2016/06/01
【重版出来】沼田チーフ&アシスタンツ・バンドの物語
【重版出来】汚してしまったネームノートの回に心ゆさぶられた。つらいなあ沼田チーフアシスタント。中田伯にネームを読まれ動揺した気持ちもわかる。ネームに込められたものを中田がわかってくれて嬉しかった気持ちも、ついに筆を折った気持ちもわかる。
沼田チーフの帰郷が皆に告げられた場に居合わせ横を向いたままだった五百旗頭さんは、ああいう場に何度も居合わせて、そしてそれに慣れたりすることができないでいるんだろうなと思った。それもわかるよ、わかって仕方がない。
◇
俺の学生時代のバンドはコンテストで優勝し、賞品の車に楽器を積んで各地をツアーし、人気が高まりレコード契約も取れたのだがそのタイミングで、曲を作っていたバンドリーダー中田伯ギタリストがやめてしまった。他にやりたいことができたと去ってしまった。
残された俺たち沼田チーフ&アシスタンツはしかしバンド・オン・ザ・ラン、走り続けなければならない。好きな歌も聴いてくれるファンもレコード契約も失いたくない。必死に曲を書きライブを続けレコード会社と何度も話し合い、俺の書いた曲とドラマーの書いた曲をシングルで出したいと推したのです。
しかしレコード会社の編集者通称つぶしの安井は、中田伯の2曲のほうがいいな、そっちのほうが売れるでしょと冷淡にいう。仕方なく2曲をレコーディングしシングルは発売されたんだけど、このシングルを遠くにいる中田伯に聴かれるのが、俺たちアシスタンツは怖かったです。ネームを読まれ動揺した沼田チーフの気持ちがわかる。
俺たちアシスタンツはどんなにネームノートを書き重ねても、中田伯の残した曲ほど燃えられる曲が最後まで書けなかった。いつか。いつか。いつか。
しかし俺たちの知らないところでファンがライブを録音し、中田伯にテープを送ってくれ、彼がいくつかの曲を褒めてくれたとあとから聞いたのです。中田伯の涙を見た沼田チーフの気持ちが、わかって仕方がない。
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