2006/02/24

日記「国民を幸せにする効果・トリノオリンピック」

「女王カトリオナはコメンテイター」「『カリオストロの城』英語版」ほか。
=======================
■06/02/08(水) □ 春のよろこび
=======================

 春になった。寒くない。雨が降らない。ありがたい。前庭にこの春初めて花が咲いているのを、出掛けに萌が発見した。もう寒くないねえと車の窓を開けて走る。BCには秋はなくて、春・夏・雨季の前の冬・雨季の冬という気候だと思う。

 学校が終わった後萌を校庭でずっと遊ばせていると、萌が知らない子に声をかけて一緒に遊び始めた。ジムのすごい高いところからひゅーっとバーをつたって降りてきたりでえらい盛り上がる。

 その子が俺の方を見てニコニコと笑っているので、ん? と顔を見ていて気がついた。「―――あーっ! きみはダンスクラスで一緒だったOVかい!?」「イエス!」「うわー気がつかなかった、大きくなったなあ、何年ぶりだろう」というわけで、あのかわいいOVが萌と同じ学校のグレード1にいるのであった。知らなかった。この子はすごくいい子なので、今後も萌が遊べたらいいな。ナイスな春の日です。

=======================
■06/02/13(月) □ 長野ベテランズ壊滅
=======================

 トリノオリンピック:昨日まではほとんど何も盛り上がりがなかったのだが、今日は朝からスケート 500m があった。俺たちはどうしても長野ベテランズを応援してしまうのだが、ウォザースプーンも清水もまったく駄目であった。スポーツは残酷なり。前回同様盛り上がらない冬のオリンピックだ。

=======================
■06/02/14(火) □ 女王カトリオナはコメンテイター
=======================

 ホッケーの練習風景を延々と流しスケート女子 500m をやってくれないTVを横目で見てイライラする。日本のプロ野球キャンプ情報みたいだ。

----------------------
 カナダの男子フィギュアスケートで、長野の頃から期待されては芽が出なかった選手が初のオリンピックで転んでしまったのだそうだ。かわいそうだオーマイガと大騒ぎするM。オリンピックは残酷だよなあ、全員がその時点でのベストを発揮して、それから順位をつけられたらいいのだが。



 スピードスケートでは引退した女王カトリオナ・ルメイドーンが解説をやっていたのだが、引退していっそうチャーミングになった感じで、彼女が画面に映るたびにぱーっと空気が変わる感じがする。「萌はこの人に会ったことがあるんだよ、ほら」と1歳のときに抱かれた写真をみせてやると、萌はすごく興奮してもう一度会いたいというのであった。

 萌は最近「Do you recognize her?(彼女を [記憶の中にある人と同じ人であると] 認識できる?→覚えてる?)」などという言葉を使う。5歳でえらい難しい言葉を使うなあと驚くのだが、考えてみるとMは萌にそういう言葉を平気で使っており、萌は聞き返して覚えているのだ。これは子供の語彙だけの話ではなくて、英語を喋る人は誰も、相手の語彙レベルとかあんまり考えずにどんどん喋り続けるんだよな。

 それに比べ日本人は語彙の難度レベルというのが体に染み付いていて(※)、外国人や子供を相手に難しい言葉を使うことには、非常に高い心理的障壁がある。そんなわけで萌たち日英キッズは自然と、英語語彙の方が先に充実していく傾向がある。

(※)たぶん和語・漢語・複数レベルの敬語・幼児語・年寄り語などさまざまな用語レベルが存在し、常に適切なレベルを選択しながら喋ることが日常の言語だからだろう。

=======================
■06/02/18(土) □ ゲーセンでバースデイパーティ
=======================

 クラスのALのバースデイパーティで Maple Ridge へ。着いたところはゲームセンターだった。狭いところに子供がぎっしり。ですぐさまコインを渡されゲームをやっていいよと言われる。

 萌はあまりゲームをやったことがないのだが、DIやALを見てやり方を学んではトライ。置いてあるゲームはもぐら叩きゲームとかコインを流し込んで別のコインを落とすとかのなつかしいタイプなのだが、ゲットしたスコアに応じてダダダとチケットが出てくるのがキッズの興奮を呼ぶ。ゲームをして何か具体的なモノが出てくるというのが達成感を感じさせるし、そのチケットの総点数で賞品がもらえるのだ。もらえるものはまあキャンディーとかキーホルダーとかその程度なのだが、なーるほどこりゃいいというゲーセンなのであった。キッズはみな夢中で、ALへの祝福もなにもあったどころではないという状態。萌も一生懸命トライしてスティッカーを2シートもらいました。

 萌は昨日から風邪気味だったのだが、帰ると疲れて眠ってしまった。夜また寝る間際に熱も少々出てきた。今夜は熱で目を覚ましそうである。

=======================
■06/02/19(日) □ 「カリオストロの城」英語版
=======================

 昨夜から熱があった萌は、6時に高熱で薬を使う。それで皆目が覚めてしまい起床してしまった。薬が効いていて元気な萌以外全員フラフラ。

----------------------
 病気の萌を慰めるために、萌の好きな「カリオストロの城」英語版を皆で一緒に見る。毎度のことだが日本映画の英語吹き替え版はデキが悪い。

 英語圏ではアルセーヌ・ルパンという名前が通じないらしく、ルパンが「ウルフ」というありがちな名前になっている。次元たちもボス泥棒ウルフの子分たちという設定。それはまあいいのだが、ルパンとクラリスの関係が 007 ジェームズボンドとボンドガールみたいな類型に落とし込まれていて、クラリスが20代後半(?)の三流役者の熱のこもった声で、「おおウルフ行かないで愛してるわあなたなしでは生きられないわあなたは私の knight in shining armor(鎧きららかな騎士)なのよおおおおお!」と声を震わせすがりついて泣くのである。クラリスが喋るたびに甚だしく格調低いソープオペラになる。

 つまり「ラピュタ」のシータとまったく同じで、可憐でストイックな少女ヒロインが、吹き替えとシナリオの操作によりベタでチープで熱情的なハリウッド型ヒロインに変えてあるのだ。可憐でストイックなものが北米には受けないのかもしれんが、それにしたって人の作った映画の主人公の性格と年齢設定を変えるなんてことが、どうしてできるのだろう。理解しがたい。人の作ったものをリスペクトするという気持ちは、これを作った人々にはないのだろうかと実に不思議に思う。本当はこんなんじゃないんだといちいちMに説明もする気もせんので黙っていたが、ヒドイ。日本全国のクラリスファンが見たら泣くであろう英語版であった。

=======================
■06/02/20(月) □ レゴの油屋
=======================

萌は熱は下がったのだが、今日は終日鼻づまりと鼻水に苦しんだ。かなりつらい風邪で、今週は家にこもりっきりになりそうだ。かわいそうなので久々にクレイ人形・カリオストロ伯爵を作成して盛り上がる。なかなかのデキ。


 参考にするためにジブリのフィギュアなどを探していて、ものすごい作品を見つけた。レゴで作られた、「千と千尋」のお風呂ハウス(油屋)。萌と二人で、うわーーーーっと軽く10秒は歓声を上げてしまった。

 BCにも有名な「レゴマン」という人がいて、その展示をサイエンスワールドと PNE で見たことがあるのだが、どの作品もはっきりいって大量にブロックを使えるならば誰にでも作れる、単なる大型構造物に過ぎずなーんだという感じだった(その人が LEGO 社などのスポンサーを持っているのかは不明)。それに比べこの「けん・たっきい」氏の作るものは皆、すごいとしか言いようがない。こういうものを構築できる頭脳というものがイメージできないのである。

=======================
■06/02/22(水) □ レゴ道は険しい
=======================

 09:12 萌はやっと朝までしっかり寝てくれた。というかまだ起きてません。これで今日はもう万全だろう。

 ゆっくりと寝て体調万全となった萌は、今日は朝からレゴに励む。これまで萌はそんなにレゴを追求したことはなかったのだが、やはりこないだ見た「千と千尋」のお風呂ハウスが強烈にインスパイアリングだったのである。それにレゴの組み立てに要する手先の器用さとプラン能力も、しばらく前とは段違いであるようだ。小さな「カリオストロ伯爵のお部屋」と「クラリスのベッド」を自力で作成していた。素晴らしい。

 これから徐々にパーツを増やしてやろうと lego.com のカタログを見てみると、レゴマニアのページにあるようなお風呂とかトイレとかいったかわいいパーツや楽しい人形は全然売ってないことが判明した。現在 LEGO 社はセット品とベーシックなパーツしか作ってないらしい(少なくとも LEGO 直販サイトで売っているのはそれだけ)。なんていうことだ。さらにベーシックパーツも高く、ちょっとしたパーツを買うだけで送料が $8 もかかる。レゴを趣味として続けていくことは非常に困難な時代なのである。がっくし。

----------------------
 ホッケーでカナダがクォーターファイナルで負けてしまった。セミで負け3位決定戦でさらに負けて終わったグレッギーの長野もさびしかったが、今回はそれ以下の成績となる。はーあ。まあカナダはホッケー以外はすべて絶好調という感じで毎日メダルを量産しているのだが。

=======================
■06/02/23(木) □ 国民を幸せにする効果
=======================

 女子フィギュアの決勝が進んでいる。ファイナルグループに入った荒川さんと村主さんのショートプログラムは共に素晴らしかったので、期待が高まる。

 まず1位だった米国のコーエンが失敗。これで荒川さんの2位以上はほぼ決まった。しかしなんで全員のっけから難しいジャンプから演技を始めねばならんのだろう。ちょっと滑ってリズムが出たところで難しいジャンプに挑めばよかろうにと、メルといぶかしがりながら見る。そういう規定なんだろうか。

 次いで村主さん、魂がこもった演技で次々にジャンプを決めていく。何かすごいシンとしたスピリチュアルなものを感じさせる人である。演技としてはSPの方がよかったと感じるが、ここ一番で自分がやりたいことを完璧に演じきった気迫はただごとではなく、これはあるいはコーエンを抜くのではと思う。だが全然高いスコアは出ず。あれれ(※)。

(※)後から知ったが、ジャンプのポイントのあれこれに加え、反り返って足を掴むなどの技が身体能力上できないので、彼女はどうやっても高い点を取れないらしい。アンフェアな感じ。

そして荒川選手。最初のジャンプを無難にまとめたあたりは、雄大で素晴らしかったSPに比べるとさすがに緊張で足が縮まって見える。大丈夫かとハラハラする。が後半はすごかった。「ああしてジャンプを先に済ませてしまうと、こうして後半のびのびとやれるという利点はあるわよね」とMがいう。それもそうか。義務ジャンプをこなした後の残り時間は本当にため息をつくしかない、体全体でおーほほほほと笑っているかのような女王の滑りであった。素晴らしいとしか言いようがない。これでメダルの色はロシアのスルツカヤさん次第となる。こりゃいくらチャンピオンがすごくても、彼女がミスをすれば簡単にひっくり返るであろう。

 そしてロシアのスルツカヤさんは、転倒という思いがけないほどの大失敗をしてしまった。もー見てるほうは口あんぐり、き、気の毒。だがしかしそれほどの大失敗をして4年間待ち続けたであろう金を逃しても、最後まで笑っていてくれたので救われました。強い人である。オリンピックで失敗しないというのは本当に難しいことだとつくづく思わせる彼女の演技が終わり、見事荒川さんの金メダルとなった。

----------------------
 メダルがゼロだと連日日本のメディアは騒ぎ立てたが、メダルがないことへの国民のさびしさなど、いいパフォーマンスができなかった選手の悔しさに比べれば実際どうということはない。この荒川さんのような究極の技と笑顔が大会で一つでも見れれば、その国の国民は幸せだ。

 原田たち長野ベテランズの活躍を俺はやはり本当に見たかったが、失格という最低の結果で終わっても、長野でのあの輝きをもう一度という甘い夢を見せてくれた原田の挑戦には、国民を幸せにする効果はあったのだった。トリノオリンピックの英語サイトでさえも、「オリンピックのジャンプ史上に残る劇的シーンをいくつも演じてきたハラダが復活するかもしれない」と、公式練習での好調を伝えていたのである。

2006/02/10

日記「Mの日本映画週間」

「千年女優」「もののけ姫」「カナダの授業参観」ほか。
=======================
■ 06/01/29(日) 10:15:17 □「千年女優」
=======================

夕方Mにやっとクリスマスプレゼントの「千年女優」を見せたのだが、ちよこさんが青年を追って北海道を目指すあたりから、「そんな、北海道ったって広いじゃないのよ」などと言い出し、あんまりイメージのトランジション(推移)を楽しんでないなと感じる。別にメッセージが優れた映画というわけではないので、そこが楽しめないとどうにもならず。まあ仕方がない。

 「ナウシカ」を見ていたときにも似たことがあって、ナウシカがユパ様にオームの殻を預けて飛び立つときに、MとBTが同時に「あはは」と笑い出したのであった。なにかと思えば、ユパ様と話していたときには画面になかった崖が、ナウシカが飛ぶ瞬間に便利にも現れた、これはご都合主義であると笑っていたのだった。そんなことは日本人は考えもしないことで、説明されないものは存在しないものと同義という、カナダ人(西洋人?)の世界観をすごくよく表していると思った。

論理的じゃないものは基本的に、カナダ人には通じにくいのだと思う。論理的じゃないものをまあいいから、いわく言いがたいものも世の中にはあるから、と流していく日本の文化とその映画は、その面で受け入れられにくい。

=======================
■ 06/01/30(月) 10:20:42 □ 続いて「もののけ姫」
=======================

 今週はほんとMの日本映画週間となっていて、今日はTVで放送された「もののけ姫」を見終わった。「もののけ姫」は俺が見たってよく分からんところだらけで、論理一貫してないと駄目なMには最も不向きといえる。

 Mは、他の部分は楽しめたが、エボシ様のやってることが支離滅裂でぜんぜん満足できんとのことであった。自然を破壊して鉄を作り、とうてい信用できないエンペラーの軍のために森の神を撃ち取りに行き(案の定留守にしたタタラを侍に襲われ)、最後は破壊されたタタラをもう一度復興してまた鉄を作る(自然破壊)という、この人の行動のどこがタタラの人々にカリスマを感じさせているのかワケが分からないとのこと。

----------------------
 俺もそういうことに答えを与えることはできないし、この映画がことさらに好きでもないので弁護したいわけではないのだが(最初に見たときはグロであることと、宮崎監督が突如押し出した猛々しい作家性がむき出しで嫌だった)、いい機会なので聞いてみた。

「―――君たちカナダ人は、物語は常に論理一環・起承転結してないと満足できないんじゃないか? 君は日本映画を見たあと必ずそうして論理矛盾点をついてくるが、日本人はあまりそういうところを気にせんのだよ。たとえばこないだの『ナウシカ』で崖が突然出てくるシーンが象徴的で、あそこに違和感を感じる人なんて日本には絶対にいないと思う。TOEFL コースで小論文を採点されたとき、『何事も書き下して証明するまでは、ないものと見なす(※)』という英語アカデミックライティング流儀に俺はえらい徒労感を感じさせられたのだが、映画を一貫性でうんぬんするのには、それに似た英語 or 西洋 or 北米 or カナダ文化的なものを感じる」。

(※)たとえば「日本人は髪が黒い」などの常識を前提にして論文を書いてはいけなくて、「99.999999% の日本人は髪が黒い」という統計値を出さなければいけないという意味。ツーといえばカーという、「阿吽の呼吸」の対極にある考え方。

 するとMは、「またそんな『君たちカナダ人』って一般化して」と俺をいさめたが、論理に一貫性がないと自分が満足できないのは事実であるという。

「でしょ。でさ、アメリカ映画は常にすごいストーリーがハッキリして一貫性が保たれてるんだけど、日本や欧州の映画はハナシが茫洋としていて、『でもなんか良い』というのがけっこうあるんだよね」「あー分かる。でもあたしにはああいう欧州のアートな映画もダメなのよ。学生時代から友達の美大生なんかとよくそれで議論したわ。でもあたしはそういうアートが理解できて好きですなんてフリはできないから仕方がないわ」

 ということであった。そりゃそうだな。まあよしあしではなく単に感性が違うのである、何事も。

=======================
■ 06/01/31(火) 11:56:49 □ 嵐のサイエンスワールド
=======================

 KTHNたちと一緒にサイエンスワールドへ。KTがあまりの楽しさに暴走しており前半はほとんど一緒に遊ぶどころではなかったが、間食を食べた後からは萌は主にHNと一緒に思い切り遊べて、大ハッピーであった。長いことヘルス関連の展示になっていて萌をがっかりさせていたキッズエリアが前よりいっそう楽しいキッズエリアとして蘇っており、そこが最高であった。

 そして帰りは大雨&渋滞で大変だった。BCは俺たちが渋滞にはまっている間に、1月の史上最大月間雨量を記録したそうです。まったくよく降る。もうこうして記録が出ない限り、長雨が話題にもならんほど降るBCの冬雨。

=======================
■ 06/02/01(水) 10:19:06 □ 容貌のよしあし
=======================

 夜「ごくせん」。最初に漂っていた少女マンガ的なフレイバーはもうすっぱりなくなり少年マンガ一直線で、まあ多くを望まずそういうものとして楽しむしかないんだろうな。来週からは沢田が大江戸組を訪ねていくとか新たな展開があるらしいので萌とともに楽しみにしている。

 萌は沢田を「サワダはかわいいよね」といい、結婚したいなどという。沢田君はたしかに美青年だが、5歳半でも容貌のよしあしってそんなに分かるものなのかと驚く。

 いや、逆にこのくらいの年の子は、容貌のよしあしが分かり始めそれを気にしすぎるのかもしれない。今日学校に来たなにかの先生が、「ちょっとオールドだったけどかわいかったよ」などといっていた。「いやだから、かわいいかどうかは年は関係ないじゃん。グランマなんかおばあさんだけどかわいいじゃん」と言い聞かせたのだが。

=======================
■ 06/02/04(土) 12:59:42 □ ボルトンというチーム
=======================

 ボルトン中田の試合を数ヶ月ぶりに見る。中田が目立つシーンは、よくも悪くもない。ギリシャのウィンガー・ステリオスが素晴らしい活躍をしている。このチームはこうしてギリシャ、日本、ジャマイカ、メキシコ、イスラエル....とサッカー2流国の飛び切りの選手を見事に揃え、その全員がファイトすることによって、アーセナルみたいなビッグクラブにも対抗できる戦闘力を具現してるんだなあと実感する。中田もそのチームの一員なのであって、ここでは何も特別な存在ではないのだ。ペルージャ時代みたいに中田のパスから全軍が動くなんて王様サッカーはここでは求められていないし、たとえ求められてもその力は今はもうないのかもしれない。代表でだってそんなにワクワクすることをしてくれるわけじゃないし。

 チームの一員として戦うという意味ではやりがいはありそうだが、誰にでもできることを中田がやっているということについての空しさはぬぐえない。チームとしてもMFにボールを持たせて何かをするなんて戦術はまったく取っておらず、MF中田はボールには触らずにただただ辛抱強く相手の進行を止め、味方のチャンス(外をボールが回って最終的にゴール前にボールが流れてくる)にはプレーに絡むべく上がるという仕事以外、やれることはないのであった。後半は少しボールを持てるようになり、そうすると他のMFとは違う味わいの攻めをやってはみせるのだが、結実はせず。はあ。

=======================
■ 06/02/06(月) 10:00:30 □ 萌の新しい先生
=======================

 今日から産休のA先生に代わり、キンダーに新しい先生がきた。気さくな感じのおばさん先生で、彼女がドアを開けボンジュールと子供らに声をかけるのを見て、俺たち親全員の顔にぱーっと笑顔が広がったのがおかしかった。生徒が中に入ると、いい先生っぽいわね感じいいすねとみなで話しながら帰る。やっぱみんなこれまで愛想のないA先生と付き合ってきたわけで、やっと誰もが思い描くような小学校の先生がきてくれたという共通の安堵感があったのだった。

=======================
■ 06/02/07(火) 10:05:02 □ カナダの授業参観
=======================

 今日から萌の第3レベルのスイミングレッスン。先生は大好きなFRではなく、プリスクールの先生みたいな若い女の人だった。もちろん萌は大ハッピー、最初から絶好調である。ここまで学んだスキルを全て使って、水の中で思い切り遊んでいる。10分に一度皆で流れる周回コースに行くという大サービスまで入っていて、文句なく最高のレッスンです。

----------------------
 午後、キンダー。新しい先生マダムEは、始業ベルと同時にやって来る。やはり毎日5分、週に25分、半年で計およそ7時間、雨の日も風の日も職員室からやってこず親子を戸外で待たせ続けたのは、A先生特有のやり方だったのだ。これがなくなって実にありがたい。

今日はクラスの後、ここまでの子供の進歩を発表するという会があった。日本の授業参観の同等品かなと思ったが、Student Led Conference(生徒がリードする会議)という名の通り、先生ではなく萌が俺たちをガイドしてこれまでのさまざまなワークを見せてくれるのであった。何を見せるかを何度も練習したらしく、見事な段取り。あれこれぎっしりと書かれたワークブックやスクラップブック。壁に貼られ天井から吊るされたクラフト。そして先生の真似をしてパネルを指し示して授業の再現と続く。

家にはワークブックを持ち帰ってこなかったので知らなかったが、学校ではずいぶん勉強をしていたのである。俺が思ったよりもずっと進歩している。マダムEとも話したが、実に熱心でいい感じ。

 しかしすでにこんなにフレンチの言葉が書けるようになっているのかと頼もしく思うと同時に、普通の学校に行ってりゃおそらくこれ以上の英語の言葉が読み書きできるようになっているのに、萌たちフレンチ・エマージョン(バイリンガル化カリキュラム)の子は当分英語はお預けなんだよなとかえって気の毒になってしまう。英語が読み書きできれば生活の中でそれを使って楽しいことがどんどん増えていくのに、フレンチは大人になって何がしかの用途ができない限り、学校のクラスだけで終わるのだ。

 何年か経てば英語も普通の学校の子に追いつくカリキュラムになっているのは分かっているのだが、フレンチという言葉のために壮大な無駄をやらせているように思えて仕方がない。体操やスイミングや日本語は萌の人生にプラスしか与えていないが、フレンチは英語学習機会をスポイルして成り立っているのだから、本当にこれでいいのかと悩んでしまう。

----------------------
 萌が寝てからMにこの心配を話すと、「萌はすでにグレード1の英語の読み書きレベルを自分でやっているから、英語キンダーに入ったとしても新しく学ぶものは何もなくて退屈するだろう。つまり現時点で失っているものは何もない」とのことだった。萌はおそらく日本語の読み書きがまずできるようになって、それにより文字と音とのつながりが脳内で処理できるようになり、英語の読み書きも普通の子より進んでるのだとMは分析する。

 そうか、それでやや安心した。とりあえず当面は失うものはなく、やがてこのフレンチ・イマージョンの子の英語も普通の学校に追いつくのだから、心配するなということである。萌が習っているフレンチが俺にはサッパリ分からんから、今日のような機会にも達成度が分からずつまらんというのはあるが(Mもすでに萌のやってるフレンチで分からないところがある)、それは俺自身の問題なので我慢するしかない。Mにとっての日本語学校と同じこと。辛抱強く暖かく見守っていくべし。

2006/01/28

日記『ごくせん』に熱狂

「新年なべ」「ジャマイカの風」ほか。

=======================
■ 06/01/18(水) 11:12:16 □「ごくせん」に熱狂
=======================

こないだPさんに Lunascape という RSS リーダーを兼ねたブラウザというものを教えてもらって試したのだが、よくできているけどもうこんなに情報をブラウザに盛り込まれては脳が情報処理できんという感じで、将来はともあれ今はあんまり追求できなかった。ありすぎる情報の中から読む価値のあるものを、どれだけ少ない時間と労力で選りすぐり処理していくか、そこが20世紀末からコンピュータがぶち当たっている課題なのだと思う。そこにアドレスしているのであろう RSS リーダーも、今のところ試した範囲ではピンとこない。

これに啓発されページ更新チェックをいかにラクにするかという試みで、 diffbrowser というのを導入してみた。前回チェックから変化した部分だけを抽出して表示してくれるというもので、これが期待以上にすばらしい。走らせるたびに、更新分だけがシンプルなテキストで表示されるのである。ページによって細かい設定が必要になる場合もあるが(というよりも細かい設定で表示される情報をよりピンポイントに指定できる)、えーと前回どこまで読んだっけなと目で追う労力が、いつも読んでる20数ページに渡ってバサっと消え去ってしまう。コンピュータを使う根源的な快感を久々に味あわせてくれる。すばらしい。

----------------------

夕方萌と「ごくせん(1)」第2回を見る。萌はアニメ以外のドラマを俺とこうして見ることはあまりないのだが(旅行や音楽番組はよく見る)、ストーリーや言葉が分からないと何これ、どういうことなのと聞きまくる。いつもメルとTVを見ながらこうして聞いてるんだよな。こうしてTVを一緒に見ることで言葉が増えていくのねと実感した。

そして番組が終わると萌は、

「あたしのすてきな生徒たちに.....手を出すんじゃねえ!」

あとから萌が描いた「ごくせん」の絵。すばらしい。
と叫んだのだった。ちょっと違うが、かっこいい \(~o~)/。かなり熱狂しています。

このドラマには何か懐かしい風景がよく出てき、どこだろうと気になる。昔ポスター張りで歩いた世田谷のはずれあたりかなあ。あの辺だったら緑も多く残っているし。

バスに「京王バス大和営業所 大蔵」と書いてあるので検索してみると、稲城の裏あたりの「大蔵」という町あたりらしい。昔バイクの練習をしに行っていた鶴川街道だ。なーるほど。なつかしい。



=======================
■ 06/01/22(日) 10:32:23 □ 新年なべ
=======================

本日はまた Tswassen SH家へ。新年会とLDの誕生祝いを兼ねて。年末の4週連続家族行事も強烈だったが、今回も昨日からLDのためにケーキを作り文字を入れるなど2日がかりの仕事になっており、Mの家族行事への力の入れようはすごいものがある。考えてみれば喋ることが何よりの楽しみであるMにとってみれば、近所に古くからの友達がいないのは気の毒なことである。俺にとっても同じことで、学生時代を過ごした街から離れて暮らせば、誰でもこんなものなのだろうと思うが。

そして新年会は、AD入魂の海鮮鍋であった。寿司まで握っているからこの人には驚く。味はまあそれなりでしかないにしても、見よう見真似ででかい体をすくめて寿司をにぎにぎと握るというその意欲がえらいしかわいい。彼がビジネスで成功するのは、こういうチャレンジ精神と愛嬌を併せ持っているからだろう。

=======================
■ 06/01/25(水) 08:50:51 □ ジャマイカの風
=======================

まるひと月以上ぶりに雨がやみ晴れたので、萌を早めに学校に連れて行って外で遊ばせてやった。帰りも同様。萌は最近SNと仲がいい様子で、今度彼女の家で遊ばせてもらうということになった。プレイグラウンドで一緒に子供らを見ていたSNのお母さんに、「ついに晴れましたねえ、あなたはジャマイカから来てるんだからBCの雨は最悪でしょ」というと、「Oh it's awful. Bloody awful」と激しく同意していた(笑)。

「夏もジャマイカほど暑くないだろうし」と続けると、「いやBCの夏は暑い。ジャマイカは島風があるのでさほど暑さを感じないのだ」とのこと。たしかに俺もBCの夏の日差しは、湿気がないゆえ直接紫外線が届き、日本に比べてもイタイ感じがする。しかしジャマイカは暑くていつも風があるのか。そりゃ楽園だなあ。まあそこでは暮らしが成り立たず移民してくるんだろうけど。

萌はSNに招かれたようで、「いつかジャマイカに連れて行ってもらうの」という。そりゃいいよなあ。

----------------------
「ごくせん」第3回をまた萌と見たが、1回2回の好評に応えてなのかもう完全にマンガとなってしまっており、軽薄味が増しすぎて絶妙だったバランスが崩れてしまった。まあ仕方がない。

2006/01/16

日記「遠い味の道」

「Polly Pocket 城」「先生が変わるらしい」「韓国ドラマと「ごくせん」」ほか。

=======================
■ 06/01/01(日) 15:33:33 □ まずまずのお正月
=======================

夜中に始まったさだまさしの新年特番のおかげで、かなり日本の年越しっぽい気分になり新しい年を迎えてから寝た。だらだらとしたトーク番組というのが、日本の深夜番組っぽくて懐かしかった。

萌の風邪のせいで年越し買い出しに行けなくて家には何もないのだが、BRが新年だからとクロワッサンを朝焼いてくれて、昼は日本から母さんが送ってくれたおしるこを萌といただき、夜は残り物を使ったお好み焼きが好評で、何も準備ができなかったわりにけっこうよいお正月であった。めでたしめでたし。

=======================
■ 06/01/03(火) 13:04:02 □「Polly Pocket 城」
=======================

萌の体調がなかなか良化せず、一日付きっ切りで遊んでやった。こんなに丸一日遊んでやったのは俺も久しぶりで、疲れたが楽しかった。ダンボールで美麗な「Polly Pocket 城」を作る。


最近萌は完璧に日本語で俺と話しており、複雑なことを俺がつい英語で説明すると、お父さんお父さんと指摘してたしなめるようになっている。構文的に難しくなってもあきらめて英語で言わずに、日本語で最後まで話そうとしている。俺と話すときは日本語スイッチに完全に戻ったようだ。よしよし。

萌は朝から、ドリカムのあの紅白の歌を歌っていた。「It goes in your head, doesn't it?(頭にこびりついちゃう)」だそうである。

=======================
■ 06/01/09(月) 11:57:38 □ 学びの園
=======================

今日はたまっていた各種用足しで一気に4軒を回った。こないだ踏みつけて壊してしまったメガネを直すためにMが昔働いていたDカレッジのメガネ科付属ショップ(眼鏡屋を目指す若者が技術を習うところ)に行ったのだが、フレーム取り付け部が割れていて直らないそうだ。がっくし。

しかし学生がたくさんいてガヤガヤとやってるところに何年かぶりに行くと、その若やぎがなんか実に新鮮で、いいなあとしみじみ思った。Mがまたここの先生になれたらいいのだが、空きポジションがない状態が延々と続いている。

魚を買って帰り、萌と飯を作った。フライドポテトもどきをオーブンで作ったのだが、焼いてみるとなかなかおいしい。萌はナイフでポテトスティックをていねいにカットし、それが焼けておいしかったのですごい達成感があったらしく、たいへんに喜んでいた。萌のラブリイさが一家の灯りだ。

=======================
■ 06/01/10(火) 14:16:07 □ 先生が変わるらしい
=======================

萌のキンダーのA先生が出産休暇で、年次の残りは別の先生になると聞いて驚いた。「妊娠してたのに気づかなかったの?」とMに呆れられたが、もともとそういう体型なのでまったく分からなかった (^_^;;)。そういわれてみればA先生がどこか生徒たちに冷淡だったのも、どうせ年明けまで4~5ヶ月の付き合いというのが態度に出てたのかもしれない。

そうか別の先生か。「昨日来てたサブ(代理)の先生が感じよかったよね、あの先生ならいいね」などと萌と話す。あまり盛り上がるとA先生に向かって萌がいらぬことを口走るかもしれんので抑えたが(汗)、そうかそうか。

----------------------
学校の帰りにDNという子のお母さんが萌を家に呼んでくれた。前から校庭などでよく声をかけてくるフレンドリーな子で、うちの近所に住んでるらしいし一緒に遊べたらいいなと思っていたのでうれしい。お母さんはなんか鼻にピアスをしたロックスターみたいなかっこいい人で、明るくて話しやすいし。萌のスクールライフはよりいっそう快調になってきた。

=======================
■ 06/01/13(金) 09:33:29 □ 砂時計遊び
=======================

昨日料理用に砂時計を買ってきた。萌が喜びそうだなと思ったら予想通りで、宝探しとかかくれんぼなど遊びのあらゆる場面で3分を計りまくり、今朝になってもまだやっている。ちょうど今日は学校の Show & Tell(好きなものを持っていってこれはナニナニですと発表する)なので、この砂時計を使えばいいよと盛り上がる。

----------------------
Show & Tell 砂時計は、誰もそれを持っている子はおらず大成功だったとのこと。よしよし。萌を送っていったときに車の距離積算が18万 km を突破した。ブレーキで修理はいったが、それ以外はしっかりした車である。20~23万 km は余裕だろう。

バンクーバーはレコード長雨28日を突破するのは確実という雨続きなのだが(長雨は普通なので今年が特別雨が多いとは別に感じない)、今日は雨量も多くあちらこちらで土砂災害の警報が出てきている。昨春浸水を起こし修理したうちのドレインパイプをずっとチェックしているが、規定位置から上には水が上がっていないのでパーフェクト。壁の防水もタールコートで完璧になっているはずだ。大丈夫。

=======================
■ 06/01/14(土) 11:44:35 □ 韓国ドラマと「ごくせん」
=======================

昼前にSMがやってくる。何ヶ月ぶりか。もう萌はキンダーで年上の子にももまれているので心配しないが、いじめっ子だったSMもなんか前とだいぶ違う。前には興味を示さなかった萌のおもちゃや楽器で遊び、ささいなことでゲラゲラと笑うようになっている。おお成長しとるやんけ。結構楽しそうにやってます。ちょっと双方興奮しすぎなので、適当な頃合を見て切り上げさせねばならんが。

----------------------
TV Japan(NHK 国際)で先週始まった韓国ドラマ「オールイン」を昨夜見たのだが、ギャンブラーの一生を描くドラマらしく、少年時代から丹念に長々とストーリーを追っている。かなり気長な「大河ドラマ」である。内容は昔の日活アクション+韓国的純情友情激情という感じ。冬ソナでもそうだったが、韓国ヒーローは何か傷心するとすぐアメリカに渡ってビジネスその他で華やかに成功してしまうのがおかしい。日本のドラマで主役級が外国へ移住するなんてのは聞いたことがないので(オレゴンで農民をやり苦闘するいう文化衝突自体が副主題のものはあったが)、韓国人は日本人よりも海外生活への憧れが強いのだろうか。

比べても意味はないのだが同時にやってるのでつい比べてしまうと、少女マンガ的ギャグセンスを散りばめた「ごくせん」の方は、より現代的なファンタジーで楽しい。言葉遣いの悪さがうつったらまずいなと思いつつ、再放送を萌に見せてやった。萌はどうしてみんなバッドボーイズなのと心配していたが、この先生はすごく強くて最後はみんな先生のことが好きになるんだよと(そうでないとストーリーにならないので推量して)教えてやると、安心して楽しみ始めた。

この女優さんはきれいでうまくて実にはまり役だが、べらんめえ調でタンカを切るところは声量的に無理がある。がここで声量があって本当にドスが効くと、頭の悪いツッパリ女学生的雰囲気がずずーんと出て女優としての魅力がはなはだしく損なわれるわけで、逆にこの方が良い。ドスが足りない分を、「...だが。あたしはそんなお前らの担任になった。これもなにかの縁だ」とささやくような声音のコントロールで演じるあたりが、実にかっこよろしい。ドスが効くとはつまり恫喝的威圧的であるということで、そういうものを愛でる日本マンガ&TVのセンスはたいがいにしといてもらいたい。 この女優さんはそうなってないところが好ましいのである。

=======================
■ 06/01/15(日) 17:50:36 □ 遠い味の道
=======================

新年恒例のP家まいり。おいしいお餅とおでんをいただき、おみやげを多数いただいて幸せに帰ってきた。俺は毎日自分が作っているご飯にまあさほどの不満はないのだが―――乏しい食材とMが食べられるものに限るという縛り(乳糖その他体質的に使えないものが多い)がある割にはまあまあ食えるものを作っているという意味で―――、今日のおでんなどの微妙な日本的おいしさを味わうと、ああ俺にはこれは作れないなあと考え込んでしまう。

バンクーバーと違いコキットラムではいい材料が手に入らないしと言い訳すると、「いや10年前ならともかく今はどこでも必要なものは手に入ります」とNK様に一喝されました。じっさいその通りで、やっぱ俺に足りないのは熱意と才能だよなあ。こういう微妙な味付けをやっていて、何かが足りない、何かが違うというときにさてどうしたらいいのか、それが分からないのである。Mはレシピの通りに作ればいいというが、料理とはそんなに単純なものではないのだ。

帰りにMの好きなインド料理屋で夕食。4品目中3品目が文句なく、1つだけラムカレーがうまくなかった。がこれをどうしたらもっとうまくできるのか、そういうところが俺にはイメージできないのである。味の道は遠い。

2006/01/07

日記「ドリカムで日本音楽を思う」

「『ハルとナツ』のシャウト」「Lost in Translation」ほか。

=======================
■ 05/12/26(月) 11:31:35 □「ハルとナツ」のシャウト
=======================

 静かなボクシングデイ。NHKの年末特番でドラマ「ハルとナツ」というのをやっていた。これも、「世界の中心」や「冬ソナ」式アジア闇雲症候群の産物としか感じられない。途中で見るのをやめたが、「おしん」などと何も違いはないものを、21世紀に森光子と野際陽子を使って作るというのはどういうセンスなんだろう―――と調べてみたら、その「おしん」と同じ橋田寿賀子脚本なのであった。いつまでやってるんですか。

----------------------
 これを見て思い出したが、バンクーバーの日系移民1世だったばあちゃんが晩年(70年代?)に書いた戦中回顧録を見つけたから読解を手伝ってくれと、こないだLDがハリソンに日記帳を持ってきたのだった。教育を受けられなかった昔の人が全篇カタカナ書きで書いたものなので、文法書き方が無茶苦茶で超難解だったのだが、苦労して読み進めてみるとびっくり。「わたしの隣の家には手の長い人(盗癖のある人という意味らしい)が住んでいて、米やしょうゆを盗まれた」「なのにパウエル(日系人街)の世話役はまともに取り合ってくれず、本当に悔しい思いをした」「そんな隣人でも病気になれば放っておけず、看病してやったりもしたのに、恩知らずである」といった具合に、昔の愚痴だけが延々と書かれているのである。

 今から見れば、うーむ昔はいろいろと本当に大変だったのねえと、それだけしか感想は湧いてこない。「秘められた家族の歴史が今白日の下に明かされる」とワクワクしていたLDはそんなわけで、内容(のなさ)にえらいがっくりしていたのだが、この「ハルとナツ」というのもその回顧録とほとんど変わらないのである。昔はいろいろと本当に大変だったのねえ。

 だがしかし当事者にとっては個々の苦労話が、語らずには死ねないほど大事な事柄なのだろう。そうした沸き起こる声、すなわちシャウトする魂の迫力はばあちゃんの回顧録から伝わってきたので、俺はそう言ってLDを慰めたのだった。世界中の「ハルとナツ」たちにとってもそれは同じことなのだろうと、TVのスイッチを切りながら思った。


=======================
■ 05/12/27(火) 10:32:32 □「Lost in Translation」
=======================

 夕方MKと萌がクリスマスライトを眺めつつ、2km 向こうのLD家まで行ってしまった。迎えに行くと萌は夜散歩して夜LDのところへ訪ねてきたのがえらい楽しかったようで、興奮していた。

----------------------
【Lost in Translation】

「Lost in Translation」を夜見る。DVD+英語字幕は最強だ、セリフが全部分かる。コッポラ監督が街を見る目はすばらしく、外国人でありかつ映画であるゆえの日本に対するデフォルメはかなりあるが、彼女が写し撮った東京とそこでの恋の美しさがそれを許させ、甘い時間を味あわせてくれる。

 低すぎるシャワーとか部屋に娼婦が送られてきたりとか、英語の通じなさとかゲームセンターやパチンコ屋の騒音など、誇張部分をピックアップしていくとけっこうくだらない。が、日本に外国人スターを使ったろくでもないCMや、電車の中でポルノ漫画を読む男たち、がなりたてる選挙カー、「マシュー南」のようなものがわらわらと存在するのは事実なのであって、映画ゆえに自動的にボブ・ハリスと同じにセットされたシニカルな視聴者の目線と心象はそんな日本を、奇怪な「パッション」「テンション」を持つ国だとつよく感じ取る。なにか本当のことを言ってるような気がしない通訳によるコミュニケーション・ストレスなどもリアルだし(※)、カルチャーショックを受けたボブが一刻も早くここから逃れたいと願うのはよく分かる。
(※)同時にこの通訳の人の、「こんなCM監督の言ってることなど英訳しようがないし、逐一訳しても価値がないから要点のみ手短に」という気持ちも、俺はやったことがあるからよく分かる(笑)。通訳さん名演。

 そのボブと、異国で孤独さに耐えかねているシャーロットが、旅先で時間を共有するパートナーを得たことでカルチャーショックと折り合いをつけていくあたりが心地よい。「チャーリー・ブラウン」と共に夜の町を走り遊ぶシーンは輝いている。カラオケでセックスピストルズ、エルビスコステロ、プリテンダーズ、ロキシーミュージック、そしてはっぴいえんど(風をあつめて)と豪華5曲が歌われる。その音楽センスのよさにしびれ、本当にそんなクールなカラオケが楽しまれているのであろう日本音楽カルチャーの面白さも感じさせる。この映画は、美しい絵といい音楽に満たされている。

 ここからはそれぞれが単独で日本の他の場所を旅してみたり、レストランを巡ったり、半分ジョークで病院に行ってみたりといった余裕が生まれ、ボブはかたくなに拒否していた「マシュー南」ショーにも出てしまうほどリラックスしていく(※)。
(※)すでにこの映画を見ていたLDと後で話したのだが、やっぱりLDにとってもあの「マシュー南」は、「あれって本当にニホンよねー!」と強烈な印象を残していた。こういう人やゲイの格好のコメディアンが子供のいるお茶の間に登場する、日本はそういう国なのです。こういうのを見るのも聴くのも嫌だから、今年日本に帰ったときに俺はTVを見なかったのだ。

 ボブが国を発つ前夜から当日は、すべてのシーンが美しかった。なにごとも起きなさが古い日本映画のようであった。空港に向かう車中で、去っていく東京を見るボブの顔つきがすごく柔和でいい。つかの間の思い出とその舞台となった街をいとおしむ顔。車が首都高に上がる。夜の首都高を走ったことなど数えるほどしかない俺も、懐かしさに胸が焦がれる。たぶん俺は同じ顔になってスクリーンを見つめているのだろう。東京が暮れていく。街が美しく浮かび上がる。夜の光に浮かび上がる

=======================
■ 05/12/28(水) 12:45:02 □ ボクシングデイ・セール
=======================

 モールに買い物に行くとクリスマス前とほとんど同等に混んでいて、DVD-RWディスクを買いたかったのだがレジ前の長蛇の列にあきらめた。ボクシングデイセールというやつなのか、モールは当分大混雑が終わらないようだ。

 戻ると同時にL・KD姉妹がやってきた。萌とKDはずっと英語で喋っている。もうこの段階になると日本語のキープアップの方が家庭では重要だと思われ、「家では日本語を喋ってよ、英語はみんな学校で喋ってるんだから」と俺とMが促すのだが、KDは嫌だという。子供同士で遊ぶときには、テンポがよくきっぱりとものが言える英語のほうを喋りたいらしい。微妙な子供心理なり。

----------------------
 絵が好きで奇怪なモンスター絵を描いたりもする甥BT15歳がうちに泊まってるので、そういえば完璧に彼の趣味に合うではないかと気がついて、夜「ナウシカ」を見せた。字幕のデキがやはり悪いのだが(キキよりはマシ)、半分見たところでもう「こりゃ最高だ」とつぶやいて見入っている。よしよし。

=======================
■ 05/12/29(木) 13:44:46 □ 萌体調急落
=======================

 朝からBTは、ナウシカのオームの細密画をかりかりと鉛筆で描いている。後からもう一度全篇を見直していた。よしよし、これでまた一人宮崎ファンが増えた。

 俺は昨夜からのどが痛いのだが萌の体調もあまりよくなさそうで、それもあって午後は二人で静かにしていた。Mが戻る頃には萌は機嫌がよくなってくれたがHNをすすり始め、俺はそのあと飯を作って食ったらがっくり疲れた。風邪だ。

=======================
■ 05/12/31(土) 14:43:43 □ ドリカムで日本音楽を思う
=======================

 萌、久々に熱が高くつらい風邪。昨夜は二度熱で目を覚まし、かなり大変であった。夜が明けて元気はあるのだが、熱が下がらない。夜疲れたらまたしんどくなりそう。

 昨日今日と萌の世話をしていたので買い物にいけず、年越しも新年も何も食べ物がないということになってしまった。まあ仕方がない。あけましておめでとうと母さんに電話すると、キャベツがある限り最後はお好み焼きという手があるわよとサジェストをいただいたので、そのアイデアをいただこう。


----------------------
 朝録画しといた「紅白歌合戦」を見ると、もうNHKが若年層に気を遣って面子を揃えすぎ、民放を見ていない人(俺みたいな境遇の人やじいさんばあさん)には出てくる人がまるで不明な状態になっている。名前も知らない人がレコード大賞やら北島三郎の対抗格になっているのには驚いた。別に知らなくてもなるほどと思わせてくれるならいいのだが、ごく普通の取り替え可能なポップスだしなあ。今年も早送りなしには決して見ていられないが、でもまあ去年よりは聞きたい歌が多かった。

=======================
【個々の感想】
=======================
森山直太朗:レコードで最高の演奏をしているバンドを見たかったのだが、レギュラーバンドは持たないのかカラオケ歌唱だったのであまり興味を持てなかっ
た。
平原綾香:喋るとけっこう現代っ子であれれと思うが、歌う姿は姫のようでよい。
スキマスイッチ:芸能界にフィットしそうな性格が歌と微妙に合わず、そこがいまいち好きになれない。
森山良子:企画ものを超え価値のある息子との共演だった。
倖田來未:レコード大賞? のあなたは誰?
氷川きよし:この人がジョークではなく本当に人気があるらしい国の不思議さよ。
ゴリエ:何者....と知りたい気持ちも別に湧いてこない。
一青窈:この人の声には1年かけて慣れ、今は気色よい。
松任谷由実:変わらぬヘナヘナ音程でありながら、横にいる上海超級技能歌手たちがただののど自慢の人たちに見えてしまう、横綱の存在感と声。
ドリカム:すべてのラッパーが打ちのめされるべき、鳥肌立つ音楽力。このバンドをトリにするという、日本にとって最善の決断がなぜできないのかNHK。
和田アキコ:なぜラップかは不明だが真剣でよかった。
中島美嘉:トリ前で北島三郎の対抗であるライブハウス歌手みたいなあなたは誰?
スマップ:木村氏を除きあんなに音痴なのに、こうもしつこく主役扱いで歌わされるのはつらかったろう。
司会:なにゆえにみのもんたがあんなに大物司会者になってるのだ。謎だ....。
=======================

 Dreams Come True は趣味に合う音楽じゃないのでちゃんと聴いたことはないのだが、飛び抜けたワールドクラスだと改めて思った。すべての音に丹精が込められ、グラマラス米国ポップ臭も貧相Jポップ臭もないワールドミュージック的無国籍性を持っている。超絶技巧に(ほとんど)おぼれない吉田美和さんの美しい歌唱、そして「俺はこの音楽が好きなんだあああ!」と言ってるみたいなベースの人の顔がサイコーで、Mと萌にも見せてやった。萌は熱血アニメみたいなベースガイの顔と歌のかっこよさに大喜びで、皆でこれが見られてよかった。

 アジアでは大物ミュージシャンというと、いまだに今日松任谷さんと共に歌ったようなのど自慢歌手しか出てこないわけで(「ポップジャム」等に出てくる韓国若手歌手も一様に「ゴスペルズ」みたいな70年代歌謡センス)、60~70年代からすでにそうしたのど自慢性と決別したバンド・ミュージシャンを産出し続けているところが、日本が他のアジア諸国と異なっているところなのだと思う。

----------------------
 さらに「紅白」とは関係ないが昔と比べて、音楽の周辺人材も聴衆も育っているのは明らかだ。たとえばサンボマスターなんていう規格外の才能が出てくれば、昔の Who みたいな無茶苦茶なミックス(ギターソロで他の音が聞こえなくなったりする)でレコードを作らせてやる物の分かったプロデューサーがちゃんと存在し、その音が熱狂を持って聴衆に迎えられるのである。健全なり。

 サンボマスターみたいな「なんだこれは?」という画期的な音が、カナダで生活していてTVやラジオから聞こえてくることはない。たとえば小学生以上若年層に猛烈人気の Green Day も、歌詞はいいが音楽的にはびっくりするほど平凡なのである。日本は「紅白歌合戦」の 75% を占めるイモ音楽に満たされ、「マシュー南」や「ゴリエ」が氾濫して気恥ずかしい国だが、健全なロック桃源郷もそこにあるのであった。

2006/01/02

紅白歌合戦 2005 (NHK国際映像) の感想 (ちょっと追加)

森山直太朗:レコードで最高の演奏をしているバンドを見たかったのだが、レギュラーバンドは持たないのかカラオケ歌唱だったのであまり興味を持てなかった。
平原綾香:喋るとけっこう現代っ子であれれと思うが、歌う姿は姫のようでよい。
スキマスイッチ:芸能界にフィットしそうな性格が歌と微妙に合わず、そこがいまいち好きになれない。
森山良子:企画ものを超え価値のある息子との共演だった。
倖田來未:レコード大賞? のあなたは誰?
氷川きよし:この人がジョークではなく本当に人気があるらしい国の不思議さよ。
ゴリエ:何者....と知りたい気持ちも別に湧いてこない。
一青窈:この人の声には1年かけて慣れ、今は気色よい。
松任谷由実:変わらぬヘナヘナ音程でありながら、横にいる上海超級技能歌手たちがただののど自慢の人たちに見えてしまう、横綱の存在感と声。
ドリカム:すべてのラッパーが打ちのめされるべき、鳥肌立つ音楽力。このバンドをトリにするという、日本にとって最善の決断がなぜできないのかNHK。
和田アキコ:なぜラップかは不明だが真剣でよかった。
中島美嘉:トリ前で北島三郎の対抗であるライブハウス歌手みたいなあなたは誰?
スマップ:木村氏を除きあんなに音痴なのに、こうもしつこく主役扱いで歌わされるのはつらかったろう。
司会:なにゆえにみのもんたがあんなに大物司会者になってるのだ。謎だ....。

========
Dreams Come True は趣味に合う音楽じゃないのでちゃんと聴いたことはないのだが、飛び抜けたワールドクラスだと改めて思った。すべての音に丹精が込められ、グラマラス米国ポップ臭も貧相Jポップ臭もないワールドミュージック的無国籍性を持っている。超絶技巧に(ほとんど)おぼれない吉田美和さんの美しい歌唱、そして「俺はこの音楽が好きなんだあああ!」と言ってるみたいなベースの人の顔がサイコーで、Mと萌にも見せてやった。萌は熱血アニメみたいなベースガイの顔と歌のかっこよさに大喜びで、皆でこれが見られてよかった。

アジアでは大物ミュージシャンというと、いまだに今日松任谷さんと共に歌ったようなのど自慢歌手しか出てこないわけで(「ポップジャム」等に出てくる韓国若手歌手も一様に「ゴスペルズ」みたいな70年代歌謡センス)、60~70年代からすでにそうしたのど自慢性と決別したバンド・ミュージシャンを産出し続けているところが、日本が他のアジア諸国と異なっているところなのだと思う。

2006/01/01

日記「クリスマスは映画の日々」

「楽器はマインドゲーム」「千年女優」メーターの振り切れた「世界の中心~」ほか。

=======================
■ 05/12/16(金) 12:07:12 □ クリスマスショッピング
=======================



昨夜、萌とMは今学期最後の学校行事、体育館でのスリープオーバーに行った。寒そうだなあ、もっと暖かい時期にやればいいのになあと心配していたが、もちろん楽しかったそうであります。萌は興奮したことであろう。


----------------------
今日は買い物とドクアポがあり、帰りにビデオ屋に寄ってきた。Mのバースデイとクリスマスプレゼント連結で DVD プレイヤーを買うことに決めてるのだが、改めて興味を持って眺めてみると DVD は安いなあと思う。高校のときに \4000 だかをはたいて決死の思いで3枚組アルバムを買った「ラストワルツ」の映画自体が $10 で売ってるんだから、こりゃもう昔の子供に対してアンフェアすぎるではないかと腹さえ立つ。まあいまどきの子供はザ・バンドなんか聴かんか(^_^;;)。まあとにかくいろんな映像が安いのです。

=======================
■ 05/12/18(日) 09:23:53 □ 楽器はマインドゲーム
=======================

クリスマスディナーでSH家へ。ブレーキ修理の終わったレガシィの調子がよい。New Westminster のラフで狭い2車線路でレーンをキープするラクさ、急坂のハイウェイブリッジを一気に降りていくときの揺れと怖さのなさ。4輪にトルクがかかっているおかげで、路面がどんな状況でも一定で均等な推進力がかかり、そのおかげで進路が乱れないのだろうと体感できて面白い。Mもこいつを気に入っていて、次に買うのもスバルでいいわよねという。いや総合的に次は昔乗ってた軽バンみたいに小さくて燃費がいい車がほしいけど、でもやっぱ今はこの車に乗れてうれしいのである。

SHたちが年末フロリダに行くとかでクリスマスを前倒しでやったのだが、一番若い萌は皆にプレゼントを配達する役回りなので大盛り上がり。そして女の子を持たないBVがえらい勢いで萌にかわいい服を買いまくり、萌は踊り上がって喜んでいた。


STがBT15歳に先輩ミュージシャンとして、「楽器とは一生を捧げるに価するものだ、今でもドラムを叩いていて面白くて仕方がない」と伝道師のようなことを喋っていたので、俺も会話に混じる。「俺ももうバンドをやらなくなって10年以上が経つけど、これが今でもなんと上達しているよんだよ。自分のコントロールが昔よりできるからなんだと思う。楽器というのはほんとにマインドゲームなんだよね」と話すと、STもそうだそうだと相槌を打っていた。

BTはベース歴1年にしてようやく、右手でボ・ボ・ボと安定したタッチで弦を弾けるようになってきた。うまくなるかどうかはまだ分からんが、やっと楽器経験者の手になってきている。

=======================
■ 05/12/19(月) 09:40:15 □ DVD プレイヤー購入
=======================

午後ついに DVD プレイヤー購入に出る。行って調べてみたら韓国製 Zenith/LG の製品が DVD プレイヤー+VCR のコンボで唯一 DVD-R 上の DivX ファイルを再生でき、うちにある萌のアニメ資産を万全に生かすことができるため、これに決定(店員の説明は信じず自分で目当てのブツの箱を探して効能書きを読み確認した)。

帰ってから試してみると見事に CD や DVD 上のアニメ avi/mpg を読んでくれた。萌がさっそく「未来少年コナン」を見る。これでアニメ鑑賞で萌が俺のPCを占拠する時間をゼロにできる。めでたし。

DVD も、スクロールが弱いなどアナログ映像時代に劣るところもあるけれど(DVD というより mpeg2 の弱点か)、日本の BS 映像みたいなクッキリ感があり、そしてなにはともあれ便利である。そして最後に VHS 機能を試して特に不満はなく、これは完璧に期待通りのマシンを手に入れた。今まで買った家電の中でもトップクラスの満足度である。3年前に買った俺の VCR と同じ値段で DVD+VCR なのだからすごい。

----------------------
しかし家族みなが使う DVD プレイヤーだけでMへのプレゼントとするのもナンなので、何か買う意義のある DVD を見つけてやろうと3軒くらい必死に探したのだが、レンタルビデオ屋にあるハリウッド映画以外はまーったく何も売っていなかった。カナダ人は本当に外国映画や古典を見ないんだなと呆れる。そういう需要が少ないものはネットショッピングで買うしかないらしい。間に合わぬ。はあ。

=======================
■ 05/12/23(金) 09:31:11 □「千年女優」
=======================

なんかもうクリスマスホリデイみたいな感じのする日々。ナウシカ以外ジブリ映画の英語版を見たことがないMのために、香港製ジブリ映画詰め合わせという怪しいものを借りてきたのだが、「キキ」を見ていて、英語字幕のデキが悪すぎてほとんど読めないことが判明。出るタイミングが悪く時間が短すぎて(1秒で 10 ワードとか出す)、頻繁にずれるし省略も多い。字幕がこれではどれほど集中しても半分しか内容が読めないので、Mは字幕を追うのをあきらめた。がっくし。

字幕時間の短さはおそらく、情報量が多い漢字と同じタイミングで英語文字列を機械的に挿入するとこんな風になるのだろう。そしてずれは単に仕事の質の問題である。いいものを作ろうという気があるかないかの違いなのだ。英語の分かる日本人(またはその逆)にチェックしてもらえば済むことなのに、やってないのだから。はーあ。

----------------------
俺自身も夜新しい DVD プレイヤーで、あまりにも面白そうなので見ないでずっと保留にしておいた「千年女優」をついに見た。半分くらい見て寝ようと思っていたのだが、ヒロインが雪の中で絵描きと会うシーンからは、もう止められない状態で最後まで一気に見る。こんなにグリッピングな(夢中になる)映画は俺にとっては「千と千尋」以来である。映画と現実・夢かうつつか、アニメでしか表せないその入り混じり具合が実にすんばらしかった。こういう映像芸術が発見されず、大量生産ハリウッド映画だけが消費されている北米映画事情というのは、むなしい。


調べてみると BESTBUY というところで「千年女優」英語字幕付き DVD がなんと $15+送料無料で買えるので、すぐさま発注。クリスマスには間に合わないが、これをもってMへのプレゼントとしよう。

=======================
■ 05/12/24(土) 11:16:47 □ メーターの振り切れた「世界の中心~」
=======================

夜 TV Japan で、「世界の中心で、愛をさけぶ」という映画を見る。日本文学史上最大のベストセラーの映画化なのだそうだが(映画もヒットしたらしい)、悪くはないものの何も特別なものは見て取れない。何故超絶ヒットなのか分からないという点で、俺にとって「冬ソナ」と同列に並ぶ。前半の恋愛ストーリーは普通に楽しめたのだが、後半はげんなりしてしまった。なんか冬ソナもこれも、現代アジア人は死とか失明とか記憶喪失とか、そういう劇的なものだけを闇雲に追い求めてるんではないかと感じる。

映画は死んだ恋人のテープレターを聞きながら進んでいくのだが、そのテープに収められた言葉がなにか高校生の恋人というよりも、何十年も連れ添った夫婦の言葉のようであった。橋田壽賀子にもまさるかという古風な脚本である。恋人だけが世界であって家族友人は描かれていないところも(原作がどうなのかは不明だが、今にも死にそうな彼女の病室に家族が現れないし、彼女も家族のことを考えているフシはない)、非常な違和感を感じる。劇的なものだけを抽出して描きすぎ、メーターが振り切れていると思うのであった。

=======================
■ 05/12/25(日) 12:59:51 □ ハッピークリスマス
=======================

プレゼントを次々と開ける朝。萌がもらったのは、数々のドレスや服、ポリーポケット人形、日本の文房具、寿司の形の精密消しゴム、巨大ジグソーパズル、Mが古着屋で見つけてきた大袋いっぱいのトーイフードなど。ハッピーそのものです。

その後皆でゲームをし、よいクリスマスであった。何年かぶりにKVと一日一緒にいたのだが、反抗期を抜けて超好青年になってるので驚いた。みなと楽しく会話をし、萌とずっと遊び、後片付けまで率先してやっている。「お前なにそれ、なんでそんなにきれい好きなの? (兄の)MKとえらい違うじゃん」というとMKが聞きつけて怒っていた。

----------------------
【有馬記念】ディープインパクト2着。菊花賞のひやひやを再現すまいとユタカが注意深くゆっくりと1周をまわし、3コーナーを万全の勢いで上がってきたのだが、1頭だけ捉えきれず。勝ったのはJCで2着だったハーツクライ。JCはこの番組で初めて見たが、ハーツクライはそこで勝ちに等しい素晴らしいレースをしており、この馬を捕まえられなかったのは仕方がないという感じ。ルドルフでも古馬との初対戦では勝てなかったのである。

リプレイを見ると最後の最後にユタカが期待したもうひと伸びがなかったんだなと分かるが、あれだけ見事な走りをした相手をさらに差し切るというのは相当な力の差がなければ無理であり、それはなかったのだろう。ハナ差の勝負をしてきた馬と、ここまで抜けた能力で勝ってきた馬との違いが出たのかなという競馬だった。トウカイテイオーが負けたときに似た気持ちに包まれる。だがディープインパクトはテイオーほどいいところなく負けたわけでもないし、怪我をしたわけでもない。これからもっといいレースをしてくれればそれでよし。

2005/12/29

日記「Harrison Hot Springs 再訪」

「永遠のビートルズ」「湯冷めしない方法」ほか。

=======================
■ 05/12/08(木) 09:50:03 □ 永遠のビートルズ
=======================

 日本語学校。今日は買い物もないので萌を待ちながら Pocket PC でジャーナル編集。ときおり窓からクラスを覗いてみると、萌は楽しくやっている様子。

 今日はジョンの命日。最近萌がビートルズを好むのでよく聴かせており、さすがビートルズメロディは永遠だと思っていたのだが、車の中などで何度か聴くと萌は、

> Let's all get up and dance to a song
> That was a hit before your mother was born.
> Though she was born a long long time ago,
> Your mother should know,
> Your mother should know.


とか

> I am the egg-man, they are the egg-men,
> I am the walrus, goo goo a' joob.


 とか、すらっと覚えて歌ってしまう。難しい単語がないので聞き取ってしまえるのだ。「Fool on the Hill」を聴いて、「Nobody seems to like him だって、かわいそうねえ」なんていっているから恐れ入る。ビートルズで耳に響くのがメロディだけではないのである。英語圏の子供はすごいな。

=======================
■ 05/12/09(金) 09:34:38 □ WC組分け決まる
=======================

 ジムナスティックス:子供たちが大声でクリスマスソングを歌いながら飛び箱を跳んでいる。おかしい。

----------------------
 帰ってWCの組分け番組を見る。3チームまでが決まったところで、

> グループB:イングランド、パラグアイ、スウェーデン
> グループC:アルゼンチン、コートジボワール、オランダ
> グループE:イタリア、ガーナ、チェコ

 ここらは絶対避けたいー! 地獄ー! .....と祈っていると結局、

> グループF:ブラジル、クロアチア、オーストラリア、日本

 こうなった。うーむ。アジア勢では一番恵まれなかった感があるが(※)、まあWCまで来てしまえば相手が強いのは当然であって、ここを勝ち抜けなくてどうするというのが実感である。オーストラリアはWCは初めても同然だし、クロアチアはあの黄金時代にさえあと一歩まで追い詰めることができたのだ。あれからスターが出てないクロアチアに対し、こっちは中田クラスの才能が増えているのである。
(※)メキシコとポルトガルがつぶし合うなか漁夫の利を狙えそうなイラン、真っ向勝負で2国を敗れる可能性のある韓国、2002 年の結果から見て少なくとも1勝は見込めるサウジアラビア.....、という感じ。

 実際この組分けはあの98年に似ている。あの時の口惜しさを払拭できる天の采配といえる。さいわい対オーストラリア、クロアチア、ブラジルと試合順もベストだし、勝つしかなし。

 しかしヒッジョーにつまらないショーに続く、超盛り上がらないクジびきだった。ポッドD(最弱)から先に選べば、ポッドA国が引かれる瞬間までハラハラが続いて盛り上がるのに。ポッドDのうちはどこに入るのだと最後までハラハラしていたが、ポッドA/B国は「アジアなぞどこが来ても大差なし」という構えだったろう。

----------------------
 去年萌が発熱で行けなかったプリスクールのクリスマスパーティが今夜だというので、IV先生に連絡して行かせてもらった。プリスクールはデイケアの拡充とかでものすごい大人数となっており大盛況だったが(全部で100世帯300人くらいいたのでは)、出し物はプリスクールキッズの歌が3本くらいあっただけで―――あのHNがすんばらしいデキであった―――、他には何もなし。パーティはただ食べるだけなのであった。

 しかし夜だし大人数だしKTたちに加え去年までの同級生もいて、萌は興奮のきわみ。なんか食べ過ぎて帰る頃にはおなかが痛くなってしまっていた。思ったほどのスペシャルなパーティではなかったが、とにもかくにも去年超かわいそうだったのが埋め合わせできて、すっきりした。

=======================
■ 05/12/11(日) 11:09:50 □ Harrison Hot Springs 再訪
=======================

 今日から2泊で Harrison Hot Springs。天候は良好。

Start: Port Coquitlam, British Columbia, Canada
End: Harrison Hot Springs, British Columbia, Canada
Total Distance: 94.2 Kilometers

 14:45 頃出発。道中アボッツフォードからチリワックあたりは、ときおり農家が見えるほかは何もない平たい峡谷なのだが、左側に低い山が近く右手に高い山が遠くあり、長野から上田・佐久方面に行く国道18号とあまりにも景色が似ている。生えている木がちょっと違うだけ。そうMに言うと、「ジー本当だわ、言われるまで気づかなかったけど、もう今は長野にいるとしか感じられないわ」と言っていた。道の両端に畑が広がるあたりは、「これがもし田んぼだったら、須坂から湯田中に行くあの米作エリアそのものじゃん」「日本の家々が見えてきそう!」と疑似懐かしがる。

 1時間半強でホテル着。前回よりもいい部屋で快適。ホテル好きな萌が喜び、こちらもうれしい。

----------------------
 SHたちと合流し、ホテルのレストランが相変わらず1箇所だけで、高くて選択肢がなくそそられないので(ハイシーズンはもうひとつレストランが開いて選択肢があるらしいが―――って、温泉のハイシーズンっていつなんだ?)、ハイウェイ近くの町まで戻ってファミリーレストランで食事。これだけバリっとしたホテルでありながら、こういうところであまりホスピタリティがないのが不思議な施設である。町中のビジネスホテルじゃないんだから、客がいったん入ったら外に出る必要がないようにしといてもらいたい。外に食べに出たとて田舎ゆえうまいものなどないのだし、こうして食事に出ている時間はホテル滞在時間の浪費なのだよな。この時間もお湯に入っていたいのに。

 俺はだいたいカナダじゃ外食自体が好きではない。飛び込みでうまい店に当たる率が低いのは仕方がないが、カナダのレストランはとにかく滅茶暗いのが嫌なのだ。カナダ人は全般に暗めの間接照明が何故か好きなのだが、レストラン系は極端である。今日の店などメニューを読むのに苦労するくらい灯りが暗く、BRはフラッシュライトを借りて読んでいた。こういう場所で手元に注意を払いつつ(実際萌はコップを倒してしまった)ものを食ってもうまいわけがない。出てきた食べ物を目で味わうなんてことも当然ないゆえ、うまくない食べ物がさらに味気なく感じるのであった。

 萌はこの旅行前あたりから本当に、なんでもかんでも自分ひとりでやることに命を懸けていて、レストランのトイレにも果敢に一人で入っていった。あっついスープが出てきたのだが、これも少量ずつスプーンにとってフーフーと吹き全部飲んだ。ビッグキッドである。えらい。

----------------------
 そして晩飯後ようやく入浴。まあなにはともあれハリソンのお湯はいい。短時間ながら萌としみじみ味わいました。

=======================
■ 05/12/12(月) 10:04:50 □ 湯冷めしない方法
=======================

 昨夜はぜんぜん眠れず。布団カバーがカサカサ音を立てずり落ちるので、気になってどうしても熟睡できないのである。寝ないとやばいなあ、体調崩すなあと思いつつ3時まで Pocket PC で古いファイルを読んでいた。

 昨夜読んでいたのはなんと懐かしき、95~96 年のバンクーバー日本語ネット DOSVAN のログ。アクティブメンバー4~5人とは思えないほど内容が充実していて面白い。やはり当時バンクーバーで日本語は絶対にここにしかなかったから、誰もが日々の想いを存分にぶつけていたんだよな。内輪受けが過ぎるのだが(俺が愛想よすぎて気味が悪い ^_^;)、この広いバンクーバーで5人しかメンバーがいない中では、内輪受けをなくしては話題が続かなかっただろうし。

----------------------
 今日は午後になってからようやくお湯に入ったのだが、寝てないゆえ湯冷めしたらすぐにも風邪をひいてしまいそうな体調の悪さを感じる。どうしたら湯冷めしないで済むか湯の中で考えたのだが、気温3度の渡り廊下をガウンだけで建物へ戻る時点ですでに暖かさは消えており、そこから館内に飛び込み部屋まで走るわけで、部屋に着く頃にはどうしても冷えてしまう。

 日本の場合は露天風呂でも、暖かい更衣室に座りゆっくりと汗をひかせ体を拭けるから寒くならないわけで、ハリソンでも更衣室はあるので使えばいいわけだが、こっちはやっぱり単なるプールの更衣室なので足元が濡れて気持ちが悪く、着替えは部屋に戻ってやりたくなってしまう。お風呂が気持ちいいだけに、気持ち悪さを我慢するのはよけいに難しい。

 そういうところがお風呂大国日本の温泉システムの練れたところなのだが、もうひとつ、日本手ぬぐいもやっぱり優れてるなあと思う。お湯に入れてもケバを出さず、露天風呂で頭にのせたり巻いたりすれば保温になる。実に温泉に最適化されたタオルなのだ。

----------------------
 今日の晩飯はホテル内カフェのチリビーンズとクロワッサン。旅行中に下手にうまいものなど望まず、この程度のお手軽食事で済ませるのが一番だという感じでつつましい幸福感がある。

=======================
■ 05/12/13(火) 12:41:04 □ 小布施の外風呂と同じくらいでした
=======================


内風呂快適40度

屋外大人風呂ぬるめの38.5度

屋外子供風呂34度、冷えます
 今日も眠れず、だが最後なので頑張って起きて飯を食ってからもう一度お湯につかった。風邪をひきませんようにと祈るような気持ちである。腕時計の温度計で調べてみると、

屋内 40度ちょうど
屋外大人 38.5度
屋外子供 34度

 となった。上の2つは十分に暖かく、やはり小布施の外風呂と同じくらいなのであった。屋外子供プールは体温より低いので、入っていると冷えてしまうのは当たり前。子供はのぼせやすいから温度を下げてあるのだと思うが、冬場はせめて体温と同等にしといていただきたい。「屋外大人」で十分に温まってから、萌と共に部屋までダッシュ。

----------------------
 帰りは渋滞もありやや疲れました。録画しといた NHK 国際の番組に、「モーサム・トーンベンダー」というバンドが出ていた。めちゃくちゃかっこいい。イギーポップとルースターズとビリケンの橋本さんが合わさった感じ。

2005/12/10

日記「はじめての通知表」

「ボケナス機械たち」「92年の英語苦労ばなし」ほか。

=======================
■ 05/11/17(木) 11:08:13 □ スポーツをプロに習うということ
=======================

 スイミング:萌は昨夜コンコン咳をしていたのだが、今朝は元気一杯に泳ぐ。今日は片手に小さなフロートを持ち、そのわずかな浮力をきっかけにバランスを取って身体全体を浮かせるという練習をしている。なるほど、こうして「浮く」という感覚を自然に理解させてしまうのね。

 このレッスンはなるほどの連続、目からうろこが落ちまくりである。スポーツをプロに習うというのはこういうことなんだろう。

=======================
■ 05/11/20(日) 10:36:26 □ 関東村をネットで発見
=======================


 朝、関東村で眠い体をベッドから引き剥がし、警備犬ビコにエサをやる夢を見て目が覚めた。関東村の夢を見るのは久しぶりだ。そこから半分夢うつつで関東村のことを延々と考えて眠れなかった。あの頃のことを書こうかと思うが、日記はテキストで全部残っていても、当時はデジカメがなかったので写真がない。日本でアルバムを探せば、いくらかはあると思うが。


 でふと google してみると、関東村の美麗な写真を大量に撮影して残しておいてくれた人がいた。おーなつかしい、懐かしすぎて涙が出るぜとキャプションを読むと、

> 「東京都府中市朝日町 関東村跡地」(1993/02/18)
> 1993 年当時の新聞の東京版で、取り壊しが進むこの施設のことを知り、早速カ
> メラを提げ、フェンスを越えて潜入しました。しかし、1時間も立たないうち、
> 犬を連れて巡回していた警備員に見とがめられ、撤退を余儀なくされることに
> …。もっと時間があれば、と悔やまれることしきりでした。

 と、これは俺がビコと共に巡回中に捕まえたカメラマン氏だったのであった(^_^;;)。このとき俺がこの人を捕まえずに放置しておけば、幼稚園やプールの方の写真も残しておいてくれただろうなあ。惜しいことをしたものである。

<





 さらに探してみると府中でも立川でも、侵入して写真を撮ってる廃墟愛好者はちゃんといたのであった。あれだけのしろものが近くにあって写真に興味がある者ならば、トライして当然だよな。俺はいいカメラを持ってないのでビデオで撮影しまくっていたわけだが。

 これらの作者の方々に写真を借りられれば、あの頃のことを書ける。日記を読み返し、何を書こうかと考える。

=======================
■ 05/11/21(月) 10:55:15 □ ボケナス機械たち
=======================

 こないだ買ったオーブン&トースターの具合が悪くて、5分焼いてもトーストが焼けない。観察しているとコイルが十分な温度に達して赤熱するのにまる5分かかるのである。ネットで調べてこの機種がベストと結論し買ってきたMはがっくりして使うのをやめ、階下のBRからパンを縦に入れる式のトースターを借りてきた。気の毒。オーブンとしての性能に不足はないと思うが、月に数度のべーキングには最適でも毎日のトーストには使えないマシンなのであった。トーストを焼くのに8分とかかかったら、誰もがうんざりするに決まってるではないか。

 Mは買い物運のない人で、かつ機械にうといのでしょっちゅうこういう失望機器を買ってしまうのだが、今回はちゃんと調べた上でこれなのだからかわいそうだ。日本製なら「大手メーカーのを買っておけばまあハズレはない」という感じで、外観値段効能書きから好みのものを選べば済むのだが、米国カナダ欧州中国製品はハズレが厳然とある。値段相応である中国製を批判してもしょうがないが、米国カナダ欧州製品は独善的な仕様で使いにくいし、今回のように根本的に設計がボケナスであることが多く恐れ入る。

 うちのエアクリーナーの風量スイッチが「0-3-2-1」となってる(スイッチを入れるとまずぶわーっと猛風が出、そこから適量まで毎度下げる必要がある)のがボケナスの典型例だが、力学的に子供には開けられない形状の玄関のドアノブとか、スイッチパネルに文字がなく、説明書を読まないとどれが何のスイッチか絶対に分からない皿洗い機と洗濯機など、カナダに住んでるとバカ設計機具憤慨体験は枚挙にいとまがない。

----------------------
 今日は夜まで旧米軍基地関連 Web サイトを巡っていた。現役警備員時代には知ることができなかった事実がネットの力で次々と分かり、興奮している。

=======================
■ 05/11/23(水) 09:15:20 □ ブレーキ診断
=======================

 夏前から調子の悪いブレーキを OK Tire で見てもらう。アラインメントをやってくれた名メカのおっちゃんに症状を説明し、大手修理屋 Midas はマスターシリンダーがいかれたんじゃないかと言っていると述べると、どうして そのまま Midas で修理しなかったのかを聞かれた。うーん単におたくたちの方が好きなんだよと答える。同じ修理費ならば、気分のよい方に払いたいのは当然。

----------------------
 そして診断結果は、予想以上に悪かった。車の下に入っていかにもブレーキのエキスパートという感じのおっちゃんに説明を受け、前後輪キャリパーとディスクとパッド、総取り替えとなった。がっくし。リアはまあ寿命で仕方がないが、フロントは4年前に Midas でやってあるのである。それが駄目になっているということは、Midas の前回の仕事が悪かったのだとしか考えようがない。こちらの診立てでは、圧縮はあるのでマスターシリンダーは働いているだろうとのこと。

 あまりのことにがっくしして即答はできなかったが、今日の診断費は「君はお得意さんだから」と無料にしてくれたのがありがたく、全部やってすっきりするしかないなと思いながら帰る。夏以降の猛烈な燃費の悪さはやはり、キャリパーが固着してブレーキの引きずりを起こしていたのだった。直さざるを得ない。とほほ。

=======================
■ 05/11/26(土) 15:48:39 □ 調布関東村記事を書き始める
=======================

 関東村・府中基地などの写真利用許可が出たので、昨夜は夜中の1時まで延々と書いてしまった。本当はじっくり寝かせて思い出したことを足してからアップロードすればいいのだが、書いたそばから発表したくてたまらなくなってしまうインターネットパブリッシング。アップロードした後でちょこちょこ書き足したりしている。


追憶の調布関東村(1)関東村最後の日々追憶の調布関東村(2)関東村のシクスティーズ
追憶の調布関東村(3)府中基地キノコの森
追憶の調布関東村(4)ゴールデンブラウンの立川基地
追憶の調布関東村(終)さよなら関東村
日記「立川基地の青春」(ランドリーゲイトの想い出)

=======================
■ 05/11/29(火) 08:45:51 □ 初雪
=======================

 Mが SFU に行くので早起きすると、雪になっていた。びっくり。バスを逃したMをモールに送ったのだが、皆そろそろ走りで渋滞が起きていた。道は濡れてるだけで雪は残ってないのだが、雪が視界にあると心理的にペースが落ちるのだろう。

----------------------
 午後萌を迎えに行き、思いついて久々にLちゃんのところで落としてやった。KD姉さんが外で延々と雪だるまを作っていた。萌は大ハッピー。

 関東村記事は立川基地のあたりまで進む。HCやARに連絡を取りたいが、メールアドレスが見つからんなあ。

=======================
■ 05/12/01(木) 11:51:21 □ はじめての通知表
=======================

 今日から12月なのだが、昨日までが1学期だったそうで萌が通知表をもらってきた。これを見て「おお、うちの子が通知表かい」と感動すべきなのかもしれんが、別に評価を見ても発見はない。「手先の器用さ・文字の書き方到達度合い=合格」とだけあり、コメントはなし。やっぱあの先生は萌の絵や字への傾倒という持ち味には注目していないんだなと感じられる程度。彼女は子供に規律とフランス語を教えるのが自分の仕事であって、個性などに着目するのはキンダー教師の職掌外と考えているのかもしれない。1人で30人も見てるわけだし、そのことに不満を感じることはない。

 規律といえば、彼女は毎日5分遅れてくるのだが、クラスにくるなり騒然としたクラスにフランス語で号令をかける。それで皆しーんと静まるのだが、今日萌はブーツを脱いで着替えしている際中だったのに、フリーズして手を止めてしまった。いいから着替えを続けてというと、「先生があれを言ったら止まらなきゃいけないのだ」と萌は説明する。いや着替えとかそういうことはいいんだよ、あれは騒ぐなという意味なわけで....と言ったのだが、萌は頑として動かなかったのだった。つまりA先生がああいう号令調でクラスをハンドルしているから、キッズはこういう判断停止のオンオフスイッチみたいな対応しかできないのである。そういうところがいやはや......とは感じる。

 だいたい5分も遅れてきておいてクラスが騒いでいるからって大声を立てること自体がアンフェアであって(キッズは始業ブザーが鳴ると教室に入りちゃんと座って待っている)、皆が騒ぎ始める前に時間通りに来れば済むことなのだ。ここに文句を言わないカナダの父兄ってほんとに不思議。Mにカナダじゃこれが普通なのかと尋ねたが、他のことにはうるさい彼女もこういう時間のルーズさに関しては「まあねえ....」と寛容なのであった。

=======================
■ 05/12/03(土) 09:52:47 □ 無念、森島
=======================

 Jリーグ優勝決定戦、セレッソの動きがすばらしく西澤のヘッドで早くも先制。しかしFC東京も好調で間もなく追いつく。東京が伸び伸びとしてセレッソがあたふたし始める。ドローだとセレッソの優勝が消える。さすがに優勝は難しい。

 といきなりPKシーンまで放送が20分スキップ。こういう馬鹿げたカットをするということはこのPKは失敗だろうと思ったらその通り。さすがに優勝は難しい。現時点で首位は浦和との報。

 森島のボールの下に潜り込む感じの彼らしいヘッド! GKに抑えられる。

 後半ペースを握り直したセレッソが、ゼ・カルロスの崩しから西澤のゴールで突き放す。しかし1点差だと最後にやられる気がする。もう1点取らないと。個々の選手の能力でいくとFC東京のほうが上であるようで、局面局面でセレッソは負けている。

 残り10分、怪我をしたらしい森島が下がる。この森島のためにと、セレッソの皆は走り続ける。柳本がまだ現役でセレッソにいたのには驚いた。

 そしてロスタイム、やはり! 誰もがなかば予想したように、CKから守り切れずドロー弾が決まる。森島の顔が映し出される。うー。しかしこれは東京が強かったということで、セレッソの勝負弱さがうんぬんという感じではなかったのであった。優勝するには、事実として今一歩力が足りなかったのである。

 試合終了。カメラはガンバのスタジアムに切り替わった。無念、日本中の誰もが応援してしまう男、森島よ。

=======================
■ 05/12/04(日) 11:57:56 □ 92年の英語苦労ばなし
=======================

 関東村記事のために日記92年初春あたりを読んでいて、関東村で英語を独力で勉強し始めた頃は俺がいま思うよりもはるかにできなかったんだなと、改めて記憶をリフレッシュした。当時の英作ノートで

Do you tell me how to get to the bank.(→Could you...?)
◆ He has'nt come untill noon, so I couldn't wake up. (→He didn't...)
◆ I didn't expect that I've been able to had it. (→that I could have it)

 ですと。うぐぐ。まあこれで正しいとは当時も思ってなかったとはいえ、恥ずかしい(^_^;;)。ここから1年と少しの独学でかなり上達したので、「英語にはさほど苦労しなかったぜ」というタカピーなセルフイメージが残っていたのだが、やっぱり最初はこんなもんだったのである。

 その翌年に始めたコンピュータも完全に独学で満足なガイドブックの類もなく、今思えばとんでもないデキの悪さのOSやソフトウェアを相手に、信じがたい費用と時間をかけ苦労をしていた。初代 DynaBook だけで本体・メモリ・ディスク・モデム・ソフトウェアで総計20万超、Nifty の通信費が 10800 円......。忘れていたが痛恨の額である。他に選択肢はなかったとはいえ、ハードもソフトも通信も無茶苦茶高く、かつ今思うとありえないほどユーザーアンフレンドリーであった。―――まあコンピュータ費用に関しては、活用度を思えばトータルでモトは取れまくっているが。

=======================
■ 05/12/05(月) 09:40:25 □ ロックンロール・ギター
=======================

学校でDGさんと相談しLSをうちに招いて帰る。超~おハッピーで車中から延々ギグル(ゲラゲラ笑い)が止まらぬ二人。ギターを弾いて皆で歌を歌ったり....というかスクリームしたりした。

 萌は最近ギターに興味が出てきて、自分の好きな歌に合わせてぐわんぐわんと弦をかきむしっているのだが、だんだんとストロークでリズムを取るようになってきた。もちろん手が小さくて握力がないのでコードは押さえられないのだが、俺がコードを押さえてやればがーんがーんとそれなりにリズムを取ろうとする。よしよし。ギターは持てないのでウクレレに萌専用ストラップをつけてやった。ロックンロール。

----------------------
 最近萌は自己主張が強くなってきて、今日は俺がジェリービーンズを食べ過ぎるなと途中で差し止めると、「食べ過ぎるなって、どういう意味なのかわからないよ!」と泣くなど、声を荒立てるところが出てきた。いくつ食べていいのかを具体的に言ってやればよかったわけだが、こんなささいなコミュニケーションブレイクダウンのくやしさにポロポロと涙を流しながら主張をする姿に胸が痛む。

 だがこれはよいことで、萌は先生や大人にはちゃんと主張をできるわりに集団内では押しが弱くてワリを食う傾向がつよいので(列があると必ず最後方になり時間がなくなるとか、プレイグラウンドで前に割り込まれまくるとか)、やっと出てきたこういう心の波立ちを大事にしてやろうと思う。

2005/12/07

追憶の調布関東村(終)さよなら関東村

by サカタ@カナダ

94年春カナダに渡ることを決めた私は、キノコ隊長らと相談して当時仕事をなくしていた年下の友人をあとがまに推挙し、教育実習や研修ののち無事彼が調布基地関東村後継警備員と決まりました。



引き継ぎの日。関東村構内、飛び地、府中基地と彼を案内し、私は仕事のあれやこれやを説明しました。3年前に隊長が自分にしてくれたことと同じことをしている。ビコの世話もよろしく頼んだよ。


あの時と違うのは、廃墟の解体が進んで環境が激変し、キノコ関連で申し送ることがほとんどない点でした。隊長が教えてくれた倒木や切り株はみな土に埋められ、20年間落葉で理想的なコンディションを保っていたアミガサタケの苗床も、キャタピラに踏まれて消えて。

この関東村自体がなくなり大学が建てられることも、すでに決まっていました。関東村跡警備事務所の最後はこの後継青年が、97年に見届けてくれたのです。



最後の勤務日、私は事務所を掃除しながら、いろいろなことを思い出していました。

冬、極寒のプレハブ事務所でやかんの水が凍りついたこと。暖を取ったドラム缶の焚き火。

事務所でいつも読んでいた新聞の競馬記事。上京した父親と見に行ったジャパンカップで、天皇賞に続くオグリキャップの惨敗に落ち込んだこと。

そして有馬記念の翌日に読んだ高橋源一郎の史上最高の競馬コラム

湾岸戦争の報道を朝まで事務所で見続け、翌日書物を買い込み勉強したこと。

晴れた冬の日に見える富士山。場内いちめんの新雪。雪上に残る侵入者や犬の足跡。





夏は夏で事務所内が耐えられない温度になり、隊長が大工となってブレハブの周りに日よけを作ってくれたこと。ロビンソン・クルーソーみたいな彼の手により、孤島の粗末な事務所に家具や調理台が作り付けられ、文化生活指数が向上したのだった。



しかし水が足りず菜園作りには失敗(↑)



警備犬ビコが森の中を駆け巡る姿。カミナリが鳴るとおびえる彼を事務所に入れてやらねばならず、犬臭さに閉口したこと。

追いかけまわした悪ガキやサバイバルゲーム集団や恐怖のボクサー犬使い



飛行場側の、今はもうないだろう美しい桜並木。まるで恐竜の化石のようだった、エノキが出る倒木。

不法居住者の寝ぐらを見つけてしまったこと。彼に荷物をまとめさせゲートまで送り退去させながら、俺はまるで権力の犬だぜと落ち込んだこと。

  



巡回の合間にNHKラジオ英会話を聞き込んだこと。覚えた英語が訪ねてきた関東村旧住人を案内するのにちゃんと役立ちうれしかったこと。プールに連れていくと誰もがオーマイゴッドと、懐かしさに身悶えして喜んでくれた。


子供の頃暮らしたという棟を一緒に探し当て、そのベランダに立つ写真を撮ってあげた女の子のこと。いいの? 本当に? 家族に見せるわと喜んでいた金色の髪のシスター。

不規則な生活と、今思えばちゃんと料理しとけよ俺と思うような貧しい食生活に、体調を崩しがちだったこと。

そして大規模な解体が始まった93年、コンクリート塵に満たされ終末が見えてきた構内で、バンドもなく文筆の道も切り開いていけない自分の力のなさに悄然としていたこと。あてもなくただ、コンピュータと英語のスキルを身につけようとしていたのだった。


場内に残り最も破損の少ない建物だった幼稚園で(Kindergarten)。



長いこと世話になったな、関東村よ。ここに残っていてくれて本当に助かった。おかげで3年間ハッピーに暮らしてこれた。旅行をできたのも、自転車を買えたのも英語を覚えられたのも、みんな間違いなく関東村のおかげだ。本当に感謝するよ。

そしてビコ号と共にもう一度ゆっくりと時間をかけて構内を巡回してから、私はゲートに鍵を下ろしました。

私が関東村や府中基地に寄せる思いは、Chofu.org に集う人々や、立川基地で泣いたおじいさんたちと同じ種類のものでしょう。遠く、手が届かないゆえに強くこがれる気持ち。―――1・2・3・4、3・2・1・0。俺の気持ちは変わらないよ。前より君を思っているよ。俺は今でも宿なしだ。今現在も関東村にはいくつかの建物が残っているらしいことをネットで見つかる写真で知った私は、その写真を夜中に見つめているのです。

(終わり)



 (調布基地隣接サッカー場, 1990)

(2021/04/22)90年代に弟が撮った、お前こんないい写真あるならもっと前にくれよという旧米軍基地跡の写真が送られてきて全ページに追加加筆。



【関連記事】
追憶の調布関東村(1)関東村最後の日々
追憶の調布関東村(2)関東村のシクスティーズ
追憶の調布関東村(3)府中基地キノコの森
追憶の調布関東村(4)ゴールデンブラウンの立川基地
追憶の調布関東村(終)さよなら関東村
日記「立川基地の青春」(ランドリーゲイトの想い出)