイムで読みはしなかったが、あまりにも有名なので当然話は知っており、そしてやはり楽しい。萌も久々にマンガで笑ってます。

 しかしさかんに出てくるパンチラシーンとか、カナダ人の娘はどう感じておるのだろうか。そういう絵があると俺は読む速度を極限まで高め、光の速さでページをめくる。Mに見つかったら怒られる(汗)。

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■10/02/09(火) □ 遅い車への愛情
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 日本語学校で「頭文字D」の続きをまた借りてきて、一気に読んでしまった。ちょうどそこでMのピックアップでバス停に呼ばれ、各交差点で久々にファストコーナリングを楽しむ。しかしきれいに曲がって決まった......とミラーを見ると後ろの車がたいして離れてなくて、しかも見ればその車はトヨタエコー(Vitz)セダンであった。あんな 1500cc ミニカーも引き離せないとは (^-^;。

 しかし車は面白いな。エリオはちっとも思い通りに曲がらないし(これはレガシィもそう)、燃費も含め不満は大きいが、それでも車を運転することは楽しい。「頭文字D」で脇役が恐ろしく遅いカローラ 85 を間違って買ってしまい落ち込み、しかし主人公がその車で敵をぶち抜き脇役が自車への愛を再認するという話があるが、あんなのは本当によくわかる。俺ももっとコーナリング性能の高い車を買っていたらなとは思うが、それでもエリオに乗ることは面白い。そして少なくともあの脇役のカローラ 85 よりは、俺のエリオは速いのである。

 昔 RZR250 を盗まれ、どうしようもなく8万円で買った RG250E なんか本当にボロボロで、キャブから夜中にガソリンがもれるし、箱根でプラグが死んでエンコしたし、バンク角がぜんぜん足りずコーナーを攻め込めなくて実に情けないバイクだったのだが、しかしそれでも楽しかった。あれが俺がエリオ前に所有した唯一のスズキである。俺にとってスズキとはそういう、情けないが許してやるというメーカーなのである。

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■10/02/10(水) □ カナダキッズの物欲
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 萌の文房具を探し町を走る。萌が欲しかったのは学校でみんなが使ってるという Mead Zwipes という多機能ノートバインダーで、友達が学校で使ってるものがほしいという気持ちは実によくわかるのでぜひにと見つけてやった。俺も小学校のとき、ユニボールとか流行りの筆箱が無茶苦茶ほしかったしな。

 流行のこのバインダーはプラスチック面に速乾性マーカーで落書きをし、シンナーペン+フェルトペンで消すというシステムになっている。シンナーを使うので(くさいが)マーカーが完璧にきれいに落ちるのがミソなようで、書いては消し書いては消し気持ちいーと喜んでいる。なるほどね。

 萌は俺が子供のときに比べたら物欲がすごく少ないと思う。クリスマスとお年玉で相当な金額を祖父母からもらったのだが、こないだのラジカセとこのバインダー以外自分で何かを買いたいと言い出したことがない。俺は小4の頃はすでにプラモデルその他がほしくて、お年玉などもらったら速攻で使い切っていたし、残ったお金で買えるものを想像しては興奮していたと思う。女の子だし、カナダは子供物欲を刺激するものが日本より少ないのかもしれないな。

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 必要があっていろいろな 2ch スレッドを読んでるのだが、現代ニッポンの若い世代というのはホント人の努力や才能をくさす心根ばかりが発達してるなあと思う。90 年代のニフティサーブやインターネットが開通したばかりの頃は、そうしたネガティブ野郎は有名になるくらい珍な存在だったのだが、今や Google やニコニコ動画といったメディアにも (語彙で) 多大な影響を与えるほどの大勢力になってしまっている。

 当時日本語ニュースグループ fj で悪口を吐きまくり俺と論争してた人なんか、ネット中が罵詈雑言に埋め尽くされた現代ではどう暮らしてるんだろう。皆の口が悪く(しかもそれらの話者がみな彼らより知能が低い)、自分の悪口スタイルが埋没していくのは彼らにとっては苦痛なことだろう。

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■10/02/12(金) □ オリンピック開幕
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フーレイ! がんばれー!

2001年、近所のモールのサイン会で
 開会式。萌が旗を振り興奮しとります。当然カナダと日本を応援するとのこと。カナダのTVでは 98・02 年スピードスケート女王カトリオナが解説で、岡崎さんを見て「長野の表彰台で彼女と一緒だったのよ!」とうれしげにコメントしていた。えらいなあ岡崎さん。

 おー、聖火の点灯はそのカトリオナさん。「この人、昔(サイン会で)萌を抱いてくれたんだよ」と教えると、萌は驚き口あんぐり。まったくだよな、こんなすごいアスリートが近所のモールにいたとはね。

 うーん、いい開会式であった。地元とはいえ冒頭でブライアン・アダムスを出したときはあちゃー、こりゃ駄目だと思ったが(彼をここで見たいという人はカナダだっていないと思う)、その後のクジラが地面を泳ぐ光ショーなんかは素晴らしかった。ギブソンに住むジョニ・ミッチェルが歌声でだけ登場してたが、スタジアムの袖(?)で歌ってたんだろうか。

 最後は柱が1本上がらないという事故が起き、これで聖火がつかないなんていう取り返しのつかないコトにはしないでくれよとひやひやしたが、残る3本の柱で着火は問題なくできたようでほっとした。Mと萌は「(わが町 PoCo から出たカナダの人道活動家) テリーフォックスがホログラムで着火するんじゃないか」と期待していたが、テリーフォックスは世界的には車椅子で出てきたあの人道活動家と同程度の知名度しかないだろうから、そういう大仰なことをしてくれなくてよかったと思う。

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■10/02/13(土) □ オリンピック1日目
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 【オリンピック1日目】カナダじゃオリンピック放送は通常米国1局カナダ1局しか放送がないのだが、さすが地元開催なのでカナダだけで3局も放送している。しかも視聴者が競技を見逃さないように、「22ch でジャンプ、23ch ではスピードスケートをやっている」と親切にも他局の番組まで紹介してくれる。トリノなんか女子スケート 500m すら放送してくれなかったんだから、えらい違いである。今回は時差も当然ゼロだし楽しめそう。

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 うーんモーグル、カナダのハイルも日本の上村も惜しかった。しかし全員力を出し切っての勝負は見事の一語。緊張に体を固くしてスポーツを見るのは気持ちがいい。こういうものを初めて見た萌も、唇を噛んでなにかを感じていたようだ。

 長野の時のモーグルでは、女子で優勝したタエさんの滑りを見てもなるほど今回はこの人が一番ミスがなかったのねとしか思わなかったが、今回の女子上村&メダリストのスピードはとてつもない。あれから 12 年も経ち、次元の違う競技レベルになっているようだ。

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■10/02/14(日) □ オリンピックムードを味わいに
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 チャイナタウンのチャイニーズニューイヤーパレード&オリンピック名物各国パビリオン巡りをすべく、バンクーバーダウンタウンへ行く。

 チャイナタウンは怖いから行ったことがなかったのだが、ドラッグ中毒者しか歩いていない地獄のヘイスティングスから1本下がればまさにチャイナタウンで、道をまたぐあのゲートが横浜と同じでなつかしい。

 パレードは一体何組あったのか延々 45 分もかかり、俺は 15 分くらいでもう満腹したのだが何事も付き合いのいいMとお菓子やノベルティをもらって大喜びのWと萌のため全部見ることになり、体が冷え切ってしまう。これが夏の夜にあれば楽しいと思うが(実際おばちゃんが踊ってる姿を見れば、日本の長野びんずる・阿波踊りなどの夏祭り踊り歩きと変わりない。下手だが)、温暖なバンクーバーとはいえ2月の朝に延々小1時間くまなく見物するものでもなかったというのが感想。


小さなチャイナガーデン
 やっとそれが終わり、中山庭園というこぶりで美しい中国庭園からチャイナタウンを散策しつつダウンタウンへ向かう。横浜みたいに観光客相手の高級レストランが並ぶわけじゃなく、非中華の人間に食べられるものはなさそうな感じだが、正体不明の店や中華雑貨屋が多く眺めるだけでも面白い。しかしチャイナタウンはどうしてこんなに薄汚れた古いレンガ建築がまるまる残ってるのだろう。不思議だ(※)。
(※)帰ってから調べると、裕福な層がリッチモンドに移ってしまったのでチャイナタウンは衰退しており、再活性化計画の対象になってるのだそうだ。単に古いものが再開発されずに残ってるということなのか。

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 で行ってみたバンクーバーのオリンピック関連エキジビションは、もー混んでるわ混んでるわすべてのパビリオン前が大行列。結局1つしか入らず、しかも帰りのバスはどれもこれも満員で乗れず、バンクーバーの町から出て行く方法がないという状態。ようやく席のあるバスをキャッチ帰ってくるまで3時間近くかかるという難儀な行程であった。オリンピック見物は大変だ。

 しかし長野の時は田舎の町が一変インターナショナルという感じだったが、バンクーバーはもともとインターナショナルな町なので、人が多い以外はいつもと変りない様子。ちなみに日本は今回パビリオンを出してないようである。冬季スポーツ不振がそういうところにも現れている。残念。

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 【サッカー日本代表】が韓国にホームで惨敗していた。Youtube で見た中国との試合で1対1でサイドを突破されまくっていたので、フィジカルがよほど上がってないのかそれとも中国選手に思い切りとフィジカルで勝てないのか(だったらマズイ)と思っていたが、4試合やってからきしダメだとなるとチームがスランプに陥ってるのだろう。

 昨年の予選を3~4試合見て、岡田監督のやってることはつまらんが日本サッカーは選手のレベルと経験が上がり着実に強くなってると感じたので、シーズン明けのスランプくらいさほど危機的には感じない。が、岡田監督がこれ以上策やオプションを増やさずに、「俊輔イン、あとは頑張れ」みたいな落とし所にいくのが明らかなことにはため息が出る。

 稲本が好調で敵の攻撃つぶしという持ち味を存分に振るっているそうなので、中盤の底を稲本・遠藤にして、スピードがあり右SBもできる長谷部を右ハーフに使えば相手を組み止める力と縦への推進力が大幅に上がると誰が考えても思う。それでも岡田監督は俊輔と長谷部が戻ったら稲本をはずすのだろう。ため息。

 スペインで俊輔が試合に出られないのは前に行く力がもともとないからで、セルティック絶好調時代もCLではFK以外と横パス以外何もできなかったではないか。つまり日本代表みたいなつまらんプレーをしていたら、攻撃力にならんからスペインじゃ試合に出られないのである。出るかもしれない俊輔の魔法を期待して06年は崩壊したのに、今回も同じことに突き進んでいる日本代表よ。

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■10/02/15(月) □ モーグルの競技性
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 昨日帰ってみるとモーグル男子でカナダ選手ビロドーが勝っていた。この選手が無茶苦茶感動的で、彼を精神的に強くサポートし続けているという重度身障者の兄貴が、スタンドで最前列で腕を振り上げ熱狂的に応援してるのである。弟の滑りに歓喜の雄叫びを上げる彼を見て涙を抑えるのは俺とMには不可能だった。

 しかし長野の原田に匹敵するほどの感動的なシーンだったのに、日本のネット報道では例によって「ナオ君入賞!」と日本の若い選手ばかり持ち上げ、まったく話題になってないようである。ヤングというならビロドーだって若冠22歳である。それがあの状況でインタビューされ、兄貴のことに言及し声を震わせつつもしっかりと答えられるのだから、カナダのアスリートは成熟している。たいしたものだ。

 そして女子上位と同じく男子のスピードと飛距離は鳥肌が立ち肩が凝るほどで、あのスピードで一気呵成に駆け下りるということ自体が強烈なスポーツ性と説得力を生み出している。モーグルは完全にオリンピックに値する種目になったなーと感服した。ここで4位の上村さんはまことにすごいと思う。

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 一方スノボは今日スノボクロス(?)をやってるが、相変わらずである。スキーよりもはるかに遅くコントロール性の低いもので競技をやられても、楽しそうだなとは思うが見る側にスポーツ的興奮など起こり得ない。ビーチバレーと同じである。みな転ばないように飛ばし、たまに尻もちをつきつつ降りて行くだけで、タイムをカットするためにインぎりぎりをつくといった基本的なレース性すら感じられない。まじめな話スノボというモノ自体に突き詰めるような競技性はないだろう。スケートボードでオリンピック競技を作ろうとは誰も言わないではないか。

 スノボやビーチバレーがかくも馬鹿げた優遇をされるのを見ると、オリンピックの商業主義を痛感する。オリンピックは金の無駄遣いだと反対している人々が今回も多いが(萌も学校でそういうことを習い、付け焼刃で反対論をぶったりする)、金の無駄遣いなどそれこそ映画芸能石油商業あらゆるところにある中、巨大な感動を生み出すポテンシャルを持つオリンピックをことさらターゲットにする意味はないと思う。オリンピックではなくすべての無駄遣いに反対すればよい。しかしスノボ競技とビーチバレーが金の無駄遣いであることには議論の余地もない。

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 うーん、スケート男子 500m でコリアに負けた。コリアはなんでウィンタースポーツでどんどん強くなってきたのだろう。ショートトラックのような新興スポーツで強いのはわかりやすいが、スピードスケートやフィギュアという種目で歴史がある日本がコリアに負けるとは驚きであり悔しい。韓国のスポーツでの強さと検索すると「隙間狙いだから」という意見が多数見つかるが、サッカー・野球やこういう王道スポーツにはそれが当てはまらないではないか。韓国にはなにかがある。それはなんだ。食べ物か?

 カナダ中が心配していた悲運の転倒青年ウォザースプーンは最後まできっちりと滑りきったが、勝ち負けには遠いタイム。スタンドからは清水が観戦しているのをカメラが捉えていた。この2人が競った長野オリンピックは実に面白かったな。今回表彰台の3人からは、空飛ぶカエル清水ほどの別格性もウォザースプーンのようなドラマ性も感じられないよねと俺はMに話す。最後にコーナーで加速しオーバーランした長島の2本目には逸脱する輝きがあったので、あれで勝てていたら伝説が生まれていたかもな。

2010/02/07

日記「『頭文字D』の峠」

「考えすぎだったかもしれない」「とにかく無念、朝青龍」「君にいっつも電話をかけて眠りたいよ」ほか。

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■10/01/27(水) □ 考えすぎだったかもしれない
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 不適切課題問題(「萌の担任はおかしい」)で萌の担任への失望に包まれてる真っ最中に、ちょうど Student Led Conference(※) がある。これは毎年フレンチなので見てもあまりよくわからんのだが、今年からは数学等があるので進捗度合いが見て取れる。萌は数学は順調に進歩しているようだ。
(※)学校で何をやっているのかを子供が教師と共にまとめ、30分ほどかけて自力で両親に披露するというこのイベントが、カナダの授業参観にあたる。


左は「クジラを飲み込むウワバミ
(星の王子さま)」の図、右は
「もし飛行機が落ちたら」の図。
 フランス語のノートやプリントを見ても担任の指導が劣っているかどうかなんて俺には分からないが、やっぱ萌はこの学校で不満なく楽しくやってるんだよなーと思う。課題を一番先に終えた班がポイントを得、そのポイントでオークションをやり先生からキャンディを購入するなんてことをやってるらしい。萌は目を輝かせてそのシステムを俺たちに説明する。そこはキャンディではなくもっといいものを買えるようにすりゃいいのにとは思うが、子供がそれで盛り上がるのは間違いないな。

 帰ってから、たしかにこの学校はアカデミックな面ではいいところが皆無だと思うが、やっぱりいまさら学校を変えるというのは萌には酷だろうとMと話す。萌自身が不満を抱えているわけじゃないのだから。Mも、そうねえ、私の考えすぎだったかもしれないわね......と考え直したようだ。

 この Student Led Conference で担任を評価し直したわけではないが、子供が学校で楽しく暮らしものを吸収する力は、教師の優劣程度ではさほど揺らがないということかもしれない。もっといい教師ならそれに越したことはないが、俺みたいにとんでもない暴力教師が担任でも(俺は掃除中に歌を歌い、授業中にマンガを描いて際限なくビンタされた)、子供はさほど抑圧もされず楽しくやってたわけだしな。

 夜ゴミを出しに行くと、ライラックが芽吹いていた。やはり今年は早い。

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■10/01/31(日) □ 3速ホールドにトライ
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 掃除と送迎日。BRを送って PoCo ダウンタウンを往復していて、うちのスズキ・エリオの最近の低速時の力のなさをカバーする意味でAT3速ホールドで走ってみた。4速 1200rpm あたりで流すとポンピング抵抗で回転が落ちるのを感じるので、2000rpm のパワーバンドに近いところで回転を保持すれば燃費が上がるかもしれないという実験である。

 なかなかいい感触なので帰ってからネットで調べると、3速ホールドにはエンブレ時の燃料カット域を広げる効果があるのだとわかった。4速スローダウンではすぐに 1000rpm に落ちるので燃料はまったくカットされないが、3速なら 2000→1000rpm の間燃料カットが期待できるということだ。

 燃費コンピュータを使い詳しく分析した人によれば、ゆっくり加速するよりも減速時に惰性走行とエンブレ燃料カットを長く取れるよう工夫して走った方が燃費が伸びるといっている。なるほど。これは習慣化していこう。

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■10/02/02(火) □ 「頭文字D」の峠
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 萌を学校でピックアップし坂を降りていくと、Lincoln Ave から下は4速に入れておけば相当下まで燃料カットで行けると判明。ということは坂に入ったらさっさと速度を上げ4速で降りていけば一番燃費が上がるわけだ。

 こうして減速(惰性走行と燃料カット)に気を使っているせいで、オーバースピードでコーナーに突っ込む癖が矯正され、コーナリングがうまくなってきた。無理のないスピードできれいに曲がっていく。エコランに燃えているので、コーナーでしゃかりきにならなくても運転技術を追求でき走っていて楽しいというのも好循環になっている。コーナーで3速に落としてるので、トラクションによるフロントの安定効果もあるのかもしれない。

 しかしエコランを始めると、加速した先で信号に引っかかるとか、信号待ちとかが耐え難くなってくるな。「せっかく燃料カットした (はずの) 5.6 mL がみるみる消費されていく」と実感できてしまう。「信号待ちがあっても燃料カットで取り返せる」と逆に考えないといかんな。

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 今日萌の日本語学校でマンガ「頭文字D」1・2巻を借りてきてしまった(潰れた日本食屋の貸出用蔵書がドーンと流れてきたのだとのこと、ありがたいありがたい)。「バリバリ伝説」の熱狂者だった俺には、バリ伝継続中すでに車へ情を移していた『裏切り者』しげのの作品というイメージがあってこれは読んでなかったのだが、彼の峠への愛情はバリ伝にもこのマンガにも等しく出ているのだった。


ああ、峠。峠よ峠。
 木々の合間から下に続くつづら折りが見えるなんていうカットはたまらない。この絵を見るだけで、ああ、と彼へのわだかまった気持ちが解けていく。―――ああ峠に行きたい。PoCo 市には安全に攻められるカーブが2箇所しかないのです。

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■10/02/03(水) □ とにかく無念、朝青龍
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 朝青龍、引退発表。やはり先場所千秋楽のあの相撲と異様なうつろさは、すでに魂が抜けていたのか。

 引退会見では、「品格」に関する反発を少しだけ語っている。サッカー事件を含め、俺は朝青龍の過去のすべての「問題」を取るに足らぬことだと思うが、格闘家が非格闘家を殴ってはどう言い訳もできない。相手の黒い噂もあり、なんらかの正当防衛に近いものだったのではないかと願っていたのだが。

 「日本の国技だからね。相撲は悪いことばかり続いてるから、これ(朝青龍引退)でみそぎになるね」なんて言ってるオヤジを見ると、相撲史上最悪の悪いことをしたのは日本人ではないか、そういう事件でイメージを落とし入門者を減らし強い関取を出せないのが日本の国技ではないかと思う。オヤジという品性下劣を放置している日本が、モンゴル青年の品性下劣さをそれほど批判できるのだろうか。

 とにかく無念である。力が落ちるにつれもっと面白い相撲スタイルに移行し、そしてずっと相撲をとってほしかった。いやはやなんとも。いやはやなんとも。

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■10/02/04(木) □ 朝青龍は酒乱ガスコイン
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 朝青龍事件の「被害者」が出した、「俺も酔っていたし、当事者間では解決してるので穏便にしてください、(横綱引退などとなれば)自分も一生負い目を負うことになりますから」という示談書というものが新聞に掲載された。誰だか知らないが自分がどれほどの才能を葬ってしまったのか、本当にわかっているのだろうか。

 まあそれは朝青龍本人とその取り巻きにも言えることだな。本人は泥酔で覚えておらず、マネージャーは喧嘩を止められず、善後策(穏便な示談調停)も取らなかったらしい。朝青龍は酒乱ガスコインと同じだったということかもしれん。サッカー選手なら出場停止で済んでも、格闘技(ことに相撲)ではそうはいかないのである。

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■10/02/06(土) □ 君にいっつも電話をかけて眠りたいよ
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 掃除中適当に選んだ MP3 で小沢健二がかかる。
- お茶でも飲みに行こうなんて電話をかけて 駅からの道を行く 君の住む部屋へと急ぐ (愛し愛されて生きるのさ)
- 君にいっつも電話をかけて眠りたいよ 晴れた朝になって 君が笑ってもいい (天気読み)
- 遠くまで旅する恋人に 恋人にあふれる幸せを祈るよ (ぼくらが旅に出る理由)

 彼女には彼女の部屋があり暮らしがあり、そこを訪れて行くうれしさ、行けないときの甘いつらさ、自分がいない時間でも彼女がハッピーなら悪くないという感じ―――小沢健二はそういうところがいい。

 ひるがえって現代(というかまあ 90 年代以降)凡百 JPOP は、あれはなんだ。日本の電車の中の馬鹿カップル同様、とにかくひっついていたい、信じて待ってる安心うふうふと汗ベトベトだ(バンクーバーの公衆で過度のベトベトをやってる中高生も、なぜかアジア系が多いように思う)。耐えられん。

 最近まで知らなかったが小沢健二はミュージシャンとして引退していたそうで、今年復活ライブをやるのだそうだ。パフォーマンスシンガーとしての彼はうまいわけでもないからライブを見たいとは思わないが(萌と一緒に Youtube で彼のライブを見たら、歌も踊りもヘタでかわいくて笑ってしまった)、新曲を出してくれたらいいなと思う。

2010/01/26

日記「萌の担任はおかしい」

「朝青龍の相撲がつまらん」「不適切課題問題解決」ほか。

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■10/01/19(火) □ 朝青龍の相撲がつまらん
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台湾の小沢健二 Crowd Lu
 台湾音楽を紹介する NHK の番組で、Crowd Lu という台湾の小沢健二的なシンガーを発見。他の台湾ポップは日本と同等にくだらなく、ロックバンドは総じて 80 年代という感じの古くさいビートと音だったが、彼は最高だ。Youtube で英訳詞を見ると、メロディと彼の表情とメッセージはナチュラルにマッチしており、すがすがしい。日本以外のアジア音楽でいいと思ったのなんて久しぶりというか初めてだな。

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 【初場所】白鵬がスランプに陥り朝青龍が抜け出したのだが、あの張り差しはほんとやめてほしい。もう単なる手癖になってるのだろうが、普通に立っても誰にも立ち負けないのにわざわざ張って相手を撹乱し優位を取ってから始めるのだから、相手はまともに組めずひとつも面白い相撲にならないのである。俺は朝青龍のファンだが、彼がこうしてテンポよくさっさと相撲を壊して片付けていくときは本当につまらない。横綱がわざわざつまらない相撲に持ち込んでどうするのか。俺は彼の行状素行などどうでもいいが、つまらない相撲を取るのはやめてほしい。今のお前の相撲はつまらないと誰かが言えばいいのに。

 さあ把瑠都戦、今日も張るのか。―――おー、張らなかった。きれいに投げ飛ばす。これならば納得であります。相手をなめずしっかりと取るときは張らず、弱い相手は張り差しで簡単に済ませようとしてしまうのかな。そこを、弱い相手でも面白い相撲にしてやろうとはならんものだろうか。

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■10/01/21(木) □ 萌の担任はおかしい
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 週明けの風が収まると、気温が上がり雨が減り、これからウィンターオリンピックだというのにBCは春めいてきている。去年は大雪に苦しみ、今年はスノースライダーとシャベルも新たに用意したのだが、今年は積もるほどの雪なしで終わりそうだ。

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 萌のクラスで今週始まったプロジェクトはワイルド・チャイルド、いわゆる狼少女についてだという。その話は俺は狼に育てられたという有名な1件しか知らないのだが、世界には動物に育てられた例がたくさんあるのだという。

 えーそうなの? と調べると、「ワイルド・チャイルド」とは広義では人間として育てられなかった子供という意味で、Wiki に載っていたのはほとんどすべてが児童棄却と虐待例だった。当然だよな。こんなショッキングなことを子供が学んで、なにか実りがあるはずもない。抗議して止めなければならない。どうも萌の担任はおかしい。アート関連のセンスは非常にいいが、バランス感覚の欠けた変なところが端々に感じられる。

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 【魁皇】白鵬をとったりで破る。今場所の魁皇はここ数年で最高の体の切れで、惚れ惚れする美技を何度も見せてくれ、やはりこの人は相撲の天才なんだなと改めて思っていたが、まさか白鵬を破るとは。まことに相撲界の宝です。相撲の前は柔道をやっていたそうだが、あのたぐりの呼吸や鋭さを見れば、格闘全般のセンスが優れているんだろうと思う。同期の貴乃花らよりも大きく出世が遅れたというのが不思議なくらいの力士だ。

 しかし魁皇の技は完璧だったが、それにしても白鵬がとったり一発でああもバランスを崩してしまうというのは普通ならあり得ないことで、ここまでの2敗が白鵬の心身をどこか狂わせているようだ。一瞬で決まる相撲でピークを保ち続けることは、かくも難しいということである。

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■10/01/22(金) □ 初春か
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 今日はもうまるで春のような陽気。オリンピックは雪が足りるのでしょうか。午後うちに来たWLを、夕方萌とともに自転車で伴走して送っていった。まったくもう春だ。このまま寒の戻りがなく春になってくれるなら本当にラクだが、どうなのか。

 【朝青龍優勝決定】朝青龍は張らずにちゃんと回しを取りに行き、日馬富士もできることはすべてトライし尽くして、いい相撲でした。こういう相撲をいつもやってくれると気分がいい。朝青龍の「疲れた(笑)」という言葉もいい味でした。

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■10/01/23(土) □ 朝青龍気抜け
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 【千秋楽】魁皇、土俵際でバランスを崩しながら横移動で立て直し逆転勝ち。足が動く状態の彼は本当にすばらしい。体がボロボロだボロボロだと皆がいうけれど、足も手もすばらしい切れ味の今場所の相撲は、ぜんぜんボロボロではなかったのでした。

 朝青龍は白鵬に気の抜けた相撲で負ける。その後のインタビューも完全に気が抜けており、どこからこの強さが? みたいな月並みな質問に、え、まあ心とか...と実に月並みな返答を返していた。彼のこんなインタビューは見たことがない。なんか心境の変化が著しい年頃なんだろうな。最後の一番が気抜けだったし、インタビューはあれだし、ちょっと先々が気になる終わり方でした。

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■10/01/25(月) □ 不適切課題問題解決
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 【ワイルド・チャイルド課題問題】Mが萌の担任と協議しに行くと、彼は来訪内容を萌から知らされ緊張し待っていたそうだ。こんな極端な人権悲劇ケース(実際どのケースも「事件」ではないか)を取り上げても、子供に深刻なトラウマを引き起こすばかりで何も学べないとMが指摘すると、まあそれも一理あるね、もう今日から別のトピックに切り替えたよ、僕は diversity(人々の多様性を受け入れる)学習の取っ掛かりにしようと思っただけなんだ云々と語ったとのこと。なんで diversity で狼少女を思いつくのか(呆)。受け入れるとか入れないとかそういう問題ではないだろう、そんなエクストリームな事案は。

 萌の担任は俺たちと同年代だろうから、これまで長年の実務経験があるはずである。前任地は米国だったらしいが、こんなことをやって親たちから総スカンを食らった経験がないんだろうか。

 今回の愚行はこれで止められたのだが、Mはこの学校をやめさせ萌をいい学校に入れたいと嘆く。払えるなら大金を払って私立に入れたいと。この学校はフレンチエマージョン(フランス語科)であり、フランス語の教師人材がBCでは少ないからレベルが低いのだろうとMも認めざるを得なくなってきている。何事も分母が小さいとレベルが落ちる。

 しかしそういう財力のあるものだけが優れた教育を得られ、そうでないものは我慢するというその図式自体俺は嫌なのである。こうして学校の愚行に目を光らせ、家で子供にガイドを与えながら、なにかもっと現実的な道を探るしかないだろう。

2010/01/21

日記「日本クリエイティブの迷いの森」

「FF9が終わる」「GoogleIME で仕事」ほか。

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■10/01/10(日) □ デジタルビデオの整理
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 ハワイ旅行ビデオの編集をする。借用していた Xacti CA9 の MP4 というのは圧縮率はいいのだが、解像度 1280 だと俺のPCでは再生激重になってしまう。ファイルサイズを考え 640 を主に使っておいてよかった。640 だと1旅行60分で 1.8GB。これでもハードディスクに置いておくには容量を食いすぎるので、DVD にキープする。

 しかし最近のカメラは写真でもファイルサイズがでかい。うちの Powershot A530 は5メガで Xacti は9メガだが、ファイルサイズは約3倍の1枚3メガ。これじゃディスク量がいくらあっても足りん。

 俺は自分の Powershot が気に入っており当分買い換える必要は感じないが、いつか買い換えるとしたら広角・高 ISO なカメラがほしい。景色のいいところへ行くたびに写真にはその広大感が写らず、広角カメラが欲しくなるのである。普通のカメラに写るのなんて眼前30度くらいのもんだもんな。これが90度くらいじゃないと、気分のよさは写せないだろう。



見事な合成、つなぎめは見えません
 これを書いていて今気づき、Powershot のパノラマ合成というのを初めてやってみたら、簡単で思ったよりもきれいにできた。やっぱ画角2倍は気持ちがいい。あーやはり自機をハワイに持っていくべきだった。次の遠出でトライしてみよう。ノーマル風景写真1枚に加え、パノラマを左右2枚分撮っておけばよいわけである。

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 ホノルル経由で帰ったMを迎えに、大雨の中真夜中のBCを駆け抜けた。しかしバンクーバー空港の最安駐車場代が30分で$4とどえらい料金になっている。40分止めていたので$8である。これほど高い駐車場代は世界のどこにもないのではないか。長期パーキングも06年は1日$7だったのが、今回は$12と倍近くに上がっていた。ハワイでのレンタカー代がガス込み1日わずか$35だったから、パーキングだけでこのプライスは暴利といわざるを得ない。すべてがオリンピック価格なんだろうか。

 Mは1日半会議に出て、あとは町をぶらつきレストランで豪華な食事を楽しんだだけとのこと。ワイキキはビルだらけの大都会で、日焼けが怖いのでビーチには降りていかなかったそうだ。

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■10/01/14(木) □ FF9が終わる
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 今日はゴミ収集日なのだが、今年から市の経費&ゴミ節減で普通ゴミは2週間に一度となってしまった。こんなところで経費節減せず、グリーンごみを月2から月1にすればいいだろうに。昔は冬はグリーンごみ回収はなかったのである。はーあ。春夏は生ゴミは2週間も持たないので、ゴミを冷凍保存しなければならない。やれやれ。

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 夜、ついにファイナルファンタジー9が終わる【以下ネタバレ注意】。

 最後のダンジョンらしきところへ登っていくと、最初はザコ敵にも全滅させられていたのだが、徐々に対応がわかり自チームのレベルが上がり、やがてフロアごとのボス敵さえも弱く感じられてくる。そしてセフィロス同様出番を延々引っ張っていたクジャもあっさりと破り、するとクジャのあと誰だかわからん大モンスターが出てきた。こういうところが7同様意味がわからない、誰なんだあのラスト敵は。まあこいつもさほど苦労することなく倒せ、あっけなく戦いは終わる。あとは延々30分のエンディングだった。


FF9感動のフィナーレ
 ストーリーは7同様分裂症でワケがわからず、後半は一本道の手続き処理ばかりで短く、ボスたちが弱かった分達成感も低い。しかしこのエンディングがおとぎ話的ハッピーエンドでいいシーンもムービーもたっぷりとあり、そのおかげで萌が喜び後味はよかった。萌はこのゲームにはまり情熱を注いでいたので、味気ない終わり方でなくてほんとによかったぜ。なにしろ最後の敵が誰だかわからないという分裂ぶりなのだから、エンディングくらいちゃんとやってくれないとアンチ・クライマックスも甚だしいのである。

 日記を見ると08年正月に始め、途中「アビリティ」の使い方がわからずチームが強くならんと欲求不満になり1年半中断してしまったのだが、まる2年のプレイ期間でした。多彩な町やステージとミニゲームに満ちたFF7ほどではないが、今回もなかなか楽しい旅でした。特に前半はよかったよねと萌と語り合う。

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■10/01/16(土) □ 日本クリエイティブの迷いの森
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 あーFF9を終わらせたくなかったなという萌に、これは最初が一番面白いんだから最初からもう一度やればいいじゃんというと、嬉々として1人で開始する。序盤はほんと最高の活劇だな。姫の城脱出、飛空船の不時着、リンドブルムへの突入、城下町での路上モンスター祭り etc etc。後半は「真の生命の意味の裏切りの星の運命の叫びの友情の.....」みたいなファイナルファンタジー節が延々と続き、わかったよわかったよとメッセージを飛ばし次のタスクへと進むだけのゲームになってしまうわけだが。

 序盤絶好調活劇で後半迷いの森に混迷していくというのは、宮崎映画とも共通している。日本じゃアニメでもゲームでも、後半盛り上がりが配されていても物語的には止まってしまうことがやたらに多い。ドラマや映画でも、後半徐々に整合感が欠けてくるのが気になることはよくある。これは日本人クリエイターの体力・ペース配分・気質が入り混じった特徴かもしれない。たぶん日本の創造物は個人の力量と作家性に負うところが大きすぎて、創造主が暴走すれば止められず、そのアイデアが枯渇すると停止してしまうのだろう。

 ハリウッド映画的システムでは、バランスを欠いた暴走や枯渇は構造上起きえないのだと思う。フレンズとかシンプソンズがあれだけ長く続いてもシナリオが毎度ちゃんと面白いのは、才能ある作家を莫大な俸給で大量に雇いローテーションで仕事を分配しているからだろう。投資が返ることが最初からわかっているハリウッドにしかできないそういうシステムはなんかフェアだと思えないので、個人作家性依存システムを否定したくはないのだが、大御所にも横から口をはさむ人が常にいてほしいものである。

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■10/01/13(水) □ GoogleIME で仕事
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 初めて GoogleIME(Google 日本語入力)で仕事をしてみたが、「スラングだらけで仕事に使えない」なんて噂は全然当たってなくて、ごく自然に変換エラーなく打てた。要は打つ人の普段の言葉遣いが問題なのである。サジェスト機能は一度入力した語は次も出る機能として、コピペが不自由な Word 上での修正に非常に役立つ。

 仕事後、MS-IME から移植した GoogleIME の単語登録を見直してみた。1990 年のキャノワード → WXII (DOS) → WXII (Win 3.1) → MS-IME (Win95/98/XP) と俺が育て続けてきた 1000 余の登録単語はもう 99% Google 辞書に載っており、登録しておく必要がないのである。宗石亭、墨坂、夜間瀬川なんて田舎町の地名がデフォルトで当たり前のように出てくるから驚いてしまう。「db→データベース」といった略語以外はもう必要なく、さらばと削除。一度自力で入力すれば造語すらも履歴として覚えてしまうわけで、今後のPC人生単語登録の必要はほとんどなさそうである。

 GoogleIME はサジェストの豊富さばかりが話題になっているが、この履歴学習の賢さもとんでもないと思う。たとえばデフォルトで「咳薬」は入ってないが、「咳」「薬」と打てばもう次回からは「せ」だけで「咳薬」と確実に出るのだ。一度入力したものが人間の記憶のごとく柔軟に取り込まれていくところが、まだ完璧ではないにせよ素人には想像もできないようなすごい処理だ。

 Windows はいいなあ。安い車をチューンアップしていくような楽しみがいつも味わえる。まあ GoogleIME は Mac 版もあるんだが、いじくりやすさが違うだろう。

2010/01/12

日記「ハワイ・ビッグアイランド(2)」

「シャンペンポンドと Lava Tree Park」「ヒロからコナへの全力疾走」「紅白過大評価合戦」ほか。

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■10/01/05(火) □ シャンペンポンドと Lava Tree Park
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2人はこの調子で一日中
喋くりあってます。
 萌がヘロヘロで疲れて目を覚ます。昨夜ずーっと喋くり合っていたイトコSFがべッドに向かったとき、萌はエナジーが尽きひゅるるるとしぼんでいったのだった。あれだけ喋るとやはり疲れるのだろう。

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シャンペンポンドの透明度!
 今日はうちのホームラグーンで泳いだ後、地熱で海水が温まっているというシャンペンポンドへ初めて行く。ホームラグーンでもところどころお湯が湧いているのを感じるが、ここはまさに温泉だった。ホームは暖かい部分で 28 度、冷たいところは我慢できないほどの冷水で、水温が入り交じっているが故に常時にごりというか水のゆらぎが多く見通しが利かないのだが、こっちは全面 32 度くらいありそうで、均等温度ゆえにクリスタルクリアー。スノーケル&ゴーグルをつけて温泉で泳ぐというのは子供が誰も夢見ることだが、それが熱帯魚付きで実現という豪華版なのである。

 しかもここは完全な人工ラグーンらしく浅瀬はビーチ状に浅くなっている。水温が高過ぎるのか魚の数はホームよりだいぶ少ないが、小さな魚が群泳しているのを安全快適な浅瀬で見られるのは素晴らしい。

 小さなウツボを発見。おーとしばらく皆で追いかけると、鎌首をもたげ威嚇っぽいポーズを取る。おーと皆が後ずさる。楽しい。俺は足が付く場所を探して休み休み潜っているのだが、萌はもう一瞬も浅瀬に上がってこず浮いている。すごい熱中ぶりである。

この亀がうちの池に
いるんですから、もー。
(ホームはホームで魚の豊富さが素晴らしい。うちのラグーンには亀が住んでて、毎日どこかどこかでお目にかかれるんだからすごい。俺と萌は水中では見れなかったが、水上からは←この距離で見ることができるのだ。)

 しかし海というのは怪我がつきもので、萌のカバーで無理な動きをするせいで2日続けて足に怪我をしてしまった。ダイビングは岩場に取り付く瞬間が一番危ないので、萌があせって脚をぶつけないよう補助すべく体を入れ、自分の脚を打ちつけてしまった。今日のつま先の怪我は血がタラタラ出て滅茶苦茶痛い。あいたたたた......。

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枯山水の世界、Lava Tree Park
 午後はごく近場の Lava Tree Park というところへ行く。これが素晴らしかった。Lava Tree という名の通り、熔岩が流れた際に樹木をコートし、樹木が中で焼け落ち中空の熔岩のコーンが残ったというもので、数十の熔岩コーンを巡り歩く遊歩道になっている。その自然が作った偶然の産物が実に1つ1つ美しく、いにしえの仏師に彫られた彫像が注意深く配置された寺院の庭のように見える。苔むしぷりも完璧で、龍安寺の石庭のごとし。実にスピリチャルな場所であった。

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■10/01/06(水) □ Hilo 観光
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ヒロの小さなマーケット
 Hilo 観光。シアターでフラダンス(というかハワイの歴史講話)を見たあと、萌はマーケットで友達へのおみやげを買う。俺は欲しいのはウクレレくらいだが、明日はもう帰るのだから今頃買っても無駄だなと思う。ハワイ製のちょっといいのを買うのでもなければ意味はない。で結局ウクレレはよして、インドネシアの安い竹パーカッションをゲット。音は同じ店にあった$30のやつに遠く及ばないのだが、パーカッションというものは面白い。

 初日のホテルからずっとそうなのだが、この島で働く労働者はほとんどみな、無愛想で英語にすごい訛りがある。地元民じゃないのだ。顔つきからはポリネシア系に見えるのだが、フィリピンなどからの労働移民ではないかと推測される。ここで観光客が求めるのは気候のよさと火山なので人々が無愛想でも別段文句はないが、せっかくパラダイス的な土地にいながら味気ないといえば味気ない。愛想がいいのは値段がはるレストランのウェイターだけだな。

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■10/01/07(木) □ ヒロからコナへの全力疾走
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さよならカポホビーチ
 とうとう帰国日。このまま学会でホノルルに向かうMを送り俺はヒロ空港へ寄ってからコナ空港へ行くので、萌はコナ方面に直行するSHたちに同行させる。1週間を過ごした宿を離れる寂しさと、マミーと離れるつらさが襲い、萌はうっうっと泣きながら出発する。さよなら、カポホビーチ(帰国後日記を書くために地図を見て、初めて自分がカポホという土地にいたのだと知った ^-^;)。

 俺はMをヒロ空港で降ろしてSHと萌たちを追う。2時間全力疾走の後ブラックサンドビーチで見事追いついたのだが、萌はイトコSFと一緒に行きたいといって結局俺の車には移ってこず(苦笑)、結局最後まで1人のドライブとなる。有名な観光地を飛ばしていながら、今ひとつ心は盛り上がらない。バイク時代のソロツーリングみたいな気分にはなれなかった。やっぱ同乗者と景色がきれいだなんだと語りながらでないと、観光は盛り上がらないのね。そもそもビッグアイランドは溶岩だらけで殺風景だしな。

 それにバイクで日本を旅していた頃は時間も場所も定めぬお気楽旅だったのだが、今日の終わりにはフライトがあるわけで、いくら走っても一向にコナ空港が近づいてこないぞという焦りで休憩できなかったのが、盛り上がらなさの一因としてある。ヒロからコナへのドライブは 2'45 なんてのは大嘘で、ガラ空きの道をほぼノンストップで3時間半ほどかかった。コテージ発から4時間15分、疲れた。

 これほど車で本格的に飛ばしたのは初めてである。Mも萌もいないので、自分の力量と安全と法規だけを見ながら全力で走ることができた。キラウェア下りの高速ツイスティではステアに若干の遅れが出、やはりフォーカス米国仕様は日欧仕様に比べ相当にサスとステアに遊びがあるんだろうなと感じる。徹底してファミリーカーとしてチューンされてるようで、これだけの好条件でおお気持ちいいと思うほどぴしっと決まったのは数回だけだった。

 ブラックサンドビーチ以降の30マイル以下ツイスティは長野の山の中みたいな超タイトコーナー群で、低速安全に全力で曲がれ最高だった。切れやトラクションのフィーリングは凡庸だが、しかし超タイトなところをギリギリのスピードで曲がっていっても(前をスポーツカー・マスタングが走っていたので追尾)、タイヤが鳴くとかアンダーが出るなど破綻をきたさないのだから、やはりシャシーバランスはすごくいいんだなと思う。ホイールベースが短いエリオならもっと気持ちよくくるっと曲がれるに違いないが、エリオにこれだけのGをかけたらバランスを崩すと思う。

 しかもこれだけ飛ばして燃費が 37MPG (15.63km/L) なんだから、いやはや。エンブレなしで疲れるとはいえ(最後は右足が攣った)、フォードがこういうエンジンにするのもむべなるかなだよなあ。ストップ&ゴーがなければまるでハイブリッドみたいな燃費が手にはいるのだ。やはり車の実力としては大したものである。負けました。

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 ◆21:20 チェックイン終了。帰りのほうがやはり手荷物チェックは簡単だった。さよなら、ハワイ。

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■10/01/08(金) □ 静かに沈む北の国へ帰宅
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 8時着でラゲッジが出てこず、10時に家につく。ふー。今日のバンクーバーは小雨で寒くはなく、ハワイとの巨大な気温差など特に感じることもないのだが、静かに沈む北の国という感じがすごくする。ハワイはなにかいつも空気がさざめいていたようなイメージがある。実際鳥の声、波の音、風の音、車の音といろいろ聞こえていたしな。

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 正月の天皇杯を見ていたら気を失うように寝てしまった。萌は飛行機が出発する前から6時間寝通したので、疲れているが眠くはないようだ。

 で夜、早めに寝かせようとすると、ついに爆発。I miss ハワイ、マミーマミー、と号泣が止まらなくなる。これほど泣いたのは小さな頃以来だろう。はあ、やれやれ。1時間かけて泣きを止め、ホノルルにいるMに電話。これで萌も落ち着いたようである。

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■10/01/09(土) □ 紅白過大評価合戦
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 萌はやはり非常に疲れており、8時に起こしても反応がないのでもう半時間寝かせておいた。昨夜泣きすぎて目が腫れてます。

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 録画しておいた【紅白歌合戦】を見ているのだが、「こども紅白」という、子供がやればなんでも全てかわいいのか、これじゃペット芸だろうと思うイベントを含め全部不愉快で、全部早送りして前半終了。

 【スーザンボイル】この人は「こんなアグリイなおばさんからこの美声が!」というだけのことなのではないか。美醜の落差と音楽の価値とはなんの関わりもない。

 【Aiko「あの子の夢」】独特のこぶしが気持ちいい人だとは思っていたが、この曲も自作とは感心する。大塚愛やこういう人がやはり日本ならではの、他の国にはないメロディを生む才能だなあと思う。平原綾香のバックで完璧なブライアンメイ奏法をお茶の間に届けたローリーは、ロックが日本で育てた才能である。EXILE はムード歌謡とド演歌の土壌に洋楽を挿し木して育てた花(というかなんというか...)といえよう。

 【ゆず「逢いたい」】NHKの少女ドラマの主題歌としてこれが流れたとき、この拙い言葉とメロディと歌唱はどこの子供だ、またジャニーズかと思ったら「ゆず」だった。EXILE とゆずと東方神起は現代ニッポン過大評価大賞の1・2・3だろう。だいたい紅白とは過大評価合戦なのだともいえる。前半に司会その他で出てきた清史郎君だのポニョの子も同じことだ。

 【矢沢永吉】見え見えのサプライズはどうかと思うが、去年のミスターチルドレンみたいに別スタジオで演奏しても意味がないので、あの登場からホールに入り歌いまくったのはよかった。紅白過大評価合戦の観衆を啓蒙するのがここでのロッカー枠の使命なのである。このステージにロッカーを上げるには、こういう特殊枠しかないんだろう。

 【DREAMS COME TRUE】ついに女子トリとなったが曲が地味であった。その地味さを覆うために吉田美和が絶叫しすぎていた。何年か前の「何度でも」がドリカムのエモーショナルなピークだったようである。残念。

 総じて、歌の力歌の力とNHKは騒いでいたが、このショーで本当に歌の力を見せたいのであればNHKは演歌枠と Jpop 枠を相当数削り、過大評価愚民でもわかる説得力を備えたミュージシャンを呼んでこなければならない。今の形態ではどうやっても無理である。