■07/07/18(水) □ 日本行き決定
朝イチで萌に日本行きの事情を話す。おじいちゃんが病気で、お父さんはしばらく日本にいなきゃならないんだ。萌はしばし泣いたものの、聞き訳よく納得してくれた。ふー。
夕方OKOから、誕生日とお祭りのために病院から一時帰宅した父さんの写真が届く。元気そうに笑ってるじゃないか。うれしくなって即電話。あまり喋るとつらそうだったので、すぐに帰るからね、元気出してよと早口に伝える。
今帰れる身でよかった。まだ笑い顔が見られるうちに間に合ってよかったとほんと思う。
■07/07/24(火) □「そんなにすぐに止めらんない」
◆13:45 日本行きフライトのゲートに向かう。ゲートで見送る萌が泣き、かわいそうなのでゲート内に入ってからセルフォンに電話する。車の中で電話をとった萌は、「お父さん!? うわー」とボロ泣き状態。
あんまり泣かないでくれというと、「そんなにすぐに(涙を)止めらんない」と答える。なんて美しい言葉を使い気持ちを伝えてくれる子なのかと感動する。「そうか、じゃあマミーをハグして泣けばいいよ」「はい」「そうすればそのうち元気が出るよ」「はい」「すぐにまた電話するからね」「はい」。
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◆1525: 15分遅れで離陸。萌の席は空いたままだった。ここにうちが $300(キャンセル料) 払っているので、足を伸ばすために使わせてもらう。おかげでだいぶラクだ。
◆20:16 映画を2本見ているうちに順調に時間は経っていく。あと4時間。映画は老いた母親が亡くなる「東京タワー」というやつで、病院で俺を待つ父さんとあまりにも似通い憂鬱になる。
もう1本は整形美女が人気者になりながら良心の呵責に耐えかねてステージで告白するという韓国映画で、女優がかわいくて面白い(※)。整形なんて恐ろしいテーマをよくこんなふうに持ってこれるなあとお国柄の違いが面白い。
(※)「美女はつらいよ」キム・アジュン
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乗り換えがうまくいき1本早い電車で成田を出る。気温は高くないが湿気が強烈。そして日本は夏草がすごい。熱帯。いい感じで連なる成田の丘が、雑草と竹にこんもりと埋もれているのが美しい。そして日本の列車はオヤジのビールとサキイカくさい(笑)。全て総合して、アジアにきたなあという喜びが湧いてくる。
◆03:18 新幹線。さすがに疲れが出てきたのだが、弟OKOは忙しくて長野まで迎えにこれないとのこと。成田→上野→長野→須坂が全自走というえらいハードな移動となってしまった。まあ仕方がない。
上野で地上に出たとき、夏の夕暮れの東京の混沌がよかったなー。2人乗りのスクーターや自転車や小さな車がガード下をくるくると走り回り、轟音を立てて電車が駆け抜け人々が交錯していて。
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ようやく須坂にたどり着き、店に寄って「お前はるばるカナダからきた兄を迎えに来てくれんとはどういう冷血な弟だ」とイヤミを言ってから母さんのところに向かうと、なんと父さんが帰ってきていた。えーっ! 病院だとばかり思っていたよ、父さんのお気に入りの息子が帰って来ましたよと抱き締めると、父さんはありがとうありがとうとうれし涙をこぼすのであった。
顔を見た瞬間は衰えが見て取れたが、話を始めるとどんどん顔色がよく表情にキラキラと精気を戻る。そして嬉しさに話が止まらず、競馬雑誌なんかをさっそく引っ張り出してくる。そうやって調子に乗るからあとでどっと疲れちゃうんだよと母さんに止められたが、いや本当に元気でびっくりした。
アジアカップを見ながら母さんに話を聞くと、今はもう痛みを抑えるのだけが医師の仕事なので、できる限り家でいい時間を過ごしてくださいということなのだそうだ。なるほど、そうだね。俺はできるだけ一緒にいてあげよう。
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【アジアカップサウジ戦】は、俊輔が入ってさえも「相手の方がうまい」という去年のサウジ戦からの印象は変わらず、というか相手は去年よりうまくなり戦術もよくなっている。日本の攻めをしっかりバランスをとったマーク網でつぶし、角度のある1・2で1対1を作りブラジルのように個人技勝負を仕掛けてくる。ブラジル人ぽい監督が映っているが、この人が明らかにいい仕事をしている。2点目3点目は取られ方も決定的で、素晴らしいとしかいいようがない。
2点までは根性のセットプレーで取り返したが、足の遅いパサーばかりゆえつないでスキを狙う以外守備ブロックを崩す方法がない(相手はラストパスの受け手を予測し間合いを詰めるだけで余裕で対処できる)という日本の特徴がもろに出、そして1対1を作られるともろいという弱点もうまく引き出されてしまって、個人能力とチーム力両面での完敗であった。
ジーコへのアンチテーゼがこのチームのはずだったのに、結局連れて行ったのは今回もみなパサーだったというオシムのチーム戦略ミスでもある。しかし田中達也・大久保・玉田らスピード型FWのフルポテンシャルがどういう理由か出ていないという現状では、どうしようもなかったのだろうか。
■07/07/26(木) □ 意外や元気→急転直下
◆05:26 もの音でほとんど眠れず時差で4時半に目が覚めてしまい、そっと起き出すと父さんも起きていて声をかけてきた。朝の涼しい縁台に座ってゆっくりと話をする。こんなに元気だとはほんとに驚いたよ。嬉しくなって調子に乗り、話しすぎて疲れさせないよう気をつけねば。
長野はまだ梅雨が明けてないそうで、朝は涼しく気持ちいい。母さんを起こしたくないのでコンビニまで歩きオニギリと缶コーヒーを買ってくる。やっぱ日本はいいなあ (^-^)。
父さんは長い時間は眠れないのか、目を覚ましてはチョコチョコなにかをしてまたすぐ眠っている。朝飯を自分で用意したのだが食べずにまた寝てしまった。あまり世話を焼くとかえって対応に疲れてしまうだろうから、俺は目を配るだけにしておく。
8時頃M萌に電話。もう空港で別れてから向こうは1日半が経過しており、色々と報告を受けた。
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◆11:31 昼寝しようとしてどうも眠れず、腹が減ったので昼飯にしていただく。うまい。食べていくほどに食欲が増していく。父さんは朝飯を食べて話をしているあいだに体調が下がったようで、顔色が変わり横になってしまった。それを見ると、やはりこっちが現実なのだと実感する。
そんなこんなで、夜病院へ。
■07/07/27(金) □ 須坂の魅力再発見
よく寝て時差ボケは1時間ほど解消した。とにかく朝飯をしっかりと食べ、活動して体調を上げていこう。買い物に出たがまだどこも開いてなかった。仕方がないのでまたコンビニ。まこと日本は便利な国だ。今日はついに晴れて真夏日。
こういう田舎町の狭い道には軽自動車が最強で、交差点をしゅっといい感じの速さで曲がってくる小さなかわいい車を見れば、運転しているのはみな普通のお母さんなので驚いてしまう。小さいからライン取りに余裕がありけっこうな速さでコーナーを抜けてくる。その光景が、資源だけではなく【路上占有スペースX時間】的にも無駄がない軽自動車の効率のよさを示している。
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交代のため病院に来ると、昨夜病院でぐっすり眠れたと父さんが絶好調になっていた。ちょうど見舞い客もあり、大いに語り盛り上がりおやきなど食べ、またバタリと寝てしまった。よかったよかった。
この病院は見晴らしが素晴らしい。北の雁田山、東の臥竜山、西の長野市と飯縄、町屋や寺の屋根、見える景色の全てが懐かしく、高校時代を思い出す。上からだけ見ると須坂は驚くほど美しい。何枚も写真を撮った。
しかし看護婦さんというのは実に尊敬すベき人々で、人の家族構成など興味もなかろうに年寄りの長話を遮ることなく根気よく聞き、世話をしてくださる。皆さん20代なのに普段使うわけがない須坂の地言葉でじいさま方に接して、気易く話しやすい雰囲気を作ってくれる。本当に頭が下がる。
昼寝から覚めた父さんが退屈そうにしてるので、炎天下メガネと本を取りに帰る。日なたを歩けばふうと息をつきたくなるが、冷夏で予想よりも暑さはなくラクである。UVの強いカナダの方が日なたはキツイし、俺は湿気が好きだしな。
しかしメガネはあっても父さんは集中力が続かないようで、本も長く読んではいられない。母さんの交代が来るまで俺がずっと話してやった。競馬、一緒に競馬に行ってたARたちのこと、大学時代の退屈さ、青春時代の充実について。父さん母さんのおかげで、わりあいに後悔の少ない人生だよと。父さんも昔のことをみんな覚えている。一緒に行った北海道名馬訪問の旅のことやバンクーバー競馬場のことを、いい思い出だと笑った。
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夕方、カードで持ってきた写真を父さんと母さんのためにプリントする。軽自動車もいいが、さらに自転車でもこうして簡単に用が済む小さな町の魅力にしびれた。須坂の魅力再発見の日々というか。独身で身動きが取りやすいからだろうな。
■07/07/28(土) □ ITさんと焼き肉
3時半に目が覚めてしまったのだが、水分を取りもう3時間寝直す。今日は IT さんが川崎から来てくださるので、母さんは支度をし俺が朝イチで父さんの世話をする。昨日同様調子はよさそうで食欲も盛ん。よしよし。
そのうちに何か考えてるなと思うと、「トモ、行きたいところがあるから車を持ってきてくれ」と言い出した。そんな行きたいって、点滴ついてる重病人が何言ってんのよ。先生と母さんと相談しなきゃ駄目に決まってるでしょと答えたのだが、本人の思い通りにさせているとすぐさまこうして無理をしてしまいそうだ。
相談の上準備を整え夕方一時退院し、見舞いに来てくれたITさんたちとうちの店で食事。この時点でまだタン塩を食べられるということに皆が驚くと、「食道ガンは抑えられてるんだ。リンパの方がまだあるから、そっちを治療しているのよ」と父さんは説明する。実際はもう治療なんかしてなくて点滴は水分と栄養補給だけで、本人もそれはわかってるだろうに、父さんはどういう気持ちなんだろうかと俺は考えていた。
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【アジア杯日韓戦】:サウジ戦と同じく、現時点の日本にはスピードとアイデアとスキル、つまりフィジカル最弱の我が国が頼りうる全ての要素が足りないことを示す試合であった。日本の誇るはずの中盤は、1トップで数的に有利なのにスピードがないため(足もシンキングもプレーもパスも全てが遅い)相手を1人も崩せず、横パスと密集地域へのショートクロスしか出せない。これで点が取れるわけないと思う。スピード的に相手と勝負できるのは駒野だけで、左サイドバックの彼がずっとゲームメーカーとなっていた。
中村はWC時と大差ないデキ、遠藤は「オシム【スロー】ジャパン」のシンボル的プレーぶり、中村けんごウはインターナショナルレベルで活躍するだけの経験を欠く。オシムはサウジ戦の負けを主力の疲れからであると答えていたが、彼らに替える選手を全く連れて行かず6試合通したのだから、疲労も監督の責任である。この納得しがたい選手選考と、あれほどまでに機能しない攻撃をサウジ韓国戦と2試合全く修正できなかったことで(毎試合1本惜しいシュートを打つ羽生の投入を「修正だ」とオシムは言うだろうが、あそこに大久保を最初から入れておけば済むことだろう)、オシムへの期待も低くなった。DVDで見た去年の試合に比べ、この1年でむしろジーコ時代に近付いてしまったと感じる。
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しかしもう10年以上も会ってなかったイトコのYMちゃんがサッカー好きだったのには驚いた。「(そこだ! なにやってんだよ!)と常に小声でヤジを送っているのである。サイコー。こうしてサッカーを一緒に見れてよかった。
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